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第15話 正しき道へ ❶
烈は菩提寺へ到着すると、城之内が出迎えてくれた
「バザーの話と餅つき大会の話 具体的な書類上がって来てるから目を通してくれ!」と謂う
烈は「解ったわ、先にその資料見せてくれない?」と言った
保養施設の2階に行き会議室の中へと入る
保養施設の2階の会議室は、他の者も申し入れをし貸し出書に書き込み一時間五百円の料金を支払えば借りられる事になっている
それは一階の休憩所に張り出してあるのだった
烈はテーブルの上に乗せられた資料に目を通す
気になる部分にはマーカーを引いて、後でスタッフや城之内と話をする
烈はある程度資料に目を通し、マーカーを引いた後に「貴也はどう?」と問い掛けた
城之内は「免許の紛失に伴う再発行はされた
そして住民票もこの菩提寺にして来た
彼は己から率先して仕事してくれるから、本当に助かるな!」と言った
「なら原付買い与えないとね!
竜之介にバイクチョイスしてくれる様に頼めないかしら?」
「了解した!予算とかあるのか?」
「まぁ一般の原付なら何でも良いわよ!
何か色々とカスマイズされバカ高くならなきゃ、それで良いわよ!」
「なら倅にバイクの件は頼んでおこう!
まぁ本人連れて見に行かせた方が早いだろうから、二人で見に行かせるとするさ!」
「バイクの購入の時は秘書の連絡先教えとくから、そっちに連絡入れたら購入手続きとかしてくれる様に話は通しておくわ!」
そう言い烈は名刺の裏に秘書の電話番号と名前を書いて渡した
城之内はそれを受け取り「了解した!」と答えた
「バイクが来たら、毎日鷹司の教室へ通わせてね
その前に………明日、保養施設3階に来客を招くから………誰も近づかせないでね!」
「了解した!元々 保養施設の3階は一般人は近付くのは無理だろ?」と謂う
「そうだけど、客人を迎えるから、ね!」
「ならば夏海に目を光らせて、三階へ行く通路は閉鎖する!
その閉鎖したゲートに紫雲を見張らせておけば、其れを突破するのであれば、即座に分かるだろ?」
「それもそうね!」
「誰がお見えになるんだよ?」
「元総理御一家よ!」
「そりゃ………警戒も強くなるわな!」
「お茶とか茶菓子とか要らないからね!」
「え?良いのか?」
「良いのよ!面会した後はボクと美味しいの食べに行くから構わないで良いのよ!」
「そりゃ助かる!」
城之内はそう言い……その後で顔を引き締めて
「この寺の中で………親父の気配がする………」と話した
烈はそれを聞き「やっぱりね………元住職なら入り込むのも容易だったのね………
良いわ、この寺の中にトラップ仕込むから………
貴方は貴方の道を逝くのよ!
此れから忙しくなるからね、貴方は住み込みの奴等を上手く使い、大成功させるのよ!
貴方の倅が受け継ぐ寺を………護りなさい!」と言い城之内を射抜いた
城之内は「例え親父だったとしても、この寺に何か仕出かすつもりならば、容赦はしない!
親子だけど、アイツの道と俺の道は分かれたんだからな!」と覚悟を決めて言う
烈は「どう?貴方に授けたトレーニングは上手く行ってるかしら?」と尋ねた
「あぁ、お前が授けてくれたトレーニングメニュー通りにトレーニングをやってる!」
「ならば法力は先代よりも有るのだから、使えるわね!」と言い烈は人型の紙をサコッシュから取り出した
その人型した紙の上に、烈は人差し指を犬歯で引っ掻き血を流し始めると、その人型の上に垂らした
そして城之内の手を取ると、人差し指を犬歯で引っ掻き血を流させた
そして同じ様に人型の紙の上に流し込むと、烈は呪文を唱え始めた
城之内は何が何だか理由がわからなくて………呆然となる
そして城之内の目の前で、人型した紙が立ち上がると、モクモクと白い煙を上げて化けた
まるで漫画とかアニメで出て来る様な光景を見て……言葉なんて無かった
化けた人型の紙は………尻尾が9本在る狐だった
「あら、九尾を呼ぶなんて………その力は親父より上ね!」と烈は感心した
そして烈はその九尾の狐に
「お前の主が命ずる!城之内優を守護してをして、守り通せ!
今 契約を持って成立する!」と告げた
九尾の狐は城之内を見て
「ふむ!中々の面構えであるな!
よし!主の命が尽きるまで、この儂が守ってやるとする!その代わり最低でも一週間に一度最高の油揚げと酒を寄越せ!良いな!
五枚入った安物の油揚げじゃないからな!
一枚百円以上の備えろよ!
お酒もワンカップは嫌だからな!
少し良いの備えろよ!」と言った
「五枚入った安物の油揚げと、ワンカップを備えられていたのですか?」
と、城之内は訳が解らなくて問い掛けた
「だって儂を呼び寄せた癖に五枚入った安物のお揚げと、ワンカップの酒しか宗右衛門は供えてくれなかったんだよ!」と嘆いた
烈は「良いじゃない!お揚げなんてどれも一緒よ!」とボヤいた
「違う!味もコクも使ってる油も違う!!」とボヤく
城之内は可哀想になり水萌を呼ぶ寄せ、やって来た水萌に話をした
すると水萌は「まぁお可哀想に……なれば上等とまでは行きませんが、五枚ではなく、一枚入りのお揚げをご用意致します!
そしてお酒、ワンカップではなく良いのをお供えします!
なので時々、主人や倅と晩酌なさってはどうです?」と優しく九尾の狐に問い掛けた
「よいのか?怖くはないのか?」
「我等は怖くなどありません!
烈が変わったモノを引き連れてやって来るので………慣れてしまいました!」と謂う
すると気配を消していたクーとルーとスーが姿を現して
クーが「変わったモノって……」
スーが「ひょっとして……わいの事言うてはります?」
ルーが「我等は少しだけ斑なだけで変なモノじやゃないから!」とボヤいた
水萌は三匹の猫を見て笑っていた
烈は「共に生きてね!きゅーちゃん!」と謂う
水萌は「この子はきゅーちゃんと謂うのですか?」と問い掛けた
九尾の狐は「違う!ソイツは儂の尻尾が9本あるから、きゅーちゃん呼びしてるだけじゃ!」と怒った
クーは九尾の狐に「烈のネーミングセンスは壊滅的なんだよ!」と言うと
スーが「わい等は留守にイライラしてる時に着けられた名前やから………」
ルーが「留守……ルーとスーになったんですから……まだきゅーちゃんならマシです!」と言う
九尾の狐は諦めた
「んじゃ、この菩提寺の至る所にとラップ仕込みまくる事にするわ!
