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第6話 邀撃
康太と榊原が菩提寺に到着すると、城之内がやって来て
「天照大御神がお越しだそうだ!」と言った
康太は「あんでお前がその名を知ってるのよ?」と聞くと
「夏海と華絵が恐縮しまくりで教えてくれたぜ!」と言った
「で、何処にいるのよ?」
「保養施設一階におられるぞ!」と教え、城之内は太極拳をしている連中を見に行った
年寄りの多い太極拳だけあって、目を光らせておかねばならないからだ!
康太と榊原は保養施設に出向くと、天照大御神が茶を啜っていた
「ほらよ!茶菓子だ!」と華絵が茶菓子を置く
天照大御神は「主、凄く変わったな!」と言葉にすると華絵は
「弱くては生き残れぬと烈に謂われたのじゃよ!
そして強くなくば、その手から愛する者の命が零れ落ちて行くだけじゃ!と謂われた
私はそんなのは嫌だから、闘うと決めた!
決めた以上は弱音は烈にしか吐かぬ!」と言った
天照大御神は「烈には弱音を吐くのかえ?」と笑って言うと華絵は「はい!烈にはバンバン弱音を吐いて、喝を入れられ明日へと逝く指針を戴けますから!」と笑って答えた
「人の世へ来て良かったわい!
こんな主が見られるとは………な……」
と感慨深く呟いた
康太は「蓮華は目まぐるしい変化を遂げているかんな!幾多と変化する姿に烈は困ってオレに
『母しゃん、ねぇ聞いてよ!華絵、当初授けようとした名前すら越して言っちゃったのよ!
新しく考えなきゃなのよ!』とボヤいている程なんだよ!」と笑って言う
天照大御神は笑顔でそれを聞き、そして姿勢を正すと
「星詠みの婆婆が、炎帝が我が子の為に出る気でおるが………それこそが相手の目論見なれば、烈の果てが狂う事になる故、止めねばならぬ!と伝言して参った!
我が夫も閻魔も素戔嗚尊も不在故、我が伝言を言付かり、大歳神の傍へ出向いて伝言を伝えたのじゃよ!」と話す
康太は「やはり小賢しい奴はオレの事も待っててくれてると謂う訳なのか………」と皮肉り言う
天照大御神は「烈の果てが狂う故、主は出るではないぞ!」と釘を刺しておく!
「母者………最近烈贔屓じゃね?」
と少し拗ねて言う
天照大御神は笑って「主の子ではないか!我の孫であるからな!
それはそれは愛しき存在なのじゃよ!
烈だけではないぞ!翔、流生、音弥、太陽、大空、凛、椋、レイ………主等が愛すべき存在は我等も愛すと決めているのじゃよ!」と言う
康太は「………母者……」と母の愛に言葉もなかった
天照大御神は「ならば我は還るとする!夫と弟と倅の不在の魔界を護らねばならぬからな!」と言った
「なぁ母者………母者は烈が何をしに地獄界へ行ったか知ってるのかよ?」と尋ねた
「はて?我は詳しい詳細は知らぬ!
唯 羅刹天と元始天尊は幾度も魔界に来られておるからな!
是非に地獄界へ起こし下され!と申し出があった
本当ならば世界会議へ行く頃、烈は地獄界へ行く予定じゃったのであろう?
それが伸びただけの事じゃ!
地獄界も今後は【食】の不足がキーワードとなる故、魔界がどうやってそれを回避出来たのか?に興味を持っておったのは確かじゃな!
今回 魔界は飛来クラゲを土産に持参した
その為に素戔嗚尊と建御雷神が付き添ったと聞いておる!
主は烈に聞いてはおらぬのか?」
「聞いてるよ、烈は逐一報告してくれるからな!
でもなアイツは肝心な部分は絶対に視せねぇんだよ!だから無駄な努力だからオレもアイツを視る事はしねぇ………だから心配なんだよ!
魔界の果てまで烈が背負う必要なんてねぇじゃねぇかよ!
聖神を見殺しにした魔界なんて……捨てておけば………良いじゃねぇかよ!」
天照大御神は康太を抱き締めた
母としての苦悩が滲み出て………我が子を強くして………我が子を誰よりも弱くしていた
もう天照大御神が見て来た炎帝は何処にもいない………
青龍と共に人の世に駆け落ちして、幾度も人の世で転生し………飛鳥井の家で落ち着き幾度も飛鳥井の真贋として転生をした
今世は母になり、炎帝は変わった
青龍の愛に支えられ、炎帝は親となり
心を持った
「烈は何時だって母の為、父の為、兄の為、祖父母の為に行きておる!
魔界は何時か炎帝と青龍が帰る場所となる故、せっせと禁足地を削り、魔界を発展させて参った
烈は愛しているのじゃよ、家族を、両親を!」
「母者………烈は【あまちゃん】の事も大好きじゃねぇかよ!」
「そうじゃな、我は烈にそう呼ばれるのが好きじゃ!夫も申しておったわ、烈に「たけちゃん」と呼ばれるのは嬉しい、とな!
倅も「えんちゃん」呼びが気に入っておる
まぁ我等は烈とレイにメロメロじゃからな!」
天照大御神はそう言い笑った
天照大御神も建御雷神も炎帝と謂う我が子を愛して、我が子の大切なモノを愛してくれ、護ろうとしてくれるのだ
康太は「母者ありがとう!オレは我が子の果てを狂わせる気はねぇかんな!出ねぇよ!」と言った
「それでよい!烈は暴動覚悟で行ったが、向こうが上手であったし、我等は其処まで詰められ闘うと謂う事がなかった
それが敗因だと我が弟も夫も倅も申しておったわ
今後は其れ等さえも視野に入れた接近戦を金龍と黒龍に鍛え上げさせねばならぬのだ!
