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第18話 歩き出す一歩 

烈は12月に入ると直ぐに、突然副社長室を尋ねた 突然 烈がわざわざ副社長室を尋ねて来るから志津子は驚いていた 「開発地区のビルの件で御座いますか?」 と訝しんで問い掛ける そんな志津子に烈は 「今日、午後6時に志津ちゃんち尋ねるから、家族を応接間に揃えていてね! 神威や有栖と栗栖も揃えておいてね!」と謂う 「義泰や譲も………で御座いますか?」 「そうよ、頼めるかしら?」 「了解しました!」 烈は志津子を視るとニャッと嗤った その笑みは………背筋に冷たいモノが流れていく思いだった 「飛鳥井宗右衛門として、尋ねるからね!」 志津子は深々と頭を下げ「承知致しました!」と答えた 烈は「そう言う事だから!」と言い副社長室を出て行った 副社長室を出た烈は、楽しくてついつい心躍ってスキップしつつエレベーターに向かった 康太と榊原は今日は定時で帰ろうか!と共に社長室のドアから出てその光景を目にした 烈はエレベーターの前に行くまでスキップして、楽しげにIDを翳しエレベーターを呼んだ そしてやって来たエレベーターに、やはりスキップして乗り込み姿を消した 榊原は「スキップしてましたよね?」と想わず問い掛けた 康太は「あぁ………スキップしてたな!」と答えた 「どの部屋にいたんですかね?」 康太は首を傾げ「………アイツは残像さえ消すからな………詠むのは不可能だな!」と答えた 榊原は「僕達の前を横切らなかったと謂うのは副社長ですかね?」と予想を立てて謂う 康太も「だな、しかもアイツ……オレとお前がいるのを知ってて………スキップして振り返りもせずに帰りやがった!」とボヤいた 「え?還ったのですか?」 「だろ?エレベーターが地下指してるからな!」 「…………忙しい御方だ………」 「まぁ予想は着くな、志津子に逢ってたとしたら?そりゃ孫の件だろ?」 「あぁ……あのお馬鹿な子達の件ですか……」 「だろ?配置はする気なんだよ! そして配置して何年もの年月掛けて熟成させる! それが宗右衛門だかんな!」 「本当に気の遠くなる様な事してますよね?彼は………」 「魔界も気の遠くなる程の配置を続け、更に精度を上げて配置をしてやがる気だろ? 配置して熟成させ馴染ませる 何年も何年も掛けて、より深みの出る存在にする それが宗右衛門の務めだかんな!」 「でも康太、滅多とスキップしませんよね?彼は?」 其処へピロンと一生からラインが入った 『康太、伊織に横浜橋通商店街へ行ってくれる様に頼む!今夜は烈が【おでんが食べたいわ!】と言い出し、人を集め会費集めたから久々の宴会なんだよ! 会費は既に慎一の手に渡っちまってる! 久々の宴会だから慎一は、俄然張り切って買い出しに出ちまったんだよ!』と謂う 康太はラインの画面を榊原に見せた 榊原は「ならあのスキップは………おでん♪おでん♬だったのですか?」と笑みを溢して呟いた 「だろうな………しみしみ大根の為ならスキップも出ちまうんだろうよ!」とボヤく そして「オレは瑛兄と共に還るから、お前は横浜橋通商店街へGOすると良い!」と言い会長室へ向かう 榊原はIDを翳しエレベーターを呼ぶと、やって来たエレベーターに乗り込み、地下に着くまでに慎一に連絡を取り、合流する事を告げ、地下駐車場へ急いだ そして地下駐車場に着くと車に乗り込み車を走らせた 康太は兄の部屋を訪ね 「瑛兄乗せてってくれよ!」と謂う 瑛太は「喧嘩でもしたのかい?早く仲直りするんだよ!」と弟を出迎えた 康太は烈がスキップしてたのを目撃して、その後一生からラインが入った事を伝えた 瑛太も「烈のスキップ見たかっです!」と笑って言う 瑛太は父と母と幼稚園のビルにいる京香にラインを一斉送信した 「今夜は烈が希望してるおでんだそうです! 烈はスキップしてたそうです!」と送った 玲香からは『今宵はおでんじゃと!烈、スキップする程に楽しんでおったのじゃな! 我もそのスキップ見たかったぞ!」と返って来た 京香からも「烈のスキップ!!それは見たかった!おでんならば卵茹でねばならぬな! なら、我は早々に帰り支度して参る!」と返って来た 清隆は瑛太の会長室のドアをノックして 「瑛太、私も烈のスキップ見たかったよ!」と入って来た そして皆で飛鳥井の家に帰る事にした 飛鳥井の玄関のドアを開けるとレイが飛び込んで来た 「じぃしゃん!ばぁしゃん!えーたん!こーたん!おれんよ!」 瑛太はレイを抱き上げた 凛と椋も出て来て「「たまぎょ むちむち ちた!」」とお手伝いしたと訴えた 玲香は凛、清隆は椋を抱き上げて「偉かったですね!」と褒めて頭を撫でた そして床に下ろすと、ちっこいのは直ぐ様お手伝いをしに走った 自分達の部屋に行き着替えをして客間へと向かう 客間には神野達が来ていた 神野は康太を見付けると「よぉ康太!久しぶりだな!」と声を掛けた 飛鳥井は少しの間、宴会は行われてはいなかった モデルルームが燃やされ忙しかったりしたから、宴会どころの騒ぎじゃなかったからだ 康太は座布団の上に座ると「あれ?神威は?」と問い掛けた 神野は「あぁ、烈が連れて来るって言ってたぜ! それよりも聞いてくれよ!康太!!」とボヤきながら言う かなり落ち込んだ姿に康太は 「どうしたのよ?」と問い掛けた 小鳥遊が「ボイトレやっても上達しないから落ち込んでるんですよ、彼は?」 「ボイトレ?何故にボイトレ?芸能事務所の社長なのにボイトレ必要なのかよ?」と問い掛けた 須賀が嗄れた声で「烈の歌にコーラス入れるんですよ!」と謂う 柘植が「なので我等は今ボイトレ受けてます!」と告げた 神野は「コーラス入れられねぇならステージに立てねぇやんか!」と泣く 竜馬は「最悪口パクでも構いませんって!」と謂うと、神野は更に泣いた 兵藤が「お前、それは失礼な事言ってるって解ってる?」と怒る ヘンリーは「アキマシャ、大丈夫、思いが籠もってれば温かい歌になれるってば!」と励ます 【R&R】のメンバーは優しく神野の背を撫でた 康太は「烈、歌うんだな?」と問い掛けた 竜馬は「ソロで誰も介入させないのは………始めてっすからね………メンバーもコーラス頑張ろう!