22 / 62
第22話 雪国 そして日常へ
それを、恋に目がくらみやがって!!
あ~本当に腹が立つ!!
それがどんなに大変になるな知りもせずに!」
また怒り出した烈を一生が、背中を擦り
「落ち着け!烈!」と宥める
兵藤も「ごめん烈!」と謝罪した
「ガス…………」烈は一生に宥められ落ち着きを取り戻した
「八つ当たりだから………解ってるわ!
兵藤きゅんの所為じゃないのよ……
シャルロットを倭の国へ逝かせようとしてるのはエミリアなのよ………多分……」
烈が謂うと竜馬は「だろうね!」と謂う
兵藤は「何故なのか?教えてくれないか?」と頼んた
竜馬は少し考えて………覚悟を決めた瞳をして話し始めた
「シャルロットは皇室内の空気が嫌いな人なんだよ!
社交界の場にも中々姿を見せない人なんだよ!
まぁ公務は絶対に出ないと駄目だから出るけどね、それ以外はそう言う場には出ないんだよ
貴史と出逢わせる為にあの日は無理矢理親が連れて来たんだよ!
ロザリーは女王の妹だからね、位が高い方からのお誘いは絶対に断れないんだよ!
強制的な場にしかシャルロットは出ない
それ程に皇室と謂う場に幻滅しているんだ
それはエミリアも同じだよ!
エミリアの母親 第三王女である母親が最近ではヒステリー起こして、シャルロットの婚姻もぶち壊そうとしてるんだよ!
だから婚約を正式に発表して倭の国へ行きなさい!………とエミリアが応援して両親を説得させた
まぁ第一王女と第三王女はあまり仲良くないからね………自分の子が一番なんて想いは強い
それが今 エミリアに向いている
エミリアに良家の男と結婚しろと迫っている
そして第一王にも難癖を付けている
第一王女の息女なんだから公爵クラスの男しか下品さが目立ちますよ?なんて日々嫌味を炸裂させているらしい!
だから第一王女は倭の国への留学も認めた
と謂う人の醜い思惑もあるのさ!」と説明した
兵藤は言葉をなくしていた
康太と榊原は辟易した顔をしていた
烈は「飛鳥井へ転生する前は母しゃん達はイギリスにも転生されたんでしょ?王女と謁見した時に言われたわ!」と謂う
康太は「まぁな各国に転生したからな………
その中でもロシアとイギリスが一番キツかったな
まぁ宗右衛門と同時転生よりは楽だったけどな」と笑って言う
宗右衛門は「じゃから今世は楽させてやっておろうが!」とボヤいた
榊原も「銃弾より速く走れ!とか言われたり、腹下る水を慣れじゃ!と飲まされたり、滑られぬならば仕方ない!
さぁソリに乗るのじゃ!と乗せられ無茶苦茶走るから転がり落ちて雪だらけさせられ、意地でも滑れる様になったりと散々でした!」とボヤいた
烈は「…………」と言葉を無くしていた
まぁ無茶振りはした
沢山した
しまくった!
が、こうして謂われると………結構最低じゃないか…………
康太は笑って「それも楽しい思い出の一つ一つだかんな!」と謂う
榊原も「そうですね、それより警備網はとっくに出来上がっているのですか?」と問い掛けた
「そうね、警備網と警備システムだけなら、もう構図は上がっているのよ!
それに色を付けて、肉を着けて、その地域を警備に当たる人数の算出して弾き出したり
大学付近、シャルロット王女の家付近、そして使う道路付近の統計的な人口、集客、観光客の統計や、隠れるとしたら?と謂う危険回避を見越している最中なのよ
家を特定されるのも時間の問題だとしたら、狙われるのも時間の問題なのよ!
其れ等を総て見越した上のリスク回避を考えないとなのよ!
唐ちゃんが宗右衛門に聞けと言ってる部署の奴等が何れ程リスク回避を弾いてくれるか解らないけど、机上の空論だと確実に死人は出るわよ
ましてや王女狙われたら、倭の国の警備システムや安全保証は皆無の能無し集団のレッテル貼られるわよ
其処んとこ解ってるの?」
唐沢は言葉もなかった………
竜馬が烈の言葉に続く様に
「留学と謂う事はイギリス王室 第一王女の御息女と謂う肩書はバリバリ生きてます!
そして婚姻した後も、シャルロット王女は皇室から離脱はなさらない!
御公務はきちんと熟し、兵藤貴史の妻として生きられるつもりだ!
皇室離脱は烈が許さないからね!
シャルロットは絶対に皇室に身を置く事になる!」と謂う
唐沢は「御結婚成された後も皇室の一員として生きられるのですか?」と素朴な疑問を投げかけた
竜馬は皮肉に唇の端を吊り上げ
「それがシャルロットが生きる為の保証だと、烈の占いの結果だから!
イギリスの占いの乙女も同じ結果を出された以上、それは覆りはしない!」と告げた
唐沢は本当にこの師弟は似過ぎてて………
腹立つ!と想うのだった
唐沢は「ならアドバイスを頼むよ!」と謂う
「アドバイスも警備網もとっくの昔にしてるわよ!其処まで下りてないだけなのよ!
まぁ予算があるからね………今は上で協議してるんでしょ!それが現場には見えて来ないから右往左往で大慌てになってるだけよ!」
「…………烈、おじさんは疲れたんだ!」
「まぁ近衛の周りの警備網もレベルを上げて行けば、人手は足らないわよね!」
「知ってるなら教えてよ!」
「教えたら殺されちゃうじゃない!
近衛の倅は殺されたのよ!
そして今、養子になるべく存在を死に物狂いで探しているからね
解れば呪詛でも吹き込みそうだし、事故死に見せかけてご子息殺した遣り口で、再び殺されては堪らないのよ!」
「………事故死じゃないのか?」
「何代目かのモナコの女王は事故死じゃない様に、事故死に見せかけて殺そうとするプロもいるのよ
でも大丈夫、今更ながらだけど、近衛明嗣氏の倅を殺した奴等は………キッチリ命の代償を回収してやったから!」
と、冷酷な笑みを浮かべられ…………背筋に冷や汗が垂れる程に………ゾッとなった
康太も「人の命を狙うなら、己を命を覚悟しねぇと代価は刈り取られても文句は言えねぇかんな!」と謂う
「そうなのよ、母しゃん!
えんちゃんと閻魔帳で確かめて重ねた罪の数だけ寿命を奪ってやったのよ!
