24 / 62

第24話 虎視眈々と ❷

金龍は静かな口調で話し始めた 「我が兄天龍は死期が近付くと、知っている総てを話してくれた 神祖の龍神や………龍族の始まりの理を……… 儂に教えてくれたんじゃよ! 神祖 龍神の体は透明で一瞬にしてどんな色の龍にでもなれ、その用途に合わせて体を変えた が、色んな色の龍達が生まれると、その役目を各々に継がせて身を消した……… それが龍族の始まりであり、神祖 龍神だと教えてくれた!」 「そうね、間違ってはいない! きっと天龍は己の死期が近いのを知って、次代の長になる金ちゃんに全てを話したのよ だから金ちゃんは黒ちゃんに次代の長として託した時に話しをせねばならなかったのよ! なのに伝えられてなかったから、ボクが龍の成り立ちから引き継がれるべき歴史を、紙に起こして敎育してやったのよ! 黒ちゃん、そのテキストは門外不出で長に継承させて行くのよ!」 黒龍は「解ってます……所で俺の継ぎの長になるべく者は天龍か金龍ですか?」と問い掛けた 「違うわよ、神祖がいて虹がいて天龍いるのならば、次代が金色じゃ約不足よ!」 一蹴され黒龍は唖然となった 榊原は「ならば神祖がなられるのですか?」と問い掛けた 「あの方は龍族の果てを見守る為だけに生誕されるのだから、龍族の長になどなりはしないわ! 龍族の長は、其の内………黒ちゃんの奥さんが産むんじゃないかしら? 鳳凰は一体限りの出産となるからね その後に産まれて来た子達で長をやれば良いのよ それで良いと次代の天龍や金龍は言ってるわよ! 我等は龍族を護る為に結束を固める! 長などに執着も固執もしない!ってね!」 次代の四龍 天龍 金龍は頷いていた 金龍は「それで良い!誰が長になろうとも、我等龍族は曲がらぬ道を逝かねばねらぬ! でなくば聖約の地に住めなどしないのだからな!」と言う 銀龍は頷いていた 榊原は「其れでは話し合いは終わりで良いですね 明咲は此れより菩提寺の保養施設の手伝いをして、武術を学び身体を鍛え、虹のお世話をお願いします!」と言う 明咲は「はい!」と頷いた 烈は「華絵がいられる時間は残り少ないわ! その間に色んな事を教わりなさい! そして誇れる母になるのよ!」と言う 明咲は「はい!」と返事をした その声は元気で、昔の銘が戻って来たみたいで地龍は涙ぐんでいた 虹龍は「父さん、ほらほらティッシュ!」と言いサコッシュからティッシュを取り出すと渡した 烈は「其れじゃ近い内に!」と言うと立ち上がった 部屋を出てまた長い廊下を歩き……を繰り返し外に出る 銀龍は紅花を気遣い歩いていた 康太と榊原は菩提寺を後にすると飛鳥井の家へと帰り、烈は一生と共に明咲に部屋を案内した 「明咲の人の世で着る服は既にクローゼットに入ってるわ! 新しい住居は、家族向け社宅の3DKの方へ移って家族で過ごすのよ!」と謂う 柘植が服をくれた日から、話は段々大きくなり烈が成人の標準体型の男女の服を探してると口伝てに聞いた人々が服の提供をしてくれた 鳳城由香里や小鳥遊や事務所の子達の服を差し入れてくれたから、クローゼットの中は紅花と分けても大量の服が掛けられていた そして須賀の妻からは妊婦服が送られた 出産近い子もいるのよね………と呟いたら妊婦服をどうぞ!と言ってくれ貰い受け紅花のクローゼットに妊婦服とか用意して掛けておいたのだ 準備万端で迎えたこの日だった 地龍は「何から何までありがとう烈………」と言葉にした 烈は「ちぃちゃん、近い内に貴方は地龍としての役務に着く為の教育をして行くわ! 仙界に存在する山の管理、地脈の管理! 其れ等を貴方は管理して行くのよ! 敷いては魔界全土の地脈を司る事になるからね それにより四龍の役割も可視化させ変えて行くから!くたばってる暇なんてないから!」とビシッと謂う 地龍は「解ってるよ!烈!」と言い深々と頭を下げた 今後住む部屋に案内すると虹龍は自分の部屋は何処なの?と両親に聞いていた 一生は大まかな家の説明や、クローゼットの服等を説明し烈を連れて菩提寺を後にした ケントの車に乗り一生は「烈………ありがとうな!」と礼を口にした 烈は笑って「母しゃんの誕生日の後には、多分お引越し有るかもだから、カズはその日の為に準備しておいてね!」と謂う 一生は笑って「了解!」と答えた 烈は一生の顔を真剣に視た後で 「カズ………愛する人は………絶対にその手で掴み取り、離したら駄目よ……」と言った 一生は「あぁ……解っている!絶対に離さない!」と答えた 何故今、そんな事を謂うのか? 一生は不安になった が、烈は答えてはくれないだろう………… だから敢えて聞く事はしなかった 烈は「あ、安心して、ボクは母しゃんと違い果てとか視えないから! でも大切なの消されたら………人は心に闇を抱く 狙うなら……其処からだと警戒しただけよ!」と謂う 成る程!と一生は納得した 「スキー場で飛鳥井の家族を狙ったんだもの カズは狙われてる自覚持たないと駄目よ そして…………それは恋人のリキちゃんも込みだと想わなきゃ……」 「んとに……康太もお前も………こんなちまちまとした嫌がらせをされ続けて来てるんだな!」 「そうね、でもその嫌がらせは飛鳥井に留まらず、世界各国似たりよったりの嫌がらせならされてるわよ! ルビアンカ共和国は 突如として出来上がった国に攻撃されて………サザンドゥーク王国と共に国土占領され王国は瓦解させられたニュースあったじゃない 炎帝が引いたレールを尽く瓦解させて……消し去った 当然 国王と王国に仕えし者も見せしめとして公開処刑されたのは、記憶にも真新しい事だと思うのよ! あんなに血を流し正したのにね、崩壊するのに一ヶ月も要らなかった……… そんな風に炎帝への、嫌 皇帝炎帝への挑戦状ならば日々知ら示めてるのだから……… 母しゃんがそんなニュース見たら大暴れ間違いなしなのよ! そしたら大変よ?大暴れよ? またテレビ壊れるわよ! カズ止められる?」 烈は母を想い言葉を紡ぐ 一生は「大暴れの康太?