って言ってるっす!」と告げた 兵藤は「今回のコンセプトは【貴方に贈る】だからな、想い入れあるんだろうよ!」と話す すると其処へ宗右衛門の着物を着た烈がやって来た 「母しゃん、少し出掛けて来るわね!」と謂う 康太は「ケント着くのかよ?」と問い掛けた すると一生が「俺が着いて行くから大丈夫だ!」と謂う 烈は「それでは行ってきます!」と告げ廊下に出た 「今夜はおでん♪おでん♪おでん♪」とスキップしていた 大空が「烈、気を付けて行くのよ!」と見送る 「にーに!おでん♪!」 にーにがおでんじゃないけど……… 大空は「頑張ってね!」と送り出してやる 一生は「車で行くのか?」と問い掛けた 「おでん♪おでん♪」と歩いて行くから後を追う 一生は「何処へ逝くんだ?」と尋ねた 「せんせーんち!」 「あぁ、なら歩いて行った方が近いな!」 「カズ、東京ドームのコンサート、関係者席用意するからね、皆で見に来てよ!」と謂う 「当たり前やんか!チケット買ってでも見に行くさ!」 烈は一生を見上げて嬉しそうに笑った 久遠の家は新しい家からそんなに遠くはない だから少し歩けば到着する 今はスッカリ静かになった住宅街だった 今は【久遠】と表札の入った家の前に立つと、烈はチャイムを鳴らした 『どなたですか?』と志津子の声がインターフォンから響く 烈は宗右衛門の声で「飛鳥井宗右衛門が参った!」と付けた すると直ぐ様玄関が開いて、志津子が飛び出して来た 志津子は「お待ちしておりました!」と出迎え家へと招き入れた そして応接間に通されると、烈はソファーに適当に座った 肘置きに肘を付き、唇の端を吊り上げて嗤う姿は…………飛鳥井康太だった 烈は「悪いわね、皆を応接間に集めさせて!」と言った 志津子は「構いません!御要件は何でしょうか?」と問い掛けた 「来る12月24日、東京ドームで【R&R】のイベントがあるのよ! そのイベントに関係者席に御招待するわ! まぁ久遠はボクの主治医としてステージの裾で控えていて欲しいのよ!」 義泰は「我等を御招待して下さるのか?」と問い掛けた 「そうよ、まぁタダでは御招待しないけどね……… タダより怖いのはないって謂うじゃない! まぁボクはケチだから出演者はノーギャラ交渉するけどね!」と烈は嗤っていた その本意は………解らなかった……… だが烈が何の意味もなく宗右衛門として尋ねて来ない事は誰よりも知っていた 志津子は「解りました!12月24日は義泰も譲も休みを取らせます! 無論、私も栗栖も有栖も神威も休ませます!」と約束した 宗右衛門は「分岐点に来ているのじゃよ! それをしかと頭に入れて来られよ! この配置は明日の飛鳥井の一族の礎となり、違える事が許されぬ未来へ繋がる! その為の布石じゃ! 儂はその為に苦労する………じゃから主達も………より一層の苦労を期待する!」と告げた 義泰は「老い先短いこの身、覚悟なんて等に出来ておるわ!」と謂う 「あ、義泰、主は死しても楽になどさせぬよ! 死した後も儂の為に働きやがれ!」 と言いガハハハハハハッと笑い飛ばした 義泰は「全く……貴方には敵わぬわ!死しても扱き使いやがると仰られるんですから!」とボヤいた 宗右衛門は義泰の瞳を射抜き 「主の願いを一つだけ聞いてやる! 死した後、主は誰と共にいたい? 添い遂げられなかったおなごか? それとも志津子か? 主が儂の我儘を聞いてくれるならば、儂は主の願いを一つだけ聞いてやろう! まぁ儂は惚れたおなごを一途に想い過ごした漢故……選ぶと謂う事は許したくはないが、聞いてやろう!」 と意地悪い顔をして義泰に問う 少し前に義泰は烈に同じ質問されていた 義泰は考える事なくは本心を伝えたていた それをもう一度志津子の前で聞かせると謂うのだ 本当に意地悪い御人だ! 義泰はそう想い、ヤケクソで笑い飛ばし 「儂はずっと志津子の掌の上で転がされておっただけじゃ! 今は本心から志津子と共に過ごせて良かったと思う………じゃから儂の我儘を聞くならば志津子と共にいさせてくれ!」 と答えた やはり義泰はそう答えるのだと烈は義泰の本心を受け取った 志津子はまさか………そんな風に言ってくれるとは想ってもいなくて目頭を押さえて泣いていた 烈は「惚気られちゃったわ!」とボヤいた 有栖が「仕方がないよ!じぃちゃんはばぁちゃん命だもん!」と答えた 栗栖も「ラブラブだよ、この二人……ねぇ烈、僕も結婚したいよぉ〜」とボヤいた 「クリスに相応しい子は来年ボクが見付けてあげるわよ!」 それが有栖院家翁の願いでもあり、暦也の願いだから………運命を見極め相手を選ぶ 「烈ぅ〜!」 栗栖は烈に抱き着いた 神威は「なぁまだ酒は飲めぬのか?」とボヤく 「………アル中になるわよ!」 「ならねぇよ!儂はメリハリ着いてる漢だからな!」 神威の台詞に烈は笑っていたが、直ぐ様真顔になり、よりによって今来るかな?と小さく呟き立ち上がった 「じゃ、話は以上ね! 今日はおでんたから、皆で宴会に突入ね! ボクは先に行ってるから、後で来るのよ!」 と謂うと烈は早足で慌てるように外に出た 急に慌てて行こうとする烈を追い、一生は後から来る義泰達に「なら待ってるからな!」と告げて烈を追った 一生は烈に「どうした?何かあった? 家に還って着物脱がねぇのか?」と窮屈な着物が嫌いな烈に問い掛けた 烈はある程度走ると、立ち止まり 「カズ、ボクは少し用が出来ちゃったから、母しゃん達に伝えといて!」と謂う 「何かあったのかよ?」 「【眼】が追って来てるわ! まぁ久遠の家は視えないから、そこら辺ウロウロ探っていたのね! だからよりによってこんな日に出くわしちゃうのよ!」 「眼?それは何だよ?」 一生が問い掛けると 「それは弥勒院厳正、俺の親父の眼だよ!」と謂う声が響いた 振り返ると弥勒が立っていた 烈は「弥勒?何故来たの?」と問い掛けた 「俺の手で葬り去る事こそが親孝行だからな!」 「澄香は?」 「素戔鳴と建御雷神が来てくれている! 天照大御神様も来て下さり、共に過ごして下さっている!」 「ならば弥勒に加勢してやるのよ!」 と言い烈は呪文を唱え始めた 「東方 帝釈天 、南方 焔摩天 西方 水天 、北方 毘沙門天 東南方 火天 、西南方 羅刹天 西北方 風天 、東北方 伊舎那天 梵天(天) 地天(地)日天 月天 十二天よ!