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第33話 春の嵐 亜米利加の地以て編 ❷
『天使来てたんだろ?それでもその穢れ取れなかったのか?』
阿賀屋の質問に烈は少し考えて
「残念だったけど………取れなかったわ……
逆にガブたんはボクの穢れを受けちゃったから、その穢れは天使にも有効みたいよ?」と答えた
『嘘!天使だろ?天使ならどんな穢れも跳ね返しそうやんか!』
阿賀屋は信じられない様に謂う
其れは難癖に近いイチャモンだってば……
天使に対して…………あまりにも失礼だろ………
「狗神と謂う、邪教だからね、知られてないってのがネックなのよ
人に知られない邪教
所謂 どんな宗教でどんな経典が有って、どんな呪いになってるのか?
土着信仰的な呪いってのが………一番厄介なのよ!」と答えた
クリスチャン的な天使のガブリエルと、土着信仰の呪い……
そもそもがどんな呪いなのかも知られてないのだ
阿賀屋は心配して
『一番偉いヤツでも無理なのか?』と問い掛けた
「多分、其処まで逝けば治るかもだけど………
ボクが天界へ行ったら、天使まで穢れを受けて闇落ちしちゃう天使出るからやりたくないのよ
ガブたんも穢れを受けて今 浄化中だからね」
『其処まで強いのか?
なら高嶺や球団関係者は大丈夫だったのか?
お前、高嶺の契約して来たんだろ?』
亜米利加の地でも、御館様の為ならば調べ上げちゃうのね………
恐るべし……阿賀屋の家………と烈は想った
「呪いは一時的に体内に封じ込めたのよ!
でないと、高嶺や亜希、そして子供に二階堂夫妻
そして何より球団関係者に穢れを受けさせて影響を及ぼしちゃうからね!
だから、こうしてる間にもじわじわと体内の穢れはボクを侵食しようと暴れ始めているのよ…」
『おい!今すぐに其処へ行ってやる!』
「来ないで……っ……」
そう叫び烈はゲホッと吐血した
穢れが烈の体内で暴走を始めた影響が出たのだった
烈は力なく崩れ落ちた
何処からともなくトキが姿を現し
「蒼佑、このままでは、何時烈の体内の狗神の呪いが暴れ出し、何時烈を乗っ取るか解らないから暫く連れて行く!」と言い姿を消した
兵藤は烈の携帯を取ると「蒼佑か?」と問い掛けた
『朱雀!烈はどうなった?』
「トキが連れて行った」
『狗神の穢れってそんなに凄いのかよ?』
阿賀屋は思わず呟いた
「クーの白い体が黒い染みになって消せない程に、抜けない穢れだと言ってた!
クー達は創造神の所へ直で行って傷は治して貰ったがシミは遺った!」
鷹司緑道は傍でそれを聞いていて
『それは本当に狗神であるのか?』と問い掛けた
兵藤は「ええ、目の前でドロドロに闇を垂れ流す……狗みたいなのが現れましたから………
烈はずっと狙われていた!」とキッパリ答えた
『ならば我等も本気を出さねばならぬな!
烈を我等が所へ連れて参ってくれ!
600年前に狗神を祓う儀式を行った事がある!
狗神の体が其処まで原形を留めておらぬなら………殺戮兵器になり後は贄を求め殺し続けるだけとなる………早く手を打たねばならぬな!
ひょっとして……その狗神……鴻池のだったりするのか?』
「多分………そうだ………!」
『ならば此れより祭壇を作る
本当ならば倭の国でやらねばならぬ儀式じゃが、倭の国には写し鏡で配下の者に受け止めさせ、本堂でお焚き上げを行う事にする!
其れでは一刻も早く烈を見付けたら連れて来て下され!』と言い電話を切った
兵藤は電話を切り、烈の遺して行ったサコッシュの中に携帯を入れてやり
「烈………何処へ行ったのよ?」とクーに尋ねた
クーは「狗神の穢れが溢れ出て来てたから、取り敢えず外へと連れ出したんだろ?
探して来るから貴史は緑道の所へ逝けよ!
俺はお前の覇道を追って連れて行けるから、直ぐに動け!」と言い姿を消した
兵藤は阿賀屋に連絡を取った
ワンコールで出た阿賀屋に
「何処にいる?」と聞いた
阿賀屋は『お前は何処にいる?』と逆に問い掛けられた
「マンダリンオリエンタルNYに泊まってる!」
『偶然だな、俺も其処に泊まってる
ならば下に降りて来い!
緑道は配下の者を連れて既に儀式の準備をする為に出て行ったからな!
獅童もいるから儀式の場へ出向くとするぞ!』
そう言い阿賀屋は電話を切った
兵藤は「ルー、スー行くぞ!」と謂う
竜馬は「俺達も行く!」と言い出した
ジョージは「ならばバスはまだ使えるから呼び出すから、それに乗って連れてってよ!」と謂う
兵藤は仕方なく「ならバスを呼びやがれ!」と言いルーとスーをポケットに入れると素早く歩いて行く
皆も廊下は走らぬ様に早足で後を着いて行く
ホテルの下に降りると、既に阿賀屋と鷹司が待っていた
暫く待つとバスがやって来た
皆バスに乗ると阿賀屋が
「アディロンダック山へ行ってくれ!」と行き先を告げた
バスは目的地を告げられ走り出した
兵藤は「何故アディロンダック山なんだ?」と尋ねた
「緑道が其処に祭壇を造らせてるからだ!
標高の高い山は神が宿る!
お前なら山神の存在を体感した事があるんじゃねぇのか?
あぁ、アレは神と謂うより主か……」
何故知っているのか?は解らない
本当に…………掴み所のない男だった
バスはアディロンダック山へと向かう
途中でクーが戻って
「烈はアディロンダック山にいる!
トキが標高の高い山目指している時に、緑道と遭ったらしくて、祭壇の上に烈は寝させられてる!」と告げた
兵藤は「烈は無事なのかよ?吐血してたろ?」と心配して問い掛けた
「あ~、体内に狗神の穢れを閉じ込め抑えたから、内臓を食い破らんばかりに穢れが暴れ出したからな、内臓が傷付き其れで吐血したんだよ!」
其処までして……闇を抑えていたと謂うのか?
皆は言葉をなくしていた
「多分だけど、烈は儀式を終えたら倭の国へ帰国する!其処で久遠に診てもらうつもりだろ?
内臓に何処までのダメージ有るかは解らんからな…………まぁ高嶺は烈の指し示す道へ逝けたんだ、脱線しない限り果ては歪まない!
後は体調を調える為に帰国する気だろ?」
竜馬は「イベントはどうするのさ?」と問い掛けた
「やるだろ?そしてドゥバイへも行く!
