21 / 62

第21話 多忙な日々、そして休暇へ

翌朝 烈は朝早く、イベント後の打ち上げをした旅館から飛鳥井の家に帰り身支度を整える事にした 兄達と北斗達は慎一と一生とで、ちっこいの願いを叶えるべくバスや電車を乗り継ぎ帰宅する事にした レイ達ちっこいのは「でんちゃのりちゃい!」「ばちゅのりちゃい!」とワクワクしていたから、希望を叶えてやる事にしたのだ 清隆や瑛太、玲香、京香、康太、榊原はニックにレンタカー借りさせて迎えに越させた 会社に逝かねばならないからだ 烈は兵藤に「直ぐに家に帰り支度をして下さい! 11時少し前に迎を行かせるので、お迎えの車に乗り迎賓館までお越し下さい!」とラインした 直ぐ様 兵藤から返信があり 『承知した、所で迎賓館って何処にあるホテルなのよ?』と問い掛けた 「美緒たんに聞けば解るから大丈夫なのよ! 11時少し前には迎えを外で待機させておくから来て欲しいのよ!」 『解った、家に戻り支度をする!』と返信した 兵藤は電車に乗り、横浜駅に到着するとタクシーに乗り込み自宅へ急いだ 早朝と謂う事もあり、道路は空いていた 家に着くまでの間に、美緒に「烈が今日、迎賓館に来てくれと言っている 俺はその迎賓館は知らないが、美緒に聞けば解ると烈が言ってた そして烈は11時には迎えを寄越してくれると言ってたから一緒に来てくれ!」とラインした 美緒は即座に『迎賓館じゃと!!』と驚きのラインを返した 『烈は本当に迎賓館と申したのか?』と聞き直す 「あぁ、11時までには支度して外に出てくれって!」 『あぁ!昭一郎を呼ばねばならぬ! 我も即座に支度をして参る!』と言いラインを終えた 兵藤は家に着くと支払いをしてタクシーから降りた 家の玄関を開けると、出迎えてくれたのは昭一郎だった 美緒は兵藤の声を聞くと 「早く風呂に入り磨き上げて、支度をするのじゃ!」と叫んだ 美緒は兵藤からのラインが入り直ぐに支度を始めていた 黒留袖を出して吊るして準備に取り掛かっていた 髪を結い上げて、先に化粧に取り掛かったみたいだった 昭一郎は正装を取り出し着替えていた 迎賓館へ招かれるとあって昭一郎は、モーニングコートを取り出して、儀礼に則り正装をする準備をしていた 美緒は夫に「昭一郎、烈が新しく誂えさせたモーニングコートを貴史に渡して着せさせるのじゃ!」と謂う 昭一郎は吊るしてあった正装を手にすると兵藤に手渡した 美緒は「客間の風呂で良い!早く風呂に入るのじゃ!早くするのじゃ!」と急かす 兵藤は客間に行くと、着てる服を全部脱ぎ捨てた風呂に入った 酒臭い匂いを取るかの様に、兵藤は体を洗った 昭一郎が兵藤の部屋から着換えの下着を持って来ていたから脱衣所に置いた 風呂から出ると体を拭いた 体を綺麗に拭くと、バスタオルを腰に巻き付け、頭を乾かす 乾かす前にオイルを塗りバサつかぬ様にして乾かし、整髪料で整えドライヤーでセットをする セットが終わると新しい下着に取り替え、客間へ行き正装を着替えて行く 昭一郎は脱ぎ捨てた着換えを洗濯ネットに入れて、洗濯室へと運んでやる 兵藤が正装に着換えていると、美緒もやっとの思いで黒留袖の着付けを完了していた 「用意は出来ておるか?」 「あぁ、東京から還って直ぐに着替えさせられるとは思ってなかったぜ!」 とボヤく 正装の上着を着る前に、香水を振り掛け埃を払った後に上着を着る 壁掛け時計を見ると、11時近くになっていた 「着替えって結構時間食うのな………」 「そろそろ約束の時間じゃな!」と謂うと、玄関のチャイムが鳴った 美緒がインターフォンのカメラを作動させ対応する 「御迎えに上がりました!」と謂われて何とか間に合った………と安堵した 正装に身を包んだ息子は、より男前度を上げていた 洗練された日々が、兵藤貴史を更に磨き上げていたのだ 美緒と昭一郎は息子を急かして玄関の外に出て鍵を掛ける 兵藤の家族を見ると、助手席に座る執事風の男性が黒塗りのリムジンから降り深々と頭を下げ 「宗右衛門殿の指示で御迎えに上がりました!」と謂い後部座席のドアを開けた 美緒は「御丁寧に有難う御座います!」と言いリムジンの後部座席に乗り込んだ 昭一郎が乗り込み兵藤も乗り込んだ 兵藤はドアを閉めようとしていた執事風の男に「烈は?」と問い掛けた 「宗右衛門殿でしたら、時を同じくしてSPの方の車に乗り向かっている頃で御座いましょう!」と答えた 自動でドアが閉まり、運転席と隔離された空間になると兵藤は 「迎賓館って何処のホテルなんだよ?」と改めて問い掛けた それに答えたのは昭一郎だった 「ホテルではないよ! 各国の来賓、貴賓等を饗す時に使われる場で…… 皇族や政府の方や財界、社交界に出る様な人間や、各国の要人とか歓迎し饗す場だから……一般人は中々無縁な場でもある……」 と答えた 美緒は「宗右衛門殿が出るならば……イギリスから……それなりの方が来日なさってると言う事なのじゃろ……」と呟いた 昭一郎は「イベント終わったばかりなのにね………」とその多忙さを想う 美緒は無言だった……… 母親の緊張し張り詰めた空気を感じていた 昭一郎もそれを感じて美緒の手をギュッと握り締めた 車は迎賓館へ到着し、正面玄関にはSPが警戒する中、兵藤達は車から降りた そして建物の中へ入り、一階ホールに案内されると……… 宗右衛門の着物に身を包んた烈が、英語でイギリスの首相と話していた その横にはクリストファー・オブライエンもいた 息子のヘンリーとオリヴァーも同席していた 夫人はインフルエンザで入院中との事だった クリストファーは烈を「我が息子!」と口にしていた 私の大切な息子達、と烈も同列に扱い、我が子以上の存在だと謂う そして烈の横にはエミリア王女もいて……… シャルロット王女も微笑みながら横にいた 烈の横には当然、竜馬もいて、竜馬はエミリア王女を牽制して烈を護っていた シャルロット王女は兵藤に手を差し出す すると兵藤は王女の手を取り、手の甲に口吻を落とした 「私は………倭の国の大学に留学致します! そして卒業した年に貴方と結婚致します! 私は……王女としての務めもあります! 一年の内………半分は離れて過ごさねばならないかも知れない………… だけど烈が、愛があるのならば距離も時間も言い訳にしかならないわよ!