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第9話 世紀の挙式 ❸
閻魔は言葉もなく青褪めていた
神威は「伝える事は伝えたからな!
儂は今日は昼まで寝る!絶対に起こすんじゃねぇぞ!」と念を押し自分の部屋へ行ってしまった
閻魔は「烈………覚悟はしてましたが………この現状……どうなるのでしょうか?
まぁ我等は人の世の事には口は出せぬが………人の世を護るべき神の不在は、やがて魔界にも影響を齎すのではないでしょうか?」と口にした
烈は「あの力……倭の国の神を吸収しただけの力じゃないわ………各国に知らせて今一度神の所在を確かめられた方が良い時期なのかもね………」と言う
「解りました、世界に向けて通達しておく事にします!
烈は………神々の不在……何処かで解っていたのですか?」
「天変地異が起こり過ぎなのよ
神々がそれを阻止して国を護らねばならない!
我が母は………大歳神の妻は…倭の国の為に身を賭して黄泉の旅路を渡って消えた………
大歳神の目の前でね………以来大歳神は独身を貫き………今も妻を愛して過ごしている
話は逸れたけど、神々が天変地異で動いた気配がないのよ、感じられないのよ
大雨で被害が各地に出てるのに……雨神を尋ねても、不在ばかりで、調べたら少し前から姿を見た者はいない…………
だから今回大歳神に神々の所在を確かめて貰ったのよ!」
「そう言えば………人の世では天変地異が起きてますね………
魔界だけでは捌ききれない死者がやってき過ぎなのです………
過密な死者に魔界はパンク寸前………烈が地獄エリアの無駄な場所を改革してくれたから、まだ何とかやって行けますが……更に死者が増えるなら……パンクは必殺………なので何とかして貰わねばなりませんね!」
「そうなんだけど………ボクでは何とも出来ないのよね………元々ボクはそんなに力がある神じゃないからね!」
「それを言うなら私だとて力のある閻魔ではありません!しかも皇帝閻魔の後だったから……比べられて………悔しい思いなら沢山しましたよ!」
閻魔と烈は顔を見合わせて笑った
そして思い出した様に
「あ、婚姻の儀の時は華絵と尊は魔界へ還り、皆にその存在を知ら示める必要があるから、戻す事にしたわ!」
「なら私が迎えに行きましょうか?」
「大丈夫よ、そろそろ来るんじゃないかしら?
二人には神の道を契約させたから、今後は何かと魔界へ還り仕事をして貰うつもりなのよ!」
「そうなのですか………妻と倅はきっと頑張ってくれるのでしょうね!」
そう話をしていると「ごめんください!」と素戔嗚尊の屋敷を訪ねて来る者の声が響いた
素戔嗚尊は出迎えに行くと
「烈、閻魔の妻子がお見えだ!」と言った
「なら、あまちゃんに衣装の着付け頼まなきゃ!
えんちゃんは倅に衣装を着せるのよ!」
閻魔は嬉しそうな顔をすると「ならば二人は私の家へ連れて行き着替えさせましょう!」と言い、愛馬に妻と倅を乗せて邸宅へ戻った
素戔嗚尊は「烈………今は黒龍の婚姻の儀の事だけ考えて動かれよ!
その後の事は………まぁ炎帝が動くであろうて!」と謂う
烈は「最近………母しゃんはボクがいるから、面倒なのは全部ボクに放り投げだから、動いて貰えるか解らないわよ、ねぇ、カズ、そーちゃん!」と烈は一生と聡一郎に話を振る
一生は笑って「だな、最前線に出るのは何時だって康太だったのに、今はお前に放り投げで最悪の事態にならねぇと出ねぇよな!」と謂う
聡一郎も「ですね、倅がマメだから、母は楽してるんでしょうね!
僕も早く永遠が頑張ってくれたならば、楽して過ごしたいのですがね!」とボヤく
「そーちゃんは結構永遠ちゃんに仕事放り投げしてるじゃない!
後数年もしたら、そーちゃんは孝行息子に楽させて貰えるわよ!
カズもね、北斗に楽させて貰えるわよ!」
「「烈!」」と言い一生と聡一郎は烈を抱き締めた
其処へ康太が榊原とやって来て
「朝から暑苦しいやんか!」とボヤいた
目の前には榊原と相当熱い夜を送ったのか…………艶々の康太が立っていた
烈は「もぉ嫌になる程に……」と謂うと聡一郎も「艶々………」とボヤき、一生も「ですがな………」とボヤいた
烈は「カズ、そーちゃん、お風呂に行きましょう!」と言いクー達を連れて一生と聡一郎と共に湯殿へ向かった
素戔嗚尊は康太と榊原の朝食をテーブルに置いた
「烈が戻るまで、朝を食べられよ!」と謂う
湯殿からは楽しげな声が聞こえて来る
康太と榊原が朝食を食べ終わる頃、烈達は湯殿から還って来た
トキまでも艶々だった
トキは「今日から時間障壁は儂も立ち会うとする!」と言った
康太は「なら最後の仕上げは頼むな!」と謂う
皆は立ち上がると、サクサクと時間障壁の修理に出掛けた
康太が時間障壁を可視化させ、烈が破壊させる
クロウ兄弟が瓦礫を集め山積みに積み上げて行く
その山積みの瓦礫は、大歳神が起きたらやるであろうと、山積みにしてあるのだった
実際昼前に起きると、作業に駆り出され、働け!と謂れ、根っこを伸ばして瓦礫を土の中へと取り込み、分子レベルまで分解して地中に還す、それを繰り返しやらされていた
「寝起きでやる仕事じゃねぇやんか!」と大歳神はボヤきながら瓦礫の分解をしていた
ガブリエルが新しい時間障壁をクー プー ルー スーと共に張る
トキが総仕上げの呪文を唱える
一生と聡一郎はガブリエルを手伝い、時間障壁を張っていた
そして時々、烈の指示で警護の方へ出向き、抜かりがないか?確かめに行く
そして時間障壁を全て張り替え、康太も何者も入り込めない様に呪文を唱える
その上からトキが呪文を唱える
そしてやっと時間障壁の、張り替え工事は完成した
夕刻には地獄界での婚姻の儀の為に、閻魔、素戔嗚尊、建御雷神、転輪聖王は、黒龍に同行して地獄界へ向け出発する予定だった
だからこそ時間障壁を完璧にして送り出したい想いもあったのだ
何日も何日も掛けて婚礼の儀に付いて話し合った
そして烈は寝る間も惜しんで婚礼の儀のスケジュールを立てたのだ
絶対に失敗は赦されない
魔界の今後を左右しかねない警備システムや防衛システムも確かめられるのは、こんなイベントでも無ければ無理な事なのだから………
時空障壁を張り替えを終えた烈は、閻魔の妻と倅を迎賓館へ連れて行った
迎賓館へ入る前にカフェの店員と話をしたりしていたから、店員は「今日はお美しい方と利発そうなお子と御一緒なんですね!」と話し掛られていた
烈は会社でも魔界でも、常に皆に目を向けフランクに声を掛け話をする
カフェの前には結構な魔族が寛いで美味しいスィーツや女神像を見に来ていた
烈は「この女性はね、閻魔大魔王様の妻の豊乃姫と申される方です!
