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第35話 永寿嘉福 貴方の幸せを願う………❷
阿賀屋は「あぁ、珈琲飲みたい!」と叫んだ
すると悠一が調理場に入り、珈琲を淹れて前に置いた
阿賀屋は珈琲に口を着け、そのまろやかさに
「美味い!」と叫んだ
清隆と瑛太も「「私達も珈琲を下さい!」」と謂う
三鶴も手伝い珈琲を欲しい人に渡して行く
そして烈達、じじむさい子供には玄米茶を差し出した
翔は玄米茶を口にして「美味しい!」と謂う
凛 椋 も玄米茶を美味しい!と言い飲む
烈は水筒を取り出しすと、レイに紅茶を飲ませた
三鶴は「その子は珈琲もお茶も駄目なの?」と問い掛けた
「レイたんは紅茶が好きなの!
飲めない訳じゃないわよ!
食後はお茶飲んでるから、でもあんみつだからね
紅茶作って来たのよ!」と言う
悠一は「俺は紅茶も淹れるのは上手だ!」と言い紅茶を淹れてやった
すると康太も「オレも!」と言う
レイと康太に紅茶を淹れてやると、二人は美味しそうに紅茶を飲んでいた
7個の桶サイズの容器のあんみつは、皆によって美味しく平らげられた
阿賀屋は「大満足だ!」と言う
その横に汚い雰囲気の男が座っていた
神威も甘いのを食べつつ「酒欲しいな!」と食べていた
烈は「シオくん!どうだった?」と問い掛けた
RODEOÑとStrong Hiのメンバーは
【ええぇぇぇぇぇ!!!!】と叫んだ
シオくんと呼ばれた男性は黒縁眼鏡とボサボサの髪をして、ヨレヨレのジャージを着て
「めちゃくそ美味しい!
流石真央だな、チョイスが最高だった!」と言う
そして飛鳥井の兄弟に向き直り
「僕も負けずに舞いますからね!
見てて下さいね!」と言った
兄弟達は「はい!楽しみにしてます!」と答えた
あんみつを食べ終わり、昼過ぎまでまったりと過ごし、烈と竜馬と【R&R】のメンバー達は一足先に球技場へと向かった
無論 観世音紫園も一緒に球技場へと向かった
設営は昨夜からしているから、その微調整と投影する画像を本番さながらに紫園の能楽師としての能の舞をそれに合わせて舞う
演奏は観世音家の奏楽隊が担当した
謡と囃子が組み込まれた能の世界に必要な音楽だった
RODEOÑとStrong Hiはその音楽を聴いて、これじゃ自分達が出る幕がないの当たり前じゃないか!と想った
この日の演目は新しく紫園が構成した【桜】をテーマにした舞だった
面(おもて)は中将(公達)青年の面を着けて、陰陽師の様な狩衣を着ていた
長い黒髪を靡かせ、桜の木の下で立つ姿は……
土御門 孔明 その人だった
念入りな打ち合わせは…………せずに、映像だけ紫園に見せる
「シオくん、こんな感じの舞台で、台本のベースとなる話は事前に送ってたよね?
ならばその心情を織り込み、本番は頑張ってね!」と言う
紫園は言葉少なに「承知した!」と答えた
リハーサルは終わり、後は本番を待つだけとなった
康太達は夕方まで白馬櫻堂神社で休み、開園の30分前にバスに乗り込み球技場へと移動した
家族や仲間、近しい人間は来賓用の席へ、鷹司等身分を隠さねばならぬ家の者は特別席へと案内され向かう
家族は関係者用の席へと案内され、鷹司の家族と阿賀屋は特別席へと案内された
特別席は野球観戦用の室内に在る硝子バリの窓が在る部屋だった
観客も続々と入場し、イベントの始まりを楽しみに待っていた
土御門孔明は康太と共に、来賓席に座っていた
花火一発上がり【R&R】のイベントの始まりを告げる
観客席を取り囲む用にプロジェクションマッピングは設置され、目の前に白馬の桜並木が映し出された
時代は…………今じゃない…………
ならば何時??