其れが道を敷いた者の死命だからな!」
アーネストは「ならば、イベントなんてどうでも良い!マンションはリーダーに無償で貸すよ!」と申し出た
クーは「対価がないと……烈は受け取らない!
タダより高いモノはないと解ってる奴だからな!」と答える
阿賀屋は「君達、そんな話ししてる間に、緑道の所へ行くって事は自分達も穢れを受けるって事、理解してる?」と少し皮肉り謂う
竜馬は「そんな事は百も承知だ!」と答えた
メンバーは頷いていた
かなり長い時間を要してアディロンダック山へと到着する
其処から更に登山に近い強行軍で頂上を目指す
皆ヘロヘロで頂上へと登る
頂上へ近づくにつれ経を読む声が大きくなって行った
緑道は大きな声で「クー ルー スー トキ!烈の腹の中にいる穢れを引き摺り出せ!」と指示を出した
すると兵藤のポケットから飛び出して、烈の体内の穢れを引き摺り出す
意地でも抜け出したくない穢れと、其れを引き摺り出そうとするクー達とトキ
兵藤は朱雀になると天高く飛び立ち
烈の生命を繋ぎ止めた
緑道は錫杖を振り翳し、少し引き摺り出した影に錫杖を突き刺した
【ギャァァァァァ…………!】と謂う悲鳴が響き渡る
トキが烈の体内から、強引に穢れを引き摺り出し、地面に叩き付け踏み付けた
緑道はその黒い穢れに鏡を向けた
黒い穢れは鏡に吸い込まれ…………
【おのれぇ!おのれぇ!許しはせん!
ギャァァァァァ…………】
呪いの言葉と断末魔を叫び………消えた
緑道は儀式を終えると烈を担ぎ上げた
「烈は儂が責任を持って元に戻すとする!
兵藤貴史、阿賀屋蒼佑、儂と共に来るがよい!」
と謂れ緑道は山伏みたいな白装束を着た者達に囲まれてその場を去った
兵藤、阿賀屋も共に行く
兵藤は「ホテルに帰れ!そして何事もなく帰国しろ!」と叫んだ
トキは烈の無事を確認すると天高く飛び立ち……姿を消した
クーは烈と共に着いて行き、ルーとスーは竜馬達に着いて行く
スーが「早くバスに乗って帰るで!」と帰宅を急がせる
ルーが「ホテルに還ったら帰国の準備をするからね!
アーネスト、烈の意識が戻る日まで、二階堂晃嗣夫妻に部屋だけ貸してくるないか?
其れか、ジョージが部屋を貸してくれると助かる!
あの二人を、ホテルに置き去りには出来ないからな!」と頼む
ジョージが「あの夫妻には球団近くの部屋を持ってる事務所のスタッフいるから、今は使ってないらしいから借りるとするよ!」と約束してくれた
竜馬は「ヘンリー、僕達はチケット取れ次第帰るよ!そして倭の国へ行ったらイベントの準備に入る!其れは絶対だから!」と覚悟を口にする
メンバーは皆同じ思いだったから
ダニエルが「皆 同じ思いだから大丈夫だ!」と告げた
アーネストは「俺もイベント手伝う!」と言い出すとジョージも「俺達もイベントを手伝う!」と約束してくれた
ヘンリーはノートPCを取り出すと、飛行機のチケットを取る為に調べ始めた
が、早い便のチケットが手に入らなくて、オブライエン家に助けを求めた
「父様、烈が倒れたんだよ!
家の事で大変で………僕等は直ぐに倭の国へ旅立ちたいから、飛行機のチケット取れる様に協力して貰えないかな?」
と送信
すると電話が掛かって来た
ヘンリーは今、アメリカにいる事を告げた
そして烈は何やら土着信仰の狗ってのに付け狙われ襲われ、穢れを受けて……儀式で穢れを祓った事…………
そして儀式が終わったら烈は連れて行かれた事を泣きながら伝えた
クリストファーは言葉もなく其れを聞いていた
『ヘンリー、私の親友がアメリカの空港会社の役員になっている!
今から頼むから何人分のチケットが要るか?言いなさい!』
【R&R】メンバーと竜馬とオリヴァーで八人、RODEOÑ四人、Strong Hi四人と伝えた
『解ったよ、直ぐに頼んでチケットを用意させよう!』と言い電話を切った
皆は荷造りをしてホテルのロビーに移動した
部屋はチェックアウトして精算した
ジョージは事務所のスタッフを呼び出して、ヤンキースの球団近くのホテルを貸して欲しい事
そしてその部屋へ二階堂晃嗣と謂う人がホテルに宿泊してるから、フロントから電話を入れて貰い朝になったら部屋へ案内して欲しい事
等などを伝えた
事務所のスタッフはメモして、朝になったらお連れします!と約束してくれた
それが終わるとバスに乗り空港まで移動した
空港に着く頃、クリストファーから電話が入った
『直ぐに空港へ行きなさい!
何とか座席に入り込ませてくれたので搭乗手続きをなさい!空港には友人がいるので、総ては友人がしてくれるとの事なので、指示に従いなさい!』
との事だった
空港のロビーに入ると、其れらしき人間が既に立っていた
【R&R】のメンバー達に気付くと近寄って来た
「【R&R】のメンバー RODEOÑ Strong Hiのメンバーで間違いないかい?
私はクリストファー・オブライエンの親友で、デルタス航空の役員のブルーノ・アーキスです!
皆様は後に我が空港会社の宣伝をして下さる、と強引に納得させ座席を御用意致しました!
其れを考慮して下さい!
何せタダより高いのは有りませんから!」
その台詞を聞いて竜馬は
「それ、リーダーの常套句だ!」とボヤいた
ブルーノは「そう言えばリーダーは?彼に逢いたかったんですよ!」と謂う
ヘンリーが「我がリーダーとは今回別行動です!」と答えた
「飛鳥井烈、彼は宗右衛門としての死命があり、来月、我が空港会社でドゥバイまで逝かれるので、その前にお逢いしとう御座いました
そうですか、其れは残念ですが、直ぐに会えるのでその時にって事で期待してます!とお伝え下さい!其れでは楽しい飛行機の旅を!」
と言いチケットを全員に渡した
空港職員が姿を現し、彼等を案内すると告げた
ブルーノに見送られ関係者用通路を通り、飛行場へと出て飛行機に乗り込んだ
飛行機に乗り込むと皆は安堵の息を吐き出した
リーダー 何処にいるの?リーダー
今から倭の国へ帰るから!
そしたら傍に行くから待っててね!
