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第11話 百折不撓 ❶

烈は閻魔の邸宅の前に到着すると、司禄が待ち構えていて 「烈!どうした?体調悪いのか? 人の世の主治医の所へ行ったと聞いた!」 と心配して駆け付けて来た 烈は「えんちゃんは?」と問い掛けると 「迎賓館で龍王様と共にお待ちだ!」と告げた そしてアルくんを烈の前に連れて来た 「スィーツ兄弟はデカニン食わせておいてやる! お前は気にせずに逝けよ!」 と謂れ烈はアル君に乗り迎賓館へ向かった 康太と榊原も共に烈の後を追い向かう 康太は「本当に会談知らなかったのか?」と尋ねた 「知っていたら、じぃさんに後を頼むなんてしないわよ! もう一度来なきゃならないなら、面倒臭いし還らなかったわよ!」とボヤいた 本当に突然入った会談なのだと知る 迎賓館に到着すると、司命が「あ〜烈、待ってました!」と急がせた 烈は控室に連れられると、正装に着替えさせられた 司命は「貴方達も着替えて下さい!」と正装を指さした 康太は「肩こるんだよな?これ?」とボヤき正装に着替える 司命は「赤いのは?」と尋ねた 烈は「赤いのは茶色いの見晴らせてるわ!」と謂う 「…………もう其処まででしたか………」と呟いた 康太は「お前知ってるの?」と問い掛けた 「僕の相方が見張り役に任命されたので、見張っていたそうです!」と謂う 「見張ってなきゃ死んでた………とかか?」 「それは僕は知りません! しかし……何処から情報仕入れて来てるんですかね!あの気難しい摩利支天や阿弥陀如来、迦楼羅まで気安く呼んてましたよね?」 「それはオレは知らな〜ずだからな、聞くな! でも壮絶な虐めされてたって聞いた……」 「あぁ、まぁ、陰険な奴等は減りませんもんね! それより早く着替えて下さいよ! 僕が閻魔に怒られるんですから!」 康太と榊原は仕方なく着替えて、炎帝と青龍の正装をした そして貴賓室へと向かうと、正装を着せられた烈が座っていた 龍王は烈に「地獄界の者が貴方達を傷つけてしまい、本当に申し訳ありませんでした!」と謝罪した 烈は「あ~、アレは相当痛かったのよ 今世のボクは一度魂が消滅仕掛けて、冥府の闇に落とされてしまったのもあって、本当に皮膚も体も弱いからね……… 下手したら死んでたかもだけど、気にしなくても大丈夫です! 貴方が愛する娘御を嫁がせてくれた それだけでチャラに値い致しますから!」と謂う 「それで……宜しいのですか?」 「ええ、ボクに褒美の女も財も立派な馬も必要ないので!」 「烈殿、本心をお聞かせ戴けませんか? 貴殿は紅花との縁談を持ち掛けられた時、鳳凰を産むだけで縁談は持ちかけてはおらぬと申されましたな、あれは本心なのですか?」 「本心よ!まぁ現鳳凰の妻は体が弱く、子は成せない それが原因で責められ体調を壊す程に追い詰められてるから、鳳凰、生まれてくれたらラッキー! 位には思っているけど、だからと言って絶対に生まれるのか?解らない現状に、絶対に鳳凰作れって言える? 誰も言えないし、鳳凰の可能性を知るのは、ボクとえんちゃんだけだし、誰も知らないから言わないわよ!」 「…………本当に…………」 「まぁ生まれないならば、それまでよ! 魔界は終焉に向かっていると想うだけ! まぁボク個人としては……滅んでしまえば良い!と何度思った事か……… 其処までボクは魔界の為に生きてないし、其処までしてやる気はないのよ! ボクは魔界が大嫌いで………そして祖父がいる魔界が大好きなのよ……… だから今は滅べとは思わないけど……… 全て背負って心中してやる気もないから! 本当に黒龍は紅花に一目惚れして恋に堕ちた だから家庭を持ち、子を持つ それだけよ、何も狙ってないし、何も求めてなんかいない!」 「失礼致しました! また私達は……娘に会いに来ても宜しいですか?」 「それはえんちゃんに聞いてよ! ボクはなんの力も持たない聖神だからね!」 「娘を解き放って下さり有り難う御座いました!」 龍王夫妻は深々と頭を下げた 「紅花様は龍王の屋敷ではお荷物の様な存在だったのでしょ?」 「え?………その様な事は御座いません!」 「前世の飛竜が自害して、去ってしまって以来、龍王は飛竜は嫁がせない! そんな噂の元、紅花様は屋敷でお過ごしになられていたのでしょ?」 「はい………それが?」 「館では嫁げない娘と謂うのは、結構使用人から雑に扱われたりするんですね 龍王の娘なのに、他のお子様と違い、紅花様は使用人からも虐げられ過ごしていた!」 「え?それは御座いません!」 「本当にそう思う? 奥方は気づいているんじゃない?」 龍王は眉を顰めて「それはどう………謂う意味なのか?教えてはもらえぬか?」と問い掛けた 「あのお見合いの場、紅花様だけ他のお子様と違い、貴金属も衣装も劣っていましたから! 髪も常に使用人に梳かれてセットされた様な風ではなかった! そして何より、身に付けていた貴金属が地獄界の者にしては少な過ぎる 紅花様の貴金属は使用人が売り捌いて美味しい思いしてるんでしょうね! なので、その使用人を黒龍の屋敷に置くのは不要です! 気を使い、使用人を送り出される方が紅花様は不幸になる!」 龍妃は「やはり………そうなのですね………娘は何一つ申しませんが………ひょっとして?