と言ったのです! 愛してるなら苦労を苦労とも想わない そして共に逝ける苦労は苦労などではないと! だから私は両親を説き伏せ、留学する事に致しました! 幸い、烈が最高の物件を見つけてくれたので、お父様にお願いして購入して貰う事になりました! そこに住み私は大学に通い、倭の国で暮らす事になります! なので貴史、来年落ち着いた頃に、盛大な婚約披露会見を致しましょう!」 兵藤は信じられない想いで一杯だった……… 「俺の過去は……貴方に話しましたよね? 貴方は………俺の傍に来る以上は………あの子の事も視野に入れねばなりませんよ?」 「レイとはライン友達でパフェ友達ですのよ! あの子は可愛いわ、そして烈も可愛い! 烈のにーに達にも合わせて貰う予定なのよ! ちっこいのにも北斗達にも会う予定なのよ! 私も愛しましょう! 私の持てる限りで、あの子達を愛します! 無論、貴史も愛します!」 と言いつつ、シャルロット王女はエミリア王女から烈を奪い、スリスリする クリストファーはそんなシャルロット王女から烈を奪い 「後は恋人と話しなさい! 婚約披露会見出来るかは君の手腕に掛かっている!」と言い烈に 「大きな鉄鍋を作ったんだよ! 土鍋は残念だったけど、ヘンリーとオリヴァーに聞いて、料理研究家とかシェフにアドバイスを貰い開発したんだよ! 後で飛鳥井の家に運ぶからね!」と謂う もう美緒と昭一郎は唖然としていた 烈は昭一郎と美緒に「もう決められし定めは大きく動いてしまっているわ! 何が起ころうとも………シャルロット王女は退かない!それに御両親は折れるしかなかった まぁ第三王女は、皇室でも離婚はあり得るし、人生経験だと想い出しなさい!と応援したらしいわ………」と謂うとエミリア王女は 「母様は兄さんの離婚、そして身分の低い女性と再婚した上に皇室離脱にぶっ倒れたから言ってるだけよ! 私はシャルロットは嫌いではないわ だから踏ん張って愛を貫いて欲しいわ! 少なくとも、政略結婚して冷えた私生活を我が子に見せるよりは……幸せだと想うわ!」と謂う 「エミリア王女、人の幸せは千差万別! 貴方が塵屑みたい想う価値が、人にはとても大切な矜持なのかも知れないじゃない! 口にしちゃ駄目よ!」 「無闇矢鱈に言いませんよ! まぁ私もヤサグレてしまいそうな日々だったので………大目に見て下さい………」 「ならば年が明けたらは生配信しようかしら?! 貴方の為に歌ってあげるわ! それかレイたんに讃美歌でも歌って貰おうかしら?楽しみにしてて! 年末年始はスケジュールが詰まってて時間ないからね………待っててね」 エミリア王女は涙を拭い笑顔になり 「楽しみにしてるわ!」と謂う 烈は美緒と昭一郎の方に向き直ると 「見届人 飛鳥井宗右衛門がこの場でお二人の婚約を確かに見届け致しました! 兵藤貴史が御両親も、それで異存は御座らぬか?」と宗右衛門の声で問い掛けた 昭一郎は「はい!異存は御座いません! ですが………我が家にイギリスの王女様をお迎えする財力は御座いません………それは御承知なのですか?」と問い返した イギリスの首相が「我が国としても御二人が御結婚なさるならば、婚姻準備資金を御用意致します!そして王女は婚姻により、御両親から相続する領地や会社も御座います! 生活に困る事はないかと…………それにご子息は政治家になられるとか? ならば王女は多少なりともご不便な生活にはなりますが、生活する上で婚姻家から生活のサポートをする者も同時に来られるので、生活は可能かと?」と答えた 美緒は「王女をやられた方が庶民の生活など無理であろう?」と謂う シャルロットは大笑いして 「何を申す!母上殿! 我等英国王室は質素倹約をモットーに生活しております! まぁ見た目は派手で、上流階級の生活を想像されると想うが………その懐事情は結構不景気が直撃するのじゃよ! 毎日晩餐して、パーティーをやっておる訳ではない! 無論、私も幾つか領地や会社を持っておる! 【R&R】とは企業提携しておるし、亭主が政治家にならずとも食わせる財力はあるのじゃよ!」と謂う 烈は「性格も喋り方も美緒たんソックリ………」とボヤいた 美緒は「気に入った!主は今日から我の娘じゃ!」と謂う シャルロットも「母上!」と気が合い笑う クリストファーが「女性は強くて怖い………」と呟いた 烈は「ロザリーも怖いわよ!」とかかあ天下なのを口にする クリストファーは笑って 「誰よりも愛しているからこそ、耐えられるが………それでも怖いのはなくならない………」と妻以外の女性は怖いと暗に謂う 烈は笑っていた 竜馬は「結婚って大変だよな………」とボヤいていた 「恋に堕ちたら、後はもう突き進むしかないから大変なんて思わないわよ!」と謂う 「俺はまだ良いかな………」 烈は何も言わなかった……… 席が整い、昼食会を開かれる 夜は晩餐会となる 昼食会には政治家や政財界のトップを走る者が招待され出席していた その中に蔵持善之助と戸浪海里、飛鳥井康太と榊原伊織も混じっていた 康太はその招待状を兄 瑛太から押し付けられたのだった 私は偶然にもこの時間帯は商談かありますから!昼食会と晩餐会を頼みますよ!と、押し付けられたのだった 康太は笑って烈を見ていた が………その顔色の悪さに康太は「伊織………」と声を掛けた 榊原も「ええ、僕も気になっていました!」と言う たが昼食会の最中は動けずに様子を見ていた 昼食会を終えると、暫しの休憩を挟み晩餐会へ移る 着換えに行く者は近くのホテルへ部屋を取り着替えに向かう 皆が席を離れると康太と榊原は烈の傍に寄った 康太が「烈、顔色が悪いぞ…大丈夫なのかよ?」と声を掛ける 「母しゃん……大丈夫じゃないかも……」と苦笑する 榊原は烈の額に手を当てると………烈は発熱していた イベント前から忙しくて………そして終わってこれだから熱を出して当たり前だった 榊原は「烈、熱出てますよ………これ以上は無理です!」と謂う 康太はまだ近くにいた堂嶋や政府関係者に向かい 「烈は熱を出していますので、これで連れ帰ります!熱を出してる人間に、我慢して堪えて過ごせ………とは言えませんからね!」