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第3話 眼光炯炯 ❶
内閣調査室は既に身元を調査され者を基準に基づいて人員の入れ替えをして始動させる事になった
大規模なテコ入れと謂う事もあり、人材は宮内庁、総理府等など、既存の仕事をしている以外の、使えそうな人材を徹底的に調べ上げて面接をする、を繰り返していた
唐沢の班の班員達は、その面接の会場で面接の光景を見ていた
子供なのに、大人顔負けで斬り込んでいく飛鳥井烈を見ていた
彼は情け容赦のない人材を要求し、各部署は泣く泣く優秀な人材を提供する事にした
その姿たるや堂々としているのに………
休憩時間、唐沢が烈の服を脱がし久遠に謂われた通りに包帯の交換をする様子を見ていると……
まだまだ傷は治っていなくて………血を滲ませていた
堂嶋は烈の傷を見て「治りが悪いのか?」と問い掛けた
「破滅の御剣で刺されたからね、中々治らないのよ………」とボヤく
「天界での世界会議の時の傷だろ?
その時の議事録は上がって来ているから目を通したから知っている…………」
「んとにね、クソ野郎自ら出向きやがって、破滅の御剣でボクとトキたんを串刺しにしやがったのよ!今考えても腹が立つ!!」
「あまり無茶しないでくれ………議事録を見れば自分を囮にした事位は解るよ!」
「囮にしたのはヤツの足が義足だと知る為よ
後 創造神に弱点を視させる為でもあったのよ
まぁ本体か偽物かは解らないけどね
その目に触れさせる事が必要だったからね!」
堂嶋は烈の頭を撫で撫でした
唐沢は手当を終えると、烈の服を着せた
「ねぇ正義ちゃん………ボクにお肉を食べさせて!
唐ちゃんもボクもお肉食べてないからカサカサなのよ!」と訴えた
唐沢も、うんうん!と頷いていた
堂嶋は「ならば今夜は焼き肉に行くとするかい?」と謂う
烈は「お肉ぅ〜!」と叫んだ
唐沢は「この件が片付くまで烈と俺は用意された旅館で寝泊まりしてるんだけど………精進料理かよ?と謂う………とてもヘルシーな料理しか食ってないんだよ!」と謂う
「お肉………ないのよね」
「だな、まぁ烈がヘルシーなの所望したから肉が出ねぇんだけどな!」
「あら、そんな事謂うのね唐ちゃん!
ボクだってヘルシーなの所望したけど、毎日肉に置き換えた豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか………湯葉だとか………飽きちゃったのよ!」
「俺だって豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか……湯葉はもう沢山なんだよ!」
二人は仲良く兄弟喧嘩みたいなのを始めた
言ってる事は豆腐だとか………ばかりで………西園寺維弦は仕方なく
「班長、豆腐ばかり食べてるのは解りましたから!」と宥める様に謂うと、二人から同時にキッと睨まれた
「維弦も明日から豆腐が食べたいって、唐ちゃん!」
烈の意地の悪い仕返しに遭い、維弦は「なっ!!」と唖然となった
唐沢はニャッと笑うと「そうか、そうか、お前等も豆腐料理ってのが気になるんだな!
よし!全員お泊りして良いか聞いてやるな!
了解して貰ったら、お前達も豆腐料理の仲間入りだ!」と言い旅館に電話を掛けた
旅館側は人数が増える分には対応出来るから大丈夫だと言ってくれた
そしてダメ押し「うちの班の奴等は、そちらの豆腐料理が食べたいと謂うので毎日豆腐料理でお願いします!」と言った
【なっ!!!】
班員や人材要員として連れられて来た者達は唖然としてボヤいた
烈は嗤っていた
就業時間を迎え、皆で焼き肉屋へと向かう
焼き肉を奢って貰えるからと、食べ放題の焼き肉を予約していたのだった
何処までも抜け目のない烈に、堂嶋は約束通り焼き肉を奢ってやった………
皆で食べに来てお支払いになると、やはりかなりの金額を叩き出していた
ただ予想より多くて………ビックリだけど………
烈が「他の者の食事はボクが出すから大丈夫よ!」と言った
堂嶋は「全員の支払いしても大丈夫だぞ?」と謂う
「唐ちゃん会計は別で伝票だして貰って!」
と謂うと唐沢は烈と堂嶋と唐沢、3人の伝票と班員達全員の伝票を分けてくれと頼むと、店の方は快く分けて精算してくれ、唐沢は2枚の伝票を持って烈に渡した
烈は唐沢にカードを渡すと「此れで支払って来てね!」と頼んだ
堂嶋は「なら俺の分はこのカードで頼む!」とちゃっかり唐沢に頼む
唐沢は2枚のカードを持ち支払いへ向かった
烈は「それよりも面倒臭い事になっちゃってるわね……」
と烈は携帯をポチポチしていた
堂嶋は「え??何がだ??」と問い掛けた
烈は携帯から顔を上げると、立ち上がり堂嶋の横に行き携帯を見せ
「ねぇ正義ちゃん、ボクね最近は此処スィーツにハマってるのよ!
とても美味しそうじゃない?
今度連れて行って欲しかったのよ!」と子供らしく可愛く言い
正義の耳元に小声で「画面を見て合わせてね!
正義ちゃん、ボク達後を着けられてるのよ!
きっとボクの方の尾行だろうけど、正義ちゃんと焼き肉行く程に親しいと想われたら………飛び火しないか心配なのよ………」と言いカメラを作動させ、後を着いて来ている男を見せた
男は………焼肉屋に一人で来ていた
別に焼肉屋に一人で来ていても不思議ではないが、正義の方を見ながらカメラを作動させている動きは…………着けられているのが解った
「正義ちゃん ユキちゃんを隠すのよ!」
「え?何処へ………」
「ならば、母しゃんに連絡入れて動いて貰うしかないわね!
ユキちゃんは母しゃんに頼むわ!
正義ちゃんは身辺警護を増やして対応して!