さてと、ならば炎帝またな!」
「あぁ、また魔界に顔を出しに行くとする!」
天照大御神は艶然と笑うと姿を消した
康太と榊原は会社に戻り仕事をする事にした
その後は何の動きもなく…………嫌がらせしようにも………飛鳥井の家族の動きを掴めない輩は、躍起になって烈とレイを死に物狂いで探した
烈は10日間 目を醒まさなかった
流石とずっとICUに入れてはおけなくて、個室へ移し観察するしかなかった
久遠は烈の怪我をせっせと治療する
閻魔と素戔嗚尊と建御雷神と羅刹天は、5日入院して崑崙山へと行き、元始天尊を入れて話し合いをする事となった
まぁ、神髄師からの話は烈達が病院へ行った【その後】の報告と、今後どうするか?の話だった
地獄界は平和条約を締結させた魔界の特使を半殺しにしたも同然なのだ…………
事態が収まると、その場にいた者達はパニックになり叫び、何が何だか解らない事態に暴動一歩手前にまでなった
龍王の軍が出て沈静化した後は、神々が招集され、今後の事を話し合わねばならなくなった
下手したら界界戦争……果ては魔界の同盟国を敵に回したも同然
早急に話し合いの場が持たれた
魔界へ謝罪へ行こうにも、閻魔は人の世に運ばれ入院していると謂う
聖神に至ってはあんな小さな体で暴行の限りを尽くされ意識不明の重体だと聞かされた
龍王は黒龍を元始天尊に頼み、責任を持って蜜蜂と共に魔界へ送り届け、正式な婚姻を進める事を託された
烈の傷が治ったら、二人の婚姻が盛大に公表される事で話は着いた
話は着いたが………魔界のトップを半殺しの目に合わせた現状は由々しき事態として、連日連夜 議会が開かれた
地獄界は何処まで悪しき者に乗っ取られてしまっていたのか?…………
そして自分達は魔界を敵に回してしまうやも知れぬ現実………嫌、このままならば世界を敵に回して戦争勃発なんて事態も想定せねばならない事態に陥るやも知れない……………
それは紛れもない【現実】として降り掛かる事だと、やっと認識して、皆真剣に話し合いの場が持たれた
地獄界は足並みを揃え、やっとスタート地点に立った事となる
飛鳥井の家は未だ幼稚園の上から動く事なく、住んでいた
烈が戻らねば動けない!
康太が謂うから、皆 腹を括り生活していた
飛鳥井記念病院に入院して11日目の朝
烈は目を醒ました
クーが飛鳥井の家からコッソリ持ち出したPCをポチポチ叩いているのを久遠が発見したのだった
「せんせー!おはようにゃのよ」
烈が言うと久遠は「何処か痛い所はあるか?」と問い掛けた
「今はちゅこしマシににゃったわ
少し前はぜんちんが痛ちゅぎてね、起きたくにゃかったのよ……
息ちゅるだけで肺が痛んでぜんちん痛きゅて……でも少し楽になったから目を醒まちたのよ!」
久遠は烈の頭を撫で「そうか、全身打撲の重症だったからな………時速30キロで走行している乗用車に跳ねられた位のダメージは負っていたからな!」と説明して謂う
「にゃんか腕が動かにゃいのよ?」
「腕、ポキッと折れてたからな、緊急オペして折れた骨をプレートで繋ぎ止めて固定してあるからな!」
「プレート?飛行機乗りゅ時、ブーブー鳴るじゃにゃい!」
「診断書着ければ大丈夫だろ?
Xmasにイベントやるんだろ?
ならば診断書出してやるから、お前は治す事だけ考えていろ!」
「了解にゃのよ!せんせー!」
「うし!今朝はおもゆからな!」
「えぇー!おにゃか減ったにょよ!」
「まだ呂律も変だし、胃に負担になるからな、10日も眠っていた奴はおもゆからだ!」
「ボク10日も寝てたにょね………あ~予定が狂うわ」
「それも命有っての物種じゃねぇか!
大人しく治療してやがれ!良いな!」
烈は頷いた
久遠が病室を出て行くと、烈は母にラインを送った
「母しゃん、父しゃん、ボク 目を醒まちたわ!」
すると烈からのラインに気づいた康太は烈に電話した
ワンコールで電話に出た烈に
『起きたのかよ?烈!!』と謂う
「ボク 10日も寝てたらちいにょよ!
きょれからボク、ゆーげきに出るから!」
『烈………無理しなくて良いから………』
「ボクはね、母しゃん、へーわにゃ日常が脅かちゃれるのが大ちらいにゃのよ!
そんな輩を許ちておける筈にゃいじゃにゃい!」
置きたばかりで呂律も怪しいのに、もう既に果てを見据えて言葉にする
頑固な我が子に手を焼くのは、寝てても起きててもなのは変わらない
『まだ退院出来ねぇんだろ?お前?』
「ボクはお布団の上でも、動かちぇる駒ちゃえいれば、相手を追いちゅめるのなんて簡単よ!
母しゃんは出にゃくて良いけど、司令を受けて動かちゅ人材を貸ちてくれる?そしてその人を配置ちて欲ちいにょよ!」
『誰を、何処へ、配置して欲しいんだ?』
「カズと慎一きゅんを貸ちて欲ちいにょよ
そして城之内を動かしゅ者を一人、暦也と動きゅ者を一人、細きゃい蜘蛛の子散らちゅ包囲網をちいて、追いちゅめる作戦で貸ちて欲しいにょよ!」
『それをやるなら条件がある!』
「何かちら?」
『最終段階に入ったら、オレにも見届けさせろ!』
「良いわよ!是非その目れ見届けて下しゃい!
れも、出にゃいでね、相手は一番の標的はボクだけど、同列の標的に飛鳥井康太を入れてりゅのだきゃら!
そちて飛鳥井康太が無理にゃら榊原伊織、そちてその家族、親類縁者が狙われていたきゃら、笙たんは隠れて貰ったわ!
佐伯は今 別の場所で生活させてりゅから、大丈夫だと思うけど、相手は調べ上げてターゲットにちて来てりゅからね………本当にタチが悪いにょよ!」
其処まで………細部まで調べ開けられた犯行だと謂うのか………
康太は悔しくて………堪らなかった
『なら大盤振る舞いだ!一生、慎一だけじゃなく、隼人、聡一郎も着けてやる!
お前は奴等を使い熟して指示を出せ!良いな!』
飛鳥井康太と共に幾度も死線を超えた兵を貸し出してやると謂う
烈は気合を入れて「ありがとう母しゃん!」と礼を言う
そして「あ、ちょーだ、菩提寺狙われたかちら?
常に狙われりゅから鍛え上げておいたにょよ
其の内、道場で一番ちゅよいのを宿泊施設で生活しゃせようと考えてるにょね!」と口にする
『あ~菩提寺は狙われたけど返り討ちにしたと城之内が言ってた………』
「………夏っちゃんにゃらウォーミングアップにもにゃらん!とか言いしょーうね………
でもまだ足りにゃいから………今回ボクはワラワラと詰め寄る相手に手も足も出にゃかったにょよ…………
刃も振り回せにゃければ………意味がにゃい………
思いちらされたわ………痛い思いちてちらされたんだから、超接近戦考えなくっちゃ!