と告げた 何も言わせぬ迫力をした康太の瞳に………… 堂嶋正義ですら、声を掛けられなくて………見送るしか無かった 烈は両親に連れられ迎賓館を後にして、病院へと向かった 竜馬は烈と共に出て来ていた 康太は「今日会社に出勤したら突然 迎賓館に行き昼食会と晩餐会に参加して下さいね!と、有無を言わせす瑛兄に押し付けられ送り出されたんだよ!で、仕方なく来たら烈の顔色が悪くて………驚いた!」と竜馬に話した 竜馬は「それきっと瑛兄さんに烈が泣き付いて、出席にさせたんですよ! 両親なら顔色の悪さに気付いてくれるって思ったんすよ!」と謂う 烈は康太に連れられて行く途中で、意識をなくしていた きっと限界だったのだろう……… 榊原は運転しつつ「我が子を手したら………誰にも何も言わせぬ迫力ありますからね!」と妻を想い口にする 竜馬は頷いていた 烈は飛鳥井記念病院に連れられて診察を受けた 気絶してる烈を目にするなり久遠は「入院な!」と容赦なく告げた 「イベントの最中も何度も倒れてるんだよ! 内緒にしてやったんだ、ミッチリ年末は治療してやる!」と謂う 康太は「新年の一族詣でに出られるなら後は入院でも仕方ねぇな!」と謂う 榊原も「あ、でも竜馬は年末には会社に顔を出して烈の変わりをお願いしますね!」と抜かりなく謂うのを忘れなかった 竜馬は「メンバー共々、クリス持参の鍋で作ったの食べさせてくれるなら、頑張るよ!」と謂う 「大丈夫です!其処の所は抜かりなく胃袋を掴んで離さない自信なら在りますから!」 「なら変わりに頑張るっす!」 榊原は北叟笑んでいた 烈は欠けたとしても、烈の意思を寸分違わずに繋げてくれる竜馬ならば、何とかしてくれるだろう………と思っていた 烈は無理が祟り入院になった クリストファー・オブライエンは烈が入院したと聞き、飛鳥井に泊まり込み毎日烈を見舞った 【R&R】のメンバーと竜馬は烈不在でも容赦なく飛鳥井建設の社員達の講習に突入させていた 今回の講習会は飛鳥井施工株式会社、飛鳥井設備工業株式会社の社員も参加して大掛かりな免震構造システムの講習会となった 事前に資料は渡してあるから、無駄な説明も解説もなく、【答え合わせ】的な講習会となった 案外 勘違いしてる者はいて、免震 耐震 制震のシステムが頭に入ってない様だった 其処を今回は徹底的に叩き上げ、理解出来ない社員は現場に入り一から学び直せ!と冷たい言葉を投げつけた 徹底的な圧巻の講習会に反論を述べられる社員など存在しなかった 己の未熟さや、知識不足を思い知らせ突き付けて、常識に囚われた固定観念叩き潰して改革して行く それが【R&R】流 意識改革なのだ 講習会が終わり大掃除に突入する 大掃除も【R&R】のメンバーが各部署に配置され、監視され徹底的に磨き上げさせられたのだった 掃除好きな蒼太ですら、え?え?え?嘘………もう埃なんてないってば!と成る程の徹底的な掃除の仕方に社員達は全員……… 「【R&R】って底知れぬ恐ろしさがある…………」と呟いた程だった 城田は竜馬に「烈は?少し前から見ないんだけど?」と話し掛けた 竜馬は城田の首根っこを捕まえると、廊下に出て誰にも聞こえない小声で「烈なら入院してる、多忙過ぎて何度も倒れていたから仕方ない………」と告げた 城田は「え?嘘………」と呟いた 「内緒ですよ!しろたん! 烈が入院したなんて聞いたら、どんな横槍来るか………想像するだけで怖いですからね!」 「了解した! 烈に会ったら………瀬能の事……聞きたかったんだけどな………」 「…………彼は心のケアを受けています イベントの合間を見つけて、伊織さんと康太さんと烈とで、彼の心の中へ幾度か入ろうと画策したのですが……… 無理に入れば、精神が崩壊するトラップが仕込まれていて………断念したそうです……… 今は弱った心を強くして浄化の日々を送ってるそうです 今後の対策を考えたり、イベントを進めたり、だったから限界超えちゃったんだよ………」 「…………烈を悩ませるのは………瀬能は本当に不本意だろうな………… アイツの生まれて来る筈だった子供と………年が同じだったから…………何かと烈を我が子と重ね………気に掛けていた………」 城田の本音の吐露に竜馬は言葉を無くしていた だけど明るく「さぁ掃除に戻るんですよ! 埃あったらやり直しです!」と言った 「お前等………どんだけ掃除好きなのよ! あの蒼太さんですら、ええええ!!嘘、埃もうないってば!と驚いていたじゃねぇかよ!」 「烈は徹底的に掃除をさせるからね! ヨニーや【R&R】に入社した奴なら、まず掃除の仕方から始めるからね! 掃除出来ない奴は、心も綺麗になれない!と謂われて辞めるレベルだから! 俺もメンバーも烈の綺麗好きには結構泣かされた………でも今は烈が納得の掃除出来るから、飛鳥井の掃除レベルじゃ納得したくないんだよ!」 竜馬は笑ってそう言い、その場を離れた そして大掃除終わり竜馬の総評は 「宗右衛門ならば、全然駄目じゃな!埃で死ぬレベルじゃわ!と言われちゃうよ! 四角い部屋を丸く掃除しようとしたら蹴り飛ばされるんだからね! 我等【R&R】は宗右衛門直伝の掃除で此処まで来たのだから、比べられも出来ないよ!」と謂う ヘンリーは「宗右衛門は埃で死ぬ!と言えちゃう人だから!それはそれは徹底的に掃除しないと気が済まない! 多分、父親譲りの綺麗好きだから仕方ないんだよ!」と謂う メンバーは頷いた 榊原伊織の綺麗好きはメンバー周知の事実なのだ 社員達も榊原伊織の徹底的な掃除には泣かされて来たのだ…… だがその息子は其の上を逝くのだ……… 絶句とはまさに………この事を謂う こうして飛鳥井の大掃除は終わり、年末年始9連休へ突入させたのだった 年末と謂う事もあり、新年を盛大に祝わねばならぬ事情もあるクリストファーは本国へ帰らねばならぬ現実が口惜しくて仕方が無かった クリストファーは息子のオリヴァーとヘンリーを連れて、ついでに【R&R】のメンバーも本国で新年を迎えねばならない事情を察し引き摺って自家用飛行機に乗った ヘンリーは「父様の意地悪!リーダーの傍にいたかったのに………」と悔しがったが……… 「オブライエン家次期当主として年始のご挨拶をせねばならないのですよ! オリヴァーもヨニーの顔としてリーダーの不在を勘付かせる事なくご挨拶せねばなりません!」 