今聖神の命により此処へ召喚されよ!」 印字を切り、梵字を絵描き、十二天を呼ぶ呪文を唱えた すると眩い光が辺りを包み、十二天が姿を現した 毘沙門天が「何故に儂等を呼ぶかな?」と徳利を片手にボヤく 帝釈天も「あ~俺のお酒!!楽しく飲んでたのによぉ〜!」と叫ぶ 烈は「さぁ四方八方散らばり、弥勒に加勢して捕物するのよ!」と叫ぶ 十二天は四方八方に散らばり 「酒の恨みは深い!」と叫ぴ呪文を唱える 神威は「儂は後から逝く!真贋に飲兵衛が大量に流れ込むと伝えといてくれ!」と義泰に頼む 志津子達を巻き込まぬ様にクーとルーが付き添い飛鳥井の家へと向かう スーが辺りに闇を張り巡らせ人の目から隠した 烈は「さぁ、場は整ったわ!好きにやると良いわ! でも、弥勒が目的の所に辿り着くまでには、まだまだ駒はいるって忘れないでね!」と言い弥勒に加勢する 弥勒は「親父の気配を背負ってる駒を幾つ倒したら親父に辿り着けるかは知らねぇがな! んなの総てぶった斬ってやるさ!」と封印を解いて完全体になる そして海坊主の気配を探り、追い詰めていく 「あぁ………其処にいたのね…… 弥勒………魂だけ遺して消して………」 と無理難題言いやがる 弥勒は何故だ!と問い掛けた 「其処にいるのは菩提寺の住職の………城之内の父親よ……… 余生を鎌倉で過ごしていたのに………無理矢理に取り込まれ、人生を終わらされ今じゃ駒にされているのよ…… 倅に申し訳ないと泣いてる魂……貴方には視えない?」 その者の神髄を視れば、その身体の奥深くに存在する魂は嘆き悲しんていた……… まるで海坊主の様に……… 弥勒は「承知した!んとに神使い荒いんだよ!」とボヤいた 帝釈天は「んなの何処の世の宗右衛門だとて、同じだよ!あやつは神使いの荒いケチなんだよ!」と叫んだ 一生は「俺はどう動いたら良い?」と問い掛けた 「カズは此処にいて、逃げそうなら……噛み砕いても良いわよ!」 「了解した………しかし弄ぶよな……本当に人間を駒にしか思ってねぇんだな……」 「イギリスは現陛下の亡き妻の魂を操作して……………亡霊騒ぎやらせてるからね あれは多分……アイツの駒でイギリスに特化したヤツが仕切って操っているんだと思うのよ 各国に海坊主みたいな駒、ゴロゴロ作りやがってるのよ!」 と烈はボヤいた そしてボヤきつつサコッシュから小瓶を取り出すと呪文を唱え始めた 十二天に追い詰められ、大歳神は人の家に危害が加えられない様に周りを警戒して根っこを生やし護る! 自由に動ける環境さえあれば、封印を解いた転輪聖王の手に掛かれば………一溜まりもないのは目に見えていた 烈は「カズ、龍になってあの青白く光る魂の所まで乗せてって!」と謂う 一生は赤龍になり烈を乗せて青白く光る魂の場まで乗せて行った 弥勒は剣を取り出し青白く光る魂を避けて、その身を真っ二つにした 烈はその瞬間を見逃さずに瓶の中にその魂を取り込んだ そして呪文を唱え無間地獄の蓋を開けて、地獄に落とした 弥勒は「魂は回収出来たかよ?」と問い掛けた 烈は瓶を見せた 「この魂は仏像の中へ納め、倅の傍に置いておく事にするわ! せめて魂だけは安らかに………城之内が黄泉の旅路へ立つまでは共に過ごせる時間を持ち安らかに眠ると良いのよ!」 「今回は菩提寺の住職か………アイツの駒は幾つ在るんだよ?」 「那智とか謂う者を操り動かさせてるのよ多分……その駒がどれだけいるか?は、分からないわ! 神取の本家の奴等はもう駒だと思って良いかもね 鎌倉の屋敷に住んでた者は、既に取り込まれているのは確かね 周防切嗣とか謂う者も今は消息すら掴めない 周防を気にして仕えていた秋月とか謂う奴もいない……… ある日突然、消息を消した……… 真贋は配置したから後は楽しい余生を送ってると安心していたからなのかもだけど、その隙を突かれて消息を消したのよ 海坊主関係………そしてそれを取り囲む………飛鳥井を憎んでる者を取り込み駒にしてるのよ!」 一生は驚いた顔をして「それは本当のことなのか?」と尋ねた 「俺はその配置される場にいた そして生活が安定するまでは見に行っていた 後は楽しくやるから捨てておけ!と謂れ見に行かなくなった…………その隙を狙ったと謂うのか?」 「隙を狙ったと謂うより、駒にすべくタイミングを狙っていたのよ、多分! そして状況が整ったから手中に収めた そんな所だと思うわよ!」 「康太は…………その事を知っているのかよ?」 「知ってるわ、願いが叶うぬいぐるに美濃部一徳が絡んていて、その美濃部一徳が海坊主だと確信を持った時、鎌倉を訪ねた そしたら既に蛻の殻だったからね………何かがあったんだと思ったと言っていたわ! そしてずっと調べていたと………父しゃんが教えてくれたわ! 母しゃんは何かを感じて、ずっとその【何か?】を探っていた……… そしてやっと納得の事態を目に出来た!と言っていたわ もう既に遅く何もかもが取り込まれてしまっていた………と謂う訳よ!」 一生は言葉もなかった………… 烈が闇を祓うと、静かな住宅街となった 烈は「久遠の家の邪魔になるから移動するのよ! さぁ飲兵衛は飛鳥井の家に行くのよ!」と謂うと、神威は一生を引っ張って十二天と共に飛鳥井の家に向かって行った 烈は「弥勒はどうするの?」と問い掛けた 弥勒は動けずにいた……… 其処へ烈が心配になりクーが戻って来た 「皆は飛鳥井の家に行き宴会してるぜ!」と謂う 烈は「早く逝くわよ!」と謂うと クーが弥勒を蹴り飛ばすとスーが弥勒の首根っこを掴み移動を始めた スーが「まずは飲むねん!」と謂う クーが「だな、こんな寒いのにやってられるかよ!」とボヤく 飛鳥井の家に逝くと、かなりの酔っ払いが出来上がりつつあった 茶室まで解禁して広げて飲んでいた 烈は自分の部屋に行くと、宗右衛門の着物を脱いでジャージに着替えていた 翔が烈の部屋にやって来ると、クローゼットから衣桁を取り出すと宗右衛門の着物を干してやった 「お疲れの顔してるわね烈? どうする?キッチンでご飯食べて寝る?」 「そうね、そうしちゃおうかしら?」 「烈は少し忙し過ぎなのよ! 僕達で協力出来るならば協力するよ?」 「にーに達には協力して貰ってるわ! 