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直接対決【露木SIDE】④

「露木君に可笑しな誤解されたら困るから。それに、あそこに居たら見つけてくれるかと思ったんだ。 露木君のお母さんを悪くは言いたくないけど、正直ちょっと苦手だったし。俺に媚び売ったって何にもならないのに。でも、まさかあんなに早く来るなんて思って無かった」 「そりゃそうだよ。環が親し気にイケメンと出て行ったなんて聞かされて、僕がジッとしてられるわけ無いじゃないか。それなのに、一緒に居たのは彼じゃなくて僕の母さんだし、もう何が何だか」 藤丸が母さんを一織クンと間違えたとは考えにくい。だけど、近くに彼の姿は見当たらなかったし、藤丸がわざわざそんな嘘を言うとも思えない。 「あぁ、そういやそうだったね。一織も居たにはいたんだけどさ。その件はもう片付いたから」 「片付いたって……」 「ちゃんと、一織の事は幼馴染にしか思えない。ってちゃんと伝えたんだ。まぁ、納得してくれたかはわからないけど」 環は自嘲気味に笑うと溜息を吐き出す。その様子からして、僕の為に一織クンの告白を断ったんだと安易に予想が出来た。 「ずっと一緒に居たのに、一織にあんな思いさせてただなんてぜんっぜん気付かなかった。鈍感が過ぎるよなぁ俺。でも、露木君の事が無かったとしても、アイツの気持ちに応えてやれたかって言うと、正直微妙だったと思う。一織は大事な幼馴染で親友だけど、恋愛対象として見れるか?って聞かれるとちょっと違う気がするし」 環は困った表情を浮かべながら、それでも何処か吹っ切れたようにも見えた。 一織クンの事は正直あまりよく知らないけれど、環に好意を寄せている事だけは初対面の時からハッキリと伝わっていたし、なによりも環に対しての接し方が他とは違う。 それは幼馴染だからという枠を越えてる気がする。でも、当の本人がそれに全く気付いてなかったなんて。不憫過ぎるというかなんというか。 「そっか。環は僕の事大好きだもんな」 「……っ、な、何を突然……っ」 環は動揺したように目を見開くと顔を真っ赤にして俯いた。その反応が可愛くて思わず口元が綻ぶ。 やっぱり環は可愛い。僕が知らない所で他の男を好きにならないでくれて、本当に良かったと心の底から思った。 「そう言えば、環って何時から僕の事が好きだったの?」 ふと湧いた疑問。告白自体は僕の方が先だったけれど、環はいつから僕の事を好きでいてくれたんだろう? 「え!? な、なんで急にそんな事聞くのさっ」 僕の問いに、環は更に動揺したように目を泳がせる。 最初は僕の気持ちに応えてくれたんだと思った。 だけど、チラリと見えたパソコンの背景画像や、部屋に置いてある青バラを持ったクマのぬいぐるみを見る限りもしかしたら、僕が環を認識するよりもっとずっと前から、彼は僕の事が好きだったんじゃないか? なんて、都合のいい考えまで浮かんで来てしまう。 「だって、僕の気持ちに応えてくれたのは嬉しいけど、いつから僕に対してそういう感情を持ってくれてたのかなって気になって」 「……それは……っ、その……」 環は顔を赤くして口籠った。そして暫く視線を彷徨わせた後、覚悟を決めたように小さく息を吐き出した。

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