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第27話 虎視眈々と ❺
リムジンが菩提寺の駐車場に停まると、後部座席のドアが開いた
ドアが開くと唐沢が既に乗っているのが伺えられた
烈は車に乗り込むと閻魔も乗り込み、一生も乗り込んだ
唐沢は烈の顔を見るなり
「よぉ烈、また大変な事に巻き込まれてるじゃねぇかよ!」と声を掛けて来た
烈は「唐ちゃん………好きで巻き込まれてる訳じゃないんだねどね………
でも幾ら占っても避けては通れないと運命は導き出してるから、出るしかないのよ!
あ、それと兵藤きゅんち狙われたんだって?
用心の為に夫妻は移動させる事にしたわ!」
と、ついでに兵藤の家の事も話した
「次から次へと手を変え品を変え………良くもまぁやるよな!
あれ程騒がれたのに、また闇バイトに手を出した輩の仕業みたいだしな!」
「飛鳥井家真贋は兵藤貴史と学友で親友だから、蠱毒や呪いなんて跳ね返される危険があるから手は出せない
ならば直接叩きに来るしかない!
本当に悪循環のループに囚われているわよね………」
「………んとにな、俺等の仕事ばかり増やしやがって!」
「でも唐ちゃんの所の子育ってるじゃない!
他に目を掛けてる子いたら飛鳥井に研修に出しなさいよ!
少しは使える様に鍛えて上げるわよ!」
「それは助かる、この件が落ち着いたら頼むとするわ!」
他愛もない話をしていると、幾つものゲートを通過して裏皇居へと着実に進んで逝く
裏皇居に到着すると正面玄関で降ろされ、使用人に案内された
長い廊下を歩き来賓室へ通され、お茶を運ばれた
烈のポケットからクーが顔を出すと、運ばれた紅茶の匂いを嗅いだ
「キームーンか、最高級の茶葉使ってますがな!
毒はないから大丈夫だぞ!」
「ドゥバイ大使館横のホテルで出された紅茶は毒入りだったからね………しかも猛毒……その後爆破されて大変だったわ」
烈は思い出しても腹が立つ!とボヤきながら紅茶を飲んだ
唐沢はその爆破の処理に当たったから良く解っていた
「本当に良く巻き込まれるよな?お前………」
「好きで巻き込まれてる訳じゃないからね!」
プンプン怒りながら謂う
唐沢は其処に竜馬がいないから、不思議に想って
「所で竜馬はどうしたのよ?」と問い掛けた
「りゅーまは家にいるわよ!
リビングでゴロゴロ犬と猫と戯れてるわよ!
狙われるかも知れないからね、連れ歩く事は出来ないのよ!」
唐沢は難局を乗り越えるまで………距離を取るのだと苦笑した
その時 閣下がやって来た
烈と閻魔と唐沢は立ち上がりお辞儀をした
閣下が腰掛けると、烈と閻魔と唐沢も座った
「それでは話を聞きましょう!」と静かに問い掛けた
烈は此処まで来た経緯を話した
そして今後 何処に焦点を合わせて行くか?
其れ等を魔界で世界会議を開き話し合う事になる
そして一番の現実として、魔界で晩餐会とか開くにはシェフや食材が問題になる事、そのフォローを頼んだ
閣下は「魔界で世界会議を開く際、食の問題が出て来る事は烈が常に口にしていたので、食材もシェフも貸し出すつもりでいます!
魔界へはこの前の様に転送されるのですか?」と問い掛けた
「そうね、迎賓館には転送用の魔法陣は既に出来ているから、其処へ転移させしゲートを通り迎賓館への移動となる!
其れ等を何度か確かめて当日を迎えたいと想ってるのよ!」
「ならば満月になったと同時に転送されると謂う事なのですね!」
「そうね、時差はあるから、段階的の受け入れとなるのよね!」
と詳細を詰めて行く
烈は「世界会議の間 狙撃が出来る者をチーム単位でを借りれるならば貸して欲しいのよ!
後 武術の達人とかに要人警護して貰いたいのよ
魔界へ入れる可能性の位置にはラグナロクの戦士を配置するから、会場は各国の要人警護をお願いするわね!」と話す
「解りました!手筈は整えておきます!
閻魔様からは何かありますか?」と問い掛けた
閻魔は「私の方は食の問題と時間差、それだけなので、それを周知させて下されば後はありません!
魔界は人の世とは時間が違う………5日も滞在すれば10日は過ぎる………それを徹底して周知なさって下さい!」と伝えた
「天界だとて、魔界程ではないが時差は在りました!ですからそれは仕方がない事、皆にはその様に周知しておきます!」
「今回の話し合いの議題はドゥバイとアッツラー神国一択です!
戦火が長引けば………多くの死者が出ます!
それを裁けるだけの場はありません!
魔界だとて先の震災で多くの人々の魂を受け入れるだけで許容範囲は超えてます!
これ以上の…………災厄は……パンクするでしょう!
死者を受け入れる側と死者の数のバランスが取れてないのです!
それは他国も同じでしょう……
現実問題として………御耳には入れさせて戴きます!」
閻魔はキッパリ言い切った
閣下は「それ等も話し合うしかないですね………
今回の話し合いで………さらなる死者を出す可能性を考えねばならない……と謂う事ですか?」と問い掛けた
「無血開城………なんてのは土台無理でしょ!
血で血を洗う闘いは此処らへんで軌道修正掛けられるべきだと世界が答えを出したならば、先ずは一つ駒を進めるべきなのですよ!
悠長な事をやってられる程、我等には時間はそんなに無いのですからね!」
閣下はその言葉を聞き覚悟を決めた瞳を向けた
「了解しました!
月が満ちるまでに総てを整わせ盤上に上げて準備を万端に致しましょう!」と答えた
烈は「ならば世界が動く前に……カラフ・ジャッジムとセーラ妃を保護させて当日に連れて来る手筈をイギリスに連絡をお願いします!」と告げた
「解りました、この後に女王陛下に連絡を入れ保護させます!」と約束してくれた
「ならば魔界も世界会議のお出迎えの準備をせねばならないわね!」と言葉にした
話が決まると閣下は部下を烈に貸し出すと約束してくれた
その部下か料理担当のスタッフを手配してくれるから、話を進めてくれ、との事だった
話が終わると烈と閻魔と一生は菩提寺まで送って貰う事になった
閻魔は菩提寺で送って貰い魔界へ還る
菩提寺の駐車場に到着すると、烈と閻魔と一生は車から降りた
唐沢は車に乗ったままで職場へ戻ると謂う
閻魔は保養施設に向かうと、神の道を開き
「烈、先に行って準備を整えときます!」と言い魔界へと帰って行った
烈は「此れより月が満ちるまで、ボクは別行動となるからね!