菩提寺で次代の四龍や虹の教育して貰ってるじゃない!」 「最近は本当に変わって来たわよ! 下手な虚勢や威張った態度も取らなくなり、自然体でいるからね!」 「それも………にーに達が日々教えてくれた努力の上に立つのよ! ボクはそれまでやってたら、入院ものだもの! 本当に有難うね、翔にー!」 「僕は弟やちっこちのの為ならば何でもすると決めてるんだよ 僕等兄弟は皆、同じ思いだから!」 翔がそう話してると大空がやって来た 「烈、顔色悪いよ! もう今夜はご飯食べて寝ちゃいなよ!」と心配して謂う 太陽は「もう用意出来るから!」とやって来る 音弥は「久遠先生が消化の良いのにしろ!って言ってるから、消化の良いのにしたからね!」と告げる 烈はキッチンに兄達と共に向かい夕飯を食べていた すると久遠がやって来て、烈の様子を見る 烈はかなり消耗していた 「力、使ったのかよ?」と問い掛けた 「そうね、少し力使ったわ!」 「おめぇは力使うと熱出しやがるじゃねぇかよ! そう想いこの家に着いて直ぐに泰知に頓服と点滴をセットで用意して持って越させたんだよ!」と謂う そして烈の額に手を当てると、案の定熱を出していた 「現世の体は口惜しい程に軟で困るわ………」 烈がボヤくと「まぁそれが人間ってもんだ!前世の宗右衛門は人間離れし過ぎだったみてぇだからな、採算が取れて良いじゃねぇかよ!」と久遠が笑って言う ご飯を食べて、薬と頓服を飲むと部屋に行き、点滴を受けた 竜馬が烈が戻って来たと知り、烈の部屋に来ると付き添っていた 「烈、大丈夫?」 「大丈夫よ!楽器はないけど、特別に竜馬に出来上がった歌、歌ってあげるわよ! この歌はまだまだ改良しなきゃだけど、聞いて欲しいのよ 点滴してるから演奏はないけどね!」 そう言い、烈は歌い出した 今日は最高の楽しい日 皆が幸せになれる日 だから君だけに贈るよ 最高のプレゼントを! 泣いて 苦しんで 叫んだ日々を 壊れて 疲れて 死のうとした日も 今日は忘れて楽しむの だって楽しいXmas そんな貴方に最高の贈り物 らんらんらん  らんらんらんらん らららららん 今日は最高の思い出を 貴方に贈るわ さぁ笑って前を向いて 明日は幸せを 掴み取るのよ 幸せな日々を! 泣いて 笑って 辛い日も 今日は楽しいXmas らららららん らららららん らららららん だから…… 歌いかけて烈眠りに落ちた 竜馬は「最高に烈らしい歌だよ!」と言った 皆でもっと素敵な歌に肉付けして、最高の一曲にしてみせるよ! メンバーは外でそれを聴いていて、烈の想いを汲み取った 烈はそんな苦しい想いをした人達に最高の贈り物をしたいのだ メンバーは俄然燃えた 最高のXmasイベントにしてみせる! そう心に違った 翌朝 烈の熱が下がっていた 何時入り込んだのか?隣にレイが寝ていた 烈は「レイたん、おはよう!」と声を掛けた 「れちゅ おねちゅ……」 と烈の額に手を当てる 烈は「熱は引いているよ!有難うレイたん!」と礼を言った レイと一緒に起きて温室へ向かう 温室の隣のスペースに猫の遊び場を作った 猫タワーだったりハンモックを作った ルーとスーはすっかり、そのハンモックがお気に入りになり猫部屋は必要がない程になっていた 時には猫タワーで寝たり、寒い時は温室で寝たり好きしていた 流生は温室の天井が高いから、其処にハンモック吊り下げてやり寝る場を作ってやっていた 温室の外観を崩さない様に、大きな木を利用して、ハンモックを作ってやると、猫達は上手に木の上を歩きハンモックで寝ていた そのお礼に猫はジョーロを持ち水やりの手伝いをするのだった 「流にーはん、土が少しあかんから肥料たしといたわ!」とスーが手伝う 「あ、スー有難う、スーは的確にやってくれるから綺麗な花が咲きまくるよ!」と楽しんていた プーは「何や最近吾輩の存在薄いやんか!」とボヤく 流生は「そんな事ないよ!」と慰める レイはチューリップの歌を歌い水をやる 賑やかな時間だった 康太はそんな平和なに日常を見るのが、嬉しくて堪らなかった 康太は「熱は下がったのかよ?烈!」と問い掛けた 「うん、下がったのよね!」 「城之内の親父……やはり捨て駒として使いやがったか……」とボヤいた 「ボクね、本当は駄目だけど九曜ちゃんに頼み、小さな観音像の置物を造って貰ったのよ その観音像を菩提寺に置いておいたのよ その中へ入れるわ、そしたら心残りの倅の存在を感じていられるじゃない!」 「だな、そうしてやってくれ! 本当ならオレが正さねぇといけなかった事なのに………悪かったな!」 「歪んだ果てに来たのは誰の所為でもないのよ それに軌道修正はボクの務めだから大丈夫よ!」 「秋月………アイツは頭も良いし腕も立つ…… アイツの相手はオレがやる!」 「母しゃんはなるべく出ないでね! 向こうの狙いはあくまでもレイたんと母しゃんよ それと………そろそろイギリスを中心とした国から要請来るかもだから、閣下と連絡取ってそっちで動いて欲しいのよ 蝿はボクが追い払うわ、だから母しゃんは世界情勢を気にしてやって!」 「それ、めちゃくそ面倒臭いやんか!」 「…………母しゃん、ボクは両方は無理よ!」 「解ってんよ!でも年内は動きたくねぇんだよな!」 「あ~ボクも年内は動けないわよ!」 「まぁ来年………連絡来たら耳は貸してやる だが政治屋も沢山いるし、何よりイギリスに行きてぇヤツいますがな! ソイツに行かせておけば良いやんか!」 「母しゃん!天才!!そうね!そうしましょう!」 喜ぶ親子を竜馬は階段に上がった直ぐの所で聞いていた 何ていう親子なのよ……… こんなにも似た者親子で良いのぉ〜 それをその後ろで聞いていた兵藤が溜息を着く 「んとによぉ〜、あの似た者親子はぁ………」とボヤく 烈はスキップしてエレベーターのボタンを押して、開いたエレベーターに乗って行ってしまった 兵藤は「何て酷い事言ってるのよ?」とボヤいて階段を上がり康太に訴えた 康太は笑って「国内ですら結構大変なんだよ! 海坊主関係が手薬煉引いてるからな! 烈は今抱えてるので、手一杯だしイベントもあるからな、どの道無理な話なんだよ!」