と………もぉ難癖に近い事を謂うのだった イーサンは「僕は本国じゃなくとも仕事は出来るのに………」とボヤいた ヘンリーは「それは狡いっては!イーサン!」と謂う ダニエルもサムエルもデービッドもフレディも頷いていた クリストファーは「私が烈との時間が取れないのに………悔しいじゃないですか! なので、オブライエン家での新年パーティーに出席なさい!」と謂う メンバーは笑って「リーダーが元気になったら生配信の準備しなきゃ!」と謂う 皆の心はリーダーを心配しつつも現実を重く受け止め、新年の年明けを想う 飛鳥井の家は年末は人口密度も多く、毎日が宴会だった 新年を迎える少し前にクリストファー・オブライエンが帰国すると【R&R】のメンバーも竜馬を抜かして帰国して少しは静かになった が、違う意味で、飛鳥井の家は訪問客が多くて………嫌になっていた 迎賓館での晩餐会には烈の姿がなくて、戸浪や蔵持は心配して康太に連絡を取ったり飛鳥井へ訪問して来た程だった 堂嶋正義や安曇勝也、そして三木繁雄も烈の不在を気にしつつも………晩餐会を無事に成功させた だから晩餐会が終わると直ぐに飛鳥井へやって来たのだった 以来、入れ代わり立ち代わり、訪問者が絶えなかった 一生は烈の変わりに敦之と貴教、拓美と拓人に連絡を取った 四人は烈からじゃなかったから心配して 「烈は?どうしたのですか?」と問い掛けた 「あ~内密にしてくれよ!烈は入院してる!」 話しても他言はしないと踏み、一生は教えてやった 烈が入院したと聞き、敦之と貴教、そして拓美と拓人は菩提寺へ自発的に戻った 城之内が「年明けと新年は家族で共に迎えなさい!」と送り出してやった が、元旦の早朝には菩提寺へ戻り一族詣での準備に取り掛かる寺の者と共に準備に追われていた 謂われてやるのてはなく、総てが自発的に行動が取れる様になった四人を見て、城之内はもう大丈夫だな………と安堵した 年末にやった餅つき大会も大成功を終えた 混乱すると思ったが、皆 事前に引換券を購入してくれ、スムーズに餅つき大会は終えられた その時も四人は頑張ってお餅の交換をしてくれたのだ その報告は城之内の倅の竜之介が烈のPCへ定期的に報告は入れているのだった そんないい風が吹いてる頃、政府は右往左往の事態を招いていた 安曇勝也は元総理大臣と謂う事で、特使として飛鳥井の家を幾度も尋ねた 事態は国際情勢を動かすやも知れぬ………と白羽の矢を立てられたのだ そして内閣調査室の唐沢も駆り出され飛鳥井詣でをせねばならぬ状態に追いやられていた シャルロット王女が来年の春、新年度前に来日して来て、倭の国で生活の準備を進めて大学に通う その為の警備網構築の為に内閣調査室の唐沢は、各方面から宗右衛門の蜘蛛の子を散らす包囲網を考案して貰えぬか?聞いてみてくれ!と頼まれ、飛鳥井へ日参して来る事になったのだ 毎日毎日やって来る輩を横目に……… 康太は「あのさ、今は無理だ!って言ったよな?」とボヤく 唐沢だって来たくて来てる訳じゃないのだ! 仕方なくド忙しいのに飛鳥井の家に足を運ぶしかなかった 年末は人も多く飲兵衛の巣窟で静かに話が出来なかったから……… 唐沢の部下が日々、飛鳥井を訪ねて来る様になったのだ そして堂嶋正義も日々飛鳥井へ、各方面から頼まれて烈と会うべくやって来る 安曇御一家は元総理大臣の肩書で、動かねばならないが………烈が心配で日々やって来ていた 戸浪も我が子達を引き連れて日々やって来る 蔵持善之助も友の一大事とばかりにやって来るのだった 大晦日に退院した烈だが、体調を考慮して、そんな輩には逢わせてはいなかった そんな忙しない想いをしつつも飛鳥井の大晦日は家族で向かえられ、清隆と玲香は目頭を押さえていた 瑛太も京香も烈の不在はクリープを入れない珈琲みたいに味気なく………皆が元気を無くするのだ だから嬉しくて目頭を押さえていた 今年は宗右衛門の体調を考慮して、一族詣では元旦の早朝にやると伝令を流した 康太は早く一族詣でを済ませ、後は静かに過ごさせたかったのだ 元旦に変更された一族詣でだが、一族の者は誰一人欠ける事なく出席した 無事に一族詣では行われた 真贋の横に座る………窶れて迫力の宗右衛門の着物を着た烈に、圧倒的な存在感を示され…… 一族の者は何も言えず………言葉もなく終わった 康太と榊原は無論だが、家族達は一族詣でを無事に済ませた烈を………ゆっくりと静かに過ごさせる為に白馬にでも行こうかと話をしていた 兎に角、来客の相手をさせるにはまだ本調子じゃない烈を心配していた そんな時にお世話になった宗右衛門が入院した事を聞きつけた兵藤昭一郎が康太に 「烈の静養を考えてらっしゃるのならば、是非に我が別邸でお過ごし下さい!」と申し出てくれた 康太はそのお言葉に甘え別邸行きを家族に問い掛けた 「飛鳥井の家にいると落ち着かねぇから、昭一郎が落ち着ける所へ一緒に逝かねぇか?と言ってくれてる!行こうぜ!皆で!」と問い掛けた 「一族詣での後では、そんなに休める期間はありませんよ?余計体力削りませんか?」 と総代の瑛太が烈を想い言う 「ならば一族詣では元旦ジャスト午前8時に開いて、1時間ちょいで終わればええやんか!」 「それは良いですね! ならば伝令を流しておきましょう! 後、一族のラインにも流しておきます!」 と言い一族詣では宗右衛門が体調が優れない為、日程の変更を伝えた そんな経緯を経て一族詣でを済ませ、兵藤の家族と合流して烈の静養地へと向かった だが何処から漏れたのか? お出掛けするのが耳に入った輩も、行きたいと申し出てバスをレンタルする事になり、ケチな烈はレンタル料を人数で割った金額請求したのは言うまでもない……… 神威は運転してくれるならタダで良いわよ!と甘い言葉で哘われ飛び付いた 神威は行き先をナビに入れて運転していた 高速で此処から先はチェーン着用とのカンバンが出て、何処まで雪国に行くのよ?