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第13話 百折不撓 ❸

社員食堂へやって来ると社員達が「烈君!」と手を振る 「何食べたいですか?烈君?」と聞き奢ろうとする そんな所へ会長の瑛太と相談役の清隆がやって来て 「「烈!お昼なのかい?何食べるんだい?」」 と甘い叔父と祖父が言う 社員達は「本当に相談役はお孫さんが大好きですね!」と言う 清隆は笑って頷き、烈に「ヘルシーデラックス定食奢るよ!」と言いさっさと食券を買う 瑛太は康太と榊原に「奢りましょうか?」と話し掛けた 二人の手には食券が握られていた 「烈が渡して来たんだよ!」と言い食券をおばちゃんに渡す 清隆はルンルンと嬉しそうに孫と一緒にトレーを持ち席に着く その横に瑛太も座り、その前に康太と榊原が座った 仲良く食べる光景は、社員達の憧れの光景だった 仲の良い親子がわが子と、祖父が孫と、叔父が甥と食べる光景は癒やしだった 庶民と同じ生活をして、日々仕事をして、家族を愛し、共に過ごす 特別な存在なんかじゃない 役職が付いてるが、彼等も同じ人間なんだと思える 城田が食堂にやって来ると、烈を見て 「烈、腕治ったんだな!」と話し掛けた 「しろたん、治療の旅に出てくれたからね、両親が!だから治ったのよ!」と謂う 「それは良かった! あ、そうだ、春になったら同志を集めて遠足に出ようと思っているんだよ! 会費はいるけど、烈の大好きなカニパンミュージアムに行くんだよ!烈も行くか?」 「行く!行きたいわ!しろたん!」 瞳を輝かせ言う烈に、社員達はホッコリしていた 康太は「会費は払ってやるから、兄達と行って来い!」と言ってくれる 烈は「やったー!レイたん達はダメかしら?」と不安そうに聞く 城田は「ちっこいのも大丈夫です!子供料金払ってくれれば!」と謂う 「嬉しいわ!皆でカニパンミュージアムに行けるなんて!」 喜んでいた 康太は「おい!城田、カニパンだぜ!かに道楽の色をなくしたカニパンだぜ! それで他の社員は大丈夫なのかよ?」と聞く 「お子さんの中ではカニパンミュージアムに行きたいと謂う子もいますから! 会費さえ払えば家族で行けますからね!」 「なら頼むな!」 「了解です!」 城田は楽しげに笑い定食を頼み、愛染達の席に座り食べ始めた 瀬能が力なく座ってご飯を食べていた 烈は横目でそれを見て、何も言わずに食べ終えると食堂を後にした 会社を後にした烈はケントを呼び菩提寺へ向かう そして崖を登り険しい道を歩き、紫雲龍騎がいる屋敷へと行く 紫雲は今、その屋敷で生活はしていなかった 日中はその山で修行し、そして夕刻になると山を降りる そんな生活をしていた 歴代の陰陽師はずっとその場で暮らさねばならぬ、仕来りがあった 妻子には時々しか逢えぬし、その昔は妻子すら認めては貰えなかった 不浄を知ると力が弱る そんな意味合いで妻を娶る事すら許されぬ時代も在った だが今の時代にそぐわないと、宗右衛門がそれを廃止した 陰陽師だとて家庭を持ち、妻子の待つ家に帰り生活をする 普通の生活をして良い………と言ったから普通の生活をしていた だが日中は山の上にいるから、登るしか無かったのだ 頂上に着き、屋敷へと向かう 紫雲は「待ってたよ!烈!」と言って出迎えてくれた 「ねぇ龍騎、菩提寺は何時から大伽藍なくなったの? 大伽藍ないから祭りとか縁日とか無くなっちゃたのよね? 奉納祭もないじゃない?何故?」 会いに来るなり質問攻めとは……… 大伽藍、本堂を中心に5つの建物が並び、その中の一つが神楽堂だった 飛鳥井の菩提寺は大伽藍を要する大きな神社仏閣として名を馳せていたのだった 紫雲は一つすつ説明した 「大伽藍は………この寺は本家が仕切る様になり、一族には不要なモノだ! この寺は飛鳥井の菩提寺なのだ!と知ら示る為に取り壊された 5つの建物は次々に取り壊された、墓を広げて、その他は売り飛ばされた 縁日も同じだな、本家はこの寺は一族の為だけに在る寺だと主張して、そう言った行事の総てを廃止にしたんだよ!」 「あ、母しゃんが転生して来たら本家復活していた………言ってたわね…… そうか、そんな私利私欲にまみれた奴等に乗っ取られていたのね………… 縁日だけでも復活したかったけど………申し出とか今の時代は面倒臭いのよね ずっと受け継がれて来たならば話は別だったのにね…………」 「宗右衛門が前世の頃は、縁日とか盛大になさっていたと忌日はあります! 貴方は【還元】なさる方だけど、本家は【利益】を貪りたい方だったから………食いつぶされたのですよ! 当時の住職は本家と繋がり……本家の好きにさせていたからな……」 「あぁ、城之内の父親ね アレも奥が深い話なのよね…… だからボクは山を登って聞きに来るしかなかったのよ!」 成る程、紫雲は納得した 「何か残したかったけど、今世は色々と無理っぽいのよね………条例や法律厳しくなってるし 法人維持するのも結構大変だしね 収益上げてるなら税金取られるし………昔とは変わって来てるからね!」 「まぁ縁日は無理でも、バザーとかに場所を貸し出したりしてはどうです? 最近 私は山を降りれるので、我が子の参観日とか出たりします! その時他の保護者にバザーをやる場所の確保とか大変なんですよ、菩提寺お貸し出来ませんか? とか聞かれるんですよ まぁ私は権限ないので聞いてみます、とは言っておきましたけど!」 「それ、良いわね! 貸しましょう!事務員に太極拳と被らない日程を取らせるのは可能だから、貸すわ!と言っていて! だけど、貸すけど、あくまで責任は借りた側だから、警備とか付けたりはそっち持ちで、と言っていてね! 場所は提供して、サポートも総て菩提寺持ち…は無理だからね!」 「解りました!