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第25話 虎視眈々と ❸
三連休から帰還ってから烈は、精力的に次に住む住居の準備を始めた
四面楚歌 狙うなら全方向から追い詰められる筈だから………
だが母の誕生日はこの家で迎えたいから、何とか踏ん張ってこの日まで持ち堪えた
カラフ・ジャッジムが突然 飛鳥井を尋ねて来た日から警戒はしていたのだ
多分 あの訪問は火種となり、世界へ飛び火する
だからこそ、燃え上がる前に、やる事はやっておかねば!と着実に事を進めていた
あれから唐沢の班の子の深層世界を覗いてみた
深層世界には物凄くダメージを食らわされた子の意識が残っていて、弥勒に言い釈迦を呼び寄せプロテクターを掛けさせた
そして恐怖を取り除き、正義感を植え付け、精神を正しい道へと導いた
そしてわざわざ釈迦が来ているからと、瀬能の深層世界にも潜り込み、様子を見た
半ば隔離病棟へ入れ体から闇を抜いて、浄化された所で生活をさせ安定するのを待っていた
だからこの機会に瀬能の深層世界もプロテクターを掛けてもらいこき使った
瀬能の深層世界は荒れ果てていて、草木も生えない程に荒廃していた
夢もなく 希望もなく 愛もなく 未来もない
そんな瀬能の深層世界に烈は花の種をばら撒いた
「瀬能ちゃん 貴方は一人じゃない!
亡くしてしまった者はもう二度と戻りはしない
だけど貴方は一人じゃない!
だから前を向いて何時か新しい恋をしなさい!
そして家族を作りなさい!
皆が瀬能ちゃんが戻って来る事を願ってるからね!」
そう囁き呪文を唱えた
深層世界でそれをやる?と釈迦は驚いていた
下手したら廃人よ?
烈は「絶望へ向かう者の心は何時も空虚で何も無い
だからこそ人は笑うのよ!
笑えない子は希望の種を蒔いて前を向かせてやらないとね!」と謂う
釈迦は「希望の種?それ本当にあるんですか?」と尋ねた
「有るわよ、希望 絶望 失望 欲望 色んな花の種が有るわよ!」
「嘘…………それ出来るの皇帝閻魔位なのでは?」と唖然と呟く
「それは知らない!ボクはお師匠の弟子ですから
お師匠から聞いたので、それ以上は知りません!」
釈迦は「ミルゲ……お前恐ろしいの育てたんだな………」と呟いた
そして一仕事終えると疲れ果てて釈迦は
「あー!疲れた!私を持て成しなさい!
でないと弥勒んちに住み着いてやりますよ!」
と脅して謂うから、烈は軍資金を神威に渡して、釈迦をガード下の飲み屋に連れて行って貰い、毘沙門天とか弥勒で持て成してくれるように頼んだ
後は様子を見て、少しずつ現実を教えて行く
海坊主の方の縁を斬り、干渉されなくして、今は飛鳥井記念病院に移り体調を整えるまでになっていた
やっと其処までなっていたのだった
烈は、こまめに瀬能の病室を尋ねた
愛染と城田も毎日見守っていた
1月31日の夜 両親を新鮮な海鮮の買い付けに逝かせると、烈は翌日は社長の代理として出勤する事にした
翌朝 2月1日 烈は朝早くから支度して、スーツを着ていた
最近やっと桜林へ通学を始めたのだった
だが不定期での通学だった
必ず参加させねばならないZoom学級会とかには、何が何でも参加するが、それ以外は予定に合わせて参加していた
2月1日 この日は母の生まれた日だった
家族の大切な行事だった
烈は会社に出勤して社長室に入り、社長の仕事を上げていく
書類の山を一枚ずつ見て社長と宗右衛門の印を押して行く
その中で良くもまぁ、この書類が社長まで上がって来たな、と謂う書類を見付け、直ぐ様副社長を呼び出した
「何故この程度の書類が、此処まで上がって来ているのかしら?」と問い掛ける
志津子は書類を見て副社長の印が押さてるのを確かめた
一見、筋が通った書類だった
「志津ちゃん面談室にその社員を呼び出して!」
そう言うと烈は社長室を出た
志津子は秘書に書類に書かれた名前と部署を告げて面談室に呼ぶ様に言い烈を追い掛けた
面談室に行きその該当社員がやって来ると面談を始めた
「この書類は貴方が作成したのですか?」と言い書類を見せて確認させた
社員は書類を渡され見ていた
「はい!」と認めると
烈は社員に書類の詰めの甘さを教えた
何故駄目なのか、コンコンと社員に説明する
詰めの甘さ、見通しの甘さ、計算の甘さ
そしてタブレットで、この予算で、この土地で家を建てたらとうなるか?
予想を打ち込み現実を見せる
地質の甘さは建築業界では命取りになる事も多い
後 宅地とするならば許可や認可が必要となる
前に何が建っていたか?で話は変わる
何でもかんでも建てれば良い世界ではないのだ
宗右衛門に説明され、己の甘さや相手方の狡猾さに社員は顔を青褪めさせていた
副社長の志津子もまさか、この書類に其処までの不備があったのか……と真剣な顔で聞いていた
志津子も「私も勉強不足でした!」と謝罪した
宗右衛門は「儂もな、この世界に再び生まれて制度や法律を再び勉強のし直しとなった
今もまだこの進み過ぎた文明の100%も理解し難い程に、人も変われば文化も変わる
儂は今世生まれて浦島太郎の気持ちが良く解った
其れ程に世の中は日々進んでいるのじゃよ!
それと同じで、土地を買うにも履歴を追わねば土の下には何が埋まっているのか?
警戒せねばならぬ、土地の汚染 土地の残穢 地質 土壌 等など調べ上げて土地は買う
ポッと出の業者の土地など我が社は買わぬと決めておる!
だからこの企画やこの構造全てが不可なのじゃよ!
主は会社にリスクを負わせる気か?
会社の負うリスク、計算して本人もにも必ずやリスクは負わせる
主はリスクを負う気はあるのか?
その覚悟なく、書類は上げるな!
良くもまぁちゃんとした確認作業もなし書類を上げようとしたな!
副社長も、今度リスク回避の仕方を教える故!勉強されよ!
話は以上です!退席されて結構です!」
と指示を出して烈は社員を退席させた
社員が出て行くと、烈は用心の為、面談室の出口に鍵を掛けた
わざわざこんな精度が高いのか?低いのか?理解し難い書類を上げて来る意味を考える
すると自ずと嫌な予感に駆られるのだ
烈は椅子に乗って配電盤を開けると、配電盤一番下のスイッチをオンにした
そのスイッチは誰にも分からず取り付けた、強度の高いジャミングシステムだった
用心していても、何度も何度も蹴落とそうとする奴等に対抗するには、一歩も二歩も先手を考えねばならなかった
ジャミングを作動させると、焦げ臭い匂いが部屋に充満した
烈は面談室のエレベーターを呼び寄せると、6階へ上がって行った
6階と5階の中間に康太が作った監視システムの部屋をもっと規模を拡大させ、コントロールシステムを構築する部屋にしてあった
烈は全部署のジャミングシステムを発動させた
配電盤に直にジャミングが仕掛けてあった部署は電気が落ちた
烈はマイクをオンにすると車内放送を掛けた
「たった今 面談室から盗聴の機械が発見されました!