だから貴方は何も気にせず、己の法力を高めて行きなさい!」
「了解した、あ、この子は隠れているべきなのか?」と問い掛けた
「それは城之内次第よ!
貴方の中で過ごすのも可能
外で自由にさせるのも可能
貴方や家族の危機に駆け付けられる様に出られれば、何をさせていても可能なのよ」
「ならば、この寺の戦力として働いて貰おうかな?」
城之内が言うと水萌も
「そうですね、良いお揚げとお酒の為に働いて貰いましょう!」と言う
自分の亭主なれば、城之内の中だけで生涯過ごさせるだけの、時間など過ごさせたくはないと水萌も想うのだった
九尾の狐は「寺の住職の護衛に狐呼ぶかよ!」とボヤいた
烈は「まさか、ボクもね、きゅーちゃんが召喚されて来るとは思わなかったのよ!
まぁボクの保存してる式神の中から、何かが来るとは想っていたけどね………
ねぇ、龍騎ちゃん、そうよね?」と謂うと紫雲が姿を現した
紫雲はマジマジと九尾の狐を見て
「だな、まさかこの気位の高い王子様が……現れるとはな………」とボヤいた
城之内は「頼むから説明してくれ!」と謂う
紫雲は「この九尾の狐は前世の宗右衛門の式神なんですよ!
宗右衛門は沢山の怪物と呼ばれし者と式神契約をし、其の内に閉じ込めた
呼べば自由に来るが、式神と謂うのは契約した時の約束を果たさねばならない
それを歴代の陰陽師が代わりに引き継ぎ守り続けた
で、今世の宗右衛門もドケチだから徳用のお揚げとワンカップの酒しかお供えしなかった
桃香が見兼ねて時々一枚売りしてるお揚げを供えていた………と謂う訳だ
宗右衛門にはまだまだ沢山の式神を存在している
竜胆が所持している式神も、元は宗右衛門のモノだ!
それが一体盗まれ………行方知れずになった
それが東矢の体内に収まっているのを知り次代の宗右衛門に据えた
因みに何故東矢の体内にいるか?分かったかと言うと、東矢を黄泉の旅路に見送った時、式神も共に黄泉の旅路へ逝くから、彼の体内から見え隠れしていて、其れを今世生まれた宗右衛門に話した訳なんだよ!
東矢は飛鳥井の轍に転生する事になっていたが、ポジションは次代の宗右衛門ではなかった
一族の中に入り康太の傍で生きるだろうが、宗右衛門のポジションに着ける存在ではなかった
が、阿吽の片割れが体内にいる事を知り、次代の宗右衛門へ据えた、と謂うのが経緯だ!」
と今まで知らなかった事を知らされ城之内は、本当に驚きの連続だった
烈は話は終わったとばかりに
「この寺の至る所にトラップを張り巡らすわ!
夜中に悲鳴が聞こえようとも、貴方達は一切気にする必要はないわ!
まだ死んだりしないから気に病む必要は一切ないわ!まぁ相手が死人ならば………余計気にしなくても大丈夫よ!
なら、きゅーちゃん後は頼むわよ!」
烈が言うと九尾の狐は「任せとけ!美味しいお揚げくれるなら頑張るさ!」と謂う
烈は「五枚入ったお揚げで大丈夫よ!」と謂う
水萌は笑って「我が家の守り神なれば、少し良いお揚げお供えします!」と謂う
「でも食べちゃうわよ!きゅーちゃん!」
「え?お供えなんですよね?」
「お饅頭でも何でも食べちゃうわよ!
晩御飯出してやれば、喜んで食べるから!
でもお供えのお揚げは別腹なのよ!」
何か…………スィーツは別腹の女子みたいに言われても…………
水萌は「解りました!ならばご飯は一緒に食べて、お供えのお揚げはします!」と謂う
九尾の狐は水萌に抱き着き
「それは嬉しい!烈はドケチだからカニパンしかくれなかった!」と謂う
紫雲は「一日1個のカニパンは烈の貴重なおやつです!それをくれた事に感謝しなさい!」と謂う
そんな貴重なカニパンとは知らず九尾の狐は
「そんな貴重なのだったのか?悪かった
でも時々、またカニパンおくれよぉ!」と謂う
クーは「水萌、揚げも値上げしてるから時々は五枚売りので良いぞ!」と謂う
スーも「そうやで、人の世は何でもかんでも値上げしてるんやで!」と言いポッケから財布を取り出し
「お小遣いは値上げせんからなぁ……」とボヤいた
ルーも「遣り繰りは確かに大変ですが、スーは無駄遣いが過ぎるんだよ!」と謂れスーは落ち込んていた
城之内は「この猫にもお小遣いやってるのか?」と問い掛けた
「そうよ!父しゃんが区別する事なく、全員に毎月お小遣いくれるのよ!
それはクー達も例外じゃなくね、くれるのよ!」と謂う
流石 榊原伊織…………
本当に懐の広い男だと想った
「でもね父しゃん、人数増えたから値下げ交渉して来てね!
危うく小遣い下がる所だったわ!」
と烈は笑って言う
水萌は「それで小遣いは守られたのか?」と尋ねた
「母しゃんがボヤいていたら、祖父母の耳にも入ってね
家族会議になったのよ、それで色々と役割分担して小遣いあげよう!って事になったのよ
父しゃんと母しゃんがボク達兄弟とちっこいのを分担
ばぁしゃんとじぃしゃんが北斗達と猫達を分担してくれる事で話は着いたのよ
にーに達も中学になったからね、一ヶ月一万円にしたのが運の尽きだったのよ!
にーにとボクで既に六万飛ぶのよ
ちっこいの3人、北斗、和希、和真、永遠、猫4匹だからね、一ヶ月17万も飛ぶからね!
家族で話し合ってそうなったのよ!
最初は猫の分は入れなくて良いわよ、と言ったんだけどね
皆が飛鳥井にいる以上は家族だから、お小遣いは渡します!と言ってくれたのよ!」
飛鳥井の家族の優しさや絆の強さを水萌は感じて感激していた
水萌は「ならばきゅーちゃんにも我がお小遣いをあげましょう!
今は火災保険とか支払わなくても大丈夫になったから、余裕がありますからね!」と謂う
九尾の狐は感激していた
烈はお茶を飲み干すとクー達に「さぁやるわよ!」と言いサコッシュから護符を取り出し渡した
そしてキラキラした石の欠片を渡す
その石は欠片だが姿を捉えられる程に磨かれ鏡の様になっていた
烈はそれを石鏡と呼んでいた
「これよりは誰の目もとどかせない闇の中へ入る事になるわ
当然 この敷地にいる者は意識を無くし眠りに入る事になるわ!