俺では荷が重いな………」と乾いた笑みを漏らした 飛鳥井の家に着き、車を降りるとケントは帰って行った 飛鳥井の家に帰ると応接間にいた康太に 「少し………話をしてくれねぇか?客人だ!」と呼ばれた 烈はソファーに座ると外国人の男女がソファーに座っていた そしてその周りにはボディガードらしき男が控えていた 烈はソファーに座ると、客人に目をやり 「ボク、ドゥバイの王太子カラフ・ジャッジム氏とは何の面識もないんだけど? 元第二王女のセーラ妃にしても面識はないのに、何の話ですか?」と問い掛けた 康太は「あれ、お前……あんで彼がカラフ・ジャッジムだと知ってるんだ?」と問い掛けた 「クリストファー・オブライエンが『近い内に我が妻の従姉妹が烈を尋ねると想う! 彼等には君に不敬な振る舞いはするな!と釘を刺しておいたよ! なので飛鳥井を訪ねたならば、御目通りだけはしてやってくれないか?』と夜中に電話をして来て叩き起こされたのよ! りゅーまに伝言しとけば良いのにさ! 本当にボクに逢ったとしても、何もならないのに………何故逢いたいのかしら?とボクは想ったのよ!」 と先制攻撃を仕掛けていた 康太は「この子がオレの息子で、六男の烈だ! なぜお前が………オレの子を指名して逢いに来たかは解らねぇけど、取り敢えず紹介はしておく!」とボヤきながら紹介した 烈はペコッと会釈して挨拶した 康太は「お前何かしたのか?」と問い掛けた 烈は「ボクは何もしてないわよ!」と訴えた 「なら何故突然来るんだ? しかもコイツ等秘密裏にしてる家まで訪ねて来やかったんだよ!」 「本当にボクは知らないわよ! ボクは母しゃんと違い未来やその人の運命や分岐点なんかは視えないから知らないわよ! クリスがカラフ王の資料を夜中にPCに送ったからね、目を通していたから、顔を見て解った程度よ!」とボヤく セーラ妃は瞳を輝かせ「ロザリー叔母様は王女の妹御に当たられる 私はロザリー叔母様の妹の子で姪になります! ロザリー叔母様からは【我が子 烈】の惚気は常に聞かされています!」と謂う 烈はドゥバイは英語は共通語だから英語で話していた カラフは「私達は何度も何度も【R&R】のイベントは観に行きました!」と友好的な口調で謂う 竜馬はニコニコ笑顔でソファーに座っていた 兵藤もその横に座っていた 烈はずっと冷ややかな目で笑顔さえない表情をしていた 「ボクは中東諸国に中東諸国にはコネもなければ、人脈も無い! そしてボクはそんな暇なんかない!」 榊原は「其処まで深読みしないで下さい! 彼等はオブライエン家の【宝】に一度逢いに来られた 調べたら烈は康太の子で、久々に来られたのですから!」と執り成し謂う 「今が平和な時期なら其処まで深掘りしないわよ しかも………ドゥバイのハッカー集団から飛鳥井は集中攻撃受けてダメージ受けたのよ! それで深読みするなは……無理な話よ!父しゃん!」 カラフは鋭い瞳を烈に向けた 「賢いとは聞いたが、此処まで頭が回るとは………」と吐き捨てた 康太は「オレの子に手を出せば、即座にお前を消し去ってやんよ!」と謂う 烈は嗤って「母しゃん、彼には其処までする気はないわよ! 何かする気ならこの場にボクは座らないもの 母しゃんの眼でも其処まで映ってないでしょ?」と問い掛ける 「だな……だから応接間に通した が、お前の話を聞いたら、穏やかじゃねぇかんな しかも飛鳥井を標的にしているのならば、友好的でいられるかよ!」と謂う カラフは「ハッカー集団は我等がやった訳では有りません!」と謂った 烈は身も凍る冷たい瞳を向けて 「国を上げてやったならドゥバイ程度の国、一瞬で消し去っていたわよ!」 と吐き捨てた この子はどうやら………康太よりも手強くて………掴み所がない……… カラフは顔を引き締め 「それは困ります……… 我が国にも預言者はいます そして我が国の預言者は言いました! 今直ぐに倭の国へ行き【飛鳥井烈】に謝罪を入れろ!と………でなくば天界を更地にした力でドゥバイなど一瞬て消え去るしかないと……… なので預言者が申す【飛鳥井烈】を調査致しました! 少し前に我が国の守護神の元にも、連絡が入り………世界を上げて守護すべき存在の話は流れて来ました! 世界が足並みをそろえて守るべき存在 国を上げて保護する事に可決された子の名前と一緒だな………と想っていました なので配下の者に調べさせました! するとその子は飛鳥井康太の六男と報告が出たので、取り敢えず越させて戴きました!」 烈は「ならその【謝罪】とやらをして、さっさと帰ってよ!」と言った カラフは頭を下げて「本当に申し訳なかった!」と謝罪した 烈は宗右衛門の声で 「莫迦馬鹿しい!この様な茶番に付き合う気もないわ! 其奴は何故に国王である自分が謝らねばならないのか?と謂う不満が顔に出ているではないか! 逆効果じゃ!カタチだけの謝罪など不要! 聞く価値すらない!」と言い応接間を出て行こうとした 配下の者が慌てて烈を捕まえようとする すると烈は配下の者を逆に弾き飛ばし、配下の者は壁に激突した 「触るでない! 次 儂に触れるならば、その命を覚悟するがよい!」と吐き捨てた カラフは触れる事なく………配下の者を吹き飛ばした力に………言葉もなかった 兵藤が「今の時期だからな、烈だって神経質になるだろ?妨害を受けてる国の国王が唐沢達を通さずに直接来る………それは烈に取ったら逆効果だ!康太!」と謂う 康太は「………烈を怒らせた………時期と判断を見誤ったオレの判断ミスだ!」と言葉にした そして「そうか………少し前に言ってたハッカー集団からの嫌がらせ……発信元ドゥバイからだったのか………」と思い至り、だからの謝罪なのだと理解した 竜馬はカラフ国王の前にドサッと資料を置いた 即座に護衛の者が動こうとした それを兵藤が「辞めとけ!その者はイギリスの公爵の称号を持ち、ナイトの勲章を授けられた者! イギリス皇室は早々に飛鳥井烈を護衛すると決められ、番犬を送られる程の者 手に掛ければ間違いなくイギリスとの国交断絶間違いなしだぜ!」と止めた セーラ妃は「そして貴方はイギリス皇室第一王女の息女と婚約なさってるんですよね………」と護衛の者を睨み付け下がらせた 竜馬は足を組んで嗤うと 「コイツ等は飛鳥井を集中攻撃したハッカー集団の個人情報を特定した資料です! 