そしてね、母しゃん………地獄界の傀儡か、洗脳しゃれたのか?ちらないけど………雷食べてたのよ
もう雷が必須アイテムにゃんて笑わせるぜ!っての、目の前でやられたわ!
くやちぃ……くやちかったわ!母しゃん、父しゃん!」
烈は電話の向こうで泣いているのか…………
声が震えていた
悔しい想いを味合わされ、コケにされたみたいなモノだから………
康太は言葉もなく………我が子に何と言おうか?と悩んでいた
だが父は違った
『そんな所で止まるんじゃありません!
歩きなさい烈!
其処で立ち止まるのは許しません!
悔しいならば、その上を行く事を考えなさい!
自分の力の及ばぬ領域なれば、父も母も何時だってお前の為に動くと決めているのです!
それを忘れて一人で悩むのは辞めなさい!
そして何より、君を心配する兄達やレイや凛や椋がいる事を忘れてはなりませんよ!』
とら現実を突きつけて、家族の思いを伝える
我が子を黙って見守って来た父なれば………の言葉だった
「立ち止まったりしゅる暇はにゃいから、解ってるわ父しゃん!
ボクはリハビリの合間に策を考えるわ
でも右手骨折は手痛いから、父しゃん翼を女装させてボクの所へ連れて来て欲ちいにょよ!」
『………翼………大人しく女装させてくれますかね?』
「ボクの一大事だと謂えば、ちてくれるわよ!
あ、でも外国人のかちゅらは辞めてね………母親そっくりに…にゃるから!
黒髪のかちゅらで………母親を想像させにゃいのを、そーちゃん………チョイスさせてくれにゃいかしら?」
『解りました!聡一郎をGETして君の想い通りにして向かわせます!
仕上げは前もって教えて下さいね!
僕らは前日入りして見届けますから!』
「了解にゃのよ!
それじゃ蜘蛛の子散らちゅ包囲網を張り巡らせ、追いちゅめて行くわ!
唐ちゃんも出てくれる約束にゃのよ
中央には高みの見物決め込み鎮座している大仏いるからね、まずは外枠を攻めて瓦解させて包囲網を狭めて行くちゅもりにゃのよ!」
『おっ!其れならその包囲網狭めるのに一週間は要らねぇな!』
「順調にいけば………ね、でも不測の事態って必ず用意ちてくれるのが、アイツだから!」
『んとによぉ、余計な事しかしねぇよな………』
「そーにゃのよ!本当にちぇこいし汚い事をちてくれちゃったりするにょよね!」
『だな、本当にオキシクリーンで拭き取ってやりてぇな!』
「よね!よね!アルコール消毒ちてやりたいわよね!」
話が逸れていく親子に榊原は
『そんなので拭けて解決なら、誰も苦労しませんよ!』と注意した
烈は笑って「ならね、父しゃん、母しゃん!
取り敢えずボクは骨折中らから、体力戻りゅまであと少し掛かりそうにゃのよね
それまでに出来る事はちておくわね!」と謂う
康太は『骨折したって久遠が言ってたな………
オレも昔に何度も骨折してるかんな………言えるのは痒さに堪えて頑張れ!だな!』と笑って言い電話を切った
榊原は「烈、元気な声で安心しました!」と謂う
康太も「危篤の末に逝っちまった………なんて聞いたら地獄界消し去ってやろうと想っていたけど、まぁ見過ごしてやんよ!
でもまぁ地獄界は此れから大変だよな………魔界の最高位の来賓に怪我を負わせたんだからな……
下手したら界界戦争に勃発するやも……とか言われたりしてるんだろうな………」
「烈は何しに地獄界へ行ったのですかね?」と素朴な疑問を口にする
「んなのオレに聞くなよ………
ずっと羅刹天と神髄師とは【食】の事で話をして来たって兄者も母者も言ってた
向こうは人口が魔界の倍だから、その問題は日々深刻になるって………
だから【友好条約】を締結し、互いの所に不足している部分の交換をしたりしているらしいぜ
雷魚はその手始めで、魔界からはデカチゴの苗や育て方を伝授したそうだ!
それから始まり、乳牛とデカブと交換しあい、今回は友好条約を国に報せる為に大々的なセレモニーを開くと、兄者からは聞いていた
だから飛来クラゲを素戔嗚尊、建御雷神が運び地獄界へ行くと言っていた
オレはそれしか聞かされてねぇかんな!
それ以外の思惑は……閻魔と烈しか知らねぇだろ!
そしてあの二人は絶対に………他言もしなけりゃ、意識さえも視せねぇんだよ!」
とボヤいた
榊原は拗ねた様に謂う愛する妻を抱き締めた
「烈の総ては僕達の為、家族の為………果ては魔界へ還る我等の為………そればかりだったじゃありませんか!」
「だけどよぉ〜伊織………オレは我が子に危険な事はして欲しくねぇんだよ!
この前入院して、まだ破滅の御剣を受けた傷も治ってねぇのに……まただからな………」
心配になって当たり前じゃないか!と謂う
榊原はそんな妻を抱き締め
「僕等は僕等にしか出来ない事をする………それしか出来ません………」
「止めてぇよな………」
危険な目に遭うと解ってて行く我が子を止めたい………
「そりゃお尻ペンペンで怒って止まるなら……止めたいですよ!
でも止まらないのが……烈じゃないですか!
僕はずっと……君を止めたかったです………
でも君は一族の為、家族の為、仲間の為に行っちゃってたじゃないですか…………」
「伊織………お前が………辛い想いを堪えてオレを送り出してくれていたのは解る……
今……こうして烈やレイを送り出さねぇとならねぇ現実が………めちゃくそ辛いんだから、お前はもっと辛かったんだろうなって想う……」
「康太……」
「伊織……」
二人は互いを強く抱き締め合い、そんな思いを共有していた
が、そんな甘い雰囲気は直ぐに打ち砕くのが飛鳥井の秘書達だった
遼太郎がやって来て「あ~抱擁は仕事終わったからにして下さい!
それよりも宗右衛門案件がめちゃくそ増えてますが………どうしたら良いですか?