その様に話してみます 後の話し合いは事務所で決めれば良いだけなので 話すように言っておきます!」 「龍騎ちゃん、やっぱ家族と暮らす生活は愛情も深まるでしょ?」 「ええ、共に過ごさねば我が子の些細な成長すら解りませんからね! それに二人目も出来たりはしませんからね」 「あら、二人目出来たのね………ならその子は途轍もない力持ちかもね………」 「え?…………」 「次代の陰陽師誕生したじゃない! 家族ごと寺の家族向け住宅に住んで貰って修行に入ったじゃない! その子と張り合える子、生まれるわよ! 貴方は別け隔てなく修行を付け、育てる余生が有るから、まだまだ気を抜かない様にね!」 「私にはまだそんな未来があったのですか?」 「あるわよ!だから日々能力を研ぎ澄まさせる鍛錬をしてね!って訓練メニュー渡してあるじゃない!あれは次が生まれようが、能力高いのが生まれようが、力を持続させる為の訓練メニューなのよ! 山を降りようが、何処で暮らそうが、力は減らないわよ! それはあくまでも本人の日々の鍛錬の中に生きているモノなんだから!」 「次代や力持ちに負けたりなんかしないよ!烈 私はまだまだ頑張るからね!」 「当たり前じゃない! 菩提寺が活気づくイベントを考えようと想うのよ このままじゃ、忘れ去られた寺になりそうだからね!今の時代何も努力しない寺なんてないわよ!」 「一般の方の檀家さんも増えて来ました 【飛鳥井】に特化した寺だと想っていたみたいですが、違うんですね、と最近良く言われます… 納骨堂も完成に近いし、参拝殿は既に完成して見学に来られる方も増え、半分以上が契約されていますからね!」 「時代に特化して行かないと、本当に廃寺になるしかないのよね 今の時代、どれだけの寺が潰れたり、人手不足で回せなくなってると思ってるのよ テレビとかYouTube見てると廃寺とか心霊映像撮る為に行ってる人いるじゃない! あの寺の半分以上が魂も抜かずに放置されてる仏像があるのよね………まるで何があって夜逃げしたの?と想う様な全て放置して逃げたみたいな廃寺とか見るわ 菩提寺をそんな哀れな廃寺にしたら先祖に化けて出られるわよ!」 「時代に特化した………か、私は人生の半分以上を山で過ごしテレビも何も無い世界で過ごしていたので、時代に取れ残されてるなって痛感してます!」 「そりゃそうよ、まぁストイックに生活しなきゃだけど、でもあの状態は過酷すぎなのよ! 何時の時代よ!って言いたいわよ!」 「墓の敷地は住職達の道場にされるとか?」 「あの場に大伽藍あった筈なんだけどな………壊して半分以上の土地を売り払い、墓の面積広げて金儲けしていたのね…… まぁ、今の時代に宮大工も少ないし、大伽藍建てるとしたら幾ら要るのよ! だから建てないけど、悔しいわね 本家の馬鹿が馬鹿な事しちゃったからね……… 今後も本家なんて存在はさせないわ! この先、我が兄達が代わる代わる転生する! 竜胆 恵方 そして次代と兄達が目を光らせてくれるから本家なんて馬鹿な事にはならないだろうけど………飛鳥井の果てが一旦終焉を迎えたからね 今 詠み直ししてる最中なのよ」 紫雲は顔を引き攣らせ 「飛鳥井の果てが一旦終焉を迎えた? それは何時の事ですか?」と尋ねた 「竜胆の魂が分割され律の中に埋め込まれた、って話はしたじゃない! その時よ、このまま不完全な状態ならば……飛鳥井は果てへは逝けなかった それは即ち終焉を意味するのよ! だからこその完全覚醒の儀だったのよ……… 彼処で一旦飛鳥井の歴史は終焉を迎えてしまった………今刻んでるのは新たに創り上げた飛鳥井の盤上の歴史なのよ 恵方も飛鳥井の未来が今世途絶える………飛鳥井の終焉を詠んでいたわ だからボクは盤上に上げた時に、本家の歴史は悉く削除してやったのよ! 今後二度と再び現れる事のない様に、呪詛まで掛けてやったわよ 本家出来た瞬間、飛鳥井は終焉を迎えるわ! 兄達や竜胆は飛鳥井を捨てて新たに時代を刻む時を迎える! 古くから繋がる家と言うのは、そうして繋がり今も生きているのよ! 美濃部の血の様にね!」 「美濃部…………そう言えば弥勒、親父が躓いた時を見る為に時を遡ったんだろ? 辿り着けすに迷いの森に迷い込んだから、導け!と言ったから導いて連れ戻したけど………」 「アレはね辿り着けさせない為のトラップ張ってあったのよ! ボクが迷いの森と繋いて無ければ、弥勒は時空の狭間に飛ばされて、出てくるのも困難な事になる筈だったけど、迷いの森と繋げてあったから、其処へ紛れ込めたのよ そしてルーかスーに会ったみたいで、龍騎ちゃんに繋げれたんじゃない! まぁやはり強運の持ち主なのよ彼は!」 「物凄い落ち込んでヤケ酒飲んでました!」 「まぁヤケにもなるわよ………閻魔大魔王の預かり知らぬ死者が出てるって話だからね 海坊主関係の人間は姿を消し、地獄にすらいない この現状って異常よね? 閻魔の台帳に名はあるのに姿はない……地獄へ渡らなかったなら天国か?とガブたんに聞いたら、そんな死者は居ない!と謂われるし……… なら何処へ行ったの?って謂う事なのよね………」 紫雲は言葉もなかった 烈は立ち上がると「まぁ大体理解は出来たら良かったわね!ならまたね、龍騎ちゃん!」と言い帰りは楽な方から降りて還った 菩提寺へ降りて逝くと、城之内が待ち構えていた 「陰陽師と何の話だ?」 「大伽藍何故ないのか?聞きに行ったのよ 貴方は…………父親の話……したくはないでしょ?」 「………ひょっとして大伽藍壊したのは親父だったのか?」 「話しても良いけど気分の良い話じゃないわよ!」 城之内は信じられない………と驚きそれでも 「聞きたい………話してくれないか?」と謂うのだった 烈は「立ち話もなんだから、保養施設の3階に逝きましょう!」