生かしておいてやったんだ、キッチリ罪に処して下さい! 」と言った 資料にはハッカー集団の名前、住所等など詳しい個人情報が書かれていた 兵藤は「まぁソイツ等は最近建国したとか謂うアッツラー神国なるものに属し、神の教えだと自爆テロやハッカー 聖典と謂う名の殺人 好き放題にやってる国の回し者だからな、ドゥバイも其の内 占領されて消えそうではあるけどな!」と嫌味たっぷりに言った 康太は「その情報は、何処情報よ?」と問い掛けた 兵藤は嗤って「烈情報だ、だが間違ってねぇだろ?」と謂う カラフは「間違ってはいません……」と苦悩に満ちた顔をした 康太は「え?何故に………そんな状況なんだよ?」と唖然として問い掛けた その場にいた一生が 「さっき烈が『ルビアンカ共和国は 突如として出来上がった国に攻撃されて……… サザンドゥーク王国と共に国土占領され王国は瓦解させられたニュースあったじゃない 炎帝が引いたレールを尽く瓦解させて……消し去った 当然 国王と王国に仕えし者も見せしめとして公開処刑されたのは、記憶にも新しい事だと思うのよ!』的な話をしていたけど、ひょっとしてそれってアッツラー何とかと謂う国が仕掛けた事なのか?」 竜馬は「あぁ、建国以来精力的に国を占領している国だよ 本当にね、テレビの前で……国王と城にいた者達を一列に並べさせ次々に首を落とし………血塗られた占領と謂われてるからね………」と言った 康太は眉を顰め………怒りに満ち溢れた紅い焔を撒き散らしていた ジャージに着替えて来た烈が 「あ~!りゅーま余計な事言っちゃ駄目よ! 飛鳥井のテレビ今 故障中で見れない設定にしてあるのに!」とボヤいた 烈の横にはレイもいた 榊原は「テレビの故障中はウソなのですか?」と問い掛けた 「そうよ、そんなニュース見たらテレビ壊れるじゃない! ボク達や、ちっこいのの楽しみなテレビを死守する必要があったのよ! この前 テレビ壊しちゃったから少しの間タブレットで見ていたの忘れたの父しゃん!」 「…ならば………僕もテレビは死守しましょう!」 榊原はそう言うしかなかった……… テレビがなかった時の子供達もちっこいのも、物凄く哀しげで………即座に買いに行った程だったのだ 烈はにべもなく 「カラフ達 帰ってくんない? そして二度とこの家の付近には近づかないで! 話したい事があるなら、堂嶋正義を通してよ! そして話し合いの場を用意して! そしたら、ボクは………えっとどっちの飛鳥井烈をご所望なのかしら? 宗右衛門の方? それともボク本人? それによって着る服が変わるのよ! 兵藤きゅん、貴方が仲介に入り正義ちゃん動かして場を作って! そしてどっちか明確にして、でないとレイたんがアッツラー神国を大地震でも起こして一夜にして更地にしちゃうから!」 烈の言い草に兵藤は慌てて 「うし!俺が仲介に入るとする! 一生と竜馬は使っても大丈夫か?」 と問い掛けた 「カズは嫌よ!ボクのカズを取らないでよ!」 「なら聡一郎?」 「あ、そーちゃんと隼にーは誕生日の準備スタッフの頭数に入ってるから………今は動かしたくないのよ! その代わり………【R&R】のスタッフを貸すわ!」 烈の言い分に何かあると察して兵藤は 「了解!」と言った そしてカラフに名刺を渡すと 「細やかな調整は俺が取りますので、貴方は直ぐに大使館かホテルへ移動して下さい!」と言った 烈は「此処から出られると、我が家は迷惑するからね………ドゥバイの大使館に転送してあげるわよ!」と謂う カラフが、え?????と困惑している間に呪文を唱えて強制転移の魔法陣を足元に出した レイが頑張って呪文を唱える 烈も頑張って魔法陣を作動させる クーとルーとスーも手伝い転送させる カラフは転送される瞬間 真っ白な二足歩行の猫と、白黒斑な二足歩行の猫を目にして………唖然とした カラフ国王夫妻は強制的に飛鳥井の家を後にした 烈は「この時期だから………勘繰りたくなるわよね!」と謂う すると瑛太が何時の間に来たのか? 「そうですね!今の時期にドゥバイの国王の訪問、勘繰るなって方が難しいですね!」と謂う 康太は「瑛兄知ってるのか?」と問い掛けた 「ええ、ハッカー集団に妨害され一時鯖落ちしましたからね それは社長も知ってますよね!」 瑛太が言うと榊原は「はい、知ってます! あぁ………僕とした事が………康太の旧友と謂う事で油断していました!」と猛省していた 康太は瞳にはどの道………変革期に立たされ、苦悩するカラフが映し出されていた 変な動きをする気配もないから家に入れたが……… 烈は「母しゃんの視た映像は間違ってないわ! でも国王は大丈夫でも護衛は大丈夫かは解らじゃない!」と謂う 「だな、軽率だった、すまねぇ烈!」 康太が謝ると一生が 「烈は謝罪されてぇ訳じゃない! 警戒しねぇとならねぇ状況なのは変わらないし やはり烈は両親が好きなんだよ! だからテレビが壊れたと嘘ついてテレビを守りつつ、お前が悲しむニュースは見せたくなかったんだよ!」と謂う 康太は「一生…………」と謂う 瑛太は「さぁ夕飯を食べますよ!」と謂うと皆キッチンに向かった 不安な空気を残し………その夜は何もかも忘れて過ごした そして1月中旬 三連休 金曜日 飛鳥井の家族は仕事が終わると、前日荷造りをした荷物を持ち飛行機に乗り北海道へと向かう事になった 烈達は朝早く北海道へ向かう 一生はそんな烈達の為に、朝早くから爆弾おにぎりをせっせと作っていた 烈は力哉に「出来るだけ単独行動は辞めてね! でないと永遠にカズと別れ別れになっちゃうからね!そしてピンチの時はこの護符を【たすけて!】と言い空に放るのよ! 良い?約束守れる?でなくば永遠に………リキちゃんとカズは別れ別れになっちゃうわよ!」