烈はイギリスですよね?何時帰国しますか?」と言うのだった
康太と榊原は困った様に顔を見合わせた
康太は「他言無用だぞ!守れるなら話してやんよ!」と言う
遼太郎は「我等は宗右衛門の駒!殺されたとて他言になど絶対にしない!
何処かの誰かに烈の事など話しませんよ!勿体ない!」と一蹴する
康太は「ならば言うとするか!烈は暴行を受けて入院中だ!骨折してるらしいけど、今飛鳥井の家族は狙われてるらしいからな………病院にも逝けねぇんだよ!
入院したその日からオレ等は病院にも行ってないし、家族にも話してない!
だからお前も聞いても動くなよ!
烈の果てが狂うかんな!」と言う
遼太郎は「あ~納得です!では俺は何も聞いちゃいないって事で!
宗右衛門の仕事は総て止めます!
あ、仕事して下さいよ!」と言いペコッと頭を下げて部屋を出て行った
康太と榊原は仕事を再開させた
死しても宗右衛門の留守は守らねばならぬのだ!
烈の元へ女装した翼が聡一郎、一生、隼人、慎一と共にやって来た
烈は緻密な蜘蛛の子を散らす包囲網を敷く為に、翼の頭脳と腕を借りながら、策を練って行く!
病室のベッドの上で5日、過ごし
体力が着いて来た烈は自分の足で歩行可能になると、退院した
退院して聡一郎達と共に飛鳥井の家族の誰も知らないマンションへやって来た
飛鳥井の家に還ると、また何時付け狙われるか分からないからだ
烈は精力的に一生、聡一郎、隼人、慎一を使い、指示を出していた
そして尾行して来る奴等は、尾行仕返してやった
烈は敢えて目立つ場に行き、尾行させた
そして尾行して来る奴等は、とことん尾行仕返して、付け狙ってやった
アジトを突き止め、瓦解させるまでに、そんなに時間は要さなかった
包囲網は着実に狭まって来ていた
烈は大仏を潰すに当たって、お金持ちの実家も潰してやる気でいた
まぁ叩けば埃が出るお金持ちの実家だから、裏と表から同時に揺さぶりを掛けてやったら、何日持っかしら?と北叟笑んでいた
暦也は聡一郎を貸し出して貰い、門倉武士が揉み消した事件の被害者を探り始めた
金持ちの両親が揉み消した事件を再び掘り起こし、人道的な観点から見て如何に非道な事をして来たか報せる為に調べ上げていた
そして慎一は飛鳥井会建設を退職後の門倉の足取りを追い、関係者だった者に接近して、門倉の妻だった女を調べ上げた
一生は門倉の一族に泣かされ虐げられ、理不尽な扱いをされた者達や、罪を着せられたり揉み消された人間を探し出し、門倉の学生時代からの一族がどんな事をして来たか?を探り犯罪スレスレの事件を掘り返した
隼人は大仏の女の知り合いと謂う女に片っ端に近付き、唐沢班の西園寺維弦と共に女関係を探った
隼人の容姿にポッとなる女達は口が軽く、維弦はすげぇな!芸能人!と感心する程だった
まだまだ予備軍の女は多く、大仏の【妻】と謂う女が恋愛詐欺みたいなのを取り仕切って金を大仏に渡していたとまで突き止めた
門倉の妻もその大仏の妻の詐欺グループの一員で、門倉から金を引き出させていた、と証言を取る事が出来た
皆それぞれの得意分野で【証拠】を抑えて、とことん追い詰める為に動いた
企業関係は今現在、セクハラ パワハラ モラハラ等など受けいてる社員を探し出し集め、退職せざるを得なかった社員に遡り話を聞いた
慎一は「どうやら辞めてく社員は退職金も辞退して逃げる様に退職しています!」と報告
被害実績を聞いた後は、政府の方で身の安全を確保して貰い、追えない様に手を打つ
着々と【証拠】を持つ人間を集める
それと並行して大仏武士の身の回りで、行方不明者になった女を探った
唐沢達の班と地元の警察が消えた女性達の足取りを探って行く
富士の樹海へ捨てられた女性の家族は、やはり殺されてこの世にはいなかった
夢枕に立った女は、家族が埋められた場所を報せ訴えて来たから、大体聞いていた烈は地図に埋められた場所を記し、掘り起こしに行かせた
すると………その場には骨が出て来て、鑑識が富士の樹海で発見された女性との血縁関係を調べていた
消えた女性達は男を騙していたから、男達から被害届けが出されていた
全財産投入した男性もいて、その男性達から預貯金総てを貸したが、返って来ず失踪され資産の全てを奪われた!と被害届けが出ていたから、被害の実態も調べ上げた
すると億超えのお金の流れがあった
ジワジワと外堀を責めて行き、瓦解させて行く………
が、決定的な大仏武士が手を下したとか、女を使い指示を出した……と謂う証拠が異常な程に出て来る事はなかった
大仏が指示を出しているのは明白なのに……大仏は安全圏にいて…………
烈はその糸口を探す為に躍起になっていた
季節は10月になろうとしていた
烈の髪の毛は元の黒髪に戻っていた
聡一郎が金髪の頭部に黒い髪が見えて来たから、美容師を呼び元の髪に戻してやったのだ
烈がベッドの上で寝ている間に、倭の国は解散総選挙が行われ、選挙に突入していた
烈は唐沢に「正義ちゃん狙われて体に風穴開くわよ!」と星を詠みをした結果を忠告した
総理に最も近い男の体に風穴を開けさせる訳にはいかない!