と言い場を移した 保養施設の3階に行き、テーブルの前に座布団を出して座る 「真贋が今世生まれた時には御大層な本家と謂うのが、存在していたらしいじゃない! その本家と貴方の父親が、菩提寺は飛鳥井のモノだ!と大々的に公表する為に、みせしめの様に大伽藍を取り壊し、墓地を広げ、他は売り飛ばした!ってのが現実なのね! 実際 ボクの前世の時には大伽藍あったのよ 5つの建物と本堂が存在したのよ! それを壊して売り飛ばしたりして、マンション建てたり宅地にしたりして儲けたみたいなのよね でも寺の土地には飛鳥井以外の者は住めない! そんな呪詛が此処の地一帯には掛かっててね 飛鳥井じゃない者は当然住めないから、今じゃ雑木林になったり空き地だったりしてるじゃない それをボクの駒の土地転がしのテツが買い叩き集めてくれて元の敷地は戻ったわ! だから家族向けマンションとか建てられたのよ! 立ち退きしてなかったらどうしようかと思っていたけど、何とか前と同じように土地は取り戻した でも今の御時世、宮大工も数を減らしていて、もう5つの建物を建てられる資金も人材もいない 昔は縁日とか、奉納祭があって奉納の舞とか披露する場があったのよ! だからこその、飛鳥井の奉納の舞だったのよ 土地を奉る【栄華の舞】豊穣祈願の【豊穣の舞】 厄除けの関係の【厄払い】【春衣の舞】【年越し祈願の舞】【新年の舞】【斎苑の舞】この7つの舞が季節ごとに舞われる筈だったの……神楽堂すら取り壊してるのよ でも舞は受け継がねばならないから、神楽堂は建設しようと思っているのよ!」 「神楽堂に御座いますか?」 「まぁ壊されたのは元々呪文と結界を張り巡らしているから、復元の術でも述べれば復元してくれないかな?と思ったのよ でも貴方の父親は【宗右衛門】の存在見越して、復元の術をさせない術を施しやがったのよ 本当にねクソ野郎で腹が立つけど、これが現実だから仕方ないわ………」 「俺は……どうやったや償えますか?」 城之内は苦悩に満ちた顔をしていた……… 「貴方は関係ないじゃない 親と言えど別の存在、貴方が償う事などないわ!」 「でも…………」 「だからわざわざ紫雲の所へ行ったのに……… でしょう?気分の良い話じゃないって言ったじゃない!」 「菩提寺の土地はかなり売り飛ばされ、今の姿になってしまったと謂うのか?」 「そうよ、本堂とそれを取り囲む様に5つの建物があったのよ、それを大伽藍と謂うのよ その中に神楽堂も入っていたのよ まぁ神楽堂は建築するわ! そして舞も受け継がれねばならぬから、受け継いで逝くわよ だから城之内にはもっと頑張って貰わなきゃならないからね!」 「はい!頑張ります!」 「貴方の父親は復讐に囚われ………操られていたのよ……… まぁ復讐に囚われる奴は視野が狹くなり、それしか考えられないし、他が見えなくなるモノなのよそれはね、ボクが身を以て体験済みだから気にしちゃ駄目よ!」 宗右衛門は人の世に堕ちる前、壮絶なイジメを受け………復讐したという話は寺の忌日にも書いてある程だった 「本当にあのクソ親父には泣かされたけど、消えて欲しいなんて一度も思っていない! だから俺も親父の魂が……安らかになれる様に祈祷するつもりだ!」 「それが良いわね! そうしてあげて、貴方があの人の子である事まで否定しないであげて!」 「あ、そう言えば話は変わるけど、道場に来ている親達がバザーとかやりたい、って言ってたな それと小さいけど焼きそばとか父兄が作り、露店みたいな感じにして、祭りみたいなのもやりたいとの要望が出ているぜ!」 「なら夏は盆踊り、秋はお祭り、春は桜まつりとかやれば良いじゃない! 太極拳に来てる年寄りに協力して貰い、やれば良いじゃない! バザーとかは紫雲からも聞いたわ! 同じ所からの要望なのかしら?」 「それは解らないな………此処の地区は区の境目に有るから、学区が違ってるかもだけど、要望箱に要望出てるから烈の耳に入れて何かしたいなって思っていたんだよ!」 「やりましょう!でもバザーは土地は貸すけど、自己責任でお願いね! 事務方にも要望が来た時には伝える様にはするけど、自己責任でお願いなのよ 場所を貸して、何かあったら責任取っていたら、割に合わないからね!」 「なら事務方に話だけ通しておいてくれ! そしたらお前の意向通りの調整するだろうさ!」 「了解したわ!それより、どう?起きた?」 「起きないから明日の朝には叩き起こすつもりだ!」 「それで良いわ!3日寝てないだろうからね 仕方ないのよ、でも馬鹿なのがいけないのよ! 自業自得だから放って置いて構わないわ! ても明日から鍛錬のレベル上げてね! 仁と同じレベルでお願いね!」 「え?仁は赤帯だぜ!」 「赤帯取らなきゃ寺からは出さないわよ! 叩いて叩いて叩き上げて刀剣にしてね! 「まぁ折れるか鍛え上げれるかは、本人の気持ち次第だがな! 良い子のままの表面しか取り繕わねぇままじゃいられなくしてやるさ! 己が変わるしかねぇからな! 取り敢えず鍛え上げる事に全力するわ! 後 イベントあるなら手伝わせるとする!」 「なら頼むわね! 貴方は何も気に病む必要なんてない! 過去は変わらないけど、未来は変えられる! 貴方の未来は輝かしく暖かい道へと逝ける筈よ! まぁ曲がるならボクが死ぬ目に合わせて軌道修正してあげるからね!」 城之内は笑って「それは頼もしいな!俺は俺の道を逝く!それだけだ!」 「ならまたね!」 と言い烈はケントを呼び出し帰宅して行った その夜、約束通り烈は夕飯を食べた後に、弥勒の家を訪ねた 烈はわざわざケントの車に乗り、向かう事にした 弥勒の家に到着してドアチャイムを押すと、妻の澄香がドアを開けた 「まぁ、康太!逢いたかった!」と康太を抱き締めた 玄関に弥勒が出て来て「ライン貰ったから待ってたんだよ!」