ジャミングを発動したら焦げ臭い匂いがして焼け焦げ不能になりました!
よって社内全部署のジャミングシステムを発動しました!
停電した部署は会議室に移動されよ!
中にスパイが存在する事になります!
調べ上げるまで、明日以降は全員自宅待機となります!
それでは速やかに移動お願いします!」
総放送を入れ、停電した部署をチェックする
電算室と人事部の二つの部署の配電盤から煙が出ていた
コントロールシステムの部屋を出ると、清隆と瑛太が心配して走って来ていた
清隆は烈の姿を見ると抱き締めた
「じぃしゃん どうしたの?」
清隆は「烈の館内放送聞いて心配で来たんだよ!
全部署に放送出来るのは社長室と此処しかないからね!」と謂う
志津子が烈の後を追いやって来ると、経緯を話して書類を見せた
志津子は「すみませんでした、私が書類を上げてしまいました!」と謝罪した
烈は「気にしなくて良いのよ、志津ちゃんが上げたって社長がチェックして見付けるかも知れないし、会長や相談役に上がるまでに見付ける事も出来る、そして宗右衛門の印なしで決済は出来ない
遅かれ早かれ誰が見付ける所なのよ!」と謂う
清隆も「そうです!その為のチェックシステムなのです!
だから我々は宗右衛門の印が押された書類なら安心して決済出来るのですが………
宗右衛門の印がない、それは絶対にチェックせねば、と気合を入れて精査せねばならないのです!」と謂う
清隆も「その前に前世に宗右衛門に叩き込まれた伊織がその不備に気付く筈ですからね!」と謂う
烈は話を終えると凜太郎に電話して
「飛鳥井建設に配電盤直しに来てね!」と謂う
凜太郎は『何故配電盤が壊れるのですか?』と文句の一つも口にする
「ジャミングシステムを作動させたのよ!
相当強力なので電力供給させていたのか?
配電盤焼き切れたわ!」
『あ~それはタチ悪過ぎ!
施工も近い内にチェック入れます!
では直ちに修理の者を行かせます!』と言い電話は切れた
烈は「宗右衛門の着物、会社用に作って貰うしかないかしら?」とボヤいた
清隆は「そうだね、会社の方で予算計上して作らせるとします!」と謂う
瑛太が「今日は着物ないのでスーツのままでお願いします!」と謂う
烈は「待って、暦也に社員の私生活とか調べさせるわ!後で該当社員の名簿は西村に送信して貰うから!」と言いラインで調査を頼んだ
ついでにバイク便の子達に臨時バイトの依頼をして、飛鳥井建設近くに配備してくれるように頼む
リーダー的な山城と謂う子が『了解』と謂う返信か来ると携帯をしまった
秘書の西村を呼び出し
「暦也に社員の名簿を暦也に送信しといて!」と頼む
西村は「了解した!」と即座に仕事に取り掛かった
烈は副社長、会長、相談役と共に、電源の落ちた部署へと向かった
突然の事に右往左往してる社員に烈は
「この部署の社員は自宅待機をして貰います!
精査した後に皆に話をします!」と謂う
電算室と人事部の社員に同じ様に伝える
統括本部長の陣内は「何があったんだ、話してくれ!」と言って来た
「詳細は社員食堂で話してあげるわ!
取り敢えず、陣内は指示を出しなさい!
他の社員は持ち場に戻り仕事しなさい!」と謂う
皆 仕事場に戻った
愛染と中村は「「何がありました?」」と問い掛けた
「愛ちゃんも中村も来ると良いのよ!」
そう言い烈はエスカレーターに乗ると社員食堂へ向かった
社員食堂の中は社員は誰もいなかった
烈は「和華ちゃん、食堂閉鎖して!」と謂うと和華子はカウンターから出ると社員食堂の扉を閉じ施錠した
和華子は「烈、茶で良いか?」と聞く
「お願いね!和華ちゃん!」と謂う
相談役 会長 副社長 宗右衛門が座る前に陣内 愛染 中村が座った
副社長が説明する
発端となった書類を三人に見せる
一見 完璧な書類だった
陣内は「この書類の何処に不備が?」と問い掛けた
烈は「栗田呼んで、志津ちゃん!」と謂うと
志津子は栗田に電話して呼び出した
「栗田です!」と食堂のドアの前で謂うと鍵を開けて中へ入れ再び施錠した
烈は無言で栗田に書類を差し出した
栗田はその書類を受け取ると、真剣に中身を見ていた
そして10分程書類を見た後に
「あ~此れは俺が昔 社長がまだ副社長だった頃に滾々と説教された地質のチェックがなされてない系の書類じゃないですか!地質、残穢、土壌、それらも明記してないばかりか、リスク回避もなされてない
こんな書類、宗右衛門が目にしたら即首だろうが!」とボヤく
陣内は「え!そんな駄目なのか!」と口にする
栗田は「お前は建築に直接携わってる訳じゃない
だがな、其処の宗右衛門ならば建築業界に身を置くならば、勉強しろ!と怒られるレベルの書類だぞ!」と謂う
陣内は「済まなかった宗右衛門!勉強するから!」と謝罪した
栗田が「で、この書類、何処の部署の誰の制作なんだ?」と問う
志津子は「え?建築の坂内と謂う社員です」と答える
栗田が「建築に坂内と謂う社員はいない!
そして建築やってるのが、現場じゃなくデスクにいて書類を書く事はない!」と告げると志津子と陣内はパニックになった
瑛太は冷静に話を聞き「この書類が発端と謂う事は、社内にスパイがいたと謂う訳ですか?」と問い掛けた
「そうね、ボクがこの書類見て面談室に呼び出すとするじゃない
そしたら盗聴器でも用心してジャミングシステム作動する
で、焦げ臭い匂いがしたら、社内も一斉にジャミングシステム作動すると踏んだのよ
で、2箇所配電盤が焼き切れた
少し前からネット攻撃受けてた飛鳥井だから、この機会はチャンスに捉えて、ネット攻撃しまくり、マスコミにでも情報売っちゃったりしてマスコミが騒ぎ出す
で、跡をつければご自宅GETなんて絵図描いてるのかもね!」
志津子は「え………其処まで巧妙に仕組まれていたのですか?しかも呼び出しに応じたのに……いないんですか?その社員……」と唖然となり呟く
「何をどうやったかは解らないけど、内部に潜り込んだヤツ等の仕業ね!」
瑛太は「どうしますか?」と問い掛けた
烈は「どうもしなくて良いわ!その社員なら等の昔に社外へ出て行ってるわ!」と謂う
そして「外に出たヤツは尾行させるわ!