と唐沢は上に報告した
飛鳥井宗右衛門の予言だと、唐沢達は即座に動き、堂嶋に防弾チョッキを着せて、防弾ガラスの向こうで演説をさせた
用心には用心を重ね、細心の注意を払い警護に当たる
ただでさえ捜査も佳境を迎え、人手不足なのに………
選挙が終わるまでは………人命優先となるのだった
烈が予知した通りの………場所と時間に、ライフルの銃口が堂嶋正義を狙った
演説中に防弾ガラスに銃弾が撃ち込まれたのだ
ビシッとヒビが入る防弾ガラスに皆が警戒を強める中………
選挙演説を見に来ていた一般市民が………運悪く跳ね返って来た銃弾に当たり倒れた
犯人はその場で取り押さえたが……パトカーに乗せる前に頭を狙撃され即死だった
やはり二段構えで刺客を放っていたのだった
こんな事件があり、街頭演説をする為に警官やSPが駆り出され安全の確保の優先を重視されると…………人手不足に陥り……
選挙は政権放送のみと削られる事になった………
烈がやっと退院する頃、選挙は終わりを迎え、堂嶋正義は見事当選を果たした
因みに三木繁雄も見事当選を果たしていた
次は総裁選のみとなった
烈は尾行して来る奴等に、尾行仕返しをした………
門倉仁志がリーダーをしていた頃の仲間だった者は一人残らず塀の中へ送り込んだ
今は大仏側も人手不足なのか?尾行して来る輩はいなくなった
が、本丸には手が届いてない現状に、烈は歯軋りしたい程に悔しくて堪らなかった
烈は母に「母しゃん、見届け貰うつもりだったけど………大仏には手が届かないのよ………」と悔しそうに告げた
康太は烈を抱き締めて「一歩足らねぇなら、ジックリと本腰据えて長期戦狙えば良いやんか!
何を焦ってるんだよ?」と慰め謂う
「母しゃんにカズ達を借りたのに………本丸の瓦解は無理だった………」
「でも聡一郎も隼人も一生も慎一も、そして城之内も言ってたぜ!
尾行する奴を追い詰める作戦は、康太、おめぇと動いている時みたいでワクワクしたぜ!って!
蜘蛛の子を散らす包囲網は完璧だった!
尾行する奴はいなくなった
今はそれで良いじゃねぇかよ?」
「母しゃん………」
「家に還ろうぜ!烈!
皆が待っているかんな!」
烈は何度も頷いた
でも…………出来るならば……
「見届けて欲しかった………のに……」
門倉を苦しめ蔑ろにして虐げて来た奴の末路を見届けて欲しかった…
康太は烈を抱き締め
「見届けるに決まってるやんか!
門倉を虐げて良いように使って来た奴の最期を見届けてやらねぇと………アイツが浮かばれねぇじゃねぇかよ!
アイツの想いを込めてオレは【見届ける】と決めているんだよ!」と言い烈を強く抱き締め
「だから今はその時じゃなくても良いんだよ!
煩い蠅を追い払えたんだから、それで由としようぜ!」と言い背中を撫でた
烈は母の胸に顔を埋め「還ろう……母しゃん 父しゃん………還ろう飛鳥井の家へ……」と言った
榊原は康太ごと抱き締めてやった
「今夜は家族で鍋でもしますか!」と謂う
烈は喜び暫しの休息を取る
飛鳥井の家族はやっと飛鳥井記念病院の裏の家に戻って行った
総理は任期満了に伴い総裁選を視野に入れ、立候補者が名乗りを上げ始めていた
烈は堂嶋正義に「遅くなったけど、週の頭に国会に行くわね!」とラインを送った
堂嶋は最近烈に連絡が取れずにいたから驚いていたが………
『お待ちしております!』と返した
烈はまだ腕を吊っていて、頭や顔の怪我も治ってはいなかった
やっと破滅の御剣の傷跡が治りつつある………と、言う感じだから地獄界での怪我もまだまだ治りきってはいなかった
だが動かねばならない状況が待ってはくれないから、烈は堂嶋との約束を果たす事にした
烈はあれから城之内のチームにいた子達のドライブテクニックに惚れ込み、バイク便の会社を立ち上げた
規模は小さいが【R&R】の組織に組み込んだバイク便の会社だから基本給とバイクの仕事で歩合給が着く事になっていた
皆 バイクが仕事になり、生活が出来る現実に喜んていた
そして高待遇な条件に喜んで会社に入った
元暴走族と謂う肩書は、結構就職に痛手を遺していた
青春をバイクと走りに費やした代償は結構大きい
就職しても正社員になるには結構努力しなければならない
だから烈からの「貴方達は走りを仕事にする気はないのかしら?仕事にしても良いと謂うならば、会社を立ち上げるから働いて欲しいのよね!」と謂う嬉しいお誘いには即座に乗って正社員となった
烈は「歩合給出すから、時には尾行してる奴を尾行仕返して貰う仕事も入るかもだけど、お願いね!」と、それ前提の仕事もある事を謂う
皆は「無論っすよ!それさえも歩合給くれるならば、喜んでやるさ!」と言ってくれた
城之内の仲間は、烈が詠んだ蜘蛛の子を散らす包囲網を違える事なく動いてくれ、どんな手を使っても逃げ切る事は出来ない腕前を見せてくれた
一旦は逃れたとしても、次の瞬間、違う車やバイクが引き続き追い掛けて来るのだ
逃げ切れないと焦った奴等は、どんどんスピードを上げて、自ら事故り………数を減らして行くのだ
笑いが止まらなかった
門倉がリーダーをしていた暴走族は数を減らし、大仏が動かせる駒は消滅した
烈の放った第一の矢が突き刺さった瞬間だった
そして第二の矢を放つ
第二の矢は門倉の企業の汚職、政治献金 社長の息子の事故の揉み消し等などの告発動画を海外の暴露系YouTuberにリークして流させた
【倭の国の企業の闇】と銘打ち、汚職、政治献金、社長一族の数々の横領 社長の息子の犯罪の揉み消し……
社員に対するパワハラ モラハラ セクハラ等などを暴露して流した
写真や映像があるから、より信憑性が高く、その動画を見た者達は………こんなブラックな実態の会社がある事の方が脅威だと想っただろう………
此処まで騒ぎになると警察側も黙ってはいられないと謂う大義名分がある為、堂々と警察が捜査に踏み切った
その裏には唐沢達のチームも捜査に加わり、暦也からの調査報告に基づいて調査をして行った
そして大仏武士、彼は結婚をチラつかせ金を吸い尽くし生きたまま………富士の樹海へ置き去りにして捨てた………罪で任意同行を迫った
富士の樹海へ薬を飲まされ捨てられた女性は、一人だけではなかったのだ
調べて行くと富士の樹海で自殺する者達を保護する活動の団体が、震えて丸くなる女性を発見し、地元の警察に保護された女性がいたのだ………
以来 彼女は大仏が怖くて隠れていたと謂う
また自分が愛する男の言いなりになり、人を騙していた事実が………女性を脅かしていた
その女性が勇気を出して告発してくれ、余罪を幾つか着けて逮捕して、後にジックリと調書を取る事になった
門倉系列の企業は、暴露されたスキャンダルの数々に企業としての信用を失い倒産した
お金持ちな本家に群がっていた一族は口々に本家の暴露合戦をして、罪から逃れようと必死だった
が、パワハラ セクハラ モラハラの数々で退職に追い込まれた者、精神疾患を抱えた者、自殺した者………等などが会社に対して集団訴訟を起こすと決めて立ち上がった
飛鳥井神威の事務所のパワハラ セクハラ モラハラ関係に強い弁護士に依頼が行き、弁護団を作り、他の弁護士に協力要請して万全の態勢を取り闘って行く事になった
門倉の会社の土地や系列の会社の土地、社長の自宅、重役付きまで役員の資産の凍結をし責任を取らせるつもりだった
門倉仁志の両親は…………役職付きだったから……責任を負わされる事が決定した
門倉の一族経営している会社は倒産した
飛鳥井宗右衛門が出て潰したと………誠しやかに噂になり………脅威を世に知ら示めた事となった
そして第三の矢、大仏武士を地獄に落とし、罪を白日の元へ曝す!