皆の想いは烈へと向かっていく
その頃の烈は眠った様に意識を無くしていた
阿賀屋は「烈、大丈夫なのかよ?」と問い掛けた
緑道は空軍の飛行機に烈と兵藤と阿賀屋と四人で乗り込んだ
配下の者はちゃんとチケットを取り倭の国へと帰国する予定だった
緑道は座席に着くと「緊急事態と謂う事でアメリカ軍の方に話をさせて貰った
烈の護衛に当たっていたアメリカ軍の関係者が異常事態に気付き接触をして来られ事情を聴かせてくれと申し出て下さり、早く対処せねばならぬ猶予もない事を伝えると、空軍の飛行機で横須賀まで送り届けると約束して下さったのじゃ!」と経緯を話した
兵藤は「少しでも早く烈が手当てを受けられるならば、俺も康太に顔向け出来るな………」と言い携帯を手にすると、康太にラインを送付した
アメリカへ行くまでの出来事、そしてアメリカへ行ってからの出来事、其れ等を総て康太へ知らせた
鷹司は兄に「倭の国へ到着したらどうするのじゃ?兄者!」と問い掛けた
「横須賀からは自衛隊に引き継ぎされ、横浜の飛鳥井記念病院まで送ってくれる事になっておる!
烈は主治医にしか見せぬのであろう?」
流石 緑道だった
兵藤は康太に行き先を知らせた
烈は常に両親に行き先や、何かやる時には連絡をしていた
その烈からの連絡が途絶えたとしたら?
康太と榊原が心配しない筈がないからだ………
横須賀に到着するとアメリカ軍から、横須賀の陸軍に引き渡される事となった
横須賀には陸軍の自衛隊の隊員が連絡を受けて待機していた
烈達を素早く特別車両に乗せて、高速を走り横浜へと向かう
緑道は特別車両に乗り込むと、ずっと呪文を唱え続けていた
そして呪文を唱え終わると
「阿賀屋蒼佑、兵藤貴史、兵藤昭一郎、飛鳥井烈に掛けられた呪いは跳ね返し、暗殺計画を立てた輩は尽くこの世から消し去ってやった!
鴻池の翁の一族郎党は烈の放った終焉の章にジワジワと終わりを迎えさせられ根絶やしになる
乳飲み子すら育たずに子孫は途絶える
穢れを受けた一族は終わる
が、射程範囲内の敵は弥勒院厳正、神取那智
奴等は鷹司も敵と認識して見張る様に【眼】を配置しがった!
即座に消し去ってやったが、蝿の様にウザい事この上ないから消し去ると決めた!」と告げた
兵藤は「弥勒院厳正は弥勒が討つ事になっている!それは烈が決めて弥勒とも閻魔とも話が付いている!」と答えた
緑道は驚愕の瞳を兵藤に向けて
「倅に討たせると申すのか…………」と呟いた
「それが弥勒院高徳が取らねばならぬケジメなんですよ!
本人は納得して烈と覇道を結んでいて、親父の気配かあるならば出て討つと決めている!」
「何とも……酷な………」
「烈ならば親でも兄弟でも己の手で討つ事がケジメと謂うでしょうし、必ずや討つでしょう!」
「それが…………宗右衛門であったな……」
特別車両は飛鳥井記念病院へと到着すると、久遠が待ち構えていて、ストレッチャーに乗せて院内へと運び込んて行った
緑道は「我等が手助け出来るのは此処までじゃ!では宗右衛門に宜しく………伝えておいてくれ!」と言い緑道は病院を後にした
久遠はスタッフに指示を出して烈の検査を入れた
そして指示を出した後、兵藤達を見て
「お前等も疲れた顔をしてるな!
よし、検査してやるとするか!」と言いスタッフに兵藤達の検査の指示を出した
全員一通り検査を受けさせた
烈はCTスキャンで内臓を検査した
自衛隊の隊員からは吐血したと聞いていたし、烈と共にいたクーは穢れに内臓を傷付けられた……と話してくれたからだ
CTスキャンで検査すると、烈の内臓はどうしたらこうなるんだ?状態な程に傷付いていた
処置して烈は入院してICUに運ばれる事になった
個室には疲れ切った兵藤と阿賀屋と鷹司が寝かされていた
其処にレイの姿はなく、何故か疲れ切った姿の弥勒がいて、久遠は点滴を追加した
久遠はクーに「レイは飛んて来てないのかよ?」と問い掛けた
「烈がアメリカに行く前に言い聞かせていたからな、多分飛んでは来ない!
『レイたんも、にーにになるんだから、弟達を護ってね!
その命に変えても護ってね!』と【約束】してるから、双子の傍を離れる訳には逝かないんだよ!」
「双子?俺はそれは知らねぇぞ………」
「あぁ、今はまだ蛇の姿をなさってる………
人の姿になれねば久遠には診ては貰えねぇからな………」
「蛇?…………それでも健康状態は解るし、何かあれば八雲を呼んでやるから検診はしろ!」
「それは助かる!」
「しかし子供の成長は早いな………
レイなら何か何でも飛んてくると想っていたのにな………」
しみじみ謂う久遠にクーは
「レイに取ったら烈との約束は絶対!
って事なんだろ?
其れより何をジジ臭せぇ事を言ってるんだよ!」
「まぁ俺はおじさんだから仕方ない!」
「此れから赤ん坊生まれるのに、そんなんでどうするのよ?」
「え?誰が誰の赤ん坊を産むんだ?」
「お前さ………紅緒孕ませたらなら責任取れよ!
烈は怒ってたぜ、責任取らないなら義泰に言い付けてメス待って追いかけさせるから!って!
抱いたんだろ?避妊具も着けずに!
なら孕む可能性考えなかったのかよ?」
「嫌………既成事実出来たら再婚しやすいかな?とは想ったのは事実だ!」
「なら不安がらせるな!
ちゃんと約束してやれ!と烈からの伝言だ!」
「あぁ、ちゃんと責任は取るし、烈からの許可も取る!拓美と拓人にも話すよ!
親父と義母さんにも正式に話をする!」
「ならば、それで良い
烈は幸せを願った者が不幸にならないなら……それで良いんだからな!」
まるで飛鳥井康太だと……久遠は想った
康太は関わり合った者の幸せだけを願っているのだ!
総ての検査結果が出て烈は当分はICUに入り、傷ついた内臓の治療をする事になった
久遠は「康太に知らせて大丈夫か?」と問い掛けた
クーは「貴史が来てるならば、もう連絡入れてるだろ?」と話してると、タイミング良く康太と榊原が病院にやって来て久遠に面会を申し入れてるとスタッフが来た
久遠は「個室にお連れしろ!」と伝えると、暫くして康太と榊原がやって来た
久遠は烈の状態を詳しく話した
康太は悔しそうに親指の爪を噛むと
「やっぱ………こうなる前に潰しておくべきだったな!」と吐き捨てた
クーは「もう根っこも生えない位に根絶やしにした!終焉の章を放ったからな
子孫はもう遺らないし、ボロボロと死に絶えて行くだけとなった!」と伝えた
康太は「終焉?烈が放ったのか?」と驚いて問い掛けた
「あぁ、あの穢れた一族を、根絶やしにする為に
放たれた!