その前に消されるだろうけど……
そしてまだ内部にスパイはいるわ!」と告げる
瑛太が「待機させた者の中にいますか?」と問い掛ける
「そっちじゃないわ、ボクの意識をそっちに向けたいヤツの仕業なだけで、まだのうのうと北叟笑んでいるわよ!
次は神取那智かしら?
それとも…………」と口籠りつつ考え込む
瑛太は「去年 株価操作され一時株の暴落ありましたからね……あの時は宗右衛門が気付くなり手を打ってくるたので、何とか命拾いしましたが……何度も続けば………持ちませんからね」
「それも今後手を打たないと駄目なのよね
母しゃんには話は通したから、秘密裏に動いてはくれてると想うわ!」
「そうですか……真贋まで駆り出されなければならないのですね……」
「なるべくは出したくはないけどね!
ボクは知らない存在ばかりだから……調べて貰うしかないのよね
取り敢えず話は此処までとしか言えないわ!」と気を取り直して謂う
清隆は「ならば食堂を開けて下さい!
昼なので社員も困ります!」と言い話し合いは終わらせた
瑛太は「今日は康太の誕生日だからね!
伊織が新鮮な魚を買って来てくれるので、早目に仕事を上がりましょう!」と謂う
和華子は食堂のドアを開けた
烈は立ち上がると
「さてと、四階に行きましょう!」と謂う
瑛太は「え?四階に?」と唖然となる
烈の肩の上にはいつの間に来たのか?白黒斑な猫が姿を現し
「待ってるからはようしぃや!」と怒る
四階にエスカレーターで下がる途中
ギャャャャャャャ!と謂う声が響き渡った
「片付けなきゃ母しゃんの誕生日祝えないじゃないの!」と烈は怒る
四階に到着すると一人の男が、白黒斑の猫に取り押さえられていた
真っ白な猫が二足歩行で立っていた
白黒斑の猫が男を取り押さえていた
社員は何が起こったのか?解らずにいた
烈は男の真下に魔法陣を出すと
「闇に染まりし魂は浄化の道を辿れ!」と言い呪文を唱えた
すると男は「おのれぇぇぇぇぇ!」と断末魔を上げて魔法陣へ吸い込まれ…………消えた
烈は「こんなに容易く入られちゃうとはね!」とボヤいた
スーが「やはり結界がチップ対策やから、それ以外を考えんとあかんのやな!」と謂う
ルーが「それは言えるけど洗脳に対策出来るのなんて無理だろ?」とボヤく
クーは「何でも良いから自己紹介しとけ!」と謂う
ルーは深くお辞儀をすると「ルーと謂う烈の猫です!」と謂う
スーは「わいはスーと謂う烈の猫や!」とご挨拶
烈は「他に闇に染まった子いない?」と問い掛けた
ルーとスーは辺りを見て「大丈夫!」「やで!」と答えた
「なら大丈夫ね、洗脳………洗脳対策………其の内頭のチップも雷食べ始めたら効かなくなるじゃない…………そしたらどうするのよ?」
烈かボヤく
クーとルーとスーは3匹で何やら話していた
社員達はモフモフの毛並みの良い猫達を見ていた
あぁ、触りたい………女性社員達は想った
あぁ、撫でたい………男性社員達も想った
烈は「取り敢えず、皆仕事に戻って!」と謂う
そして副社長 会長 相談役と共に四階を後にした
栗田と陣内、愛染と中村も仕事に戻った
烈は「今日は母しゃんの誕生日だから、残業したくないのよ!」と謂う
施工の社員達がやって来て配電盤の修理をする
それが終わるのを見届けて、烈は飛鳥井の家に帰宅した
自宅に帰ると既に兄達が帰宅していて、誕生日パーティーの飾り付けをしていた
そんな兄達に烈は
「暫く会社に来ちゃ駄目だから!」と告げた
翔は「了解した、でも後で詳細は話してね!」と謂う
「なら夜にでもチャットルーム開くわね!」
と謂うと兄達は頷いた
烈は部屋に着替えに行く前に、キッチンに顔を出すと榊原が料理をしていた
「父しゃんお帰り!」と謂うと榊原は笑顔で
「ただいま、そしてお帰り烈!」と謂う
「新鮮なの買えた?」
「はい!それはそれは新鮮なの買って来ました!」
「なら皆を呼ぶね!」
烈は部屋に戻りスーツを抜き捨てるとジャージに着換えた
着替えてる最中、竜馬がやって来た
「烈、晟雅にはもう連絡入れたっすか?」と問い掛ける
「まだよ、少し会社で大変な事あったからね
其処まで手が回らなかったわ!」
「明日は手伝うっす!
晟雅達には俺が連絡いれるっすね!」
竜馬はそう言い神野達にラインで
「今日は康太さんの誕生日っす!
皆で楽しもうと謂う事なので来て下さい!」と送った
飛鳥井は誕生日に高価なプレゼントは廃止した
宗右衛門が管理する様になってからは、それは徹底して廃止となった
ラインを貰い神野達は【是非行かせて貰うよ!】と返事をくれた
其処へ兵藤もやって来た
「お~い、康太の誕生日何人位来るのよ?」と問い掛けた
烈は考え込んでいて聞いてない風だった
兵藤は「烈?」と問い掛けた
竜馬は兵藤を連れて客間に強引に向かう
「今日は何が何でもこーちゃんの誕生日を完遂しなきゃならないっす!」と告げた
兵藤は「おー!問題が起きたならば明日一緒に行けば良い事だしな!」と言った
その夜は盛大な康太の誕生日をやった
康太は子供達全員の制作のケーキを目の前に置かれ
「嘘、こんな綺麗なの………オレの為に作ってくるたのか?」と言葉にした
流生が「太陽がデザイン考えて!大空が主体となって作ったんだよ!」と謂う
太陽が「その薔薇の花は烈が作ったんだよ!」と謂う
すると康太は「あぁ、宗右衛門は帝国ホテルの主任シェフしてたかんな!」と謂う
榊原も「僕は宗右衛門の下で料理を叩き込まれて作らされていましたからね!」とボヤく
兵藤は「何で建築屋のお前等がシェフしてんだよ?」と問い掛けた
康太は「そりゃ建築一本で食えない時期があったからだよ!
2月と8月は仕事が手薄になるからな、食う為に腕を磨かねぇとならねぇ時期があったんだよ!