此処まで来て…………美濃部一徳……海坊主の気配は消えた
暴走族を動かしバンバン烈の後を尾行させていた時には感じていた気配が消えたのだ……
康太は「大仏は………こうなったらスケープゴートにされておしまいだな!」と謂う
「そーね、海坊主の気配消えたからね……
しかも海坊主は、ボクの事をあんまり知らないらしくてね
蜘蛛の子散らす包囲網で門倉の仲間だった奴等を追い詰めていたら『飛鳥井康太の回し者か!
クソ!美濃部さんの謂う通り、飛鳥井康太の仕業なんだな!総ては飛鳥井康太が絵図を引いたんだな!クソ!飛鳥井康太になんか負けないからな!』とか言ってたのよ!」
「え〜!んな事言ってやがったのかよ?」
と康太がボヤくと一生は笑って
「あぁ、アイツ等康太に追い詰められてるって想っていたよな?
烈の事、海坊主は知らねぇのかよ?」と問い掛けた
康太は少し考えて「あんまし接点ねぇよな………源右衛門と海坊主はワンセット転生だから、宗右衛門が源右衛門を教育した訳だけど………弥勒院厳正との接点はあんましなかったよな?」と答えた
烈も「そーね、直接関わらなかったからね!あまり知らないのよボクは!
源右衛門を教育してる時だって、弥勒院とは話した事さえないわよ!
だからボクの事……知らないわね多分………
でもまぁ海坊主操ってる奴から情報は聞いてるでしょけどね?」とボヤく
一生は「海坊主………やっぱ敵に回ってるんだな……弥勒はどうする気なんだろ?」と不安げな顔をした
烈は「…………弥勒は、独自に探りを入れて、目の前をチョロチョロと動きやがっていたからね…………
尾行していた奴等に海坊主の気配がバンバンしていたから探りを入れに来たんだろうけど………
ボクの動きを邪魔するならば……跡形もなく消すわよ!と警告しといたわ!
母しゃんには悪いけど………容赦する気は皆無だから!」と吐き捨てた
康太は「それで良い!お前の動きを邪魔する者は……それが誰であろうとも……容赦しなくて良い!
容赦する必要なんてねぇ!」と言った
「………ならば最後の矢を放つとするわ!」
康太は頷いた
一生は心配そうな顔をしていたが、何も言わずにいた
週明け 烈は朝早くから宗右衛門の着物を着ていた
宗右衛門の着物を着て朝食を取っているから、朝を食べに来た康太は「何処かへ行くのかよ?」と尋ねた
烈は「国会にね、正義ちゃんと共に総理を労いに行くのよ!」と告げた
飛鳥井宗右衛門の着物を着て、総理に正義と会いに行く
それが唯のご挨拶だけじゃないのを………康太は感じていた
「おめぇが正義の件まで背負わなくても良い………」
康太は自分の視て来た果てが悉く狂わされているのを痛感していた
当然正義の果ても……狂って来ているのは否めなかった
烈は笑って「何言ってるのよ母しゃん!正義ちゃんはもう替えの効かない存在じゃない!
この先の為にも不動な安定は大切なのよ!
震度4でグラッと崩れる様では飛鳥井の名折れよ!
せめて震度7までは仁王立ちで立ってて貰わなきゃ!この倭の国の為にね!」と謂う
康太は笑って「震度7まで仁王立ちで立ってねぇとならねぇのか………大変だな正義も………」と謂う
「大丈夫よ!正義ちゃんなら立っててくれるわよ!でなきゃ兵藤きゅんとりゅーまに蹴り飛ばされるわよ!」
「それもそうか!アイツ等なら捲し立てて急き立てて行くだろうな!」
烈は頷いた
その横でクーは食後の緑茶を優雅に飲んでいた
烈は「母しゃん、そろそろ盛大な挙式披露宴をやらないといけないのよね
ボク………そう言う賑やかな祭典は苦手なのよね
緑茶でないし、井筒屋の沢庵ないし………」
とポリポリと沢庵を食べながら謂う
康太もポリポリ沢庵を食べながら
「だな、オレも豪華な披露宴とか、祭典とか苦手だな!」と謂う
「ボク子供だから、母しゃん…」
「却下!おめぇが介入したなら最後まで見届けろや!」
「でも真贋も参列よ?」
「オレはお前か表の時は出ねぇよ………井筒屋の沢庵ねぇだろうし!」
「井筒屋の沢庵ないのよね………」
真剣な顔で言う親子に、玲香も清隆も瑛太と言葉がなかった
榊原は「祝賀パーティーで沢庵出したら、貧相な祝賀パーティーになるじゃないですか!