もぉ尽きるんじゃないかしら?」
「それは自業自得だかんな、仕方がねぇな!」
「しかもね近衛の一族に【罪の代価は宗右衛門がキッチリと回収に伺う!】と流布させたからね
病死が相次げば……それは一縷の恐怖と化すのよ
徹底的に黙らせて、徹底的にやらないと伏魔殿に入れる様なモノだものね………」
「だな、ならば真贋のオレも揺さぶりかけておいてやんよ!
近衛貴也に何かすれば………その命、即座になくなると思え!とな!」
「母しゃん!」
「烈!」
仲の良い親子は抱き合い、分かち合っていた
そしてニッと嗤われ、敵に回したら絶対に駄目な奴じゃねぇかよ!と唐沢達は想った
烈は母から離れると「唐ちゃんも維弦も班の子達もおいでよ!鍋を父しゃん作ってくれるから!
あ、でも………」
会費を聴取しようと提示しようとする烈の目の前に、突然雪女が姿を現した
『烈、山奥に雪崩を仕込ませた後があったわ!
今日は吹雪の予定なのに………何故か気温が少し上がり水分含んだ雪なってるから………地盤は緩むわ!
そしてその上に新雪が積もれば確実ね!』
「なら明日は雪崩、警戒しないと駄目そうね!」
『ええ、貴方達がスキー場へ来て上へ上がれば、雪崩は起きる仕組みだと想うわ!』
「有難う雪ちゃん!助かったわ!」
『私は宗右衛門の為に存在してますから!』
フフフと笑い雪女は姿は消した
烈は「母しゃん………」と謂うと、康太は嗤い
「神威!」と客間まで行き神威を呼んだ
「あんだよ?康太!」
「あのさ神威、お前、夜になったら根っこで雪崩の区域の雪
全部落として来いよ!」
「簡単に申したな………しかも夜にやるのは寒過ぎじゃろうが………」
「ならさ、仕事終えたら大海原山大吟醸開けてやんからさ!」と神威を擽る
神威は立ち上がると「うし!なら夜になったら雪崩を起こすとする!
それまで滑りまくるとする!」と謂う
清隆も「今日までしか滑られるのならば、思い残す事なく滑りますかね!」と立ち上がりスキーウェアーを着込みスキー場へと向かう
瑛太も榊原も康太も榊原達もちっこいのも兄達も北斗達もスキー場へと向かった
唐沢は「夜になったら来ます!」と言い宿を出て行った
烈は温泉に入り英気を養っていた
一頻り滑り夕刻になると皆 屋敷へと帰って来た
夕方になると唐沢達もやって来ていた
「あの~、話はまだ終わってないんだけど……」
唐沢としても明確な答えを聞かねば還れないのだ!
具体的に何をどうするか?聞かねばならないのだ
唐沢が言うと康太が「まずは飯だ!」と謂う
夕飯が終わると皆 酒を飲み始めた
何故か、唐沢達はお茶でぬくぬくの部屋にいた
夜もだいぶ更けると康太は「神威お仕事だ!」と謂う
神威は「大吟醸、忘れるなよ!絶対じゃからな!」と言い毘沙門天の首根っこ掴み、ズンズン歩いて行った
気配を消していたルーとスーが姿を現し
「人がいたら不味いから蹴散らすか?」
「其れより目隠しした方が早いでんがな?」と謂う
烈は「ルーは人を遠ざけて、スーは目隠しかけて!」と謂う
スーは「ガッテン承知之助!」と言い姿を消した
ルーは「烈、暖かい酒、僕達も頼みます!」と言い姿を消した
クーとプーは「「俺等も行くか?」」と聞く
烈は「動いちゃ駄目よ!」と謂う
康太は「全員いたのかよ?」と問い掛けた
「いたのよ、でも雪国じゃない
何かあった時の為に姿を消して貰っていたのよ!
ルーとスーはスキー場にいたのよ
プーはにーにの傍にいたわ!
クーたんはボクと温泉に入り、ぬくぬくで過ごしていたのよ!」
聡一郎と隼人も頷いていた
烈は「やはり雪ちゃんに頼んで正解だったわね」と謂う
その時 ドォォォンと轟音が鳴り響き
ゴォォォォォォと謂う地響きがした
警報がけたたましく鳴り響き、パトカーが
【緊急事態発生、雪崩がおきました!
絶対に外には出ない様にして下さい!】と警戒を促していた
榊原は「雪に仕掛け………どんな細工したんですかね?」とボヤく
烈はタブレットを取り出すと、既に調べていたのか、そのページを表示した
「ここに来た晩 めちゃくそ吹雪いていたじゃない、だから翌日ボクは式神の雪女を紫雲に言って飛ばして貰ったのよ!
そして雪ちゃんにはスキー場の警戒を頼んだのよ
まぁ明日スキー場に行ったとしても、神威もいるし雪女もいるなら【飛鳥井の家族とその関係者ならば】無事なのよ………
でも大勢の人が巻き込まれてしまうわ
それを避ける為に細工があったら、頼んていたのよ!此処に来た晩、めちゃくそ吹雪いていたのに、今朝は雪はチラチラと降るだけになり、霙に近いのとか降り始めた
地面が水分を含んだ上に、また急激に冷えて斜面が固められたちゃうからね
その上に柔らかい新雪が積もれば、雪の層が出来るから間違いなく雪崩は引き起こされる
多分雪女は雪の断層見つけたんでしょうね………
その断層を無理矢理完成させているならば十中八九雪崩起きる………強引に引き起こすなら、明日!
母しゃん達が滑ってる最中にね、起きるわ!
きっと漆黒のヤツが爪で斬り裂いて雪崩を起こさせるわよ!」
其処まで聞き康太は「セコっ!」とボヤいた
すると雪だらけの神威と毘沙門天がグッタリしたルーとスーを連れて還って来た
一生と聡一郎はタオルを持って玄関に行くとルーとスーを受け取った
神威と毘沙門天にタオルを渡し
一生は「どうしたんだよ?ルーとスーは!」と聞いた
毘沙門天が「この二匹は宙にいたんだよ!
それが突然、凄い力で突き落されたんだよ!
で、見たら漆黒のジャガー来ていやがったんだよ
神威が怒り狂って根っこ伸ばして捕まえてグルグル巻きにして遥か大空にふっ飛ばしたんだよ!」と説明
一生と聡一郎はルーとスーを風呂場に連れて行き湯船に浸けて暖めてやった
榊原は神威と毘沙門天の為に八海山大吟醸を熱燗にして出してやった
そして熱々のおでんを取り分けてやり、神威と毘沙門天はご機嫌を直して飲んでいた
一生が「烈、ルーの背中切り裂かれていた、どうする?」と聞く
クーが立ち上がると「後は頼むぞプー!」と言いルーを連れて姿を消した
烈は「クーたん達は人の手では直せないのよ!