と想う事はありました………」と口にした 烈は「地獄界から遣わす使用人は不要に御座いますし、ボクに対しての謝罪も不要です! ボクは今、貴方に失礼な事を言いましたので、此処で謝罪申し上げます!」と深々と頭を下げた 龍王は慌てて「烈殿、頭を下げないでおくれ! 使用人を遣わそうと思っていたが………使用人は即座にクビにしよう! 屋敷の中の使用人も今一度調べ上げてみるとする で、やはり謝罪は受け取ってはくれぬか? 我はその謝罪をして、もっと友好を深めたいと思っているのじゃが?」と残念そうに言う 「デカスイカの栽培は結構難しいので、大トンガラの栽培を伝授します! 中華圏は辛いのが好きなので、魔界からは大トンガラを、中華圏からは辛い何かを交換して切磋琢磨して、この食糧難を乗り越えて行きましょう!」 「烈殿!!」 龍王は烈を抱き締めた 羅刹天は「龍王様も絶対に烈を好きになるって思っていました!」言う 元始天尊も頷いていた 龍王は「烈殿………また相談に来ても宜しいですか?」と問い掛けた 「龍王様は人の世は見に行かれた事がないんですよね? 中華圏は今 凄い進歩の一歩を辿られますよ! あの落差には………きっと驚かれます!」 「そんなに………?」 「もう地獄界の様な街並みは田舎に行かなきゃ見られませんよ!」 「我等は時代から取り残された遺物になる気はない!今後は積極的に外部との交流を取り入れようと想う!」 「それが宜しいでしょう! 視野は遥か向こうを捉え、全体を見渡さねばなりません!」 龍王は考えに耽る様に黙った 龍妃は康太を見て「ひょっとして皇帝炎帝様ですか?」と尋ねた 康太は「え?オレを何故に知ってるのよ?」と尋ねた 「私は冥府で皇帝閻魔に仕える黒蛇を母に持つ者に御座います! 休暇中に桃源郷の祖母に会いに行った時に、龍王に見初められ妻となりました それまでは、冥府で皇帝閻魔様に私もお仕えしておりました! 皇帝閻魔様の執務室の机の上や壁には…… 真っ赤な髪をされた皇帝炎帝様の写真が所狭しましと貼ってあるのです!」と答えた 康太は「何それ!恥ずかしいやんか!親父殿!」とボヤいた 「それはそれは愛する倅だと、自慢され貼りまくられておりました! なので……もしや……と想い声を掛けさせて貰いました!」 「そうか、親父殿に仕えてくれていた黒蛇の家族の者か、縁は何処に繋がってるか、解らねぇな! 今後も宜しくお願い致します!龍王様 龍妃様」 龍王は皇帝炎帝と聞き、その秘めたる力の根源を知る事となった……… 「今はただの炎帝です! 魔界では何の力も権力も持たぬ者ですから!」 龍王は絶対に敵に回してはならぬ存在だと認識し 「炎帝殿 青龍殿 名前被りは一旦何処かへ避難させておきますので、一度地獄界へお越しになられませんか? 直ぐに…………ではなくて大丈夫です 我等が一丸となり動くには貴方達二人がキーパーソンとなるでしょう!」 「それは閻魔に申し付けて下さい! オレは閻魔が謂うなれば、重い腰も上げますから!まぁオレ的には、地獄界へ行ったら、良くもオレの子を怪我させてくれたな!と恨んでボコるかも知れませんよ? オレの眼はその人の愚行を映し出しますから! 烈が人の闇を見る眼をニブルヘイムから貰った様に、オレは人の果てが視えるんですよ 皆 オレの眼が怖いと裸足で逃げて行きます! 其れでも………呼ばれるならば貴方も覚悟が必要かも?ですよ?」 そう言い炎帝は龍王を射抜いた 龍王はその瞳を受けて笑った 「烈殿の眼も怖いが、母上の眼も怖かったのですな!まぁ視られて困る事がなければ、御二人の瞳は脅威ではない! 後 ちっこかったレイ殿の眼も、怖くなどない筈じゃから!」 龍妃は頷いていた 「ならば兄 閻魔が判断し、予定を立てるならばオレは地獄界へ行くと約束しよう!」 龍王は笑って「烈殿は暴漢や闇に囚われた者を、皇帝閻魔殿の焔を一度だけ借りて、燃やされたのです!貴方の焔は皇帝閻魔殿と同様だとか…… それは羅刹天に母しゃんの焔は……と語ってらして、其れを私も聞いていたのだよ!」と謂う 康太はそれを聞いて驚いて……… 「え!皇帝閻魔の焔借りて来て、それ使ったのかよ………… 確かにオレは皇帝閻魔の息子ですから、焔は相伝、同じモノです でも親父殿の焔は多分………かなり押さえて闇だけ消し去る様にして烈に貸したのだと想います でなくば………かなりの被害が出たと思いますから………」と答えた アレで押さえてならば………全力出した焔ならば………考えただけでも怖かった 龍王は「炎帝、青龍、貴方達にお会いして話が出来て良かったです! そして今度 娘に会いに来る時に、諸葛孔明が星詠みをした時に使用したと謂われる羅針盤を持参して来ようと想う! それは是非、烈殿に使って欲しいのです! 今や、地獄界でその羅針盤を使える者などおらず………過去の遺物として飾っておく位ならば………と思っているので何卒受け取って欲しい!」と謂う 烈はニコッと笑い「ならば有り難く受け取ります!」と謂う 元始天尊は「烈、我ら地獄界を代表として今度馬を謝罪として持って来るので受け取って欲しい まぁ地獄界の宝石とか取り尽くしてないから、金銀財宝を謝罪として持っては来れぬが、受け取って欲しい!」と謂う 「地獄界の馬って母しゃんの馬の様に格好いいのよね!えんちゃん貰っておいたら? ボク アル君いるし、スィーツ兄弟まで貰っちゃったから………」 「ならば掛け合わせて仔を成したら素戔嗚殿にプレゼントしようではないか!」 「それは良いわね! ならば貰うわ、馬!」 