と嬉しそうに言う 烈は敷地内に入っても何ともなかった が、……玄関に立つ両親の後ろに立っていた時から、嫌な感じはしていた 「さぁ、入ってくれ!」 と言われて康太と榊原は家へと入る が、烈は玄関に入るなり…………弾かれる様に飛ばされた クーが用心の為に後ろで待ち構えていたから、難は逃れられたが、クーがいなければ門扉に激突だった 康太は「やっぱし、烈の気をオレだと勘違いして烈を弾きやがったか……」と呟いた 榊原は飛ばされて衝撃で動けない我が子を抱き締めた 弥勒は「何が起こったんだよ………」と不安げに呟いた 康太は「烈が上がれねぇんじゃ話も出来ねぇかんな、お前と澄香はオレんちに来いよ!」と謂う 榊原が弥勒と澄香を乗せて、ケントの車の後ろを走る 烈は飛鳥井記念病院の裏の家ではなく、全く知らない家へと向かい、その家の駐車場に車を停めた その横に榊原も車を停めた 烈は車から降りると何やらブツブツと唱えていた 「早く入って!」と謂れ、榊原は康太と弥勒夫妻を家の中へと急がせた 家の中へ入ると、時空が歪むのを感じていた 別の次元に行ったかのような不思議な感覚に囚われていた 烈は応接間のドアを開くと「さぁ、どうぞ!」と言った 其処はまるでモデルルームみたいな作りの生活感のない部屋だった 烈はスーに「【眼】の気配は消えた?」と問い掛けた スーは「此処に入り込むのは不可能やろ! 【眼】だとて弾き飛ばしてしまうやろ?」と謂う 「なら安心ね!」と言いソファーに座った そして「お茶は出ないわよ!茶葉も食器もないからね!」と言う 榊原は「お茶は別に構いませんが、此処が何処かなのか?教えて下さい!」と問い質した 「此処は今売り出し中のマンションのモデルルームよ!」とサラッと言った 康太は「【眼】が追って来てるのに、飛鳥井へは連れて行かねぇと思っていたさ!」と言う 「やっぱ母しゃんは解っていたのね!」 「あぁ、伊織も弥勒も感じていたさ!」 康太が言うと弥勒は「…………あの気配は親父の気だ………信じたくはなかったが……紛う事なく………親父のだと謂う気配は感じた………」と苦悩に満ちた表情を浮かべ謂う 澄香は「何が在ったのか?話しては下さりませんか?」と言った 康太は烈が暴走族上がりの奴等に狙われていた時、海坊主の気が確かにあり、暴走族上がりの奴等は『飛鳥井康太の奴め!』と言っていた 海坊主は烈、嫌、宗右衛門の事は深くは知らなかった! 今世は魂が消滅しかけてヘルメースに助けて貰い同化され気配も違うから解らないのは仕方がねぇ が、海坊主は烈の気配をオレの気配と想い弾いた だから烈はお前んちには入れなかったんだよ!と話した 澄香は言葉もなく黙って聞いていた 烈は「海坊主の遺骨は何処に預けてあるの?」と問い掛けた 弥勒は「遺骨?それは弥勒院家の墓石の下にある!」と言った 「多分だけど、骨ないわね!」 烈が言うと康太も「多分、ねぇだろうな!捧げ物として取り込まれてると見て良いだろう! 骨一つ、思い出一つ、軌跡一つ、総て消し去って取り込んでいるんだろうな お前の中の弥勒院厳正の思い出も消え去りつつ在る………違うか?弥勒? だから躍起になり、海坊主の過去を追ったんじゃねぇのか?」と図星を指した事を言った 弥勒は観念して「あぁ…………」と言い苦悩に満ちた顔をした 「最初は倅が『この人誰?』と聞いて来たのが始まりだった………… 確かに幼かったが、親父と暮らした日々は在った筈だ………なのに倅は………覚えちゃいなかった そして次に澄香………仏壇に毎日陰膳をしたり花の水を変えたりしていたが………親父の事をご先祖か何かと勘違いしていた………… 記憶がねぇんだよ………親父と過ごした日々が……… 少しずつ消えて行ってるんだよ! そんな時に烈から親父の事を聞いたから、俺は………何が在って闇に堕ちたかを知りたくて………時を渡った だけど弾き飛ばされて辿り着けなかった現実に………覚悟するしかなかった」 と本音を吐露した 烈は「ボクが狙った訳じゃないけど、貴方には辛い現実を聞かせるしか無かった……… ボクはオブラートに包む言い方ってのが出来ないみたいだから……ズバッと本題に切り込むしか出来なくて………貴方を苦しめたわ! ごめんなさいね!」と謝罪した 弥勒は「烈の所為じゃねぇから、謝らないでくれ!烈は………親父の手の者に命を狙われていたんだ!あの気は親父のモノだった! 門倉や門倉が作ったチームの奴等に狙われていた時………確かに親父の気配を感じていた……… アイツ等を操って動かしていたのは海坊主だ! 間違いはねぇ、そして俺の家から着けて来た【眼】は確かに親父のモノだ! もう言い逃れも何も出来ねぇ事実だと受け止めた!」と謂う 「海坊主は駒の一人よ!アイツにはそんな駒が幾つもいて、深い友人を使ったり、知人を使う辺り………本当に苦しめようとした策略なのが腹立つのよ! でも大歳神を駒には出来ないわ! 十二天を駒にも出来ない! だからこその、海坊主なのよね!」 弥勒は烈の言葉に「それは何故なんだよ?」と問い質した 康太がそれには答えた 「それはな信仰を受けている神だからだよ! アイツ等は倭の国に根付く信仰を受けている神だからだよ! 信仰心が今も強く受け継がれていて、尚且つ幾つもに分散して祀ってある神に何かは出来ねぇって事なんだよ! 大歳神や十二天を祀る神社仏閣は倭の国の各地に枝分かれして祀られているからな 手出しは出来ねぇんだよ! 因みに聖神も倭の国に祀られている神だからな 厄介な事極まりねぇんだよ! ニブルヘイムとは旧知の仲だからな 目障りな事この上ねぇんだよ! その上魔界になくてはならない存在だから直ぐにでも消したいのに消せない んな事情もあるのよ!」 と説明した 弥勒は理解した 此処まで執拗に命を狙われるのは何故なんだ?