軽い傷ならまだしも………斬り裂かれた傷は無理なのよ………」と謂う
一生は烈の頭を撫でて「きっと治って還って来るさ!」と謂う
烈は頷いていた
西園寺維弦は「あの、取り込み中悪いけど、僕らの宿………電話繋がらないんだけど………」と謂う
慎一が「何処の宿を取ったんです?」と聞く
それには唐沢が答えた
「スキー場近くにあるホテルなんだが……」
神威が「あ~!雪崩で今頃埋まってるから電話線でも切れたんだろ?」と軽く答えた
康太は「え!スキー場近くのホテルが雪に埋まるって………相当上で雪崩起きたのかよ?
雪崩はルートが大体予想されるから、雪崩が起きる場所にはホテルは建てはしない!
なら木々もなぎ直し………雪崩を無理矢理起こしやがったんだな!」と吐き捨てた
「父しゃんとか……じーさんやえーちゃんは上級者用リフトで上がって滑るから、リフトで上に来た頃狙う気だったのね………」
烈の言葉に康太は「だろうな………こんな雪崩は前代未聞の事態だろうさ!
ホテルの客はどうなったのよ?」と問い掛けた
神威が「ホテルは木の根っこで壁を作り、何とか直撃は避けれた………救助の者が来れば助かるじゃろう!」と答える
毘沙門天が「ただ………電気もガスも止まったら、一晩持つか………は定かじゃねぇがな!」と謂う
唐沢は「あ~!もぉ〜!!維弦、地元の警察と消防を直ぐに動かしやがれ!
他のヤツも即座に救助に迎える様に手筈を整えろ!」と命令した
維弦は「既にやってます!」と答えた
昭一郎は「今 地元の警察には連絡を入れて、それと同時に三木繁雄に連絡を入れたから、レスキューか災害対策のプロを派遣して貰える様に連絡を入れた!」と謂う
昭一郎は忙しく動いていた
美緒も両手に携帯と電話の受話器を持って連絡をしていた
烈が「唐ちゃん、昭ちゃんを連れて救助に当たらせて!」と謂う
唐沢は「何故に?代議士様をそんな簡単に使えませんって………」と謂う
「何を謂うの!兵藤昭一郎は兵藤丈一郎が子息!
この地元に根付いて、この地元を愛していたのよ!そして丈一郎が倅もこの地に愛着を持つ!
彼程に地元に詳しい奴はいないわよ!
そして奥方の兵藤美緒、美緒たんの叔父は警視総監よ、警察を使いやすくしてくれるわよ!」
唐沢班の皆は【お〜!!】と喜んだ
烈は「取り敢えず公民館確保して、部屋を暖めまくるのよ!」と指示を出す
康太は「この近くに公民館は?」と聞く
昭一郎は「公民館はこのスキー場の横にあります!」と答えた
「地元の消防団と連絡取り、確保しねぇとな!」
烈は「りゅーまは公民館へ唐ちゃん達と行って!救助活動は専門家が来てくれるだろうから、全面的に昭ちゃんを出して指示を出して!
それで駄目ならボクが指示を出すから!」と謂う
竜馬は「了解っす!熱々のお酒用意しといて下さい!」と言い唐沢と班の奴等と昭一郎を連れて出て行った
烈はそれを見送って「雪ちゃん警護頼むわよ!」と謂う
すると『解ってるわ!』と声がした
康太は「もう雪崩の心配はねぇのかよ?」と問い掛けた
「ないわよ、この地域全部雪崩が起きたら、其れこそ地形崩壊起きるわよ!
もう二度とスキー場出来なくなるから!
そんな事はさせてはならないのよ!」
「ならオレ等は何も出来ねぇなら、部屋にいるしかねぇな!」と熱々の熱燗を作り飲み始める
其処へクーとルーが姿を現した
ルーは「裂かれた傷なので即座に直して貰い帰還しました!」と謂う
クーは「創造神の所へ出向こうとしたら天空神が待ち構えてて、治してくれたから早目に還れたんだよ!」と事情を話す
其処にガブリエルが姿を現し
「このスキー場に此れ以上の雪崩や崩壊は阻止する為に、オーディンがラグナロクの戦士に見張らせる事にするとの事なので、此れ以上の被害は出ません!」と告げた
「悪いわねガブたん………寒い中越させて!」と謂う
聡一郎が熱々のロイヤルミルクティーを持って来ると、ガブリエルを堀炬燵に招き入れた
救助に向かった者達を待つ
中々還って来なくて、夜も更けて来てちっこいの達や兄達や北斗達を寝に行かせた
康太達大人は静まり返った部屋で昭一郎や唐沢達を待つ
日付が変わろうとしている頃
昭一郎達は屋敷に戻って来た
康太は「どうだった?被害は酷いのか?
怪我人とかいたりしたのか?」と問い掛けた
唐沢は「被害は結構出てたけど、怪我人は皆無だった
だがホテルはライフラインが遮断され、営業も不可となった!
取り敢えず公民館に避難させ者達には暖を取らせ、汁物をホテルの方達のご厚意で作って軽い食事を取らせました!
今夜は公民館で過ごし、明日ホテルへ行き荷物を取って来て自宅へ帰る様に手筈は付けてきました
ホテル側も今夜の宿泊様には後日、都合の良い日に予約してお越し下されば、今日の分の補填は致します、との事だ
またもう来ないと申される方には返金をされる、との事で話が着いた」と説明した
榊原は「まぁスキーに来てる人達に取ったら天災ですからね………
不本意ですが、それしか手は打てませんね!」と言う
康太は「補填を行うホテル側には負担をさせない様に補助金出してやれよ!」と言う
「それは自治体と話し合い折り合い付けるしかねぇな!」
唐沢達はさっさと客間に行き堀炬燵に入り、出された汁物を食べ始めた
烈達は既に寝に行き、その場にはいなかったのを確認すると、唐沢は溜息を着いて
「俺も………こんな所へ来て烈に何とかしろとは言いたくはねぇんだが………
しがない宮使いだからな………許してくれよ!」と言葉にした
康太は「んなん気にしてねぇだろ?アイツは!
でも体調が元に戻らねぇからな………静養の為に来てるんだよ!」と現状を口にする
「何処か悪いのか?」
「…………」
康太は何と答えて良いか?解らなかったが……
榊原が「宗右衛門は一族や会社を背負ってますからね、日々やる事が山積しているのです
それと並行して一族の者の矯正、安曇家三兄弟、三木繁雄の末息子の矯正をやりつつイベントやって、貴史の果てを繋いで昼食会に晩餐会………大人だってぶっ倒れますよ
当然会社にも顔を出してましたからね!