カズは母しゃんに伝えといてね!」と告げた
「帰れねぇのか?」と一生は心配して問い掛けた
「そうね………今回は更に用心を重ねて、世界の要人を迎えねばならないのよ!
その為にやる事ならば腐る程あるのよ!
次の月が満ちるまでに準備しないとだからね!」
「了解した、康太には伝えとく!
お前はこのまま魔界へ行くのか?」
「そう、ボクはこのまま魔界に行くとするわ!」
「何かあったら呼べよ!
そしたら直ぐに駆け付けるからな!」
そう言い一生は烈の頭を撫でた
そして後ろ髪引かれる様に、車に乗り飛鳥井の家へと帰って行った
烈は一生と別れると母に
「少しの間 家には帰れないわ
月が満ちるまでが勝負だからね!」とラインした
直ぐ様 康太は我が子のラインに気付き画面を見た
そして「あ~そうなるわよな……」と呟いた
世界会議を魔界でやると謂うのだ
そんなに時間がないのだ
『応援が要る時は直ぐに言えよ!
直ぐに動ける奴を行かせるかんな!
で、出来たら会社の方も少しは顔を出してくれると助かる!』と書いて送信した
既読が着くと、親指を立てたスタンプが送られた
道筋を立てねばならないのだ………
悠長な事は言ってられないと予想して………ため息をついた
烈………無理するなよ………
想いは我が子に飛ばし………
今せねばならない事に目を向けた
烈は魔界へと渡ると世界会議に向けて指示を飛ばした
魔界に掛かりっきりになると、会社の方まで目を光らせているのも無理になる訳で………
烈は会社の方は竜馬に目を光らせて貰い、兄達と共に監視の目を光らせてくれる様に頼んだ
兵藤は烈と共に魔界へ行き、準備を手伝って貰う事になった
絶対に失敗出来ない世界会議だった
その為の布石を打つ為にも、やはり烈の方からも女王陛下の直通の連絡先に
「カラフ・ジャッジムとセーラ妃を確保をお願いします!
下手したら……世界会議の前に………この世から消されてしまいますから!」とPCからメールを飛ばし念を押した
女王は各方面からの同時の身柄の保護要請に、即座に動きカラフとセーラの保護しなさい!と命を出した
守護神オーディーンを飛ばし、即座に見柄を確保させた
そして世界会議の日まで、その身は隠される事となった
女王陛下から『オーディーンが保護したとの事ですので、御安心下さい!』と連絡が入った
「此れより世界会議の日まで、その身は匿い横槍は絶対に許さないで下さい!」
と念を押して頼んだ
カラフとセーラの生存は確実に保証されねばならない!其処までの事なのだ!
議題の主役がいねば成り立たないのだ!
迎賓館でせっせと世界会議の準備をしていると、ガブリエルが姿を現したのは、かなりの時間経ってからだった
「総ては貴方の想いの儘に………身を隠しました!との事です!」
「ならば当日の時代の主役は確保出来たわね!
世界会議の準備は着々と進んでいるわ!
まぁその前に………大々的な横槍されなきゃ良いんだけどね…………」
「それは三神も申され用心を怠るなと申されてます!」
「怠るな………と言われても何処をどう注意していれば良いかすら解らないからね………
どう用心したら良いのか?が解らないのよね…」
烈の言葉にガブリエルは苦笑した
そしてガブリエルもやる事が山積しているから、その場を後にした
烈は週に一回は会社に顔を出し 竜馬と兄達の報告書に目を通し社内を見回りした
そして久遠の所へ通い体調の管理をして貰い準備に邁進して行った
月が欠けて逝くまでの間に……世界は変動した
此れが天空神が謂う用心を怠るな!の一環なのだろうか?…………
狙った様に……中東諸国の各地では戦争が勃発し…
戦火を色濃くして逝った
インシャアッツラー国も爆撃を受けて………一瞬にして………国はなくなった
中東諸国連合は………神の国と名乗る者に占領され………機能はしなくなり総てこの世から消された
飛鳥井康太が築いた和平が踏み躙られた瞬間だった
康太が関わった中東諸国の者は総て消された
まるで当て付けの様に…………爆破して占領の国旗を立てている様を写しているのだ
康太はそんなニュースを見て怒り狂っていた………
平和な世界が崩壊して逝く………
踏み躙られ………尊厳を奪われ………
領地を占領して逝くのだ
だが康太は出る事は…………なかった
烈が敷く果てが狂う事だけはしない為に………
沈黙を貫いたのだった
兵藤や閻魔、そして堂嶋正義は、サザンドゥークの王が断首された時に動くと想っていた
見せしめのように………王や家臣の首を切り落としたアッツラー神国なる国を消し去るかと想っていた………
飛鳥井康太と関わった王族は………総て消された
国も消された
和平を願い………敷いたレールを爆破され……破滅へと向かう
そんな光景を………只々………黙って静観を貫いていた
烈はそんな母の悔しい思いが解るから………情け容赦なく消し去ると決めていた
母の敷いたレールを無理矢理崩壊させたのだから…………
同じ目に遭っても仕方ないと謂うモノなのだ!
