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第2話 暗雲低迷
康太は「何かあったとしても烈は起きる………オレはそれを信じている!
1000年続く果てを繋げる宗右衛門が……こんな所で倒れる訳ねぇからな!」と涙を浮かべながら言う
皇帝閻魔は優しく康太を抱き締めると
「ならば私は天界へ行くとします!
あの子の事です、きっとあの闘いの記録は遺しているでしょうから、私はそれを見て来ます!
そして烈が目醒めない時の布石を打つつもりです
君の息子は私も護ると決めているのです!
安静に寝てない、伴侶殿どうか炎帝を宜しくお願い致しますね!」と言い康太を離した
榊原は「この命に変えても絶対に護り通します!」との言葉を聞くと、皇帝閻魔は姿を消した
康太は父を見送り……
「親父殿に心配かけちまったな………」と呟いた
榊原は「僕達は動けないので………仕方ありません
それより………素戔嗚殿達大丈夫なのですかね?」と案じて言う
その時 廊下をペタペタと小さな足音を立てて走る音を聞き
康太は「あ、レイのヤツ病室抜け出しやがった!」とボヤいた
榊原が立ち上がり「ならば僕が連れ戻します!」と言い病室のドアを開けると、神威がレイを捕まえていた
「こらこらまだ怪我も治癒してねぇのに走ったらあかんがな!」とボヤく
「はなちぇ!じぃしゃん きてりゅもん!」
レイがじぃしゃんと言うのは素戔嗚尊の事だった
清隆はじぃーじ、玲香はばぁーば、真矢はばぁたん、清四郎はじぃたん
呼び方が違うのだ
神威は「親父殿……やはり魔界も襲われたのか………」と呟いた
ならば天馬戦争の覇者は怪我人となり病院に来ているのだろう
神威はレイを抱っこすると
「ならば儂が見て来よう!」と言い、久遠に会いに治療室へと向かった
途中、ICUを覗き烈を見て、治療室へと向かう
神威が治療室へ向かうと、治療を終えた素戔嗚尊達は「傷が引っ付くまで大人しく寝てろ!」と謂れていた
久遠は神威を見て「おめぇ!腕も怪我してるんだからレイを抱っこするな!」と怒った
神威はレイを下に下ろした
するとレイは素戔嗚尊の所へ走って
「じぃしゃん、れちゅがぁ………」と泣いた
素戔嗚尊はレイを抱き締めて
「烈………どうかしたのか?」と問い掛けた
久遠は「烈とトキは刃を貫通させた怪我をして意識不明で来たんだよ!
流石とトキまで手が回らず、トキは康太が八雲でも動かして治療してると思う!
で、烈はICUに入ってる
意識かねぇからな………後………鋭い刃が烈の内臓の1ミリ先を貫通していた
まぁ心臓一突きじゃなかったから、今は様子見だよ!
まぁ何時も烈は己が怪我をすると1週間以上寝る事があるから……バイタルを整え管理して1週間は様子を見るつもりでいる!」と言った
素戔嗚尊は「トキも………怪我したのか………」とショックを隠せずにいた
久遠は「怪我が治ったら見舞いに行かれよ!
でも今は己を治す事に集中してくれ!」と言った
素戔嗚尊と建御雷神と弥勒と羅刹天は個室に閉じ込められた
その日から治療の日々を送る事になった
天界へ向かった皇帝閻魔は天空神 三神との御目通りを許され、迎賓館で逢う事になった
皇帝閻魔は「烈なれば何処かに記録を遺しているのでは?」と切り出した
ゼウスは「良い読みだ!皇帝閻魔殿!
貴殿とは天地創造の頃にお会いして以来ですな!
烈は準備万端、全て整え世界会議の場を創り上げた!が、今後の対策の為に敢えて天井は弄らず、各所にカメラを備え、カメラばかりではない
その映像を仙界におる賢人と賢者に転送し、全てにおいて今後の対策を考えた
そして人の世にも転送し、閣下は議事録として残すと申されていたと伝えられた
烈は準備万端、各方面に今回の映像を渡し、対策を取るように手筈を整えていたと言う訳だ
まぁ相応の対価は求められた故、対価分以上の働きはしてくれた、と言う事だ!」と笑い言う
「対価?其れは何なんですか?」と皇帝閻魔は尋ねた
ウラノスは「ヤツが今回の仕事を引き受ける対価は2つ、飛鳥井の兄達を隠し気配を消す事と、新居の土地を魔が踏み込めぬ領域にする
その2つじゃよ!
で、飛鳥井の烈の兄達は………天界で儂らが匿っているのだが………烈が意識不明なれば人の世に戻しても大丈夫なのか?と話しておったのじゃよ……」と困った顔をして言った
皇帝閻魔は「なれば私が烈の兄達を家に戻すとします!」と言った
アトラスは「烈に取って兄達の存在は絶対の存在なのじゃな………」と言った
皇帝閻魔は苦笑して
「烈がそんなに甘い存在でないのは………貴方達が一番知っているのではないですか?
飛鳥井と言う家の果てが歪まぬ為の布石
飛鳥井の烈の兄達のポジションは既に決まっている………1000年続く果てへ導くのが、飛鳥井宗右衛門の務めだから……一つでも欠かせぬ存在なのであろう………
でなくば家族全員匿ってくれと言うで在ろうて!
本当に食えない所は………我が子に似てるとつくづく想うのですよ………」と苦笑する
ゼウスは「其れでも烈の中にいるヘルメースは何時だって穏やかな顔をして笑っている
幸せなのであろう………家族といる事が………」と言う
「そうですね、烈は本当に両親と家族を愛してますからね!」
愛しているからこそ、誰よりも非情になり、誰よりも厳しく道を正さねばならない存在なのだ
ウラノスは「破滅はゼウスが相殺した、少しでも早く目が醒める様にガブリエルに癒しの水を毎日飲ませに行かせる事にする!」と言うとアトラスが
「烈が目を醒まし動ける様になったなら、冥府で各国の守護神だけを招いて会議を開きたい
宜しいですか?」と問い掛けた
「冥府………何時でも冥府に来て下さい!と言いたいですが………それは無理なのでは?
生半可な者が冥府に入れば………闇と化し……己を保つのは無理となります
ニブルヘイムやヘルメースと同化した烈、炎帝夫妻、hellの番人のオーディン位しか辿り着けはしないのでオススメは致しません!
せめて………賢人と賢者がいた仙郷辺りになさったらどうです?