顔を出せない時は兄達を使い指示を出していました
それでなくとも、つい最近まで破滅の御剣の剣で貫かれた傷が化膿して中々治らなかった
痛みを押してだから日々己のライフは削れて当たり前でしょう?」と謂う
聞いただけでも大変な事をしているのが伺えられる
唐沢は「セキュリティも閣下と話して絵図描いてるんだよな?」と口にする
康太は「大体は出来てる言ってたやんか!
それよりも早く倭の国に来るから皺寄せが来てるんだろ?
費用の調整とかあるって言ってたやんか!」と謂う
唐沢は烈はもう既にキャパオーバーだと痛感していた
それを見ていたガブリエルは
「烈の体調戻ってないのですか?」と問い掛けた
康太は「あぁ、兎に角忙し過ぎたからな!
だから烈の静養の為にこの雪国に来てるんだよ!」と答えた
「天空神に話をしてみます!」
「…………しなくて良い、ガブリエル
烈の体調は主治医が治すかんな!
それより黒い奴が自由に出回り過ぎやろ!
何とかする努力してくれよ!」
「話しておきます!
まぁ私も今夜は寒過ぎなので今宵は此処で過ごさせて下さい!」
「あぁ、鍋でも食って暖まってくれ!」
話を終えると皆楽しげに酒を飲み始めた
夜明けになるとガブリエルは天界へと帰還した
昭一郎は唐沢と共に避難場所へ顔を出して、ホテルの人々と協力して朝食の準備を始めた
宿泊客からは「ひょっとして兵藤昭一郎議員ですか?」と声が上がっていた
昭一郎は「はい!そうです!この地は我が父 兵藤丈一郎が愛した地なので、今もこうして年末年始には地元に来ています!
皆様の助けになれて嬉しいです!」と話す
そんな光景を動画に撮ってる人もいてSNSに載せて話題を呼びつつあった
マスコミも駆け付けて来てインタビューを受けた………
昭一郎は「皆様が困っているのだから、当たり前の事をしただけです!
ですから特別に何かを話す事はないです!」と言った
ただ………捻くれたマスコミが「其処が地元じゃなかったら、貴方は動く気も無かったのですか?」と質問したりした
昭一郎は顔色一つ変える事なく
「いいえ、目の前で被害に遭われ困ってる人がいれば使える手立ては使い救助します!
私達は少しだけ一般の人より権力があるので、使える手立ては使い人命救助に当たらねばなりません!それだけの事です!」
と謂う
兵藤昭一郎が陽の目に出た瞬間だった
このまま意識改革をして叩き上げて、第一線を走らせる
そのレールが今 敷かれたと言っても過言ではなかった
連日 マスコミが雪崩の被害の状況を伝える為にやって来る
スキー場はまだ再開してないが、テレビクルーがスキー場にはわんさか来ていた
康太は此れ以上 この地に留まれば静かな平穏さえ脅かされ兼ねないと判断し帰る事を決めた
1月5日に帰る予定だったのだ
それが一日早くなっただけの事だった
康太は「マスコミがわんさか来てるかんな、横浜に帰るとする!」と言った
榊原も「そうですね、静養にもなりませんからね!」と謂う
家族は頷いた
マスコミが騒ぐ中、康太達は昭一郎に屋敷を去る事を伝えた
昭一郎は現状を把握してるからこそ、この場にいるのは逆効果だと理解はしていた
だが皆で過ごす時間が楽し過ぎて………残念で仕方がなかった
「また機会が在りましたら御一緒させて下さい!」
「あぁ、でもなオレ等と同行するってのは、こんな不測の事態と遭遇する確率が上がるって事だから辞めとけ!」
「何を!不測の事態など蹴散らすのが真贋と宗右衛門ではないですか!
春は桜が綺麗なので是非御一緒に!」
康太は「桜の季節は………烈は行く所が決まってるかんな!親のオレでも御一緒は無理なんだよ!」と哀しげに言う
「ならば、其処へ我等もお連れ下さい!」
康太は昭一郎を見て、笑って
「烈が良いわよ!と言ったら一緒に行こうぜ!」と謂う
烈は堀炬燵に入りミカンを食べていた
まるで雛の様に並んだ烈やちっこいののお口に、兄達が綺麗に皮を剥いたミカンを一つずつ放り込む
凛は竜胆の声で「今年はミカンが不作だからな、貴重なミカンを味わいながら食うんだせ!」と謂う
椋も東矢の声で「そうですね、おミカン高いですからね!」と謂う
レイもニブルヘイムの声で「由々しき事態じゃないですか!ミカンの平穏を揺るがすなんて!
味わって食べねば!」と怒る
翔はミカンの平穏………って笑い
「おミカン食べ終わったらリュックに荷物入れて来るんだよ!」と謂う
3人は右手を上げて「「「はい!」」」と答えた
母が帰ると言えば、それは覆りはしない現実となるのだ
子供達の動きは早かった
荷物をリュックに詰めて、お部屋を片付けると、お世話になった部屋の掃除をして帰り支度をする
烈も帰り支度をして、それを終えると昭一郎の前に行き
「世話になったわね昭ちゃん!
春になったら母しゃんが謂う場所には連れて逝けないけど、鎌倉へ御一緒しましょうね!
きっと楽しい時間が送れるわよ!
あ………でも昭ちゃんそんな暇なくなるからなぁ……どうかしら?」
と謂う
昭一郎は不安家な顔して、そして笑って「時間は自分で作るものですから是非に御一緒しましょう!