全世界の世界会議が魔界で行われると世界へ通達した
世界がその日の為に動き出したのだ
烈は新月になった夜、久々に家に還った
家に帰った時にはまだ誰もいなくて、烈は家族が還るのをリビングで待っていた
待っていると兄達がちっこいのを連れて還り、北斗達が還って来た
皆喜んて烈を取り囲み話をする
玲香も京香も会社から還り烈を見付けると、その場に座りお茶仲間になり、楽しく話していた
清隆と瑛太も着替えもそこそこに、烈とお茶をしていたのだった
リビングには楽しい声が響いて皆が揃っていた
康太と榊原は久しぶりの家族の笑い声に、真っ先にリビングを覗いた
リビングには楽しそうに話す翔達やちっこい達や北斗達の姿があった
京香と玲香と清隆と瑛太が子供達に囲まれて楽しそうだった
烈は帰宅して来た両親を見つけると
「少し話ができませんか?」と問い掛けた
康太は着替えに行く前に先に話を聞く事にした
「なら応接間へ行けよ!そこで話をしようぜ!」
と告げて、榊原と共に一階の応接間へと向かい、ソファーに座ると話しを聞く体制を取った
烈は姿勢を正すと両親に
「世界会議は炎帝と青龍の出席は、自由にして戴いて構わないです………」と告げた
康太は「それはカラフに関しての命乞いをするかも……と想っているのか?
おれがお前に………それを頼むと想っているのか?」と問い掛けた
「違います!
出席は自由に………して貰って構わないとの事です!
それは、出席しようが欠席しようが、一括審議方式を取り入れ、採決のみ順次行う方式を取るからです!」
と、敢えて敬語で伝えた
「一括審議方式………ならば既に議案全ては上がっていると言う訳か………
ならばドゥバイは潰されると謂う事か?
まぁお前は何に対しても忖度などしないだろう!
そしてオレはお前に忖度しろとは言わない!
それを知ってて謂うのか?」
「忖度等されようとも、出来はしない!
願われようが乞われ様が、ボクはそんな事に耳は貸したりはしない!
それは一番 貴方達が御存知なのじゃないですか?」
康太はグッと詰まった
「ボクはボクの道を逝く!
ボクはボクの死命を完遂する!
それに感情や忖度など入れてはならない!
それがレールを敷く者の務めたからです!」
烈の言葉に康太は唇の端を吊り上げて嗤った
「ならば我が子のお手並み拝見とするか!
オレと伊織……嫌 炎帝と青龍は出席する!」
その言葉を聞き烈はニコッと嬉しそうに笑った
「ほら、えんちゃん、母しゃんと父しゃんは絶対に出席するって言ったじゃない!」
ずっと静観を決め込んでいた炎帝ならば………
欠席かも知れないと閻魔は想っていた
だが出席すると謂うのだ……
閻魔は我が子の為に出席を決めた炎帝と青龍の想いに………親子の絆を感じずにはいられなかった
だから嬉しくて、烈が言うと閻魔は姿を現し、烈とハイタッチしていた
その仲の良さに………呆然となる
康太は「兄者………」と呟いた
その横にはレイも兵藤もオーディーンもガブリエルもいた
康太は思わず「お前等何してるのよ?」と問い掛けた
ガブリエルは「炎帝の出席確認と謂う事で、閻魔殿が康太の所へ逝くと申されたので、その確認に参りました!」と謂う
兵藤は「俺は朱雀として、だな!」
レイは「私はニブルヘイムとして、です!」
オーディーンは「儂は北欧代表の神としてだな!」
と各々好き勝手な事を言う
そしていつの間に来ていたのか、大歳神と素戔鳴尊と建御雷神と弥勒がソファーに座っていた
大歳神は「儂は倅の為に、だな!」
素戔鳴尊は「儂は孫の護衛の為に、だな!」
建御雷神は「儂も孫の為に命を張ると決めておるから、だな!」
弥勒は「俺は恩人の為に、だな!」
「「「「命を持って護ると決めておる!」」」」
と声を揃えて謂う
烈は「ならば母しゃん達は出席ね!
皇帝閻魔はきっと喜ぶわね!
前日に来て貰って宴会しなきゃ!」とタブレットに打ち込んでいた
そして「父しゃん………夕飯前だけど……命の水をサービスして下さい!」と頼んだ
榊原は苦笑して「解りました!リビングに行ってなさい!
飲兵衛仲間呼ぶなら、呼びなさい!」と言ってくれた
神威は携帯を手して連絡をいれると「来ても良いとの事じゃ!さぁ来るのじゃ!」とラインした
ラインを送信すると神威は「あやつ等は近くに待機しておったのじゃよ!」と言い立ち上がった
兵藤も立ち上がると「一生と共に迎えに行くとするわ!」と言い応接間を出て行った
榊原と康太は先に着替えに向かった
康太は「烈に乗せられた……」とボヤいた
榊原は笑って「仕方ありませんよ!あの子は総ては僕達に贈る為の仕上げをしているのですから!
見届けねばならないのですよ!」と謂う
「それは知ってるけど………オレの想いまで背負わなくても良い………って何時も想う………」
「彼に取って総ては炎帝が救いになっていたからですよ!
だから彼は幾度転生しようとも、我らの進むべき道の小石を取り払い、正しい道へ軌道修正を掛けるのです!」
「恩なんて感じなくても良いのによぉ………」
「恩だけじゃないでしょ?今は………」
「伊織………」
「君と僕と謂う両親の為に、彼は必死に報いてくれてるのです!
本当に孝行な息子を持ちました!」
そう言い榊原は康太を抱き締めた
康太も愛する男を抱き締めた
この温もりに救われ生きて来た
この温もりがあったから………
互いの温もりを感じていると一生がやって来て
「なぁ飲兵衛いるの解っててラブラブしてるのか?」とボヤいた
榊原は康太を離し手早く着替えると
「今から夕飯とツマミ作ります!」と言いキッチンへ向かった
一生は残った康太に「烈 痩せたな…」と声を掛けた
康太はスーツを脱ぎ着替えながら
「あぁ、かなりキツい日々を送ってるんだろ!
そりゃそうだろ?
魔界での世界会議を視野に入れ絵図を引いたのは烈だかんな……」
「その為の迎賓館なんだよな……」
世紀の挙式だけの為の場じゃないと敢えて知らされる………
康太は「お前もサポートしてやってくれ!」と頼んだ
一生は笑顔を見せて
「了解だ!あ!義泰が烈の顔色が悪いって心配してて、魔界へ着いてくつもりでいるって!
で、何が遭っても大丈夫な様に、世界会議の時は久遠も待機するって言ってたぜ!」と報告する
「義泰………死後も烈にこき使われるの決定してるからな………」
「え?………魔界に医者って言ったから俺は久遠だと想っていたけど………
そうか、義泰に白羽の矢が立ったんだな
だよな、久遠より早く魔界に来れそうなのに目を付けていたんだな!」
「志津子もワンセットで逝くらしいぜ!