あの地域はミストが濃くて邪の者は足を踏み込む事さえ出来はしない………」
ゼウスは「ならば賢人と賢者の弟子にお願いして場の確保をして貰う様に頑張って目を醒ませるとしますか!」と言い笑う
ガブリエルが「用意出来ました!」と言うと
ゼウスは「其れでは此方へ!」と言い世界会議の映像を見る為に別室へと向かった
康太と榊原は3日間、傷が開かない様に安静にしていた
切り裂かれた傷が中々引っ付かなくて、康太も榊原も聡一郎も神威も………焦っていた
金龍と黒龍も今回の傷は中々治癒しなかった
龍だから早く治癒すると思っていたのに………
やはり漆黒のジャガーの爪には細工がしてあったのか………
閻魔も焦っていたが………傷が治癒せねば魔界へ還る事も叶わなかったからだ………
天界の世界会議には5日間の予定だった………
か、既に人の世に帰還して3日経っていた
天界で2日を過ごし、人の世に帰還して3日
明日には帰ると家族に言ってるのに……予定通りの帰還は無理だと把握した
康太達の傷は3日経っても血を滲ませ引っ付いてはいなかった
家族には予定が長引いて帰れなくなったと伝えた
烈もレイも同様、予定が延びたと伝えた
すると閣下から既に連絡が入っていて、飛鳥井の家族は難航した問題があって帰るのが遅くなる……と言うのを信じていた
早く傷を治して戻りたい想いは強くはなるが………中々治癒しなかった
久遠も傷を負った者達の治癒の悪さに何かを感じていた………
普通に治療してても、このままでは何かが邪魔してて治癒しないのでは?と考えるまでになり、ヨーコを呼び出し話をした
綺麗の研究所にいたIQテスト180超えしている天才ならば……何か解らないか?と思ったのだ
「ヨーコ、康太や他の者も同様で傷を負った者達の治癒が異常に悪いんだよ!
まず傷口が何時まで経っても閉じない
このままでは……傷は治らないし、テープで固定したとしてもまた開いての繰り返しとなる
こんな傷は人の領域を超えちまってるからな、お前に調べて欲しいんだよ!頼めるか?」
何時になく真剣な久遠だった
ヨーコは「解った、調べてみる!そして何か解決策がないか、実験してみる事にする!」と約束した
まずは原因解明
何が治癒の邪魔をしているか?
ヨーコはまずは検体の採取から始めた
康太達の傷口から細胞を集める事にした
研究所のスタッフを呼び出し、全員分採取する
そして綺麗の研究所へ行き、採取した傷口の細胞を培養して調べた
すると傷口に菌がいる事を発見した
マクロレベルの菌が治癒を邪魔しているのだと、久遠に電話した
久遠は『なら抗生物質とか何か菌を滅する手段はないのか?』と問い掛けた
ヨーコは「此れは……人智の範囲を超えてる気がする……少し待ってくれ、崑崙山にいる八仙とか謂う仙人に一度聞いてみる事にする!」と言い電話を切った
ヨーコは検体や資料をカバンに詰め込み、飛鳥井記念病院へ向かうと神威の病室を尋ねた
ヨーコは神威のベッドの前に立つと
「フィヨールド・洋子・ドストエススカヤ・ド・山本です
神威さん、私を崑崙山とか言う場に連れて行ってくれませんか?」と頼んだ
神威は「え?何で儂?」と不思議そうに尋ねた
「貴方が一番歩けそうなので頼みました………」
神威は納得した
傷さえ引っ付いて動ける様になれば、バリバリ健康な状態に戻れるのだ
神威は「うし!其れでは神の道を開くとしよう!」と言い呪文を唱え神の道を開いた
「毘沙、久遠に聞かれたらヨーコと崑崙山へ行ったと伝えてくれ!」
毘沙門天は止めても聞かないだろうから
「あいよ!」と見送った
神威はサクサクと神の道を歩いて行った
気丈なヨーコは顔色一つ変えず髑髏が並ぶ道を歩いて着いて来ていた
崑崙山に出ると八仙が「待っておったわい!」と言い出迎えてくれた
八仙の屋敷に行き話をする
ヨーコは献体から採取した傷口にいる微生物の写真付きの資料を出して
「傷口に治癒を邪魔する細菌がいるから傷が治らないのです!
こんな現象は人智を超えた話となるので、此処へ来させて貰いました!
この細菌を滅せねば永遠に傷は治りません!
引っ付いた様に見せ掛けても、直ぐに傷が開きまた縫わねばならなくなる
何度も繰り返せば………最悪そこから壊死して切断も考えねばならなくなる
なので対策を考えたいのです!」
と必死の形相で訴える
八仙は黙って資料を見て「皇帝閻魔、此れは………死滅は無理な話なのか?」と問い掛けた
皇帝閻魔は天界から帰り、崑崙山で八仙と話をしていたのだった
皇帝閻魔もその資料を手に取り………
「傷口に細菌………良くもまぁ小賢しい真似をしてくれますね!
ならば創世記のレイの水でも死滅は無理なんでしょうね………」と悔しそうに呟いた
八仙は「其処のおなごは桃源郷近くの賢人と賢者の元へ行き、実験をしてはくれぬか?」と言った
ヨーコは「実験はしても良い、だが最先端の研究道具がなきゃ……無理だと想う………」と呟いた
八仙は「桃源郷近くの場に烈も屋敷を構えた
この先何か在るか解らぬから実験はしないとならない、と何処かの研究施設バリの器具は揃っておるし、電子器具はソーラーパネルを設置して電気を溜めてあるから、ある程度の実験ならばその屋敷で出来るであろう!
我等も全力で協力する故、どうやったら菌を消滅させられるか?
主は実験してくれると助かる!」と言うとヨーコは
「時間が勿体ない、ならば直ぐに私をその場へ連れて行って下さい!」と言った
八仙は鳳凰を呼び寄せると
「この女性は烈の知り合いの女性である
此れから彼女には烈や閻魔の怪我の治癒の為に実験をして貰わねばならぬ!