とは想っていた 人でいる【今】ならば消滅させられる可能性がある そして消滅させた後 悲しみに暮れるニブルヘイムを葬る そんな策略でも在るのだろう 弥勒は「時を渡っても細工されるならば、キッパリ諦めるとする! もう………アイツは俺の親父じゃねぇ! もう違うならば………キッパリ諦め………闘う所存だ!」と宣言に近い事を言う 烈は「前にも話したじゃない、海坊主の魂は消させないわよ! 来世、何も持たない者に転生させ惚れ抜いた女と添い遂げさせてやるつもりだから、消すならば貴方を消すわよ!」と言う 「お前を殺そうとしてる奴なんだぞ!」 「それがどうしたのよ? 海坊主の気を探るならば………泣いてるわよ こんな筈じゃなかったのに……と泣いてるわよ 惚れた女を救いたかった それだけだったのよ それが悪いの?悪くないわよね ならば……貴方はあの人の息子なんだから救ってあげて! そしてその魂を朱雀に渡して! そしたら朱雀が輪廻転生をさせてくれるから……… えんちゃんと朱雀には話は着いてるのよ!」 「お前は………憎くないのか? 何度も何度も手を変え品を変え狙って来るアイツが、憎くないのか?」 「まぁ憎いわよ! 願いが叶うぬいぐるみ作ったの海坊主だからね あれでどれだけの人死んだり傷ついたか知ってる?たっくんまで傷付けやがって! 傷が残ったら消し炭にしてやろうかと思ったわよ!」 自分が狙われ命を狙われたのに…… 怒るのは従兄弟が怪我をしたり、他の人が怪我をしたり死んだと謂う事実に怒るのか……… 「お前は仏か?菩薩か?」 「何よ?それ?ボクは何の力を持たない聖神よ! そして今は飛鳥井烈、母しゃんと父しゃんの六男よ!」 弥勒は爆笑した 康太と榊原も苦笑するしかなかった 榊原は「此れが僕の息子です!何も望まない、利益還元祭を常に行う孝行息子なんですよ!」と謂う 弥勒は「親父の魂を救ってくれるのか?」と問い掛けた 「救うんじゃないわ! 在るべき道へ還すだけよ!」 烈の言葉に弥勒は涙が出る程………嬉しかった 康太は「弥勒、もう時は渡って確かめなくて大丈夫なのか?」と問い掛けた 弥勒は「あぁ、あの日………一人で時を渡った日………俺は弾かれて時空の裂け目に弾き飛ばされて………このまま終わるなら力を解き放ち出るしかないな………と思っていたんだよ そしたら白黒斑の猫と出会して「え!留守!」って言ったら大阪弁の猫に飛び蹴りされたんだよ 『続けて呼ぶんやない!失礼やで!あんさん!』 って言われて、めちゃくそ安心した で、此処は何処やと尋ねたら『迷いの森です!迷子ですか?』と大阪弁じゃない方に聞かれた あぁ、何処かへ飛ばされたと謂うと 『ほんま、ラッキーでっせ!あんさん! 今は迷いの森と繋げてあるけど、繋げてなきゃ時空の狭間に巻き込まれ出るのやっとやで!』って言われたんだ で、龍騎に繋いで貰い出た その後に烈に説明されて、迷いの森がなかったら出るのも一苦労な現実突きつけられた それでも一緒に時を渡っても良いと言ってくれた……烈には感謝しかねぇよ そして間違った道へと逝ったのに………親父の魂を救ってくれると謂われた もう俺は………覚悟を決めた! 俺は………親父の魂を救う! そして朱雀に渡して輪廻転生の道を辿らせるとする!」と誓う様に言葉にした 烈は「母しゃん、此処から崑崙山のボクの家まで飛ばして下さい!」と簡単に言ってのけた 康太は「お前、今、めちゃくそ簡単に言ってのけたな!」とボヤいた 「だって此処から神の道開いても母しゃん通れないじゃない! 一度通った時、守り神達がチビる程に恐ろしかった………と言ってたから、もう通るの止めてあげてね!」 「………あれは緊急事態だったんだよ!」 「今は緊急事態じゃないから通っちゃ駄目よ!」 康太は、う〰️う〰️と唸った 烈は知らん顔していた 澄香は「親子喧嘩ですか?止めて下さいね!仲良く!!」と謂う 弥勒は苦笑して「この親子は何時もこんな感じだ!」と執り成した 康太は「母ちゃんを労りやがれ!」とボヤいた 「ほら、早くぅ〜母しゃん! 術は常に使わないと錆びるわよ!」 「錆びたりしねぇよ!オレの術は!」 とボヤきながら転移の術を唱えた すると時空が歪み、目の回る速さで移動を始めた そしてそれが止まると崑崙山の八仙の屋敷の前だった 「もう駄目だ伊織!疲れたぁ〰️」と言い榊原の背中によじ登った 烈は自分ちへとさっさと歩いて逝く 弥勒は妻と共に後を追った 榊原も妻を貼り付けたまま後を追った 烈の屋敷に入り、康太をソファーに座らせると、弥勒と澄香もソファーに座らせ榊原はお茶を淹れに向かった 澄香は見知らぬ空間にソワソワと落ち着きなく、キョロキョロと辺りを見渡していた 烈は屋敷の掃除をしていたゴロウを呼び 「ボクの寝室に在る水晶玉持って来て!」と頼んだ 烈は漆黒の敷物を敷いた その上にゴロウは持って来た水晶玉を置いた そして「俺は素戔嗚殿を手伝いに行きます!」と言い屋敷を出て行った 榊原は飲み物をテーブルの上に置くと、カーテンを閉めに向かった 暗くなった部屋に水晶玉は光り輝いていた 烈は水晶玉に手を翳し呪文を唱えた 「過去は追えないわ! アイツが気付いて妨害して来るからね! でもボクを追い掛けている最中の想いならば、紡げたから視せてあげるわ!」 そう言うと、水晶玉に気配となった姿の薄い海坊主の姿が映し出された 海坊主は泣いていた 『すまない…………倅よ………』 『何の因果か……お前が愛した者に手を下さねばならんとは………』 『倅は………きっと恨んで………儂を消しに来るだろう………』 と嘆いて泣いていた 『儂の人生、悔いなどないが………愛を間違えた事だけ………後悔なら在る………』 『済まない…………済まない……高徳………』 弥勒はその映像を目にして泣いていた 澄香の中の……記憶も呼び起こされ、想いが蘇る 「お義父様……」と言い澄香も泣いた 烈は未だに居心地悪そうにモゾモゾしてる澄香を横目で見て、そしてハッ!