御母上は豊玉姫の御息女であられましたが、婚姻を反対され駆け落ちして、お子を生まれた
その子が豊乃姫なのよ!
そしてそちらのお子は次代の閻魔大魔王、雷帝殿に在られます!」と御紹介した
閻魔の妻と謂う存在を目にした事がなかった魔界の住民は皆 歓喜して【閻魔様の奥様とお子様であられましたか!】と深々と頭を下げた
烈は華絵を肘で突っつき目で合図をする
「私は閻魔の妻で豊乃姫と申します!
今後は皆と一丸になり魔界を守り育てる所存故、皆 頑張って行こうではないか!」
と男前にご挨拶!
その姿が何処か天照大御神と重なり………皆は歓声を上げた
倅の尊も不敵に嗤い………自己紹介しようとしたが
「あぁ、尊はまだ早いから!」と引き摺られ迎賓館へと連れられる
豊乃姫と名乗った姫はガハハハハハッと笑い飛ばした
綺麗なドレスは着ているが……そのブレない体の軸に……強さを感じていた
烈は「一応姫と名乗るんだからガハハハハハッは駄目よ!」とボヤく
尊は「烈クン、君が母様を鍛えたんだから仕方ないじゃない!」とボヤく
「ほら、尊もえんちゃんと一緒に雷注いで!」
と発破をかける
建御雷神と閻魔と次代の雷帝が雷を搾り取られ……ヘロヘロになる
「えんちゃんとたけちゃんはそこら辺で良いわ!
今夜から地獄界入りするんでしょ?
ヘロヘロは避けたいからね!」と謂う
建御雷神は「親子3代………雷絞られヘロヘロとは……」とボヤく
「たけちゃん!ボヤかない!」と謂うと尊は「じぃちゃん、ガンバ!」と励ました
その屈託のない笑顔は…………現閻魔大魔王の幼少期の顔とソックリで……建御雷神は泣きながら
「孫に応援されるから頑張るわい!」と言った
烈は迎賓館にいる女神や神々に
「閻魔大魔王が現妻 豊乃姫に在られます!」と紹介した
豊乃姫と呼ばれた姫は、ドレスの裾を少しだけ左右に持ち膝を折ると「豊乃姫と申します!以後お見知り置きを!」とご挨拶した
康太と榊原がいるのを知っていて、烈は華絵を紹介したのだった
康太は「豊乃姫か、良い名だ!」と納得
豊乃姫は康太を見付けると「炎帝!青龍!」と駆けて来て「ドレスは長いから踏んづけそうじゃねぇかよ!」と笑い飛ばした
迎賓館にいた皆はとても美しい女性が閻魔の妻だと皆に知らされ紹介され歓喜に震えていた
とても高貴な方なのだと思おうとしたが………
その豪快さ、屈託のない笑顔
何処か天照大御神を想像させる姫の存在に、皆好感を持った
康太は「めちゃくそ美しいやんか!」と絶賛
「おー!今日は化粧したからな!」
笑っていると、テラスから男が豊乃姫目掛けて刃構えて飛んで来た
烈は即座に槍を放った
豊乃姫はその槍を手にすると、見事に暴漢を薙ぎ払い、あっという間にねじ伏せた
「クソ!閻魔の妻なんて!!身分の低いどこの馬の骨とも解らねぇ女じゃねぇか!」
と暴漢は叫び喚き散らした
烈はソイツの頭を踏み付けると
「失礼ね、この方は豊玉姫の御息女のお子、命を狙われぬ様に隠してお育てした存在!
どこの馬の骨か解らないのは………お前でしょ!」
と言い男の体の下に魔法陣を出して、あっという間に男を消し去った
「閻魔大魔王の妻を暗殺しようなんて不届き者は、無限地獄なんて甘い、無限牢獄要塞へ落としてやったわ!二度と再び魔界の地を踏めるとは想うな!」
宗右衛門の声で地を這うような低い声で告げられ………その場にいた者は………冷や汗を流していた
烈の横にはクー プー ルー スー トキが護る様に立っていた
トキは「空気の入れ替えだ!」と羽根をバタバタすると、突風が迎賓館の中を突き抜けて行った
華絵は強い風にドレスの裾を押さえて「パンツ見えるだろうが!」と怒った
そして「皆 片付けるぞ!魔界は地獄界の姫をお迎えせねばならぬのだ!
ゴミ一つ、チリ一つ許しはしない!
皆 そのつもりて動くぞ!」と発破をかける
皆 自分の持ち場に戻り、片付けをする
トキは素戔嗚尊にゴツンとゲンコツを落とされ一つ涙目で「クワァァァァ〜」と鳴いていた
烈がトキを撫でてやり「今夜も一緒にお風呂入るわよ!」と甘やかす
トキは「烈ぅ〜!烈ぅ〜!」と鳴いていた
が、素戔嗚尊が頭を撫でてやると「素戔嗚殿ぉ〜!痛かったよぉ〜!」と甘える
スーは「何や腹減ったんやけど………」と昼食ってねぇぞ!の催促をする
プーも「やわな!腹減ったんですわ!」とハンガーストライキをする
烈は「なら遅いけどお昼食べに行くわね!カズ、そーちゃん!」と言い、素戔嗚尊の屋敷に向かう
「母しゃんも父しゃんもお昼よ!」と言い「アル君たち!!」と愛馬を呼ぶ
一生と聡一郎は「「たち??」と不思議そうに呟いた
するとアル君×5頭が飛んで来た
聡一郎は「何よ!このラブリーな集団は!」と喜んだ
一生は「こうして見ると、アル君は育ってるんだな!」と少し大きくなってるアル君の姿に感慨深く呟く
烈は×5の天馬を並べた
「右からマロン マカロン モンブラン プリン タルトよ!首輪に名前書いてあるから!」
聡一郎は「また腹減りの時に名前をつけたのですね!」と怒る
「そーなのよ!お腹減ってて………美味しそうに見たんだもん
そーちゃんとカズにあげた馬も………ボク…チョコクロ食べたくて……チョコクロに見えちゃったんだもん」
横で康太は腹を抱えて爆笑していた
「おい!伊織チョコクロだって!オレも食いてぇな久し振りに!!」
「ならば還ったら買いますとも!」
と榊原は言う
一生と聡一郎は愛馬を呼び、それに乗る
烈はアル君に乗り飛んでいた
その横で×5頭も飛んでいた………
聡一郎は「スィーツ兄弟!仲良く飛んでますね!めちゃくちゃ癒されます!」と言いご機嫌だった
康太は天馬に乗り「スィーツ兄弟!!めちゃくそ美味そうやんか!