でも闇を祓えば意識は戻るから安心してね!」
と言い烈は呪文を唱え、冥府の闇で菩提寺を包む様にした
菩提寺の敷地を取り囲む様に……暗闇が包みその上に結界を張った
覗いてる目がいたとしても、この暗闇では届かない領域になる
そして菩提寺の敷地にトラップを張り巡らし、所々に式神を配置して盤石な結界を張る
悪意に満ちた者
闇に染まった者は問答無用で無間地獄へ堕ちる事になる!
キラキラした石鏡の欠片は死者を映して捉えて、無間地獄へ落とす為の道具だった
死者は姿を持たぬ存在なのだ
何処へだって自由に行ける
そんな死者を捉える石鏡は、桃源郷付近の山で採れる鉱石で作れるとお師匠達に聞き採りに行ったのだ
そして細工して飛鳥井の家の敷地付近にトラップを、張り巡らし仕掛けた
この前のホイホイはそれを使っていた
まぁ悪意に染まってなければいいだけの事
闇に染まってなければいいだけの事………だった
仕掛けが終わると、闇を祓い結界を解いた
スーは「やっと終わったわ!本当に何度やっても面倒で堪らんわ!
あの流生達が見てるアニメの様に帳ちゅーのを、下ろせれば楽やんか!」と謂う
烈は「あれはそんなに簡単な術式じゃないでしょ………」と謂う
クーは「アニメは禊ぎ祓い給え!とか下りるけど、現実はそんな楽な術なんか存在してねぇよな!」とボヤいた
「そうよ!それで暗闇来るならボクは毎回喜んて闇を降ろすわよ!
必要なくても楽しくて降ろしちゃうわよ!」とボヤいた
ルーは「あれは現実の世界だと難しいんだな………」と残念そうに呟く
クーは「それを言うならレイは目から光線が出て、触れると破壊する力欲しい言ってたやんか!
まぁそんな力は手に入らねぇのと一緒だろ?」とボヤく
猫達は頷き、一仕事を終え、休憩に入った
保養施設の2階に戻り、熱々のお茶を出して貰い煎餅を食べる
クーは「寒くなると、やっぱ玄米茶だな!」と謂う
スーも「暑い夏は麦茶美味しかったけどな……」とズズズッとお茶を啜りながら謂う
「ボクはこの後、八仙の所に逝くわ!」
クーは「あぁ一陽の事でか!」と聞く
「最初は綺麗の研究所で顔を変えようと想ったのよ!でもそれだと長期戦になるからね……
少し相談して来ようと思っているのよ!」
「だな、聞いてるだけでも痛々しい話だからな……アレを耐えられるのは頭弄られて痛覚のなかった頃の奴等だけやろ!」
「そうなのよね………八仙良い薬持ってないかしら?
翼の瞳の色変えた様に顔が変わる薬とか術とか持ってないかしら?」
「底知れねぇからな………あの仙人は………」
スーが「でも近い内に桃源郷近くに行くんやから、その時でええんやないか?」と謂う
「それもそうなのよね………ごめん、何だか気が急いでいたわ………」
ルーが「まぁ……やらねばならない事は山積してるから仕方ないよ!」と謂う
烈は「PC投げ飛ばしたのが痛かったわ………」とボヤいた
PCに総て入っていたのだ
修理には途轍もない時間が要するのだ………
父が新しいPCを買ってくれたが、スペックが段違いに違うから、思った様に占えなかった
そんな事を菩提寺の保養施設の2階で猫達と茶を啜っていると
「此処は老人の集まりかよ!」と聞き知った声が聞こえた
烈は入り口を見ると竜馬が立っていた
「りゅーま!」と呼ぶと竜馬は烈の前にPCを置いた
烈はそれを見て「え?何で?」と問い掛けた
「あのPCには壊れたら通知が入る様にアンソニーに細工して貰ったんだよ!
だから烈のPCが壊れたのは解ってるんだよ!」と答えた
竜馬の後ろには兵藤も立っていて、【R&R】のメンバーもいた
皆 会議室に入ろうとするけど、狭いから城之内が「3階に移られたらどうだ?」と謂う
烈は猫達と共に3階へと向かった
兵藤は「おい!烈!その乳牛みたいな猫はなんなんだよ?何で増えてるんだよ?」と問い掛けた
ルーとスーはメンバーや兵藤、竜馬の前に立つと
「ルーと言います!
以後お見知り置きを!」
「スーやねん!くれぐれも続けて呼ぶのはお止めるんやで!」と自己紹介した
兵藤は「ルースー?それは留守の事か?」と謂う
ルーとスーは怒りまくり
「続けて呼ぶなと謂うてるがな!
何で続けて呼ぶんや?言葉通じてるんか?」
「そうですよ!続けて呼ぶなと言いましたよね?」
と談判した
烈は「どうしたの?来るって言っていた?」と問い掛けた
竜馬は「サプライズっす!」と謂う
「サプライズ喜ぶのは、おなごだけよ!」
「え〜喜んでよ!烈!!」
「ボク今週末はいないわよ?」
「え!何でだよ?Xmasイベント遅いくらいだよ?」と謂う
「アメリカ、イギリス二元中継でプロジェクションマッピングの前で一体感出してやりたいのよ
本拠地は東京ドーム!
25日は決めてないから、何処か決めてでやる事にするわ!」
烈が言うとヘンリーは「烈ならそう言うと思って、皆で考えて来たんだよ!
その打ち合わせも有るから早めに来たんだよ!」と謂う
「でもボクは今週末は崑崙山へ逝かないと駄目なのよ!
後 兵藤きゅん来たなら紹介しなきゃいけない人もいるからね!」と謂う
烈は携帯を手にすると電話をかけ始めた
「城之内、仁と紅葉、三階まで越させてくれる?」
『なら直ぐに行かせる!』と言い電話を切った
暫くすると仁と紅葉がやって来た
烈は「座って、二人とも!」と謂う
兵藤は「あんで黒龍が人の世にいるのよ?」と問い掛けた
烈は「黒ちゃんは妻を娶ったのよ!
黒ちゃんの横にいるのは妻の紅花よ!
彼女は地獄界 龍王様が御息女 紅花様なのよ!
まぁ兵藤きゅんには地龍の話もしたかったのよ………その前に黒ちゃんの奥さんの紹介ね!」と言った
紅葉は「黒龍が妻の紅花です!人の世では紅葉とお呼び下さい!」と言った
とても美しい人だった
シャルロット王女が太陽の輝きならば、紅花は月下の下に静かに咲き誇る花のように………
紅葉は「私は人の世に来て武術を習っています!
烈が弱い者は魔界では淘汰されてしまうと申されたので、最近は太極拳で気を整え、武術を習っています!