少しセピア色に色褪せた桜並木は…………
土御門孔明が………あの日……帝を見送った光景だった
それから少し色が鮮やかになる
桜吹雪の中、姿を現したのは観世音紫園
康太の目には…………土御門孔明が其処に立っている様に………想い出がフラッシュバックする
面(おもて)を着けた紫園が舞う
それに合わせて演奏が悲しく響く
桜が憎くて……見たくない日もあった
別れたあの人を桜を見て思う
何時の時も桜は其処に咲いていた
愛しい人と共に咲いていた
哀しみ深く………絶望に染まる
日々、泣き叫び、彷徨う
己を忘れて………悪鬼となる
面が変わる
悪鬼に変わる
それでも桜は美しく…………魂さえ奪われそうに美しく咲いていた
総て絶望して表情を忘れた小面に変わる
何も思わず……桜を見上げる
夢も……希望も…………未来さえ捨てた
絶望を遥か遠くに通り越してしまえる孤独
すると遠くから歌が響いた
さくら さくら
やよいの そらは
みわたす かぎり
かすみか くもか
においぞ いずる
さくら さくら
いざや いざや
みにゆかん
わざわさ二番を歌い、心情を掻き立てた
表はまた中将 (公達)の穏やかな面になり
満開の桜を見上げる
そして静かに涙を一筋流し…………
背を向けて歩き出す
プロジェクションマッピングは桜吹雪が映し出され…………
桜の花ひらが………青年の姿をかき消してしまった
そしてヒラヒラ花が散る
天晴な程に潔く………花は散って行く
観客は皆 泣いていた
その美しい桜の花に、悲しげな青年の姿に………
花はずっと見て来たのだろう
そして桜は咲く
今年も咲いて……散って行く
そしてプロジェクションマッピングには
【何者に囚われない
何者にも干渉しない
我等の世界
それが【R&R】で在る】
が、映し出されイベントの終了を告げた
言葉もなかった
桜の美しさに魂まで持って逝かれた様に………
言葉なんかなかった
其処へ顔中バンドエイドを貼った烈のドアップが映し出された
「見に来てくれて有り難う!
ノーギャラで協力して下さった方は観世音紫園さんと、その舞台を支え続けた音楽隊の方々です!
盛大な拍手をお願いします!」
と言うと盛大な拍手が送られた
「明日のチケット買われた方々
明日は本当にプライベートのイベントです
でも多くの人に祝って欲しいからイベントを開きます!
この球技場を借りてる以上は賃料が掛かるので、有料のチケットとなりました!
明日もチケットは有料となります
それでも参加したいと申される方々は、ライスシャワーと紙吹雪を持参で来て下さいね!
今日は本当にありがとう!
4月20日ボクはヤンキースタジアムの始球式に出ます!テレビで見掛けたら応援お願いします!」と告げ手を振りお別れをした
メンバーも「ありがとう!」と言い映像は切れた
此れでラストとなった訳だ
皆 立ち上がり、帰る事にしたのだった
イベントが終わると観世音紫園は衣装を脱ぎ捨て、髪をバサバサにするとヨレヨレのジャージを着て、黒縁眼鏡をはめて冴えない男になった
「シオくんお疲れ様!」と労う
RODEOÑメンバーやStrong Hiのメンバーは、その代わり様に………唖然としていた
が、目の前では【R&R】のメンバーもボサボサ髪にしてヨレヨレジャージを着ていた
こっちもか!!!