だから彼女を桃源郷にある烈の屋敷までお連れしてくれ!」と頼んだ
鳳凰は了承しヨーコを乗せて桃源郷近くの烈の屋敷へ連れて行った
八仙は「大歳神、主は病院へ行き大人しく寝ておれ!」と叱り飛ばした
神威はトホホな気分で神の道を通り病室に戻った
ヨーコは八仙から、幾つかの治癒に特化したモノを渡され実験していた
細菌を殺せるモノを天界や冥府、そして地獄界からは元始天尊がやって来て中華圏の財力と人力と技術を使いヨーコと共に研究していた
そんな頃、レイは病室を抜け出し冥府の地下深くへ出向いていた
世界樹の根元にあるフヴェルゲルミルの泉まで行き、世界樹の葉っぱと花と実をちきり、籠に入れると、せっかく冥府に来ているのだし………
流石と素通りは失礼だと、皇帝閻魔に会いに行き挨拶をした
「皇帝閻魔、冥府を素通りして還るのもなんなのでご挨拶してから還ります!」と皇帝炎帝の屋敷に出向き、執事に案内され皇帝閻魔にご挨拶した
皇帝閻魔の前に現れたのは……ちっこい体をしたレイだった
レイは重そうな籠を床に置いてご挨拶した
皇帝閻魔は「何処へ行ってらしたのですか?」と尋ねた
レイはニブルヘイムの声で
「冥府の地下深くにある世界樹の根元へ行きました!フヴェルゲルミルの泉の水で清められた場なので、あの場所の世界樹は花を着けるのです!
花を着け実がなる場はフヴェルゲルミルの泉の前だけなので、其処へ行きました!
でも冥府を素通りして還るのは、烈の母上の両親に対して失礼なのでご挨拶したのですよ!」と話す
「烈は………まだ?」
「ええ、細菌が傷口の治りを妨害していると聞くので、世界樹の葉っぱと花と実を使い実験に使って貰おうと思ったのです!」
「そうですか、ならば此れから桃源郷近くの烈の屋敷に?」
「はい、此れから此れを差し入れに行きます!」
そう言いレイは重そうな籠を皇帝閻魔に見せた
今のレイはちっこいままだから、冥府の地下深くに来るのも体に負担が掛かっているのだろう……
しかも傷は治ってはいないと謂うならば尚更………
皇帝閻魔はちっこいレイが重そうに持っている籠を手にすると
「私も一緒に同行しよう!
皆の傷が早く治ってくれねば困るし、烈の意識が戻ってくれ………と、私だって願っているですから!」
「皇帝閻魔………」
「さぁ君も怪我をしているので、抱き上げて連れて行ってあげましょう!」
と言い皇帝閻魔はレイを抱き上げて、桃源郷近くにある賢人と賢者の屋敷へ向かった
桃源郷近くの烈の屋敷に差し掛かった時、屋敷の中から……
「痛いってば!!ぎょぇぇぇ!」と言う悲鳴が響き渡った
皇帝閻魔は慌てて屋敷の中へ入ると、ガブリエルの羽根を手にしたヨーコがいた
「何か神聖そうなのは全部試すしかねぇからな!」
と言いガブリエルの羽根を引っこ抜いたのだ
そして「髪とか皮膚とかも………」と言うから
ガブリエルは涙を浮かべ
「烈に飲ませる癒しの水をもぎ取られて、羽根も毟り取られたのですよ?
これ以上は嫌です!勘弁して下さい!」
と言い逃げ出して天高く飛んて行ってしまった
ヨーコは「本当に根性がないだな!」とボヤいた
そしてレイの姿を見ると「レイ!まだ傷は治ってはいないのに!」と心配した
皇帝閻魔が「此れを使って実験して下さい!
レイが怪我をしているのに無理して取って来たモノですから!」と言い渡す
ニブルヘイムは「世界樹の葉っぱと花と実です!
世界を浄化している世界樹は菌には滅法強いので、是非にもと思い取りに行きました
けど…………少し疲れました………」と言いバタッと倒れた
ラルゴはレイを抱き留めると奥の部屋へ連れて行って寝かせた
ヨーコはそれを受け取るとシャーレを取り出し細かく間分割かに切って分けた
そして分けたモノを遠心分離機で成分だけ抽出してみたり、そのまま使ったりして実験を重ねた
やはり世界樹の葉も花も実も、菌を弱らせる効力 を持つが………殲滅することは不可能で……あと一歩だった
ヨーコは寝る間も惜しんで実験していた
皇帝閻魔はレイに添い寝してやり、そのまま寝てしまって、ラルゴはタオルケットみたいなモノを掛けてやった
根を詰めるヨーコにラルゴは冷たい水を手渡した
それを受け取り飲むと、冷たくて美味しかった
だが、此処は僻地な仙郷、冷蔵庫なんて便利なモノは無かった筈じゃあ?
「この水は?」
「この水は、レイが引いてくれたのだよ!
創世記の泉から湧き出る水を、裏に引いてくれたから、何とかこの場で生活する事が出来ているのだよ!」
「創世記の泉の水………確か黒い涙を流させる水ですよね?」
「そうじゃ!」
「このお水、汲んで来て下さい!」
ラルゴは水を汲んで来てやった
ヨーコはそれを使い実験を始めた
八仙がくれた漢方も放り込み、レイがくれた世界樹の葉も花も実も使い、ガブリエルの羽根も、そして医学界の叡智とも言われる抗生物質を混ぜ込み調合し顕微鏡で検体に垂らして確認
成分と使用した分量を事細かくチェックして書いて調合
面倒臭い研究を只管始める
そして何とか菌を死滅出来るのを作り、すやすや寝ているレイの包帯を外して傷に塗る
レイはあまりの痛さに飛び起きて
「ぎょぇぇぇぇ!いたいにょぉ〜」と叫んだ
皇帝閻魔は飛び起きて「レイどうしました?」と心配して抱き締めた
しくしく泣くレイの手に、ヨーコはせっせと軟膏を塗り包帯を巻いた
そしてその傷を後で確かめて菌が死滅していたら、大量生産し塗りまくりに行かねば!と思っていた
ヨーコは少し経ってレイの包帯を外して、傷口を綿棒でゴシゴシする
「いたいよぉ〜」とレイが泣く
皇帝閻魔はその度にレイを慰めてあやした
「レイ、今度烈とレイを冥府の皇帝炎帝の屋敷にご招待しますからね!だから泣き止んで!」
「おいちぃーにょ ありゅ?」
「執事に命じて作らせておきます!」
「わぁーい!」
お子様とは現金なモノである!