と少し前に言われた 力哉は何度も頷き、護符を常に使える様に携帯のラバーの中に入れて肌身離さずにいた それは聡一郎と悠太、そして隼人にも渡された 其処まで警戒せねばならないと言う事なのだろう だが今は、家族で行くスキーの旅と謂う名目の撮影旅行だった 木曜日の夜に先発隊として【R&R】の機材を積んだワゴン車が北海道へ向けて出発した 機材用の車はスタッフが運転してフェリーで移動となるから、皆より早くの出発になった 皆の移動は空港までリムジンバスに乗り向かい、飛行機に乗る 北海道へ着いたらバスをレンタカーで借り移動する 運転手は神威をGETした 帰りは慎一が運転してくれる 朝一番の先行で、撮影スタッフとテレビクルーと隼人と神野が先に飛行機に乗り北海道へ向かう ニ番目に【R&R】のメンバーと阿賀屋と鷹司が北海道へ向かう 皆バラバラで北海道へと向かう事になった 飛行機のチケットは大人数で取れないからだ 三番目に翔達や北斗達とちっこいのが聡一郎と共に北海道へと向かう 四番目に烈が竜馬と真矢と清四郎と笙と共に共に飛行機に乗り 5番目で我空と篁 早瀬頼朝 須賀 柘植 相賀が乗り込み 六番目で慎一、一生、悠太、力哉を小鳥遊が連れて行った 仕事を終えた飛鳥井の家族と美緒とで飛行機に乗り北海道へ向かう 家族は楽しみでサクサク仕事を上げて行ったのだった 撮影班や【R&R】のメンバー、烈達はそんなにロスなく北海道へと到着した 先に貸し切りにする旅館に兄達やちっこいのを連れて行って貰った 一生達が「撮影頑張って来い!」と送り出してくれたから、撮影を頑張るつもりだった 烈が参加するロケは隼人の撮影のみ 初日 【R&R】が撮影する一条隼人のスキーウェアーとスキー番組と雑誌の撮影をする事になっていた そして初日以降は【R&R】は無関係でノータッチとなる 二日目は旅行番組でスキーや美味しい物食べ歩き等を、隼人、笙、篁、咲楽我空と早瀬頼朝と共に撮る番組となる そして並行して榊原真矢と榊原清四郎の旅行番組もその日に入っていた スキーを滑り、夜は旅館で美味しい物を食べたり、温泉に入る 真矢は烈の言ってた通りに等身大の自分を見せる意味で引き受けた 北海道に到着すると【R&R】のメンバーやスタッフは撮影の準備に入った オリヴァーも来ていて 「いよいよ、大自然をより美しく映せるカメラを使えるんだね!」と興奮していた 【R&R】のメンバーと竜馬とリーダーもスタンバイしていた でも何故か………烈は転がった方が早い程に………着込んていた まるでウーバーイーツのCMの様に重ね着しているのだ ヘンリーは「リーダー着込み過ぎじゃない?」と問い掛ける 竜馬は「気にしないで行くよ!コンテは貰ってるから!」と謂う 竜馬の耳にはインカムが装着していた 隼人は最新のスキーウェアーを着ていた そして最新のスキー板とスノボーを足元に置いて指示を待つ 竜馬は「まずはスキーでお願いします! リフトに乗って一番上から一度滑って下さい!」と謂う すると隼人は言われた通りにリフトに乗り一番上の上級者用に到着すると、滑り始めた 竜馬はPCを見て何やらブツブツ話して 「オリヴァー、この地点にカメラ設置して!」と指示を出した 烈はずっと座って見ていた メンバーは………それがめちゃくそ違和感だったが………何も言えなかった 大自然が美しく映せるレンズは、オリヴァー渾身の作品で、撮影チェックしてる間、本当に綺麗に撮れててメンバーを騒がせた 烈は出来上がりを見て、何やら考え込んで 竜馬が「此処の部分、もう少しエッヂを利かせて雪をかき上げてくれないかな?」とリテイクさせていた メンバーはあのインカムにリーダーの指示が来てるんだと………何となく察した ならこの烈は……誰なんだ? 映像は【R&R】が撮影 雑誌の撮影はカメラマンが来ていて、リーダーが指示を出す そんな感じで撮影は続けられ、次はスノボーでの撮影に入り、かなり難度のアクロバットな滑りを要求した それに答え隼人は宙返りして見せ場を作る スキーウェアーも何枚も変えて、CMの撮影をする 撮影が終了する頃にはスッカリ陽が暮れていた スキーウェアーの会社の広報担当者も、雑誌の編集者も、撮影に立ち会ったカメラマンも 「「この撮影に立ち会えて本当に感激でした! 納得以上の出来でした!ありがとう!」」 と感激の涙を流してメンバーと握手して【R&R】の撮影は終わった その後 隼人のスキーウェアーのCMに仕上げる為に曲と編集があるが、それは帰ってからだった 【R&R】のスタッフは小鳥遊の計らいで、別の旅館を用意して貰い、その日は泊まって明日帰宅する事になった 【R&R】のメンバーと竜馬とリーダーと隼人は神野達と共に貸し切った旅館へとやって来た 旅館の部屋はとても暖かく、康太達も到着して皆を待っていてくれた そして……どう言う訳か烈も炬燵に入って熱々のお茶を飲んていた ヘンリーは「え!!リーダー!!」と振り返り重ね着して太ったリーダーを見た すると何枚も服を抜き捨ててるクーの姿があった 「ふぅ、やっとスッキリした!」 と言いながら、何故か脱いだのに赤い半纏を着る そして炬燵に入り込んだ 烈は皆に「お疲れ様!」と声を掛けた デービッドは「やはり撮影現場にいたリーダーは別物でしたんやな!」と呟いた 烈は笑って「それが一番皆に災厄撒き散らさなくて良い方法だからね!」と謂う 小鳥遊は「烈、文句のつけようのない撮影でした!一緒に撮影にあたった雑誌の関係者も、スキーウェアーの撮影関係者も、圧巻の撮影だと涙を流して喜んでました!」と謂った 「無事に何事もなく撮影が終わってくれて本当に良かったわ!」 と烈は胸を撫で下ろした 皆で乾杯して楽しい時間を過ごす 隼人は翔達に湿布を貼って貰っていた 「イタタタ………」と隼人は苦痛に眉を顰めた 烈は「スキーって普段使わない筋肉使うからね! 何度もリテイク繰り返して滑ったし、撮影のポーズは停止した状態だから、そりゃ雪の上に立つだけでも筋肉痛になるわよ!」と謂う 隼人は「本当に【R&R】の仕事は情け容赦ないのだ!」と謂う 「仕方ないじゃない、此方の要求以上に良い動きするから、此方も注文が多く欲張りになるのよ!」 「なら仕方ないのだ! オレ様は最高のモノをお届けしたいのだ! 烈との仕事ならば尚更なのだ!」 「隼人にー!」 「烈!」 