それと同時に薙刀、合気道の稽古をつけて貰ってます!」と嬉しそうに言う
兵藤は「俺は人の世の名は兵藤貴史、魔界では朱雀を生業としている!宜しく頼む!」とご挨拶した
兵藤は「地龍?どうしたのよ?」と問い掛けた
地龍は案外早く菩提寺へ来れると思っていたが………内臓関係が壊滅的に数値が悪く、今も入院していた
食べなかった時が長すぎて、未だに普通の食事を取る事が出来なかったのだ
烈は「それは追々話すわ………それよりも美人さんでしょ?黒ちゃんの奥さん!」と言う
兵藤は「めちゃくそ美人やんか!
でも何で新婚な黒龍が魔界でなく人の世では新婚してるのよ?」と問い掛けた
「兵藤きゅん………それも含めて時間をくれるなら話すから………今は自己紹介で留めさせて!」と言った
兵藤は「了解した!」と納得した
そして新婚な黒龍を揶揄し紅花の紹介を終えると、二人は持ち場へと戻った
烈は保養施設3階の空間に結界を張るとルーとスーに「【眼】の存在を気にして!少しでも違和感感じたら、即座に中断するから!」と頼んだ
ルーは「了解しました!」と姿を消した
スーは「蹴散らしてやるわ!」と言い姿を消した
総てが整うと烈はやっと口を開き
「兵藤きゅんには不在中の経緯を総て話すわ!
地龍と銘の事………虹龍、次代の四龍、そして久遠の子供の事…………そして門倉を死にやった従兄弟の話………
倭の国に戻るならば、兵藤きゅんの耳に入れねばならない事だから………
そして明日、総理のお子 貴也の両親との顔見せにも兵藤きゅんとりゅーま同席しても良いわよ!」と前置きをした
兵藤と竜馬、そして【R&R】のメンバーは黙って話を聞いていた
烈は銘が熾烈な虐めに遭い自殺未遂を繰り返していた事を話した
そして銘を支えようと必死になっていた地龍も窶れ果て疲れ切って疲弊して、二人で黄泉の旅路へ渡る算段してる手前で手を打った事
そして地龍を菩提寺で働かそうと思っていたが!食事もロクに取らずに過ごした日々に体が限界を超えていて………未だに治療中な事
銘は自殺未遂を繰り返していたから、管理された入院施設しか油断がならなくて入院施設に入れて管理して貰ってる事
黒龍が結婚して新婚生活を魔界で始めても、世間知らずな紅花なら銘の二の舞いになる事
次代の四龍の兄弟と虹龍のネジ曲がった現実
そして久遠の子供の話
そして貴也が此れより進むべき道を話した
そして明日は養子へ逝かれる為の具体的な話で、久々に親子の対面となる事
全てを話した
兵藤は「摂家 五家………実在してるのかよ?」と呟いた
「母しゃんが何時も言ってない?
名の在る家は必ずや存在している、と!
それを言うなら鷹司は摂家 五家の名家よ!
摂家 五家の均衡を保つ為に鷹司は存在している
兵藤きゅんと竜馬は、近衛の家族との顔見せの時も、見届人として参加してね!
見届人には………正義ちゃんも入るから!」
兵藤は「了解した!」と謂う
竜馬が了解したと言おうとする前に、烈は
「りゅーま!」と名を呼んだ
「はい!」と竜馬は答えた
「貴方さ、弟が謝罪したいと申し出たら、どうする?」と問い掛けた
竜馬は一瞬顔を強張らせ
「…………それは解らない………」と答えた
烈は「兵藤きゅん軽めで!」と謂うと、兵藤は竜馬の頬をバシンっと叩いた
竜馬は驚愕の瞳を烈に向けた
「貴方の弟は今 地獄に堕ちて必死に己を見つめ直して苦悩して藻掻き苦しみ、進もうとしている
そんな弟に対して、それはあまりにもないわ!
ならば貴方に今現在の弟を見せてあげるわ!
今週末はボク 桃源郷近くに逝かないと駄目だから、その後、貴方の弟を見せてあげるわ!」
「烈が………そうしろと言うなら………」
「りゅーま、人は日々努力して先に行こうとするのよ?
でも貴方…………ちっとも進んでないわよ!
ボクがそうしろと謂うなら会う………?
巫山戯ないでよね!
貴方は弟に遅かれ早かれ会わねばならないのよ!スタートラインは同じでなくてはならない!のだからね!」
烈に言われて竜馬は下を向いた
竜馬は怖いのだ………
散々弟には馬鹿にされて来た………
兄弟の絆など………結べぬ程に……兄弟と距離を置き過ぎたのだ………
それでも敦之以外の兄弟とは、何とか本音で話せる所までは来ていたが…………
その敦之なれば………兄弟の絆を結べるのか?さえ解らぬ未知の領域だった
「竜馬!下を向くな!」
厳しい宗右衛門の声が飛ぶ
顔を上げた竜馬の目の前に烈の顔があった
テーブルの上に腰掛けて竜馬の顔を覗き込んでいたのだった
烈は竜馬の頭をポコンっと叩いた
「そうやって立ち止まっていたらライバルはどんどん先に逝っちゃうわよ!」
兵藤は「小童など足元にも及ばねぇよ!」と挑発する
悔しくて竜馬は「立ち止まったりしないっす!」と叫んだ
「なら歩き出しなさい!
貴方の両親は茨の道を歩き始めているわ!
スタートラインは同じでないと、ズレが生じたら駄目なのよ
貴方の兄弟も今一度、どうしたら良いのか?
両親と共に話し合い、同じ方向を向き始めたのよ
さぁ、此処から三木繁雄の家族の道が始まるのよ
貴方はさ、今夜は三木の家に帰りなさい!
此れは命令よ!
聞けないならは此処で道は違えねばならないわ!」
そんな覚悟の上で話されたら…………
どうなるの?【R&R】は!!!!
メンバーは竜馬に視線を向けた
烈は立ち上がるとさっさと出て行ってしまった
メンバーは呆気に取られてて、一瞬出遅れた
慌てて追ったが烈の姿はなかった
仕方なく兵藤は康太に連絡を取った
ワンコールで出た康太に「よぉ!久し振り!俺等今、菩提寺だから此れから飛鳥井の家に行きてぇんだけど大丈夫か?」と問い掛けた
『貴史、帰国してたのかよ?
飛鳥井の家は病院の裏に戻ってる!
一生か慎一に連絡すれば家に入れる!』
「………あのさ、烈会社に戻ってる?」
『烈?今日は見てねぇよ!
アイツは何処にいるかも解らねぇよ!
気配を消すのは叔父貴バリに上手いかんな!
アイツの後を追うなんて冗談じゃねぇ!
気配も覇道も総て消されたらオレでもお手上げたかんな!』
「…………お前で後を追えねぇなら俺では無理だな……」
『何があったんだよ?