と謂う 兵藤は「姑息な事しやがるんだな、イギリスも烈が言ってた通りに亡霊騒ぎで大変らしい! しかも死者一人や二人じゃねぇからな……… 反魂は出来ねぇんじゃなかったんじゃないのかよ!」と問い質した 「あれは多分……反魂じゃねぇよ! まぁ仮説だが、反魂が無理になるのを知っていたアイツがそれより前に元始天尊の歹で反魂を作っていたんだよ! そして元始天尊は道教の神祖たからな、今騒がせてる奴等は道教で生き返ったヤツだ! まぁ謂わばキョンシーを作ってるんだよ! 遺体さえ手に入れば、キョンシー出来るんだよ 多分火葬に出す前に遺体すり替えられていたのかも知れねぇな!」 「…………その仮説……めちゃくそ頭痛がして来るやんか…」 「まぁ仮説なら良いんだがな………」 「仮説じゃねぇ方が有力と言う事かよ?」 「多分…………な、しかも羅刹天の反魂の体は何体もいたらしいからな……… 目を蒼くして髪を金髪にして紛れ込んでたりしてたらしいからな……… 元始天尊が海外バージョンにされて海外へ行ってても不思議じゃねぇだろ?」 「何か………聞くのを俺の脳は拒否ってますがな……」 「拒否ってようが、それが事実で現実なんだよ 烈はhellに行き、その現実を目の当たりにしてモンタージュ作ったりして世界中の空港のカメラにAI突入させたヨニー©イギリスの高感度システムカメラをお勧めしていたらしいからな……… その指名手配してる奴の骨格や声帯をインプットさせて何万通りのパターンを瞬時に解析させ犯人を見抜く、ってぇので主要都市の防犯カメラシステムに組み込ませた! だがまだまだそれが使用されてねぇ空港もあるからな、其処を抜け道にされているんだよ で、ヨニーは今めちゃくそ忙しいんだよ! そして烈は其処の副社長だから、多忙なんだよ って事で烈の管理下にいるお前達が逝くしかねぇんだよ!」 「お前………今………サラッと言ったな!!」 康太は意地悪く笑って「それが現実じゃねぇかよ!」と一蹴した! 世界が不穏な空気を孕み動いているのを感じていた………… 世界が動く 狂気と破滅へ向かい動いて行く………… だからこそ、それを止めないとならないと痛感していた 康太は「世界が一丸とならねぇと………ならねぇ時が来る………それが解らねぇ国から消えてくって事だ…………潰し合い消し合い削り合い………破滅へと向かっていくんだよ!」と兵藤の瞳を射抜き語る 何時になく真摯な瞳に兵藤は言葉もなく……… 現実を痛感していた 其処へ榊原が来て「康太、無闇に不安を掻き立てるのは止めなさい!」と妻を止めた 康太は榊原の方を向くと 「やがて来る現実を突き付けただけだ! 世界は少しずつ歯車を狂わせ、諍いが絶えなくなって来てるんだからな!」と告げた 「それでも、彼等はこれから実感して行くので、無用な事ですよ!」 「そっか、そろそろお呼びも掛かるって事か! ならまぁ無用な事だったわ!」と謂う康太はキッチンへと下りて行った 榊原は「康太は最近少しだけピリピリしてるので………八つ当たりです!許してやりなさい!」と謂う 兵藤は「別に怒ってねぇよ!それより何にピリピリしてるのよ?」と問い掛けた 「何が?じゃないんですがね、世界情勢を何時も眉を顰めて見てピリピリしてますからね 何か感じ取っているのは確かです!」 「そっか………」 兵藤は言葉もなく胸騒ぎを隠せずにいた 榊原は兵藤と共にその場を離れた 竜馬は烈がエレベーターで下に行った瞬間、下へ降りてしまっていたからだ その日烈は会社を休んだ と謂うより会社へは大掃除の時以外は出勤はしない!と早々に役職には秘書を通して話をしたのだった イベントもあるし、配置すべき存在もいる 時間は幾らあっても足りない状況だった この日烈は飛鳥井記念病院へ来ていた 自分の診察を終えると、【R&R】のスタッフを呼び地龍の入院の精算をして、地龍を菩提寺に連れて行く為だった 地龍を菩提寺に連れて行く前に、改めて烈は黒龍と紅花と話し合った 烈はその時に二人に銘が壮絶な虐めに遭い、何度も死のうとしていた話をした だから世間知らずな紅花が魔界で黒龍と生活を始めれば、確実にその対象が紅花になり二の舞になると言った 黒龍もそれは感じていた 紅花も龍王の屋敷から出た事がなかったから、菩提寺へ来ての生活は大変だった その上、虐めまであったら………心は折れてしまっていたと想う 烈は「黒ちゃんは少しの間魔界へ還れないわね」と突然意味深な事を言う 黒龍は「え??何故に??俺何かした?」と慌てた 「紅ちゃんの首に鳳凰の痣が出たわ! 紅ちゃんは鳳凰を孕んてるわ! 安定期に入り、そして鳳凰をこの世に誕生させる日までは魔界へは帰っちゃ駄目よ!」 「え??嘘…………」 「せんせーに頼み産婆に見せようかしら? それとも………どうしようかしら? ボクね、奥さんとの間に出来た子は………魔界で冷遇サれていたから、自分で取り上げたのよ だから………お産とか詳しくはないのよね それも数万年前の話だし………」 烈が困って思案する 烈は保養施設の一階に内線電話をして夏海と花絵を3階まで来て貰った 「夏ちゃん、華ちゃん、あのね紅葉が妊娠したのよ!ねぇどうしたら良い? 人の病院で大丈夫かしら?」 と相談しつつ八咫鏡の欠片を手にすると 「えんちゃん、金ちゃんと銀ちゃん、人の世に来れないかしら?」と相談した 『烈、何かありました?』 烈は紅花の妊娠を告げた そして協力を頼んだ 閻魔は『直ぐに金龍と銀龍を行かせます!』と約束してくれた 烈は用心して母に「母しゃん、妊娠したのよ!どうしましょう!」とラインをした 仕事していた康太はラインを見て 「伊織大変だっだ!烈が妊娠した!」と叫んだ 榊原は冷静に書類から顔を上げると 「冗談………彼はオスですよ?しかもまだ小さいです!」と慌てる妻を落ち着かせた 康太は榊原にラインを見せた 榊原は烈に直ぐ様電話をかけた 『烈、誰が妊娠したのですか?』と少し声が怖い 「あ、ごめん、取り乱したわ…… 黒ちゃんの妻が鳳凰を孕んだのよ! 妊娠の印が出てたから、産婆で良いのか? せんせーに見せなきゃ駄目なのか? 少しパニックになってたわ! 妊娠なんて数万年前の話だったから、訳が分からなくて………」 『我が兄の妻が妊娠したのですね! 解りました、その手筈は康太がやる事にします!』 「頼める?