楽しみにしておきます!」と謂う
兵藤昭一郎はまだ自分の身に降りかかった多忙な日々を知らなかった………
帰り支度をしてバスに荷物を詰め込み、バスに乗り込む
帰りは慎一が運転して行こうとしたが、神威が
「雪道に慣れてねぇとタイヤ取られる時があるから、途中まで儂が運転してやるさ!」と謂う
慎一は「飲んでませんよね?」と問い掛けた
「飲んどらんわ!でなくば運転してやるなんぞ言わんわ!」と怒った
神威の運転で横浜へ向かう
神威は途中まで運転して、雪がなくなった頃サービスエリアに入り朝昼兼用で食べてから運転を変わった
美緒は玲香と楽しげに話をしていた
兵藤も昭一郎も友とこうして話している美緒が一番幸せそうだと想った
横浜に入り飛鳥井の家に近付くと、尾行している車がないか気にして運転をする
唐沢も尾行している車があれば妨害をすると約束して、慎一の運転する後ろを走った
飛鳥井記念病院へ到着すると皆バスから降りた
兵藤の家族はバスを返しに行く慎一に、兵藤の家の前に降ろして貰う事にした
榊原は唐沢達の車を、立体駐車場一階のセキュリティを解除すると、その中へ停める様に言った
皆でマンションの中へ入って行き、途中管理室へ入り不審な人物はいないか確認し裏の自宅へと向かう
飛鳥井の家の玄関にカードキーを差し込みロックを解錠して、家の中へ入る
客人を応接間に通し、家族は荷物を置きに部屋へと向かった
着替えを洗濯機に突っ込み、部屋着に着替え応接間へと向かう
竜馬も源右衛門の部屋に荷物を置いて来て応接間へ向かった
応接間へ行くと慎一が唐沢達に珈琲を入れて持って来ていた
烈は「カズ、お部屋に荷物持って行って大丈夫よ!」と謂う
一生は「なら少し頼むな!」と言い部屋へと向かった
烈はソファーに座るとニコッと笑って
「唐ちゃんのチーム統制が取れて来たわね!」と言った
唐沢は「お前が鍛え上げてくれたからな!」と嬉しそうな顔をした
「唐ちゃん頼みがあるのよ
それを聞いてくれたならば、唐ちゃんの頭痛めてるの解決してあげるわ!」
交換条件だが………其れは容易く聞ける訳などなかった
「本当は聞きたくはないがな………その交換条件、受けて立ってやるとも!」と言った
維弦は「え!そんな事言っちゃって良いんですか!相手は宗右衛門ですよ!」と謂う
「どうせ条件聞いて動くのはお前だしな!」
「えー!嘘!班長、俺に厳しくないですか?」
「一番手応えのあるヤツだから独立させるのも視野に入れて単独捜査も視野に入れねぇとな!」
「それは絶対に違う!
ただ単に宗右衛門の無理難題聞きたくねぇからだろうが!!!」と文句を言う
烈はお構い無しで「なら条件はね瀬能和寿の情報が欲しいのよ!
もっと詳しく詳細が欲しいのよ!」と謂う
維弦は「そう謂われると想い班長に言われて調べ上げてました!
かなりの妨害受けましたけど調べ上げました
でも残念な事に……僕と動いていた班の子が巻き込まれて未だ意思不明の重体なんです!」と謂い書類を手渡した
「意識不明の重体?どんな状態なの?
何処の病院へ搬送されたの?」
「事故が起きたのは瀬能氏の自宅の近く、青葉区の方なので青葉総合病院へ運ばれました!」
烈は飛鳥井記念病院の看護師の鈴木泰地に
「泰ちゃん 青葉総合病院って知ってる?」とラインした
少しして『知ってるよ、一番最初に勤めたのその病院だから!どうしたの?何故そんな事聞くの?』と問い掛ける
「事故に遭った子が運ばれたのよ
意識不明だって言うから、どんな病院なのか?ってね!」
『悪くはないよ、昔の事しか知らないけど!』
「なら転院させた方が賢明ね!」
『俺からは何とも言えない………ごめん
でも飛鳥井記念病院の看護師として言えるのは、この病院はかなりレベル高いからね
懸命だと想うよ!』
泰地とのラインを終えると烈は
「その意識不明の子、飛鳥井記念病院へ転院させなさいよ!」と言った
唐沢は少し考えて「うし!久遠先生に相談して、手続きしてくる!」と言い飛鳥井の家を出て行った
維弦は唐沢と共に飛鳥井記念病院へ行き、久遠に状況を話した
一通り事故の説明をして
「烈に転院した方が良い!と言われましたし、転院したいのです!出来ますか?」と謂う
状況を聞いた久遠は、会話に烈の名前が出て来て
「あぁ転院は受け入れてやる!
さっさと手続きしやがれ!
そしたらDr.カーで転院させてやる!
それと烈、帰ってるなら病院へ来る様に言え!」と言った
維弦は一生にラインすると
「今直ぐ烈君を久遠先生の診察に来させて!」と送った
ラインを受け取った一生は烈に
「烈、おめぇ久遠に呼ばれてますがな!」と言った
久遠の所へ唐沢達が逝けば烈が還ってる事も自然と伝わるのだ
そうしたらお呼びが掛かるのは必然だった
烈は「………そうなるわね………」と呟くと康太は爆笑した
康太は「瀬能の資料はオレが目を通して、引っ掛かる部分に付箋紙しといてやる!
だからお前は体調を整える事だけ考えろ!」と謂う
烈は頷いて立ち上がって、病院へと向かった
一生と翔が付き添い病院へと行くと、久遠が待ち構えていた
病院は1月6日まで休診で静まり返っていた
唐沢と維弦は転院の手続きをしていた
烈は久遠がやって来ると診察室へ連れて行かれた
久遠は「お前の血液をマクロレベルまで調べ上げる様にヨーコに頼み検査をして貰っていた
で、マクロレベルの細菌が見付かった
この細菌が健康を損なわせ、お前の体調を元には戻してくれねぇんだよ!」と説明した
烈は「何かの仕掛けはあると想ったのよね………
傷は治らなかったし、熱は引かないからね」と自分の体なのに想い通りにいかない遣る瀬無さを語った
「で、ヨーコがその細菌に対応出来る薬を持って来てくれた!
アイツ、台湾にいたんだな………台湾の地でも研究してくれ、やっと完成したって持って来てくれたんだよ!
仕事を終えたら御影と共に帰るって言ってたぜ!」
「そうなのね、ボクは静養中だったからね
あんまり携帯もPCも見てなかったわ!」
「んじゃ、注射を打つとするか!」
久遠は烈の腕を取ると服を捲り上げて消毒をする
ズボッと注射針が烈の腕に刺さる
冷たい液体に烈は身震いをした
注射器の中の液体を総て出し切ると、注射器を抜いた
筋肉注射だから揉みほぐし、絆創を貼った
「これで悩まされていた体調も戻るだろう!」
「有難うせんせー!」
「あ、銘、そろそろ退院視野に入れての生活を考えても良いそうだぜ!」
「それは良かったわ!やっと殴り飛ばせるわね!」
その言い草に久遠は「烈………」と言った
「此れはボクのケジメだから!