とは想った バスは最初からスノータイヤで、と頼んだからスノータイヤを履いていた ナビはどんどん雪国を示して行く バスが……どんどん雪国へと向かう…… バスは……兵藤家本宅の地、大雪が降った秋田の地にいた 周りを見渡しても白 白 白 白一色の世界 白銀の世界と謂うならば聞こえが良いだろうが…… 震える程寒さ百倍の世界に身を置いたら……… 身も凍る……… バスがやっと目的地に到着して停まると、皆バスから降りた瞬間に震え上がった 烈が「炬燵に入りたい!掘り炬燵に入りたい!」と叫んだ 烈の叫びが山々に木霊する 運転席から降りた神威が「鼻水さえ凍る!早く家に入れさせろ!」と怒った 鷹司と阿賀屋と毘沙門天はブルブル震えて……… 昭一郎は苦笑して別邸のドアの鍵を開けて、皆を中へ入れた 少し行けばスキー場が有ると謂う 温泉もあるし、養生するには良い場所ですよ! と昭一郎に言われやって来たのだった だが寒過ぎて………… 皆一目散に家の中へ飛び込んだ 兵藤が「めちゃくそ久しぶりやんか!」と言いレイ達ちっこいのの雪を払い上がり端に乗せて行く 昭一郎が「客間の方へどうぞ!管理させてる者に部屋を暖めて置くように申し付けております!」と謂う 客間へ案内されるとと烈は、横に長い掘り炬燵を見付け「おコタ!!」と喜び飛び込んだ 翔は「烈の部屋にもおコタあるもんね!」と炬燵に入り謂う 榊原は「え?烈そんな事をしていたのですか?」と呟いた 流生は「烈は寒がりさんだからね、冬は炬燵にミカンと言ってるんだよ! 僕達も烈の部屋の炬燵に入り行くのよね!」と謂う 音弥も「落ち着くもんね!烈の部屋!」 太陽も「そうそう、だから烈がいないと淋しくて寒いのよね!」と弟を抱き締めた 掘り炬燵に入ってるレイと凛と椋が「「「じゅるい!」」」と声を揃えて謂うと、兄達はちっこいのも抱き締めた 昭一郎がミカンをザルに入れて持って来た 美緒は玲香と熱々の茶をずずーずーと啜っていた 兵藤はちっこいのと翔達に 「後でスキーを教えてやる!」と謂う レイは「ちゃむいと………れちゅ………こんこんちゅる!」と謂う 烈は「レイたん、折角の雪国にいるのよ! スキー教えて貰っておいでよ! 因みにボクはスキーはオリンピック選手級に上手いわよ!」と謂う 康太は「だな、宗右衛門の速さには誰も追いつけねぇかんな!」と謂う 榊原は「魂が覚え刻んだ事なれば、今世も寸分違わずに出来ますからね!」と言う まぁ昔は温暖化現象なんて皆無の文明の発達していない世界だったから、雪は降ればかなり積もる世界だった だが有り余る雪があるのだから、冬は豪雪地帯に行きスキー三昧して過ごしていたのだ 真贋とその友人を連れて一ヶ月以上、雪国に家を2軒借りて過ごすのが定番になっていた そんな宗右衛門はスキーの腕前はプロ級で、今もそれは健在だろう まぁ元気ならば、の話だが………… 烈は炬燵に入ったまま 「ボクは温泉を楽しむわ! だからりゅーま、にーにやちっこいのを連れて後でスキー場へ行って欲しいのよ!」と言う 竜馬は「烈は?」と聞く 「ボクは無理よ………雪に耐えられるだけの体してないもの……… でも、ボクは温泉に浸かりジュース飲むから!」 竜馬は笑って「ならスキーを仕込むよ!烈直伝の滑りを教えるね!」と謂う 兵藤は「竜馬滑れるのかよ?」と問い掛けた 竜馬は「当たり前じゃんか!烈はちっこい頃からスキーの腕前はプロ級で、スパルタで教えられ滑れる様になったんだよ!」とボヤく 一生と慎一は「「俺等もサポートに入るから!」」 と謂う 聡一郎と隼人は「「なら温泉で養生する方で!」」と謂う 烈は「神威、行っておいでよ!」と謂う 神威は「雪で焼けるじゃろうが!ハワイ焼けならまだしも、スキー焼けしとうないわ!」とボヤく 「あ~、やっぱ歳だから、竜馬も兵藤きゅんもかなり滑れるからね、負けちゃうから滑りたくないわよね……」 負けん気の強い神威の気質を知っているから、敢えて挑発する様な事を謂う 「何を!儂は大地に、雪に味方されし奴じゃから負けはせぬ!」 「なら後でスキーしなよ! えーちゃんやじーさんは滑れるからね 一緒に行って還ったら温泉にお盆浮かべて入れば良いじゃない!」 「なら儂の本領発揮を見せてやるとする! レイ、凛、椋、主らを背負い滑ってやるとするわ!」 レイ、凛、椋は「「「わぁーい!」」」と喜んていた 烈は「昭ちゃん有難うね!静養に連れて来てくれて、本当に有難うなのよ!」謂う 兄達も北斗達もちっこいのも、昭一郎に深々と頭を下げ【ありがとう!】と礼を述べた 阿賀屋は「スキーか、宗右衛門はめちゃくそ早く滑れたよな、今は無理は出来ぬ故、我等が滑り倒してやるとするわ!宗右衛門の分もな!」と謂う 鷹司も「そうそう、宗右衛門の分も滑り倒してやるとする!じゃから主は温泉で養生されよ!」と続けた 何だか腹立つ! 酒が飲めぬ宗右衛門の代わりに飲んでやる!パリの台詞に腹が立つのだ 皆 お昼を食べてから歩いて行けるスキー場へと出掛ける 元旦の朝、一族詣での後に出掛けたのだ 秋田に到着したのは昼少し過ぎた頃だった 皆がスキー場へ出向くと、烈は聡一郎と隼人と近くの温泉へと出向き、温泉入り癒される その夜は、飛鳥井から大鍋を持参して榊原は料理を作っていた 此処へ来るまでに市場で野菜や新鮮な魚は大量に買い付けて来たのだ 竜馬は「手伝うっす!」と兄達と一緒にお手伝いをした 辺りはすっかり暗くなっていた 雪国の夜は早い 皆で鍋を食べ、大人は宴会へ突入させた 美緒と玲香も楽しげに飲んていた 康太は昭一郎に「良い家だな!」と言った 昭一郎は「この家は戸浪に本家の土地を渡した時に、代価もなしには貰えません!と謂れ建てられた家なんですよ! 普段は信頼のおける者に管理を任せています! もう選挙も地元で地盤を引き継ぐなんて方式はしてませんから、この地に拘らなくても良いのですが………やはり父 丈一郎が愛した地ですから……… 有り難く代価として戴いたのです!」と話した 「戸浪は律儀な奴だからな………そうか、一族は絶えても家は残ったんだな 何もかも無くしてしまったのか………と悔いてはいたんだ……」 「真贋………私の政治生命も後少し………次の選挙では負けるでしょう……… 後は倅に任せて………不甲斐ない親ではありますが託すつもりです」 昭一郎が謂うと烈はガハハハハハハッ!と笑った 昭一郎は「どうされたのですか?烈………」と問い掛けた 宗右衛門の声で「真贋がそんなに簡単に楽になどさせてはくれぬぞ!」