で、宗右衛門と伊織は帝国ホテルでシェフの出稼ぎに行き、オレは給仕担当してたんだよ!
んとに、宗右衛門とワンセット転生は過酷でさ……建築も今の規模にするまで出稼ぎは当たり前だった!
猟師もやったよな?
熊を一発必中で仕留める腕前だと出稼ぎに行って荒稼ぎしたよな?
当然越前に出稼ぎに行ってカニ漁しまくって荒稼ぎしたよな……それで何度死にそうになったか……」とボヤく
榊原は「康太の乗り物嫌いのルーツは其処にありますからね!」と笑う
皆も笑って話を聞いていた
神野は「真矢さん達は来てないのか?」と尋ねた
その場にいないからだ
烈は「呼べないわね、飛鳥井の家も暫くは別へ移さないといけなくなってるからね!」と答えた
康太は「幼稚園の上か?」と問い掛ける
「其処じゃないわ!
別の場所へ明日移動するわ!
まぁ今夜は楽しい誕生日だから、その話はまたね!」と謂う
その後は皆 楽しく飲み始めた
烈の携帯は常に通知音でブルブルと震えていた
早目に烈は「少し疲れたわ!ボクは寝に行くわね!」と言い客間を出て行った
竜馬がその後を追う
レイも烈の後を追う
凛はそれを横目で見て、椋と目配せした
そして何事もない様にケーキを食べまくっていた
康太は「んとに……ちっとも落ち着けねぇのな………」と悲しげに呟いた
スーが「康太はん、こんなんは射程範囲内ですわ!明日はわいが新居に案内するさかい、ドーンと任せて欲しいわ!」と謂う
ルーも「その準備に飛び回っていたんですからね!」とグビグビ酒を飲み謂う
プーは「まぁ今宵は誕生日やから無駄な事は考えんでもええねん!」と言いグビグビ酒を飲む
康太は「んとに呑兵衛な猫ばっかしやんか!」とボヤいた
榊原は笑って「仕方ありませんよ、元は呑兵衛なヤツの猫なんですから!
宗右衛門は酒豪の異名を持ってましたからね!」と謂う
「あ~宗右衛門だもんな!大穴のあいたザルだったわ!」と笑った
家族も楽しげに笑い飲む
穏やかな康太の誕生日だった
翌朝 飛鳥井の家から家族は消えた
元々が何処に住んでるのか?
解らない状態だったのに、更に解らなくなっていた……
烈は慎一に頼み少しずつ生活用品を移動させていた
2月2日に焦点を当てて、移動出来る様にしていたのだ
毎日 荷物や着替えを車に詰めて会社へ運ぶ
会社へ出勤したらその荷物は宗右衛門の部屋に置く
宗右衛門はスタッフを使い、それを新居に運んでいた
温室の流生の花も新居に運ばせた
移動出来ない花はプーが水遣りに行き世話をする事になっていた
温室の電源はソーラーパネルで賄っていたから、電気をブレーカーごと落としたとしても、作動する事が出来るから残していたとしても、影響は受ける事はなかった
会社に出勤して来た康太と榊原は、宗右衛門の部屋を訪ねた
昨日 烈が社長の仕事を大半片付けてくれたから、話をしようと宗右衛門の部屋を訪ねたのだった
康太は「新居って何処らへんにあるのよ?」と問い掛けた
仕事していた烈は部屋に入って来た両親の質問に答えす、何やらやっていた
そしてキリが着くまで放置した
キリが着いたら立ち上がりソファーに座った
「会社の近くに母しゃんがくれた会社が駐車場として使っていた土地あったじゃない!」
康太は会社を建て替えた時に地下に駐車場を作ったから、会社が使用していた駐車場は空き地にして持っていた
元は源右衛門が譲渡してくれた土地だった
広大な土地は何時か宗右衛門が生まれ、回していくと願いずっと持っていたのだった
それを宗右衛門が正式に表に出て動き出した年に、烈に譲ったのだった
烈は「あの土地にタワマン建ったの知ってる?」と問い掛けた
「おー!何かすげぇの建ってていたな
何か何年も建築に掛かってたし、飛鳥井も企業体の中に組み込まれて、建築に携わっていたが………
烈が手放したのかと想っていた
実際 薬局事業も火の車だったと聞くしな
手放したなら仕方ねぇって想っていた!」
「手放してないわよ!
この会社も5年以内に移転するわ!
ボク 新しく家を建てる土地の話をした時にファミレスの土地、幾つか手に入れた話ししたじゃない!」
「あぁ言ってな!
でもこの会社はまだ10年経ってねぇぞ?」
「セキュリティに特化してないからね
考えなきゃって想っていたのよ
だからこの際 セキュリティに特化した会社を!と想い着手したのよ
まぁもう少し軌道に乗せないと、何処に、とかの話は出来ないわね!」
「それで良い!オレ等は宗右衛門の示す果てに逝けれれば良いだけだからな!」
「で、新しい家は」
そう言い烈はメモ帳を取り出すと、態々古代ルーン文字で書き、目視で確認した後燃やした
タワマンの話をしたのに………住む場所は其処じゃないとは………
本当に曲者だった
康太は立ち上がると「んじゃ、移動の手筈は頼むぞ!」と言い榊原と共に部屋を出て行った
仕事を終えた家族は宗右衛門の部屋を訪ねた
すると烈はジャージ姿でリュックを背負い待っていた
烈は「にーに達はプーが案内して慎一きゅんが連れて行ってるわ!」と謂う
「隼人達はどうするのさ?」と康太は問い掛けた
「スーがお迎えに行き連れて来てくれるわよ!
飛鳥井の家族じゃない!
もうじき家族も増えるからね、ボクは頑張って果てへと繋げて逝かないとならないからね!」とフンフンと鼻息荒く謂う
清隆は「家族………増えるんですか?」と問い掛けた
「うん!ボクが産んだからね!」
と烈がジョークを謂う
家族はタラーンとなり黙った
「今 卵だから孵化したらうちに連れて来るわね!」
何処まで本当で、何処まで冗談なのか?解らない……
玲香は「何人増えようとも構わぬよ!
今世は宗右衛門は顔見世に重きを置くと申したからな、瑛太とも清隆とも増える可能性は想像がついておったからな!」と謂う
康太は「母ちゃんすげぇな!」と嬉しそうに謂う
烈も「ばぁしゃん凄い!」と嬉しそうに言った
榊原が「其れでは行きますか?」と謂う
烈は「なら地下駐車場まで行くのよね!」と謂う
皆 エレベーターに乗り込み地下駐車場まで行く
地下駐車場まで行くと、幼稚園とは正反対の方へ歩き出し非常扉を開く
黙々と歩いて行くと何処かの地下駐車場へ出た
地下駐車場からエレベーターに乗り1階に出て、正面玄関とは反対へ進み、関係者専用の扉を鍵を開けて外に出ると源右衛門の土地に建ったタワーマンションだと理解する
烈はタワーマンションの横の通路を通り、非常口の鍵を開けてお隣のビルへと入って行った
お隣のビルは………嫌 誰かのお宅なのか?