と何やら気付き立ち上がると 「やっぱり跡を着けて来たわね!」と言い外へと駆けて行った すると烈の屋敷の前には七賢人 ラルゴ ミルゲ ノア レオ セオ アーサー ルーク そして八賢者 アーロン カレブ タイラー イーロン ラドルフ アロイス アルク ロック お師匠達が勢揃いして立っていた そして一斉に呪文を唱え始めた 原始の理 原始の礎 原始の心礎 原始の礎石 原始の戒め 秩序を乱し 時を超えてそれを乱す者に鉄槌を! と声高らかに呪文を唱えると地面にポッカリと穴が開いた その中へミサイルとも火球とも付かぬ物凄い速度で堕ちて来る物体を………急速に落下させた 賢者アロイスは「この蒼い地球(ほし)の核まで届きマグマに焼かれて消えるがよい!」と吐き捨てた 烈は「お師匠達勢揃いで、ボクを助けて下さったのですか?」と尋ねると賢人も賢者も笑い飛ばした 賢人ノアが「この未熟者の弟子めが! この地にアレだけのモノが堕ちれば、我等が棲む場も平穏には過ごせない故 来ただけじゃわ!」と吐き捨てた 賢者ラドルフも「弟子よ、この地が吹き飛ぶなれば、我等の地も無事では済まぬ! そして八仙は屋敷を失う事になる! さすれば八仙の怒りを買うのはお主じゃぞ!」と笑いながら謂う 本当に意地の悪いお師匠達だった 八仙は「我等が屋敷が吹き飛ぶなれは、主の屋敷もミジンコにしてやる所じゃわ!」とホホホホホッと笑い飛ばした 康太は爆笑しまくり、榊原は苦笑して、弥勒は言葉もなかった 賢者 カレブは「久しいのぉ〜聖王!」と挨拶した 弥勒は「あぁ生きてたか!消息絶ってたから死んだかと思ったわ!」と謂う 「まぁ山に籠もっていた時は嫌気が差して隠居しておったからな! でも神名を取り戻し、そこの未熟者の師匠になった故、我等は弟子を護り正して逝かねばならぬ! 今は桃源郷近くに居を構えておる 遊びに来るとよい! 毘沙や帝釈、大歳神も良く来る故、聞けば連れて来てくれるであろうて!」と笑い飛ばした 七賢人も八賢者も生き生きして、逞しく大地を踏みしめ立っていた その存在感は凄まじく…………生気に満ち溢れていた 賢人ラルゴは「烈、近い内に羅刹天殿と元始天尊殿が馬を持って来るらしいぞ! その時は主も来るのじゃぞ!」と謂う 烈は「馬!!えんちゃんに言わなきゃ!」と謂う 賢人ミルゲは「さてと邪魔者は消し去ってやったわ!我等は還るとする! 烈よ!この地は聖なるミストの濃い地故、跡は着けられぬ………其処の女を調べた方がよいぞ!」と言い姿を消した 烈は澄香を見た 「やっぱりね、母しゃんの術を辿れるのは、その場にいた者しか出来ないわね……」 烈が言うと康太も「だな………乗っ取られているのか?」と問い掛けた 「海坊主も人の親の心までは捨ててはいない……… 弱ってる澄香を操り、此方の同行を探ったり、跡を着けやすく弄った程度だと想うわ でも………闇が深すぎて………人の世にいたら何時アイツの手に落ちるか解らないわ! だからこそ、弥勒の家に飛鳥井康太が近寄れない様に術を掛けた 闇に染まった澄香視たら祓うかも知れないから………こその術なのね 弥勒、少しの間、八仙の屋敷の奥に四龍と虹が住んでた家あるから、それを貸すから、この濃いミストの中で生活させ世界樹の水飲ませて闇を抜きなさいよ! 話はその後からね!」 「…………解った………まさか澄香が………信じられん!」 「それが現実よ!貴方の倅は名前も悪いし性格も悪いから、この際だから菩提寺に放り込んでやるわ! 菩提寺へ放り込む時、力は封印してやるわ 二、三年は修行させないと傲慢な馬鹿育てててるわよ!貴方!」 「え?倅は母の手伝いをする良い子だが???」 「本当にそうなの?澄香?」 そう聞かれると澄香は下を向いた…… 「澄香が安定して幸せでいるならば、海坊主になんか乗っ取られないわよ!」 「え?…………それは…………」 「心の中に血溜まりの闇の花咲かせているのよ!」 「嘘…………」 「力のない母親は馬鹿にして召使い同然だったのかしら? そんな事、飛鳥井でしたならば半殺し……嫌、キッチリ黄泉の旅路へ旅立っているわよ! 兄達で匙を投げるなら、ボクが出て、ボクで駄目なら最終的に母しゃん出るからね! 最近の母しゃんは本当に面倒臭がりになっちゃったから、面倒なのは消すわよ!瞬殺よ!」 烈が力説していると康太は笑って 「良く解ってるやんか! 最近は孝行息子に楽させて貰ってるかんな! 面倒なのは瞬殺する事にしてるんだよ! 説き伏せて、軌道修正掛ける それは宗右衛門の役目だかんな! オレはさっさとカタを着けるんだよ!」 と謂う 弥勒は言葉もなかった 烈はサクサク歩いて四龍が住んでた家へと向かう 其処は…………八仙の家ばりの屋敷だった 無駄な物は一切ない 仙人が作った家だから仕方がないのだ 烈は「何故この家にしたかは、住めば解るわ! この家は八仙の家と同様、無駄な物は一切ない ミストの濃い地で育てられた樹で創られた家なのよ!そんな家に半月住めば澄香は本来の姿になれるわよ! ボクの家は快適だけど、澄香はきっと住めない 何故なら………世界樹の樹液染み込ませた木々で創られた家で、天空神がお住みになる場の祝福の光を浴びているから……… 闇に染まった者は長時間滞在するのは無理なのよ! ボクの家に来た澄香は何だか居心地悪そうだったでしょ?」と謂う 康太も「あの家は祝福の光に満ちてるからな、闇に染まってねぇ奴ならば、居心地良過ぎて寝ちまえる程に安らぎの空間だよな! 闇に染まった者ならば、モジモジとして居心地悪くなるのは当然だぜ!」と答えた 「まぁこの地に棲むならばお腹は減らないし、布団はあるから過ごせるし、互いしかいない世界で今後の話をするのよ!