我慢しなさい!」と謂う
烈は「そうよね、父しゃんは参加だもんね!我慢するわ!」と言いニャッと嗤った
榊原は「え、嘘…………何故に僕が?」と嫌な顔をした
「だって飛鳥井建設の社長じゃない!」
それを言われたら……言葉もない
「僕は、ほら、あまりそう言うパーティーには参加しないので……」
「駄目よ父しゃん、ボク達を社交界にデビューさせた癖に自分は安徽なんてさせる気無いわよ!」
烈が言うと兄達はうんうん!と頷いた
我が子は時として容赦の無い鬼となるのだ………
榊原は「…………僕も賑やかな祭典とか祝賀パーティーとかは苦手なので………」とボヤく
「駄目よ、えーちゃんは会長になりパーティーとかは父しゃんの出番じゃない!」
「………いいえ、飛鳥井建設は会長と相談役も、まだまだ現役なので、バンバン出席可能なんですから!」
榊原の無駄な足掻きだが、烈もそれに乗り
「そーよね、えーちゃんもじぃさんも元気だもんね!バンバン働いて貰わなきゃ!」と謂う
瑛太は「嫌ですよ、やっと社長職から抜け出せたのに!」と謂うと清隆も
「そーですよ!やっと会長職から抜け出せたんですから!」と謂う
「そんな安徽させる為じゃないから!」
烈が言うと康太も「だよな、飛鳥井で安徽出来る場所なんてあるかよ!
伊織の上行く鬼だと言われてる宗右衛門がいるんだからな!」とトドメを刺す
皆が「それもそうだ!」と笑うと、賑やかな朝の風景がやっと戻って来た感じがやっとした
ビシッとスーツを着たケントが「烈、時間だ!」と呼びに来ると榊原は立ち上がり烈の着物を直してやった
そして玄関まで送り届けると火打ち石で
「それでは何事もない様にお祈りしております!」と言いカチカチと厄を払った
そして深々と頭を下げ見送る
烈は父に背を向けると、ケントと共に出て行った
榊原は火打ち石を戻すとキッチンに戻って何事もなく食事を始めた
慌ただしい朝の一時
皆 食事を終えると会社へ、そして学校へ幼稚舎へと出掛けて行った
烈はケントの車の中でもPCを取り出してポチポチ
まだ腕を吊った烈はクーに手伝って貰わねば着物も着れない状態だった
烈は「あ~不便ね腕の骨折は!」とボヤく
地獄界から帰還してまだ一ヶ月も経ってはいない……
傷も治ってはいなかった
毎日消毒に行き手当をして貰う
一般的に骨折は3ヶ月から6ヶ月掛かると謂う
久遠は烈は更に時間が掛かるから無理はするな!と言われている
まだまだ不便な生活は続くのだった………
堂嶋に会うまでには頭の怪我と顔の傷はなんとかしたかったけど………土台無理な話だからこのままで行くしかなかった
国会議事堂の来賓駐車場を事前に申請して停める許可を取っておいたケントは駐車場の管理者にそれを提示して中へと入る
そして車から降りると国会議事堂の前に堂嶋正義が待っていた
烈を見て近寄り……足を止める
「どうなさったのですか……その怪我は一体………!!」と驚き言う
打撲の腫れや鬱血して黒くなってた跡は治っていたか、顔にはまだ絆創膏が貼ってあり、腕を三角巾で吊っていて痛々しかった
「骨折なさったのですか?」
「そーなのよ!暴行の数々を受けて十日間意識不明の重体だったのよ!」
「…………それは………聞いておりませんけど……」
「まぁ人の世で起きた事じゃないからね!
それより総理にご挨拶致したいわ!
そして堂嶋正義、貴方と会談した後、記者を入れて会見をする予定なのよ!」
「それは軽くお聞き致しました………」
「ならサクサクやるわよ!
ボクは今 超多忙なのよ!」
と言われ動き出す
門倉一族を滅ぼした後だから…………噂が噂を呼び………皆恐ろしそうに烈を見ていた
烈はそんな事は眼中になく、サクサクと進めていく
まずは任期満了し、総理の座を明け渡す事となっている安曇勝也にご挨拶!
烈は総理大臣の控室を尋ねた
総理大臣は飛鳥井家 宗右衛門の訪問を待ち受けていた
烈は総理の控室の中へ入ると、深々と頭を下げ、皇居の方向へ一礼した
そしてソファーの前へと案内され歩を進める
総理が「どうぞ、腰掛けられて話をしましょう!」と謂うと烈はソファーに座った
烈は宗右衛門の声で「総理におかれましては4期見事に勤め上げられ御苦労に御座いました!
今後は後進育成の為、目を光らせて戴きたいと思っております!」とご挨拶した
安曇勝也は次期の総裁選には出馬しない!と表明した
だが総裁選には出馬しないが、議員である事まで辞めた訳では無い!
総理は「宗右衛門に置かれましては、態々のご足労有り難う御座います!
本日 起こしの御用とは?何でしょうか?」と問い掛けた
「儂は鷹司緑翠から直々に堂嶋正義の後見人を仰せつかった!
それ故、総理に御挨拶し、労いの言葉を掛けると共に大々的に堂嶋正義と謂う男の道筋を立てるつもりで、こうして参った所存です!」
と堂々とした態度で謂う
「道筋……それは貴殿が立てねばならぬ事なのですか?」
「そうじゃ、堂嶋正義にはこの倭の国と心中して今後は立って貰うつもりじゃ!
だから堂嶋正義が内閣総理大臣になろうとも、妻を持つ事は許しせぬ!
其れを此処に大々的に知ら示る所存じゃ!
乱世の世に突入する大変な時期に、浮かれて新婚生活などしてみろ!
総理は一体何処を見て政策をしているんだ?と非難轟々じゃからな!
この年まで独身で来た己を恨むしかない!
今後は堂嶋正義は倭の国と心中する勢いで、この国の為に生きる事を此処に宣言する!」
此処までの筋道を立てられて………ファーストレディーがいくなば洒落にならん!とは謂えはしない
何とも見事な手腕!
安曇は「其れでは堂嶋正義、飛鳥井宗右衛門の言葉を聞き、倭の国と心中なさい!
惚れただの言いたかったら、もっと身の軽いうちにやるべきでしたね!
今まで独身貴族を楽しんだのです!
諦めなさい!もう君は伴侶を持つ事すら許されはしない立場となるのです!」と言い乗ってやった
堂嶋は二人から言われ
「飛鳥井宗右衛門殿の言葉を重く受け止めさせて戴きます!」と言った
烈はニャッと北叟笑んでいた
不動の立場になる男の痛くもない腹を、此れで探られなくても良くなった
宗右衛門は「堂嶋正義、数年の後に活きの良い、勢いのある政治家が4人、誕生する!
共に行ける政治家もおれば、手強い政治家も突入してやる!
一筋縄で逝かぬ政策を叩き出せねば、根底からイチャモンに近い論破される日も、そんなに遠くはないじゃろう!