ヨーコはレイの傷口から菌が消えているのを確かめると、綺麗に包帯を巻きなおしてやった
「レイ、すまぬ、主を実験台にしてしまい………
でも此れで烈の傷も皆の傷も治る
当然レイの傷も治って行くであろうからな!」と謂う
皇帝閻魔は「それは凄い、ならば出来上がったら貴女をお連れ致しましょう!」と約束した
ヨーコは書き記した分量を測り、軟膏を大量生産し始めた
賢人と賢者も手伝いサクサクと手分けして進めていく
すると、全員分の軟膏が出来上がり、ヨーコはそれをレイが持って来た籠に入れた
そして支度をすると賢人と賢者に
「ありがとう!世話になった!」と礼を言った
ラルゴは「また何かあったら来るが良い!」と送り出してやる
皇帝閻魔はヨーコとレイを傍に寄せると呪文を唱えた
するとフワッと体が浮遊する感覚がして、目映い光りに包まれた
目も開けられないでいると力強い腕が支えてくれていた
暫くすると、やっと地面に足を着けていられる感覚がしてヨーコは目を開けた
目を開けると飛鳥井記念病院の中だった
受付に面会を告げて皇帝閻魔とレイと共にヨーコは病室へと向かう
まずはエレベーター上がって直ぐの病室から軟膏を塗る事にした
この部屋には素戔嗚尊、建御雷神、弥勒、羅刹天が入院していた
当然ドアをノックして入って来た御人に四人は驚愕していた
皇帝閻魔は「ヨーコが傷を治す薬を寝ずに作ってくれました!なのでこれから塗ります!」と告げると素戔嗚尊の寝巻きを脱がし、傷口の包帯を解いた
傷口に軟膏を塗ると、素戔嗚尊は「グワッ!!痛い薬なのだな!」とあまりの痛みに謂う!
皇帝閻魔は「この薬を塗ると傷口にいる細菌が消えたので我慢して下さい!
レイはもう軟膏を塗られ……傷口から菌が消えたのを確認されてますから…………」と言う
レイは素戔嗚尊に抱き着き「いたかったにょ〜」と訴えた
「此れは大人でもかなり痛いからな
レイは頑張ったのじゃな!」と頭を撫でられ、レイはニコッと笑った
ヨーコは弥勒の寝巻きを脱がせ、包帯を解いて傷口に軟膏を塗る
「ぎょぇぇぇぇ!」と悲鳴が上がる
素戔嗚尊を塗り終わり包帯を巻くと、次は羅刹天に軟膏を塗った
羅刹天も「ぎょぇぇぇぇぇぃ!」と悲鳴を上げた
建御雷神も叫びまくっていたが、何とか軟膏を塗り終わると、素戔嗚尊は
「その薬………トキにも塗っては貰えぬか?」と問い掛けた
ヨーコは「了解した!康太に聞いて何処にいるか確かめて塗りに行くと約束しよう!」と言ってくれ、素戔嗚尊は安堵した
ヨーコはその調子で隣の病室の者達も塗りまくった
閻魔、司命 司録も悲鳴を上げて、軟膏の痛みに叫んだ
金龍と黒龍、神威と毘沙門天は他の個室から聞こえて来る悲鳴に「何が起こったんだよ………」と戦々恐々だった
そして自分達の個室にヨーコと皇帝閻魔とレイが来て………やっと悲鳴の元凶がコイツ等だと理解した
サクサク寝巻きを脱がし、包帯を解き軟膏を塗る
やはり「ぎょぇぇぇぇぇ!」とその痛みに悲鳴が上がる
それでも容赦なく軟膏を塗りまくった
レイが「これれ にゃおるわよ!」と言うと毘沙門天はレイを抱き締めた
ヨーコは全員軟膏を塗ると「次行くぞ!」と言い次の個室へ
聞こえて来る悲鳴が近付いて来るのを理解した榊原は、ドアをノックされる前にドアを開けて待っていた
皇帝閻魔は「やんちゃな子が冥府の地下まで行って世界樹の葉っぱと花と実を摘んで籠に入れていたので、送って来ました!」と言った
康太は無茶したレイの手を掴み引っ張ると
「無茶するな、お前だって怪我してるのによぉ」と言いレイを抱き締めた
「らって……みんにゃ………いたいんらもん……
こーたんも……いおたんもいたいんらもん……」
榊原は自分達の事も考えてくれ無茶したのかと想うと………堪らなくなった
その間もヨーコは康太の寝巻きを脱がして、包帯を解いて軟膏を塗った
やはり康太も「ぎょぇぇぇぇぇ!」とあまりの痛みに叫んだ
「此れ塗ったら痛さのあまり烈も飛び起きるな、こりゃ!」
と康太が謂うとレイは「にゃら ぎゃんびゃる!」と言った
康太は結構切り裂かれていたから、塗る度に叫びまくっていた
皇帝閻魔が榊原の傷に軟膏を塗る
榊原は「いっ!!!!たいです!!」とやはり叫んだ
傷口にたっぷりと軟膏を塗りまくる
「皇帝閻魔、僕に恨みとか……ないですよね?
我が子を取られた……恨みとかないですよね?」
と聞きたくなる程に……痛かった
皇帝閻魔は笑って「恨みなどないよ!伴侶殿!」と言う
「すみません、痛過ぎて………勘繰ってしまいました!」
榊原が謂うと皇帝閻魔は榊原を優しく抱き締めた
「君には感謝しても足らない程だよ………
この子に我が子を与えてくれた
其れが炎帝を成長させ母させてくれた
そんな君に恨みなどある筈などないよ!」
「皇帝閻魔殿………」
「でもねレイも泣き叫ぶ程の痛みなのは解るよ!」
皇帝閻魔が謂うと康太は「レイに塗ったのかよ!」と叫んだ
大人でも叫ぶ程の痛みの塗り薬を、レイに使ったのか…………
ヨーコは「悪かった………でも菌がなくなるか?
解らなかったからレイに使ってしまった………
レイの傷の菌が消えたから、量産して皆に持って来れたのだ!」と説明した
榊原は「御苦労でしたねヨーコ、皆の為に研究したのでしょ?本当にありがとう!」と礼を述べた
ヨーコは「素戔嗚殿からトキに塗って欲しいと頼まれた
そのトキとか謂うのは何処にいる?」と問い掛けた
「トキは八雲の病院で預かって貰ってる!
後で一生を呼ぶから、連れて行って貰ってくれ!」
「了解した、それじゃ烈に塗って来るわ!」
榊原は「本当に烈に塗るのですか?」と尋ねた
ヨーコは「当たり前ではないか!烈の傷は今も治ってはいない………
人より皮膚の弱い烈だから治癒は遅い……
毎日大量の出血をしていると久遠が言っていた
だから治癒は最優先!