義泰がすいたおなご一人つけてやる!さぁ選べ!と言いやがった………とボヤいていたからな!」
「で、義泰は志津子を選んだったと謂う訳ね……
久遠の母親じゃねぇんだな……」
「義泰なりのケジメなんだろ?
愛はもう終わったんだよ………義泰の中では共に逝くのは志津子一人と決めたんだろ?」
「そうか………ケジメか………」
「一生?」
「さぁ逝くぜ!飲兵衛が暴れる前に飯にしねぇとな!」
そう言い一生はエレベーターのボタンを押した
そしてドアが開くと中に乗り込みリビングへと向かう
其処には………既に飲兵衛の巣窟になっていた……
神野達も久しぶりの招集に喜んでやって来て、飲んでいた
その夜 久しぶりの宴会に家族は始終笑顔で飲んでいた
子供達も笑顔で話に花が咲く
何時もの家族の日常が其処に在った
それを護る為に………己の死命を果たすのだ
朝早く、烈と兵藤と呑兵衛達は飛鳥井の家から跡形もなく消えていた
竜馬は久し振りの烈だったのに……と、淋しく想って項垂れていた
そんな竜馬を兄達やちっこいのが慰める
流生は「竜馬、烈が帰って来たらカニパンミュージアムに行くのよ!」と謂う
竜馬は「でも君達中学生だからネズミの国の方が楽しめない?」と問い掛ける
太陽は「僕達は烈が楽しそうなら満足だから、カニパンで大丈夫よ!」と笑う
大空も「そうそう、ネズミの国なんて竜馬と烈のワンセットなら囲まれて大変だし………」と遠い目をする
音弥は「それを謂うなら隼人も込みなら、揉みくちゃよ!」とボヤく
凛と涼は元気よく、うんうん!と頷いていた
翔は「だから本当にカニパン好きが集まる場ならば、静かに過ごせそうだし、僕等はその方が安心なんだよ!」と締めた
竜馬は嬉しそうに笑い
「なら皆で行こうよ!
でも………烈が還る頃は桜…咲いてないかな?」
「「「「「なら花見が先だね!」」」」」
「なら兵藤夫妻との約束の花見だし、準備しようか?」
流生は嬉しそうに笑い「それ良いね!」と謂う
音弥は「なら烈に花見の場所は何処ら辺を予定しているのか?聞かなきゃ!ラインしとくね!」と謂う
烈にラインを入れておくと、直ぐには返信はないが、返信出来る場に来たならば必ず返してくれるのだ
だから連絡事項や何気ない日常などラインするのだった
翔も「だね、烈にラインして何処らへんか目星付けてるのか聞き、場の確保が必要になるね!」
太陽も「そしたら花見の準備をしないとね
何が必要になるか?家族のホームページに書き出しといて!」
大空と音弥と流生は「「「了解!」」」と返事をした
最近 烈が家族用のHPを作ってくれたのだった
其処へ日常の書き込みやら、連絡事項を書いていた
瑛太も清隆も其処へ日々の想いや、会社での報告を書いていた
当然 竜馬も兵藤もそのHPは知っていて、書き込みするのだった
まぁ今回は兵藤は朱雀として駆り出され仕事をさせられているのだが…………
烈は兵藤に人の世の閣下の部下の者と調整役に任命され料理はどうするか?
迎賓館で調理出来るのか?
調理するならば調味料とかの問題はどうするか?
と直面する事項を書き出して、調整に当たっていた
そして其れ等を持って烈と相談する
兵藤は初めて迎賓館の華やかな場面じゃない、裏方の方を見せて貰った
世界会議規模の調理をするならば、どれだけの施設が必要か?
それを建築を視野に入れた時に阿賀屋蒼佑の口利きで帝國ホテルのシェフに聞きアドバイスを貰い建築したのだ
とても立派な調理場と盛り付けと配膳など、流れる様に作業が出来る様に配慮された作りになっていた
烈は「味付けまでは人の世でして貰って、それを持って来て調理する
魔界には味噌 醤油 塩はあっても胡椒はまだないし、ソースはまだその域に達してないのよ
じぃさんと神威が苦戦してるからね、トマトが魔界にないのが手痛いわ!」とボヤく
人の世の種子を持って行き植えれば素早いが、それはしてはならない領域だった
妖精に種を回収させ改良を加えて、やっとの今の現状だった
それでも魔界の作物や果物は、かなりの変化を遂げていたのだ
炎帝が創造神に早く成る植物の種を貰い受け、創った
その種をペースにしているが、中々人の世の食べ物みたいな出来となるモノを生み出すのは至難の業なのだ
兵藤は「調味料がネックとなるか………ならば人の世で味付けまでして、コッチで火を通す
そんな感じにするしかねぇか…………」と呟く
「フルーツは沢山収穫して洞窟に入れて保存してるから、世界会議の間は出せるわ!」
兵藤は人の世の料理人と連絡を密にして調整していた
世界会議は3月14日 満月を迎える日に魔界いりして、翌日15日から5日間
人の世の10日間の話し合いが決定した
その日までに転送装置を確認し、何度も各国の者が飛ばされて魔界へと調整をしに来ていた
康太の所にも世界会議の日程は届いていた
過酷な日々に烈がぶっ倒れて、義泰が飛鳥井記念病院に入院させた!と連絡して来たから個室に見に行った時に
「母しゃん 父しゃん 世界会議は3月15日
満月の日に魔界入りして、会議に突入させる
日程は15日から魔界時間5日間の日程で決まったわよ!
人の世の時間で10日、25日までよ!」
と知らせてくれたからだ
義泰は「大人しく寝てやがれ!」と怒り見張っていた
烈の個室には点滴を受ける集団がいた………
兵藤も弥勒も閻魔もヘロヘロで点滴を打たれていた
康太は「あれ?叔父貴は?」と点滴仲間に素戔鳴尊がいないから問い掛けた
義泰は「あの親子は点滴より酒があれば寝込む事などない………」とボヤいた
兵藤は「んとにな………あの親子は疲れなんて知らねぇよ!