烈、オレにお前の考案したスィーツ食わせろ!」と叫んだ
烈は「仕事終わったら、カズ、人数分貰いに行ってね!」と謂う
一生は「了解!」と答えた
腹減りな大歳神は「儂はもう今日は動かんぞ!」と謂い
「昼を食わせろ!酒を飲ませろ!」とボヤく
素戔嗚尊は大歳神の我儘発言を笑って見て
「儂は夕刻には、花婿と共に地獄界へと立つとする、後は頼むぞ!倅よ!」と倅に託す
「あぁ任されよ!夕飯は食堂へ行きたらふく食べるつもりだし大丈夫であろうて!」
作らぬのか…………まぁスボラな大歳神だから……それもありだな、と思った
烈達は皆で昼ご飯を食べて、迎賓館へ戻った
そして花嫁を迎えるべく、皆頑張って準備に励んだ
そして夕刻になると、地獄界へ逝かれる花婿の黒龍と、見届人として地獄界へ同行される閻魔、建御雷神、転輪聖王、素戔嗚尊を、見送る為に崑崙山まで向った
炎帝、青龍、赤龍、地龍、金龍、銀龍、雅龍、黄龍、そして神々達が崑崙山まで見送りに出た
一般の魔族も見送りに来れる者は見送りをしに行き、花婿 御一行様は、皆の歓声に後押しされ地獄界へと旅立って行った
ルーとスーは建御雷神と転輪聖王の服に忍び込み、トキは素戔嗚尊と共に逝く
地獄界へ向けて花婿を乗せた馬車を護る様に並走して走る
桃源郷に入ると、噎せ返る程の甘い花の香に包まれ、更に走り四時間程で地獄界へ到着した
婚礼の儀のスケジュールは烈が立てた
何度も何度も話し合い調整重ね、スケジュールを立てたのだった
烈の立てたスケジュールは以下の通りだ
【①地獄界に到着した黒龍達は、花嫁が待つ龍王の屋敷を尋ねられ、即座に婚礼の儀を挙げる
②婚礼の儀を終えたお二人は夫婦の儀を行い、初夜を迎えられ、名実共に夫婦になられた事を確認
③名実共に夫婦になれました事を、地獄界の皆に報告され、地獄界と魔界の友好条約を全面的に押し出し祝賀ムードをに包まれ祝う
④翌日の夕刻は桃源郷で、ご両親とお別れの儀を執り行なう
花嫁は別の屋敷でご両親との時間を送られ、龍王夫妻は嫁がせる娘御とのお時間を過ごされる
⑤翌朝、神々に見送られ花嫁と花婿は同じ馬車に乗り、龍王夫妻、見届人と共に魔界へ入られる
⑥魔界へ入られたら迎賓館へお越しになられ、花婿の両親、家族と顔合わせをする
⑦そして翌日迎賓館で世紀の挙式を挙げる事になる】
このスケジュールは魔界の同行人は無論、地獄界の龍王や羅刹天、元始天尊達に渡され
婚礼の儀を用意する者達に配られた
花婿御一行様は地獄界へ到着して直ぐ
龍王の屋敷を訪ね着替えると直ぐに、婚姻の儀を執り行われる事となった
烈が用意した龍族婚礼衣装に身を包み支度をした黒龍は高砂席に座らされ、盛大な婚礼の儀を挙げる事となった
皆に祝われ、古式ゆかしき婚礼の儀がしめやかに執り行なわれた
婚礼の儀は予定通り終わりを迎えると、黒龍と紅花との婚礼は地獄界の皆に知ら示められた
国民は皆 目出度い婚礼に喜び、祝福ムード一色になった
黒龍と紅花の婚礼こそが、魔界と地獄界の絶対の友好条約だと前面に引き出し、絶対のモノにする!
それが烈が打ち立てた友好条約の手立てだった
絶対にこの婚礼は邪魔はさせない!
その為に烈は地獄界へは行かず、ルーとスーとトキに託し、崑崙山で見送る事にしたのだ
婚礼の儀が終わると、立会人が数人、初夜を見届ける事になり、夫婦の儀を迎える
2つお布団を並べられた前に、白い夜着を来た二人は互いの手を取り、緊張しながらも………見つめ合っていた
やはり御簾の向こうにいる見届人の存在に緊張を隠せずにいた
見届人はずっと見つめ合うお二人に
「そろそろ始められては………」と声を掛けた
黒龍は覚悟を決め紅花の白い夜着を脱がした
紅花の艷やかな白い肌を見た瞬間………理性を飛ばし、黒龍は紅花を抱いた
二人は互いを求め合い……一つに繋がり蕩け合い、何度も何度も繋がり愛し合った
それはそれは熱い営みに………見届人の体が火照る程だった
男性は性器が勃ち上がり隠すのに苦労し、女性は下着が濡れて………膣が蠢き……肉棒を欲して困る程に……熱くて、姫の喘ぎ声は止まる事なく………
褥は精液の匂いで噎せ返る程だった
見届人達は二人が果てたのを確認すると、ご夫婦の契を龍王へ御報告へ向かった
「お二人は見事に御夫婦になられました!
見てる此方が辛い程でした…それ程に熱い初夜を迎えられました!」と告げられた
「紅花殿は何度も果て……それでも黒龍殿は留まる事なく紅花殿を抱き続け、気を失われていても紅花殿はイカされ続け熱い夜に御座いました!」
見届人は頬を染めて龍王に伝えた
龍王は涙して………良かったな紅花……と呟いた
夫婦の儀を無事果たされ、魔界の龍族の長 黒龍と紅花は名実共に夫婦になられたと告げられた
それを龍王は地獄界の者達に声高らかに知ら示めし、祝い酒が振る舞われ、御二人の結婚を祝う熱気は冷めやらぬ祝いムードが続いた
龍王の屋敷で御夫婦になられる時を待ってい神々は龍王に祝辞を述べ、魔界の閻魔に挨拶をした
素戔嗚尊 建御雷神 転輪聖王 は天魔戦争の覇者として地獄界でも名を馳せていた
魔界の英雄と閻魔の同行に、地獄界の者は喜び歓喜の声を上げた
が、神々は「聖神はお越しではないのですね?」と一度お会いしたかった………と神々は口にした
元始天尊は「聖神は今は人の子で、未熟児で誕生したと謂う事もあり、皮膚が弱く………傷もそうだが………まだ骨折が治ってはおらぬのじゃよ!」と告げた
地獄界の暴動で怪我をして、一時は意識不明の重体だったと言われれば………言葉もなかった
祝賀の儀は盛大に開かれ、地獄界は祝いのムード一色になっていた
夕刻になると龍王ご夫妻と花嫁は桃源郷へと、花婿御一行様と共に向かった
花嫁は地獄界から魔界へ嫁がれる
嫁ぐ娘との別れの時間を送る
嫁がせる龍王夫妻は、遣る瀬無い気持ちで桃源郷へと向かう
あぁ………本当にこの子は嫁いでしまうのだ………
そんな気持ちで馬車に揺られ、桃源郷へ着くと、炎帝と青龍が待っていた
炎帝は龍王夫妻を目にすると
「本日は誠におめでとうございます!