くれぐれも警護着けすに歩かない様にね!」
「了解した………気を付けるよ」と堂嶋は返事をした
烈は堂嶋から離れると
「ねっ!此処のスィーツ美味しそうでしょ!」と謂い自分の席に戻った
「本当に美味そうだな!」と話を合わせた
烈は携帯で何やらポチポチしていると唐沢が支払いを終わらせ戻って来た
烈と堂嶋にカードと明細書を渡してデザートを食べる
それから他愛もない話をして、烈は何やら待つ様にテーブルに置いた携帯の画面を見ながら話をしていた
ピロンと何やら通知が入ると
「それではお開きね!」と謂うと烈は立ち上がり店の外へと向かった
堂嶋と唐沢、班員達もゾロゾロと出て店の外に出た
焼肉屋の前には大きなバスが停まっていた
バスの扉が開くと烈は「皆走って乗るのよ!」と言った
皆 走ってバスに乗るとドアが閉まり走り出した
唐沢が「烈がまだ!」と謂う
皆も心配しているのに、無情にもバスは走って去って行く………
かなり走って焼肉屋から離れた時、皆は気づいてはいなかったが、バスの最後部の座席に座っていた康太が顔を出した
「アイツなら大丈夫だ!」と謂うと唐沢と堂嶋は驚いた顔をして「「康太!!」」と名を呼んだ
榊原は「烈にはニックとケントとリックが着いてます!なので大丈夫です!
まぁ烈ならば………SP必要ない程ですがね……」と言った
康太は堂嶋に「烈からラインを貰い、神威の事務所のスタッフを直ぐに動かし雪哉は隠くす事にした!
少し事態が落ち着くまで、出ては来られねぇ!
お前が狙われているのか?
唐沢が狙われているのか?
まぁ烈が狙われる確率の方が高いだろうけどな………
真相が掴めねぇから迂闊な事は出来ねぇし、用心に越した事はねぇんだよ
しかも尾行してるのは、武闘派崩れみたいな奴だからな、ヤバい事だけは伝えとく!
唐沢がいて、正義がいるなら、諸共狙う奴ならば、美味しい状況なのは確かだからな、警戒したんだよ」と言った
唐沢は「飛鳥井の家族や翔達は大丈夫なのか?」と問い掛けた
「家族は大丈夫だし、翔達は白馬から還った後からずっと菩提寺にいる!
事態が安定しねぇと出られねぇからな!」
かなりスピードを上げて走っていたバスは、大きな道を外れ脇道に入り走り出した
相手は仕掛けるのにチャンスと想う事だろう………
バスは………かなりスピードを落とし………物凄い霧の中を走っていた
「あ~もぉ~こうも霧深くちゃ、何処を走ってるか解らないじゃないですか!」と運転手が叫んだ
辺りを見渡せば雲の中?と勘違いする程に濃い霧が出ていた
座席の一番前に座ってる奴が
「仕方がねぇじゃねぇか!
後続車がかなりしつこく近寄って来たりしてるから、迷いの森へご招待したんじゃねぇかよ!」とボヤいた
唐沢は「神威かよ?」と呟いた
神威は「バス停めろよ、霧を払って来てやる!
ついでに後ろの尾行のヤツも捕まえてやる!」と謂うとバスは路肩に停まった
すると神威はマサカリを担ぐと、思いっきり強く放り投げた
マサカリがグルグルと回り、霧を払う
霧が一瞬で晴れると、神威は地底から根を伸ばし、後続車の車の中にいる男達を拘束した
グルグル巻きにして路肩に放る
康太は「お〜その男達はバスの荷物置き場に乗せといてくれ!後で正義が地元の警官に引き渡してくれるだろうからな!」と謂うから一生と慎一はグルグル巻きにされた男達をバスの横にある荷物置き場に乗せた
堂嶋は「飛鳥井記念病院の近くの警察署で降ろしてくれ!俺は尾行していた奴を警察に引き渡して、護衛を呼び帰るとする!」と言った
神威と一生と慎一がバスに乗ると唐沢が泊まってる旅館へ向かい唐沢と班員全員バスから降ろした
康太は「烈はもう寝てる!後3日で軌道に乗せるつもりだ!だから唐沢頑張れ!」と言い後ろ手にヒラヒラ手を振った
バスが走り出すと唐沢は班員達と旅館へ入った
バスは警察署で堂嶋と蔦でぐるぐる巻きの犯人を降ろして飛鳥井記念病院の一階の駐車場へと入って行った
旅館へやって来た内閣調査室の職員達は、女性と男性に分かれて大部屋で寝る事になった
唐沢が部屋に戻ると、烈は既に寝ていた
部屋には烈の護衛のケントがいた
皆 その日から旅館での共同生活が始まった
烈と唐沢が言う豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか………湯葉だとか、と謂う料理を目の当たりにする
夕飯は皆でその料理を食べる
初日はヘルシーですね!
と想いつつも………朝も豆腐だとか………で、夕飯も豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか………湯葉だとかの料理を出されると……流石にカサカサになる
班員達はやっと豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか……湯葉だとかの意味を理解した
流石とかさかさになるし……食べた気がしないし、早く腹が減る気がする…………
だが烈に許された日数は後僅か
それまでに人選を決めて、班を始動させねばならないのだ
それに伴い班の責任者も一掃した
唐沢の足を引っ張っていた班は全員更迭で、二度と内閣調査室の仕事は出来ない
公務員だから職まで追われる事はないから、何処かへ配属されるだろう……
が、特別公務員枠には戻れしない
その為の嫌がらせも入っていると、烈は想っていた
何時の世も悪足掻きする奴はいるのだ
そんな頃 暦也から『ホテルに部屋取れよ!』と連絡があった
烈はホテルに部屋を取ると、その部屋に暦也がやって来た
「あ~お前から依頼のあった門倉って奴、何処で何してるか?解ったぜ!」
と言いテーブルの上に書類を置いた
烈は門倉の顔を写メで撮ると、母にラインに添付して送信し
「この男、門倉で間違いないかしら?」と問い掛けた
暦也が撮影した門倉と、康太の知る門倉
同一人物なのか?