まぁ強くなった銘なら笑って受け止めるわよ!」
烈の言葉に久遠は笑い
「お前の近くにいる女は本当に男前だからな!」と言う
するの背後で「それは喧嘩売ってます?譲?」と声が聞こえた
久遠の後ろにいたのは志津子と義泰だった
烈が病院に来ると聞き、義泰が志津子を呼んだのだった
志津子は烈に深々と頭を下げた
烈は「今は治療中だから、謝罪は遠慮してね!」と言う
横にいた一生が「治療終わっても謝罪は遠慮するだろ?烈ならば!」と笑う
翔も「そうだね、烈だもん!謝罪の言葉を謂う暇に己の今後を見据えやがれ!と言うもんね!」と謂う
志津子は笑って「子育ては難しいです!」と謂う
烈は「当たり前じゃない!子供は誰よりも機敏に現実を見極めるのよ!
そして生きる術を探してしまう!
まぁ………軌道修正は掛けてやったわ!
両親としての責任も二人で取らせる!
其処から後は志津ちゃんは関与出来ない領域だから、せんせーに頑張って貰うしかないじゃない!」と笑う
久遠は笑って何も言わなかった
その顔は吹っ切れて、堂々と肝が据わった顔をしていた
烈は「志津ちゃん、ばぁしゃんと飲む?」と聞く
志津子は笑顔になり「ならばお呼ばれされます!」と謂う
2人は仲良く手を繋ぎ出て行こうとする
その後を追い義泰と久遠も着いて行こうとした
が、鈴木泰地が「先生、転院は直ぐに可能だそうです!」と謂う
久遠は「俺はまだ一仕事ありそうだな……」と謂う
一生は「一仕事終えたら唐沢達と来ると良い!」と言い声を掛けた
烈は志津子と手を繋ぎ「ならボク達は家で待ってようか!」と謂うと志津子も義泰も翔も頷いた
病院を出て歩いていると「烈!」と謂う声が掛かった
振り返ると真矢と清四郎だった
烈は「ばぁたん!じぃたん!」と呼んだ
真矢は「お正月、飛鳥井に何度も行ったんですが、留守でした………」と心配して問い掛けた
一生が「此処で話す話じゃないので家までお願いします!」と言い烈と志津子を追い遣り、真矢と清四郎と共にマンションへと向かう
翔は祖父母の手を握り締める
真矢は「翔………」と言い抱き締めた
飛鳥井の家に帰ると、康太が待ち構えていた
真矢と清四郎と烈を客間に連れて行き、烈を客間の隅に追いやり距離を取らせると話を始めた
「烈………厄介な事になってるかも知れねぇぞ!」と声を掛けた
「免震構造システム、瀬能ちゃんから漏れてる………とか……かしら?」
「お前知っていたのか?」
「もっと遡れば東神奈川のビルを勝手に壊された辺りから暦也に飛鳥井の社員の私生活を調べさせていたのよ
その時………元恋人に似た女と瀬能ちゃんが同棲していると報告書を受け取ったわ
その時は何とも思わなかったけど、大仏の件で……もしや?と想ったのよ
だから顧客リストに瀬能ちゃんの名前ないか?
調べてもらったのよ
元を辿れば上間美鈴とも繋がった、あの教団のフロント企業みたいなモノだったのよ」
「其処まで繋がりがあり、其処まで調べ上げていたのか?」
「まぁ此方も死者出してダメージは避けられない事態になったり………したけどね
暦也の会社のスタッフと神威の裏方の調査会社の方のスタッフが事故に見せかけて殺されたり、手痛い竹箆返し食らったけどね!
勿論、命を落とした者は、ボク自ら黄泉の旅路に付き合い魂を閻魔に引き渡して、再生の道を辿らせたわ!
だから唐ちゃんのスタッフの子も………調べないと海坊主の仕業ならば深層世界が空かも知れないからね
転院して貰い調べて貰うのよ!」
「誰が調べるんだ?釈迦か?」
康太が聞くと背後から「俺が駆り出されるに決まってるやんか!」と謂う声が聞こえた
康太は「弥勒、もう帰っても良いって?」と問い掛けた
「あぁ、澄香の魂も浄化されたからな
新年から新居で過ごす様に謂われた
前の家の家具も、親父の仏壇も総て処分して位牌は親父の墓のある寺に頼み預かって貰った
家具は前のは総て廃棄して、澄香と俺と烈とで買いに行き烈が揃えてくれた
買い物に出た澄香は嬉しそうで、幸せそうで……俺は感謝しても足りない程に幸せを感じた
そんな烈の頼みなら聞くしかないじゃねぇか!
しかも烈は俺の道場より広い作業部屋を作ってくれ、護符を作り護りに特化したのを作れと謂れ、呪術師として護符を作成して売る事にした
まずは菩提寺に置いて貰い、通販も始めた
通販は翔達が注文を取ってくれ、売上はかなり順調だったりする!
そして澄香も働きに出て生き生きしている
今修行中の倅も烈に叩き上げられ………会うのが楽しみに夫婦で生活を始めた所だ!」
と、弥勒は近況を話し始めた
康太は安定している弥勒を目にして安堵していた
客間には鷹司と阿賀屋と神威がちびちび飲んでいた
神威は「儂の所のスタッフは載積オーバーしたクレーンがバランスを崩して転倒して下敷きになり即死だった!
暦也の所のスタッフは青信号で突っ込んで来た老人だった
意識が急になくなりアクセル踏み続け衝突した
ニュースになってたから知ってるだろ?」と説明した
どちらのニュースも問題視されていたから知っていた
烈は「調べる方も命懸けだからね………本当にアンドロイドを作り出したい気分だわ!」とボヤく
康太は苦笑した
「まぁオレも………アンドロイド欲しいとは思ったさ!」
「でも母しゃんはアンドロイドにするなら父しゃんの顔にしちゃうじゃない
それだとセクサロイドになっちゃうから………辞めとかなきゃ!」
「オレは、んな趣味はねぇぞ!」
「でも父しゃんの顔大好きよね?」
「あぁ、伊織の顔しか愛せない!」
「………あ~!もぉ!やってられないわ!」
と怒りつつ烈は、ならばセクサロイドにしかならないじゃない!と想っていた
神威も阿賀屋も鷹司も弥勒は、もう何も謂うものか!と黙って飲み始めた
一生はそれを見ていて爆笑した
聡一郎も隼人も瑛太も清隆も腹を抱えて笑っていた
玲香と京香は2人の仲が相変わらずで笑っていた
榊原は康太の告白を聞いて、あ~今すぐにでも押し倒してしまいたい!と想った
榊原伊織 30歳早春の青い春だった
18歳で子持ちになって、翔達は中学生に、烈は小学4年になっていたのだ
歳を重ね愛は深く募るのだ
榊原は少しだけ頬を赤く染め
「お手伝いしないと食べられませんよ!」と謂う
家族は大変だ!とお手伝いに走った
兵藤の家族は自宅に帰り暫くすると、飛鳥井の家に遊びに来た
慎一もバスを返して直ぐに料理の手伝いをしていた
真矢も清四郎も来ているのだ、腕によりをかけねば!と榊原は料理を頑張った
食材は秋田で買い込んだのを持って来たから、鍋にするつもりだった
客間に来た真矢は「今年のお正月は………何故誘って貰えなかったのですか?」と問い掛けた
康太は「烈が年末まで入院していたんですよ!