烈が気配消していなくなるなんて最近はねぇ事だから………考えただけでも恐ろしいって!
どうすんだよ!
アイツはやらねぇとならねぇ事が山積してるんだよ!』
「すまねぇ………でも明日勝也と逢うとか言ってたし………大丈夫じゃねぇか?」
『…………まぁ烈の事は烈センサー着いてるヤツに聞いてくれ!』
と言い電話を切った
兵藤はそれがヒントだと想い、兵藤は慎一にレイの捕獲を頼んだ
そして一生と連絡を取り合流
一生は慎一とレイと合流した
一生はレイに「烈はどこよ?」と問い掛けた
するとレイは「あちゅきゃい、きゃえろ!」と言う
それを聞き一生と慎一は、兵藤や竜馬、【R&R】のメンバーを飛鳥井の家に連れて行った
すると…………飛鳥井の家には既に客人の声が響いていた
一生は客間を覗き込むと神野達がいた
そして阿賀屋と鷹司もいて神威と毘沙門天と共に飲んだくれていた
一生は「烈は?」と問い掛けた
阿賀屋は立ち上がると竜馬を射抜き
「何が怖いか?この年寄りに聞かせてみろ!」と言って首根っこひっ捕まえて飲みの席に座らせた
毘沙門天は「わっぱ、悩みとは何ぞや?さぁ話せ!」と謂う
神威は「おいおい、瀕死手前にしといてやれ!
トドメは刺すんじゃねぇぞ!」と謂う
鷹司が「竜馬、師に総てを話せ!」と謂う
飲んだくれなのに………その瞳は酔さえ感じられない鋭いモノだった
竜馬は想っている胸の内を話し始めた
酔っ払いは青臭い悩みを真剣に聞き
阿賀屋は「俺は生まれた時から御館様だったからな、母さえ傅いて………親ではなかったな………」と謂う
鷹司も「儂は生まれた瞬間から獅童を継ぐ者として扱われ叩き込まれて来たから、両親や兄は家族と言うより【師】だったな………」と謂う
神威は「儂は普通の家に生まれて子沢山の長男だったが、姉が存在感ありまくりだったから、母も父も儂らも兄弟も安穏と生かして貰った
まぁ家族として生活するのは普通の家族だったし、暖か味もあったし愛も貰った!
神の儂は………倅を手放して四半世紀………悔いて悔いて、顔見た時半殺しにする程に倅を愛している!」と話す
阿賀屋は「歪んでますがな………その愛………」とボヤいた
毘沙門天は「大歳神は遥か昔からそんなもんだったわ!妻を黄泉の旅路に送り出してからは倅命だったからな!
その倅が………四半世紀音信不通だったからな
飲んだくれては泣いておったわ!」と謂う
竜馬は何だか自分の悩みが……そんなに深刻じゃない風に感じた………
鷹司は「お前の父は不器用な奴だからな!
たが不器用なりにお前の父親は我が子を愛していた、違うか?
お前が見なかっただけで愛はちゃんとあったんだよ!目に出来るモノが総てじゃない
解るな?竜馬?」と不器用な師匠が説く
竜馬は「はい!」と答えた
阿賀屋は「なら親に目を向けろや!
そしたら同じスタートラインに立てるんだ!
そしたら【家族】を知る様に目を向けろ!
それだけだろ?何が怖いのよ?」と簡単に言う
一生は烈を探した
烈センサーを働かせたレイが「あちゅきゃい、きゃえろ!」と言ったのに???
一生は「レイ、烈は?」と問い掛けた
レイはルーとスーに撫で撫でして貰い嬉しそうに笑っていた
ルーとスーがいる、でもクーがいない?
レイは「れちゅ………めくらまち……きゃけやぎゃった!」と怒っていた
其処へ康太と榊原が買い物をして帰宅した
榊原は「今夜は鍋です!」と言い着替えをしに部屋に行ってしまった
慎一も手伝い鍋の準備をする
先日 うっかり手を滑らせて大土鍋を割ってしまった
すると烈が何処からか大きな土鍋を3個持って帰って来た
一つの土鍋が10人分は余裕で作れる土鍋だった
それを3個 30人分でも大丈夫だぜ!と謂う事なのだろう
土鍋の蓋には桜のマークが入っていた
康太はその土鍋を見て嬉しそうに笑っていた
榊原はその土鍋を2つ使って鍋の準備をしていた
一生は康太の耳元で「烈は何処よ?」と問い掛けた
「あ~それな、オレでも解らねぇよ!
烈センサー効かなったのかよ?」
「そのセンサーが、めくらまち きゃけやがっちゃ!と怒ってたぜ!」
ルーが「さぁ準備するんですよ!」と謂う
スーが「さっさと動くんやで!カズ!!」と発破を掛ける
一生は「あんで俺をご指名するんだよ!」とボヤいた
力哉は笑ってそれを見ていた
その夜 烈は姿を現す事はなかった
そして鍋を食べ終わる頃、三木繁雄が妻の智美と共に、竜馬を迎えに来た
応接間に通された三木夫妻は真贋に深々と頭を下げ
「我が子を連れ帰りとう御座います!」と謂う
康太は「その連絡は烈が?」と問い掛けた
三木は「はい!烈からラインを貰いました!
貴方の倅を連れ帰り話をなさい!と。」と説明した
康太は「敦之はやっとスタートラインに立ったそうだ!」と話す
三木は安堵した顔で「そうですか………」と呟いた
其処へ竜馬が呼ばれてやって来た
竜馬は両親がいるのに驚き「どうしているのさ!」と言った程だった
三木は「さぁ帰るよ!竜馬!話し合いをしないと駄目だからね!」と謂う
その瞳は絶対に来なければ許さない!と謂う覚悟が秘められていた
竜馬は「はい!俺も………その時だと想っていた
でないと烈は逢ってくれないからね!」と謂う
竜馬は三木夫妻と共に帰って行った
客間に戻ると烈がいた
「気配消していやがったのかよ!」とボヤいた
レイはニコニコと毘沙門天の膝の上にいた
烈は「違うわよ、本当に少し留守にしていたのよ!」と謂う
「何処に行っていたのよ?」
「崑崙山、八仙の所よ!」
「何をしに?」
「それはまぁ、此処で謂う事じゃないからね………」
「どの道、今週末は逝くかんな!」
「そうなのよ、本当に面倒よね………」
「所でまだアイツは退院出来そうもねぇのかよ?」
と話を逸らしてやった
「飲まず食わずの上に眠らずにいれば、元気が取り柄のヤツだって病人になるわよ!」
その言葉が地龍の置かれた悲惨さを物語っていた
一生がせっせと世話を焼いていて、今は元気な頃の体型になりつつ在った
烈は話を終えると鷹司と話をしていた
大怨霊を無間地獄へ落とす日程がやっと立ったのだった!