父しゃん………ボクには荷が重いのよ……」 そりゃそうだろ? 小学生が出産に詳しいとか………有り得ない……… 『解りました!でも魔界には産院なんて有りませんし、そもそも神は性行為しないし、子は二人の共同作業で限界させるから産婆必要有りませんからね………… そう言えば神以外の者はどうやって出産してたんですかね? 龍は卵を産む………即ち出産と同等の苦痛と苦しみあるのですが………産婆いないのですよね?』 「だから魔界も産婆必要なのよね 医者も産婆も必要なのよね………」 『まぁそれは追々考えましょう! 君が妊娠した訳でなくて良かったです!』 「え?ボク?ボクは男の子だから無理なのよ!」 『嫌々、君ならば錬金術駆使して妊娠しそうなので………』 「それやったら兵藤きゅんが領域侵犯しやがって!と怒るわよ!」 烈がボヤくと榊原は笑って電話を切った 烈は「龍って何ヶ月位で子を産むの?」と問い掛けた それに答えのは銀龍だった 「龍は腹の中で卵を形成し産む なのでその出産は人の子と同じ十月十日から一年をかけて育て、出産します! 鳳凰を出産した龍はいないので解りませんが、龍なれば十月十日から一年以内に生まれるのではないでしょうか?」 その声に振り返ると銀龍がいた そしてその横には金龍もいた 烈は「金ちゃん銀ちゃん、悪いわね呼びつけたりして!」と謂う 金龍は「天照大御神様に烈の所まで送って頂いたのじゃよ!」と謂う 烈は「ボクはまだ子供じゃない……だから出産とか分からないのよ………」と謂う 銀龍は「人の世で産まさせるのですか?」と尋ねた 「そうね、人の世で出産させて落ち着いたら還るが一番理想ね!」 「解りました! ならば今度は私が倅の力になりましょう! 地龍も心配ですし………閻魔様には許可を頂いておりますので、人の世で半年位滞在する予定です」 銀龍の覚悟の想いに烈は 「…………親子の絆を………構築して行くには遅くはないわね ならばスタートラインは同じでなくてはならない 近い内に地龍が菩提寺に来るわ! その前に黒龍と紅花に地龍の事を話したのよ そして何故魔界での新婚でなく人の世で生活を始めたのか?も話したのよ そしたら………紅ちゃんの首に妊娠の兆しが出てて………少し取り乱したのよ!」と話た 黒龍は「地龍が退院して来るのならば、一度家族で話をしたいです!」と烈に申し入れをした 「良いわ、連れて来るわ! でも銘はまだまだ心のケアが必要だから………入院してるわ!」 金龍は「一度銘の見舞い………出来ぬじゃろうか?」と問い掛けた 「それも今直ぐとかは無理よ! 段階的に医者と話し合い、必要ならば話をする まぁ銘も踏み出さなきゃならないのは解ってるから………近い内には話はしないとだけどね それは本人が一番良く解ってるからね!」 銀龍は「烈、何から何までお世話になりました! 本当に貴方には幾ら礼を告げても足りない………」と涙ぐみ言う 烈は「銀ちゃん、ほらほらボクを撫で撫でしないの?貴方の孫が目の前にいるのに、何で深刻な顔してるのよ!」と謂う 銀龍は烈を抱き締めた 金龍も烈を妻の上から抱き締めた 「金ちゃん達住むなら、黒ちゃんちの隣空いてるから住むと良いわ! ちぃちゃんは独身寮の方で生活始めるからね!」 「あの………ちぃちゃんとは?」 「地龍よ!舌噛むわよフルで呼ぶと!」 あぁ、成る程、だから名前を縮めて愛称みたいに呼ぶのか……… 烈は舌が短い だから発音は極端に悪い 今は成長と神髄師の漢方で少しは発音が良くはなって来たが……… 気をが緩むと呂律は極端に悪くなる それを知っているから、親しげに呼ばれるのは嬉しかった 地龍を菩提寺で生活させる その布石の為、予定を着けて貰い、翌日の夜  烈は赤いのと父を呼び話し合いする事にした 3階の保養施設に皆が揃うと 「さぁ話し合いをするのよ! スタートラインは同じでなくてはならないからね!」と言い話し合いをさせた 榊原は「それはそうですね、スタートラインがバラバラでは何の為の話し合いなのかさえ分かりませんからね!」と笑みを浮かべ謂う その時の青龍の我が子を見る柔らか瞳や、我が子に気配りする様子に……… 家族は「え!!!嘘!!青龍がそんな顔をするなんて!!」と言った程だった 烈は「父しゃんは基本、母しゃん以外はどうでも良いのよ! でもそれだと親として誇れないから、父しゃんは頑張って努力して父として生きているのよ! ボクは胸を張って、ボクの父しゃんは凄い人だって言えるからね!」とニコッとして謂う 榊原は烈を抱き締めた 「父しゃん……」 「私は我が子に誇れる父でいたいのです! それが君達を託してくれた人達へ報いる為だと想って来ました でも今は君達と共に生きて来て、心から父としてどう在りたいか?思うのです!」 「父しゃんは怖いけど、ボク達の誇れる父しゃんだから! にーに達もきっと同じ事を謂うわよ!」 「烈!!」 「父しゃんは辛い事も苦しい事も能面みたいな表情の下隠して生きて来たわ! 父しゃんは強かったから………誰に何も言わせはしなかった だけど………傷付かなかった訳じゃないのよ! 親にも頼れず、兄弟にも頼れなかった 誰も青龍が弱いなんて思わないじゃない だから弱音すら吐けない……… そんな現状、誰が理解した?」 烈はかなり熾烈な言葉を投げかけた 康太は何も言わなかった 烈が謂う事こそ、ずっと青龍が抱えて来た想いだから………口にしなかった 榊原は「まぁ私も………虚勢を張って来ましたから……誰に何も気づかせない自信ならあります! 愚痴を言って何になる? 弱音を吐いて………青龍って案外普通のヤツなんだな………なんて思われるのが嫌でした 誰にも本心なんて見せてません! 全てが虚勢の中にいて……偽った姿を見せていた それが貴方達の知る【青龍】なのです! まぁ今になれば、総て御存知でしょうが……… 魔界へ還ったとしても私はあんまり頼りにはならない奴です………すみません!」