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直接対決【露木SIDE】③

「露木君。行こうか」 「うん。……母さん。ずっと援助してきたけど、もう無理だ。彼に手を出すなら自分も容赦しないから。環に紹介してもらった弁護士頼って後は自分でなんとかしなよ。 金輪際僕と環には関わらないでくれ」 「な! 何勝手な事ばっかり言ってるのよっ! 親の面倒を見るのは子供の義務でしょっ!」 母さんは顔を真っ赤にして怒りを露にする。でも、そんな母さんに僕は冷たい視線を向けて言った。 「僕の事なんてずっと放置だったくせに……。今更、母親面するなよ」 「っ!」 恐ろしく腹から低い声が出た。自分でもこんな声が出るんだなと、妙な感心をしてしまう。 母さんはびくりと身体を震わせるとそのまま言葉を失い黙り込む。その隙に僕は環の手を引いてその場を後にした。 背後ではまだ母さんがヒステリックな声を上げていたみたいだけれど、それに構ってやる義務はない。 あんな自分勝手な奴より、環の方がずっと大事だから。 「ごめん」 暫くして、僕の耳に申し訳なさそうな環の声が飛び込んで来た。その声にハッと我に返る。 「え? なんで、環が謝るのさ」 「あの人に会う前に、連絡しようか迷ったんだ。結果的に露木君に嫌な思いをさせちゃったんじゃないかと思って」 「そんなの……環が気にするような事じゃないよ。元々、あの人とは縁を切ろうと思っていたし、それが少し早くなったってだけの話だから」 「でも……」 環は何か言いたげに口籠るが、それ以上は何も言わずに黙り込んでしまう。 その沈黙が逆に居心地悪くて、僕は別の話題を切り出す事にした。 「……オープンテラスのあの席、あれ、わざとあそこを選んだんだろ?」 「へっ? あぁ、うん」 突然話が変わったことに環は一瞬目を丸くさせたが、すぐに気を取り直して小さく頷いた。 こんな天気の悪い日に、テラス席を敢えて選んだのは、きっと僕が見つけやすいようにとの配慮だろう。

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