烈には解らないからだ
暫くして康太から『門倉で多分間違いない、だけど………何があったらそんなに窶れて人相も変えるんだ?』と聞く程に変わったのだろう………
『オレの知る門倉とかけ離れ過ぎてて…断定は出来ねぇけど、多分門倉だ!』
烈は康太に「母しゃん気になるならZoomにするから説明聞く?」と問い掛けた
康太は『あぁ、そうしてくれ、オレも聞きてぇからな!』と言った
烈はZoomで康太と繋ぎ暦也に説明させた
「烈から依頼を受けて調べた所、コイツ女に騙されて悲惨な生活を送っている
しかもコイツ高校の頃も従兄弟に騙されて真贋に喧嘩売ったんだろ?
学ばないのかね?今回もコイツは同じ事してる
嫌……犯罪に手を貸しているからな、それ以上になってる……
門倉仁志は飛鳥井建設に入社して半年で退職した!
奴は友達に紹介して貰った女と付き合い交際をスタートした
門倉は交際を始めた相手に惚れ込み、入れ揚げ貢ぎまくり、結婚してくれ!とプロポーズした
だが愛する女ってのが、詐欺師みてぇな女で、しかもその友人とグルで門倉から金を引っ張る為に近付いただけの女だった
親が物凄い借金をして蒸発したから、今は一人で細々と借金を返してる、と同情を誘いお涙頂戴の三文芝居をして騙してたんだよ!
まぁそんな三文芝居に引っ掛かり骨抜きにされ、惚れた女を支える為に門倉は会社を辞めた
借金返済の為に、金になる仕事を紹介して貰い危ない橋を何度も何度も渡っていた
下手したら警察沙汰に成る案件も幾つかある程、ブラックでキツくて辛い仕事をせっせやらされATMとして金を稼いでいる!
今 何処からの依頼の仕事なのか?までは見えては来ねぇけど、烈の後をまるでストーカーの様に着きまとい追いかけ回している
まぁ捨て駒の一つだな!要に!
それと、どう言う訳か城之内も門倉の事探っていたんだよ!
俺が気づいた時、城之内も俺の存在に気付いて接触して来やがった
俺は烈の依頼で探っていると話すと、城之内も烈の頼みで探っていると話して来た
そして門倉の捕獲は責任を持って協力すると言ってくれてる!
で、今夜にでも誘き出したいから、烈の情報を流してケントの車に烈に化けたクーを乗せて走ってくれるそうだから、こっちの準備は万端なんだ!
そしたら城之内が【仲間】を集めるそうだから、捕獲も早いと助かるんだがな!」
と全容を話した
康太は「なぁ……暦也………女を紹介したその友達っての例の従兄弟と何の関係もないのか?」と問い掛けた
暦也はニャッと嗤い
「流石 真贋!良い線突いて来るじゃねぇか!
アイツ等は組織的な結婚詐欺みたいなのをヤッてるんだよ!
金がある男は財力搾り取り、金のない男は門倉みたいに鉄砲玉みたいに死地に出向かせ使い捨ての駒にしてる!
無論 門倉をハメた従兄弟が主犯格だ!
そして門倉を騙す為に手間隙かけて、グループの男が友人になり、女を紹介した
あれ以来、門倉は従兄弟とは縁を切っている!
だから自分の生活に再び従兄弟が関わって来てるなんて想像もしてねぇだろう!
従兄弟が絡んでる案件には乗らねぇだろうし、従兄弟の息の掛かってる女は避けてるらしいから
なのに…………まさか自分がその従兄弟に再びハメられているとは………知らねぇんだろうな
んとに………女で身を窶すタイプの男だな!
俺はこの情報を警察庁のお偉いさんに売ったから、全員近い内に全員逮捕されるだろうさ!
門倉は被害者だが………やって来た事はかなりグレーゾーンだからな………どうするよ?烈……」
「門倉の周りに大仏武士いたかしら?」
烈が言うと康太が『大仏!!年末の時に上がった樹海に女を捨てたヤツか!』と叫んだ
「ボクねずっとその男を調べていたのよ
そしたら、何処からか門倉仁志の名が出て来て、門倉を調べて貰うと母しゃんにどうやら関係があると暦也が調べてくれたよ
ボクは顔も知らない奴は占えないからね………
地道に調べて行くしかないのよ!
その頃からボクの回りを付け回してる存在に気付いたのよ!
暦也に調べさせたら、ひょっとしたら門倉かも?と言われたから母しゃんに話をして盤上に上げさせてもらったのよ!」
暦也は「その大仏とか謂うの今は婿養子に出てる門倉ハメたヤツの名前だぜ?
その大仏とか謂うの奴は自分は結婚してるのに、結婚をチラつかせ女を自由にして、カモになる男の相手をさせ詐欺紛いの片棒を担がさせ、用が済んだら消してる
アイツの周りには何人もの女が消えている!
蕪村建設に勤めていたのは、女をカモるネームバリューが必要だったから……
会社が潰れる前には退職して姿を消していた
内閣調査室が稼働して動き始めたら、この資料を渡して逮捕させる気だ!
でねぇと消えた女達も浮かばれねぇだろ!」とボヤいた
康太は『門倉はまた従兄弟に…カモにされ……弄ばれたか………』と呟いた
暦也は「まっ、それが真実だ、この先は雇用主の判断に従うから、真贋だとて何を言われても聞けはしないので、そこんとこ宜しく!」と予防線を張る
康太は『宗右衛門が出てる事にオレは何も謂うつもりはねぇよ………しかも一度助けてやって………此れだからな………女を見る目がなさすぎ……情けない………だからオレは何一つ言う気はねぇ!』と言う
暦也は「それじゃ、俺は本格的に動くとする!」と言い部屋を出て行った
烈は「母しゃん………暦也には言ってなかったけど……ボクね門倉って奴に殺される運命らしかったのよ………
天界へ行く前にね、えんちゃんが…………星詠みの婆婆の予言を聞き、心配して来てくれたのよ…………
地獄界へ行っても狙われ、天界へ行っても狙われ、人の世にいたとしても狙われていたのよ
何処にいたとしても命を狙われるって………
そして人の世の殺し屋はその門倉仁志………炎帝と少しだけ縁の在る男だって……婆婆は予言した!