ついでに子供も作っても大丈夫よ! 龍騎ちゃんとこ、二人目で来たらしいし、弥勒んとこも、どう?」 烈が言うと康太は「おっ!二人目出来たのか? それはめでてぇーな!」と喜びの声を上げた 「やっぱ、今世は飛鳥井の終焉だったのね 龍騎ちゃんとこの子、凄い力持ちよ! 次代の陰陽師と張り合える程の! 多分、飛鳥井の礎に入り、恵方が尽きるまでは、陰陽師と交互に誕生さるんだと想うわ! そして恵方が役目を終えた時、恵方の役割を担う者になるんだと想うわ!」 「え?そんなに強い力持ちなのかよ! まぁ今世は何かと異常続きだったからな 終焉を向かえると強い奴が出て来る忌日通りになったな! まぁその忌日遺したの恵方だかんな!」 「栗田も家族向け住宅に入ったじゃない! 姫巫女は家族と敷地内で過ごされる事確定となったし、やっぱ次は神楽堂建設よね?」 「やっぱ、復元の術通じねぇのか? 宗右衛門があれ程巧妙に掛けた術が発動しねぇのか?」 「城之内の親父いたじゃない! アイツがボクの術を巧妙に暴いて破壊したのよ! だから復元の術じゃ大伽藍は復元されなかったのよ!術を破壊して、切り離して売り飛ばしたのよ でも、まぁ、ボクが掛けた飛鳥井の一族以外が住めぬ地となれ!と謂う呪いまでは術を解くのは無理だったからね! 何とか前の土地まで買い戻したのよ でも復元は出来ず………でさ、もう落胆しまくりよ……」 「城之内の親父………死しても………地獄にもいねぇんだろ?閻魔の預かり知らぬ死者なんて………手下も同然じゃねぇかよ………」 「多分ね、堕ちてるわね 使い捨ての駒ね………多分だけど那智って人はまだ死ぬ様な年齢じゃないのよね? ならば何故に閻魔帳に名前載ってるのよ?」 「あぁ、オレも海坊主の関係者を当たったんだよ そして閻魔に会いに行き閻魔帳も視せて貰ったわ 名前在るんだよな? なのに死者になったのに地獄に何故にいねぇのよ? オレと伊織は地獄中探しちまったせ! 死者の顔まで確かめちまったぜ!」 「いないでしょ?」 「あぁ、いなかったな……… 転生の道を辿った形跡もない 閻魔帳に載ってるのに閻魔の預かり知らぬ死者がいる…………兄者はかなりお怒りで天界や地獄界や他の国にも告げられたそうだ! そしたら天界も調べられると言ってたらしい 天界へ導かれ転生の道を辿らねばならぬ死者が、天界に上がった気配もない者がいるか? 今一度精査する時が来た!って騒いていたな………」 「本当にね、誰の仕業かは………言わずもがなよね」 「……まぁな、此処まで手を打たれていたら、身動き取れねぇし、もう何ともならねぇ領域だかんな 消えた存在は捨てて置くしかねぇな………」 「それしかないわね…………」 「閻魔帳に載ってるのに、地獄にいない死者………ならば何処で何してるんだ?」 「それはボクの知る領域じゃないのよ……… 本当なら那智と謂う人とか菩提寺の前住職の顔を見て星を読みたかったけど……… それさえさせない為に、総てを消して消えてるのよ 星さえ詠めないのよ、手掛かりがないからね」 「…………んとに、クソだな! あ、そうだ、大仏とかって奴、どうなった?」 「まだよ………一手さえ掛かってないわ……… 刑は此れから唐ちゃんや警察が一つずつ洗い、調書を取り裏付けをして裁判に持ち込めるか? と気の長い話だからね グズグズやってたら、大仏………消されちゃったら全て立ち消えになるかもなのよ………」 「司法に委ねるってのは、そう言うクソ長い時間を要しちまうって事だからな………」 「ても大仏の実家の会社は確実に潰したわ! 使途不明金について今、叩かれている最中なのよ 数億円って女に荒稼ぎさせたお金が、会社に流れているのは裏付け取れてるからね! だから政治家に飛び火して、闇献金とか貰ったの発覚しちゃったのよ…………」 「闇献金とか政治献金規制法に………って連日ニュースを騒がせているからな… 見てる方は、もうウンザリってヤツだな!」 「まぁ、ウンザリだから投票率低くなるのよ! それより大仏の女の一人で、富士の樹海に捨てられたけど、死ぬ直前で助けられ生き残って隠れてた子が証拠を遺していたから、其処から任意で同行させて、糸口見付けてガサ入れに持ち込めたのよ 女が事務所にしてる部屋に押し込んだら………犯されてる真っ最中の女が何人もいたのよ 映像を撮られセックスしてる最中の映像を売りさばいていたから、それを証拠に、もっと厳しく取り調べする事が決まっているのよ その場にいた女達も保護された 未成年の子もいて、問題になってるわ!」 「政治家が女を斡旋して貰ってたんだろ? 刑事達には好みの女をあてがい、見逃して貰っていたってやって、騒がれてたな!」 康太はウンザリとして呟いた 「そう、警察も信用台無しにされたから、揉み消した事件を全て洗い浚い吐かせ裏付け、言い逃れの出来ない証拠を集めているみたいね 女の自宅には脅していた女達のセックスシーンのロムが何本も見つかったのよ 女はまさか自分が取り調べされる日が来るなんて想いもしなかったんだと想うのよ 脅しの証拠を下手に処分して足が付くのを恐れず隠し持ってたらしいからね そして用済みになった女や、逃げ出したり、警察に駆け込もうとした女や、裏切るやも知れぬ女は、総て口封じし処分した そして………遺体を埋めた場所を、どんな神経してるのか? 地図に✘打って記してあったから、今捜査中よ! 何故地図に✘してたかは、その近くで開発が持ち上がったら移動させる為だとかで、詳細を記していたわ…… それが証拠となり言い逃れ出来なくなるなんて皮肉ね でも大仏は何処まで女に指示してやらせたか? で、刑期は変わるからね 数年で出て来れる程度の刑だったら、弄ばれた子が浮かばれないわ………」 「んとにな………」 烈はまだ大仏に天罰が下ってないから、言わなかったのか………と思った まぁ司法に裁かれるって事は………途轍もない時間を要する事なのだ 「まっ、後は唐沢や警察のお仕事だから、何も出来なくて当たり前なんだよ! 