と言った 康太は「解ってるやんか!宗右衛門!」と言った 「昭一郎は今一度、竜馬に意識改革をやらせ、獅童に教育させ政界の重鎮として座っていて貰わねばな!近衛の小童も政界に入る故、手助けしてやってくれると助かる!」 「近衛………世代交代致しますか?」 「あぁ、世代交代の次期じゃならな! 何直ぐではない、バランサーとして力も力量も足らぬが、必ずや近衛のポジションに収まるべく存在となる! 近い内に主にも逢わせてやるとしよう!」 宗右衛門が謂うと鷹司は「教育?もう政治家じゃろうか!どうせぇ謂うのよ?」とボヤいた 「経済戦略を叩き込め! 期限は半年! 徹底的に経済に強い政治家に仕上げるがよい!」 「あ~、お前………今簡単に言ったな!」 「吐いた言葉は覆りはせぬ! 頑張るがよい!獅童!」 と言いガハハハハハハッ!と笑い飛ばした 鷹司は「半年しかくれねぇのか! ならば横浜に還ったらその晩から通え! 年を越したから新しい書生も迎えねばならぬ準備もせねばならぬから、良い機会やも知れぬな! 誠………憎い奴め!タイミングを計りおって!」 と言いやけ酒を煽った 阿賀屋は「諦めろ!獅童!宗右衛門は昔から無茶振りが過ぎる奴じゃねぇかよ!」と謂う 鷹司が「あ~もぉ〜やってられねぇ!」と言い飲みまくっていた 榊原は烈の半纏を着せて、熱を測った 体調は落ち着いているが、無理はさせられなかった その夜は楽しい宴会が夜明けまで行われ、子供達は早々に部屋に行き寝た 北斗は烈の横にお布団を敷いて、烈、レイ、凛、椋に星座のお話をしてやった 兄達もその話を聞きながら、眠りに落ちた 朝、起きたら竜馬が烈のお布団に入り込んでいた 道理でぬくぬくだったのか……と想った 烈は「りゅーま、どうしたの?」と問い掛けた 竜馬は「寒いから烈のお布団に入ったんだよ! 昔………よく添い寝してくれたじゃないか!」と謂う 烈はニコッと笑って「ぬくぬくだったわ!でもレイたんがポカポカ竜馬を叩いているじゃない!」と謂う レイは「じゅるい!りゅーたん!」と怒っていた 竜馬はレイもお布団の中へ入れて抱き締めた レイは満足な顔で笑っていた 「レイたん、スキー頑張るのよ! そして知らない人には着いて逝かないのよ!」 「わかっちゃ!ちらないちと、ちゅいていかにゃい!」 竜馬は「そうだよ、レイは可愛いから連れて逝かれちゃうからね!凛も椋もちっこいのはイケメンだから心配だよ!」と謂う 凛は「ちゃむい、こおりゅ!」と布団から出たくないと謂う 椋も「ゆち、ちろいのに、ちゅめたい!」と嘆く 本格的な雪はちっこいの達は知らなかった 最近の横浜はあまり雪は降らないからだ……… 何十年かに一度のドカ雪は、レイ達が来てから一度も降ってなかった だからこんな本格的な雪は初めてだった 布団から出たくないちっこいのを布団から出して、兄達や北斗達は頑張って着替えさせ歯を磨きに逝かせた トラベル用に歯磨きセットをリュックから出して、歯ブラシと歯磨き粉とタオルを手にして洗面所へ行く ブルブル震えながら歯を磨き、お部屋の掃除をする 洗濯物は還ってから飛鳥井の家でやる為、その日数分の着替えをリュックに入れて来たのだった レイは兄達に買って貰った烈に似たキャラのコップを手にしていた 歯磨きが終わると洗って拭いて、リュックに戻す 凛と椋は手伝って拭いてやる レイは「りん、ちゃむいとこ、だいじょうび?」と聞く 凛は「ちゃむいけど、ゆち、はじめてらったから! もっとたのちみたい!」と謂う 椋も「ちょーね、ゆち、はじめてらったね! ちらちらふりゅのはみたけど、ぼっぼってふりゅの、はじめてにゃのね!」とワクワク謂う レイが「たのちもー!」と謂うと凛と椋も「「おー!」」と謂う もうすっかり兄達の影響は受けていた 烈は半纏を着て、聡一郎と隼人とお茶を啜っていた 神威は阿賀屋と鷹司と清隆と瑛太とスキー場へ向かって行った 慎一と一生は兄達と北斗達とちっこいのを連れてスキー場へ行く この日の為にスキーウェアを全員分用意したのだった 本当なら烈の分も………と言ったが、烈は無理だから要らない!と言った 康太は烈が体力を温存させておきたいのだと、知っていた そろそろ再び、瀬能の意識の中へ入ると決めているのだろう……… それには体力を温存させておかねば、ならないのだ 康太も榊原と共にスキー場へと向かう 兵藤も昭一郎と美緒と共にスキー場へと向かった 烈は掘り炬燵に入りお茶を啜り 「龍騎ちゃん、雪女の式神飛ばして!」と天を仰いで謂う 『それは容易いが………よりによって雪女とは……』 「元旦の昨日から秋田にいるのよ、レイたんやにーに達に何かあったら護って欲しいのよ それには雪女しかいないのよ 後は雪見ただけで動かないじゃない!」 『承知した!今直ぐ飛ばすとする!』 その言葉通り、直ぐ様目の前に雪女が現れた 部屋の中が凍て付く……… 烈は「にーに達、レイたん達、北斗達を護って! 後、ボクの家族や友人も護り通して!」と指示を出した 雪女は『承知した、久々の雪の世界じゃから、楽しみつつ護るとする!』と言い消えた 聡一郎は「雪女………雪女と謂うよりも、映画の語の世界に登場するエルフみたいじゃないですか……」と初めて雪女を目にして謂う 隼人も「消えそうな程の美人なのだ!」と謂う 「前世に青森の山の中であの雪女と逢ったのよ 凍らされ殺されかけたから、頭に来て説教して懲らしめたのよ そしたら許して!と言ったから式神になるなら許してあげるわ!と言って契約したのよ 雪崩でもおこされたら………一巻の終りだからね 何か起きたならば雪女が助けてくれるわ まぁ大歳神がいるから根っこ伸ばして何とかはしてくれるだろうけど…相手は雪だからね」 「雪崩か………一巻の終り狙うなら遣りかねないね」 聡一郎は嫌がらせをするのならばタイミングはバッチリ今だろう!と想った 夕方、皆がスキー場から還って来た 何事も無く帰還して烈はホッとしていた 雪女はスキー場の何処かで過ごし、烈が帰るまで家族を守る為にパトロールしてくれるだろう その夜も大鍋で榊原は料理を作った 皆で鍋を食べて楽しいひと時を過ごす 烈は「昭ちゃん!」と名を呼んだ 昭一郎は烈の横に来て「何ですか?」