狗神の穢れは緑道により祓われ、地獄の苦しみの果てに………無限要塞牢獄へと落とされる、事実上の永遠の終わりだ!」
「……………そりゃ起きねぇのは当たり前か………
下手したら命を失っても仕方ねぇ呪文飛ばしたなら………こうなって当たり前だな
その上狗神の穢れを受けて体内に閉じ込めならば、内臓はその影響を受けて当たり前やんか!」
と怒り謂う
「烈は数日で起きる!
そしてイベントをやり、ドゥバイへと行く!
なぁ真贋、ドゥバイ案件って知ってるか?」
「…………性奴隷にさせられ動物とセックスさせられたり、携帯もパスポートも取り上げられ、生涯金持ちの慰み者にされ必要なくなったら売り飛ばされる…………人権無視な高額報酬のバイトか?
まぁ、烈が何時も言ってるやんか
タダより高いのはない!って……
高額報酬って言っても楽して稼げる仕事なんてねぇって!それがどうしたのよ?」
「その売り飛ばされた女は………儀式に使われ骨まで食い尽くされ…………消えてる
この世から綺麗サッパリ消えてるんだよ!
まぁ金に釣られた奴も悪いが、ラスボスの力を蓄えさせてるって現実が露出して来た
一度リセットした後にドゥバイの見直しをせねばならなくなった
国連もこの事態を受けて動き出す事になった
ドゥバイはこの先王族を遺すのならば、法のルールを徹底的に敷いて一夫多妻禁止等など法の改正も是正させたりするのに、烈なくして成り立たねぇからな!」
「あ~そっちに繋がっていたか……本当に胸糞悪い事しやがるな!」
「まぁな、それも烈が起きねば………の話となる!」
康太は果てを見ながら笑うと
「高嶺………ヤンキースのコーチに就任したんだな
ヤンキースの球団側が大々的に発表してたぜ!
まるで選手の入団会見ばりに盛大にユニフォーム着るパフォーマンスまでやってて驚いた
【R&R】リーダー飛鳥井烈の推薦するコーチで、期待大だとやってるの見たぜ!
号外まで配られる程の大騒ぎだ!」と口にした
クーは「烈が穢れを抑えてまで頑張った甲斐があったな!」と笑った
すると其処へ慎一がレイと双子を連れてやって来た
康太は慎一には言ってなかったのに……と驚いた
慎一は「レイが泣きながら『れつ、いっしゅんめをあけたとき、くどーせんせーがいた
だからつれてってー!』と泣いて訴えて来たので来ました!」と謂う
久遠は慎一の手にした籠を見て
「その子達が烈の子か?」と問い掛けた
慎一は「はい!そうです!」と答えた
久遠は双子をテーブルに置くと
「健康状態をチェックさせてくれ!」と言った
双子はうん!と頷き、お口をあ~んと開けた
久遠はもうメロメロになり、お口をライトで照らしてチェックする
体も色が入りどこから見ても解る様になっていた
久遠は色々と聴診器を当て調べる
双子はカプッと久遠の指を齧った
慎一は慌てて「何してるの!」と剥がそうとした
双子は一つになると「烈は狗神の穢れを受けたのか?祓えていると言っても、この医者も穢れを少しだけ受けてるぜ!」と言った
康太は「まぁクーの体がルーとスーみたいに染みになった程だからな………」とボヤいた
クーは「………本当に俺様の艶々の白い肌に!!!」とボヤいた
榊原はクーの体を撫でてやり
「直ぐには取れないのですか?」と尋ねた
「緑道が狗神の穢れを倭の国の写し鏡に送り浄化の道を辿ると言ったが………道中ずっと呪文唱えていたからな、一筋縄で逝かねぇんだろ?」
「狗神本体は叩いてはいないのですよね?」
「あぁ、だが穢れを祓われたって事は、本体の力も削ったって事だ!
しかもヤケに血生臭くて………一族のヤツを半分以上食い殺して暴走を始めてるから、緑道は本体も消す勢いで還って行った!
鷹司直伝の狗神祓いをすると言ってたから、本山に入り今頃は本体も祓おうと躍起になってる最中かもな………」
クーが謂うと康太は覚悟を決めた瞳をして
「ならばオレは鷹司へ出向いて、烈のケジメ取ってやんよ!
オレの子を傷つけやがって!
烈は母の果てが狂ったからと、軌道修正を掛けてくれる優しい息子なんだ!
その子供を傷付けられてオレが黙っていたら男が廃る!」
と言葉にした
阿賀屋は「それは辞めといてやれ!そんな事すれば烈の果てが狂う事になる!
アイツは意識を失っていても言ったんだ
『絶対に母しゃんには知らせないで!
でないと母しゃんの果てが狂ってしまうわ!』
って…………だから出るな!」と苦しそうに言葉にした
兵藤は「狙いは康太、おめぇだって事だ!
倅を集中的に狙えば………お前が出るだろうと………誘き出してるんだよ!なぁ弥勒、そうだよな?」と謂う
すると影薄く点滴を受けていた弥勒がムクッと起き上がった
弥勒は「俺はお前を止める要員として烈に派遣されてるんだよ!
だから動くなよ!俺の仕事を増やしてくれるな!」と文句を垂れた
そして何故か弥勒も点滴されていた
一番奥にいたから気付かなかっただけなのだと…
その時になってやっと気付いた
康太は「あんで?弥勒が?」と問い掛けた
すると弥勒は康太を見て嗤って
「俺か?俺は親父の息の根を止める為に烈と覇道を結び、親父の気配があれば出られる様にしてるんだよ!
しかも………狗神使ってはいるが、絵図を描いてるのは海坊主なのは垣間見えたからな、息の根止める算段は取ってるんだよ!
烈が投げた【印】となる鏃は完璧に神取を貫いた
その印を追って神取をあと一歩って所までは追い詰められた…………が、狗神が来やがって俺も穢れを受けたんだよ!