瞳を輝かせ謂う烈に龍王は目尻を下げて喜んでいた が、別れの時間は無情にも来て、御付きの者が 「龍王様 帰還のお時間に御座います!」と告げた 閻魔 烈 素戔嗚尊 建御雷神 転輪聖王 炎帝 青龍 金龍夫妻と黒龍夫妻 他の神や魔界の者がお見送りに崑崙山に並んでいた そんな中、龍王夫妻は帰還となった 龍王夫妻は娘を抱き締め、黒龍に「娘を幸せにして下さい!」と頼み別れを惜しみ帰還して行った 閻魔は今後の話がしたいので、烈の屋敷を借りて話をしませんか?と烈に言った 烈は頷き「金ちゃん銀ちゃん、黒ちゃんも紅花も聞くと良いのよ!そして母しゃんと父しゃん たけちゃんとじぃさんと弥勒は同席して、現状を知ると良いのよ!」と言い八仙の裏の烈の屋敷に向かった 烈の屋敷は少し広くなっていた 烈は「皆で来るから、増改築したのよ!」と謂う 広い応接間みたいな部屋にソファーとテーブルがあり、皆 そこに座った 榊原は炊事場へ行き、紅茶好きの烈のコレクションを物色する すると珈琲みたいなのがあり、ちゃんと器具も揃ってるから珈琲にお湯を注いだ そして康太と烈には紅茶を淹れた 大きなトレーに全員分の飲み物を置くと、榊原も席に座った 銀龍は「あの子達は………どうでしたか?」と問い掛けた 烈は「ギリギリだったわ……婚礼の儀の時の地龍を見てたんだけど、もう、フラフラだったもの なのに誰も何も気づかない………ねぇ、何で誰も地龍を観てないのかしら?」と問い掛けた 銀龍は泣いていた 金龍は「倅は上手く儂の目を避けておった……… 儂はそんな倅に掛ける言葉が見つからなかった……」と涙していた 烈は溜息を付くと「金ちゃんは不器用な男だものね……あそこまで拗れた倅に掛ける言葉なんてないわよね………下手に声かけて………それで追い詰められたら?なんて考えると怖くて声なんて掛けられなかったわよね………」と謂う 銀龍は「私がもっと銘に寄り添ってやれば………」と悔やんで泣いていた 「銀ちゃんは寄り添っていたわよ! でも拒否られたら、銀ちゃんの言葉なんて届かないわよ! それ程にね銘は周りの者に熾烈な嫌がらせを受けていたのよ 夏っちゃんに聞いたら、夏っちゃんも熾烈な虐めを受けていたと謂うのよ そしてその頃は我が子の次代の金龍は日々怪我して還って来ていて、精神的に窶れる想いをしていたと言っていたわ! 辛くて生きているのが嫌になる程だった ………と言ってたわ 見てない所でやるからね、だから今ボクが仕返しの術を発動してやったのよ! あの二人に変わり……夏っちゃんと銘を虐めた奴等を同じ目に合わせて………いいえ、それ以上の目に遭わせてやる気で、復讐の序章 仕返しの術を発動してやったのよ!其れ位は許されるわねよ…………母しゃん………」 「復讐の序章………仕返しの術、それ使うヤツいたんだな……… お前さ、自分がやられてた時はその呪文知らなかったのか?」 「…………知っていたわ………魔界図書館にあったから………あの本借りパクしたままボクは人の世に堕ちたからね、今は何処へ行ったかさえ解らないけどね………」 「ひょっとして魔界図書館の呪術系の本 全部借りパクしたのはお前か?」 「多分………」 「なら何で発動させなかった? 五智如来使ってサブリミナル掛けてなんて面倒臭い事しなくても、復讐は出来たんじゃねぇのかよ?」 「それだと誰もボクを罰してくれないじゃない だから、ボクは罰せられる道を選んだのよ!」 人知れず呪いを掛けて成就させるよりも、公に煽って引き返せぬ道を作り……処刑される道を選んだ 聖神らしくて、康太は苦笑した 「んとに腐った奴は腐った事しかしねぇのな ネチネチ グチグチ陰湿な事をやりやがる! オレも魔界にいた頃はやられたぜ! 閻魔や天照大御神、建御雷神がいない時にやりやがるのよ! 何度消し去ってやろうか?思ったか解らねぇぜ!」 建御雷神は言葉もなかった……… 弥勒は「話が逸れてるぞ!で、銘は虐めを受けていたのかよ?」と話を戻した 「そうよ、外に出るのが怖くなる位の……をね! そして壊れて行くのよ、少しずつ、少しずつ………銘は何も持たない者になったから余計引け目はあるのよ 其処を突っ突かれれば………病んで当たり前よ 地龍は妻を支えようと全身全霊掛けて………疲れ果て………もう自力ではどうも出来なくなっていた 婚礼の儀の時、あんなにも窶れた地龍を見て……… 何も思わなかったの?」と問い掛けた 黒龍は「思ったさ!弟を思わない事なんてない! 窶れて疲れ切った弟に、何があったか?何度も聞いた!でもアイツは何も語らなかった!」と謂う 青龍も「何かあったのか?………とは想いましたが、婚礼の儀を優先せねば、魔界と地獄界との亀裂が走っては大変ですから、婚礼の儀が終わったら話をしようと思っていました だから炎帝に地龍の気を詠んで貰い、君より早く病院へ行ったんじゃないんですか!」と謂う 烈はクロウを呼び付けた 「クロウ、奥の部屋の水晶玉持って来て!」と謂うとクロウは水晶玉を取りに行った 烈は漆黒の布をテーブルに敷くと、クロウは水晶玉を持って来てその布の上に置いた そして総てのカーテンを閉めに行くと、部屋は暗くなった 烈は水晶玉に手を置くと、呪文を唱えた すると水晶玉はピカッと光り、銘が映し出された 普通に道を歩いていると、わざと足を引っ掛けられ転ばされる 銘は慌てて買い物カゴから零れ落ちた商品を拾おうとすると、その手を踏み付けられ 「魔界から出て行け!