そう言えば何時も普段はコイツらはこんな感じだった
素でいるのは烈………いや、烈も桜林のジャージを着ていた
竜馬は然程変わらずだった
兵藤もスーツを着ていた
「烈、打ち上げ行くか?」と謂う
「良いわね!源右衛門の屋敷まで皆をバスで送ってね!」と謂う
土御門孔明は烈を見付けると
「有り難う!」と言い抱き締めた
想いも怨みも………今は全て綺麗に昇華された
烈は皆に「早く移動するのよ!」と謂うと孔明と共に消えた
烈は神の道を開き、桜の里まで孔明を送り届けに来ていた
孔明は「私の想いは………あの桜並木が見届けてくれました…………」と言葉にした
「そうよ、だからこの先もあの地は綺麗な桜を咲かせるわ!」
貴女の想いと共に…………ね、言葉にしないが、想う
それだけで伝わり、孔明は笑っていた
桜の里へ到着し、神の道を抜けると……
桜の里の桜は…………満開の花を咲かせていた
烈は「え?嘘!まだ咲いていたの?」と問い掛けた
孔明は「いいえ!朝までは葉桜でした!」と呆然となり言う
烈は孔明の桜を抱いて口吻を落とすと
「母ぁーさんのお師匠様の想いに………きっと応えてくれたのね!」と言った
一夜にして咲いた桜は翌日には散るだろう
それでも孔明に見せる為だけに花を咲かせ………
魅せたかったのだろう………
共に生きた日々を想い
共に過ごした辛さを想い
共に泣いた時を想い
見事に孔明の想いに花を咲かせたのだ
「孔明先生ぇー、まだまだ元気にしてないと、次から次へと貴方が護り通した子達が子を巣立ち、子を産むわよ!
大丈夫、例え桜が枯れ様とも先生ぇーは消えさせないから!
先生ぇーの歹はこの地の大地に浸透し、未来永劫共に行けるのだから!
休む暇もない程に皆が還る場所になるわよ!」
「烈……私は楽隠居したいんですが………」
「それは無理な話よ!」
烈は笑って話す
孔明はそんな忙しい日々に思いを馳せ
「ならばまだまだ頑張ります!
時々で良いので………また桜の咲いてる時に……
あの地に連れて行ってくれませんか?」
「良いわ、忙しい時期なら先生ぇーも神社のお手伝いしてよ!きっと感謝されるから!」
「それは良いですね!」
「それじゃ先生ぇー!またね!」
「はい!今日は楽しかったです!」
烈は後ろ手に手を振り、神の道を開き帰って行った
「本当に…………そんな所は陵王にソックリですね…………」
風が吹き桜の花びらが散って行く
あの日見た桜は今も此処にいて、綺麗に咲いていてくれる…………
「さぁ、夕飯の準備をしなきゃ………」
孔明が呟くと「先生!早く夕飯が始まってしまいますよ!」と呼ばれる
孔明は嬉しそうに桜に背を向ける、歩き出した
神の道を通り源右衛門の屋敷に戻ると………其処は飲兵衛の巣窟だった
康太は烈の姿を見ると「お疲れ!」と言い席に座らせた
慎一が野菜を持って来ると、烈は食べ始めた
「レイたん食べてる?」と隣のレイに話し掛ける
レイはモヨモヨ水菜を一本ずつ食べていた
「……誰?レイたんに水菜あけたの………」と聞く
慎一が「え?レイ水菜食べてるの?」と慌てた
康太がレイの水菜を奪うと、レイは水菜を喉に突き刺して「ゲッ………」と吐きそうな顔をしていた
康太は「あんで水菜食ってるのよ?」と謂う
「れつ………おいちそうにたべてたから……」
「駄目よ、レイたん、お野菜高いのよ
なのに、ボクの分食べたら、ボクが食べられなくなっちゃうからね!」と謂うとレイは頷いた
慎一が「目を離した隙に食べてしまってました………」と謂う
「慎一きゅん、次はもう食べないから大丈夫よ!
美味しくないって解ったからね!」
それ………笑えない…………
と皆は想った
へーリーが「明日は結婚式だから、由香里が来てくれたよ!」と伝える
「その由香里は?」
ヘンリーは静かに指さす
飲兵衛仲間で飲みまくり笑いまくりの由香里がいたからだ………
「孫に見せられないわね、その姿………」
鳳城 葵 もとい安曇 葵は去年の年末に男の子を無事に産んだ
由香里は孫に会いたい為に、倭の国で過ごすマンションを夫のエリックに買わせていた
エリックは喜んで烈に吟味してもらい、値切ってマンションを購入したのだった
この打ち上げには東堂御影も山本洋子もいた
御影は「何か烈と関わる女は妊娠するとの噂が出てるの知ってる?」と烈に問い掛けた
烈は「え!何それ!」と驚いていた
御影が言うとヨーコも「あー!それ言われた!