で、釈迦に穢れを祓わせて戻って来た所だ!」と話す
榊原は「で、弱ってて久遠先生に点滴打たれたのですか………」とトドメを刺した
弥勒は「グハッ!伴侶殿は本当に情け容赦のない!」とダメージを受けていた
双子は一つになり神祖の透明な姿になると如意宝珠を取り出した
『龍族 世話役、長、に告ぐ、今直ぐに此処に来い!』
と命令した
すると金龍 黒龍 が姿を現した
金龍は「我々は呼んだのは………貴方か?」と透明な体をする龍に尋ねた
神祖は二つに分かれて小さくなると
ニコッと笑った
「あのね、れちゅにょ せんせー きれーにちて!」
と謂う
榊原は「あぁ、龍族には浄化の力がありましたね!」と謂う
金龍は久遠を視ると少しだけ穢れを受けていた
金龍は「おぉ!少し穢れを受けいているではないか!」と謂う
榊原は烈の治療をして穢れを受けた事を話した
金龍は「烈!!我が孫烈!!!」とショックを受けた様だった
そして双子に近寄ると優しく頭を撫でた
康太は「響と奏だ!」と紹介した
金龍は「この子が烈の子ですか!
曾孫がこの手に抱ける日が来るとは!」と泣きながら双子を抱き締めていた
そして久遠の方を向くと
「その穢れは時空気流に乗り吹き飛ばして来るとしよう!」と謂う
窓を開けて外に出ると龍になり窓の中に顔を突っ込み久遠を咥えると、天高く昇って行った
黒龍は「神祖、初の御目通りになります!黒龍と申します!」と自己紹介した
双子は一つの姿に融合すると
『死の気配は消えたな!
あのまま逝けば龍族は破滅を迎えるしかなかった
我はそれを阻止したかった
が、既に体のない我が何が出来た?
だから聖神に頼み軌道修正を掛けて貰った
何故、聖神に頼んだかと言うと、誰よりも魔界を憎み、誰よりも魔界の破滅の願った
そして………誰よりも魔界を愛して、誰よりも両親を愛して、両親が還る魔界を変えようと努力している存在だと知っていたからだ!
聖神は未だに禁足地に向かい、死者の魂を安らかにする為に、努力している
そんな誰にも認められず、誰にも見られぬ事を黙々としている存在だったから、白羽の矢を立てた、そして我の言葉に耳を傾け…………アヤツは死にかけた
だから黒龍の命が繋がったのならば、我等は聖神に報いる日々を送ると決めたのじゃ!
飛鳥井の礎に迎えられ、宗右衛門の敷いた果てへと向かう
そう決めたのじゃよ!」
「神祖………」
『禁足地は近い内に昇華され、あの地に留まっていた魂は天国の門が開かれると同時に天へと上がる!
報われぬ魂も創造神が聖神の努力に報いて昇華を約束された
魔界は更なる変化を遂げるだろう!
そして龍族は立場を確約され進む
それこそが………我等の願いであり
龍族を魔界へ導いた我等の思いでもあった!』
黒龍は泣いていた
龍族の神祖とも言える存在の言葉もなく涙が出た
神祖は元の姿に戻ると「ぶろー!」とフルーツを所望した
慎一は持っていたバッグから、葡萄を取り出すと、二人の前に置いた
レイは疲れたのか?
クーがベッドに寝かせていた
康太が「ずっと烈の瞳と同化していたから、ぶっ倒れねぇか………心配してた」と言いレイの頭を撫でた
久遠は素早くレイの診察をすると、一週間貫徹したばりの疲労で栄養失調目前な程に体力を消費していたレイに点滴を持って越させて処置をした
レイは烈の眠る筈だったベッドで寝ていた
すると聡一郎が榊原に電話を掛けて来た
『【R&R】のメンバー RODEOÑのメンバー Strong Hiのメンバーが飛鳥井に来てますけど?
どうしたら良いですか?』
榊原は康太を見て「客人が大勢お越しのようです!」と告げた
康太は「なら行くとするか!慎一と買い出しに逝かねぇと大勢は賄えねぇだろ?」と謂う
慎一は「そうですね、レイは寝てるので後で迎えに来ます!双子は後で迎えを寄越すので金龍と共に、黒龍が連れて来て下さいね!」と言い慌ただしく病室を出て行った
双子は葡萄を食べ終わると、兵藤にお口を拭かれ、眠そうに丸くなっていた
その上にフワフワのお布団を掛けてやる
金龍が病室に久遠を連れて戻って来ると、康太達はいなかった
黒龍は久遠を視ると「穢れは祓われたな!遺しておけば禍を呼び………下手したら貴方の嬰児を道連れにしてしまう可能性もあった!
愛する者の腹に……貴方の子が宿っておるのであろう?
其れを神祖は視て我等を呼ばれたのでしょう!」と話した
久遠は「助かった、その御礼に点滴をサービスしといてやるからな!」と言いスタッフに
「疲労の点滴二つ個室に持って来てくれ!」とナースコールを押して伝えた
『直ぐに持って行きます!』
と返答があると直ぐに個室のドアがノックされた
ドアを開けると鈴木泰知が点滴と点滴スタンドを用意して立っていた
久遠は「其処にいる二人に頼む!」と謂うと泰知は二人をソファーに座らせ手際良く点滴を打ち、点滴を吊るして固定した
「其れでは一時間経ったら来ます!」と言い出て行った
「久遠………我等は………」と抵抗しようとしたが、鋭い眼光に何も言えなかった
久遠は何故か弥勒の横に椅子を持って来て座ると
「弥勒、此れを見てくれないか?」と言い、胸ポケットから携帯を取り出して写真フォルダーの中から、目的の写真を取り出すと弥勒に見せた
弥勒は携帯を受け取り、表示された画面を見て……固まった
「此れってお前の倅の翔馬なのか?」
弥勒は「俺の倅に間違いはない……が、翔馬って名前になってるんだな………今何処にいるんだ?」と問い掛けた
久遠は名前も変えられ居場所も知らないとは……………と衝戟を受けた
久遠はもう一枚の写真を表示した
その写真には凛々しい少年と柔らかな顔した少年、そして牙を抜かれスッカリ温和な顔になった倅が写っていた
そしてその後ろには少し年上の少年達も写っていた
「此れは鷹司の書生に入ってる息子から送られて来た写真なんだよ!
お前の倅と写ってるのが俺の子の拓美と拓人
そしてその後ろに映ってるのが三木敦之と、安曇貴教、この子等は同じ鷹司で書生として学んでいるらしい!
で、俺の子が弥勒にこの写真見せといてね!と送ってきたんだよ!」
「鷹司の書生に放り込まれていたのか………知らなかった…………」
弥勒が謂うと鷹司が
「あ~翔馬の親はお前だったのか………知らなかった
ある日当然 烈が連れて来たんだよ
『この子は半殺しにする勢いで地獄の厳しい試練場にぶち込んで鍛え上げた子なのよ!
まぁそんな試練の中耐えて来た子だから、どんな試練を与えても大丈夫だから、更に鍛え上げて使える奴にしといてね!』と連れて来たんだよ!