取り敢えず弥勒は当分は動けねぇって事だな?」 「そうね、澄香の身体の闇はそんなに簡単には抜けそうもないし、弄られた精神の歪み治さないとだから、この地にいるしかないわね!」 「ならオレ等は帰るとするか!」 「そうね!」 「青龍、モデルルームの在った場まで戻ってくれ! 其処にお前の車停まってんだし、戻らねぇとならねぇだろ?」 簡単に言う康太に榊原は 「今 物凄く簡単に言いましたね!」とボヤいた 「だって烈が簡単に言ったから、オレも言ってみたんだよ!」 「解りました、乗せて帰りますよ! では弥勒、頑張って妻を労り治して上げて下さいね!」と言い外に出た 外に出ると榊原は青龍に姿を変え、妻と子を乗せた 見送りに来た弥勒と澄香に手を振り、人の世を目指して天高く昇り人の世に行く時空の流れに乗って飛んだ 康太は青龍の背に乗り飛び始めてから、何やら思い出した様に 「地獄で死者を見て回った時、色んなヤツ見かけたぜ!」と言った 「母しゃんの目から見てどうだった?」 隠す気もないのか?烈は母に問い掛けた 「貴也はそろそろ人の世に戻すのか?」 「身体が出来て来たでしょ? そろそろ受け入れ準備を整えて、話がついたら迎えに行くつもりよ!」 「養子に出すとか言ってたやんか? どこら辺りに出す気でいるんだ?」 「摂家 五家 近衛家に養子に出す気よ!」 「摂家 五家 近衛家か………近衛は役割あるんだぞ?貴也で大丈夫なのか?」 「気質は近衛で間違いはないのよ! 今までを見れば、監視が役目の近衛は不釣り合いかと思われるけど、彼は地獄へ落とした時に一度死んだも同然になったからね 別人になりやり直す運命が与えられた 鷹司の当主からの依頼で、獅童を通じて打診を貰ったから貴也を紹介したのよ! まぁロクデナシな時代もあったけどね 改心されたならば、と話され向こうも絆を築きその上で養子にするかは判断すると申されてるのよ だから盤上に上げてレールを敷いてやったのよ」 康太は我が子を視て………その果ての貴也を視る そして顔を緩め「だな、やはり人を視るが役目の宗右衛門ならではの配置だな!」と納得した 烈は嬉しそうに笑った 「所で烈、門倉は地獄に堕ちていたんだな……… なのに亡者側にいねぇのはなんでよ?」 「そりゃ生きたまま此処へ来たからね! だから鬼側の仕事して、じぃさんに叩き直されている最中なのよ!」 「やっぱ………あの事故はフェイクか………」 「そうよ」 「なら今後はどうするのよ?」 「戸籍を買ってボクの仕事をさせるわ! バイク便の会社立ち上げたからね、其処で働いて貰おうかと思ってるのよ!」 「なら戸籍はオレが用意してやんよ!」 「良いの?」 「蔵之介の戸籍作るの苦労したんだろ? だからお前の労に報いる為にも、協力してやんよ! 何時だって協力は惜しまねぇって、前にもそう言ったやんか!」 「ありがとう……母しゃん……」 「敦之と貴教も見違えて憑き物が落ちた様な顔してたな! 今後はどうするのよ?」 「二人共、当面は鷹司の本家の書生として、学校に通い、書生の仕事をする! そして獅童が頃合いを見て、ケンブリッジ大学へ二人共放り込むつもりなのよ 今度はスキップは許さない! じっくり勉強して学ぶ時間を送らせるのよ!」 「それは良いな!人生経験は大切な糧となるだろうさ! …………あの双子はまだまだか?」 「そうね、まだ戻せない また戻したとしても、菩提寺で住まわせて、まずは【家族】のやり直しをさせる!」 「家族か…………当たり前にいるのが親なのにな……… アイツ等から母親を奪ったのはオレだ………」 「当時はそれが最良な果てだったのよ それを無理矢理歪められた果てに来てしまった結果なのよ……… それとやはり生まれ持った気質なのね……… 同い年の子と比べたら何でも卒なく出来ちゃうから、天狗になっちゃった過程もあるからね 持て囃され有頂天になり………己も解らなくなっていた まぁ表面上、良い子の仮面着けてれば何でもかんでも、思い通りだったからね 志津子と義泰は久遠への負い目で甘やかし過ぎたのよ!」 「双子は………改心するかな?」 「それはまだ解らないわ! ボクはまだ二人の果てを詠む気はないからね 人の痛みも解らない 思い遣りもない…………そんな自己中な奴は己を知り己を見る事から始めさせないとならないのよ まだ二人はワンステップもしてないからね もう少し身体が出来上がったら考えるわ!」 「ムキムキになったら言ってたやんか……… まさかムキムキになるまで………放置するのか?」 「基準がムキムキじゃないわよ! ボクがムキムキ趣味なんて思わないでよ!」 康太は笑った 「んな事思ってねぇから安心しろ!」 「ある程度生きて逝くには体力と、揺るがない精神が必要なのよ! それには吹けば飛ぶような身体では、乗り越えられはしない! それがボクが生きて来て実感した現実なのよ 本当にボクは………もやしと一言で済ませられる程のヒョロヒョロだったから………復讐と謂うカタチでしか終わらせられなかった…… ボクがもっと強靭な身体してたら、やり返す力があったなら………そう思わずにいられないのよ だからある程度の体力と腕力は生きて逝く糧として取り入れてるのよ!」 康太は遥か昔の………聖神を思い出していた 魔界にいた頃の聖神は痩せて……もやしと表現するならば、まさにピッタシな身体をしていた 腕力もなく、剣術も優れてなく、人脈もない ないない尽くしの存在が生きて逝くのは大変な世界だった

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