山本さんもその内妊娠するんでしょうね!
なんて嫌味臭く言われた!
お相手は御影さんですか?なんて言われたぜ!」
とボヤく
康太は「あ~確かに!
綺麗に綺羅に美麗まで妊娠させ、柘植の妻も、あの葵も、すみれも腹が大きかったし、久遠の妻も妊娠したしな
言われてみれば烈が関わると妊娠するな!」と笑った
榊原が「清家の妻 椿姫も挙式後妊娠発表してましたしね!」と謂う
烈は「失礼ね、たまたまよ!
しかもヨーコと御影は結婚しないわよ!
二人、互いに眼中にないでしょう?」と謂う
ヨーコと御影は顔を見合わせて、頷いて笑った
ヨーコは「ねぇな!」と笑った
御影も「ないない!」と笑う
御影もヨーコも昔が思い出せない程に………明るく元気になっていた
今は飛鳥井に食費と光熱費を毎月払い、住んでいた
飛鳥井から出る気は皆無だった
竜馬が「明日は結婚式だね!定番から入り、隼人とRODEOÑとStrong Hiが出る予定だよ
頼朝も烈が呼んでるよ!と言ったら、なら朝早く行くから!と言ってくれてるからね!」と謂う
「よりちゃん!来てくれるのね!」
烈は嬉しそうに謂う
「一応企画構成とかは無しで、ぶつけ本番!
【R&R】流って事でいい?」
「それで良いわ!」
「アーネストが明日出してくれるなら、アメリカのマンション貸すから!と言って来てるけど、どうする?」
「なら借りようかしら?
どうせ来週は始球式よ!
顔の傷………中々治らないのよね」
と烈はボヤく
未だに顔中、絆創膏が貼ってあり中々取れなかった
首から肩にかけては爛れてしまったから、治りも悪かった
竜馬は「どんな烈でも我等がリーダーっすから!」と言い笑う
観世音紫園は「俺、明日出たい………」と謂う
竜馬は「え!!ノーギャラですよ?」と謂う
紫園は「解ってるよ、【R&R】はドケチなリーダーがいるって有名だから!
だから今回ノーギャラで了承したんじゃないか!」とボヤく
烈は「そのままで出なよ!シオくん!」と謂う
断ると想っていたが「それ良いな!」と案に乗った
デービッドが「なら【R&R】のジャージあるねん!それ着て出ればええねん!」と提案する
「え?【R&R】スーツだけじゃねぇのかよ?」
紫園が聞くとイーサンは
「我等がリーダーはジャージ大好きだから、デービッドがそれを追求して作っだよ!
参加の記念に明日それをあげるよ!」と謂う
「トンプソンのジャージ………そんな大盤振る舞いして良いのか?」
紫園が聞くと竜馬はデービッドを前に出し
「彼がデービッド・トンプソン、トンプソンブランドのデザイナー兼オーナーです!」と謂う
紫園は「すげぇ、本当に【R&R】って底しれねぇよな!」と感激していた
康太が「此方がオブライエン家の御子息で、此方が有名建築家イーサン・オルディスとサムエル・ウォーカーた!
そして此方がウォール街の金融屋の神と言われたダニエル・ジョーンズ
そして三木竜馬は三木繁雄の倅で、兵藤貴史とは従兄弟になる!」とその経歴を話してやる
「そんな凄い人間だったんだ………【R&R】って!」
と紫園が呟く
烈は「あ~其処のシオくん、ボクは庶民の家の六男坊で、ちっとも有名じゃないから!