タワマンと区別を着けたいのか?
門扉が異様に高く、外から見ただけでは解らない5階建ての建物だった
道路に面した場所には防犯カメラが幾つも設置してあり、タワーマンションの間の細い通路でさえ防犯カメラが向けて設置してあった
通用口から玄関に向かう
厳重な門扉を開けて2階へ行く階段に登り重厚感のあるドアの鍵を開けて中へ入る
玄関にはシューズクロークがあり………
シューズクロークの中は防犯カメラのモニタールームだった
そして家の中へ入り、一階の応接間へと向かう
応接間には慎一が兄達やちっこいのやら北斗達を連れて待っていた
応接間に入るとソファーがあり、皆ソファーに座った
烈もソファーに座るとニコッと笑い
「タワーマンション建てる時に隠れ家も建てたのよ!元は源右衛門の土地を母しゃんが相続して、元飛鳥井の駐車場にしていた場所なんだけどね
結構敷地面積あったからね
端っこを隠れ家用にして建てたのよ」と謂う
きっとこんな風に、ビルを建てたついでに隠れ家を幾つか建てていたのだろう
康太は「この家 外は何か厳重過ぎて、おい………と想ったけど、中は飛鳥井の家と変わらねぇんだな!」と謂う
「そうね、でも今回の家具は……大丈夫だとは想うけど獅童御用達で用意させて家具だから………
祓わせたけど、なにか視えたら言ってね
髪の毛引っこ抜いて祓わせるから!」
榊原は「凄い調度品もありますが、良いんですか?」と問い掛けた
「良いのよ!霞ヶ浦の調度品の中に国宝級のあったから、それと交換だったから!
それでも損はしてないわよ!
ウハウハで満足な利益はあったと想うわ!」
「あぁ、安曇総太郎は蒐集化だったかんな!
国宝級のなんてバンバンあったろうな!」
「まぁ其れでも呪物だから、今後は一切 家には持ち込むな!と厳命されそうよ!」
「あ~年末にすげぇ事になってる……蔵を焼き払ってやったかんな!
相当呪われてると想ったら霞ヶ浦のもあったのかよ?」
「そうなのよ………霞ヶ浦の家の中のなんか、蔵にいれたら大変な事になるわよ!
緑道に雷落とされて、物凄く悄気ていたから、湯河原の方に在った築百年近くの古民家を、丁度タイミング良く凜太郎が購入したと言ってたから、使い道ないなら譲ってって言ったのよ
何でも凜太郎、古民家カフェなるものを妹が遣りたいと言ってたから購入したらしいのよ
で、リフォームしようとしたら、目が飛び出る程高くて……古材買って古民家風に建てた方が安上がりだったみたいなのよ
その上今年の寒波でとてもじゃないけど住めないし、リフォームするのに幾ら掛かるんだ!レベルだから譲っても良い!と言ってくれてね
格安で譲って貰ったから、柱は取っ払ってより強固に補強して獅童の名義に変えてプレゼントしておいたのよ!
其れ込みの家具を要求したから、応接間の調度品も豪華になったのよ!」
あ~成る程………ケチな宗右衛門らしく、対価を要求したのだろう…………
烈は「会社には地下駐車場へ出て、通路を通れば歩いても行けるのよ!
でも車に乗りたいならタワーマンションの地下駐車場へオーナー用のスペースがあるから、其処へ停めると良いのよ!」と謂う
清隆は「部屋を案内してくれませんか?」と謂う
烈は立ち上がると部屋を案内した
「1階はかなり広くした応接間と客間と源右衛門の部屋 そしてみかちゃんとヨーコの部屋 そしてりゅーまの部屋よ
兵藤きゅんは源右衛門の部屋で生活しても大丈夫なのよ!」
と言い案内して行く
そして階段を上がり2階へ出ると
「2階が玄関 そしてシューズクロークには監視カメラが設置してあるモニタールームとなっているわ
そして手前からリビングとキッチン
そしてえーちゃん夫妻とその横に子供部屋があるわ
じぃしゃんとばぁしゃん そうーちゃんと悠ちゃん カズとリキちゃん!
それぞれ部屋は分かれててバス・トイレ着きの2D.Kの広さです」
そして3階
「3階は北斗 和希 和真 永遠 レイたん 凛 椋 そして双子である次代の恵方と竜胆の部屋となります!
慎一きゅんはこの階で次代の子の面倒を見て欲しいから2D.Kバス・トイレ着きの広めの部屋にしてあります!
今回はお風呂は大きめで、トイレは混雑を予想して三個作られてます」
そして4階
「4階はボク達兄弟の部屋、ボク達の部屋も3階と変わらずお風呂場は大きく トイレは三個着いてるわ
部屋の大きさは1DKです
そしてネコの部屋 温室のハンモックが気に入ってるからドアを取っ払いジャングルバリの観葉植物を置いてハンモックを入れたのよ
そして5階
「5階は母しゃん達の部屋とワン達の部屋です!
完全防音でワンのトレーニング部屋と流にーの温室とサンルームにはランドリールームが作ってあるわ!
今回の家はベランダがありません!