その後も体調が戻らず、来客は常にある状態なので………兵藤昭一郎議員の口利きで雪国に避難していたのです!
今回は本当に家族だけで過ごしたのです
人が増えると………烈は命を狙われているので危険なのも有るので警戒せねばならなかったので!」と説明した
兵藤が「親父が宗右衛門には世話になったから、と秋田の地に招待したのです!
本当に秘密裏に退院して一族詣では元旦にして、その足で秋田に向かいました!
烈は多分、神野達とも今は連絡してないんじゃないかな?」と告げた
清四郎は「そうだね、相賀がイベント以降烈と連絡がつかない!とボヤいてましたからね!」と謂う
竜馬は「烈は政府の要請でセキュリティの警戒網とか頼まれていたので、常に飛鳥井には政府関係者が来てましたからね!
内閣の裏の人間まで烈を追い掛けて来る程でしたから!
そして秋田まで行ったのに雪崩が起きて、マスコミが駆け付けて休めないので予定より早く還って来る事になりましたからね………」と大変な話もする
真矢と清四郎は雪崩のニュースは知っていた
清四郎は「あの前代未聞の雪崩の起きた地にいたのかい?」と尋ねた
クーが「あの雪崩も上級者用のリフトで上に来る瑛兄さんや父さんや伴侶を狙ったモノだから!」と謂うと
プーも「あんな雪崩起きん所で雪崩起きてるんや!
烈の家族狙ったのは明白!
でも無関係な者を巻き込む訳にはいかないと、無理矢理夜に雪崩起こさせた
被害は最小限に抑えたけど、今度はマスコミが駆け付けて来たから余計に休まらん状態に康太はんが帰る決断したんや!」と謂う
ルーも「スーが切り裂かれて怪我した!我らだとて斬られれば痛みを感じる生き物なんだよ!」と謂うと
スーが「せや!やから何かあるなら家族は狙われるから、声は掛けられなかったんやで!」と答えた
真矢と清四郎は言葉もなかった
烈は嗤い「些末な事はもう良いわ!さぁ飲んで食べて忘れましょう!」と言った
その後は皆 楽しく宴会へ突入した
唐沢が戻って来るとサポートの為に出かけていた班の子も戻って来て、皆も宴会に突入した
烈は父に「明日も宴会駄目かしら?無論食材は会費取って買いに行かせるから!」と謂う
榊原は笑って「神野達ですか?」と問い掛けた
「そう、もうね、ライン凄い事になってるのよ
そろそろ返信しないとね!」
「ええ、大丈夫です!連れてらっしゃい!」
「明日まで休みだから、今夜は凄い事になっても大丈夫よ!父しゃん!」
そう言い烈は綺麗な小瓶を父に渡した
榊原はその小瓶を受け取りニャッと嗤った
「父しゃんも悪よのぉ〜」
「嫌々、烈こそ!」
「ならば、もう連れて行って鳴かせて気絶するまで頑張るのよ!」
「無論、あんな愛の告白も聞いた事ですので!
今宵は特に頑張りますとも!」
「健闘を祈るわ!」
榊原は笑顔を惜しみなく浮かべ、妻に近寄りホールドすると………
「おい!伊織、おめぇ悪い顔してるやんか!」と叫んだ
「君の愛する男の顔じゃないですか!」
「そうだけど、おめぇ烈に何貰いやがった!」
「それは君の身体に確り解らせてあげますって!」
ルンルン♫とスキップせんばかりに榊原は妻を引き刷り客間を後にした
烈は物凄い笑顔で二人に手を振った
翔は「…………父さんの扱い上手過ぎる……」と呟いた
流生、音弥、太陽、大空は頷いていた
レイ達ちっこいのは
「おやちゃい たかいのにょよ!」
「ちょーにゃのよ!」
「くちょー!やちゅくにゃれ!」
と、主婦ばりの会話をして食べていた
竜馬は「烈、明日は烈の大好きな干物買って来るからね!」とニコニコだった
鷹司は昭一郎に「明日から通いやがれ!」と謂う
昭一郎は「はい!解りました!でも私は場所を知りません………」と不安げに言う
「倅に連れて来て貰い道を覚えて通いやがれ!
成果を上げねぇと、宗右衛門にダメ出しされるやんか!
それでなくても………ペナルティ課されて蔵を真贋に焼かれたんだからな!」と泣き言を混ぜて謂う
阿賀屋が「それは宗右衛門が入院してたから、真贋に緑道が泣き付いたからやんか!
『此れでは新年に一族の者を呼べません!何とかして下され!真贋!』と言われれば焼くしかねぇだろ!」と呆れて謂う
神威は大爆笑して「骨董品は無事じゃったんじゃろうが!」とボヤく
「骨董品は無事だったが………もう蔵に置かさせて貰えぬ様になったわ………」
阿賀屋は「そしたら宗右衛門に蔵の代わりを借りればええやんか!」と面倒臭そうに謂う
「アイツに貸しを作れば、骨の髄まで取り立てられるわ!」
「嫌々、我等は友の為に骨身を惜しまず支え合う盟友ではないか!」
鷹司は嫌々乾杯して「「友の為に!!」」と言った
阿賀屋は「蔵ならは俺が建ててやっても良いし!」と謂う
「良い、宗右衛門に建てて貰うとする!
書生も取るのだし、其れ位要求してやるとするわ!」
烈は悪友の言葉には耳も貸さずに、何やらブツブツ唱えていた
烈が唱え終わるまで、鷹司と阿賀屋と神威が盾となり隠す
その中で邪魔される事なく唱えていた
竜馬は烈の横でニコニコと笑って邪魔する事なくいた
阿賀屋は「今年は清家んちの婚礼だから世話役として宗右衛門は顔出さねぇとならねぇし……」と多忙さを語る
鷹司は「儂は四人の書生を取らねばならぬ故、多忙になるな!」とボヤく
弥勒は「武術と呪文は俺も手伝ってやろう!