と本音を吐露した 黒龍は「嫌々、蒼いの、俺等は本当にお前の何を見て来たんだろう……… と、人の世に堕ちたお前を何時だって女神の泉から見ていたんだ……… 幾度人の生を終え、幾度生まれ変わっても……… 俺等の目に映る青龍は全く知らない存在だった 今世………お前と自由に会える事になり……… お前は父となり、炎帝の夫として頑張ってる姿を目にして……俺等は何を見て来たんだろう…… と何度も思った 烈と謂う子を得て、お前の子が魔界に来て……魔界を発展させ改革して行く様を見せつけられた 親父が………烈を殺しかけた時には俺も親父も母さんも覚悟を決めたよ 烈は………素戔鳴尊の孫………魔界の発展に尽力した存在だ………どうやったって太刀打ち出来ない存在だからな、龍族は取り潰しにして!の一言で我等は魔界を追い出され………行き場を無くす所だった なのに………烈が龍族を正してくれた…… 対話と説法と教えで歪んだ龍族を正してくれた まぁ反発するのも確かにいた だが揺らぐ事なく正して行く姿に最後は土下座して謝罪する者もいた まぁ謝罪しても許されず、許されたいなら無間地獄の下働きから出直せ!と叩き込み仕込まれ今は誰よりも龍族の為になってる奴もいる そんなのを目の当たりにしたら……俺も頑張らなきゃ………って空回りして……レイの飛び蹴り受けたよ……… そして思うんだ……この子を育てているのは青龍だって! お前と炎帝の魂を与し子は正しい道へ魔界を導いて行く存在なのは確かだ! そんな子を育てているお前の努力を、烈を見て垣間見るんだよ! 俺はお前みたいに子に誇れる父になりたい! 今はそう心から想っている」と思いを口にした 金龍と銀龍は我が子の本音を聞き、言葉もなくしていた 一生は「俺は………ハッキリ言って親父達も兄貴も弟達も大嫌いだった! 龍族なんて滅びてしまえ!そう想っていた 龍族のヘビ並みのネチっこい性格が大嫌いだった 見てねぇ所で嫌がらせされ………愛と平和を護るってお前仕事してねぇじゃねぇかよ?と言われるのも嫌だった!好きで赤龍になった訳じゃねぇのに! 何時だってそう想っていた……… そんな俺の救いが炎帝だった 俺は炎帝の自由な所に憧れていた…… まぁ実際は大変な想いして死ぬ想い何度もして生きてる様を目の当たりにして…… 言葉なんてなかったさ! そして俺は烈が苦手だった 嫌いとか好きのレベルじゃなく、烈に視られるのさえ嫌だった 怖かったんだよ………康太とは違う烈の眼が怖かった…………だから烈を蔑ろにしてしまった なのに烈は俺を許してくれた そして牧場を救ってくれた そして今、四龍の役割を変えると言ってくれた 俺は四龍として責任を持って、兄弟の役割を持ち生きると決めた! だから本音で話している! スタートラインは同じてなくてはならない!と言われてるから、自分なりに歩み寄り………親子で在り、兄弟で在りたいと想う!」と本音をど直球で投入した 金龍は「儂は良い父ではなかった………高慢で暴君で………最悪な父だった 実際 我が子の何も見てなかった……… 我が子が建てた家を見て儂は絶望した 黒龍は物に溢れた家を建て、赤龍は家具さえない家を建て、青龍も同じ……住める家など建ててはいなかった 地龍の家も見て来た………地龍は龍族の誓約の地に家を建ててはいなかった……… 元の家で窓には目張りして外部と完全に孤立して………まるで怯える様に生きていたのか……と思わせる家だった 儂は………我が子に目を向けては来なかった……… 天龍にしてもキツく苦しい修行と称する暴行をしていた………今なら解る 儂は愚かな父であった…………と。 だから始めたいのじゃ………もう後悔しない為に始めたいのじゃ! 我が子が幸せに笑って暮らせる日を夢見て……始めたいのじゃ! このまま………黄泉の旅路を渡らねばならぬと言われたら………儂は後悔しかない………そんなのは嫌じゃからな!」と弱い自分を見せて……本心を語る……… 本当は強い父の姿しか見せたくなどない………… たけどそれでは………本音は語れはしない だから愚かで駄目な父の姿を見せるしかなかった 銀龍も「私は……我が子の幸せしか願ってません!我が子が幸せならば………それだけで良かった  だけど銘が段々元気がなくなり………見かけなくなり………烈に何度も何度も相談した 烈も忙しいのに………何時だって烈は私の話を聞いてくれた それだけで私は救われた……… そして烈ならば何とかしてくれるんじゃないかって思ってしまったの………ごめんなさいね烈……」と涙を流しなから言葉を紡ぐ 烈は銀龍の背を撫でながら 「良いのよ銀ちゃん、気にしないで! 誰よりも地龍と銘を気に掛けていたのは銀ちゃんじゃないの! だからボクは動けたし、間に合う事が出来たのよ! ねぇ、ちぃちゃん、貴方は何か謂う事はないのかしら?」と謂う 榊原は「え!地龍いるのですか?」と問い掛けた そして立ち上がり襖を開ける すると、隣の部屋に地龍はいた 康太はその事を知っていた が、敢えて謂わずに気配を消す手伝いをしてやった だから榊原も気付かなかったのだった まぁ地龍を此処まで連れて来た一生は知っていた が、烈が謂うまでは、烈の果てが狂うと想い黙っていたのだった 地龍は泣いていた 榊原は地龍を見付けると抱き締めた 「君が………黄泉の旅路へ渡ってしまわなくて本当に良かったです………」と謂う 金龍も銀龍も我が子を抱き締めた 黒龍は動く事が出来なかった 一生は最近は良く話をしていたから、今此処で話す事もないから黙っていた 烈は「カズも虐められていたの?」と問い掛けた 「まぁな、立派な兄と弟を持つと………俺は劣ると言われ続けていたな でも俺はそんな事でへこたれねぇからな、倍返しにしてやったさ!」と謂う 「弱いとポッキリ折られちゃうのよ……… たから強くならないとならないのよ!紅ちゃん!」 そう言われ紅花は「はい!強くなります!」と答えた 「まぁ当分は妊娠中だから大人しく過ごすのよ それと悪阻あったの? これからなのかしら? ボクにはサッパリなのよ………」 銀龍は「紅花、悪阻はありますか?」と尋ねた 「義母様………最近気持ち悪くて……食あたりかと思っていました! 夫に拾い食いした訳じゃないのに気持ちが悪いと訴えていたので、烈が来たら医者に見せてくれる様に頼んでみると言われていたのです!」と訴えた 銀龍は悪阻を拾い食いレベルに捉える嫁……… 世間知らずだと知らされていたが、此処までとは………と心配になった 銀龍は「貴方の出産や子育ては私が手伝います! なので貴方は遠慮せずに母に頼りなさい! それとお母様じゃなくて良いわよ! 