烈が崑崙山から戻った週明け、早朝にそれは敢行される事となった
大きさが凄すぎて、削っていたが、中々削られてくれないから………
その大きさに対応する魔法陣を人の世では出せないのが現状だった
それをお師匠達が手伝ってくれ落とす目処がやっと立ったのだった
康太は「日程がやっと立ったのかよ?」と問い掛けた
鷹司は「あぁ、ずっと大きくなり過ぎたから魔法陣の上に乗せても堕ちなかったんだよ
何度やっても失敗で、せっせと削っていたが、小さくなりやがらねぇのな………
もぉ我等は日々疲弊して窶れちまったんだよ!」とボヤいた
康太は「烈の出す魔法陣に乗らなかったのか?」と唖然となり問い掛けた
烈は「そうよ、だからえんちゃんに頼み、無間地獄の方から穴を開けて貰ったのよ
それでも堕ちないのよ………
根っこ張りすぎかと想い大歳神に根っこを引っ剥がして貰ったけど意味なくて、疲弊しただけだっまのよ!
で、今回 お師匠達に相談したら魔法陣を引き伸ばしてやると言ってくれたのよ
それは流石と自分でやるには力不足だから、お願いしたのよ!」と経緯を話す
そして「アイツは多分 母しゃんの昇華の焔でも大き過ぎて、火力が満面に行かなくて持て余すのよ!
すると発狂した母しゃんが燃やしまくると被害が拡大するから………話せなかったのよ!」と謂う
それを聞いている兵藤は大爆笑だった
毘沙門天も神威も大爆笑で、榊原は妻をドウドウと慰めた
「オレの焔で燃えねぇ奴はねぇんだよ!」
と康太は叫んだ
烈は母の額に自分の額を合わせて、う〜ん う〜んと思念を送った
すると思念を受け取った康太は
「あんだよ!此れは!!この前見たのよりデカくなってねぇか!!!」と叫んだ
鷹司が「規制線張ったけど近隣の奴等は通っていたからな、そんな奴等の心を食らって更にデカくなってるんだよ!」と説明した
兵藤は「そんなに大きいのか?」と聞く
レイは携帯を額に着けて「う〰️ん う〰️ん う〰️ん!」と念写を始めた
兵藤は「何時も想うが……便秘みてぇだな!」と笑う
榊原は「あ、やっぱり君も想いますか?」と笑う
念写を終えたレイが携帯を兵藤に見せた
それを見た兵藤が「あんだよ!これは!!!」と叫んだ
毘沙門天が覗き「霞ヶ浦の大怨霊か………育ったよな?何を食えば此処まで育つのよ!
人の感情や想いだけで育つとも思わぬのだがな!」とボヤく
謂れみれば…………そうなんだけど………
烈は「毘沙、此れに悪意の要素あると?」と問い掛けた
毘沙門天は笑い飛ばして「悪意しかねぇわ!」と吐き捨てた
烈はニコッと笑うと「ならその悪意、どんな働きしてるか?十二天が調べてよ!」とサラッと謂う
毘沙門天は「あ!お前!!今サラッと簡単に言いやがったな!」と叫んだ
「十二天に命ずる!聖神の名に置いて真相の解明を直ちにされよ!」
「ああ!!強制命令発動しやがったな!」
「期限は来週の始め!無間地獄に落とすまでにお願いね!」
「あんな………ドロドロの………スライムおっぴろげた様な化け物に近寄りたくねぇよぉ〜!
六本木ヒルズバリの大きさのスライムに近寄りたくねぇよぉ〜!」
毘沙門天はボヤく
康太は「何か、臭そうだもんな!オレも近寄りたくねぇかんな!」と謂う
榊原も「僕は消毒液吹き掛けても汚そうなモノは触れたくもありません!
スライムならば、凍らせて叩き割るのも不可能そうなので、僕の方を見るのは許しませんよ!」と一蹴!
神威は酒瓶抱えて狸寝入りしていた
毘沙門天は「なぁ、烈、一柱の命令違反も許さねぇのか?」と問い掛けた
「そうね、命令違反は髪の毛なくなる呪詛でも吹き掛けておこうかしら?」
「それは良い!その呪詛ごと強制命令発動しやがれ!」
「それは良いわね!
なら念には念を押して、正式に呪詛として書に認めるわ!」
毘沙門天は「お!それは良い!ツルピカになるのか嫌なら働きやがれ!と知ら示めとく!」
と、ご機嫌に酒を飲んていた
烈は「明日は総理御一家とのご挨拶あるから、それまでに帰るわ!」と言い客間を後にした
康太はそれを見送り「忙しいヤツだな!」と呑気に言う
一生は「お前が無茶振りするからやろ!」とボヤく
「今は飲む!んで騒ぎまくる!」と謂うと後はもぉ楽しげな声が響き、夜明けになるまで、その声は響いていた
烈は客間を後にすると、自分の部屋に戻り神の道を開いた
一人で行こうとすると「俺も連れて逝け!」と謂う声が聞こえ振り返ると兵藤がいた
烈は「兵藤きゅん………」と名を呼んだ
「俺も今後は倭の国へ帰るんだし、次のステップに進むまではお前の元で動く事になるんだし、手助け出来る事なればしてやるさ!」
と言ってくれる
烈は何も言わずに神の道へと歩を進めた
兵藤もその中へ入ると、即座に神の道は閉ざされた
兵藤は「俺がイギリスへ行ってる間に………色々とあったんだな………」と話した
「そうね、たかが一年だけどね………五、六年は過ぎてる感じなのよね………」
それ程に問題が山積して疲弊していたのだろう………
「貴之の世紀の挙式、YouTubeで見たぜ!
物凄い盛大に行われたんだな!」
「まぁあの挙式の殆どが放映権と祝儀で何とかだったからね!
それ程に安曇の家の資産は総て食い尽くされて、放っておけば魂まで盗られかねなかったから、着の身着のまま避難させたのよ!