力も無い元女神が!」と罵られる 銘は泣きながら、踏みつけられた商品を広い上げへ帰る 地龍が還って来ると笑顔で迎えていたが……… それが続くと笑顔はなくなって、家から出る事はなくなった 布を被り暗い部屋の中でブツブツ何かを言って………手首を切る 帰宅した地龍はそんな妻の手当てをして、素戔嗚尊の屋敷に行き止血草を貰いに走る 素戔嗚尊は何も言わずに止血草を地龍に渡し、果物を持たせて帰らせていた 日に日に窶れる地龍に素戔嗚尊も心痛めていた 司禄が定期的に屋敷を訪ね、差し入れをして行く 地龍が「悪いから……もう来なくても良いよ!」と謂うと司禄は必ず 「聖神からお目付け役に任命されたんだよ! 聖神は俺の運気を詠み運命を詠んで下された! 俺は生涯の伴侶と出会えた それも此れも全ては聖神のお陰だ! なのでお目付け役に任命された以上は毎日、お前達の状況を知らせる義務があるんだよ!」 そんなやり取りも水晶玉は映し出した そして司禄が「烈、アレはもう限界だ!何とかしろ!」と婚礼の儀へ迎えに来た時に告げる それで人の世の久遠の所へ連れて行った、までを投影させて見せた 転輪聖王は「しかし……熾烈な虐めをやりがるもんだな」とボヤいた 康太は「こんな虐めは聖神が受けた虐めの半分にもなりはしない! 一族を呪い 魔界を呪い 全てを呪い………絶望した聖神の熾烈な虐めの………足元にも及びはしねぇよ!」と吐き捨てた 烈は「ボクにはニブルヘイムがいてくれた……… でも地龍や銘を支えるモノはなにもなかった それだけの違いよ……… まぁボクもね復讐しか考えてなくて、復讐する為だけに日々を送り、まともな感性は失っていたからね……… でもね一番すごいのは、うーちゃんよ ボクは彼を騙して駒にした なのに彼は笑って許してくれたのよ! 地龍にはそんな絆がないのよ 銘には夏っちゃんと謂う存在しか繋がりはなかったのよ……… だから哀しい現実がのし掛かり八方塞がりになっちゃったのよ………」と謂う 黒龍は「やっぱ烈は………凄いな……」と謂う 宇迦之御魂神は何処かで踊らされるのを知っていた 知っていたが、理想理念を掲げて動き出した以上は引き戻す道なんかなかった そして人の世に堕とされた聖神の事で胸を痛めていたのは宇迦之御魂神だったのだろう……… だから、こんなにちっこい姿で謝罪されれば、許してしまうのだった 自分だって許してしまうだろう……… 「悔しいな………」黒龍は呟いた 兄弟なのに何も出来なかった………… 烈の崑崙山の屋敷に「烈ぅ〜!噂流しといたよぉ〜!」と宇迦之御魂神がやって来た 烈は宇迦之御魂神を目にして「うーちゃん!」と謂う 「九曜神に手伝って貰い、総ては烈の指示通りに噂は流して現実の域まで達しておいたから!」 「ならば日々恐怖して暮らすが良いのよ!」と嗤う 宇迦之御魂神は「それもよりも、あの飲兵衛何とかしてよ!九曜神まで仲間入りちゃってるよ!」と文句を言った 「あぁとぅさん………何とも出来ないわよ!」 「毘沙と帝釈呼んで飲み明かしてるわよ!」 「え!!帝釈……呼んじゃったの………!」 「もぉ飲兵衛達は口を揃えて烈連れて来い!って煩いのよ!」 素戔嗚尊は「儂が止めて来るか?」と謂う 「じぃさん行ったら待ってました!と大歓迎で飲兵衛仲間よ! まぁ話し合い終わったら飲兵衛仲間になれば良いわよ!盟友もいるだしお酒出すわよ!」 素戔嗚尊は、たらーんとなり言葉もなかった 「まぁ地龍と銘はボクが責任を持って何とかするわ!そして戻す時は完璧な状態にして戻してやるわよ!魔界の掃除もしてね!」 閻魔は「………彼処まで熾烈な虐めを受けていれば………誰でも心が折れます!」と謂う 「華絵もその昔はその対象だったわよ! まぁ今ならは魔界に戻したとしても、虐めて来る存在ならば薙ぎ倒せるわよ! 薙刀叩き込んだし、剣の腕も結構上達してるからね!投げ飛ばしてくれるわよ!」 炎帝は爆笑した 「だな、今の豊乃姫なら投げ飛ばして揺るぎねぇ強さを秘めてるよな!」 「でもまだ未熟だから人の世で修行なのよ! 次は弓やらせなきゃ!なのよ! 魔界の住人も弓を習わせなさい! 弱い奴程 隠れて百発百中出来る程に鍛え上げなさい!」 閻魔は「ならば更に弓の練度を上げて、力のない者に持たせて鍛え上げよう!」と約束してくれた 「悪いけどボク帰るわね! 地龍気になるし、銘をカウンセラーのいる病院へ移さないとダメなのよ アレはもう言葉なんて耳に入らない殻に閉じ籠もってしまってるからね 時間は掛かるから地龍を鍛え上げる良い機会だわ!武術全般マスターして貰い、帰還したら金龍の武道場の指導者となれるまで鍛え上げるわ! そして役務に着かせて、四龍の立場を明確にする 一柱欠けても四龍は存在は不可能だと知ら示して行くしかないわね!」 「無論、それは了解してます! 地龍だけ劣る、なんて抜かしてる奴等をぶっ放してやる気で、魔界全土に知ら示します!」 「後 銘は名前が悪すぎるわ!銘柄の銘なんて果てが見えてるわ、変えなきゃ!」 炎帝が「それはお前がやってやれ!」と謂う 「了解なのよ!じぃさんボクは帰るから、飲兵衛仲間になって来て良いわよ!」 素戔嗚尊は「儂は静かに友と飲むのが好きなのに……」とボヤいた 烈が立ち上がると炎帝と青龍も立ち上がり、隣の部屋に行くと正装を脱ぎ捨てた 帰宅を視野に入れて、着替えを運ばせといて正解だった 烈はタロウに「この正装は、えんちゃんに渡しておいて!」