敢えて外に出られなくして防弾ガラス入りです
その代わり洗濯は此処で干すか、部屋に干すしかないのよね!」と謂う
榊原は「そんなに長い間ではないのですか?」と話す
「ドゥバイ………内戦の真っ只中だからね、流れ弾警戒して隠れたのよ
無論 タワーマンションにも家族分の部屋は用意しようと思えば出来るわ
その他にも様子を見て移動するかも知れないけど、取り敢えず此処で様子を見ようと考えているのよ!」
「了解しました!今夜は飛鳥井の家から運び込んだ食材で夕飯を作ります!」
榊原はそう言いキッチンへ向かった
家族は皆 部屋へ向かい荷物を片付けに向かった
康太は一生に手伝わせ、5階へ向かう
一生はエレベーターのボタンを押すと、5階へ向かった
烈達子供は階段で4階へと向かい、荷物を片付けた
新しい部屋はワンルームには簡易ベッドが組み込まれていて、壁に立て掛けてあるベッドを倒して、足を固定する
力のない烈には大変な作業で、翔が来てくれ、簡易ベッドを装着してくれた
簡易ベッドの横には机と本棚もある
お布団をベッドに敷いて、と手伝ってくれた翔は、ちっこいのの部屋に行きベッドの組み立てを手伝い片付けも手伝ってやった
祖父母の部屋は一部屋ずつベッドが入れてある
両親の部屋にはダブルベッドがあった
使い勝手よく使える様に、それぞれに合わせて家具が入れてあった
烈は本棚に教科書や資料を置く
流生は自分の部屋を片付けると、烈の部屋を手伝った
クローゼットに服を掛けてやる
下着とかの収納ケーズを設置して並べてやる
音弥はお風呂にシャンプーとかリンスとかヘアパックを並べて、軽く掃除をする
全て終わると2階のキッチンに行きお伝いをする
今度のキッチンは大きくて、使い勝手がいいオール電化のシステムキッチンだった
リビング部分には大きなテレビもあり、此処で生活の拠点を置く気満々の部屋だった
カウンターの上におかずを並べていくと、子供達はそれをテーブルに並べた
そして夕飯を皆て食べる
烈は「あ、りゅーまと兵藤きゅん忘れた………」と謂う
食事を終えた烈は二人にラインした
兵藤は直ぐに電話を掛けて来て、ワンコールて取ると
『今何処にいるんだよ?飛鳥井の家のID変えたのか?入れなくなってるし………
お前に何度も連絡したのに繋がらねぇから心配した!』と心配した声が聞こえた
一生が烈の電話を取ると「俺が迎えに行くから飛鳥井建設まで来てくれねぇか?」と謂う
『了解した!今から会社に向かう!』と言った
榊原は一生に「迎えに行ったなら何人いるか?知らせて下さい!大人数の食事は作れませんからね!」と謂う
一生は「了解!」と言い家を出て行った
暫く待つと一生からラインがあった
「竜馬と貴史と【R&R】のメンバーもいる!」
それを見た榊原は「デリバリー頼みますかね?」と口にした
慎一は大きな鍋を出して、其処へ冷蔵庫の野菜や肉を放り込んだ
「いえいえ、今作るしかないでしょ!」と謂う
榊原は炊飯器四個置かれていた理由が何となく理解した
慌てて総ての炊飯器にお米をといて設置する
すると暫くして一生が戻って来た
兵藤は「此処が新しい家なのか?」と謂う
メンバーも竜馬と懐かしさを残す家に入り、一生はモニターを確認して戻る
兵藤と竜馬は両手一杯にトートバッグを持っていた
メンバーも持っていた
榊原は「それ何なんです?」と問い掛けた
一生が「食いもんだ!スーパーで買い物して飛鳥井へ来てたんだよ!
それがいなくて焦って、そのまま持って来たんだよ!」と説明
メンバーや竜馬や兵藤はトートバッグの中の商品を出して行く
榊原はそれを冷蔵庫にしまい、夕飯の後のデザートは「此れは皆で食べましょう!」と謂う
一生は「どっちで食うのよ?」と問い掛ける
カウンターでもキッチンデーブルでも、リビングのテーブルでも何処でも食べられるからだ
「キッチンデーブルで!」と謂うと鍋敷きを置いて鍋を置いた
そして御飯をよそおい配る
皆は美味しそうに食べていた
一通り食べ終わると兵藤は
「この家には何時までいるのよ?」と問い掛けた
「そうね、アッツラー神国を消し去り、トゥバイの象徴消し去り国を正したら、元の家に戻ろうかしら?」と謂う
「…………その本意は?」
「流れ弾飛ばしやがって!
…………どの道……母しゃんも閣下からの連絡は来てるのよね?」
康太は「おー!今も鳴りやまねぇ携帯は………その関係者だ!」とブーブーと鳴る携帯を見せた
康太は嗤い「ドゥバイ………やはり無傷で済ませてやらねぇ気か………」と呟いた
「まぁ神に成り代わろうと100階建てのビル建設させた時から、目は着けられていたみたいよ
ボクが天界で行われた世界会議をやる事になった時に、天空神に話されていたからね
バベルの塔の様に、神の領域に手を伸ばせる領域のビルなんて神に淘汰されて当たり前じゃない!
一夜にして海の中へ崩壊させられたアトランティスの様に………ね
まぁ手始めに天空神が粛清の稲妻でも落とされるんじゃないかしら?
そしてそろそろ、母しゃんも表に出なくても良いからサポートしろ!って謂われるんじゃないかしら?」
烈が謂うと康太は凄く嫌な顔をして
「だろうな………」
「ボクはほら、非力だし力もない子供だけど、母しゃんは粛清の時は頑張って仕事して来てね!」
「いーや!お前 腹黒い分力あるやんか!」
「母しゃんだって腹黒いから力あるじゃない!」
「いーや!オレはお前程腹黒くねぇ!」
「ボクは母しゃん程腹黒くないわよ!」
言い合う親子の背後に「それ以上続けるならデザートあげませんよ!」と謂う恐ろしい榊原の姿があった
康太と烈は居住まいを正すとニコッと笑顔でデザートを待っていた
一生は「似た者親子なんだから………」とボヤく
烈は「レイたん、やっておしまいなさい!」と謂うと一生に飛び蹴りして来た
一生はその飛び蹴りを受けて、レイを抱き締めた
「ほらほら、お前も良い子にしてねぇとデザート抜きだぜ!」と謂う
「れいね にーたんに にゃるからね!」
と、笑顔で謂い
「れちゅ うみゅ きゃら!」とトドメを刺した
竜馬は「烈!俺以外の奴と子供作ったんすか!」と謂う
兵藤は、なんて事を言ってますねん?と呆れていた
メンバーは榊原に出して貰ったデザートを美味しそうに食べていた
竜馬は「烈ぅ〜!」と叫ぶ
榊原は低い声で「デザート要らないのですか?」と謂う
竜馬は黙ってデザートを食べていた
家族はそんな様子を見て笑っていた
その夜 竜馬は部屋へ案内された
自分の部屋があると聞き嬉しくて堪らなかった
簡易ベッドの天板を下ろして装着して、その上にお布団を置いて寝られる準備をする
そして兵藤は源右衛門の部屋で生活を始めた
【R&R】のメンバーは源右衛門の部屋と客間で生活を始めた
源右衛門の部屋は仏壇の部屋とは別に3部屋あった
一部屋 兵藤が使っても後二部屋ある
広々寝たい奴は客間に布団を敷いて寝ていた
ベッドで良いや、と謂う奴は洋間にしてある部屋に折り畳みベッドが二つずつ入っていた
使う時はそれを広げて使う様になっていた
メンバーも大喜びの新生活のスタートとなった
新居での生活がスタートして暫くして神野達から遊びに行っても大丈夫か?と聞かれた
用心して烈は神野達は幼稚園の上のマンションへ呼んで、新居を徹底的に隠していた
家族は慣れたモノで、移動も早かった
玲香の所へ美緒が会いに行きたいと言えば、幼稚園の上へ移動
生活の場を悟らせずに、生活していた
そして満を持して兵藤御一家をイギリスへと同行する時が来た
2月10日 烈は前日に兵藤にラインで
「明日 朝の7時に国際空港へ来て欲しいのよ
当然 両親も連れて来てね!」と伝えた
今は同じ家に住んでるのに、何故にこんな重要事をラインで済ませるのよ?