判断を誤れば、廃人になるしかなかった
ギリギリで手が打てたのよ!」
「家が人を食っていたんだろ?」
「まぁ家と謂うのは匣みたいなモノだからね
蠱毒を作っているみたいなモノだったのよ」
「家の中で………蠱毒は出来ねぇだろ?」
「出来るわよ!四方四隅さえあり、閉じられれば、匣に成り得るわ、其処へ呪詛を吹き込み贄を供え殺し合い削り合い最後に一人残れば、匣の一丁出来上がりよ!」
「何か…………怖いな………」
「そうね、一番怖いのは人の感情よ
人は知らす知らすに呪詛を吐くからね!」
そんな話をしていると崑崙山へと出た
烈は八仙の屋敷の中へ入ると弥勒と澄香も其処にいた
兵藤は「どうして弥勒夫妻が此処にいるのよ?」と問い掛けた
烈はまた説明するのが面倒臭くなってスルーして
「八仙、お願いしてるの在ったかしら?」と話し始めた
弥勒は仕方なく兵藤に、父親の事から話した
そして澄香が闇に染まっていたから、闇を抜く為に四龍の兄弟の家に住んでる事を話した
兵藤は「それも並行してやったのかよ?」と唖然となった
烈は「弥勒達と別れて人の世に還ったらモデルルームが燃やされていて、今 モデルルーム作るのに一苦労よ!」とボヤいた
そしてその煙に追跡の何かを混ぜていたから、家を危うく特定されそうになった
とトドメを刺されれば、言葉なんてなかった
八仙は「神髄師に話を持ち掛けたら、流石道教の国じゃな、在ると言うではないか!
今週末話をして、施術して下さる日程を決めるそうじゃよ!」と伝えた
烈は「ならば総ては………今週末ね!」と謂う
「そうじゃな、今週末には総てが整う!」
「悪かったわね八仙!」
「構わぬ!主が地獄界から貴重なサンシュユ、モクレン、ゲンノショウコをもらい受け、この地にも植えて育ててくれてるからな、貴重な漢方の材料になっておるからな!
それを使い更なる調合を楽しめる様になったし、神髄師が高く買い取って逝くからな、儂らは桃源郷近くに家を建てたわい!」
と言い、ほほほほほほ!と笑った
烈は「なら今は通いで来てるの?」と問い掛けた
「そうじゃな、儂らは通勤とか謂うのをしておるのじゃよ!
まぁそうでなくば、弥勒が夜ハッスルするからのぉ〜、聴いてる方は溜まったモノでないからのぉ〜!」と笑い飛ばした
弥勒は「俺等がどうのと謂う前にお前等は桃源郷に住んでるじゃねぇかよ!」とボヤいた
烈は澄香を見て「後少し此処にいたら魂にへバリ着いた闇も抜けるわね!」と謂う
弥勒は「ありがとう烈!」と礼を言った
「礼は………要らないわ!
貴方の倅、菩提寺の皆が手を焼くから、貴也がいた重労働の場に送り込んじゃったからね!」
「え?…………本当に?」
「貴方は王子様を育てていたの?
母しゃんなんか今直ぐ黄泉の旅路を渡らせて生まれ変わらせた方が世の為だ!と暴れて………
父しゃんは止めるのが大変だったのよ
器にそぐわぬ武尊さ、無謀さ、理不尽さ、中身スカスカで何言ってるの?コイツ!!
と謂うのが、にーに達の感想よ!
流にーが封印解いてトドメを刺そうとするから、ボクらも大変だったのよ!
それ程に腐ってて、その腐ったのを余計に付け上がらせたのは貴方達よ!
弥勒は倅の表面しか見てないのよね
何処が【よゐこ】よ!クズよ!貴方の倅は!!
だから能力封印してやったのよ!
あの強靭な能力はボクでは完全な封印は難しかったから、お師匠にも協力して貰い封印してやったのよ!
封印の解除は………貴方でも出来はしない!
ボクだけじゃなく、あの子………母しゃんも馬鹿にしたからね!
父しゃんは即座に殺処分で構わぬ!と怒っていたわ!まぁボクもね、即座に息の根止めても構わなかったけど、貴方達が何の努力もしてないから、止めたのよ!
今後は家族ている為の努力をなさい!
平穏に生きている日々が当たり前だと思わないのよ!
何処に闇が潜んでいるか?解らない
人の心は弱いからね、澄香みたいに心が弱ったら血溜まりの花を咲かせてしまうわ!
そしたら待ってましたとばかりに闇に染まるのよ
そして末路は…………抱え過ぎた荷物に押し潰され、夫に内緒で………倅を道連れに、その命を散らすしかない結末しか無かったのよ
貴方は気付いたら妻も倅も失っていた
そんな未来があった事を、忘れないで!」
弥勒は烈の言葉を黙って聞いていた
澄香はもう下を向く事なく、前を見つめ、烈を見ていた
澄香は「誠………康太のお子であられるのですね!
我が夫は康太の言葉しか耳に入らなかった
康太しか見て来なかった………
まぁそれは我等三姉妹も同じ事………
康太に救われ今がある
だから康太が総てであった
が、今は違う
私は家族を愛している
だから必死になった
家族で仲良くご飯を食べる
そんな平凡な日常に憧れ………そんな日々に焦れていた……
今後は己を変えたいと想う………」と素直に口にした
烈は「貴方は少し菩提寺に通いなさい!
自転車でも菩提寺ならば通える距離だから、貴方は己を鍛え上げる為に菩提寺へ通い、保養施設の手伝いをして道場の月謝位稼いて武術を身に着けなさい!
強い精神には強い心が宿るのよ!
ポッキリ折れない心を作り上げる為に、働いて学びなさい!
そして夕方は通り道の市場で夕飯の食材を買って還れば良いのよ!
当分は貴方の子供は帰らないからさ、貴方は倅が還っても大丈夫な程に鍛え上げなさい!
貴方の妹の桃香も日々働いて、武術を習っているわ!
飛鳥井康太が配置した貴方が弱ままじゃ、飛鳥井家真贋の名折れ!
軌道修正は飛鳥井宗右衛門が請け負う事となる!」と告げた
澄香は「はい!宜しくお願い致します!」と謂う
「それと弥勒、貴方さ今弟子も取ってないし、道場は宝の持ち腐れでしょ?
ならば……海坊主のいた地を離れ、菩提寺近くのマンションへ移られる事を提案するわ!」
弥勒は考え込み
「それは俺も考えていた
だが………あの地を離れる踏ん切りが付かなかった でも澄香を勝手にされ………決心は着いた」と答えた
「菩提寺の道場の横に一般向けマンションと病院関係者のマンション建てたのよ!
それが一年の時を経て完成したのよ!
結構広い敷地だったから、飛鳥井記念病院の職員を優先に住まわせているのよ!
その横の棟には一般の家族向けマンションを貸しているのよ
弥勒が住んでた土地をくれるならば、4LDKのマンションの部屋あげるわ!
さらにサービスとして、そこから歩いて直ぐの資材置き場の隅に呪術部屋作ってあげるから、呪術は其処でやれば、家に穢れは掛からないし、生活と仕事部屋は切り離して生活出来るわよ!」
「それ良いな!でも呪術部屋はかなり広さを要するぜ!あの道場は弟子の稽古の為でもあるが、呪術部屋としても使っていた
だからあれ位の広さは要する!」
「あれ以上の広さ用意してあげるわよ!