そこそこだから!」と謂う
烈が謂うと康太が爆笑した
「だな!オレんちはしがない建築家だもんな!」
「そうそう、そこそこが良いのよ!」
「だよな、何か金持ちって肩こるもんな!」
「そうよ、阿賀屋の家とか、観世音の家とか……
鷹司の家とか…………壮大過ぎて………
あ、遊びに行こう!と行けるレベルの家じゃないもんね!」
鷹司緑道は「嫌々 飛鳥井だとて、前世は我等の家と大して変わらぬ家を一族で持っていったではないか!」と謂う
烈は「まぁ家だけ立派でもね、中身スカスカじゃハリボテと謂うのよね!」とボヤく
康太も「だな、あんなクソみたいな家を造るなら、一族に還元しやがれ!」とボヤく
質素倹約は今も生きているのだと、緑道は想った
烈は「緑道、元気そうで良かったわ!」と謂う
康太は緑道に深々と頭を下げ
「オレの子の命を救ってくれて有り難う!」と礼を言った
緑道は「我等は飛鳥井と共存して行く所存!
宗右衛門を亡くせば明日へとは続かぬ!
近衛の家の養子問題も宗右衛門が出ねば頓挫する
真贋 気を抜く事なく今後も共闘をしようではないか!」と謂う
「当たり前やんか!
緑道、節子には辻が花を借りたりして世話になった!」
「妻は烈が大好きじゃから、お世話を出来るのが嬉しいのじゃよ!」
ニコニコして酒を飲む
鷹司は悪ガキの様な顔をして酒を飲んでいた
緑道はそんな弟の顔を………優しく見ながら妻と酒を飲んでいた
白馬の夜は酔っ払いの笑い声が何時までも響き……
明日は結婚式だって知ってるのかしら?
と烈がボヤく程に盛り上がっていた
翌日 結婚式イベント
朝から球技場入りして、カメラの調整をしつつ、RODEOÑとStrong Hiの楽器を設置して音を確かめていた
鳳城由香里は「俺は花嫁にウェディングドレスを着せる!新郎の方は伊織頼めるか?」と榊原に頼んだ
榊原はにっこり笑顔を浮かべ
「任せておいて下さい!」と聡一郎と隼人と共に久遠の控え室へ向かった
早瀬頼朝が朝早く来て、烈の手伝いをしてくれる
「よりちゃん 悪いわね!」
最近は早瀬頼朝を観ない日はない!と謂う程に引っ張りだこなのは知っていた
早瀬は「俺は烈のイベントなら何としてでも出たいし、手助け出来るならばしたいんだ!」と口にする
「またよりちゃん、お茶奢るからね!」
「なら俺は美味しい料理屋を探して奢るよ!」
と謂う
それを聞いていた阿賀屋と紫園は
「あ~、烈に奢るなら俺達にも奢ってよ!」とたかる
早瀬は「え!!阿賀屋様に奢るなんて………芸能界から消されちゃうよ!」と弱音を吐く
烈は「阿賀屋はそんな卑怯な事はしないわ!
知り合って損はないわ!まぁ得もないけどね!
知り合っても、知り合いですなんて言えないし厄介な家だもんね!
得はないけど、美味しいお茶や料理をたまに、奢らされるけど、まぁそれも愛嬌よ
縁は繋がる、そして縁(えにし)を結び、何時か貴方を助けてくれる時が来るかも知れない
人はそうして繋がり、果てへと逝くものなのよ!
だから友達感覚で奢ってやって!
まぁ御館様だからお金持たないから、奢ってはくれないけどね!」と謂う
早瀬は笑って「なら美味しい料理屋見付けたら、誘います!俺は社交辞令は言いません!
なので、その気がないなら端から言わないで下さい!」と言った
阿賀屋は「頼朝、阿賀屋蒼佑だ!
烈の友達の阿賀屋蒼佑なんだよ、俺は!
だから何かを求められて困るのは俺の方だ!
付き合う気のない奴には、声もかけやしないぜ俺は!」と謂う
早瀬は携帯を取り出すと、ラインを開きQRコードを見せた
阿賀屋はそのコードを読み取り友達追加した
「蒼佑で良い!」
「俺は好きに呼んで………ってもう呼んでますね!」と笑う
早瀬はアーネストとジョージと隼人に呼ばれると駆けて行った
烈は「珍しいわね、自分からライン追加しちゃうなんて!」と謂う
「アメリカの時に友達になりたかったんだよ!