と仲の良い兄弟は抱き合う それを竜馬がベリッと引き剥がし 「明日は食べ歩きの撮影なんすよね? 美味しい店が有ったら夜には其処へ家族で行くっす!」と謂う 家族はそれは良い!と喜んだ 阿賀屋が「ならば明日は俺が奢ってやろう! 雑誌とか三星には載ってないが、上手いと評判の料亭を屋敷の者に予約させておいたからな!」と謂う 清隆は「それは嬉しいよ!だけど蒼佑君無理しなくても大丈夫だよ!」と謂う 烈は「奢られておけば良いのよ! お館様の為なら傍にはいないけど、お付の者が控えて、主の意向に添い動くんだから! 蒼佑は何も苦労していないのよ!ねぇ、獅童!」と絡み酒ばりに難癖を謂う 鷹司も「そうじゃ!奢られておけばよいのじゃ!なら明後日 還る前に儂が奢ってしんぜよう! 本場ならではの札幌ラーメンじゃ!」と謂う 皆は喜び楽しく酒を飲んでいた もうスッカリこのメンバーで飲むのが定番になりつつあった 小鳥遊が「ならば飛鳥井へ還ったら、その夜は僕が奢ります!なので泊めて下さい!」と謂う 瑛太は「何日でも泊まられると良い!」と謂う 京香は瑛智と柚と共に大人しく食べていた 最近 柚は少しだけ大きくなり、行儀良く食事をしていた 凛はやはり暑い……と服を脱ぐ 太陽は団扇を取り出して扇ぐと涙目で服を着る、の繰り返しだった そして優しく「気温があると風邪引くからね!」と諭して謂うのだった 翌日の撮影も順調で、食べ歩き等のロケに出ている間に、飛鳥井の家族はスキーを堪能するのだった 今回は烈も滑った スキーウェアーを着込みスノボーを持ち、上級者用のリフトに乗り、上から一気に滑っていく 高難度の滑りをし、所々アクロバットな滑りも披露して、その腕前を見せる 神威はその横でレイを背負って滑っていた 凛は自分のスキー板で滑っていた 宗右衛門に仕込まれたから腕前はかなり上手かった 撮影隊がスキー場へ移ると謂うと烈は旅館へと戻った 邪魔にならないから、滑ってても構いませんよ! と謂うが烈は危険度を考えて旅館へと戻った 神威はそんな烈の気持ちを汲み取り、レイ 凛 椋をソリに乗せて滑っていた レイは「ちゅごいはやい!」と興奮する 椋は「ちゅこち……きょわい……」と謂う 凛は「きあいらー!」と熱く燃えていた 翔達も隅っこのゲレンデで滑っていた 真矢と清四郎も合流してスキーを滑っていた 二人とも年を感じさせない滑りで、テレビクルーは大興奮して撮影していた 撮影にあたり烈からこうやって撮影してくれ、的な要望があり、柘植はそれを烈からとは言わずに伝えていた そして締めは温泉 真矢はタオルを巻いて、その美しい肌をチラ見させて温泉に入っていた 清四郎は孫と温泉に入っていた 孫は海水パンツをはいて………何故か……… 祖父と温泉に入り楽しく撮影されていた 「成人になったら一緒にお酒を飲める日まで………頑張るからね!」 「ボクがお嫁さん貰って子供が出来るまで長生きしてよ!」と謂う そんな他愛もない話をして温泉に浸かる ホンワリ暖かい空気が漂う撮影に、カメラマンは泣いていた 何故 清四郎が孫と一緒に温泉入っていたかと謂うと……… 「じぃたん温泉の撮影かぁ、ボクも入りたいなぁ〜!」と言ったから急遽是非一緒に!となったのだ 真矢が、なら私と入りましょう!と言ったが………女風呂は無理だよ!と拒否された……… 真矢は「私も孫と入りたかったぁ!!」と呟く 少しだけ哀愁漂わせ………人間味溢れる姿に茶の間の祖父母的な年齢の人達には共感を得るだろう 大きくなるにつれ男の孫とはお風呂も入れなくなるのだ………… そんな出来の撮影となった 隼人達の食べ歩きは早瀬頼朝に烈は「ミッション」を課したのだった 「よりちゃん アイツ等は多分会話が成り立たないからね……… そしたら番組はポシャるしかないから、よりちゃん会話を回して行きなさい! その糧がきっと貴方の芸人人生の役に立つから!」と言って来たのだった 寡黙な笙 寡黙な咲楽 寡黙な篁 まぁ誰とも壁を作らない隼人は大丈夫だろうけど 早瀬には会話が振りやすい様に三人の情報は渡しておいた 趣味から仕事の内容まで、それで上手く回せと言う事なのだろう 其れ等を頭に叩き込み、早瀬は頑張った 話しやすい雰囲気と状況を作り出し、話せる話題を振る すると【聞き手】に御満悦で話をするから、ならば自分も!と話すのだ 場の空気は大盛り上がりして、早瀬頼朝は司会をさせても回せる実力があるとテレビ関係者の目に映り、仕事の幅を広げて行く事になるだろう 榊原笙はスキーは大学時代スキー場でバイトしていたと謂うエピソードを話し、やはり我が子の話になり、その時に見せる優しい顔と親バカ発言丸出しで話す姿にパパとしての仕事も増える事間違い無しの親バカブリだった 篁は意外にもアニメオタクな趣味を全開にした かなりの拘りの話に、親近感を抱く人達も多いだろう………と納得の話をした コレを見た視聴者はきっと篁ってお硬い役者かと想ったら違ったのな!とSNSサイトでは話題に上がるだろう、と思える程のオタクぶりだった 咲楽は一時期家がなくて、三社共同事務所の会議室で寝泊まりしていた時の話をした その頃【R&R】のオーディション受けたくて扱かれてクタクタで、休暇もなくて、ソファーの上に転がったら泥のように眠っていたんです! 本当に動くのも億劫で、疲れ果てて会議室で寝てたら、隼人の事務所の副社長に 「何この汚い部屋は!あ~!不潔で仕方ない! カビが生えるよ!このままだと!!」とハタキで叩かれ、除菌されたんですよ!と謂う話をした この番組が放送されたならば、私生活は凄いセレブでスマートで………と思っていたファンは驚きまくるだろう…… そして親近感を持つ事間違い無い そして此処でハタキを持って叩いた、一条隼人の事務所の副社長 小鳥遊の話題に上がる事 間違いなしだろう こうして連休の3日掛けての撮影は、予想以上の収穫を得て無事に終わった 皆大満足でテレビクルーは「良い仕事させて貰いました!」と大喜びだった この番組はこれから編集に入り、皆が目に出来るのは1月下旬頃だった 隼人のスキーウェアーのCMと雑誌の発売日もその頃だった 飛鳥井の家族は楽しい三連休を存分に楽しみ帰宅した そしてまた日常へと戻る 家族はまた来年 仕事は関係なく来たいね!