と言いジャージを着るとホッと一息着いた タロウは炎帝と青龍と烈の正装を綺麗に畳むと、風呂敷で包み「ならば後で天照大御神様にお渡ししておきます!」と言い玄関に置きに向かった 「母しゃん、人の世に還るから司命戻してね! 新婚旅行に付き添わないとダメだから、司命戻してね!」 「地龍と銘も気になるし還るとするか! 誰が新婚旅行に付き添うか解らんけど、阿弥陀でやるか?それともクジでも作るか……」 炎帝は即座に烈の首にぶら下がった八咫鏡の欠片を掴むと 「司命、崑崙山まで来い!帰るぞ!」と言った 直ぐ様『解りました!』と返って来た 「それでは司命が来たなら帰りましょう! 後一息です、気を抜く事なく頑張りましょう! それより新婚旅行が何故人の世なんですね、その意図は?なんで何ですか?」 と榊原は烈に尋ねた 烈は「紅花は地獄界から出た事がないのよ もっと詳細に語れば龍王の屋敷からも出た事がないのよ! だから視野の狭さが今後黒ちゃんの足を引っ張りかけないからね、だからの外部の世界への新婚旅行なのよ! そしてそのまま二人は菩提寺で半年ほど暮らす事になるのよ! えんちゃんとは既に話が付いてるわ! このまま黒龍の家で生活させても、銘の二の舞いだからね! 世間知らずな視野の狭い世界から、視野を広げて己の命位、己で守れる様にする! その為の半年なのよ! 華絵がいてくれる今しかないのよ! 帰還されれば、閻魔の妻としての役務は多々とあるからね! 今しかないのよ!今だからこそのスケジュールを組めた!本当に黒ちゃんは甥っ子孝行してくれるわね!」と嬉しそうに話す だからこその、柘植に服を依頼したと謂う訳か…… 柘植に話せば神野、小鳥遊に話しが行き、須賀も自分と妻との着ない服を提供してくれるだろう! 相賀も渋いが質の良い服を提供してくれる筈だ それを選別して二人に似合いそうな服を残し、後は菩提寺の震災用の備蓄にしておく! 抜かりのはない配置だった  烈は「ズロースは……ボク無理だから、ばぁしゃんに頼むしかないのよね 後 乳あても………子供のボク買いに行ったら変態扱いされるわよ!」とボヤく 榊原は笑って「飛鳥井は女手は有りますから大丈夫です!でもそのズロースとか乳あては………何時の時代ですか!って言われますよ!」と笑いながら謂う 「何かね、今風に謂うとエロさを感じて口に出来ないのよね」 榊原は今風な呼び方を頭に描き、ズロース=パンティ 乳あて=ブラジャー あぁ成る程、お子様な烈にはエロさを感じるかも知れない……… 「まぁ好きな方で言いなさい でも外では言わない方が良いでしょう!」 「言わないわよ!多分聞いても理解する人少ないわよ!」 と烈は抗議した 着替えが終わると「それでは司命が来たならば、行きますか!」と言った 司命が呼ばれてやって来ると皆立ち上がった 烈は「なら後はお願いね!何かあったら連絡してね!」と謂うと閻魔と素戔嗚尊は頷いた 金龍は「閻魔に許可を貰ったら………地龍と銘に会いに行くつもりだ………許してくれるか?烈?」と不安な顔を向けて謂う 烈は笑って「金ちゃん、人の世に来るならば、更に上を目指して鍛え上げてみる? うちの道場は今 結構大会で優勝する子達も出て来てるわ! 相手に戦ってみなさいよ! 負けたら、また修行になるけどね!」と謂う 「あぁ、儂はまだ未熟だから、鍛え上げれるチャンスがあるならば闘ってみたい!」 「ならばえんちゃんと日程調節して来ると良いのよ!そして鍛え上げてね!」 「あぁ、烈、我はもう二度と同じ過ちは繰り返ししない! 少しずつでも進歩して行くと決めてるからな!」 「解ってるわよ!なら待ってるからね!」 「あぁ、また元気な顔を見せておくれ!烈!」と言い抱き締めた 建御雷神と転輪聖王は「素戔嗚んちに行って飲むとするか!」と謂う 烈はタロウに「ならば魔界酒の新作の樽を持って来て提供してあげて!」と謂う タロウは「了解しました!天照大御神様の所へ正装を持って行った後、お酒を用意します!」と言い一足先に出て行った 烈も屋敷の外に出ると「黒ちゃん、乗せて!」と謂う 黒龍は烈を抱き上げてスリスリし 「良いぞ!では人の世まで乗せて行こう!」と言い烈を下ろすと龍に姿を変えた 烈はさっさと乗り込み「紅花、乗るのよ!人の世に行ってる間に魔界名も考えておくからね!」と謂う 聡一郎はさっさと乗り込むと康太に手を貸して乗せた 紅花は康太に引き上げられ乗った 榊原も黒龍の背に乗ると、黒龍は天高く飛び立ち人の世にへ行く気流に乗った 魔界時間を過ぎて人の世へ向かう 時間障壁は正常になっていた 烈はそれを確認して「歪まないわね!」とニコッと笑った そして黒龍に「黒ちゃんは人の世で新婚生活始める訳だから、そしたら少し虹鍛えてくれないかしら?」と謂う 「あぁ、解った!徹底的に扱くとする!」と謂う 「ボクもね半殺しの目には遭わせておいたけど、生意気なのよ、あの子は! もう少し絞った方が良かったかしら?」 康太は「後は黒龍がやるさ!黒龍は人の世に行ったら何を学ばせるのよ?」と問い掛けた 「黒ちゃんと紅花は武術全般、プロ級になって貰うわ!で、12月になったらイギリスに連れて行ってあげるわ!」 視野を広く、見聞も広く、世界は小さくなんかないと知らせる為に出来る限りの世界を見せる 話をしていたら、飛鳥井記念病院の横のマンションの屋上へ到着した 黒龍は先に烈や康太、榊原と聡一郎、紅花を下ろすと人の姿に変わった そして「銘、見に行きますか?