取り敢えず、四人の中に入れて生活させてある
名前は『翔馬よ!』と告げられ以来、儂の書生として、鷹司に住まわせておる!」と経緯を話した
弥勒は「倅は凄く良い子で……俺は少しも疑わず信じていた
が、澄香が親父により闇に染まらせられ………総てが発覚した
烈が謂う我が子の姿が信じられなかった………
誰もが口を揃えて【良い子】だと謂うのに、澄香を召し使いの様に見下し端女扱いしてたなんて…………俺は絶望を覚えた
親父は死しても執拗に烈を康太と勘違いして狙い続け………
倅は妻を端女扱いしていた…………俺は家族の何を見て来たんだ?………と絶望した
そんな時…………お袋が親父に絶望して自らの命を絶ったと聞いた
そんな事…………知らなかった…………何を見てたんだ?と本当に自分が嫌になった
俺は烈が決めた事ならば、倅は殺されても文句は言わないと決めたんだ!
倅はそれだけの事を………して来た
だから俺は………倅が今何処にいて何をしてるのか?サッパリ解らなかった………」と苦しい胸の内を話す
久遠は「お前の子も【良い子】の仮面を着けていたのかよ?
俺もな自分の子は良く出来た良い子だと信じて疑わなかった…………
だけど蓋を開けたらどうよ?
烈は俺に言った
『あんな子達が弁護士と医者になるの?
冗談は無しにしてよ!
人の命の重さ、人の罪の重さも知らない奴が、そんな仕事に就くほうが怖いわよ!』と一蹴された
『表面しか見てこないから、そうなるのよ!』とも言われた
俺は言葉もなかった………
以来………我が子はどうやら?良い子の仮面はベシベシにへし折られた様で、年相応の悪ガキに変身しやがった!
今は離れて暮らしているが、今の方が倅を身近に感じられている………」と内心を吐露した
兵藤は「なら紅緒の結婚式を【R&R】が開いてくれるって謂うし、盛大な結婚式セレモニーとなるな!」と笑った
久遠は嬉しそうに笑い何も言わなかった
其処へ聡一郎が呼びに来て
「さぁ飛鳥井へ行くよ!」と呼びに来た
久遠は兵藤達の点滴が終わるのを待ち、針を引き抜くと絆創膏を貼ってやった
聡一郎は「慎一がマイクロバスで迎えに来てるよ!」と謂う
兵藤は「何故にマイクロバス?」と問い掛けた
「もう義泰、志津ちゃんと共に乗ってるよ!
だから早くしないとメス持って追い掛けられるよ!」と発破を掛ける
兵藤はレイを抱き上げると、聡一郎が双子の籠を持った
阿賀屋と鷹司はウキウキで起き上がり、病室を出て行った
金龍と黒龍と弥勒にも「早く行くよ!」と急かして皆で駐車場へと向かう
其処には榊原が双子を受け取り、後部座席の隼人に籠を渡した
皆をマイクロバスに乗せると、聡一郎は榊原の車の後部座席に乗り込む
慎一がマイクロバスを発車させると、皆 タワマン横の飛鳥井の家へと向かった
阿賀屋は「まだ帰れねぇんだな……」と呟くと
慎一が「ドゥバイを一区切りにしてるみたいだから、戴冠式終わらねば戻れません!」と答えた
鷹司は「ドゥバイ……クソドゥバイ……か……」とボヤく
慎一は何も答えずに飛鳥井の家へと向かった
タワマンの関係者以外駐車禁止スペースに車を停め、車から降りると駐車場奥の関係者以外立ち入り禁止のドアへと向かう
何時もの様にドアを開けて中へと入り、玄関のある方へ歩く
異常な程の防犯カメラが設置してあり、その物々しさを物語っていた
玄関の鍵を開けて中へ入ると、金龍と黒龍は初めて入る家だったが、懐かしさを残す雰囲気があり、ホッと息を吐き出した
飛鳥井の家族がいて康太の仲間が一生を除いた者がいる
そして子供達がいて烈の仲間がいる
賑やかな雰囲気に清隆と瑛太は終始にこやかに飲んでいた
久々の宴会だった
花見に行った後は一生家族がイギリスへ行き、烈が忙しくしてて誰も呼ばなかったから静かなままだった……
そしてその場に烈がいない事に気付く
清隆は「烈は?」と問い掛けた
榊原が「烈は入院中です、意識不明でICUに入ってます!」と伝えた
瑛太は「え!!宴会してる場合じゃないですか!」と叫んだ
が、康太が「騒ぐんじゃねぇよ!」と低い声で一喝した
榊原も「烈は一週間は目を醒さないでしょう!
なので今騒いだとしても目を醒ます事はありません!烈は皆が楽しく飲んてるのが嬉しいんです!
なので、今は飲みましょう!」と謂う
阿賀屋は「今回 神野達が同行するって言ってたのに来なかったのって……狗野郎の所為か?」と問い掛けた
「多分花見の翌日に狗神が来ましたからね!
その時は康太がケルベロスを呼んで対処させてくれたので、皆に穢れは触れる事はなかったんですがね………
なので警戒して神野達とは距離を取っているのでしょう!
また晟雅…………泣いてますからね!」
と榊原は謂う
康太は「晟雅だけじゃねぇよ!須賀も柘植も相賀も烈と連絡が取れないんだよ!と聞いて来やがる程に心配してる!」と答えてやった
鷹司が「あの狗神………かなりの人数食ってるぞ!
きっとその死に方に唐沢達が大忙しになってるんだろうな!」と苦笑して謂う
康太は「だろうな………唐沢もだけど、正義も烈と連絡取りたがっていたな……」と思い出した様に謂う
榊原は「何でしょうね?でも烈が起きねば対処は出来ませんからね!放っておきましょう!」と嗤う
康太も「だな!」と納得して嗤う
【R&R】のメンバーやRODEOÑ、Strong Hiのメンバー達は楽しいひと時に、お酒も進み早々に酔って寝落ちしてしまった
寝てる奴等に毛布を掛けてやり寝かせる
竜馬は客間を出ると自分の部屋へ戻って行った
それを見送り御影は「彼、拗らせてる?」と呟いた
兵藤は「アイツは烈がいねぇなら、あんなもんだろ?」と返す
【R&R】のメンバーは肩を竦めるて何も言わなかった
複雑な思いを抱き………夜は更けた
烈は5日間 眠り続けた
が、5日目の朝 目を醒ました!
まだICUにいた烈は様子を見に来た久遠に
「先生ぇー おはよう!」と挨拶した
一週間は寝たきりかと想っていたが……
起きてて久遠は驚いていた
「起きて大丈夫なのか?」と問い掛けた
「起こされたのよ、寝てる暇なんかねぇぞ!