と話をしていた 隼人達の旅行番組が流れた1月下旬 隼人と篁と笙と我空との気さくな対談を見た者達は、やはり我空の話に出ていた人物が話題に上がり、皆が興味を持ちSNSサイトではどんな人なのか?で盛り上がっていた それに目をつけたワイドショーが、三社共同事務所に取材のオファーをして来たのだった 取材は総て外でやる、を徹底した小鳥遊は撮影スタジオにわざわざ出向いて行った 小鳥遊は40代後半 でもその姿は俳優でも通る程のイケメン顔をしていた……… が除菌してハタキで叩いた……の下りで話題となってしまったので取材を申し込む者も、どんな鬼が来るのか………と想っている者いて、戦々恐々でいたから出鼻を挫かれた事となった 本当にハタキで叩いたのですか?と質問され 「あ~、その話ですか? それは咲楽が悪い! その頃の咲楽は三社共同事務所の会議室で寝泊まりしてましたからね! その会議室を掃除もせずに汚く使っていたので、怒りました! 誇りだらけで掃除もまともにしてない部屋なんて、健康にも悪いし、カビが生えますからね! 下手したらキノコが生えますよ!」と怒りながら話すのだ その綺麗な顔が青筋を立てて話す 迫力だった……… 何故 咲楽我空は事務所で寝泊まりを?をと聞かれると 「彼はパリコレとかの仕事が増えて、家の更新を誰にも頼まなかったので、見事に倭の国にいる時に住める部屋がなくなったのです! 『そんな怠惰なヤツにはお仕置きよ!事務所で寝泊まりさせない!」とアドバイスを下さった方が言ったので、事務所で寝泊まりさせていたのです! 彼は最近まで事務所の会議室で寝てました! 無論 それ以降は掃除してましたけどね!」 と爆笑していた まさかスキャンダル出して、烈に借金三分の一減るまで事務所で寝なさい!と言われていたなんて言えないからだ………… 今はちゃんと部屋に住んでるのですか?と聞かれると小鳥遊は更に爆笑して 「仕方ないので、今は柘植が事務所で管理して住まわせてますよ! でなくば次はホームレスよ! もう二度と家には住ませないからね!と言われてますから!」と話す その綺麗な顔とのギャップに取材に来た者が唖然となる その映像はワイドショーを騒がせた パリコレでは完璧なランウェイを歩くモデルが………マンションの更新忘れるドジっ子だとは…… そして小鳥遊はトドメの言葉を置き土産として放った 「咲楽我空と謂う男は、仕事は完璧にしますが、それ以外はボッサボッサのヨレヨレ着て過ごしたりするヤツです! 皆さんが想像する様な完璧なモデルルームみたいな部屋でワイン飲んでる奴じゃありませんよ? 涙脆いし、良く洋画見て号泣してますから…… アイツも人間ですから!」 そう言い笑い等身大の我空を知ら示めた 隼人が完璧なスキーを滑ったスキーウェアーを着て撮影した雑誌も スキーウェアーを着て撮影したCMも 飛ぶように売れ完売となった ついでにスキーウェアーも売れまくって 物凄い経済効果を齎してくれ、金一封を社員全員に渡した程だった 近年 スキーが注目を其処まで集める事もない それがスノー競技以外で陽の目を見たのだ 其れ程に一条隼人のスキー姿は格好良く、あのウエアを着た彼と一緒に滑りたい!!なんて願望に駆られ爆売れしたのだった 真矢と清四郎の旅番組も物凄い視聴率を叩き出した 榊 清四郎が孫と風呂に入ってる!!と番組を見た人達から騒がれ話題になると、見過ごした視聴者が再放送を!と熱望の電話が鳴り止まず急遽再放送が決定した あれ?【R&R】のリーダーよね? と騒がれた ファンは【R&R】のリーダーは榊 清四郎と榊原真矢の【孫】だと知っている 榊 清四郎の鍛え上げた体は、年齢を感じさせない若さを感じていた その上 孫と温泉に浸かる姿は、祖父として生きる生き様も垣間見え、人々を喜ばせた そして真矢の「私も孫と入りたかったぁ〜」の嘆きは、孫の成長の早さに……祖母の感じる寂しさを共感出来ていた 今回の撮影はどれも高視聴率を叩き出していた 再放送までもが、高視聴率を叩き出し番組スタッフは嬉しい悲鳴を漏らしつつ安堵していた 今時 スキー番組とか食べ歩きの番組などありふれ過ぎていて………視聴率など稼げない事が多いのだ 番組の感想には篁さんの意外な面が見れて良かった、との感想も多かった そして真矢と清四郎の旅番組には、何よりラスト15分に出て来た孫と一緒に温泉に入る姿は驚きと感動でした!との感想があり、テレビ局側は今回のお孫さんはたまたま参加されただけです!と注意文が着けられた 飛鳥井はそんな喧騒など何処吹く風とばりに、静かだった そんな頃 堂嶋正義が烈にコンタクトを取って来た 堂嶋正義は飛鳥井建設の方に尋ね、来賓室に通されたと西村から連絡が入った 会社に出勤していた烈は秘書の西村から 「来賓室に兵藤貴史が堂嶋正義連れて来てるぞ!」と告げられた 兵藤はカラフ王との調整で、三連休の北海道へは逝けなかったのだ レイが雪国の写真をラインで送ると 「俺も行きたかった!畜生!」と叫びの返信があった かなり苦労して調整を取っていたのだろう 来賓室に烈が来ると兵藤は 「此れからドゥバイの大使館横にあるホテルまで来てくれ!」と謂う 堂嶋正義は「秘密裏で飛鳥井へ行ったんだって? 『ったく……国賓級の客が観光客並に歩くんじゃねぇ!』って唐沢が怒り狂ってました 私も同じ意見です! 彼は何をしに飛鳥井へ逝かれたのですか?」と問い掛けた 烈は「預言者による謝罪を謂れ来たみたいね! でも本人、国王の自分が何故こんな子供に謝罪をせねばならぬのだ?と不満たらたらな顔してたわよ」とフンッと鼻を鳴らして謂う 堂嶋は「預言者からの言葉でしたか……… 何故に謝罪を受けたのか?教えてもらえますか?」と問い掛けた 「飛鳥井に集中攻撃したハッカー集団がいたのよ その発信元がドゥバイからだったのよ!」 あぁ………成る程と堂嶋は納得した 堂嶋は「ではお願いします!」と謂う 烈は「母しゃんに移動する時はラインしないと駄目なのよ!」