だからボクは門倉を調べていたのよ!
まぁ天空神がそんな状況を知って世界会議をゴリ押しで入れて来たんだけどね………
それで流れは変わったから門倉の動向を知る事が出来ているのよ!」と経緯を話した
『全方向から狙われていたのかよ?』
「そーみたいなのよ、でも天空神が流れを無理矢理変えてくれたから、その脅威はなくなったのよ
だからこそ、【今】内閣調査室の奴等を魔界へ連れて行く事が出来る様になったんだけどね
既に閻魔の許可は取ったし、神の道の許可も取ったから今週末は魔界へ行く事になったのよ!
そして様子を見て黒龍を連れて地獄界へ行かないとね!運命が………狂ってしまうからね………」
『烈…………門倉の命を助けようとしなくて良い!
オレの果ての歪みの帳尻を合わせなくて良い!
お前が傷付き苦しむ必要はねぇかんな!』
「母しゃん、ボクは別に自己犠牲でやってる訳ではないのよ
母しゃんの果ての狂いを直そうとなんて想ってないわよ!
それをしたら烏滸がましいわよ!
ボクは在るべきカタチになる様に凸凹道の石ころを排除して、炎帝の進むべき道が穏やかになる為にやってるだけだから!
まぁ門倉は罪に身を窶し過ぎたからね、庇うとかのレベルはどうに過ぎてるのよ!
この男が門倉だとしたら、依頼の出どころが解らない内は、正義ちゃんに飛び火したら困るから、ユキちゃんを隠しバスを呼んだのよ
バスが行った後はしつこくボクを尾行してい………
リックが邪魔をしつつケントが撮影をしてくれたから、顔も撮影出来た
母しゃんが門倉だと認めたならば、これでやっと運命も占えるってもんよ!
じゃ、母しゃんまたね!
来週には帰るからね!
そしたらお肉食べたいわ!
豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか湯葉だとかの食事は…………流石と飽きちゃうのよ……
もぉねボク………カサカサよ、この年で油分全てなくなっちゃったわ……」とボヤく
康太は榊原を見て「豆腐だとか豆腐だとか豆腐だとか湯葉だとか………って此れは飯か?」と尋ねた
榊原は苦笑して『ならば君が還ったら、焼肉でもしますか!野菜で包んで食べればヘルシーですしね!』と言い我が子を労った
烈は笑顔で手を振りZoomを終えた
Zoomを終えた康太は「馬鹿な奴………」と呟いた
榊原は門倉の所為で康太が肋骨を折った日の事を………忘れてはいなかった
本当なら許したくはなかった…………
だが悠太の為の布石だと謂れ溜飲を下げた
その布石も………思った程持たず悠太は拉致され暴行を加えられ命を落とし掛けた………
今想えば…………康太の果てはその頃から既に…狂い始めていたのかも知れない…………
榊原は「烈は………門倉をどうしますかね………」と問い掛けた
「罪に身を窶し過ぎた………と言ってたやんか………
裁かれるしかねぇんだよ……
何で同じ轍を踏むかな……愚か過ぎて………殴り飛ばしてやりてぇよ!」
「なら殴り飛ばしてやったら?どうです?」
「無理だろ?あの烈だぜ?
オレに合わせる訳ねぇやんか!
んなに優しくも、生易しい訳もねぇやんか!
門倉に殺される運命だって?
門倉程度の奴に烈が殺される訳ないかんな!
下手したら己の運命を捩じって、門倉が即死だろ………
どの道……もう止められねぇ………門倉は修羅の道へ行くしかねぇんだよ!」
「……………本当に………愚かですね………
飛鳥井で働かせて身に立つようにしてやったのに…………半年で辞めていたなんて………」
康太は果てを視て諦めた様に目を伏せ………そして切り替える様に顔を上げ
「それより伊織………内閣調査室の奴等御愁傷様だな………神の道を通って魔界へ行くんだろ?
…………腰抜かすモノなら、お前等はこれこら人外相手の仕事もしなきゃいけない現状なのよ!
己の世界だけ見てれば良い訳じゃないんだからね!と怒られそうだな………」と言った
「骸骨程度で腰を抜かすならば、僕だって蹴り飛ばしますよ!
でなければ、この先の仕事は辛いモノになりますからね、慣れねばなりません!」
「伊織………」
「何ですか?」
「やっぱお前は厳しい鬼だよな
お前と烈は似てるよ
烈はオレの破天荒な魂と伊織の厳しい鬼な所を引き継いだ更に上を行く鬼だって、皆が口を揃えて言うんだよな!」
「宗右衛門は遥か昔から鬼じゃないですか!
僕なんか時には、歯も立ちやしない程に鬼だったじゃないですか!」
「似てるよお前と烈は!」
「似てますよ、烈と君は!」
二人は顔を見合わせて笑った
我が子なのだ
愛する愛する、我が子なのだ!
康太は榊原の手を強く握り締めた
榊原も康太の手を強く強く握り締めた………
出来るなら………我が子がこれ以上傷付く事がありませんように………
そう願わずにはいられなかった
烈はZoomを終えるとホテルを後にした
ケントの車に乗り唐沢の元へ戻る
最終選別し、人選を決め、チームを決め、ある程度のカタチを作る
出来たてのチームはまだぎこちないが、これからはこのチームで動き難問を解決していかねばならないのだ!
烈は唐沢に部下を動かす手腕を叩き込み、徹底的に仕上げて行った
自分が動かずとも、部下を動かし目を光らせていくやり方をせねば、其の内唐沢は過労死しそうだから、チームで動くを徹底させた
何とかカタチになり始動出来る所まで見届け、堂嶋は、内閣総理大臣に「人選は滞りなく終了致しました!」と報告した
安曇は『ならば正義は即座に国会へ戻って来て下さい!解散総選挙になるかも知れません………』と連絡が入った
堂嶋は「烈、メンバーの選考は終わったから、俺は国会に戻るわ!」と伝えた
烈は皮肉に唇の端を吊り上げ
「解散総選挙になるからね、正義ちゃんも大変になるわね!