まだいますかね?」と問い掛けた 烈は携帯を取り出すと一生に「銘、まだせんせーんとこいる?」とラインした 直ぐ様一生から返信があった 『久遠は一応烈に知らせないと動かせないと言っていたからまだ病院にいる!』と知らせた 「なら見に行くから待ってて!」 『了解!』 康太はそのやりとりを見てエレベーターのボタンを押した そしてやって来たエレベーターに乗った 紅花は「何ですの?この箱は!!」と言い恐怖した 榊原はなんと説明して良いやら?困った 烈は「此れはエレベーターと謂う高速で下へ降りられる乗り物なのよ! 人の世では、この乗り物は定番だから何処へ行ってもあるわ!」と謂う 「えれれーたー?」紅花は舌を噛みそうなモノの名前を謂う 「エレベーターよ!」 「エレベーター、よし!覚えました!」 「紅花は色々と覚えたいモノあるだろうし、メモ帳とペンを後で渡すわ!」 紅花は聞き覚えのない言葉だから、なんと言って良いか解らなかった 階下へ降りると一生が待っていた 烈は一生を見ると「ボクせんせーに逢って来るわね!」と謂う 一生は「俺も行く!」と謂うと康太と榊原も後を着いて来た 皆で病院へ行くと、看護師の鈴木泰知が待ち構えていた 「烈君、先生が待ってるよ!」 そう言われ案内されカンファレンスルームへと向かう 泰知は全員分の椅子を出すと、カンファレンスルームを後にした 暫くすると久遠がやって来た 「あ〜、烈……知り合いの病院には連絡は着いた 知り合いの医者に話したら、早く連れて来い!と言われたよ 目を離すと切るなんて監視レベルはかなり上がってると言われた 俺等も目を離さずに、ずっと付き添えてる訳じゃねぇから、何かあったら大変だから動かしたいんだが?」 久遠は苦渋の選択を烈に告げた 烈は「ならば今日中に搬送はお願い出来るのかしら?」と問う 「あぁ、連絡を入れたら患者を受け入れる為の車で連れに来てくれるそうだ!」 「其処は………九鬼の様な宗教掛かってないわよね?」 「大丈夫だぜ!」と言い病院のパンフレットを烈に見せた 「大丈夫だろ?神奈川県立精神医療センターだからな、外部の手が入ったら大変だろうが! 県で一番大きな精神医療センターだからな たまたま知り合いがそこの医師になっていて、そこの患者を連れて来た事から交流を持つ事になった!だから大丈夫だろ!」 「ならば安心ね!」 「あぁ、さっき連絡入れたから連れに来てくれるだろう!だから逢うならば今のうちだ!」 「なら銘に逢って来るわね!」と謂うと康太達と共にICUへ向かった ICUに向かうと、銘は起きていた 烈は「銘!」と謂うと銘は顔を上げて………そして固まった 一生は今にも泣きそうな………涙を堪えた様な顔をしていた 銘は烈を見て………そして後ろの康太と榊原と黒龍と一生を見た………… 銘はボロボロ涙を流して泣いた 「貴方は今から病院を変わって心の修理をしに行って貰うわね! そして切らなくなったら、菩提寺へ行きなさい! 地龍が貴方を待ってるから、必ず治すのよ!」 「烈………ごめん………」 「謝るのはボクにじゃないわ! 貴方は最高級の親不孝してるのよ? こんな貴方を見て………赤いのが何も思わないと思った?」 「父さん………ごめんなさい………」 一生は言葉なんて出なくて………そっと抱き締めた 烈は「そんなポキッと折れちゃう心では………何も見えなかったんでしょうね 銀ちゃんがどれだけ心を痛めていたか…… 地龍がどれだけ貴方を支えて……死にそうになっていたか……何も見えてなかったんでしょうね 本当に愚かね………貴方は………何も見えない目なんて要らないんじゃない?潰して差し上げましょうか?」と冷酷に笑い近寄って来る 「大切な身近な者が見えない目なんて、要らないわよね! 何も見えてない目なんて要らないわよね! だって貴方は大切な人さえ、その目で見る事を拒んだんだから!」 その迫力に銘は言葉をなくした 誰も身動き一つしなかった ジリジリ烈が近寄る 一生が「俺の目一つで許してくれねぇか?」と謂う 「それで許せると想う?  地龍が欠けた四龍が成り立たなくなるやも知れない現実を目にして、それで許してくれると想う?」 烈が言うと黒龍は「許せんよ!許して堪るか!」と言った 榊原も「四龍のピンチなんですよ?許せますか?」とそれに乗る 康太も「我が夫 青龍が四龍として成り立たぬならば、それはオレの恨みも買う事になるかんな! 目一つで許せるかよ!」と謂う 紅花はオロオロと何が始まりましたの?と想っていた 烈は銘の胸ぐらを掴むと 「目を背けるな!銘! 辛くても死にたくても、目は逸らすな! 明日死のうと思っていたとしても、現実から目を逸らすな! それが共に貴方の荷物を背負ってくれている地龍に対しての誠実な思いなんじゃないの? 辛いのは貴方だけなの? 苦しいのは貴方だけなの? 違うでしょ? 貴方と荷物も背負っている地龍も同じ位辛いし、苦しんでいるって何故気付かない? それが解らない貴方は一歩も踏み出せないわよ!」 と低い声で謂う そして草薙剣を取り出すと 「死にたいなら、手首なんて切ってても死ねないわよ! 死ぬパフォーマンスなんてしてないで………一想いに逝きなさいよ!」 そう言い、草薙剣で銘を真っ二つにした 背が届かない所はクーがサポートして真っ二つにした 銘は目を瞑り………震えていた 斬られた感触はある 剣は確かに銘を真っ二つにした 烈は「クーたん助かったわ!」