我は炎帝に御座います!以後お見知りおきを!」と龍王にご挨拶をした
龍王は地獄界の炎帝とは格が違う………とその秘めた力を見て実感した
そして青龍も「本日は我が兄の婚礼の儀故、警護に馳せ参じました!青龍に御座います!
以後お見知りおき!」とご挨拶した
やはり青龍も格段と風格も威厳も兼ね備えている姿に差を感じずにはいられなかった
花嫁は桃源郷でご両親と過ごされ、お別れの儀を執り行なう
初めて地獄界の【外へ】嫁がれる事となる花嫁を想い、スケジュールを立てた
今後は地獄界から魔界へ嫁がれる者も出るやも知れぬ
それ故の【初め】となられる婚姻の儀となるので、重きを置いたカタチとなった
花嫁はその夜はご両親と共に過ごされ、花婿は別の宿で過ごされる事となる
永遠の別れではないが………【嫁ぐ】と謂うのは別の人生を送ると謂う意味合いで、親御様との別れの時を分かち合う
そんな時間を送られる花嫁の気持ちを慮る儀式だった
黒龍は炎帝達と同じ宿で過ごす事となる
炎帝は「お疲れか?相当熱い夜を送られたのだな!」と揶揄した
黒龍は「惚れたからな、哀しい妻になど絶対にしない!それが俺が出来る烈への想いだからな!」と言葉にした
「幸せになれよ!オレはお前が伴侶得れる運命があった事が………めちゃくそ感謝したい程に嬉しい!」
「俺もそんな人生があったのかよ?と不思議に想った程だ………でも一目で恋に落ちる………
大切な人を腕に抱き……愛が溢れて来る事を知った
烈が前に言ったんだよ
『愛は溢れて来るモノで、愛そうと努力するモノではないのよ?』って……
その意味を知る日が来て……俺自身……感謝したい程に……幸せだ!」
黒龍は本当に嬉しそうに笑い話す
青龍はそんな兄の顔は見た事がなかった………
何処か寂しそうな笑みしか………見た事がなかった
あぁ………兄さん………貴方も愛する存在を手に出来たのですね………と言葉もなかった
素戔嗚尊 建御雷神 転輪聖王は閻魔とルーとスーとトキと楽しく飲んで笑っていた
このまま何事もなく………魔界へ入り世紀の挙式を終わらせたい!と想っていた
桃源郷を後にすると、嫁入り行列は魔界へ入られる
そして迎賓館で世紀の挙式を挙げる事になる
また油断出来る程に楽観視は出来る状況ではなかった………
龍王夫妻は嫁ぐ娘に………
「限界を感じたならは………何時でも還って来なさい………お前が出戻りしたとしても、魔界との友好条約が反故にされるわけでは無いのだから………」と言葉にした
龍王の妻は涙を堪え、わが子を抱き締めた
紅花は「黒龍を夫として共に生きると決めたのだから………私は彼と共に生きる覚悟で参ります………
友好条約がどうとか、私は考えてはおりません
別に私の婚姻でどうかなる友好条約ならば、先が見えているではないですか!」と謂う
我が娘は強くなった
元々強かったのか?
それとも愛を知り強くなったのか?
龍王夫妻は娘との時間を惜しみ…………見守ると心に決めた
誰よりも幸せであれ!我が娘よ!
生まれて初めて親子で川の字で眠った………
翌朝 朝食を食べ支度をして桃源郷を立つ
花嫁御一行様は魔界へ向けて走り出した
閻魔は「……このまま……何事もなく魔界へ入りたいです!」と願いを口にした
閻魔の服に忍び込んだクーが「あ~!それ死亡フラグですがな……」とボヤいた
桃源郷を地獄界の神々に見送られ出る
仙界の領域に入ると、とても静かで何も無い風景に変わった
八仙の屋敷を通り過ぎようとすると………
七賢人 八賢者がズラッと並び見送ってくれていた
炎帝は「よぉラルゴ、見送りか?」と問い掛けた
ラルゴは「嫌、そんな洒落た事を烈がさせるとお思うか?」とボヤいた
鳳凰が頭上を旋回する
何だか物騒な匂いを感じて「さっさと魔界へ入るぞ!」と言った
ラルゴは「あぁそうしろ!後は任せとけ!」と謂う
トキはラルゴの横に立つと「龍王よ、桃源郷からコッソリ着いて来られた此奴等はお知り合いか?」と問い掛けた
龍王は馬車から顔を出し後方を見ると
「良いや、全く知らぬ存在じゃ!」と呟いた
「なら消し去れば良いな!
烈、消して良いってよ!」
とトキが謂うと烈が一個小隊を引き連れて、お出迎えに来ていた
「ほーちゃん、何人位いるぅ?」
「少なく見積もっても30だ!」
「そう、ならば地獄界へ強制送還するとするわ!
母しゃんが頑張っちゃったら……全滅だからね!」
烈がボヤくと炎帝は「オレが消してやんぜ!」と謂う
「目出度い日に血生臭いのは御免なのよ!」
烈はそう言い地獄界のご招待していない存在の足元に魔法陣を出した
七賢人 八賢者は頑張って魔法陣を引き伸ばして手伝いをする
八賢者の中でも創世記からいるミルゲと謂う賢者が「強制送還発動!」と頑張って呪文を唱え後ろを着いて来ていた者達を強制送還した
烈は「お師匠、それボクがやりたかったのにぃ〜!」とボヤくがミルゲは笑って
「美味しいとこ盗りが一番じゃからな!」と笑い飛ばした
ラルゴは「さぁ逝くが良い!そして世紀の挙式を完遂して来るのじゃ!それが主の務めであろうて!」と弟子の背中を押してやる!
「ほーちゃん、変なのいたら教えてね!」
烈は天空から鳳凰に警護させ、安全を確保させた
烈が引き連れて来た者は閻魔庁の迎賓館警備部隊の隊員達だった
金龍の武道場で保証された腕前の者達ばかり集めて作られた警備部隊だった
警備部隊の面々は地獄界の来賓達の横に着くと
「ようこそ魔界へお越し下さいました!