起きて仕事しやがれ!って起こされたのよ!」
烈は迷惑そうに、そう答えた
久遠は「誰に?起こされてんだ?」と問い掛けた
「天空神 三神に叩き起こされたのよ!
内臓の傷付いたの治してやるし、無くした体力も補充してやるから、イベント終えてドゥバイへ行きやがれ!って起こされたのよ!」
久遠は言葉もなく…………
「それはまた……とんでもない奴に起こされたもんだな……」とボヤいた
烈は久遠を見て
「ドゥバイへ行く前に結婚式挙げるわよ!」と嗤って言った
久遠は腹を括り「あぁ、願ってもない事だ!」と答えた
烈は「嫌だって言ったら義泰にメス持たせて追い掛けさせようと想ったのに………」と残念そうに謂う
久遠は「親父は冗談じゃなく本当に刺す勢いで追いかけ回すから辞めてくれ!
縫えば大丈夫!と本気でやりやがるからなアイツは!」と謂う
すると真後ろから「それは悪かったな!」と謂う声が聞こえた
後ろに立っていたのは義泰と志津子だった
二人はピキッと怒りマークを額に浮かべていた
「「紅ちゃんを泣かすなら許さない所だった!!」」
と口を揃えて謂う
義泰の手にはメスが握られていた
烈は「義泰、手の危険なの持っちゃダメよ!」と止めると、志津子がサツッと手からメスを取り上げた
烈は「退院するわ!やらなきゃならない事が沢山あるのよ!」と謂うと
「朝食ってから帰られよ!
その間に着替え持ってこさせろや!」と謂う
久遠はそう言い烈の体に着いた器具を外した
そして車椅子を看護師に持って越させると、個室へと連れて行く様に伝えた
個室へ行くと竜馬がいた
烈がやって来て驚いていた
烈は「竜ゅー馬、どうしたの?」と問い掛けた
竜馬は「烈こそ、大丈夫なの?」と問い掛けた
久遠は「飯を運ばせる、その後に検査して大丈夫そうなら退院させてやる!」と謂う
烈は運ばれた朝を食べていた
食べ終わると久遠が呼びに来て検査をしに向かった
竜馬はその間に烈のスーツを取りに向かった
検査を終えて病室に戻って来ると、退院が許され、着替えて帰れば良い事になった
竜馬は烈に着替えを渡すと
「烈にとって【R&R】はもう要らないものなの?」と問い掛けた
烈はパジャマを脱ぎ捨ててスーツに着替え始めていた
「…………竜ゅー馬、拗ねてる所悪いけど、そんな暇なんかないのよ!
白馬でイベントやって終えたら紅ちゃんの挙式やって、そしたらドゥバイへ行くのよ
まぁ………其処までに殺される可能性が有ったから、線引きしたのよ!
【R&R】がどう、じゃなくてね、ボクが殺され掛けていたのよ!」
竜馬は驚愕の瞳を烈に向けると
「狗神……とか言うヤツの所為なの?
もう穢れは取れたの?」と問い掛けた
「緑道が相当頑張ってくれて、狗神本体を祓ったみたいね!
まぁ、それで緑道は死に掛けたから……今は入院中かしら?
其処までしてやっとイーブン、下手したら数手遅れてるかもね………
まぁボクの狗神の穢れは、完璧に取れたわ
取れなきゃ皆と距離置くしかないから、総てが頓挫してしまうしかないんだけどね………」
竜馬は烈!と言い泣き出した
烈は「泣いてる暇ないわよ!」と竜馬を急かした
竜馬は顔を上げると「【R&R】のマンションにメンバー集めといたから!」と言った
何時 目醒るかも解らないが、其れでも目を醒ました時に直ぐに動ける様に待機していたのだ
烈が着替え終わると、竜馬はパジャマを紙袋に入れた
烈は歩く時、少しフラ着いたか、直ぐ様確り歩き出した
烈は入院中の精算を終えると、マンションへと向かった
マンションへ入ると烈がいて、メンバーは驚いていた
RODEOÑもStrong Hiもリーダーの帰還に泣きながら感激していた
RODEOÑのアーティストは
「イベント、手伝わせてよ!
マンションは烈に貸してあげるから、手伝わせてよ!」と言った
Strong Hiのジョージは「俺等も手伝わせてよ!
マンション欲しいなら、スタッフから買い取ってあげるから!」と泣きながら言う
烈は困った顔をして
「少し話をしましょうか!」と謂うと、竜馬は烈をソファーに座らせた
ヘンリーが紅茶を淹れに向かう
ダニエルが珈琲を淹れて、皆の前に置く
「あのね、新庄高嶺、彼は将来を有望視されていた野球選手だったのよ
其れが………母しゃんの駒を事故に遭わせ殺そうと仕組んだ事故の犠牲となり、野球人生を捨てた
一番脂の乗った時期に、彼は野球人生を無理やり終えさせられたのよ
ヤケクソになり何度も何度も自殺未遂を繰り返し……其れでも何とか未来へ導いた母しゃんと父しゃんの願いが、彼には向けられているのよ
そして高嶺の妻の亜希、彼女は二階堂晃嗣の娘なのよ!
彼は鴻池の翁の傀儡として政治家にさせられ、翁の為に生きて来た…………
其れが何時壊れるか?解らぬ泥舟だったとしても、晃嗣は忠義に生きていた
その忠義を裏切らせたのは……我が母 飛鳥井康太なのよ!
そして二階堂晃嗣は派閥を抜け、安曇勝也に下り敵対する位置に行った
まぁ其れでも本人が納得してるなら良かったのよ
だけど、鴻池の翁はそれを裏切りと取り……刺客を放った
毎晩毎晩、晃嗣は悪夢に魘され、痩せ衰え病んで行ったそうよ!
そうなれば………近い内に狗神が食い殺しに行く未来しか視えなかったから……強引に高嶺をヤンキースのコーチに据えた
そして両親をアメリカに連れて行かせ、狗神がこの世から消えるまで身を隠させようとした
でも飛行機の中に現れ……ボクは穢れたわ
その時……ボクには死相が見えてしまっていた
だから、皆に飛び火しない様に線を引いた!