と言いポッケから後の三匹を出した ルーとスーはソファーに座り、飛鳥井の家へ行くのを待っていた プーも「そーちゃん、後で何か飲ませてな!」と謂う 聡一郎は何、この緊張感のない猫達は…………と思った 烈は「どう?母しゃん、死の影、斬れましたか?」と問い掛けた 康太は「うし!バッチし斬れてるぞ!」と謂う 銘は目を白黒させていた 久遠が銘を呼びに来て、銘は病院を転院して行った 烈は地龍の病室へ行き、様子を見てから帰るつもりでいた 個室を訪ねると地龍は起きていた 「どう?体調は?」と烈が話し掛けると、地龍は憑き物が落ちた様な顔をしていた が、何故か………口の横が痣になってて 一生は「悪い………殴った………」と謝った 「貴方の兄弟だし殴るのは構わないけど………打ち所悪いと死んじゃうわよ!」 「それは大丈夫だ、胸倉掴んでいたから!」 何処が大丈夫か、解らないけど………… 「まぁ目から鱗が落ちたならば、さぁ個室代も高いんだし働きなさいよ!」と謂う 地龍は「ごめん!僕お金ないや!」と謝罪する 榊原は地龍の傍に行き、頬に手を当て 「現実………見えてますか?」と問い掛けた 「はい!兄さん、見えてます! 俺は………日々萎れて行く妻をどうしたら良いか? 解らなくて………日々追い込まれて行き……… 心配して来てくれた司禄さえ拒絶して……何をやっていたんだろ? 本当に………何も見えなかったし………意固地な態度しか取れずに兄さんを泣かせて殴り飛ばされました!」と謂う 榊原は地龍の頭を撫でると 「此れからは何かあったら直ぐに相談しに来なさい!宝珠持ってるのに、連絡さえ取らないなら要らないわよね?それ?捨てておしまいなさい!と烈に言われた………と嘆く赤いのの想い、解ってますか?」と静かに話し掛けた 「僕は………何であんなに追い詰められて、何とかしなきゃ………って言う強迫観念に囚われていたんだろ!と今ならば思えます! 烈、本当にゴメンね! 僕は………君の事苦しめた………本当にごめんなさい!親父が君を傷付け……苦しめたのに……… 息子である僕まで君を苦しめました!」と謝罪した 「ご飯食べて体力が戻ったら退院して菩提寺へ行きなさい! 菩提寺には貴方の息子もいる事だし、此処ら辺で歪んだ思いを修正しようと想うのよ! 異論はないわね?」 「………異論はないけど………あの子は俺を父だなんて想いもしてくれませんよ………」 「想う想わないじゃないのよ! 体に刻まれたDNA否定するならば消すだけの事よ もう半殺しの目には遭わせてやったしね それが現実になるだけの事よ! 使えない駄犬は要らないわ! そしてもっと要らないのは………現実を否定してばかりで常に牙むく馬鹿なのよ! 地龍、胸を張りなさい! 決して下を向いたらダメよ! この言葉はね、下ばかり見て現実を見ようとしなかったボクに………ニブルヘイムが贈ってくれた言葉なのよ 今もボクは彼からの言葉を胸に刻み……貴方にもその言葉を贈るわ! まぁね、その言葉はボクを支えてくれたけど………… 根っからの根暗までは治らないじゃない! だからコッソリ仕返しして痛い目見せるてやるのよ!」 地龍はそんな事聞いたら背中に冷たい汗が流れるのだった 康太が「烈、その辺にしてやれ!赤いのに殴られてるんだ!それで聞かなきゃ蒼いのが殴りラストは黒いのが殴るだろうさ!」とデッカい釘を差しとく 烈は「それもそうね!あ、貴方の奥さんは切らなくなるまでは他の病院へ転院して行ったわ! だから貴方は退院したら菩提寺へ行き、仕事しなさい! そして寺の仕事しつつ、武道場で鍛え上げなさい!強い肉体には強い心が宿る! 貴方の弱った心を黒ちゃんにシゴイて貰いなさい! 新婚旅行から還ったら、黒ちゃんは菩提寺で暮らすからね!」と謂う 地龍は「解りました!」と言った その言葉を確認して、烈は病室を後にした 飛鳥井の家に帰り、応接間で寛ぎ一息 烈は母に向き直ると「新婚旅行は明日から富士と箱根辺りで三泊四日辺りで良いかしら?」と問い掛けた 「それって誰が付き添うのよ?」 「…………母しゃん達?」 「お前は?」 「嫌よ!新婚の付き添いなんて嫌よ! 行けと言うなら、にーに達と一緒に行っちゃうから!」 「ゾロゾロ未成年の子供が新婚旅行に付き添うなんてダメに決まってるやんか! それに未成年が束になって行ってみろ、見つかったら補導されるに決まってる! 解ったよ、オレと伊織が付き添うとする!」 中学生と小学生が新婚旅行の付き添いなんて………冗談じゃない 烈は「ならばボクはそろそろイギリスに行くのを視野に入れないと行けないから、仕事を上げられるだけ上げるわ!」と謂う 「うし!なら明日から新婚旅行へ付き添って行ってくるわ! 宿は取ってあるのかよ?」 「一応取ってあるわよ! 安く上げる為に朝早く出て乗用車で行ってね! 富士だから、高速乗れば直ぐよ!」 と言い旅行のスケジュールと、QRコードを書いた紙を渡した 「それ、事前に顔認証いるから、当日ゴタゴタしたくないなら、登録しといてて! 黒ちゃんの方はカズがやっといてくれてると想うから!」 「了解!なら荷造りだな!」 烈は応接間に積み上げてある段ボール箱を開けると 「黒ちゃん、紅花、着れそうな服を探すのよ! 夜の内に洗って乾燥機掛けて乾かすから!」と謂う 段ボール箱を開けると、真新しい下着も幾つか入っていて 康太は「買わなくても黒龍と紅花の服は何とかなるな! 