と問い掛けた ここに来て随分顔色が良くなった烈の姿に、昭一郎はホッと安堵の息を吐く 「2月になったらボクはイギリスに行くのよ 兵藤きゅんが世話になったお礼をロードに言いに行くのよ! その時、昭ちゃんと美緒たんも来ると良いのよ その目でイギリス皇室の生活ぶりを見ると良いのよ!質素倹約は先代の女王の願いでもあってね 結構地味な暮らししてるのよ まぁ表に出て来るのは、パーティーしてる映像多いから勘違いしてるかもだけど………」 「え?御一緒させて下さるのですか?」 「見えない世界は恐怖だものね 兵藤きゅんの運命を導いた者として、責任は取るわよ!」 「烈……」 「まぁイギリス皇室観光ツアー的な感覚で行けば良いのよ!」 烈の言い分に竜馬は頭を抱えた そんな楽観的になれる人間など滅多といないのだから……… 「烈、ハードル高い事を結構低くしてやったぜ!的に言わないの!」 とフォローを入れた 「え?そんなに気にしなくても、別に命は取られる訳じゃないのよ まぁボクに刃を向けるなら………それは命を覚悟しなくちゃいけないけどね!」 「んな事謂うなら伊織さんにお尻ペンペンして貰いますよ!」 「それは嫌なのよ………」 と涙目になる 榊原は烈の所まで行き、優しく烈を抱き締めた 「弱ってる子にお尻ペンペンはしませんよ!」と謂う 「だけど昭一郎さんも美緒さんも不安なんです 其処は優しくフォローが必要ですよ!」 「解ってるわ父しゃん だからイギリス皇室に連れて行って、自分の目で見れば良いのよ! 何かとスキャンダル多い皇室だからね……… エミリア王女も言ってたでしょ? 今火中の栗は第三王女の息子の皇室離脱と再婚 それで母親はヒステリーに叫び倒れて……を繰り返してるそうだからね まぁ人の幸せなんて千差万別! 幸せは己の手で掴み取り、毎日花に水を与える様に愛して慈しまねば萎れて枯れてしまう ボクはね、本当に父しゃんと母しゃんの子として生まれて来て良かったのよ 愛されて育つと謂うのは……魂が揺らがない絶対で育てられているんだからね!」 「烈………」 榊原は烈をギュッと抱き締めた その上に兄達が重なり抱き締めた 本当に仲の良い親子だった 昭一郎は「本当に飛鳥井の子は羨ましい程に愛されててますね、家族も仲が良い……」と謂う 康太は「お前んちも愛情深く育てているから、兵藤貴史と謂う立派な青年が生まれたんじゃねぇのかよ?お前と美緒が愛して育てたからだろ?」と言い笑う 「真贋……」 「それにお前………今年からかなり忙しくなりそうだな!」 康太は昭一郎の果てを視て謂う 昭一郎は「え?………それは?」と恐る恐る問い掛けた 「お前、烈の齎す意識改革と再教育が見事にハマり、一気に天羽派の中心に返り咲くかんな! 堂嶋が総理やる頃には派閥の枠を超えて内閣入りだな!すげぇな宗右衛門は………」 と既に決められし未来を口にする 美緒は「それは………既に決まった事なのかえ?」と問い掛けた 「だな、もう既に盤上に上がった未来だから口にした!不確定な未来など、オレは口にはしない! 決められし理があるかんな!」 美緒は深々と康太に頭を下げた 康太は「辞めろよ!飲兵衛が酒が不味くなる!と怒り出すぞ!」と笑って言う 阿賀屋が「そうだぞ!んな所で止めてくれ! 我等は宗右衛門がまだ飲めぬ故、代わりに飲んでやっているんだからな!」と言う 鷹司も「そうじゃ!宗右衛門がまだちっこい故、代わりに飲んておるのじゃ!」と言う 神威は「お前等は飲みたいだけじゃろ!」とボヤく 阿賀屋は「何を言うか!我等は盟友の為に身を削り骨身を惜しまず明日へと向かう誓いを立てておるのじゃよ!」と謂うと鷹司も 「そうじゃ、我等盟友、友の為に出来ゆる事はする!じゃから何十年も取ってはおらぬ書生だとて取るのじゃよ!それも総ては我が友の為!」 二人は杯を高く掲げると「「友の為に!」」と言い乾杯をした 康太は「んとに大義名分掲げる飲兵衛程、厄介な奴はいねぇな!」とボヤいた 一生や聡一郎、隼人と慎一は頷いていた レイが昭一郎の所までやって来て「しょーたん!」と謂う 昭一郎はレイを膝の上に乗せて「何か食べたいのあるかい?」と聞く レイは手を左右に広げて 「れいね きょんにゃに おおちぃ ぱふぇ たべちゃいの!」と謂う 昭一郎はフリーズして「そんな大きさのパフェ有るんですか?」と謂う 竜馬が仕方なく説明をする 「我等【R&R】は結構リーダーを喜ばす為に、タライサイズのかき氷食べたり、ちゃんこ鍋サイズのパフェ食べたりしてるんですよ! レイもちゃんこ鍋サイズのパフェ食べた時いたので、それを言ってるのでしょう!」と言う 康太は「なんてぇの食べてますの?」とボヤいた 烈は「タライのかき氷は頭痛くなって大変だったわね!食べてキーン、食べてはキーンで本当に辛かったわ!ちゃんこ鍋サイズのパフェも食べても食べても底が見えなくて辛かったわね!レイたん!」と思い出し言う レイは「れも おいちきゃった!」と笑顔で言う 聡一郎がレイを連れに来て 「パフェも良いけど、自分の分の食べようね!」と席に戻した レイは烈に似たキャラの御椀を手に鍋を食べていた 飲兵衛は楽しく飲み、清隆も瑛太も楽しく飲んでいた 秋田二日目の夜も……賑やかな声が響いていた 秋田には5日の昼に帰る そして翌日 1月3日の朝 兵藤の秋田の別邸に来訪者が訪ねて来た 康太は応接間に通された来訪者を見て、眉を顰めた 「5日の夜には飛鳥井にいる! それまで待てなかったのかよ?」 来訪者は「待つのは構わない、ならばせめてライン位返して下さいよ!」も文句を垂れた 「休暇中は私用のラインしか対応しねぇ事にしてんだよ!」 「本当に意地悪ですね! 直ぐに宿に戻るので我が友烈に逢わせて下さいよ!」 「なら烈にラインすれば良いやんか!」 「彼はイベントの後連絡が取れません! 竜馬さんにライン入れたけど、烈?知らないよ?との事なので埒があかないので来ました!」 「お前達………どうして解った?」 「我等内閣調査室をナメないで下さいよ! と言いたいですけど、今回は東堂御影氏が 『烈?烈なら雪国にいるらしいよ! 今回本当なら俺とヨーコも行きたかったけど、俺等は今台湾から動けないので………行けなかった………』と残念がってました で、雪国と謂う事で白馬を真っ先に洗いました! 