此れよりは迎賓館警備部隊の我らが警備して参ります!」と言い警備体制を取った
炎帝は「烈ぅ〜!母ちゃん腕が鳴ると思ったんだぜ!」とボヤいた
「駄目よ、向こうは此方が手を出せばチャンスと想うからね!」と一蹴
アル君に乗りパカパカ平地を走る
その横にはレイがタカシに乗っていた
「おっ!レイ来たんだな!」
「かじゅ、きてくれたにょ!」と一生がお迎えに来てくれたと伝えた
烈と共にレイが走る
ちっこいのが、ちっこい馬に乗り走る姿に龍王夫妻は癒されていた
紅花は「あの子は?」と尋ねると黒龍は「ニブルヘイムです!」と答えた
地獄界の世界伝記の図書の中に、ニブルヘイムと謂う神の話があった
まさか………その神なの?と紅花は思った
迎賓館の前にやって来ると護衛の者達は、一般市民を遠ざけ、龍王夫妻と紅花、同行者を深々と頭を下げお迎えした
烈は「ようこそ魔界へ!お待ちしておりました!」とお出迎えをした
その横には豊乃姫と次代の閻魔が立っていた
メイド服を着た女神達が1列に並び、深々と頭を下げお出迎えをする
閻魔は「さぁ、中へ!」と言い迎賓館の中へと招き入れた
羅刹天はレイを抱き上げ、中へと入る
「レイ、来ておったのだな!」スリスリして喜ぶ羅刹天だった
真っ赤な絨毯の上を通り、迎賓館の中へ入ると
金龍が妻の銀龍と共に深々と頭を下げた
その横には赤龍、地龍が並び、青龍もその横に立った
天照大御神が姿を現し「ささっ、席は用意してある、此方へどうぞ!」とご案内する
羅刹天はレイを下ろすと、龍王夫妻と元始天尊と共に歩を進めた
迎賓館の中でも一番大きく、一番豪華な調度品のある部屋へ案内する
天照大御神はドアを開けて、来賓を中へと招き入れ椅子に座らせた
花嫁と花婿を中心に座らせ、左右に親族を座らせる
地獄界の龍王の倅は次代の龍王として、地獄界を離れる訳にはいかなくて不在だが、婚礼の場には兄も姉も妹も同席していた
今回、魔界の婚礼には出席は出来なかったが、地獄界では婚礼の儀を見届けられたから、良かった………と兄妹は口にした
親族が向かい合わせに並んで座ると、建御雷神が
「それでは黒龍の親族を御紹介致します!」と言った
金龍は緊張してカチコチになっていた
烈は「金ちゃん!ご挨拶よ!」と謂うと、やっと
「黒龍が父 金龍に御座います!」とご挨拶した
銀龍が「黒龍が母 銀龍に御座います!」とご挨拶
赤龍が「黒龍が弟 赤龍に御座います!」
青龍が「黒龍が弟 青龍に御座います!」
地龍が「黒龍が弟 地龍に御座います!」と最後にご挨拶をした
閻魔は「青龍が妻 炎帝に御座います!家族なので同席を許しました!」と口にした
炎帝は「黒龍とは親友で、青龍が妻の炎帝に御座います!」と謂うと
烈が「青龍と炎帝の六男に御座います烈と申します!」とご挨拶した
黒龍は「烈は聖神でご挨拶しないの?」と謂う
「そっちも必要なのね、素戔嗚尊が孫、大歳神が倅の聖神に御座います!
ボクはまだ【人】なので六男で間違いはないのよ!」と笑顔で謂う
龍王は烈の横に座りニコニコ笑ってるレイを目にして「その子は?」と問い掛けた
閻魔は「彼はニブルヘイムに御座います!
彼は烈の為に転生の道を辿られ、生を成した方に御座います!」と紹介した
金龍は「烈とレイは我が孫の様な存在!我等龍族には欠かせぬ存在故 同席を頼み申した!」と口にした
龍王はレイから漲る圧倒的な力を見ていた
皇帝炎帝に匹敵するやも知れぬ力を見ていた
あぁ………そう言えば烈とレイが天界を更地にした噂を聞いた
この二人ならば…………それは可能だな………と龍王は感じていた
レイは黒龍に抱き着き「くろたん………およめにいっちぇも………れいのきょとわちゅれにゃいでね!」と涙を浮かべて謂う
黒龍はレイを抱き上げ
「俺は嫁には行かないってば!レイ
この人が俺の嫁になる紅花だ!」と妻を紹介した
レイが紅花を見上げる
紅花は、何!!この可愛い生き物は!!と感激していた
そーっと手を伸ばしレイの頭を撫でると、柔らかな髪が手に触れ………紅花はレイを抱き締めていた
レイは嬉しそうに笑っていた
烈は「銀ちゃん!」と謂うと銀龍が
「紅花、仲良くして行きましょうね!」と口にした
紅花はレイを離すと「はい!義母様!」と答えた
烈は「メイたんどうしたの?」と問い掛けた
地龍は「………銘がこの様な場には………と辞退したんだよ」と答えた
「メイたんは抜け出せない想いがあるからね………
茶色の少しメイたんと共に人の世に見聞を広げに出るのよ!」と謂う
地龍は何も答えなかった
閻魔は「烈、婚礼の場に相応しくない会話は後でなさい!」と謂う
「そうね、龍王様、どうです?黒龍の御家族は?
銀龍は優しい人だから、絶対に嫁姑のバトルは勃発しないわ!嫁が四人になるけど、どの子の事も気遣い、本当に姑の鏡よね銀ちゃんは!」
銀龍は嬉しそう笑い「烈!!」と言い烈に手を伸ばした
烈は銀龍の手を取ると、銀龍は烈を抱き締めた
龍王が妻 龍后は「黒龍の御家族が優しい方々で安心しました!」と口にした
金龍は「龍王殿が帰られる前に、新居となる黒龍が屋敷を見られてはどうです?
御二人の生活の場がどんな所なのか?
その目で見られてご安心なさって下さい!」と提案した
龍王は「良いのですか?」と其処まで言って貰えるとは思っていなくて………呟いた
金龍は「儂は倅ばかりで、嫁が娘みたいだと思っております!
儂は四龍の兄弟と末の息子天龍と謂う子を持つ
天龍は今 修行に出て不在でありますが、今度お会いする時には烈に許可を取り、呼んでおくとします!」と楽しげに言う
天照大御神は「それでは晩餐の場が御用意出来ましたので、此方へ!」と謂うと案内を始めた
豪華なテーブルの上に料理が並べられ晩餐に相応しい席が用意されていた
龍王は光り輝くシャンデリアが光を放つ様を目にして………
「電気…………ですか?」と問い掛けた
閻魔は「はい!此れは烈が発明した照明機器です!この電気の為に我等親子3代の雷が搾り取られました!」と苦笑する
建御雷神が席に着き、晩餐の楽しい会話として、そのシャンデリアの仕組みを話す
龍王は興味深く、電気の話を聞いていた
そしてどう言う訳か?
「素戔嗚殿の屋敷を拝見するのは無理ですか?」と問い掛けた
素戔嗚尊は「無理ではないが、今は不在だった故………ズボラな倅が留守をしてくれてるので………汚いやも知れぬので………」と言葉を濁した
転輪聖王は「大歳神だからな、汚いかもな!
烈がとぅしゃんは四角い部屋を丸く掃除するからね!と何時もボヤいているからな!」と笑い飛ばした
「汚くても構わぬ、後 紅花の棲む家も見てみたい!」
そう言われ建御雷神は「ならば、先に黒龍の屋敷を見に行きましょう!
黒龍の屋敷は烈肝入りの屋敷で、長に相応しい家を建てさせたんですよ!
今想えば独身なのに2階建て必要か?と思っておったが、妻を娶るのを視野に入れての建築であったのであろう!」と言う
炎帝は「取り敢えず、烈がこの日の為に最高の料理を作らせたんだ!食べようぜ!」と謂うと、皆晩餐を楽しんだ
が、晩餐の席に烈とレイの姿はなかった…………
龍王は「烈殿は何処へ行かれたのだ?」と問い掛けた
青龍は「烈はkcalが高い料理は食べられません!