今は皇帝閻魔に食べさせる熊獣でも狩りに行ってるんじゃねぇか………」と遠い目をして話す
閻魔も「もう次元が違うんですよ!あの年寄連中と大歳神は!」とボヤく
弥勒は「俺も柔くなっちまったな……あの馬鹿体力なくなっちまったぜ!」と悔しそうに言う
康太は「弥勒………」と何と言って良いか……言葉を失っていた
そもそも弥勒は持久力のある神じゃなかった筈だ
しかも何万年も釈迦みたいに惰眠を貪り……過ごしたから体力なんてねぇだろ?
康太は想ったが………言葉にして追い打ち掛けるのは止めといた
烈は「じぃさんは夜明け前から素振り千回して四方霊山の地脈の気に合わせて太極拳してるからね……何だが元気になっちゃったのよ
それを………たけちゃんとあまちゃんと毎朝やってるのよ……その後川で身を清めてるからね
弥勒………真似出来る訳ないじゃない!
まぁ川の方はじぃさんだけだけどね………」と止めとけ!と謂う
それは何だか無理そうで…………弥勒は苦笑して
「それは無理な話だな………」とボヤいた
榊原は「ある程度は見通しは着いたのですか?」と問い掛けた
兵藤が「あぁ、料理の方も粗方話がついたし、魔法陣の調整も終わったからな!
ここいらで体調を整えやがれ!と義泰が病院まで連れて来たんだよ!」と説明した
康太は「義泰、おめぇ魔界と人の世の往復で体調に変化とかねぇのかよ?」と問い掛けた
それには閻魔が
「その人は元気そのものです!」と答えた
義泰は笑って「然程の変化は身体的には感じられぬわ!」と謂う
康太は恐るべし義泰!と想った
義泰は「烈は3日は様子を見る!他の奴は明日には持ち場に戻り働くだろうさ!」と笑って個室を出て行った
榊原は我が子を抱き締めて
「後一踏ん張りです!」と励ました
烈は頷いた
康太は「後で誰かに来て貰うとする!」と話してると、個室のドアが開いて一生と聡一郎が烈が入院してると送ったラインを見てやって来た
一生は「仕事はスタッフに任せて来たからな!
3月24日までは手伝えるぜ!」と謂う
聡一郎は「魔界へ逝くのならば、私も非力でありますが、手助けしますとも!」と頑張り謂う
烈は嬉しそうな顔で笑い
「それは心強いわ!」と謂う
そして「えんちゃんや兵藤きゅん、弥勒はね点滴終わったら還って良いのよ!
なので宴会で持て成してあげて下さい!
ボクは個室出たら……義泰がメス持って追い掛けて来そうだから寝てるわ!」と頼んだ
榊原は「解りました、君一人で大丈夫なのですか?」と問い掛けた
「大丈夫よ、体怠いし寝てるからね!」
「ならば点滴が終わったら一生達に連れて来て貰うとします!」
と言い康太と共に個室を後にした
一生は烈のベッドに腰を下ろすと
「んとに大丈夫か?」と問い掛けた
「ボクは本体ないからね………結構時差が体に来るのよ!」
「何か食いてぇのあったら慎一に作って貰って来るぜ!」
「ボクね慎一君の作ってくれるプリン食べたいわ!」
「なら明日、持って来るな!」
「ねぇカズ、魔界へ戻る時、ちぃちゃんも一緒にお願いね!
虹とちぃちゃんを魔界へ連れて行き、四龍此処に在り!を魔界中に見せ付けてやるとするわ!
だから世界会議の間は会場で存在感バリバリで四方に座っててね!
世界会議の後に四龍の存在は正して配置するからね!」
「明咲はどうするよ?」
「避けては通れないから連れて行くわ!
その為の場でも在るのだからね!
龍族と神族………魔界に君臨する神々の絶対の存在を目に焼き付けさせてやるわ!
もう弱いおなごなんて何処にもいない!
己の足で立っていられない存在じゃないんだからね!」
「烈…………」
「不安?また虐められないか?心配?
でもね歩き出せなきゃ明日は来ないのよ!」
「解ってるよ………」
「ならばケジメ着けなきゃね!貴方も!」
「え?………」
「前を向くのよ!
強風に足を取られようとも、その歩みは止めてはならない!
立ち止まれば、其処から立つ事も出来なくなるからね!」
烈はそう言い天を指さした
天井しか視えない先に何が在るのか?
目を凝らし見る
すると光る星が目に飛び込んで来た
「貴方の星よ!赤龍の星よ!
今は迷いがあるのか?少しの翳りがあるわ!
何が貴方を迷わせてるの?」
「烈………」
「ボクは後2日は病院にいて体調を整えるわ!
だから貴方は己を見つめ返して、己の星と対話なさいよ!
貴方の星は何時だって貴方を視て来たわ
あなたの苦しみも悲しみも絶望も、総てその星に刻み今を指し示しているのよ!
ケジメ……取れてないのは一番貴方なのかもね………」
「……………」
「顔を上げなさい!
下を見ていても足元しか視えないわよ!」
何時も康太が謂う台詞だった…………
「ムードメーカーが湿気っていたら、キャンプファイヤーの火さえ灯らないわよ!」
「俺………湿気ってる?」
「なら、あの星は何故翳ってるのかしら?」
「………」
「貴方の星はね、貴方がこの世に生を成した時から始まる時を刻んでるのよ!
誰の目を誤魔化せたとしても、星は誤魔化せない
まぁ母しゃんの目には湿気ってる貴方が映し出されていたとは想うのよ
でも動こうとしなかった……何故だと想う?」
「俺が導き出さなきゃならない答え……だからだろ?」
「それもあるけど、烈が傍にいるなら何とかしてくれるだろう!なんて想っているからよ!」
烈のボヤきに一生は笑った
「最近アイツは本当に孝行息子のお陰で楽してるからな!」
「そうなのよ!だから【答え】へと導いてあげるわ!
そして4月になったら1ヶ月間、貴方はイギリスに行きなさい!
慎一きゅんは既に経営を叩き込む為に御影の教育始まってるから!
次は貴方が本場の馬術競技の世界を見に行きなさい!そして育てるのよ、よりレベルの高い子達を!
そして近い内にりきちゃんは飛鳥井建設の秘書を辞めて貰うわ!
今後は貴方のサポートをさせようと想っているのよ
りきちゃんは裏方に回り、北斗を支えて貰う事になる!