と言い携帯を取り出してラインした 「母しゃん、正義ちゃんが来たから、ドゥバイの王に逢ってくるわね!」 通知があるのを知ると康太は即様に携帯を開いた そして烈からのラインを目にする 『オレも同席した方が良いか?』 「母しゃんは同席しない方が逆に良いわ 彼にとっての助け舟にされたくないでしょ?」 『…………だな………危なかったらオレを呼べ! そしたら伊織と共に駆け付ける!』 「解ったわ、なら行って来るわね!」 『無茶すんなよ!』 「解ってるわ!」 そう言い烈はラインをスーツの内ポケットにしまうと 「正義ちゃん、王様はどっちのボクに用があるって?」 そう問うと堂嶋は「飛鳥井烈、だ!」と答えた 兵藤は「そもそも、あの外国では宗右衛門と謂う存在すら理解してるか?定かじゃねぇだろ!」と謂う 「なら、このままで良いわね!」 そう言うと烈は立ち上がった そして一階に降り、正面玄関前に停められたお迎えの車に乗り込んだ 兵藤は後部座席に烈と共に車に乗り込むと 「ネコはどうしたよ?」と問い掛けた 烈のスーツの胸ポケットからクーが顔を出し、両サイドのポケットからルーとスーが顔を出した そして走り出した車の屋根がドンッと音がして、カリカリと爪の音がする 兵藤は「ひょっとして………トキか?」と問い掛けた 「そうよ、此方も準備万端で逝かないとね!」と謂う 兵藤は顔色を変えて「それって何かあるって事なのか?」と問い掛けた 烈は何も答えなかった 堂嶋も「それはどう言う事ですか?」と問い掛ける 「真意が視えない相手だからね、ただの謝罪ならば、大臣クラスで事足りるわよ! 王が出て后とワンセットで何の話よって事よ! まぁこの前はあまりにも無礼な視線向けて 『賢いとは聞いたが、此処まで頭が回るとは………』なんて巫山戯た呟きをしたから、部屋の隅にカメラ隠して映像撮らせていたのよ! それをクリスに送ってやったわ まぁ無礼は許さん!と言ったのに、護衛がボクを掴もうとしたりしたからね 弁えてない護衛とか論外だと、りゅーまも怒り狂っていたのよ!」 堂嶋は、それは……ドゥバイだとて敵に回したくない存在 クリストファー・オブライエンだろから………立場はもっと悪くなるだろう……と想った 東京に車を走らせドゥバイ大使館に到着する 車は其処で停めて、ホテルへと向かう この日はホテルは休日にしてあるのか?客はいなかった ホテルに入るとラウンジを通り過ぎ、とても上等な調度品の置かれた部屋へ通された 部屋に入るとカラフ・ジャッジムは、烈を見付けて深々と頭を下げた 横にいるセーラ妃も頭を下げた 烈は何も言わず能面の様な顔で見ているだけだった 堂嶋はこんな顔した時の烈は……康太よりもタチが悪いのを知っていて………困っていた 大切な大切な命の恩人であり友なのだ 今は時々雪哉を入れて三人で、時には竜馬を入れて四人でお茶する仲なのだ 堂嶋は静観する事を早々に決めた 何も言わない烈に焦りセーラ妃は 「どうぞ、お座りになって!」と謂う そしてお茶を運ばせ、烈の前に置く 胸ポケットに忍び込んだクーが、烈の好きな紅茶の匂いを嗅ぐと 「駄目だ烈!毒入り紅茶だ!飲むな!」と謂う 烈は「何それ?チープ過ぎない?」とボヤく カラフは「我等は毒など入れたりはしない!」と叫んだ 烈は唇の端を吊り上げ嗤い 「ならば御自分で飲んでみれば?それか配下の者に飲ませたら?」と謂う 堂嶋は「どんなおつもりですか?謝罪とお聞きしましたが?」と眉を顰め謂う 烈は紅茶に指を突っ込み味見する 「中東諸国辺りに生息するアスプコブラの毒かしら?この紅茶を科捜研に持って逝けば正確な蛇毒の成分が解るわ!」と謂う 「馬鹿な!給仕!来い!」とお茶を運んだ給仕を呼んだ そしてやって来た給仕に「このお茶をお前が飲んでみろ!」 とカラフは怒鳴った 給仕は震えながら王の前に跪き、烈の前に置かれた紅茶に手を掛け飲んだ すると悶え苦しみ………喉を掻きむしり……絶命した 目の前で繰り広げられる光景に………… 烈は嫌悪の瞳をカラフに向けた 堂嶋正義は「この者の遺体は我が国で司法解剖した後に、貴殿の国に返すとします!」と言いその場に鑑識を呼んだ ホテルにやって来た鑑識が目の前でサクサクと動き遺体を回収し、カップも回収していく その様を目にしてカラフは唖然となっていた たかが謝罪が………どんどん状況は悪化して行く……… 烈は「本当に王様ってヤツは武尊で品がない! 人の命を何だと想ってるのよ! まぁお国柄だから、別に良いけど………王と名のつく者は国民の命を背負い生きているって知らねば、あなたの国は滅びるわよ! ボクが手を下すまでもなくね、滅びて………ドゥバイ象徴の立派な建築物も崩壊の一途を辿るしかないわよ!」と謂う その言葉にカラフは「巫山戯るな!」と怒鳴った 烈は宗右衛門の声で 「巫山戯ておるのはお主じゃ!」と威厳のある声で一喝された カラフは、ひっぃ!と息を飲んだ そう言えば飛鳥井の家でも、子供なのに老人の様に嗄れた声で話していたな……と想う そんな時 当然 爆発音が響き………… ホテルのラウンジから爆発した火炎が吹き上げる衝覇で一瞬 何が起こったのか?解らずにいた 瓦礫やガラスが容赦なく其処にいた者を襲う 堂嶋と兵藤は烈を護ろうと即座に動いた が、目の前に大きな何かか現れ、爆風から護ってくれた 目の前は瓦礫の粉塵と火災の煙で何も見えなかった 煙で息もしづらくなって来るから……… 烈は「あぁーもぉ!トキたんやっちゃって!」と謂う トキが羽根を広げてバサッと羽ばたくと、瓦礫は天高く舞い上がり………… 煙がなくなると烈は無傷で立っていた 烈は堂嶋に「何度も何度も怪我させられたら、治りも悪いのに………せんせーに怒られちゃうのよ!悪いけど………瓦礫の被害に遭う人出ちゃうかも!」と言った 「仕方ないですよ、我らが無傷なのはトキ殿のお陰ですから!」と謂う カラフは烈の横に立つ………規格外にデカいトリを見た 「それは何ですか…………」 カラフはやっとの思いで問い掛けた 烈も堂嶋も兵藤もそれには答えなかった 「正義ちゃん、唐沢呼びなよ! そして瓦礫の被害者探すのよ! こんな事態を公表出来る訳ないから………仕方ないけど爆破テロで処理するしかないわ!」 