彼は魔界に来ても、kcalを気にしてヘルシーなのしか口にしませんからね!」と説明した
龍王は「健康志向なのか?彼は?」と問い掛けた
炎帝は「烈は若い頃に塩分多めの飯食ってたから、医者に管理された生活してるんだよ!
今じゃ何処へ行こうともヘルシーなのしか口にしねぇんだよ!」と笑って言う
龍王は若い頃にって………今も十分小さいのに………と想う
「彼は今幾つなのですか?」
青龍は「人の世の年で10歳です!彼は神の本体を捨ててしまわれたので………魔界でも神の体にはなれないのです!」と答えた
炎帝も「ニブルヘイムと聖神は神の体は捨ててしまわれた…………何もかも要らぬと転生の道を辿られた
それでも………この蒼い地球(ほし)の為に小さい体のまま尽力されている
今はオレの子として転生されている!
オレは我が子やちっこいのを護る為ならば、この命を賭したとしても護ると決めている!」と宣言した
母の愛だった
深い深い母の愛なのだ!
紅花は言葉もなく………聞いていた
料理はどれも最高級の食材を使い作られた逸品だった
皆 美味しい料理を堪能され、食事を終えられた
食事を終えると閻魔達は迎賓館の裏に出た
迎賓館の裏は一般の者は立ち入る事も禁止した区域だった
裏口から出て愛馬を呼ぼうとする
が、アル君とスィーツ兄弟が厩舎にいて
炎帝は「あれ?烈いるのかよ?」と呟いた
タカシもいて、馬達は歌を歌っていた
龍王は「魔界の馬は歌を歌うのですか?」と驚いていた
素戔嗚尊が「歌を歌うのは烈の馬だけです!」と教えた
黒龍は「烈の馬は少し変わってるからな!」と謂う
赤龍は烈を探しに向かった
烈はテラスでレイとお茶をしていた
赤龍が「烈、レイ、龍王様が黒龍の屋敷と素戔嗚殿屋敷を見に逝かれる!」と離すと烈は
「え!!じぃさんち行くの??
あ~、とぅしゃんが………汚してるかもだから、ボク掃除に行かなきゃ!」と慌ててた
赤龍は「俺も掃除手伝ってやるから大丈夫だ!」と安心させた
烈とレイは赤龍と共に裏口へと向かう
康太は烈を見て「何処に行ってたのよ?」と問い掛けた
「テラスで持参のお茶を飲んでたのよ!
ボク 家に還ってお掃除するから、黒ちゃんちから見て貰ってね!」と言いアル君に乗った
レイもタカシに乗りスィーツ兄弟と共に飛んで行った
赤龍は「俺は素戔嗚殿の家に行き、掃除を手伝うとするわ!」と謂う
素戔嗚尊が「なら烈に畑に行き、デカスイカとデメロンを持って来る様に言っておいてくれ!」と言う
赤龍は「了解!」と言いチョコに乗って素戔嗚尊の屋敷へと飛んで行った
龍王御一行様を案内して閻魔と建御雷神、転輪聖王、素戔嗚尊と金龍一家と共に黒龍んちへ向かう
康太は地龍に「お前は家に帰ってろ!後で烈から話があるかんな!」と言うと地龍は自宅へ還って行った
黒龍の屋敷は庭もあるし、庭に池もある、立派な厩舎もあるし、立派な湯殿もある
黒龍んちの湯殿は外からは見えなくした作りになっていた
2階建てで、一階には人の世で言うダイニングキッチンに近い作りになっていた
水場は湯も引き込んであり、湯と水が使える
ご飯を作りながら家族の顔が見える作りになっていて、大きなリビングも併設されていた
そして奥には客間が二部屋ある
二階は住居になっていた
2階に部屋は5部屋、寝室と夫と妻の部屋と子供部屋か2つあった
大まかな時間はリビングで過ごせるが、各々の部屋でも過ごせるし、子供部屋も既に完備してあった
龍王は「見事な屋敷ですな!
此れは………どんな素材で建てられているのですか?」と問い質した
閻魔が「この家も聖神考案の建設方法で建てられていて、木材をふんだんに使ってはおりますが、基礎や柱は人の世のコンクリートに近い材質で作られております!」と説明した
龍王は生まれて初めて魔界に足を踏み入れたが、魔界の風景は何処も彼処もモダンな洋風な雰囲気を醸し出していた
レンガ造りの道路にガス燈の様な電気が灯り、世界樹からは光が溢れ、暖かった
綺麗な用水路が流れ、それが家に引き入れられ便利な作りになっていた
黒龍の家は電気はなかったが、ランプか吊るされてお洒落な作りになっていた
龍王は「此処は電気ではないのですね!」と問うと黒龍は笑って「俺は電気は出せないので、烈が種を絞って作ってくれる油でランプを灯しています!」と答えた
閻魔は「まだまだ他の家は電気はありません!
蝋燭だったりしますので、ランプがあるだけでも優遇された生活をしていると思われると良い!
この魔界の生活には聖神のアイデアが織り込まれ、散りばめられているのです!
お恥ずかしい話しながら、蝋燭さえ買えない家もあります!
そんな家には、聖神が蝋燭を配給で定期的に配っています!
火種になる街路灯が低い位置にあるので、それで火を点け家へ持って行く様になっています!」と説明した
地獄界だとて、蝋燭さえない家庭も多くはない
貧富の差は結構大きい………
龍王の屋敷でさえ蝋燭なのだ………ランプがあるだけ凄いと思えた
黒龍の家を一頻り見て回り、龍王達は素戔嗚尊の屋敷へと向かう
素戔嗚尊の屋敷は………龍王が想像しているよりも大きく………敷地も広く………立派で驚いていた
烈が出迎えてくれ「さぁどうぞ!」と皆を招き入れた
閻魔は「大歳神は起きてますか?」と尋ねた
「腹が減ったとボヤいてるわ!
なら晩餐会に参加すれば良いのに、儂はそんな肩が凝るのは嫌じゃ!と本当に我儘なのよ!とぅしゃんは!」言う
閻魔は笑って屋敷の中へ入った
屋敷の中へ入ると、赤龍がデカスイカを切るべくビニールシートを敷いていた
そして畳の様なお皿を出して準備する
青龍と炎帝が仲良くデカスイカをタングステンの包丁で切る
赤龍がせっせとそれを小さく切ってお皿の上に乗せていた
龍王は「その果物は?」と問い掛けた
素戔嗚尊が「此れはデカスイカと申す果物です!
烈は妖精達と種を改良して、沢山の野菜や果物を発明しています!」と紹介した
そして素戔嗚尊はテーブルの上に………クロスを乗せた
「お見えになられますかな?