まぁ楽しみ待て!今 儂が心血注ぎ育てておるからな!乱世の世を生き抜く力を溜めておけ!」と嗤いながら謂う
堂嶋は「お手柔らかにお願いします!」と謂う
「お手柔らかにしてやったら、手応えを感じぬではないか!
一つの政策を通すのに、身も心も窶しではくば楽しくないではないか!」
「…………んとに………この年寄は……意地悪だからな!」とボヤいた
宗右衛門はガハハハハハハハハハッと笑い飛ばした
安曇は話を終えると「その手………どうしたんだい?」と尋ねた
「それは閣下に聞くと良いのね!」と謂う
そして再び宗右衛門の声で
「其れでは堂嶋正義、国会中練り歩き会談と洒落込もうではないか!」と謂う
堂嶋は「はい、でも無理なさらない様に!」と心配で言う
「まぁ気絶したら母の所へ連れて行ってくれればよいだけじゃろ!」
「お連れしますとも!」
堂嶋は国会中、宗右衛門と共に歩き御挨拶した
概ね反感を抱く輩を其の眼に写し、チェックする
三木繁雄が烈を見ると「烈!どうしたんだ?痛々しい!大丈夫なの?」と心配して声を掛けて来た
烈は「繁ちゃん近い内に話がしたいわ!」と謂う
三木は「あぁ、国会中じゃなきゃ、何時でも時間を作るよ!」と言った
「此れから対談なのよ!」
「なら影でお前を見守るとするよ!」と言い着いて来た
烈は今枝浩二と待ち合わせ時間に、合流し堂嶋と三木と共にホテルの部屋に場を移した
烈は安曇に言った事を今枝にも言う
今枝は「今後 堂嶋正義議員は………独身のまま……と謂う事ですか?」と問い掛けた
「そうじゃ!今まで選べる時間も婚姻する時間もあったのに、やらぬ方が悪い!
独身貴族を楽しんだのじゃから、今後は国の為に命を懸けて尽くす事にするのじゃ!
此れは決定で有って、可能性の話をしておるのではない!」
圧倒的な言葉
圧倒的な存在
圧倒的な未来
堂嶋正義は倭の国と心中するつもりで、頑張ります!
と言葉にすれば、皆は………納得する
「ファーストレディーは不在でも、世の中には何も言わせぬだけの理由はあるのじゃよ!
堂嶋正義は過去に愛したおなごがおった
二人は堂嶋正義が押しも押されぬ政治家になったら夫婦になろう!と約束しあった
が、妻になるべく人はスキルス胃癌で他界した
それ以来堂嶋正義は誰にも惚れず、彼女以外は妻には娶らぬ!と誓いを立てて生きて来た過去がある!
本人はその事は一切口外はしておらぬ
秘める愛じゃった
今も堂嶋正義は亡くした恋人を愛して、他を望んではおらぬ!
儂も………遥か昔……愛した妻がいた………
じゃが色んな事情が夫婦でいるのを拒み…………儂は妻じゃったおなごの手を離した
愛したおなごは遥か昔から妻だけじゃった!
その想いは幾ら月日を重ねようとも変わらぬ!
儂は四半世紀独身を貫いた
それは飛鳥井宗右衛門を調べれば、飛鳥井宗右衛門は独身を貫き通したと出るじゃろう!
じゃから儂は堂嶋正義の想いがよく解るのじゃよ!
政治家としてだけの飾りの妻など要らぬ!
それが堂嶋正義と謂う漢なのじゃよ!」
今枝は宗右衛門の言葉を一文一句違える事なく文字に起こした
堂嶋正義も「俺は今後も政治家として最善を尽くし、此れから政治家になる奴等に負ける事なく逝くと誓います!」と言った
この会談は翌日のスポーツ新聞の一面を飾り、そのスポーツ新聞は飛ぶように売れた
大役を終えた烈は約束通り気絶して、堂嶋は烈を抱っこして三木と共に帰って行った
今後、堂嶋正義が総理になったとしても、独身のままでいたとしても、身の立つ様に………
烈が目の前の大きな石を取り除いてくれたのだった
堂嶋は烈を抱き上げて飛鳥井建設へと向かった
今の家は何処にあるか?解らないからだ
連絡を受け取り榊原は直ぐ様迎えに行き、来賓室に二人を招き入れ、康太を呼んだ
康太が来賓室にやって来ると気絶して寝ている烈の姿があった
康太は烈の頭を撫で
「宗右衛門は何しに行ったんだよ?」と問い掛けた
堂嶋は「烈は俺が独身でいても身の立つ様に根回しをしに来てくれました!」と答えた
康太は「そうか………オレの果てが悉く狂ったかんな!烈は大きな障害物を取り除きに行ったんだな
って事は……総理になるのは正義か……」と言った
足らないと想っていたけど…………射程範囲だったんだな
だが堂嶋は「嫌、俺は今回は立候補すらしてねぇよ!」と言う
「え?なら誰が総理になるんだ?
やっぱ二階堂晃嗣か?」
烈はパチッと目を開けて「二階堂じゃ3歩足りにゃいわよ!此れから党の幹部らが派閥の枠を超えて話し合いが持たれるわ!
どうして二階堂はあぁも弱腰にゃのかしら?
母しゃんさぁ蹴り飛ばして発破かけるべきだったにょよ!」とボヤいた
康太は「え?二階堂じゃ3歩も足らねぇのか?
勝也の後釜に据える気だったのに………」と唖然となった
「強気に出られにゃい政治家ってのが一番人々の眼に留まらない政治家になっちゃうにょのよね」
「二階堂は弱気な政治家だったのか?」
「そうね、増渕が分裂して勢力を削いでる時こそ、やっつけてやる気で闘えば良いのにさ!
ヤラレっぱなしで………あ~もぉ!ストレス溜まる!って国会討論見ててりゅーまがブツブツとボヤいてたわよ!」
「オレは基本、政治家に興味もねぇからな……
わざわざ国会の討論会なんて見る気ねぇかんな
見とけばえかったのか?オレ?」とボヤいた
康太の呟きに榊原は
「駄目ですよ!康太にそんなのを見せたらテレビ持ち上げて、あ~もぉ~!何だよ!此れは!って暴れてテレビは無事じゃないです!」と言う
烈は父の言葉に「それもそうね!」と納得した
皆は……おい!そこ!納得する所か??と思ったが何も言わなかった………
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