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直接対決 ⑪

「……っ」 一織は何かを言おうと口を開きかけたが、結局何も言わずにそのまま俯いてしまった。前髪の隙間から見える顔は真っ赤に染まり、唇はきつく噛み締められている。 「ごめんな、一織……。俺、露木君の事が好きなんだ。多分、その気持ちはずっと変わらない」 俺は一織に聞こえるようにはっきりと告げた。その言葉に、一織は一瞬肩をピクリと揺らしたが顔を上げる事は無く俯いたまま。 「そっか……。悔しいなぁ……。俺、告白して断られた事なんて一度もなかったのに」 「一織の場合は、告白される側だろ?」 「どっちも一緒だって。知らなかった……。フラれるってこんなに胸が痛いんだ」 一織は自嘲気味に小さく笑うと、そのまま黙り込んでしまった。重苦しい沈黙が俺たち二人の間に流れる。 「……俺、戻るから」 暫くしてから、ようやく顔を上げた一織は切なげに笑ってみせた。必死に笑顔を張り付かせようとしているけれど、堪えきれない涙が一織の頬を流れ落ちる。 「ごめ……俺、もう行くね」 一織は立ち上がると足早にその場を立ち去った。呼び止める間も無かった。 その背中が見えなくなるまで見送りながら、俺は複雑な気持ちになっていた。 「俺も、そろそろ戻ろうかな」 一人になった公園で、ポツリと呟くと思わず深い溜息が洩れた。あの一織を泣かせてしまったという罪悪感が胸を締め付ける。 俺だって知らなかった。告白を断るのがこんなにも複雑な気分になるものだったなんて。 露木君は今、何処に居るんだろう? まだ、女子達に捕まっているのだろうか? 賢人に呼びに行かせたから、すぐ来てくれるかと思って通学途中に必ず通る公園を選んだのに。 「……大丈夫。俺は、露木君を信じてるから」 露木君に連絡をしてみようとスマホを取り出すと、一件のメッセージが届いていた。差出人は露木君のお母さん。 「やば、すっかり忘れてた……」 正直、あの人とはあまり会いたくない。でも、会わないわけにはいかないような気がして、震える手でスマホを操作して連絡を入れた。

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