と兵藤は真意が解らず電話をして
『何処かで飯でも食うのか?』と問い掛けた
「明日は必ず両親も連れて来るのよ!
あ、それと身分証明書の為にパスポート所持で来てね!」
と念を押して電話を切ってしまった
兵藤は『おい!何処へ行くんだよ?』と聞いたが、電話の向こうは虚しくツーツーと謂う機械音が流れていた
兵藤は美緒に「烈が明日の朝 7時に国際空港まで来てくれと言うんだよ!大丈夫か?
一応身分証明書の為にパスポート所持で、って言われたわ」と電話を入れた
美緒は『何処かへ行くのかえ?』と問い掛けた
「それは聞いてねぇよ
兎に角両親と共にパスポート所持で来てくれ!とだけ言って来た!」
『空港付近は目印になる場もない故、空港で待ち合わせなのか?』
「それ俺知らなーずだわ、済まねえ!」
『嫌 構わぬよ!
ならば明日 午前7時に空港じゃな!
主はどうするのじゃ?』
「俺は今夜還るわ!それて朝早く国際空港へ一緒に行くとする!」
『では待っておる!』
そう言い兵藤はその夜はタクシーに乗り家に帰り、翌朝早く父 昭一郎の政策秘書に国際空港まで送って貰って国際空港までやって来た
何故に空港??と想いつつも、兵藤御一家は待ち合わせ時間の5分前には国際空港に来ていた
家族はきっと近くのホテルで会食でもするのだろう……なんて想っていた
が、国際空港で待ち構えていたのは【R&R】のメンバーと竜馬もいたから……どう言う事???
と不安になっていた
烈は兵藤御一家を見ると笑顔で
「此れからイギリスへ行くから!」とサラッと言った
まるで……ちょっと其処まで買い物に行くからね!レベルの簡単な話し方に、美緒は唖然となり………
「着替えが何も無いではないか!」と呟いた
「服は現地調達よ!【R&R】は常に手ぶらで行くのが流儀なのよ!
でもイギリスへ行ったならば、美緒たんは着物が着たいと想い用意したわ!
出来るなら………汚さずにお願いね!
此れは国宝級の着物で辻が花とか謂うヤツを獅童から借りたのだから!
レプリカや再現したのじゃなく、正真正銘の辻が花の訪問着だから、お願いね!」と謂う
辻が花……そんな眩暈がする着物を!!
それが入ってるスーツケースを兵藤に渡す
兵藤はそのスーツケースを無言で受け取った
「さぁ行くわよ!三泊四日のイギリスの旅を満喫して下さいね!」と言い烈はサクサク空港の搭乗手続きをした
そして時間になり飛行機に乗る
飛行機に乗ると烈は直ぐに寝てしまい、【R&R】のメンバーや竜馬は好き勝手に本を読んだりして過ごす
倭の国からイギリスまで15時間近く掛かるのだ
日付変更線を上空で迎える長い長い飛行機の旅が始まった
座席に座ると昭一郎は「着替えはHarrodsに行き好きなのを買って良いからね!」と美緒に言う
美緒は「突然じゃったから驚いた………が、飛鳥井は元の家には住んではおらぬ………と謂う事態じゃからこそ、何の話もせずに突然イギリスへいくしかなかったのじゃと理解しておる!」と小声で呟いた
あれから………玲香とは幼稚園の上の家で何度も飲み交わしたが………違和感が拭えなかった
それで聞いたら今は別の場所で生活していると話してくれた
其れ程に飛鳥井は今警戒せねばならないのだと………
腰が痛くなる程の飛行機の旅を終え、イギリスへ到着すると税関を通り、外に出るとスッカリ暗かった
時差 15時間近く
午前7時に飛行機に乗ったとして、イギリスへ到着するのは午後10時を回っていた
空港の外に出ると、路肩にオブライエン家のバスが停まっていた
ヘンリーが近付くと助手席から執事が降りて来て
「お待ちしておりました!」とドアを開けてくれた
皆でバスに乗ると、執事はドアを閉めた
ヘンリーは「オブライエン家へ向かって大丈夫?」と問い掛けた
竜馬が「あぁ、それで構わない!」と答えた
烈は相変わらず乗り物に乗ると寝ていた
オブライエン家へ向かうバスは賑やかな繁華街を抜けて、閑静な住宅街へ入って行く
そして大きな門扉の前でバスが停まると、自動で門が開きバスが入ると門は自動で閉まった
門を潜って軽く30分は走る
管理された土地は整地された芝生や薔薇のアーチが彩られ宮廷の庭の様な高貴な美しさだった
そしてお城みたいな屋敷の前にバスが停まると、執事がドアを開けて皆が降りるのを待つ
バスはそのまま駐車場の方へと向かう
執事は皆をオブライエン家の屋敷へと招き入れた
メイドが並び頭を下げお迎えする
烈は「今宵はもう遅いので、部屋へ行かれ着換えられると良い!
食事を運ばせます故、食べられると良いでしょう
明日の午後は皇室の午餐会に出席となります!」と謂う
美緒は深々と頭を下げた
烈は「美緒たん、明日の昼までゆっくり寛いで、明日は辻が花を着こなしてね!
まぁ玉藻の君ならば、着こなせない訳はないからね!」と笑う
美緒は「辻が花か………屋敷の中探せば一枚位出て来たのに………じゃが、獅童が持つのならば、それよりも格段に上であろうな!」とボヤく
「だから国宝級なのよ!」
メイドが案内して部屋へと移動する
兵藤は両親と共に部屋に案内され
烈と竜馬とメンバーは一番大きな部屋へ案内された
デービッドは「今回のモーニングコートはクリス自ら厳選して誂えさせたヤツなんだよ!
僕がリーダーの服ならば作りたかったのに!」と悔しがった
烈は「ほらほら食事の前にお風呂よ!」と謂う
皆でお風呂に入り………と謂う程に海外のお風呂場は大きくはない
ましてや中世から在るこの家に銭湯バリのお風呂はない
烈と竜馬がシャワーを浴びて、イーサンとサムエルがシャワーに入る
その後にデービッドとダニエルが入り、ヘンリーとフレディがシャワーを使う
そして髪を乾かし、バスローブに袖を通す
クーとルーとスーがその後に入り、出ると竜馬がホホバオイルを手にして乾燥を防ぎドライヤーで乾かす
そしてブラッシング!
