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キミと一緒に ⑧
「ねぇ、今度さ。一緒に莉々子さんの所にいかない? バラがちゃんと咲いた写真見せたいんだ。きっと、凄く喜んでくれるはずだから」
「いいね。丁度あそこに売ってあったバラのジャムも切れそうだったんだ」
莉々子さんの所で作っていたのバラジャムは絶品。あれを食べたら他のジャムなんて食べられたもんじゃない。丁度もうそろそろ買い足したいなと思っていたところだった。
「じゃあ、次の休みにでも行こうか」
「うん。楽しみだな。あ、でも、その前に……」
「え?」
露木君はノヴァーリスから手を離して、俺の方に向き直る。そして、そのままゆっくりと近付いて来たかと思うと、俺の肩を掴んで壁に押し付けた。
「ちょ……っ、なに? なんで俺は壁ドンされてるわけ!?」
「なんでって、そんなの決まってるじゃないか」
露木君は俺の耳元に顔を寄せると、低く甘い声で囁く。
「さっきの続き。まだ、全然足りないよ」
ムードも何もない誘い方に呆れつつも、満更じゃない俺がいたりする。
「露木君って、ほんっと、そういう所あるよね……」
「また、苗字で呼んだ。無理やりキスするって言ったろ?」
不満そうな声と共に引き寄せられたまま右手で顎を掴まれる。
「っ、ちょっ待っ!」
文句を言おうとして開いた唇に、するりと彼の舌が滑り込んできてあっという間に口内を犯されていく。
「んん……っ、はっ」
何度も角度を変えて舌先でなぞられ、深く舌を吸われる。熱っぽい吐息と共に、くちゅりと濡れた音が響いて一旦落ち着いていた筈の欲望が、露木君との触れ合いによって簡単に目覚め始める。
皮膚が敏感になっていて、露木君が触れた場所が熱を持ったように熱くなるのがわかった。
「はぁ……っ」
ゆっくりと離れていく唇。名残惜しいと思うなんて、俺も相当キてる。でも、まだ足りない。もっと欲しい。
それなのに膝が笑って立っていられそうになかった。
「あ……っ」
堪らずその場にへたり込むと、露木君は俺に合わせてしゃがみ込んで、俺の目を覗き込んだ。
「ははっ、キスだけで腰砕けになるとか、ほんっと可愛い」
「う、五月蠅いなっ! 誰のせいだと」
「うん、僕の所為。だから責任取ってあげる」
言うが早いか露木君は俺の身体を軽々と抱き上げると、そのままベッドルームへと運んでいく。
「今夜は寝かせてあげれないかも」
「……今夜もだろ?」
俺が精一杯の嫌味を込めて言うと、露木君は苦笑いを溢した。
「いや?」
「……っ、本気で嫌だったら、暴れまくってでも拒否するってば」
そう、本気で嫌だったら。でも、俺はそれをしなかった。だから、つまりはそう言う事だ。
俺の返事に、露木君は満足そうに笑って俺の身体をベッドへと降ろした。
「ねぇ、環」
「な、なに?」
「愛してるよ」
「っ! ……俺も」
俺だって、愛してる。その想いを伝えるように彼の首に腕を回して引き寄せてキスをした。
もう、何も怖くない。だって、俺には露木君がいるから。
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