では、塗ってくるとする!」と言いナースコールの
ボタンを押した
『どうしました?』と声がするとヨーコは
「久遠先生を呼んで下さい!」と言った
「暫くお待ち下さい、院長が参ります!』と看護師が謂うと、ヨーコは久遠を待った
暫くすると久遠が顔を出した
「どうした?あれ?ヨーコ!頼んてたの出来たのかよ?」
久遠は驚きつつも、ヨーコがいるという意味を口にした
ヨーコは「私を烈のいるICUへ連れて行って下さい!」と言った
久遠は頷いてヨーコと共に病室を出て行った
ICUのドアを開けて、烈のベッドの前へヨーコを連れて行く
烈は色んな管に通され眠っていた
ヨーコは烈の寝巻きを捲り上げると今も血を滲ませている包帯を外して軟膏を塗り始めた
烈は「ぎょぇぇぇぇぇぇ!なに?なに?にゃんなのぉ〜!痛いにょぉー!」と叫んだ
久遠は辛子かトンガラシでも塗ってるのかと想い………
「おい!刺激物は駄目だぞ!」と言った
ヨーコは「傷口の細菌を殺す時痛みがあるが、その後レイの傷口から細菌は消えていた
そしてゆっくりと治癒し始めていた
嘘だと想うならレイの傷口を見ると良い!」と言った
烈は「にゃに?これは?目を醒ます為にょ劇薬かちら?」と呂律も怪しく訴える
久遠は烈に「お前は病院に運ばれて来た時から、ずっと意識不明だった……傷も酷く治らないから、常に血を流していたんだよ!」と病状を伝えた
烈は「トキたんも、刺されたのよ!きっと今も治らなくて……血が出てるのよ!」と訴えるとヨーコは
「大丈夫だ、この後トキにも薬を塗りに行くから!」と伝えた
久遠は「病室に移しても大丈夫そうだな?」と謂うと烈は頷いた
久遠はスタッフを呼ぶと、烈の体に刺さってる色んな管を外すと、個室へ運ぶ様に言った
ストレッチャーに乗せられ個室へ向かうと、レイが着いて来た
皇帝閻魔は「もう大丈夫だね?」と問うと、レイは頷いた
皇帝閻魔は姿を消した
烈は個室に運ばれ、その夜からおもゆが出され
おもゆを啜りながら「ご飯食べたいにゃ………」と呟いた
レイは烈が起きてくれて喜んでいた
ヨーコは一生に迎えに来て貰い、八雲の動物病院へと向かい、トキの串刺しになった傷に、軟膏を塗った
トキは「グェェェェェェェ!」と鳴いた
それでも塗る手を止めないから、痛くって
「痛過ぎる!烈ぅ〜素戔嗚殿ぉ〜ヘルメースぅ〜!」と名を呼び鳴いていた
八雲も止めようとは思ったが………ヨーコの放つ殺気に止める事は叶わなかった
ヨーコは「此れで怪我は治るであろうて!
傷口を殺菌がいて治癒の邪魔をしていたから、薬を作って来たんです!
菌を殺すので塗った時は痛みが凄いですが、追々治癒して行く筈です!」と言った
八雲の病院へ送っていった一生でさえ、大丈夫かよ?と心配した程だった
怪我人達は、傷口の治りを悪くしている細菌を消滅させた事により傷口が引っ付き始めていた
久遠もその治りの早さに脱帽する程だった
金龍と黒龍は龍だけあって、人の倍の速さで治癒して魔界へ帰還した
閻魔も何とか傷を治癒して司録と素戔嗚尊、建御雷神と共に魔界へと帰って行った
素戔嗚尊は魔界へ帰還する前に、聖鳥 朱鷺を見舞った
その時にはトキの怪我は治癒していたから、素戔嗚尊の姿を見るなり鳴いて
「なぁ素戔嗚殿ぉ〜魔界へ帰ろうよぉ〜
もぉ還りたい………還りたいよぉ〜」と鳴かれ、強請られたから、一緒に帰る事にした
毘沙門天も神威も退院する頃、榊原と康太も退院となった
レイは少し前に退院したから、入院しているのは烈だけとなった
烈の傷はやっと治癒し始めたが、皮膚が弱い烈だから完全に癒着するまでは、体力回復のリハビリに明け暮れて暮らした
そんな頃 烈の傷を知った有栖院翁の娘の麻理亜が、白馬の別荘を貸すから、その別荘で静養したらどう?との話をしてくれた
烈も中々傷が完治しなかったから、空気の美味い場所で静養したがった
でなくば………夏休みが終わってしまうから………
何処へも行けずに夏休みが終わるのは嫌だと久遠に訴えた
久遠は渋々退院を許可した
烈は退院したら有栖院家の別荘で夏休みを過ごすのよ!と、竜馬や【R&R】のメンバーに知らせた
すると烈達だけズルいと、強引に夏季休暇をもぎ取り、竜馬と兵藤と【R&R】のメンバーが倭の国へとやって来た
烈は神威に、空港に来たメンバーと竜馬と兵藤とを、別荘まで送ってくれないか?と頼んだ
すると神威は「儂らも其処で夏休みを過ごしても良いと謂うなら送ってるやるさ!」と条件を出して来た
「そんな条件出さなくても、夏季休暇に突入する日の夜明けに飛鳥井を出て白馬に向かう予定なのね!