4月になったら色んな問題が噴き出て………
下手したら飛鳥井の家族は崩壊するかも知れない………」
「烈!何故だ!それは阻止出来ねぇのかよ?」
「変革期なのよ………えーちゃんの子の柚が………力が強すぎて今後は外に出すか?
それがネックになるわ!
新しく来る子達との相性も悪いのよ
そしたらボクが家を出るか?
柚が家を出るか?
そんな話し合いをしないといけなくなる………
柚は力持ちよ!超能力に値するを力を持ってるわ
小さいうちの一過性のモノなら良いけど……違うならば力の制御が必要となるのよ!
スプーンなら常に曲がってしまうから木のスプーン持ってるでしょ?」
「超能力………嘘…………」
「好きでそうなってる訳じゃないのよ
そして近い内に……双子が来るのよ……
双子と凛達には責任があるのよ!
宗右衛門として轍にいれた者として、この生命が尽きる瞬間まで持たねばならない責任が……ね……」
「この先柚はどうなるんだ?」
「正しい道へ導いて逝くしかないのよ
下手したら力が暴走したら念じただけて………命を奪いかねないからね………」
「京香………悲しむだろうな……」
「ママは飛鳥井の女だから覚悟はしてるわ!
でもね…………そうならない為に………何かないか探ってるけど………視えて来ない現実に…
ボクの体の方が早々に限界に来ちゃったのよ………」
「今は何も考えずに眠れ!」
一生はそう言い烈の頭を撫でた
看護師が点滴を外すと、一生は兵藤と弥勒と閻魔を連れて飛鳥井の家へと帰って行った
聡一郎は病室に残り
「やはり………柚、力あったんですね」と呟いた
「そーちゃん………気づいていたの?」
「あの子は持ってる雰囲気が違うし、じーっと人を見るんだよね!
モノを無くせば直ぐに見付けて持って来てくれるからね!」
「柚は姫巫女クラスの力を持つわ………
今世は飛鳥井が終焉を迎えたからなのか?
力持ちが出過ぎなのよ………
紫雲の嫁も次代の陰陽師クラスの力を秘めた子を妊娠しているわ………
そして水萌も……近い内に子を孕む
その子は双子で一人が菩提寺の住職となり、一人は姫巫女となる………
果てが狂い過ぎてて……栗田親子は翻弄されてしまう事になるわ
本当に人を弄びやがるのよ!
もう姫巫女一人が背負う事が可笑しいと、正したのは……力持ちが増えすぎているからと謂うのもあるのよ!」
「水萌が後継者を産むなら………竜之介はどうなるのさ……」
「水萌は結婚して直ぐに妊娠したけど、その子は産まれて来る事はなかったわ
それは菩提寺に勤めていた飛鳥井の奴等が後継者なんて出来たら好き勝手出来ない!と呪詛を吹き掛け流産させたのよ!
その子は再び水萌の腹に戻るわ
だから双児となり生まれくる運命なのよ!
竜之介は近い内にボクが運命の人を巡り合わせてやるから、そしたら結婚して菩提寺に尽くしてくれるわ!
そしたら菩提寺の形態を変えて行くつもりなのよ!
別に僧侶は一人しか駄目と謂う規定はないんだし、切磋琢磨して行けば良いのよ!」
「何だか…………難しいね………」
「そうね、どうしても相性あるし、負かされた方は弾かれるしかないからね………
次代の恵方と竜胆が飛鳥井へ来るには………
一度 飛鳥井の家族は崩壊を迎えるしかない
そしたらどうするか?考えなきゃなのよ」
「此れは康太は知ってるの?」
「言ってはいないけど、知ってるでしょうね
そしてボクが双子を連れ帰るならば、その問題に直面するのも……解っているわ」
「そうか………飛鳥井も暴風圏内なのか………」
「でも家族の絆は切れたりはしないわ
絶対にね、切れたりしない……」
「僕の方から康太に話して大丈夫かい?」
「ええ、構わないわ
時間を巻いたからね、そうちゃんから言ってくれるなら助かるわ!」
「時間を巻いた?」
「そう、まだ問題は水面下で噴出すべき時間じゃ無かったけど、ボクはその時間を大分巻いたのよ
で、ボロボロ噴出して、問題だらけになるのよ
直面する問題は一つじゃない………
それをどうするか?
我等は考えないとならないのよ!
家族全員で、考えないとならないのよ!
当然 飛鳥井にいる者は飛鳥井の家族として、全員が考えるのよ!」
「逃げるのは許されないならば、考えるよ!」
「お願いね、ボクは今は世界会議に集中してるからね!
飛鳥井の家は柚だけが問題じゃない!
そろそろ適性を見て配置をせねばならない時に来てる!
それは北斗と和希と和真と永遠もね、変革期に突入するのよ!
あ、イギリスには北斗も連れて行く様にお願いね
ほっくん………いなくなるのは哀しいけど、それは我々の我儘だから、世界へ目を向けないと駄目な時期でもあるのよ!
あの年の子は吸収力凄いから、きっと良い化学反応を見せてくれるわ!」
「烈は………そんな沢山の人の星を詠み……導く事に辛いと想った事はないの?」
「あるわよ!逃げたい想いならば、何度もしたわよ
裏切られ友を斬らねばならない時もあった
母と呼ぶ人を斬らねばならない時もあった
父と呼んだ人の不正を暴き……断罪した時もあった
ボクは正しい道へ軌道修正を掛けるべき存在
だから情けも想いも胸に押し込み、斬るしかない
でも…………心がなかった訳じゃないのよ
心は何時だって悲鳴を上げていたわ
逃げ出したい想いならば何時もしていた
こうして決断を迫られた時
ぶっ倒れる程に占い……何かないか?
探したわ………探して探して………見つからない時は心だって折れるし、絶望で泣く時だってあるわ
でもボクは飛鳥井宗右衛門にしかなれはしない
飛鳥井宗右衛門としてしか生きて行くしか術はない
だから曲がらぬ道へ正して逝く
其れこそがボクの願いであり、死命であり総てだから!」
言葉もなかった
まるで康太と話しているみたいに………
その想いの深さに………涙が流れた
「それでも逃げないのは………何故?」
「其れは斯波の世より続いた恩返しがあるからよ
恩なんて感じなくて良い、返さなくて良い
と、あの人は言う
だけどボクはボクの恩返しをする
斯波宗右衛門から続いた軌道修正は宗右衛門が務め!その矜持はボクの誇りだから!」
聡一郎は烈を抱き締めた
「世界会議、成功させましょう!