白馬にいないので、東北のスキー場を虱潰しに調べ、この近くのスキー場にレイに似た子を発見したとの事で、張ってたら皆が来たので後をつけました! 俺も苦しい立場なんですよ! 仕事がめちゃくそ溜まってるのに、烈捜索班にいれられコンタクトを取らねばならない立場なんです!」 と苦しい立場を訴えた そう、突然の訪問客は内閣調査室の唐沢班のメンバーだった 仕方なく康太は唐沢に内情を話してやる 「烈は大晦日の前日まで入院していた この地にいるのは兵藤昭一郎氏が烈の静養の為に取り計らってくれたから、だ!」 唐沢は驚いた顔をして……… 「ひょっとして晩餐会には不在だっと聞くので………その日からですか?」 「そうだ、イベントもあったし、烈は精神を病んで入院してる者の精神の中へ入ろうとして体力を削ってしまったんだ……… そして近い内にもう一度入る気で、今体力を温存してるんだよ!」 「その者はひょっとして………瀬能和寿氏ですか?」 康太は顔色を変えて「何故知ってる!」と声を張り上げた 「我等は今 闇献金のルートを追っています! 大仏武士が発端の闇献金ルートと使途不明金を解明しています! そして飛鳥井のモデルルームを放火した女 あれも調べたら、烈の仮説通り大仏の女の息が掛かった女だった 売春組織の顧客データ、そして莫大な資金 其れ等を追って目が回る程に多忙なんです! で、その瀬能氏、どうやら大仏の女のカモでした 烈が名簿を隈無く探って『瀬能和寿』がいたら教えて!と言ってたので、調べました その報告もあるし、前回話した様にシャルロット王女が留学なさるならば、警備上の警戒網を今一度考え直さねばならないので、アドバイスを欲しいと各方面から謂われてまして、絶対に宗右衛門殿にアポを取りアドバイスを貰える様に動け!と言われてるんですよ!」 康太は「だってよ、烈?どうするよ?」と尋ねた 唐沢達、班の皆は【え!!いるの?】と驚いていた 烈は………気配を消して康太の横に最初から座っていた 烈は「そうね、警備網は来日前には打ち出して、訓練しないと駄目だから考えているのよ……… その為のセキュリティ万全なマンションを那っちゃんが建ててくれたんだもん! 其処を起点に大学まで安全ルートで逝ける様に、との事で閣下と連絡を取ってたから車で一本で逝ける様に警備も万端に………と想ったのよ でもね、ビルの上、街路樹の影、大学構内、毎日の事だから、何処へ逝かせたら最適解に導けるか?考えていたのよ! それより早くシャルロットが留学決めやったのよ!せめて来年じゃ駄目なのか? あ~腹が立つ!恋は盲目なのね 離れていたくない!盗られちゃう!と突っ走りやがって!」と毒づく 康太は我が子を抱き締めドウドウと落ち着かせた 榊原も兵藤も竜馬もやって来て席に着く 一生がお茶を持って来て出て行こうとするのを、烈が服を引っ張って止めた 「カズ……やっぱ瀬能ちゃん………意識弄られていたわ………」と謂う 一生は驚愕の瞳を烈に向けて……… 「嘘………接点なんてねぇじゃねぇかよ?」と呟いた 唐沢が「大仏の女の顧客でした瀬能氏は………」と伝えた 一生は「カモにされていたのか?」と呟いた 烈は苦しげに自分の服を握り締めていたから、唐沢が変わりに説明する 「飛鳥井建設の人間を狙っていたんてしょうね……多分 そしてそのターゲットにされる程、彼の心は弱っていた 瀬能氏は結婚直前の恋人を亡くした 多忙な瀬能氏を気遣って恋人は、瀬能氏が危険だと謂うのに大丈夫よ!夫を気遣い妊娠5ヶ月の定期検診に行く為、交通機関を使いバスに乗り出掛け………運悪く病院間近の道路が突然陥没して……穴の中にバランスを崩したバスの車体が転落…横転……その衝撃でかなりの死傷者を出した 瀬能さんの彼女さんはお腹の子共々亡くなりました 陥没に巻き込まれたバスに何台もの車が落下して、かなり大規模な事故になりました 12年も前の事故です!」 と言いタブレットを取り出し、当時の事故のニュースをテーブルに置いた 「小野紗理奈 (24)この方が翌月挙式予定だった瀬能氏の恋人です! 彼女の両親と謂う方が結構厳しい方でして、中々結婚に諾と申されず………妊娠5ヶ月まで来てしまいました! やっと御両親が折れて挙式をする事が決まり、順風満帆な門出となる所でした が、瀬能氏の恋人は即死でした お腹の中の赤ちゃんも………死んでいて……瀬能氏は妻となる人と我が子を一度に亡くした訳です それ以来、廃人の様に生活し周りはかなり心配していたそうです……… 瀬能氏の恋人の両親ですら………娘を此処まで愛してくれて有難う………だがもう君の人生を送ってください!と謂う程に………後を追いそうだったそうです! 飛鳥井建設に来たのは幼稚園からの友達であった愛染恭輔氏に誘われ入社したそうです! その後 城田琢哉氏とも仲良くなり元に戻った風には見えてましたが……… やはり心と謂うのは一縷の寂しさの中に隙が生じ………亡くなった恋人に良く似た女性を与えられ懐柔された、と謂うのが全容です 何故 瀬能氏にコンタクト取って近付いた?と問い質した所、大仏からの指示だったと答えた 大仏は指示を持って来る奴からの指示だと答えた 大仏武士と女は今 精神的呪縛から解いて何者も侵入出来ない中へ入れてある 命の保証をしてくれるなら…………と答える様になった、と謂う訳だ で、大仏は指示を持って来る奴は声しか聞こえないから、何処の誰かは分からない、と答えていた が、最近は神取とか謂う男が指示を持って来ていたそうだ!」 烈は「心の隙間に漬け込まれたのね…………やはり愛してるのは彼女だけだから似たの来たら揺れるわよね………本当に胸糞悪い事しやがるわね!」と吐き捨てた 唐沢は「烈、警備システムの方、考えてやってくれないか?」と謂う 「警備システムは去年から閣下と共に構築しつつあるのよ! でも警備も予算があるじゃない! 税金投入する訳だからね! だからイギリスからの警備の人数とか調整してる段階だったのよ! 警備網だけ敷いていても、人は何処にでも紛れ込めるのよ! 大学構内なんてまさにザル状態だからね だからこその準備が必要だったのよ!

ともだちにシェアしよう!