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直接対決 ④

そのタイミングでポケットに入れていたスマホが振動し、何事かと確認してみると見たことが無い番号からの着信が表示されている。 一体誰だろう? 普段なら絶対に知らない番号は無視するのに、何故かこの時だけは出ないといけないような気がして躊躇っていると、今度はその番号からショートメッセージが送られてきた。 『直人の母です。少しお話したい事が有るので、お時間ある時にご連絡ください』 「!?」 俺は慌ててスマホの画面を凝視した。 直人って……まさか露木君の? いやでも、そんなはず無い。 そもそもなんで俺の番号を知っているのだろう? 露木君が教えたのだろうか? でも、なんで? 疑問ばかりが浮かんできて混乱する。 「おい椎名、どうした?」 賢人の声でハッと我に返った俺は慌ててスマホをポケットに押し込んだ。そして何でも無いと誤魔化すように笑ってみせる。しかし、その笑顔は自分でもわかるくらい引きつっていただろう。 「いや、何でもないよ」 そう答えると再びスマホに視線を落とした。まだ震え続けるそれはまるで警告音のようだった。嫌な予感に心臓が早鐘を打つ。 一体どんな用件だろうか? 露木君は知っているんだろうか? いや、でももし、知ってたら事前に教えてくれるだろうし……。 「顔色悪いけど、ほんとに大丈夫なのか?」 心配そうに顔を覗き込んで来る賢人に俺は曖昧に笑ってみせると、視線だけを上げて露木君を見た。 露木君は未だに女子に囲まれていて、相変わらず困ったような表情を浮かべている。今はとてもじゃないけど話が出来る状態では無さそうだ。 「うーん、ちょっと寝不足なだけだから気にしないで」 「あー……。お熱い事で」 誤魔化しのつもりで言った言葉に、何かを勘違いしたのか賢人がニヤニヤしながら言ってくる。 あながち間違っているわけでは無いから、否定も出来ずに俺はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。

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