でもね、選挙演説は気を付けるのよ!
少し前に射殺された元総理の二の舞いになりたくないならば、身辺は相当警戒するのよ!」と言う
堂嶋は「何故、解散総選挙の事を?」と問い掛けた
堂嶋だってさっき総理から聞いて知ったと言うのに……
「安曇勝也の運気を詠めんだ時に、そろそろ選挙に突入するのも時間の問題だと詠んだのよ!
選挙の前に総裁選も控えている
総理の任期満了を迎える変革期なのよ
だからこそ、絶対に総理の椅子を死守せねばならなかった!
だから貴也を地獄に落としたのよ!
何人足りとも4期総理をやった安曇勝也の花道を穢す事は許しはしないし、させない!
和平に力を入れ、弱者を助け、国民の生活に目をやり対策を打った総理の名は永遠に刻まれる事になった!
正義ちゃん、だからねボクは魔界から還ったら、宗右衛門の着物着て国会に出向いてやるわ!
堂嶋正義の政治の花道を邪魔をする事は絶対に許しはしない!
それが布いてはこの倭の国の未来の礎になるのだからね!」
背筋が凍る笑みは…………康太と酷似して………
堂嶋は身を引き締めた
「では、私はこの辺で!
烈君………国会へ来られる日は事前に知らせてくれると助かる………」
「解ったわ、事前に連絡入れるわ!
台風が来るからね重装備で行くわ!」
「え?台風??」
「嵐を呼んだから、ボク!」
そう言う烈の髪の毛は風もないのに揺れていた
「特上級の勝機をボクの上に呼んだから!」
「烈……」
「では正義ちゃん、国会で逢いましょう!」
と言うと堂嶋は烈に深々と頭を下げて還って行った
金曜日までに全てを片付け、唐沢は部下を使う練習をして仕事をしていた
そして金曜日の仕事終わり、烈は
「此れでボクが介入出来る領域は終わりました!
今後 貴方達は班長を助け、時にはチームの枠を外れ切磋琢磨して行ってくれる事を願います!」と皆に告げた
チーム分けされた者達は、烈の言葉を聞き、今後はチームの一員として班長を助けて逝かねばならない!と腹を括った
「皆にはこの世界の仕組みを話したけど、理解は出来てないでしょ?
己の生活に程遠い世界の想像は中々着かない
でも、貴方達は今後、想定を遥かに超える者達の起こす事件を目の当たりにして、痛感させられ知る事になるでしょう
だから貴方達の想像がより具現化される様に、ボクは此れから貴方達を魔界へ招待する事にします
この経験がきっと貴方達の此れからの活動に現実味を与えてくれるでしょう!
此れからは最終決戦となるべく世界は………色んな妨害や、複雑になる人外の被害に遭遇する事も在るでしょう!
でもそれは世の中には、色んな種族や世界があるから当たり前なのだと知れたらと思い、閻魔大魔王様の許可を取りお連れする事が可能になりました!
此処は内閣調査室、皇居を中心とした結界の中に在る!
此処から神の道を開き、皆様を魔界へ御案内致します!」
と言うと烈は呪文を唱え神の道を開いた
「さぁ早く中へ!」と言うと唐沢は皆を神の道へと導き入れた
全員中へ入ると、烈は神の道を閉じた
そして漆黒の闇の中に立たされ……身動ぐ事さえ許されない空間に放り込まれ………班員達は……言葉もなく怯えていた
維弦が「こんなに暗くちゃ何処を歩いてるかさえ解らないし………はぐれないか不安だ!」と訴えた
烈は「仕方ないわね……なら、ボクにはエンジェルリングがあるからね、照らしてあげるわよ!
エンジェルリングよ!闇を切り裂き辺りを照らしなさい!」と言うと烈の頭上にはエンジェルリングが現れ辺りを照らした
烈は笑って「本当に便利よね!」と言った
唐沢は神聖なエンジェルリングをそんな懐中電灯バリに使って良いのか?と思った
烈にとったら、闇を祓い辺りを照らしてくれれば良い!そんな感じなのかも知れない……
辺りが明るくなれば………髑髏が両サイドに立ってる異様な光景に……皆「ヒッ!!」と怯えていた
唐沢は「なぁ烈、暗い方が良くないか?」と言った
「本当に我儘ね!さぁ歩きなさい!
髑髏位でつべこべ言うんじゃないわよ!」と言いスタスタ歩いて行ってしまう
班員達は光がなくなる方が怖くて慌てて烈の後を追った
暫く歩くと明るい出口が出て来た
皆は喜び勇んで出口へと走り、外に出た
神の道の外は明るかった
夕刻、神の道を通り魔界へ来たのに、何故か魔界はまだカヤカヤと明るかった
班員達はそんな事を想いつつも、髑髏の道を出られてホッと胸を撫で下ろし早足で辺りを見渡す
……其処は何も無い荒廃した砂漠みたいな所だった…
烈が出口から出て歩いて八仙の屋敷へ行こうとすると、宙をプカプカ歩いて八仙の一人が近づいて来た
八仙は「もう時期 黒龍が来るであろうて!」と言う
暫くすると漆黒の龍が近寄り
「烈、お待たせ!」と喋った
龍が………喋った
烈は「黒ちゃん、悪いわね!全員乗せて欲しいのよ!重いけどお願いね!」と頼む
黒龍は「烈の謂う事なら何でも聞いてやるから大丈夫だ!」と謂う
烈は「さぁ乗るのよ!歩いて魔界へ行くなら3日は掛かるから、そんな時間ないからね!」と謂う
皆 覚悟を決めて黒龍の背中へ乗った
烈も黒龍の背に乗ると「黒ちゃん、また鱗艶が増したわね!本当に綺麗な黒が出てるから、早くしないとね!」と言った
黒龍は嬉しそうに笑うと「ありがとうな、烈!」と礼を言った
こんな風に龍の姿を褒めてくれる存在はいない………
こんなに風に背中に乗って喜んでくれる存在なんていない……
自分が龍でいて………認めてくれる存在なんかいないと思っていた……
烈は黒龍の背中を撫でて「黒ちゃん大好きよ!」と言い皆に
「彼は黒龍、魔界の龍族の長をしている方なのよ!」と紹介した
龍族の長をハイヤー代わりにして良いの?