己の身くらい護れねぇとならねぇからな!」と謂う
「おー!それは助かる!儂の所の書生を卒業する者は皆無故………取る気はなかったが、宗右衛門が申すからな!」
阿賀屋は「それも総ては友の為だ!耐えろ獅童!」と言い
「「友の為に!!」」と乾杯するのだった
弥勒は大義名分してるだけだろ!と呆れて笑っていた
呪文を唱え終わった烈は「弥勒、今よ!多分神取か、周防に仕えし秋月のどっちかよ!弥勒が入院していた病室にいるわ!」と謂う
弥勒は「了解!」と言い姿を消した
烈は菩提寺から式神を呼び寄せると
「聖物 阿修羅よ!弥勒を助けて動け!」と命を授けた
役目を終えると烈は料理を食べ始めた
そして携帯をポチポチ
すると物凄い携帯が震えた
電話に出ると『烈!!!』と叫び声に近い声がした
「あきましゃ、直くん、きょーちゃん、おーちゃん、明日飛鳥井に来てね!
音信不通だったから奢るわよ!」
『今宵は無理なのですか?』
「………今宵は我が家半径3メートル四方は入れないから無理なのよ!
捕物があるからね、流れ弾当たったら命ないからね………だから明日奢るから来てね!」
『いえいえ、我等は遠慮する事なく飲みたいので、会費は払いますって!
それも楽しみでもあるんですから!』
「解ったわ、明日楽しい時間を送りましょう!」
『なら明日直接飛鳥井に行っても?』
「ええ、朝から来ても大丈夫よ!
ファミレスでモーニングでも食べましょう!」
『それは良い!なら明日!』
そう言い神野は電話を切った
多分神野の周りには須賀、柘植、相賀がいてハンズフリーにして聞いていたのだろう
烈は「それではボクも行って応戦してくるわ!」と謂うと神威が立ち上がり
「秋田よりは寒くはないが、還って来たら熱燗を頼む!」と謂う
慎一は「還ったら熱々の熱燗を用意しておきます!」と約束してくれた
烈と神威は二人して外へと出向いた
阿賀屋はそれを見て気配を消していた毘沙門天に「お前行って見てこいよ!」と命令した
毘沙門天は仕方なく姿を消した
烈の猫はプー以外は全匹姿を消していた
外に出た烈はマンションを出て、病院の急患用の入り口へと向かう
神威は「炎帝を串刺しにさせて何するつもりだよ?」と問い掛けた
「あ~何もする気はないわよ!
アレはね新作の媚薬が完成したから渡しただけよ
炎帝はボクが出るなら静観を決め込むわよ!
絶対に同時に出ない決め事なのよ!」
「何かお前は腹黒いからな、勘繰るなって謂うのが無理があろうが!」とボヤいた
「失礼ね!ボクは今も親孝行なままの聖神じゃない!今は『の』が抜けたけど……変わらないわよ」
人の世に落とされるまでは『聖の神』だった
それは今は『の』が抜けた、その程度だと謂う
神威は「昔は素直な子じゃったのに………」と嘆いた
「今も素直な子よ!失礼ね!」
烈はボヤきつつも、守衛に飛鳥井烈だと申し出た
そして急用で個室に用がある!と言い中へ入り院内最上階の個室へと向かう
そして唐沢の部下の病室へと向かった
個室フロアに足を踏み入れただけで、ピリピリとした緊張が伝わっていた
個室のドアを開けると転輪聖王が厳ついヤクザみたいな鋭い目付きの男と対峙していた
転輪聖王の横には聖物 阿修羅が仁王立ちで威嚇していた
聖物 阿修羅とは聖なる石に阿修羅の魂を宿し守護させていた遥か昔の遺跡に近い石を式神に取り入れたモノだった
その力は阿修羅と寸分違わずの力を持つ
そしてその横に毘沙門天もその場にいた
烈が「秋月とか謂う人?海坊主の部下に下ったヤツ?」と問い掛けた
秋月と呼ばれた男は鋭い目付きで烈を睨見つけ
「お前は誰だ?」と問い掛けた
「通りすがりの子供よ!」
「その通りすがりの子供が何用なんだ!」
「病室で騒ぐな!」
烈は宗右衛門の声でピシャッと謂うと、秋月と謂う男は黙った
烈は言霊を放った瞬間 秋月と謂う男の足元に魔法陣を出していた
「誠………哀れよのぉ!周防を気にして何時の間にか周防も主も傀儡にされたか?」
グッと男は握り拳を握り締めた
「人の心も忘れ
人だった事さえ忘れ
縁だけ繋ぎ
哀れな傀儡と成り果てた
主の果ては途絶え
輪廻にすら入れはしない
未来永劫………魂は彷徨い
行く先を持たぬ魂は全てを忘れ闇へ染まる
そうなりたいか?」
子供なのに老人の様な声で話す少年
此れは誰なのだ?
秋月と呼ばれた男は天に向かい「コイツは誰なんだ!」と問い掛けた
が、返って来る声はなかった
「貴方の声は届かないわよ!
此処は人の世じゃないからね!」
「人の世じゃない?
ならば此処は何処なんだ!」
「時空を崑崙山へ繋げたのよ!
でなくば病室の中で闘われたら他の患者の迷惑になるじゃない!」
烈はプンプン怒りながら話す
「崑崙山?何故………その様な場へ………」
「それはこの地なら弥勒が力を解放して闘えるからじゃない!」
神の力全力で聳え立つ弥勒は転輪聖王の力を全て解き放ち、その力の差は…………歴然だった
その横に烈の式神 聖物 阿修羅もいるのだ
「秋月 巽?」
烈は秋月の名を呼んだ
秋月は「何故俺の名を知ってる?」と問い掛けた
名を認めた
秋月の足元に出された魔法陣がグルグル回り始めた
秋月は動く事すら叶わないと諦めて立っていた
このまま消されるのか………
まぁ良い………今は仕える人もいなくなった………
もうどうにでもなれ……そんな投げ遣りな想いに囚われる
闇に囚われた時から、何時か………こんな日が来るのは解っていた
その時は…………飛鳥井家真贋 飛鳥井康太が出て来て………息の根を止められるのだと想っていた
飛鳥井家真贋の力は…………総てを消し去れる力を持つからだ………
だがこの場に真贋はいない
それして神に近い存在と…………何故か子供が………
秋月は混乱していた
現実が、サッパリ理解出来ずにいた
が、状況は油断すれば………確実に消される事だけは理解していた………
ともだちにシェアしよう!