でも俺、シャイな奴だから!」
「彼なら別に阿賀屋の家がどうとか………関係ないもんね!」
「あぁ、そう言う存在は………貴重なんだよ!」
隼人はノリノリでウェディングソングを歌いまくっていた
それにアーネストとジョージと早瀬の声がコーラスみたいに入る
神野は「小鳥遊が旅館の予約を聡一郎と共に取ると意気込んでるよ!」と笑って伝える
「幾らの収益が出るか………解らないわよ」
「足りねぇなら割り勘だから!」
ウキウキと言う
須賀も柘植も相賀もにこやかに頷いていた
こうしてまた皆で旅行に行けるのは嬉しい
リハーサルを続けていると、クーがやって来た
「烈、ルーとスーが上空から見張ってるから!」と言いに来た
「トキたんが上空には来てるから!
何かあれば弥勒も出て来る筈よ!」
「あ~海坊主関係しか狙って来ねぇかんな……
しかしシツコいな、いい加減諦めねぇかな?」とボヤく
紫園は二足歩行の猫は、阿賀屋から聞いていたが、目にしたのは始めてだった
クーの体はやっとこさ真っ白になっていた
観世音紫園は烈に近付くと
「紹介してくれよ!烈」と声を掛けた
「シオくん、クーたんよ!」
と謂うとクーは紫園に手を差し出して
「烈の護衛猫のクーです!」とご挨拶をした
「観世音紫園だ!宜しく!」と肉球をモキュモキュしながらご挨拶
クーは「後3体、烈の護衛猫はいる
まぁ一体は烈の兄達や他の子の護衛に辺り、俺等は烈の護衛に当たっている
まぁ護衛に当たっていても、こんな風に怪我させちまう時もあるんだがな………」と悔しそうに言う
紫園は「まぁ宗右衛門は破天荒な奴だから仕方ないって事だ!」とクーを撫でながら言う
チェックの為に竜馬が烈を呼びに来ると、紫園は
「竜馬、何か言いたい事でもある?」と問い掛けた
竜馬は「別にないですよ?」と応えた
「嫌々あるだろ?私を見る目が少しだけ不機嫌になる、まぁ初日がアレだったから不機嫌にさせちゃった?」
「あ~確かになんて武尊な奴なんだ!って想いましたから!」
「まぁそう感じるのも仕方ない!
私は父を早くに亡くして、当主になってしまった
阿賀屋は産まれた瞬間、御館様になる
私は幼少期に父を継ぐ事になった
以来…………そう教育され生きるしかなかった
貴方が不愉快に感じられる程の態度を取らねば、屋敷の者からナメめられてると判断される!
それ故に………私は………上にいる者の態度をするしかないのだ!」
「まぁ理解は出来ませんか、烈が親しい者の呼び方をするならは、それは貴方は特別なのだと解るので謝罪は不要です!
まぁ謝罪される気はないみたいですし、それで良いっすよ!」
紫園は烈を見て「彼、相当頭キレるね!」と謂う
「心理学の第一人者と言われる教授を退職に追い込む程に、心理学は得意で、人の細やかな裏を見るのよ!」
「成る程、凄く興味深いよ彼は!」
「五代雪乃の孫だからね!」
「だよな、だよな!顔は五代雪乃だよな!
俺は始めて見た時、ビックリしてもんな!」
【俺】が出るのが素の紫園なのだと想った
「烈、早くチェックしてくれ!」
「解ってるわよ!本番も近いんだし仲良くね!」
「まぁ、それなりっす!」
「それで良いわ!」
烈は竜馬と共に映像をチェックしに行った
紫園は阿賀屋に「烈の周りにいる奴は本当に良い奴ばかりだな!」と呟いた
「まぁ烈が大好きで集まった奴等ばかりだからな!」
「何かその中に入りたいよ!」
「入れば良いやんか!」
「…………家の者に反対されそうだけどな………」
「お前さ、当主なのにお前を雁字搦めにして正そうとする事こそ、おかしいと気付けよ!