皆は想った
だが………黒ちゃん、烈、呼びの二人を見ればその親密さが伺えられた
閻魔庁まで黒龍は乗せて行くと、閻魔庁の女神像の前にいた者達は突然の黒龍の姿に………驚いていた
黒龍はそんなのは一切気にせず、人の姿になると烈達を閻魔の元へと案内する
閻魔の執務室のドアをノックすると、秘書官の司録がドアを開けた
銀色の長い髪をして漆黒の役務服を身に着けた司録は結構迫力があった
「閻魔大魔王様がお待ちだ!」と謂う
皆は招かれ執務室へ入って行くと……其処には和装の閻魔大魔王が待ち構えていた
閻魔は「本日は烈の招待客を迎えるので和装で気合を入れてみました!」と謂う
烈は「えんちゃん!格好いい!」と喜んだ
その場には素戔嗚尊もいて烈を抱き上げて、スリスリしていた
「じぃさん!傷は治った?」
「あぁ、烈は………まだの様だな…」と孫の背を撫でながら謂う
包帯の感触に素戔嗚尊は変わってあげたい想いに囚われる
「じぃさん、馬車を3台用意して皆を魔界へ案内してくれる?」
「あぁ、閻魔も手伝ってくれ用意は出来ておる!
さぁ黒いのも手伝って共にあないをするぞ!」
素戔嗚尊はそう言うと建御雷神と黒龍と共に内閣調査室の皆を連れて執務室を出て行った
烈は残り閻魔の前に座り
「えんちゃん、門倉………寿命は尽きてるの?」と問い掛けた
閻魔は「尽きてませんよ、彼の寿命も運命も我等は関与はしておりませんから…………」と答えた
「なら人としての寿命はあるのね………でもあまりにも罪に染まった人間を救う手立てなんかないわよね…………」
「その門倉とか謂う人間は脳は弄られてはいないのですか?」
「どうなんだろ?ボクと接点がないのよ………
今はストーカーの様に後を着けられてるけどね
直接関わってないから、なんとも言えないわ…」
「困りましたね………出来るならばその人間には近寄って欲しくはありませんけどね………」
星詠みの婆婆からの予言があった存在なのだ
本当ならば………近寄って欲しくなどないのだ
「ボクもね近寄りたくないけど……人の世に還ったら、暦也が捕縛してくれてるからね
合わないとならないのよ!」
「自爆の可能性はないんですか?」
「それも込みで調べないとだけど、クーたんもプーたんも今不在なのよね………」
そう言えば白い猫が肩に乗ってないではないか………
閻魔は「クーとプーはどうしたのですか?」と尋ねた
「クーたんとプーたんメンテナンスの為不在なのよ!
クーたんはボクの身代わりをして門倉を釣った後にメンテに入っちゃったのよ」
メンテナンス………そりゃ必要だろうけど………
閻魔は烈の言い草にクスッと笑って
「ならばメンテナンス後の御二方は期待出来ますね!」と言った
烈は閻魔を見て嬉しそうに笑い
「やっぱり、えんちゃんは母しゃんの兄上なのね!」と炎帝が言いそうな台詞に兄弟だと実感した
閻魔は顔を引き締めると
「閻魔庁の前のカフェの売上はかなり好調で、また新作を考えて欲しく思ってます!」と伝えた
「クロスと共に新作は考えてるのよ!
人の世のさつま芋に似たの考えてるのね!
それが成功したら幾つか新作が出る予定だけどね
中々思い通りに行かないのよね………」
魔界に戻って来た妖精達は、前より頑張って素戔嗚尊と共に畑の仕事に精を出してくれていた
魔界は前よりも活気付き、良い方向へ向かいつつ在った
「そう言えば、雷魚と掛け合わせした魚はどう?使えそうなの?」
「ええ、何種類か掛け合わせして色んな魚を養殖中です!」
「干物に出来そうな魚を見て、干物にしないとね!」
「干物ですか?楽しみです!
食堂のメニューが増えますね!
雷魚の煮付け定食は食堂で一番人気ですからね!」
「えんちゃん」
「はい!」
「来年、蓮華を戻すわよ!
その前に閻魔大魔王の妻として公の場に何度か連れて行くわ!」
「はい!今の蓮華ならば………私をなぎ倒してでも行く強さを持ってますからね
どんどん前へ出て働いて貰います!」
「雷帝は金龍と天龍、虹龍や四龍が人の世に戻るまで残り、勉強するから!
それは本人も納得しているから!
魔界へ還るならば役に立つ事を勉強して還ると言ってくれてるからね!」
「はい!今の倅なれば…………大丈夫でしょう!」
「えんちゃん………地獄界へ行かないとね」
「…………やはり逝きますか?」
「黒龍の運命が途絶えるのは許さない!
今はかなり鱗艶も良いし、漆黒度も上がってるのよ!この好機を逃せば……黒龍の果ては途絶えるわ
それはさせたくはないのよ………ボクは………」
「ならば私も腹を括りましょう!
共に逝きます!烈!」
烈は笑って「地獄界土産は何を貰おうかしら?」と謂う
「それは………見てから決めましょう!
さてと、私達は客人を饗す準備をせねばなりませんよ!泊まりは新しく出来上がった迎賓館で良いのですよね?」
「そうよ、此れからは魔界は他国の客人を逢える機会が多々とあるからね!