資材置き場とは入り口は別にして、境界張ってあげるから、資材取りに来たヤツには視えない様にしてあげるわ!」
「大盤振る舞いだな?良いのか?」
「ハッキリ言って良くないわよ!
貴方の家………敷地面積はあるけど僻地だし周りは家しかないから、ビル建てられないし………
まだ霞ヶ浦の土地の方が価値としたらあるけどね
其処はまぁ母しゃんの顔を立てて、生活のサポートまでしてあげるわよ!
そして………此処からが本題!
海坊主の仏壇は………新居に置いちゃ駄目よ!
菩提寺も引き取れないから………
一度仏壇解体して、燃やさないと………なのよ
そして写真や遺骨は今預かって貰ってる寺に任せて置くしかない!
多分墓の中の骨、ないだろうけど………
海坊主を………駒の轍から切るまでは仕方ないわ!
納得して貰えないかしら?」
弥勒は「納得も理解している!またそうすべきだと想う!生きている澄香と倅の方が大事だからな……」と言葉にした
澄香も「此処から人の世に還ったならば、私も闘える力を身に着け……夫と協力して倅を正しい道へ導いて行きたいです!」と言葉にした
烈は立ち上がると「ボクは今日は八仙に頼んでおいた事の確認に来ただけだから還るわね!」と告げた
弥勒は「世話になったな、建御雷神や素戔鳴が来てくれて、何かと世話を焼いてくれている!
それで何とか此処でやって来れた!」と礼を告げた
烈は何も言わず歩き出し後ろ手で手を振ると八仙の屋敷を出て行ってしまった
弥勒はそれを見送り「本当にアイツに似てる………
嫌になる程に………な!」と謂う
兵藤は笑って烈の後を追った
烈は神の道を開き人の世へ戻った
時間は既に午前三時になっていた
そんなに崑崙山に行ってなかったのに……
烈は「兵藤きゅん寝ないと朝になっちゃうわよ!」と謂うと、部屋に行きパジャマに着替えた
兵藤は源右衛門の部屋に行き、荷物から着替えを取り出すと風呂へ入りに行った
そして風呂から出るとベッドで眠りに落ちた
朝起きると、兵藤のベッドの横にはレイが寝ていた
何時潜り込んだのか?
兵藤は危うくレイを踏み潰しそうになって慌てた
「うわっ!レイ、踏んでねぇか?大丈夫か?」と兵藤が心配して問い掛ける
「たかち……ちゃむい……」
兵藤は脱ぎかけの布団を着て、レイを抱き締めたい
が、其処へ流生がやって来て
「レイ、着替えたらお部屋の掃除と洗濯だよ!」と謂う
レイは「にーに!」と喜んだ
流生はレイの靴下を持って来ると、履かせて上着を着せた
そして手を繋いで出て行った
飛鳥井の子達は今も変わらず働き者なのだ
烈は掃除と洗濯を済ませ、食事を終えると、宗右衛門の着物に着替え始めた
其処へ榊原がやって来て着付けを手伝って行く
「崑崙山へは何の話に行ったのですか?」と問い掛けた
「顔の骨を削ると顔は変わるけど激痛が半端ないから、翼の瞳を変えた様に、姿が変わる薬がないか?聞きに行ったのよ!」
「戻されるのですか?」
「そうね、ボクか作ったバイク便の会社の取締役になる為にまずは実績と経験を積ませようと思っているのよ!」
「康太が戸籍の方は中国のバイヤーから何とかなりそうだとの所まで来ています
聞いたのですか?」
「聞いてないわよ!
ある程度の矯正が出来たから、菩提寺で準備が整うまで住まわせて働かせるつもりなのよ
その前に人の世に戻すならば、その姿形は……
付け狙われたりしたら振り出しに戻っちゃうから、準備は万全に、と考えているのよ!」
「そうですか!
今日は前総理に会わせるのですか?」
「そうよ、養子に出す準備段階に入ったからね!
近衛の家にはもう既にボクの口からも話は通した
もう違える事の許されない果てへと来てしまったのよ!だから順序立てて確実に逝かないとならないのよ!」
「そうですか!
ならば安曇の御家族と逢われた後はどうなさるのですか?」
「ホテルでお茶をして解散するわ
飛鳥井の家に連れて来て良いなら連れて来るわよ」
「構いません!ならば腕によりをかけますので、連れて来なさい!」
「ありがとう父しゃん!
でも本当ならモデルルーム、今週中までに……完璧にして再開したかったんだけどね……」
「まぁ慌ててもロクな事にはなりません
なのでじっくり腰を据えて掛かりましょう!
ラッキーな事に、観葉植物は保険が掛けてあって助かりました!
家具も保険申請が通って何とか損出は最小限で賄えそうですからね!」
「本当にね、でもあのモデルルームの中には………前世からずっとモデルルームに飾って来た絵画とかあったのに………燃えちゃったのよね………」
「それ、何処かで呟きました?」
「グループラインで呟いたわ
燃えちゃったニュース見てグループラインで心配してくれたからね!
ボク達は大丈夫だと伝えたわ!
でもその時、前世から飾ってある絵画が燃えちゃったから、その事の方がショック……だったとは呟いたかしら?」
「だから戸浪と蔵持から『烈の為に絵画探したよ!』とか、『家の中をひっくり返して探してみたよ!』とか連絡が入りまくりなのですね!
安曇からは烈には世話になったから、選挙事務所に在る絵画外して持って行こうか?
とか、堂嶋からは我が家の絵画を持って行く!とか、康太のラインが止まらないんですね!」
「絵はボク沢山所有してるから良いんだけどね
あの絵はね、前世の友人が描いてくれたボクの好きな木蓮の花の絵だったのよ
モデルルームには友人からの絵を必ず飾っていたのよ…………」と少しだけ寂しそうに謂う
前世ならば、その友人は鬼籍の人なのだ
「何故、その様な大切な絵を?」
「験担ぎなのよ、あの絵を飾ると客足は伸びるのよ!マンションを建てればモデルルームに来た客の殆どの購入していく!
本当に験の良い絵だったのよ
でもまぁカタチあるモノは必ずや壊れる運命なのよ!
あの絵は本当に頑張ってくれた!
だから燃えカスになったモデルルームから、絵の残骸を回収して灰にして菩提寺の桜の樹の下に埋めたわ!」
「絵、皆の気持ちを受け取り貰わないのですか?」
「…………とうしようかしら?」
「貰っておきなさい!」
「なら後でラインして貰うわ!」
「はい!出来上がりました!
気を付けて行くのですよ!」
「はい!では行ってきます!」
烈はそう言い、飛鳥井の家を出て行った
榊原はそれを見送り、何事もありませんように!と祈った
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