僕も微力ながら手伝いますからね!」
「なら、そーちゃんは兵藤きゅんと共に世界会議の資料の作成をお願いね!
コピーは人の世でやっちゃって構わないそうだから、その作業の為に退院したら、内閣の方で用意された部屋で作業やるの手伝ってね!」
「解りました!」
「国連加盟国 193カ国へその国の言語に合わせて資料を配布する
そしてその中から参加同盟国を絞り
代表として来るのは、国を大陸で分けてその国の代表が参加をする!
全世界で押し掛けて来られてもそれだけの場はないからね!
資料は取り敢えず世界へ配布する
それを唐沢の方から何人か回して貰い作成するのよ!
其れをやる為にボクは入院しつつも作成しないと駄目なのよ
【R&R】のメンバーやりゅーまを動かし完成させてね!」
「解りました、で、その竜馬何処にいます?」
「それは正義ちゃんに聞いて!
今は正義ちゃんの方で仕事上げてくれてるから!」
「了解しました!」
「そーちゃん………母しゃんを支えて上げてね!
そして何方かを選ばねばならない時は、必ず母しゃんの意思に添い選ぶのよ!」
「それは出来ないよ!
少し前に一生か?烈か?選ばねばならない時があったじゃない………
僕はどっちを選べるのか?考えたよ
5円ハゲが出来る位に悩んだよ!
でもね答えなんて出なかった!
だから考えるのは辞めた!
僕等は選ばねばならないのならない時が来たら………そりゃ選ぶよ
それは最悪の事態にならない為の選択をしようと決めているから!
きっと康太なら解ってるさ!
君の母ちゃんなんだからね!」
「そーちゃん……」
「そんな事ばかり考えてるとハゲるよ!
嫌なら寝ちゃいなよ!」
烈は目を瞑った
暫くするとスースーと謂う寝息が聞こえた
聡一郎は一生と話してる時から、電話を通話状態にして康太に聞かせていた
烈が寝たのを確認すると通話を切った
康太は呑兵衛達が盛り上がる中
片耳にイヤホンをして静かに飲んでいた
話し掛けるのも憚れる程の静けさだった
ずっと静かにそれを聞いていた
一生がリビングに戻った後も、聡一郎との会話を聞いていた
そして烈が寝て通話を切られて、イヤホンを外した
康太は本体のない烈ならば魔界にいるのは結構身体的にキツいのは伺えられるが、それだけじゃないと考えていた
だから聡一郎に頼み烈との会話は通話で流してくれと頼んだのだ
そして烈の背負う現実を知る
そりゃ倒れて当たり前だと痛感した
「変革期か………そりゃぶっ倒れて当たり前か………」と呟いた
皆 ギョッとして康太を見た
「近い内に皆に話がある
それは飛鳥井の家が終焉へ向かってる………って話だ!
そして考えてくれ、どうしたら誰も弾かれない明日を過ごせるか………」
兵藤はチラッと康太を見た
瑛太は「それでは時間を作らねばなりませんね!」と謂う
清隆も「では話し合いましょう!
解決するまでとことん話し合いましょう!
徹夜で仕事して来たので徹夜は慣れてます!」と笑い飛ばした
玲香も「飛鳥井の危機?そんな事はさせぬよ!
飛鳥井の女として、この命賭したとしても我は阻止する!」と笑い飛ばした
京香は覚悟を決めた瞳をしていた
「柚………ですか?
まぁ柚の立ち位置を考えなんだ日は有りません!
ですが私はこの子の母なので、覚悟なんぞ等の昔に出来ております!」と答えた
瑛太も「私の子の事なれば………娘を護ると決めています!
ですが………私は飛鳥井を出ては暮らせません………
京香と離婚する気は皆無です
ならば話し合わねばなりませんね!」と覚悟を決めた瞳で言う
康太は「まぁそれも孝行息子が我が子を連れて来たら考えればええやんか!
双子らしいかんな………家族全員で乗り切らねぇと………ならねぇんだよ!」と謂う
瑛太は「烈の子ですか?」と問い掛けた
「誕生した子は生まれて初めて目にしたモノを親だと想う!
生命が助かり、初め会話したのが烈だからな
烈を親だと想い……レイが焼くほどなんだよ
レイは何時も「ぼきゅの!」と主張してるけど、アイツ等に取ったら烈は親だからな!」
清隆が「会われたのですか?」と問い掛けた
「安定して後は殻から出て来るだけだから!
と言われたから見に行ったんだよ!
その日に殻から出て……烈を親だと想いへばりついていたぜ!
今は人の世の言葉、作法、生活、其れ等を一陽(いお)って言う烈に仕える奴に任せて育ててるんだよ!」
瑛太が「その方に逢うのは可能なのですか?」と問い掛けた
「烈が還ってくれば、一陽もこの家にやって来る
ちっこいの達を世話する仕事をしてくれる!
そして幼稚舎に逝く様になったら、ちっこいののサポートをしつつ、バイク便の方の責任者になる存在だ!
名を弥勒院一陽、弥勒が養子にしてくれた存在だ
今は菩提寺で修行してる!」
凛は「いお……きょわい」とボヤく
涼も「はきゅりょく……ありゅのよね!」と謂う
榊原は「まぁ武闘派な人ですから、腕は確かです
今は黒帯で赤帯と指導者の資格を習得中ですからね!」と謂う
あれから一陽は菩提寺へ連れて来られ、下働きをしながら己を鍛えていた
黒帯が取れると、ちっこいのの面倒を任され教えていた
城之内が感心する程の好青年だった
だが城之内は一陽の持ってる雰囲気から
「あれは門倉だろ?」と見破った
「他の奴には解らねぇよ!