やっと出来上がった迎賓館でお出迎えしなきゃ!」
閻魔庁は魔界の中心となる建物だから、四龍の山の中央に在る山の中腹に建設された、西洋の城の様な建物だった
その閻魔庁の横に客人を饗す迎賓館を建てたのは、今後の情勢を鑑みて魔界での世界会議や視察も視野に入れての事だった
閻魔庁は一般に開かれた広間が在るが、迎賓館は一般の者は近寄る事さえ出来ない警戒された区域に建てられていた
今回の内閣調査室の面々の魔界訪問は、今後迎えねばならない迎賓館の機能を知る為でもあった
迎賓館の周りは鋭い柵で囲まれ、出入り口には護衛の衛兵が立っていた
彼等は金龍と黒龍の教える武道場で鍛え上げられた精鋭だった
槍を構え立つ衛兵は閻魔と烈を見ると敬礼し、招き入れた
閻魔は「素戔嗚殿が内閣調査室の人間を連れて参ります!くれぐれも粗相のない様にお願いしますね!」と謂うと衛兵は「了解致しました!」と答えた
迎賓館の中に入ると女神達がメイドの服を着て仕事をしていた
女神だとて遊んで暮らせると思うな!
天照大御神がそう言い迎賓館でメイドとして働かせ始めたのだった
烈のテキスト通りにマナーを叩き込み、指先の動作までもが美しい所作が出来る様に天照大御神が叩き込んだのだった
天照大御神は水を得た魚の様に厳しく時には菩薩の様に優しく、それはそれは烈の想いの儘に頑張ってくれたのだった
【女神の底力、女神の底意地、女神の美しさを見せるのじゃ!】
そう言われ給金を貰う以上は、天女の如く美しい女神の働きをする!
烈は迎賓館のドアを開けた瞬間、目に飛び込んで来たメイド達のお出迎えに、皇帝炎帝の屋敷のメイドを思い出していた
あそこの使用人は練度が高かった
だが迎賓館のメイドも流石天照大御神と言える程に練度の高い仕上がりだった
「流石あまちゃんね!」と烈は言った
閻魔は「今後は世界会議とか視野に入れるならば、料理人と食材がネックになりますかね」と謂う
天界の世界会議は結構豪勢な晩餐会があった
魔界で世界会議を開くとしたら?
やはり食材の乏しさと、料理人になるだろう……
烈は「世界会議の時の食材は人の世から調達してあるのよ!幾らなんでも天界の食べ物を食べさせる訳には行かないからね!
魔界で世界会議を開くならば、その時は人の食べ物は人の世で調達すれば良いのよ!
まぁ料理人は追々、誰か人の世に修行に行かせて習得させるしかないわね
それか人の世から連れて来れば良いわよ!
閣下とかに頼めば何とかなると想うわよ!」と楽観的に謂う
「そんなに簡単で良いんですかね?」
「良いのよ!考えてばかりいたらハゲるわよ!」
「ハゲたくないので………考えるのは止めます!」
閻魔はそう言い笑った
魔界を案内された内閣調査室の者達が素戔嗚尊に連れられて戻って来た
唐沢は烈を見つけるなり「烈!」と名を呼び傍にやって来た
烈は内閣調査室の皆に目を向け
「どうだった?魔界は?」と問い掛けた
維弦は「言葉なんてありませんよ!
魔界って聞くと凄い所を想像していたんですが………何も無いし、文明は皆無な世界に驚きました………
人種は豊富すぎ……明らかに人間みたいな人もいるのに…………鬼みたいなのも……人じゃないのもいる……
我等はこう言う種族を超えたモノを相手にせねばならないって事なのですか?
あぁ、魔界の者がどうこうじゃなく………
色んな種族や………人じゃないモノ……
そんな存在が我等の仕事に関係する
そう言いたいのですか?」と問い掛けた
烈は「半分当たってて、半々違うわ!
ボクは其処までの深読みは期待してなかったわ
魔界と謂う世界は、この蒼い地球(ほし)の一部にしか過ぎない!
何時か貴方達が唐沢と同じポジションになった時、そんな世界を知ってるか?知ってないか?で数歩違いが出て来るから見せる世界なのよ!
確かに人の世で悪さをする奴等もいる!
それは魔界のヤツか?と、聞かれたならば解らない、と答えるしかないわ
この蒼い地球(ほし)には地獄界、魔界、冥界、冥府、hellまだまだ沢山の死者の魂を管理する世界があるのよ!
そして其処にも属してない吸血鬼、妖怪、牙狼、狼男等など人の世に混じって生活してるモノもいる
それがこの蒼い地球(ほし)なのよ!
人外のモノの仕事が何故あるのか?
それを何故内閣調査室が極秘裏に処理せねばならぬのか?
貴方達は疑問に思わなかった?
何故国は………そんな機関を作ったのか?
それは多種多様な種族の坩堝だから線引きする為に貴方達が存在するのだと知って欲しかったのよ
今後………我等は最終決戦を迎えるに当たり多くの者が、血を流し死すかも知れない………
それは神だとして同じ事………
だけど我等は明日を迎える為に頑張っている者の為にも、明日を消す訳にはいかないのよ!
その為の第一歩が魔界を知る事だとボクは想ったのよ!」
こんな事を言われれば……言葉なんかなかった……
閻魔は「今宵はこの館でお休み下さい!魔界での体験が貴方達に良い体験として遺ればと思っております!」と言い笑みを浮かべ皆を見ると、迎賓館から出て行った
内閣調査室の皆は部屋へと案内され、各々の時間を過ごした後
心ばかりの晩餐を饗される事になっていた
夕焼けに染まる魔界はやっと夕方なのか?
でも仕事を終えて魔界に来たのに夕方なのは………違和感があった
それを言うなら崑崙山へ出た時、真昼の明るさなのを疑問に思うべきだったのだが……
そんな余裕などなかった
人の世の倍の長さの時間の流れを痛感する………
魔界の中心地を馬車で見て回った
人が居る…………と奇異な目で見て来る者もいれば、友好的な目で見て来る者もいた
何もされなかったのは常に素戔嗚尊と建御雷神が傍にいたからだ
黒龍も気を配り、傍にいてくれた
その鍛え上げた体は服の上からでも解る程に、逞しく護衛に徹し傍にいて目を光らせてくれていた
馬車で魔界を回る時、唐沢は素戔嗚尊と親しげに話していた
「トキの怪我は治ったのかよ?」と心配して問い掛けると、素戔嗚尊はにこやかに
「トキも破滅の御剣で刺されたから、中々完治はしておらぬな……
烈も………中々治らぬのだな………」
「アイツは無理するからな、中々治らねぇな
破滅の御剣ってのは、んなに厄介なモノなのかよ?」
「全てを破滅に導く剣じゃからな………普通の剣と違い呪いが濃い分相殺されたとしても治癒には時間が掛かるのであろう
神髄師が軟膏を作ってくれたから、それを塗ってやろうと思っているのじゃよ!」
「そうが、なら早く治ると良いな!」
素戔嗚尊は唐沢をまじまじ見ると
「元気な顔になったのじゃな!