この方が烈と一緒に種を改良し、沢山の作物を作るのに協力して戴いている妖精界の王子様であられます!」と言う
クロスは「クロスです!宜しくお願い致しますね!」と笑顔で自己紹介した
良く見れば、素戔嗚尊の屋敷は沢山の妖精達がやって来て、デカスイカが縁側に置かれるのを待っていた
黒龍はお皿の上にデカスイカを一切れ置くと、床に置いた
すると妖精達が『ありがとう!』と礼を言い食べ始めた
何時もの光景だった
龍王は「この屋敷は電気なのですね!」と明るく照らされた部屋を見渡して言う
大歳神が「この電気の照明機器は倅が作った祖父孝行の逸品です!
この魔界で一番最初に電気が灯ったのは、この屋敷ですから!
この屋敷から街路灯、主要な庁舎へ電気が灯される様になったんですよ!
あ~!そうだ!烈、クロウが出来上がったって持って来てたぞ!」と言い綺麗な箱を二箱、烈に手渡した
烈はその綺麗な箱を二箱受け取ると紅花と龍妃殿へ手渡した
「此れは西洋のブラシと謂うモノです!
此れで髪を梳かせば艶々になります!」と謂う
天照大御神は自分の艶々の髪を見せて
「我は烈に貰ったブラシで髪を梳かしておる!
髪は艶々になるし、途中で絡まって切れたりもせぬ!」と謂う
烈は「髪は女性の命だからね!魔界の神々の髪も梳かしているわよ!ねっ!司命!」と謂う
司命はすっと素戔嗚尊の屋敷にいて楽していたのだ
晩餐会の間もずーっと此処にいたのだ
司命は金色の長い髪を手にすると
「ええ、前は絡まって無理矢理手で梳くと切れてましたけど、ブラシを貰ってからは手入れさえしておけば、絡まる事もありませんから!」と謂う
紅花は食卓から離れるとブラシを手にした
今までは龍王の使用人が髪を梳かしてくれていた
だが嫁に行かぬ娘だと揶揄され、ガリガリ髪を梳かされた事もあるのだ
黒龍がブラシを手にすると、優しく髪を梳かした
その優しさとブラッシングの気持ち良さに、紅花は笑顔で「嬉しゅう御座います!」と言葉にした
烈は「新婚だからしようがないけどね、あっちちね!」とボヤいた
皆 笑ってデカスイカを食べていた
龍妃殿と紅花にはスプーンが渡された
だが二人共スプーンを見た事がなく……
龍妃は「此れは何ですか?」とまで聞いた
烈はスプーンを手にすると、デカスイカの種をスプーンの先で外して、実を掬い食べた
龍妃は「あら、こんな上品なのがあるのですね!」と言いスプーンを手にするとデカスイカを食べた
食べた事もない甘い果実に………
「甘い!何ですの?この甘さ……口で溶けますわ!」と謂う
青龍がカフェの店員に作らせたスィーツを皆の前に置くと、龍王は「何なんですか!この食べ物は!」と驚いていた
紅花も「美味しい!」と瞳を輝かせ食べる
青龍は「このスィーツは我が息子、烈が考案したスィーツです!
婦女子に人気な魔界一番人気のスィーツです!」と親バカ発言を盛り込み謂う
その烈はレイと共に座布団で丸くなっていた
その横にはクロスも丸くなってるから、紅花は「可愛い!」と興奮していた
康太は烈を起こし「ほら烈、客人がおられるのに寝たらいかんだろうが!」と謂う
が「母しゃん 後は頼むにょね……明日は結婚ちきありゅし……らめ………限界にゃのよ」と謂う
康太はクロスを抱き上げると、一生が烈を抱き上げ、榊原がレイを抱き上げ
「お子様は寝る時間故、失礼致します!
黒龍、花嫁を自宅にお連れしてベッドのマットの具合を確かめに行かれてはどうです?」と言い客間を去った
榊原は烈の部屋に行くと、お布団が2つ、小さな簡易ベッドが用意してあった
素戔嗚尊が「そこに寝させておいてくれ!そして主等は帰宅されよ!」と謂う
3人は烈とレイをお布団に寝させ、クロスをベッドに寝かせた
榊原は応接間に戻る前に素戔嗚尊に
「地龍は………彼処まで拗らせていたのですか?」と問い掛けた
素戔嗚尊は「拗らせておるのは地龍だけではない!銘も………夏海のおらぬ日々にかなり拗らせて引き籠もりになっておる!」と言った
康太は「周りは変化を遂げて行くのに……あの夫婦だけ………己の殻に閉じ籠もってたか………」と呟いた
「まぁ烈がなんとかするであろうて!」
榊原は「地龍の事まで………烈が背負わすとも良いのです!」と吐き捨てた
素戔嗚尊は溜息を吐き
「青龍よ、主には他の者の心の機微など解りはせぬのであろう?
そりゃ、其処まで完璧なれば解りはせぬか?
じゃがな、悩んだり傷付いたり泣いたり……
些細な事で心は折れるのじゃよ!
そんな事も解りはせぬか?
主は完璧な存在じゃから他人にも完璧を求めるのかは知らぬ
じゃがな完璧な存在など、この世の何処を探したとしても存在などはせぬ!
主だとて完璧な存在じゃとしたとして、同性を伴侶にした時点で完璧にはなれはせぬ!違うか?」
敢えて榊原の心逆なでする言い方をした
康太は素戔嗚尊の真意が解らす……何も言えなかった
榊原は悔しそうに………拳を握りしめた
素戔嗚尊は「心の真髄を突かれるの嫌じゃろ?
なれば他の者も、主が当然の様に放つ言葉が嫌な時もあるのじゃよ!」と言った
榊原は素戔嗚尊を見て「素戔嗚殿…………」と呟いた
「偉大な兄を持つ弟ってのは大変なのじゃよ!
まぁ赤いのは偉大な弟を持っておるが、赤いの程に達観出来ぬならば、あれ程に拗れはせなんだ!
誰が、四龍の兄弟が、あやつを気に掛けた?
誰も気に掛けてなどおらぬであろうて!
父親でさえ気に掛けて貰えぬ息子と謂うのを理解した事があるのか?
何も言わぬ大人しい地龍は気にするにも値せぬか?
皆そうして地龍には目を向けなかった………
その結果が今の地龍を作り出したのじゃよ!」
一生は「あぁ俺等は兄弟として生を成したが……誰も兄弟の事には目を向けてなかった
今回 黒龍が結婚する事になって………黒龍が龍族の長として妻を娶った
位にしか思っていなかった………
良かったとは思ったが………それだけだ!
確かに目を向けてなんかいなかったな………」と言葉にした
「じゃから主等は黒龍、地龍には関わるでない!」と素戔嗚尊とは違う声が響き………
声の方を向いた
すると寝ていた筈の烈が起きて………嗤っていた
「黒龍は紅花と謂う妻を娶り鳳凰を産む!
魔界の奴等は鳳凰を産めと日々 鳳凰の妻を責めた
身勝手よのぉ~!他には求めるのに、己は何もせず無責任に責め安穏を手に入れようとする!
それと同じじゃよ!
主等は黒龍に何もかも押し付けて安穏として日々の生活を手にしておる他の者と同じじゃよ!
黒龍だとて一人で背負える程、龍族の長という立場は軽くなどないのじゃよ!