だから一緒に神野達も乗せて来てね、って声かける気だったのよ!」と烈は言った
神威は大喜びで空港まで竜馬、兵藤、【R&R】のメンバーを向かいに行き、白馬へと送り届けてやった
神威は夏休みは白馬に行くと、神野達にも声は掛けた
すると神野達も大喜びして同行する!と言って来たのだった
そんな夏休みの計画を入院中に立て、退院したら家族に話すつもりでいた
そして烈はかなり強引に退院して、裏の飛鳥井の家へと帰って行った
久遠に毎日消毒に行くと約束して、帰ったのだった
翔達は世界会議の後、皇帝閻魔に連れられ飛鳥井の家に戻っていた
天界にいた時は、天空神やガブリエルが翔達に身を守る色んな術やアイテムを授けてくれた
とても美しい世界で匿われていたが………やはり翔も流生も音弥も太陽も大空も、飛鳥井の家族のいる場所が大好きだと思った
とても美しい世界にいても、家族のいない場所ならば…………それは意味をなさないのだと想った
家族が好き、父と母の仲間も好き
やはり自分の弟やちっこいのが大好きなのだ
だからこそ、飛鳥井の家に戻された時、兄達は病院の裏の家に帰り康太と榊原と烈とレイを、其処で待とうよ!と訴えた
清隆や玲香、瑛太や京香はそれを了承した
そして一生や聡一郎、隼人、慎一も了承したから、病院裏の飛鳥井の家に帰っていたのだった
世界会議の閉廷後、唐沢は閣下と共に裏皇居の方に転送され帰されたが………烈が気になって飛鳥井の家に戻り過ごしていた
家族は烈達が世界会議に参加している事を知らなかった
何かの用事で留守にしている、とだけ知らされただけだった
康太と榊原 烈とレイが何やら大変な思いをしている事は感じていたが……
だが家族はそんな事は一切顔には出さすに留守を護っているのだった
唐沢はそんな絆の強い家族を見せられ……言葉もなかった
康太と榊原が家に帰って来た
が、烈は還っては来なかった
両親に弟は何処にいるの?と問いかけても教えては貰えなかった
何も話せない時、両親は何も言わないのを知っているから………
そんな時は烈の帰りを待つしかなかった
そして烈は退院して裏の飛鳥井の家へと帰って来た
肩から覗く包帯を見れば………大変な思いをしたのを伺えられた
だが烈が久し振りに帰って来たのだ
家族は大盛りあがりだった
烈は毎日消毒に行き、落ちた体力を戻す為にリハビリをして会社へ出向いていた
宗右衛門の部屋には康太と榊原がやって来て
「もう時期飛鳥井は夏季休暇に突入しちまうからな!夏休みの話をしようぜ烈!」と言った
夏休み位は癒されたいオーラを全開で謂う
その気迫に烈はやられ………最高の夏休みの提案をした
康太はその提案に大満足で……夏休みに突入した
が…………その話は別の話で……………
飛鳥井建設は8月10日から18日までの夏季休業となった
夏季休業の期間 目一杯遊んだ飛鳥井の家族は日常に戻っていた
唐沢も夏季休業の間は、白馬の有栖院家の別荘で休暇を満喫した
烈は自分達のバスの後ろを知らない車が着けて来ていたと聞き、神野が撮った写メを暦也のPCに転送し調べてくれる様に頼んだ
暦也は直ぐ様調べて結果を報告した
残念な事に持ち主が解るモノは何一つなかった
ナンバープレートは盗品で、車も盗品だった為に、運転手の身元は解らなかった
烈は運転手が門倉仁志の可能性を口にすると、暦也は門倉の写真を早急に手に入れ、今はどうしてるか?調べると約束してくれた
夏季休暇が終わると、家族は帰り支度をして横浜へと戻った
その場に烈の姿はなかった
烈は家族が起きる前に有栖院家の別荘を出て、横浜に帰還していた
兵藤と竜馬と【R&R】のメンバー達も唐沢も、烈と共に一足先に帰る事にして別荘を後にしていた
烈は病院の裏の飛鳥井の家ではなく、家族も知らないマンションへと帰る事にした
今 探られたら家族が安心して住めないからだ!
唐沢と兵藤と竜馬と【R&R】のメンバーも、烈と共に来て、其処のマンションに一晩泊まり、翌日 イギリスへと帰還して行った
そして横浜に戻って来た次の日、約束通り唐沢は烈同伴で職場へ行く事になった
夏季休暇中に烈から「お盆過ぎたら唐ちゃんの職場に行くから!」と謂われていたのだった
「え?何故?」
「仕事ぶりを見なくっちゃ!
此れからは更に難解な事件が出て来るからね
美濃部一徳は再び姿を現し、難解な時間の序章を告げるわ………
それに門倉と謂う暴走族だった子が消えたのよ
悪用されてなきゃ良いけど………
後 それに大仏とか謂うヤツも絡んで来て、厄介な事態を引き起こすわよ!
そんな時、唐ちゃんだけ動けても仕方ないのよ!
何班かに分かれて情報収集出来て、尚且つ唐ちゃんの後継者になるべき存在を育てなきゃ!
今後は息も着かせぬノンストップで仕掛けてくるわよ!
それには絶対の結束力と単独でも動ける力が必要となるのよ!
ここいらでテコ入れしとかなきゃ、ボク等が大変になるのは目に見えてるし、頑張ってね唐ちゃん!」
そう言われ唐沢は……言葉もなかった
此れから難局に直面する前に大きなテコ入れをする気でいるのだ
唐沢はチーム力と謂う未知の世界へ行かされる不安を抱きつつも、逝くしかないと想った
烈は飛鳥井記念病院裏の自宅へ帰る事はなかった
メンバーや竜馬や兵藤がイギリスへ行くと、二人で暮らせるには十分の広さのマンションに移った
2DKのマンションは真新しく、備え付けの家具は生活するには困らないモノが揃っていた
「このマンションは家族も知らないマンションだから足が付く事はないわ!」と言った
烈はそんなマンションを幾つ所持して、いざと謂う時に備えているのだと知った
日常は綺麗好きな烈が掃除と洗濯をするから、困る事はなかった
食事は神威の事務所のスタッフが来て、入れ代わり立ち代わり世話を焼いてくれていた
が、如何せん秘密裏に暮らしているのだ、食事はスタッフが作ってくるのを、チンして食べる……
そんな感じだった
表立った行動などは出来ないから、仕方がないのだが…………
朝 烈は唐沢の自家用車に乗り職場へと向かう
職場へ現れた唐沢の姿に「班長、まだ休暇中なのでは?」と問い掛けた
唐沢は苦笑して「まだ休暇中だけど少し顔を出したんだよ!」と言い内閣調査室へと入って行った
内閣調査室には幾つかの班があり、皆役割の違う仕事を任されていた
唐沢は怪奇現象、超常現象、人外的現象等など、人知の領域を超えた分野を扱う為の班となっていた
烈は何も言わずに調査室へと入ると、適当に椅子に座った
「班長、どうしたら良いてしょうか?」と班の班員が唐沢に指示を乞う
烈はそんな光景を黙って見ていた
調査室の男性班員が「班長、あの子は飛鳥井烈君なのでは?」と問い掛けた
唐沢はそれには答えなかった
烈はノートパソコンを取り出すと
「唐沢、名簿を!そして名簿を渡したら自己紹介させて!」と言った
唐沢は烈の指示に従い唐沢班の名簿を烈に渡した
そして「皆 自己紹介を頼む!」と言った
皆 何なんだ?此れは仕事に役立つのかよ?
と不平不満を浮かべながら自己紹介をした
烈はジャミングの機械を作動すると、超音波と電磁波を混ぜた機械も作動させた
そしてダメ押しに雷石を地面に叩き付けた
目映い光りに包まれ、見た目が開けていられない程だった
唐沢の班の班員の子らは何とか耐えて踏ん張っていた
…………が、調査室の天井からボトボトと気持ちの悪い虫が堕ちて来た
キャー!と悲鳴が響く
「やはり時空虫いたわね!」と謂うと唐沢は
「知っていたのか?」と問い掛けた
「唐沢が休む少し前に連絡が混線していたからね
そんな芸当が打てるのは時空虫しかいないじゃない!」
唐沢は言葉もなかった
「クーたん、ボクには焼く芸当は打てないけど、どうしようか?」
するとクーは烈の胸ポケットから出て来て
「俺が時空を切り裂くから、其処の社員に一箇所に集めさせろ!