が、俺は牢屋に門倉閉じ込めて、烈が連れて行ったのを見たからな
事故死したと言われても、あの烈だから……もしやと想っただけだ!」
康太はコイツもすげぇわ!と感心した
烈が関わって練度が格段に上がっているのだ
「でも顔が全く違ったからな………あれはどうしたら、そうなるのか?と気にはなったな………」
「烈の事だから結構エグい事してるのは確かだ
元 佐々木蔵之介は顔の骨を削り、骨格から変えて別人になったと謂うかんな………
整形なんて生易しい事なんてしてねぇのは確かだから聞かねぇ方が身のためだぞ!」
まさか……道士の手により死体に魂を繋ぎ合わせて生き返らせ別人にしました………なんて言えねぇ………
城之内は「あぁ、烈は結構平気な顔してエグい事するからな………」とボヤいた
一陽は菩提寺の生活に慣れ始めていた
ちっこいの達に「ちぇんちぇー!」と呼ばれ教えているのだ
城之内が認め菩提寺の手伝いをさせている存在なのは確かだった
其れ等総て引っ括めて、烈が世界会議から帰って来れば動き出す
飛鳥井の家の終焉の始まりなのか?
それとも新しくスタートを切る始まりなのか?
それは誰にも解らなかった
康太の目にも果ては何も一つ映し出されてはいなかった…………
だが康太は其処まで不安に揺れてはいなかった
家族の絆は切れない
日々家族と繋いだ絆がそんなに簡単に切れないと信じて疑わないからだ………
烈は3日入院してる間に体調を整えると魔界へと戻って行った
康太は烈が入院中、其処まで切り込んだ話はしなかった
自分なりに………今一度考えねば答えなど出せはしない
そう考えていた
烈の話を聡一郎の電話口から聞いた日から考えていたのだ
康太は魔界へ渡り星詠みの婆婆の所を尋ねたり
烈のお師匠の所を尋ねたり、弥勒と共に釈迦の所を尋ねたりした
皆 近い内に康太が尋ねて来るだろうと烈から聞かされていたと話し、来たら協力してくれと頼まれていたと話した
釈迦は柚の力を見ようか?と言ってくれた
弥勒も「ならば俺も行き、どれだけの力量なのか?この先どれだけの力を発揮するか?
確かめるとする!」と申し出てくれた
「何故にそんなに強い力持ちが生まれるかな?
魂の時点では………双児には力なんて無かったと想ったのにな………
って事は結子の方も調べねぇとならねぇのか?」
康太は思案して問い掛けた
弥勒は「元は男子の魂を無理矢理、おなごの双児にしたのだったな………
ならば一度視るしかあるまいて!」と謂う
「んとにな、虎視眈々と終焉へ向かわされていたんだと想うと腹が立つ!」
「…………人を弄び………人生狂わせすぎであろう!
その中に親父が組み込まれているだけでも俺は腹が立つってもんだ!」
と弥勒はボヤく
「弥勒………お前は本当に海坊主を討つ気か?」
「あぁ、必ず俺の手で討つと決めている!
お前に呼び出されるまで俺は世界会議の準備の為に迎賓館にいた
そんな時 烈はお袋に合わせてくれたんだよ!
今は魂も浄化されお別れを謂うならば、今しかないわよ!と言われたから………
烈に連れられて魂の修練場に行ったんだよ
そしたら………お袋は………憎しみも悲しみも綺麗に昇華して………昔の様に笑顔で俺を抱き締めてくれた………
『悔いはないわ!何もないわ!綺麗な魂になり私は輪廻転生の道を辿る!
今度生まれるならば………私は愛し愛され生きたいと願う………その為に私は辛くても諦めたりはしない道へ逝くのです!
私の息子に産まれてくれてありがとう高徳……愛しているわ』と言ったんだよ
もう今後は交わる事のない道へ逝かれる母は………清々しい顔で笑っていた
こんな機会をくれた烈に感謝してるんだよ俺は!
だから門倉を養子にして再スタートを切る手助けをしてやった
それも総ては………烈がくれた愛に報いる為にしてる事だ!」
「弥勒……」
「さぁサクサクと柚の様子を見せろ!
そして双子の片割れも見せろ!」
「あぁ頼むな!」
「夜は命の水だぞ!呑兵衛沢山連れて行くからな!」
「あぁ、伊織が頑張ってくれるさ!」
康太は久し振りに清々しい笑みを浮かべた
悩み 直面する現実に…………苦しんでいたのは烈だけではなかったのだ
次代を受け入れ顔見せをする!
それは宗右衛門の敷いた1000年続く果てへと逝く為
宗右衛門 最期の仕事でもあるのだ
腕によりをかけて1000年続く果てへと逝かねばならないだろう
だから康太も踏ん張り、やらねばならない事をする
康太と榊原は弥勒と釈迦と共に人の世に戻った
それを遠くから……烈は見ていた
その横には聡一郎も一生もいた
烈は「母しゃん元気そうで良かったわ!」と嬉しそうに呟いた
メラメラと生命の焔を滾らせて立っていた康太は、絶対に負けない勝機とオーラを醸し出していた
聡一郎は「康太らしくて泣けてくるよ!」と謂う
一生も「あぁでねぇとな康太は!」と謂う
烈は「カズはもう湿気ってない?」と問い掛けた
一生は「大丈夫だ!細かい事を考え過ぎると逆効果だと気付いたからな!
俺は本能の男、だから己の勘を信じるよ!
俺の星がそう指し示してくれたからな!」と胸を張り答えた
烈は笑って「何度だって迷えば良いわ!
軌道修正はボクがしてあげるからね!」と謂う
閻魔が「仲良いのは良いですが、仕事しやがれ!」と目を座らせて謂う
その横には兵藤も目を座らせて頷いていた
書類を仕上げてネームプレートの前に書類を置く
そんな作業を鬼達と協力して行っていた
そして何とかキリを着けると烈は祖父と父を呼び出し
「何でも飛鳥井の家に行けば今夜は宴会に在り着けるそうよ!」と焚き付けた
閻魔は「それなら思い切り飲もうじゃありませんか!」と言い後は閻魔庁のスタッフに頼み、素戔鳴尊 神威 兵藤 一生 聡一郎と共にその場を後にする
聡一郎は「烈は?」と問い掛けた
「ボクは此れより天空神に御目通りがあるから行けないわ!」
「無理するんじゃないよ!」
「解ってるわ、そーちゃん!」
烈が呼びに来たガブリエルと共に魔界を後にすると、閻魔は皆を連れて人の世へ向かった
ともだちにシェアしよう!