それを押し付け様としていた
其の内 黒龍は壊れるが定めじゃった
龍族なんて滅んでしまえ!と呪をかけて禁足地で命を絶つ定めじゃった
それが見え隠れしておったから黒龍も人の世で鍛え上げさせた
そして満を持して龍族の長にさせた時、定めが変わった!
黒龍は妻を求めた、己の半身となる妻を求めた
金龍が兄 天龍は黒龍の願いを叶える為に龍族の神祖 龍神に願いを掛けた
そしてそれが叶い、天龍は次代の中に溶け込み消えた
此れは黒龍の願いであり、初代天龍の願いでもあった!
だから伴侶を探し連日連夜掛けて占った
そんな時に羅刹天と知り合い、羅刹天と元始天尊を使えば可能性は出来る………と突破口を見付けた
そんなに簡単な話ではないのじゃよ!
我等がした年単位の苦労を解らぬ癖に、龍族の事を軽く口になどして欲しくもなどない!
例え兄弟だとしても、主等は口を挟むでない!
此れは忠告ではない、警告じゃ!」
と苦労を垣間見せ……口を挟むなど謂う
此れは……自分達が如何に無関心を貫き………来てしまった罪を知ら示す言葉だった
一生は「俺は…………また罪を重ねたのか?」と言葉にした
「罪ではない、ならば問おう
主は兄 黒龍と弟 地龍の為に何かしてやった記憶はあるか?」
一生は思い巡らす………
何か………何か…………何かをした………記憶はなかった
一生はポロッと涙を零し「何もしてねぇ………本当に何もかもしてねぇ………」と呟いた
榊原は言葉もなかった
「何かしろとは申さんよ!
そんなお仕着せがましい事などされても迷惑じゃからな!
じゃが、無関心は辞められよ!
まだ人の世におる四龍の方が兄弟想いであるな!と思わずには居られん!
青龍よ、そんな冷たい氷のような心では………誰も裁けはせぬぞ!
裁くにも血の通わぬ裁きなれば、誰の為の裁きなのかさえ分からぬではないか!」
「今日は………本当に容赦のない事を仰られますね………」
「青龍よ、主は法皇になられのであろう?
なれば、主は何を裁いて、法に何を求める?
答えは直ぐに言わぬともよい!
儂は………伴侶の手前だけ寛容な主が、法皇になるなど恐ろしくて……魔界には転生はしたくはないと思ってしまうのじゃよ!」と嗤う
「それは宿題に御座いますか?」
「答える気があるなれば、宿題として答えを聞かせてはくれぬか?
御為ごかしでなく、主の本心を………な!
それにより主は法皇ではなく、法の是正者として出直して貰うしかないと決めるしかないからのぉ〜!」
「それ、私の願ったり叶ったりなのですが?」
「法を世に浸透させるのは大変な事じゃ!
いきなり『法皇様』ではハードルが高過ぎる
ならば主は法の是正者となられ、法の改革に取り組まれてはどうなのじゃ?
それを人の世にいる間にやられよ!
そして魔界へ還られた時、裁判官から始められよ!其方がハードルは低いし、魔界の者に受けいられるじゃろ!
じゃがな青龍よ、主はもっと苦悩して、もっと悲しみを表に出しもう少し魔族味に溢れた者になるへきじゃ!
己の兄弟も理解しておらぬ者が、魔族を裁けるか?」
「本当に意地悪な方ですね!
解りました!私は妻以外はどうでも良かったし、妻にだけ良い顔して、まぁ後はどうでも良い態度なのまでも見破られてるとは………
完敗ですとも!本当に喧嘩さえ吹っかけさせても下さらない!」
と怒る!
一生は爆笑し、康太は「鋭すぎる!」とボヤいた
素戔嗚尊は「すまぬな!孫に頼まれた故、主に喧嘩を吹っ掛けさせて貰った!」と手の内を明かした
炎帝は母方の叔父には手も口も出さないと知ってて、敢えて素戔嗚尊にやらせるのだ
康太はやはり鋭い手口は完璧やんか!と思った
宗右衛門は「銘はここ数年で幾度か手首を切って……自殺未遂を繰り返しておる!」と本当の事を告げた
康太は驚き、烈の顔を見た
が、宗右衛門は気にせず続けた
「夏海が人の世に行ってからは、銘は孤立して………引き籠もり夫とも口を利かなくなった
地龍は疲れ果てている…………
あの夫婦は破滅に向かおうとしている…………
だが、誰もあの夫婦の事は気にも介さない……
それが地龍が置かれた現状じゃよ!」
一生は「何だよ………それ……誰も銘の事を気にしねぇって謂うのか?」と信じられないと口にする
「まぁ本人が拒否っておれば、誰とも関わりは持てぬわな!」
「それって銘が関わりを絶っていると謂うのか?」
「そうじゃよ!ならば主は魔界にいる間に銘を見たか?」
「そう言えば…………見てねぇ………な…」
「どんどん孤立して行くのじゃよ!
それは銘だけではない!
関わりを持たぬ者が増えて、今の魔界も同じ現象が起きておる!
孤立する者はどんどん孤立して行き
何とか誰かと繋がろうとする者は太極拳へ出て誰かと繋がろうとする
人の世と全く同じじゃな!」
「宗右衛門は………地龍をどうするのよ?」
「地龍は菩提寺で生活させる!
そして銘は心の病じゃから久遠に医者を紹介して貰い、治療させ菩提寺で生活さる!
主等は人の世に行くしかない地龍を気に掛けてやってくれ!」
榊原は言葉もなかった
「銘………そんな事になっていたのですね………
知りませんでした…」
「銘は……元々の気質が脆いのじゃよ!
心の支えにしていた夏海がいなくなり、銀龍は気にして家を訪ねていた
が、銘はそんな義母の事まで拒絶して自分を追い込んで…………誠………愚かな奴じゃよ」
康太は「母親に合わせて吹っ切れせようとしたんだけどな……」と呟いた
「心は……そんなに簡単な話ではないと謂う事じゃ!」
「簡単でええやんか!」
「面倒臭い奴はとことん弱く面倒臭いのじゃよ!」
「宗右衛門はそんな面倒臭い奴等を……良く面倒見るよな……」
「それは烈の母が心の機微に疎いから、やるしかないのじゃよ!」
「それってオレの事だよな?」
「しかなかろうて!」
そう言い宗右衛門はガハハハハハハッと笑い飛ばした
ショックから一生と榊原は抜け出せずにいた
素戔嗚尊はお布団をもう一つ敷いて
「赤いのは此処で寝て行くがいい!
炎帝、主等は新婚して来てよいぞ!
でも明日は世紀の挙式故 遅刻は許さぬぞ!」
と言い追い出した
素戔嗚尊は宴会に戻り、一生はお布団に入り寝る事にした
一生は「烈………俺は何もしなかった………」と言った
「事が発覚したのは、金龍がボクを殴り殺そうとした頃なのよ」と話し出した
一生は「えー!そんな前から銘は壊れかけていたのか?」と唖然として呟いた
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