そしたらお前は消滅の言霊を放て!」と言った
烈は「了解!なら唐沢は班員に箒と塵取り持たせて虫を一箇所に集めさせて!」と指示を出した
唐沢は班員に「箒と塵取りを持って虫を一箇所に集めてくれ!」と指示を出した
皆、嫌々だけど箒と塵取りを持ち待機した
やはりその中で不服に思う奴も当然出て来るのだった
「何で!我等は掃除に来てる訳ではない!」と訴えた
烈はそんな言葉を鼻で笑い宗右衛門の声で
「班長の指示に従えぬのならば、転属されてはどうだ?
主等は人智を超える仕事をしている、一つの疑心暗鬼が連携を崩す!
そして崩された連携が内部分裂をさせる
まさに……相手の思う壺じゃな!」と高笑いした
班員は悔しそうに唇を噛み締め黙った
唐沢は顔色を変えた
烈は唇の端を吊り上げて嗤うと
「クーたん やっちゃって!」と言った
クーは時空を切り裂くと………時空虫がボトボト堕ちて来た
ウヨウヨと堕ちる虫は前とは違い
堕ちた瞬間、口から糸を吐いた
「え?進化系の時空虫なの!」と叫んだ
時空虫は大きな繭を造り………一つに固まった
烈は天空を仰ぐと
「ガブたん、どう謂う事?」とボヤいた
すると暫くしてガブリエルが天使数人と共に姿を現した
唐沢班の班員は唖然となり…………動く事さえ忘れた様に………目の前に現れた神々しい天使を見ていた
天使…………見えちゃって良いんだろうか?
此処は見えないフリとかしないと駄目だろうか?
皆 其々に内心ではそんな事を考えていた
ガブリエルは「天空神は今 現在 この地球(ほし)に時空虫がいる事が……脅威だと申されました
創造神がこの蒼い地球(ほし)からは時空虫は消滅させ不可侵の領域を張られた
なのに……いるのは……細工され創造神が消す事が敵わなかった虫しかないと結論付けられた
なので、この虫は回収します!
クー、もう残っていないか、探って下さい!」と言った
クーは時空の裂け目に顔を突っ込み、残ってる時空虫を掻き出した
「あ~もぉ~!」と嫌々掻き出していた
ボトボト堕ちた時空虫は繭を吐き出し一つに塊まって行く……
烈はサコッシュから除菌とウェットティッシュを取り出すと、役目を終えたクーの手を除菌して、綺麗に拭いてやった
そして「還ったらお風呂ね、お風呂から上がったらドライヤーで乾かしてあげるからね!」と謂うと、何とかご機嫌が戻っていた
そして烈はサコッシュから折り畳んだ風呂敷みたいなのを取り出すと
「ガブたん 此れで包んで天界に持って行って!
でないと、天界へ行く途中も危険だし、天空神の前で自爆とかするかもよ?」と謂うとガブリエルはその風呂敷みたいなのを受け取り広げた
薄いビニールみたいなのは畳 1畳半はゆうにあるモノで、ガブリエルは繭をその上に乗せると包んで部下に持たせた
「其れでは烈、また報告に伺います!」と言いガブリエルやその他の天使は姿を消した
烈は椅子に座ると「先ずは天井の補強ね!
唐沢、綺麗の研究所へ頼んでいたのを、生意気な反論した者に取りに行かせて!」と言った
反論した班員は顔を引き攣らせ
「我等は自由に意見も言えないのか?」と文句を言った
宗右衛門は嗤い「意見じゃと?主が垂れたのは不満じゃろ?」と吐き捨てた
「不平不満の何がいけないんだよ!」
「誰も不平不満を垂れるなとは申してはおらぬ!
じゃが主は今、何処にいて、何をしているか?
解っておるのか?
此処は主の仕事場であろうて!
そして主は仕事をしている!
此れから皆で一致団結して仕事をしようとしている時に不平不満?
笑わせるな!そんな事をしたら指揮が下がると解ってやっておるならば、主の……身元調査を言い付けるしかあるまいて!
唐沢、あやつの身元調査を始められよ!
ついでに、この班全員の身元調査も調査された方が良いかも………じゃな!」
唐沢は不敵に嗤うと
「烈がそう言うと思い既に二つの機関に頼み調査はして貰っているんだよ!
そしてその結果が翁の別荘にいる時に終わったと報告が入っている!
俺は秘密裏にその調査の報告を受け取り………目を通して燃やした!」と報告した
宗右衛門は身も凍る程の冷たい瞳で嗤うと
「ならば儂も本領発揮せねばな!
儂は飛鳥井宗右衛門!
人の運気を詠み定めを知り人を導く存在で在る!
儂が詠んだ結果と唐沢が受けた報告書と合えば即刻更迭じゃな!
では副業でキャバ嬢してる者
複数の詐欺紛いのねずみ講している者
借金をチャラにして貰う変わりに、唐沢の内部情報を渡してる者
他の班のスパイして唐沢の仕事が上手く行かない様に足を引っ張ってる者
こんなのが中にいたら大変じゃな!」
と吐き捨てた
ズバッと謂われた班員は顔を青褪めさせていた
唐沢は受け取った情報と合っていたのか?何も言わなかった
宗右衛門は淡々と班員の名を呼び上げた
「岩永美里、中野栄治、志村恭吾、佐藤茉那、今村結愛、高野湊斗
今 申し付けた班員は本日付けで更迭となる!
此れは既に総理の承認を得ておる!」
唐沢は「そうですか!ならば今 宗右衛門殿が謂われた班員は本日付けで更迭を申し付ける!」と言い渡した
宗右衛門は一人の人間を射抜い
「あぁそうじゃった、唐沢の足を引っ張っておった班は解散させた!
足を引っ張り、自分の班の功績を重ねて偉ぶる奴などいらぬからな!
2つの班が解体された、今後は調査報告と人選をして班を作り直す
其れも唐沢の仕事になったからな、儂が軌道に乗せるまでは手助けしてやるとする!」
と力強い援護射撃を受け、唐沢は動き出した
烈に色んな世界を見せて貰った
そして色んな世界で生きる存在を知った
多分 もっと色んな世界の存在がいて、その者達は必死に世界の安寧の為に働いているのだ
我等はその一柱としての死命を全うせねばならない
唐沢の意識改革の成果が、やっと今花開いた
部下との程良い距離
そして信頼を築き
絆を結ぶ
我等は市民の安全と生活を守り平和を維持する一隅としての死命を全うすべき存在なのだから!