地龍と銘の服は残ったのと、下着は買って菩提寺へ送り出せば大丈夫やろ!」と言った 「そうね、どの子も同じ様にお願いね! 地龍だけ変な服や下着は着せたくないからね!」 「解ってるって!んな事オレがする訳ねぇやんか!」 「それもそうね、それより………余ってる部屋、猫部屋にしようと思ってるのよ……」 と増えた猫を想い口にする 「だな、でもそれは本人達に聞いてから作れよ! 飛鳥井は部屋が沢山あるから好きな部屋で寝れば良い訳やだからな!」 「そうね………でも何でこんなにクセのある猫しか来ないのかしら? 大人しくて可愛い猫、何故に来ないの? 素直で優しい子何故に来ないの?」 康太は遠い目をして「それはオレは知らんがな………お前の猫だからじゃねぇのか?」と謂う 烈は腕を組み「可笑しいわね………心優しいボクの猫なのに………」と考える 榊原はそんな烈の呟きなんか聞いてなかった 黒龍に合う服、地龍に合う服、選別をして 聡一郎は紅花に合う服、銘に合う服を選別して 取り合えず洗濯して乾燥まで掛ける 地龍と銘の服は明日以降でも良いからネットに入れ置いておく 先に優先して黒龍と紅花の服を洗濯して乾燥までやる為に慌ただしく動いていた 飛鳥井の家族が還って来る前に夕飯の準備をした 慎一も手伝い準備を始める 烈達猫と兄達はテーブルを拭いて、食器を並べた 烈は一生に「カズ、新婚旅行へ出るからさ、爆弾おにぎりニギニギお願い出来る?」と聞く 一生は「おっ!任せとけ!なら今夜握っておくわ!」と約束してくれた 凛 椋 レイが菩提寺から帰還して来ると、三人は血だらけで包帯を巻いていた 烈は「どうしたの?三人とも?」と問い掛けた 菩提寺から送って来た栗栖は 「彼等は………菩提寺に修行中の子と喧嘩したそうです……」と説明した 烈は鋭い視線を栗栖に向けると「誰?」と問い掛けた 「七生です………」 「そう………半殺しでは甘かったのね………」 と低い声でボヤく 栗栖はギョッとなり顔を強張らせた 慎一はちっこいのを連れて病院へ向かった 栗栖は自分ちへ還って行った 暫くすると久遠に手当てされ、三人は戻って来た 烈は凛に「誰か一番悪いの?」と問い掛けた 竜胆は「俺等は飛鳥井で生きる存在だからな 宗右衛門を貶されて黙っていたら男が廃るんだよ!」と謂う 椋も東矢の声で「ですね、我等は誇りと矜持を貶されたら怒り闘う所存!何か間違ってますか?」と謂う レイもニブルヘイムの声で「たかわが龍如きがホザくな!虹色だろうが単色だろうが、偉いのかよ?」と一生を見て謂う 一生は「虹が烈を貶したのか?」と問い質した レイは頷いた 「まぁ何色してようが、飛鳥井に生きる者がいる前で【宗右衛門】を貶したのならば、それは虹が悪いな!それは色も龍も関係なく最悪だと想う!」と言った 烈は「それは後でボクが何とかするから、母しゃんと父しゃんはお出かけするから、見送らないとダメなのよ! それにお客さんも来てるのよ!」と謂う 皆 切り替えて、何事も無かった様に動いた 朝早く 榊原は康太と黒龍と紅花を連れて、家を出た 爆弾おにぎりを渡し、見送りに来た一生に 「留守中はお願いしますね!」と謂う 波乱を含んだ空気がピリピリ伝わる レイやちっこいのの怒りが伝わる様だった それも含めてお願いして、榊原は黒龍に付き添い旅行へと向かった 四人を見送り、一生は溜息を着いた 何でこーも次から次へも難問起きるのよ………… 榊原と康太は問題山積な事は忘れて、楽しむ気でいた いざ 新婚旅行へ! 富士急ハイランドがオレ等を待ってるぜ! ワクワク出て行った康太と榊原とは違い、烈は城之内に「どう言う事?」とラインをした 城之内からそれはそれは詳しいラインが届き、多分………それは竜之介が打ってるのを知る 『最初は些細な事でした 久遠の子供が烈の悪口を口にしたのが発端でした 七生がそれに乗り、昇 海 陵が止める中 宗右衛門を馬鹿にし始めたのです それを耳にした竜胆、東矢 レイ怒り狂い、喧嘩を吹っ掛けた まぁレイは術を発動して七生もかなりの怪我をした………自業自得だと皆は言い手当ても自分でさせました………それが全てです!』 「そう、半殺しじゃ足らなかった様ね! 今直ぐに虹と拓美と拓人を本殿儀式の間に入れなさい!」 『どうされるのですか?』 「半殺しでは足らないならば、寸止めで殺してやるのよ!」 『………ならば俺は生かして出して下さい!と頼みます!まだ修行中の身ですので!と言います!』 「まぁトドメは刺さないから安心してよ!」 『ならば、3人は本殿儀式の間へ入れて置きます!』 と言いラインを終えた 烈は「ならば、腕によりをかけないとね!」と頑張り呟いた 烈はタブレットを取り出すと、菩提寺に仕掛けてある防犯カメラを確かめた 今日の分までは見られる筈……と確認する すると拓美と拓人は烈の悪口を言っていた それに七生が乗っかり悪口を更に広げて、あんな子供に仕えてる奴等もおかしい!と騒いて笑った 性根は何も変わっていなかった 拓美と拓人と同じで、よい子のフリして過ごしていただけなのだ 烈は本殿儀式の間に入った瞬間に迷いの森と繋いでやった 出口の見えない迷いの森へ迷い込み、死ぬ思いすれば良いのよ! 期限は両親の新婚旅行の付き添いから帰還する翌日まで! 死ぬ思いして、その曲がった性根を叩き直してやる気だった

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