どの道、白馬のイベントは【R&R】らしからぬ出来となるから、【R&R】を入れるの辞めようか?と想った時もあったのよ
能楽師に奉納の舞をさせるにしても……あまりにも畑違い過ぎるから……
高嶺をアメリカに送り届けてから話そうと思っていたのよ!」
と全て話した
ヘンリーは「どんな風に描いてるの?」と問い掛けた
「能楽師 観世音紫園が織りなす世界を見てくれないかしら?」と謂い、烈はサコッシュからUSBメモリを取り出した
竜馬はUSBメモリを挿入すると、フォルダーに入ってる動画を再生した
とても静かな【和】の世界があった
能楽師と謂うだけあって能面を着けて舞を踊る表現をしていた
「この人はね阿賀屋蒼佑から紹介され、ノーギャラで出演しても良いとの返事を貰った能楽師さんなのよ!」
サムエルは「何か桜の下が良く似合う人だな………」と呟いた
舞台には桜の花なんて………のはない
だが脳内で、あの日、白馬の櫻堂神社での桜を思い描き、重ねてみて導き出した【答え】だと想った
「イベントの成功を祈願して、白馬櫻堂神社で、にーに達が神楽の舞を奉納してくれるのよ!
それを母しゃんのお師匠様に見せたいのよ!
そして悼む想いを込めて、白馬の桜を見せたいのよ!」と呟く
竜馬は「ならば最高の【R&R】をお届けしないとね!」と謂う
メンバーは【だね!】と声を揃えた
RODEOÑとStrong Hiのメンボーも【最高の作ろうね!】と声を揃えた
烈は「球団側には2日借りてあるのよ!
イベントは1日だけど、久遠せんせーと紅たんの挙式やるわよ!」と謂う
イーサンは「なら由香里呼ばねば!」と謂う
大乗り気で皆 燃えていた
烈は「テレビの放映権を今 三社共同事務所に依頼して獲得に動いて貰ってるのよ!
で、その放映権の利益をRODEOÑとStrong Hiに上げるから、手伝ってくれないかしら?」と謂う
RODEOÑボーカル アーネストは
「ノーギャラでいいよ!
【R&R】からギャラ貰うなんて…………死んでも嫌だ!」と謂う
Strong Hiのボーカル ジョージも
「我等もノーギャラでいい!
【R&R】からギャラ貰うなんて………死んでも嫌だ!」と答えた
何方のメンバーもうんうん!と頷いていた
「ならノーギャラだけど、人一倍酷使するからね!」
「そう来なくっちゃ!」と竜馬は笑顔になり叫んだ
デービッドは「結婚式、どんなイメージで行くねん?」と問い掛けた
「好きにして良いわよ!
その代わり最高のお式にしてね!」
竜馬は「ならお祭り騒ぎだ!忘れられない挙式にしようぜ!」と謂う
烈は「ねぇアーネスト、ジョージ、貴方達さ観世音紫園と会ってらっしゃいよ!
そしたら何か新しい風、巻き起こす切っ掛けになったりしてね!」と謂う
ジョージは「その人にはどうしたら会える?」と問い掛けた
「蒼佑を呼んであげるわ!
其処から蒼佑動かすのは、貴方達の手腕よ!
竜馬と兵藤きゅん着けてあげるから、此れから蒼佑と連絡を取ってあげるから行きなさいよ!」
アーネストとジョージは互いを見つめ、覚悟を決めると頷いた
烈は阿賀屋に電話を入れた
ワンコールで出た阿賀屋は
『絶対に嫌だ!』と先手を打ち謂う
「ねぇ真央たん、なら井筒屋の新物沢庵でどうかしら?」
『もう一声!』
「なら甘味処で桶サイズのあんみつ、白馬のイベントの後で用意して貰うから、それでどう?」
『うし!それって二階堂兄弟が作ったりするのか?』
「そりゃあ桶サイズだから人手不足は否めないものね、出るしかないから白玉でも丸めるわよ!」
『よし!全面協力してやる!』
「なら此れから阿賀屋の屋敷へ………」と言い掛けると阿賀屋は
『【R&R】のマンションの前にいるのさ!』と謂う
竜馬は走って玄関の外に出て門を開けた
すると阿賀屋と鷹司が立っていた
竜馬は二人をマンションの敷地内へ入れると門扉が自動でロックされた
竜馬は二人をマンションの中へ連れて行き、リビングへ通した
ヘンリーは二人のお茶を淹れに向かった
二人には『玄米茶』を淹れた
そして二人の前に置く
阿賀屋は茶に口を着け
「良い茶葉使ってるやんか!流石烈!」と言った
阿賀屋は長閑に茶を啜っていた
暫くすると携帯が着信を伝えた
阿賀屋は通話をハンズフリーにすると「で?」とだけ問い掛けた
『総ては御館様の想いの儘に、明日の朝イチでお会いして下さるとの事です!』と伝えた
「ならば明日の朝、お迎えを寄越せ!」
『承知致しました!』と言い電話は切れた
阿賀屋は「と謂う事だ、明日の朝会いに行け!」と言った
烈はそんな阿賀屋の功績など見ずに何処へやら電話をしていた
「そうなのよ!何とかなる?」
「あ~悪いわね、なら慎一きゅんにラインしとくから取っておいてね!」
と、交渉していた
烈は電話を切ると今度はまた電話を掛け始めた
「慎一きゅん、お買い物に出る時、井筒屋へ沢庵取りに行って欲しいのよ!
蒼佑に弱み握られて井筒屋の沢庵を要求されたのよ!お願いね!」
慎一は笑って『了解しました!先に沢庵を取りに行き買い物に出ます!』と約束してくれた
烈は電話を切ると「ふぅ~これでよし!」と謂う
その横で竜馬がずっと電話していた
「ねぇ烈、白玉とアイス要るの?」と問い掛ける
「アイス?要る?真央たん?」
「要る!でもアイスは別容器がいいな!」
竜馬はその要望を伝えて交渉して行く
阿賀屋は「烈、明日は付き添い禁止たぜ!」と謂う
「なら通訳として竜馬か兵藤きゅん行かせるわ!
どの道 ボクはそんな暇なんかないから無理だからね!」
阿賀屋は「所で貴史は?」と問い掛けた
烈は「さぁ?ボクほんの数時間前に目が醒めただけだから知らないのよ!」と答えた
「偉く早く目が醒めたんだな!
何時もなら体力温存で一週間コースだろ!」
「やる事が山積してるからイベントやってドゥバイ行きやがれ!と起こされたのよ!」
「誰に?母ちゃんか?」
「天空神 三神にね!」
「相変わらずこき使われてるやんか………」
「まぁ、ボクが道を敷いたからね、そのツケは取るわよ!
そうしなきゃ家に帰れないからね!」
阿賀屋は竜馬を見て「貴史は?」と問い掛けた
「貴史なら朝早くに出掛けて俺は解らないっす」
竜馬の答えに烈は携帯を取り出すと
「母しゃん ボク退院したわ!
即座にイベントに結婚式にドゥバイへの渡航の準備に入るわね!
所で、兵藤きゅん、何処にいるか?知らない?」とラインした
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