そのまま己をコントロールして健康に気を使うのじゃぞ!
でなくば、過労でぶっ倒れて黄泉の旅路に出て魔界へ来る所じゃったからな!」と言った
唐沢は「え?俺死ぬ所だったのかよ?」と問い掛けた
「あのまま己を孤立させ追い込めば………破滅の明日へ向かうしかなかった……と烈は申しておった
何かをする時、必ずや深呼吸をして、己の手に余るならば、部下を使い仕事を熟す
それが出来たならば主はまだまだ先へと逝けるじゃろうて!」
そう言い素戔嗚尊は笑った
唐沢は言葉もなく、班員はその言葉を心に刻んだ
二度と班長を過労でぶっ倒れるまで酷使などしない…………と。
そうして多種多様な種族のいる世界を目の当たりにして………
我等が相手をするのはこんな………世界の中にいる異形のモノなのだろう………と痛感する
そんな想いを噛み締め迎賓館へとやって来たのだった
迎賓館での時間は穏やかな楽しい時間となった
そして部屋で眠り……朝を迎えた
その日は朝から魔界の工場見学が入っていた
働く姿も見て欲しくて、工場見学を入れたのだった
工場見学をして、畑に行き魔界の野菜や果物を見て貰う
皆は魔界の野菜や果物の大きさに……唖然としていた
西瓜みたいな果物がバランスボールよりデカい………言葉もなかった
素戔嗚尊はタロウとクロウに大きな包丁を渡して、デカスイカを切らせた
それを皆に振る舞う
皆は「美味しい!」と言い食べていた
畑の見学が終わると場所に乗り閻魔庁の見学となる
烈はアル君に乗り馬車の横を走った
維弦は唐沢に「アレはアルパカですか?」と聞いた
唐沢は笑って「アレは烈の馬だよ!」と答えた
アル君は歌を歌い飛んでいた
パタパタと小さい羽根で空を飛ぶ
烈にとても似合ってて、皆は癒やされていた
閻魔庁に着き、閻魔に案内される
一通り閻魔庁を見学した後、皆にカフェの食べ物の中で好きなのを振る舞った
皆それぞれに食べたいモノを頼み食べる
一通り魔界の案内を終えると、その夜も迎賓館で過ごした
が、夜中近くにホールに集められ
「さぁ人の世に帰るわよ!」と謂われた
内閣調査室の班員達に烈は
「これで魔界ツアーは終わりとなります!
人の世に還ったら、多分人の世は月曜日の朝になります!
皆は見事に週末を魔界で過ごされる事となりました!でもそろそろ富士の樹海に女性を置き去りにして殺した犯人の捜査が上がって来る頃なので、皆頑張って捜査を始めて下さい!
この案件は特殊過ぎて遺体なき殺人として、必ずや警察署と連携して捜査をせねばならなくなります!寝る間もない程に忙しくなりますが、其処はチームの団結力と底力を見せて頑張って下さい!
その事件にボクは多分…………関わって来ますので、その時に逢いましょう!
それでは神の道を開くので行きましょうね!」と言った
西園寺維弦は「え!本当に月曜日の朝なのですか?金曜日の夕方に来て2日過ごしたら月曜日の朝なのですか?」と問い掛けた
「魔界で一日過ごせば2日は過ぎてるのよ!
金曜日の夕刻に来たボク等は二晩はいるからね、魔界で朝を迎えたら月曜日の朝は難しいのよ
今帰れば人の世の時間は月曜日の朝辺りかしら?
魔界の時間の流れは人の世の倍長いのよ!
だから魔界の神々や役務に着いてる存在は長命なのよ、でも不死じゃない
神だって消える時がある、怪我だってするし人と何ら変わりはない!
少しでも解ってもらえたのならば、貴方達を連れて来た甲斐があります!」
唐沢は「貴重な体験をありがとう!」と謂うと
班員達は全員で【ありがとう御座いました!】と感謝の意を述べた
皆はまた神の道を通り内閣調査室の部屋へと戻った
月曜日の早朝と謂う事もあり、庁舎は出勤して来た職員達の喧騒で慌ただしさを醸し出していた
「では皆さん頑張って下さいね!」と言い烈はやっとお役御免になり、ケントを呼び出しその場を離れた
ケントの車に乗るなり烈は暦也に連絡を取った
「目当てのモノの捕獲は出来たかしら?」
そうラインを送ると、直ぐ様ラインは返された
『菩提寺、城之内に聞け!』と短い文で返って来た
烈は「菩提寺へ行ってくれるかしら?」と謂うとケントは車を菩提寺の方向へ向けて走り出した
そして母に「ただいま!母しゃん!父しゃん!」とラインを送る
そして兄や祖父母にも「ただいま!」とラインを送信
すると直ぐ様『お帰り烈!!』と返信があった
「にーに達も今夜から家に帰るわよ!
そしたら約束のお肉食べさせて貰わなきゃ!」
家族のグループラインで送信すると父から
『約束のお肉、今夜は頑張って作りますね!』と返って来た
菩提寺の駐車場に車を停めると、城之内が迎えに来た
「烈、門倉は取り敢えず地下の廊に閉じ込めておいた!」
「誰にも連絡取らせてないでしょうね?」
「地下の廊は携帯の電波さえ通さねぇってお前が言ったやんか!」
城之内はボヤく
烈は「ならば会うわ!」と謂うと城之内と共に、寺の関係者さえ知らない地下へと続く通路を歩いて、地下の廊に向かった
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