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直接対決 ⑥

「……って、やっぱ一織だったのか」 「へへっ、この間ぶりだね。環」 俺の顔を見た途端、一織は嬉しそうに近寄って来て俺の手をギュッと握ってきた。一織の背後に引きちぎれんばかりの尻尾が見えるような気がする。 「おい、お前ら知り合いなのかよ」 賢人が驚いたように目を見開いて俺と一織を交互に見比べる。 「あぁ、うん。まぁね……なんて言うか、幼馴染なんだ」 「初めまして。中西一織です。よろしく!」 一織は賢人に向き直ると人懐っこい爽やかな笑顔で挨拶をした。その爽やかな笑顔が逆に胡散臭いというかなんというか……。 一織の周囲では「中西ってあの、中西?」「やば……超かっこいい」「ガチのセレブじゃん」などとヒソヒソと囁き合っている声が聞こえてくる。 どうやら一織の名字はかなり有名らしい。まぁ、父親があの中西グループのトップなら当然といえば当然かも知れないが……。 「今日はあのセコム君居ないんだ? 休み?」 「セコムって……」 一織の言葉に思わず苦笑してしまう。露木君の事をセコム呼ばわりするなんて、本人が聞いたら怒りそうだ。 賢人は賢人で一織のイケメンオーラに恐縮しちゃって借りて来た猫みたいに大人しくなっている。 「って言うか、ほんっと何しに来たんだよ」 「えー、環に会いたかったから来たに決まってるだろ。言ったよね? 俺は諦めないって」 「……っ」 一織のストレートな物言いに思わずハッと息を呑む。周囲からは、きゃーっと黄色い悲鳴が上がった。 そう言えばこの間そんな事言ってたような気もする……。 でも、まさか本気で来るとは思わなかった。

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