メンバーも手伝い、ブラシッングをしてくれる
ほかほかで気持ちよさげな猫達は、用意された食事を皆と共に食べた
スーは「飛行機の中では何も食べられへんかったからな!」と文句を言いながら食べまくっていた
クーもルーもモリモリ食事をする
其処へオリヴァーがやって来て
「リーダー来てるって聞いて、デザート買って来たよ!」と謂う
烈は「ありがとうオリヴァー!」と礼を謂う
オリヴァーは「何時まで滞在予定なの?」と問い掛けた
烈は、う〜んと考え込んで
「捕まりたくないのよね!
だから早く帰りたい気分なのよ………」と謂う
ヘンリーは「誰に?」と問う
「…………」烈は答えなかった
クーは横目で烈を見た
スーが「あぁ………運命の方、真贋やなく烈を選んでしもたわ!」とボヤいた
烈は「そんな感じしてたわ………」と不穏な空気を背負い呟いた
デザートを食べて、ベッドに潜り込む
疲れ果ててた烈は、あっという間に眠りに堕ちた
翌日 烈は遅めに起きた
洗顔と歯磨きして、朝食と昼食兼用のブランチを食べた
竜馬が「食べ終わったら着替えるっす!」と謂う
シャワーを浴びに行き、支度を整える
午餐会と謂う事でモーニングコートを着用する
烈と竜馬が着替えるとメンバーも着替えを済ませていた
着替えが終わると部屋を出て玄関へと向かう
すると辻が花の着物を見事に着た美緒が立っていた
何処から見ても隙がない完璧な出来栄えだった
烈はそれを見て「流石 緑道の妻 節ちゃんね!帯やら髪飾りやら一級品を用意してくれたわね!」と謂う
髪飾りはジャジャラ宝石が着いたモノではないが、鼈甲の一級品で、今の時代にこれ程の鼈甲は手には入らなかった
聡一郎もモーニングコートを着ていた
兵藤も同じくモーニングコートに身を包み立っていた
オリヴァーが兵藤の胸ポケットに勲章を取り付け、身だしなみのチェックをする!
執事がやって来て「それでは参りましょうか?
旦那様と奥様は向こうでお待ちのようです!」と謂う
烈は玄関に出るとバスに乗った
何だか不機嫌な烈に「どうした?烈?」と問い掛けた
…………が、烈は何も言わなかった
バスはバッキンガム宮殿へと入って行った
烈は「美緒たん、昭ちゃん、王宮をその目で堪能すると良いのよ!」と謂う
バッキンガム宮殿の正面玄関の前でバスが停まると、王宮の執事がやって来て皆を案内された
王宮執事は「今日は午餐会と謂う事で、非公式に行われる会食となります!
女王様と殿下は参加されるそうです!
どーぞ此方へ!」と案内していく
控室に通され、衣装を直す
そして紅茶一杯飲んだ頃 宮中の晩餐会が開かれる会場へと向かう
給仕に席を案内され座る
マナーに乗っ取りアペリティフ(食前酒)が饗される
烈はジュースを置かれていた
女王と殿下がお越しになられると、皆立席し会釈する
女王と殿下が着席なさると、皆も着席した
その場の席にはイギリスの首相も列席されていた
ロード・ペンバートンも公爵家に名を連ねる以上は、皇室の行事には顔を出していた
女王は食前酒を手にすると「遥々遠くからお越しのお客人の為に乾杯を!」と音頭を取と皆 グラスを明らかに掲げた
そして始まる和やかな午餐会の一時
クリストファー・オブライエンは妻のロザリーと出席していた
そしてどう言う訳か…………ドゥバイ王妃 セーラ妃もカラフ・ジャッジムと共にいた
皆が和やかに午餐会を楽しみ会話を盛り上げる
烈も卒なく会話をして雰囲気を盛り上げた
恙無く 午餐会を終えると、烈は即座にクリスの横に行き
「Non lasciate che i visitatori si avvicinino a me!(ボクに来客を近づけないで!)」とイタリア語で言った
クリストファーは頷き、烈の周りにはヘンリーとオリヴァーが並び、【R&R】のメンバーと竜馬が並び、警備の者が横に並ぶ
クリストファーは烈の要望通り、誰一人近づけようとはしなかった
叔母であるロザリーの傍へ…………セーラは近寄る事さえ出来なかった…………
そして烈は迎えに来たバスに乗り、【R&R】のメンバーと共にマンションへと移動した
シャルロット王女に「兵藤の御両親を宮殿の中案内してあげてよ!」と頼み帰宅した
どうせ、シャルロット王女が車で此処まで送って来るのだろう………
烈は【R&R】のマンションの部屋へと行き、ソファーに座ると
「まさか…………いるとはね………」とボヤいた
あれからカラフ夫妻は身の安全を求め、イギリスに助けを求めたのだった
女王はセーラの願いを叶えてイギリスで受け入れてやったのだ
まぁ、戦火が熾烈になるなら………飛び火する前に国外に出る事を了承させ、取り敢えず受け入れただった
クーは「奴等はどんな手を使ってもアポイント取るだろうな!」と言う
スーは「その前に英国首相がアポを取るやろ!
目下の問題は………戦火の国をどうするか?やろからな!」という
「まぁ出るのは構わないけど、対価取るだけだからね!」
ルーは「対価?何を取られるのだ?」と問い掛ける
「そりゃ………ね、クーたん!」
「あぁ、それしかないよな!」
クーはルーの耳元で何やら囁いた
ルーは「あ~そう言う事ね!」と言う
竜馬が「腹減ってない?烈?」と問い掛ける
「料理なんて味わえもしなかったもんね!」とボヤく
ヘンリーは「僕等は豪華な料理より、飛鳥井で食べる料理の方が好きだな!」と言う
皆頷いていた
烈はソファーの背凭れに凭れ天を仰ぐと、右手を伸ばした
「あぁ運命がボクを巻き込み渦巻いてるわ
来たくなかったのよ………本当は………
でも連れて行くと約束したからね、来なきゃいけなかったし、どうせ倭の国に残っていても………
この運命からは逃れられはしない………」
そう悲しげに呟く………
竜馬もメンバーも何も言えなかった
烈は「ボクはもう寝るわ!誰が来たとしても起こさないでね!来客には明日、正式に起こし下さい!と伝えてね!」と言い部屋へ行ってしまった
ダニエルはそれを見ていて
「何かリーダー大変そうだね……」と呟いた
イーサンは「何か知ってるの?ダニー?」と問い掛ける
「飛鳥井の株価操作されて、一時下落の一途辿って、僕が介入して元に戻したんだよ!
それ以来、監視はしてるから今は安定してるよ!」と言う
メンバーはそんな事知らなかった
竜馬は「ハッカー集団に飛鳥井集中攻撃受けていたからな……それで警戒して家を変わったんだもんね!」と言う
メンバーもそれは知っていたから………言葉もなかった
が、烈の猫達は「明日は来客来るな!」と嫌な顔をしていた
竜馬は「来客?誰?」と問い掛けた
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