唐沢は素早く動いた
私生活に不安要素を抱く班員の更迭は決定ならば、引導を渡してやる事こそが……
自分の仕事だと取り掛かった
情け容赦のない手腕でそれを淡々とやり過ごす
が、今の唐沢はそれだけじゃなかった
唐沢は更迭させた班員に
「残念だよ……更迭された後の処遇は内閣府が決められる!
今後はどんな仕事をしようとも、誠実で謀る行為はしない事を願う!」と最後の言葉を掛けた
唐沢の言葉が終わると同時に、ドアが開き班全体を管轄する内閣調査室の管理をする内閣府の役人が何人か現れた
役人は烈の前に並ぶと深々と頭を下げ
「内閣総理大臣からの伝令を受けまして馳せ参じました!
彼等の処分処遇は我等が精査致しまして決めさせて戴きます!
引き続き宗右衛門殿には、人選及び班の作成をお願い致します!
無論、宿泊される施設は此方がご用意致しました!」と告げた
宗右衛門は「其れでは手筈通り、この室内の強化、そして起点となるべく場の強化に着手し、最強のチームを作る所存だとお伝え下され!」と謂うと
「はっ!必ずやお伝え致します!
其れではお願い致します!」と言い名前を挙げた班員を引き連れて出て行った
烈は足を組み、唇の端を吊り上げて嗤い
「で、何か言いたい事はあるの?」と反抗的な班員に問い掛けた
男はグッと黙り……だが意地を見せた
「我等は駒ではない!」……と!
烈は「何、それ、バカにしてるの?」と笑って
「内閣調査室の職員は全員、国の為に動く駒じゃないの!
国の為に動き、市民の生活を守る為に動く駒!
なのに駒じゃないとか、笑えるわ!」と吐き捨てた
烈は立ち上がると「そんな莫迦要らないわ!」と揶揄して煽った
「お前みたいな子供に何故苦労されねばならない!」と男は叫んだ
「お前が莫迦だからよ!西園寺維弦!」
西園寺維弦と呼ばれた男は……唖然となり烈を見た
自己紹介では鈴木維弦と名乗った
なのに…………何故………
「西園寺家当主 西園寺康誠氏は総てを宗右衛門殿に託します!との書状まで寄越した!」
と言いサコッシュから書状の巻物を取りだすと、紐を解きサッと広げて見せた
【 飛鳥井宗右衛門殿
確かに西園寺維弦は我が直系の者になります!
今は国の為の仕事を生業とし、一族の為にも働いておりますが、未熟者故見劣り致すとは想います
何卒 殺さず生かして宗右衛門殿が御育てして戴きたい!
ビシバシ鍛え上げて育てて、使える存在に仕上げて下さる事を願います
年季があけて一族の元へ還りました暁には押しも押されぬ存在に仕上がっている事を期待して、総てを宗右衛門殿に託します!
何卒 何卒 御育てお願い致します!
西園寺家当主 西園寺康誠 】
と書かれていた
宗右衛門はガハハハハハハッと笑い飛ばし
「忠実な番犬は要らぬ!
だけど牙剥く駄犬も要らぬ!
己の力で動き、己の思考で皆を導く指導者ならば、育てても良いと国司に申した事はある
先ずは唐沢のサポートを出来る男に育てようと出向いて参ったのじゃよ!」と言われれば……
西園寺維弦は深々と頭を下げた
生意気な態度を謝罪せねばならなかった
国司と呼ぶのは………前世の記憶を持つものだけ……
しかも相当親しい者だけしか呼べぬ名だった
「其れでは時間が惜しい!
ビシバシ行くとしようぞ!」
宗右衛門は唐沢に内閣調査室全体の名簿を要求した
後 宮内庁の控えの職員の名簿
政府要人をサポートする役人の名簿まで持って越させた
ある程度の人選をした後、調整に入る
飛鳥井宗右衛門が直々に出るとあって………内閣調査室は怒涛の時間を送る事になった
連日連夜 会議を開く
二度とこの様な体たらくな仕事は許されないからだ!
宮内庁の人事のお偉いさん、内閣総理大臣と補佐をしている堂嶋正義、ついてに閣下までもが参加した会議を連日開き、人事をどうするか?で話し合う
そして唐沢の班の人間に限らず、内閣調査室の人間は意識改革を行われ、連日テキストに基づいた勉強会が開かれた
そして心理テストを行い、そのテストは直ぐ様封筒に入れられジェラルミンケースに保存され、政府要人がイギリスへ飛びロード・ペンバートン教授へ届けられ、【R&R】のメンバーにも届けられる事になった
集計を3日でしてね!と烈からの手紙を入れ集計をして貰う
その結果は烈のPCに送られて来る事になっていた
集計結果が出る3日間は、スパルタでこの蒼い地球(ほし)の成り立ち、そして種族を話した
そして人外な案件を担う者の死命として、この地球(ほし)に存在する総ての話をする
烈の話は…………何処か夢物語の様に…理解し難かった
が、「この前貴方達が見た天使みたいな存在いたでしょ?皆見えていたと想うのよ!
あの方はね大天使ガブリエル殿よ
天界には天空神 三神と天使達が存在するのよ
その天使達の一番偉い存在がガブリエル殿よ!
其の内……皆を魔界へご案内してあげるわ!
ボクがいられる時間はそんなに長くはない
だから最終日の週末、魔界へ連れて行ってあげるわ!それまでに神の道を使うから、神の道の許可と、魔界へ行くならば閻魔大魔王様の許可が必要だから許可を取っておくわ!
其れ等の許可を最終日の週末までに取っておくから、行きましょうね
そしたら一度自分達の世界は会議室だけで片付けられる領域じゃなって知ると事になる良い機会なのよ!
しかも人の世と魔界は時間軸と違う!
魔界に一日泊まれば、人の世に還ったら2日は経ってる事になるのよ
だから週末に行くのよ、そして帰ったら週明けになってるから、貴方達はブッチギリで仕事に突入するのよ!」
と烈は笑って言った
班員達は言葉もなく烈の言葉を聞いていた
「唐沢、ボクが還った後も定期的に報告書をお願いね!
それとは別で西園寺維弦の報告もお願いね!
使えないと言うならボクが叩き上げるプログラム組むから!」
烈が言うと唐沢は笑って「了解した!」と言った
少しの休憩の雑談を交えて、また人選を繰り返す
彼等の飲料水は総てレイの創世記の水を飲ませていた
朝、仕事場に来るとウォーターサーバーの水を内閣調査室の職員総てが飲まねばならない
闇に染まってないか、また闇に染まらぬ為に創世記の泉の水と変えてもらい運ばせているのだった
体内の浄化と意識改革
その2つを同時に行い叩き込んでいく
一分一秒時間を惜しんで叩き上げられる講義は既に始まっていた
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