「そうですね………ならば我等は………どうします? ホテルにいたと謂っても無傷なので………通りますかね?」 「その為の唐ちゃんじゃない!」 「それもそうですね!」 堂嶋は即座に唐沢に連絡を入れた 現状を聞いた唐沢はギャーギャー騒いでいたが、さっさと電話を切り現総理 八木澤 克英氏に連絡を入れた 八木澤克英は安曇派の叩き上げて来た議員だった 三役が話し合い、鷹司が駆り出され、ついでに宗右衛門も駆り出され選出した総理だった 表向きは総裁選挙をやり当確を貰ったが、裏では根回しがされていたのだった 堂嶋は即座に総理に連絡を入れ、その場には飛鳥井宗右衛門とドゥバイ王 カラフがいた事を伝えた 場を設けたのは総理も閣下も陛下も知っていた …………が、まさか会談の場に爆発物を仕込まれていたとは……… その上、烈を毒殺しようとしたとは……… 烈は「悪いけど毒殺しようとする奴とは対話の席に着きたくもないのよ! ボクは帰るわね! トキたん達がいなかったら……ボク死んでたわよ」と怒りを露わにして謂う 烈はケントを近場に待機させていたのだった ケントに連絡すると、ケントは即座に来てくれた 烈は還る前に 「ドゥバイは此れより戦火となるわよ! 貴方はどう動く?さぁ覚悟を決めなさい! 今 この瞬間 貴方の運命は動き出した 決めるのは貴方 動くのは貴方   地獄へ堕ちない事を願うわ!」 とだけ言い残し、そそくさと帰宅の途に着いた その時、スーを兵藤のポケットに入れて去ったのは………誰も知らなかった 烈が去っても………カラフは唖然として……動く事も叶わなかった 烈の言葉がグルグル脳裏を回る……… 其処へ唐沢が班の皆を連れてやって来た 悲惨な状況に規制線を張ったり、消防や警察の現場検証を迅速に出来る様に手配した そして王様と妃には移動を願った 大使館の方へカラフは妻と共に移動して行った 現場検証をある程度終えた唐沢は大使館の方へやって来て堂嶋に 「鑑識から、さっき回収した遺体からアスプコブラの毒だと上がって来た!」と堂嶋に知らせた 堂嶋は「烈の見立て通りが、流石 毒を体内に収めて生きて来られた一族だけあるな!」と謂う 「烈、この場にいたのかよ?」 唐沢が聞くと堂嶋は経緯を話した 話を聞き唐沢は「クーが烈に毒なんか飲ませるかよ!」とボヤいた そして「何したら此処まで吹き飛ぶのよ!相当威力のある爆発物だったわけじゃねぇだろ?」と謂う 堂嶋は「トキ殿がいたからな!」と謂う 「あぁあの鳥なら軽く羽根で吹き飛ばすのなんてジャブ程度でこうなるよな………」 カラフは「あのトリやネコは何なんですか?」と問い掛けた 堂嶋は「それは我等が貴方に話す事はない!」と言い唐沢と共に一礼して大使館を去って行った 去る時堂嶋は「我等は二度と貴方の願いは聞きはしない!毒殺や爆殺させようとする者に合わせる理由などない!早く帰国されよ!」と言い大使館を後にした 益々 追い詰められたカラフは………雁字搦めになり………頭を抱えた まさか王の来賓を毒殺したり爆殺しようとするなんて………… セーラ妃はイギリスの叔母様に当たるロザリーに事の詳細を話し助けを求めた 情報収集せねば………倭の国へ体良く追い遣られ………その間に…国を乗っ取られたら……… 戦火の中 国にいない王など……反逆者扱いされたとしても………申し開きなど出来はしない…… その考えが………消えてなくなりはしなかった セーラ妃は息をするのも忘れる位………目を瞑り座っていた すると其処へ来客が告げられた セーラ妃は「お通しして!」と謂うとその場に姿を現したのは………フランス人形の様に綺麗な女性だった 「わたくしはジョセフィーヌ・アデレーゼ・フィッツロイと申す女王の番犬をしております! 貴方達は飛鳥井烈に手を出す事は……世界を敵に回すと想いなさい!とロザリー様から言われませんてしたか? 私共は………影で常に彼を見張り安全を護っていました!それを!貴方達は烈を殺そうとした! 国際問題だと………解ってらっしゃるのですか?」 とジョセフィーヌは熾烈な言葉を吐く セーラ妃は何処かで助けて貰える為に、寄越してくれた者だと想った が、そうでなくて唖然としていた もう自分はイギリス皇室とは何の関係もない者だと………宣言されたも同然だった ジョセフィーヌはセーラ妃の前に一枚の紙を置くと 「貴方達は……見事に国を抜け出した卑怯者の王となりました!」と言葉にした ドゥバイは今 クーデターが起きていて……… 王は今は国はいない 王は国を捨てて国外に出た! とのニュースに………カラフは 「預言者に謀れたのか?」と言葉を吐いた ジョセフィーヌは「その様ですね……どうなさいます?」と問い掛けた 国へ帰れば反逆者 倭の国にいても………王の肩書のない者に………生きる術はない どっちに転んでも破滅しかなかった ジョセフィーヌは「この大使館だとて本国の人間がいたならば……無事では居られないでしょ! わたくしと共に来て下さい!」 選択肢は皆無だった その言葉を飲むしかなかった ジョセフィーヌはカラフとセーラ妃を保護して、ドゥバイ大使館を去った ドゥバイの国乱は日増しに勢力を増して……… 血で血を洗う闘いとなっていた 反乱軍の方にはアッツラー神国成るものが、援軍を送っているから力量は一目瞭然だった 烈は総てが吹き出すのは2月として……… 母の誕生日以降と詠んで、温存をしていた 烈は過去最大の烈の髪の揺れに……… 戦いの火蓋が切って落とされるのは近いと感じていた ならば、母も、勝機を呼ばねばな!と康太も勝機を呼んでいた 母と息子の髪は揺れ、不敵に嗤う親子に兄達や胸騒ぎを感じていた……… そしてどう言う訳か………レイの髪も揺れていた 其処までの事がある 家族は覚悟を決めていた どんな衝戟が来ようとも、我等は倒れはしない 家族を護る為に、その命を散らしても仁王立ちで家族を守り通した源右衛門の様に……… 護ると決めているのだった

ともだちにシェアしよう!