母さんと呼んで下さいね!」と優しく諭し謂う 紅花は「はい!お母さん!私は何も知らぬ……世間知らずなので助けて貰えると謂うのは助かります!」と安堵した顔で言う 烈は「あ、銀ちゃん、ちぃちゃんちに、言ってたのあったかしら?」と尋ねた 銀龍は「はい、有りました!もう少し放っておいたら手遅れでしたが、何とか間に合いました!」と言い大きな見た事のない柄をした卵を取り出して見せた 烈はその卵を受け取ると、直ぐ様研究所のスタッフを呼び出した やって来たスタッフに「直ぐ様保育器に入れて様子を見て!そして卵にこの液体を一倍に薄めて吹き掛けておいてね!また後で見るから!」と言い卵をスタッフに託した スタッフは卵を保温容器に入れて持ち帰った 康太は「あれは何の卵だよ?」と問い掛けた 烈は顔を強張らせ……… 変わりに銀龍が「あれは銘が生んだ子です!」と告げた 康太は「え?銘……龍を産んだのか?………」と唖然となった 烈は「さっき金ちゃんが言ったでしょ……ちぃちゃんの家を見て来た……って…… その家に置き去りにされた卵を金ちゃんが見つけたのよ 後少し放っておいたら……卵の中の子は死んでいた ギリギリで救われ銀ちゃんが育ててくれていたのよ、でも育ちが悪いと謂うから今後は研究所で管理して育てると決めたのよ だから銀ちゃんに持って来てと頼んだのよ!」と説明 康太は「銘は子は産めねぇ運命だった………」と呟いた 烈は母の瞳を射抜き 「それが歪められた未来に繋げられたとしたら? 銘は何故にあんなに衰弱して弱ってギリギリだったのか? せんせーはリスカだけが原因じゃねぇだろ? まるで産後みたいな弱りようで、心身共に限界来てる、一度調べろ!と言われたのよ だから金ちゃんに連絡して、ちぃちゃんちを探ってくれるように頼んだのよ! そしたら卵が見つかったのよ! 此れは銘が産んだ子なのか?拾った子なのか? カズがちぃちゃんを詰問してくれて、我が子だと認めたのよ!」 榊原は「何故言わなかったのですか! 下手したら死んでました!」と怒りに戦慄き………吐き捨てた 烈はそんな父の怒りに震えた手に触れ 「視野が狭くなり、死に囚われた者は………我が子諸共………黄泉の旅路へ繰り出す気だったのよ そして人の世に来てしまったメイとちぃちゃんは、我が子は死んだと想っていた…… まぁあのままだと死んでいたわ せんせーが産後の弱りだぞ!あれは!と言わなきゃ探しに行かなかったわよ! そして金ちゃんが直ぐに動いてくれ、銀ちゃんが守り育ててくれたから紡がれた命なのよ! だから怒らなくて良いのよ父しゃん……」 「烈…………」 「父しゃんも母しゃんも許せないのは解るわ でも、この二人が悪いの? まぁ誰にも助けを求めなかった二人は悪いわよ でも助けさえ受け止められない状況を作ったのは貴方達なのを忘れちゃ駄目よ!」 烈が言うと康太は「んとにな、オレ等が地龍追い詰めた!済まなかった地龍!」と深々と頭を下げた 榊原も康太同様に頭を下げた 地龍は慌てて「え?あ?………止めて下さい!炎帝!兄さん!」と慌てた 一生は「お前さ、一人で出来ねぇ時は烈に相談しろよ!そしたらこのオッサンは直ぐに考えてくれ、最適解を導き出してくれるから!」と謂う 烈は一生をポコポコ殴り 「失礼ね!ピチピチの小学生に何言うのよ!」と怒った 皆がその言葉に笑った 地龍も笑っていた 烈は「カズ、虹呼ぶのよ!」と謂う 一生は宝珠を取り出すと「虹、ご指名だ!保養施設3階まで来い!」と連絡した 烈は一生の宝珠を手に「本当に便利よね、これ!」と謂う 一生は「まぁ携帯代わりだったら壊してしまえ!と謂われる程には便利だな!」と苦笑した 「悪かったわよカズ! もう言わないわよ!」 「なら会社横のカフェで奢ってくれれば許してやるさ!」 「なら明日にでも奢るわよ!」 と烈が言うと康太と榊原も便乗して 康太が「え?烈の奢りか?いや嬉しいな!」と謂う 榊原も「父はパフェで良いです!あのカフェのパフェは甘さ軽減もあるので、それで良いです!」と、乗って来る 烈は「お小遣い一万円にしたのが手痛いからって、ボクにたからないでよ!」とボヤく 一生は笑って「なら俺も甘さ軽減のパフェで良いや!」と謂う 黒龍も「なら俺も!」と謂うと皆が便乗して来た 烈はニコッと笑って「なら明日、カフェの閉店後、りゅーまが奢るわ!」と謂う 何処まで行ってもケチな烈だった その時、竜馬は飛鳥井の客間でメンバーとイベントの映像の話をしていた 其処へ大きなクシャミをしたから、メンバーからは 「風邪か?イベントあるんとからDr.クドーの所へ行けよ!」と言われていた 兵藤は「嫌、烈が悪巧みして竜馬の名を出したんだろ?」と笑って言う 竜馬も「絶対そうだよ、明日奢らされそうだな!」とボヤく メンバーは「なら僕達も出すから奢ってやろうよ!」と優しい事を謂う そして皆顔を見合わせ【だってケチだもんね!リーダーは!】と謂うのだ そして全員が笑っていた 客間でメンバー達に英語の勉強を見て貰っていた兄達も、烈ならあり得る……と納得していた そんな優しいメンバーの想いを知らない烈は、スタートラインに立とうとしている家族を見守っていた そして話は、そんな和やかな場に呼び出された虹龍に戻る 保養施設3階まで来た虹龍は、地龍の姿に一瞬………身を強張らせた 烈が「虹、師匠が呼んでるんだから3秒で来なさい!」と無理難題謂う 虹龍は烈の前に正座すると「それは無理に御座いますよ!呼んだのは赤いのじゃないですか!」とボヤく 烈は「虹、ちぃちゃんよ!何と貴方の父親よ!」と言い地龍を紹介した 虹龍は「知ってますよ!そんな事は!」とサラッと謂う 皆………唖然として………言葉を失った 榊原は「知っているですか?」と尋ねた 虹龍は「はい!この寺で矯正の日々なのに、傲慢な自分だった頃に思い知らされ見せられました そして師匠にどう足掻いても現実も真実も未来も変わらないんだから、腹を括れ!とレイを飛ばされ蹴りを入れられました! レイったら容赦ないし、竜之介さんは本当に的確にレイ投げ飛ばしやがるので結構痛いんですよ!」とボヤき謂う 康太は大爆笑した

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