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直接対決 ⑤
結局、その後も露木君の周囲には何人かの女子が常にうろついていて、話しかけるタイミングが見つからないままとうとう放課後になってしまった。
まぁ、家に戻れば嫌でもゆっくり話す時間もあるだろうし、焦る事は無いかと思い直し席を立つ。すると、それと同時に賢人が俺の肩に手を置いてきた。
「なぁ、環。正門のとこ居るに超絶イケメンがお前を探してるって女子が騒いでたぞ」
「え、俺?」
思わず聞き返してしまうと賢人はニヤニヤしながら頷いた。
「他校のヤツがわざわざお前を訪ねてくるなんて、相当だぞ。何やったんだよお前」
「いや、何も心当たり無いんだけど……」
本当に身に覚えがないから困る。一体誰なんだろう? 他校の知り合いって言えば一織くらいしか思いつかないけど……。
用事がある時は必ず一言送ってくるから、いきなり訪ねて来るなんて事は無いだろうし。
かと言って他に心当たりが有る訳でもない。
「とにかく行ってみりゃわかんだろ」
賢人は俺の不安を読み取ったのか、背中を押して一緒に付いていくと言い出した。別に断る理由もないので素直に従うことにする。
「俺、イケメンな知り合いなんて居ないんだけど……。名前間違いじゃないのか?」
「さぁ? 俺も詳しくは知らないんだ。でも、すげーイケメンだって言ってた」
「うぇー、マジかよ」
正門まで行くと確かに他校の制服を着たイケメンが立っていた。身長も180cm近くありそうで、スラリと伸びた手足がモデルのように美しい。
「あ! 椎名君が来た!」
人だかりに近付くと、一人の女子がこちらに気付いて声を上げた。それにつられて全員が一斉にこちらに視線を向ける。正直かなり居心地が悪い。
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