だからお前んちに烈は逝かなかった!
貴史と竜馬を向かわせた、それは常に監視してる屋敷の奴等は異常だと解ってるからだよ!」
「まぁ………親父の跡を継ぐ………そして子孫を遺す
それこそが正しい道だと想っていたが………そろそろ反旗を翻す事にする!」
「それはお前の決める領分だろ?
だが飛鳥井宗右衛門に逆らえば【終焉の章】を発動させられる…………と警告しとけよ!」
「あ~烈、放ったよね、ドンと謂われた一族がどんどん落魄れて子孫を減らして行ってるって……
その恐怖に耐え切れずに、自ら命を断つ者も出て来ているとか…………」
「穢れた血の一族だからな、仕方ねぇだろ?」
「破滅の序章………じゃないんだ………」
「宗右衛門なら破滅の本章を唱えるぜ!
序章なんて生温い事やるかよ!」
「彼は幾つ………そんな呪文を知ってるのさ?」
「全部だろ?なんたって創世記から見届人をして来た七賢人八賢者の最後の弟子なんだから!」
「でも烈は烈だよ!彼は何時見ても変わらない!」
「だな!」
阿賀屋と紫園は顔を見合わせて笑った
その横でそんな話を聞かされていた兵藤は…………
なんて恐ろしい話ししてますの?だった
着いてけない…………
紫園は兵藤に目をやり
「おぉ!次代の政治屋さんじゃありませんか!
ライン交換しません?
たまになら奢りますよ?」と声を掛けた
兵藤は無言でラインを開きQRコードを見せた
紫園は素早く読み取り友達追加した
本番も近くなり、クランドから皆がハケて無人になると、観客がゾロゾロと両手に紙袋を下げて入って来た
一応 金属探知機を設置してゲートを通る
花嫁と花婿はキッチリと着付けされていた
烈は父に「有り難う、父ぉーさん!」と礼を言う
榊原は「我が子の為ならば、どんな協力も惜しみません!」と言い烈を抱き締めた
そして顔の傷に触れる
「中々治りませんね………」
「クーたんの穢れがやっと消えた感じたからね……」
「そうでしたね、少しずつ薄くなって、やっとでしたね………」
「諦めたわ、今回もケガしまくりで始球式やってやるわよ!
まぁボールは飛ばないけど………」
「投げたフリで構いません!
無理して飛ばさなくても大丈夫です!」
父は息子の背を優しく撫でて………離れる
父はずっと見てますから………と息子を送り出してやるのだ
息子はそんな父に背を押され歩き出すのだ
球技場は撮影権を得た主催クルーが機材を配置してカメラマンが動きまくっていた
ワイドショーの方からも、結婚式の風景を撮らせて欲しい!と申し入れがあり、御祝儀を払って貰い撮影を許可した
時間となり、竜馬と共にクランドに出ると花火一発打ち上がり、結婚式イベントは始まった
真っ赤な絨毯がコロコロ転がり、新郎新婦のロードを作る
画面は………何故かチャペルではなく……
白馬櫻堂神社の景色となる
新郎新婦の前には宮司と神主が立っていた
烈はマイクを取ると
「此れより、久遠譲と森 紅緒の結婚式を開催したいと想います!」と開始の合図を口にした
そして素朴な疑問を口にする
「ねぇ何で洋装なのに二階堂兄弟なの?
結婚式って言ったら神父じゃないの?」
「何を言うのさ!リーダー!
白馬の地にいるならば、櫻堂神社で挙式しなくっちゃ!絶対に幸せになれるからね!
ささっ、新郎新婦入場させて二階堂兄弟の見事な古式床しい挙式と行こうじゃない!」
竜馬の声が合図となり盛大な結婚入場のファンファーレが鳴る
それは早瀬頼朝の声真似だった
それに伴奏が入り、盛大な結婚入場となった
新郎新婦は宮司と神主の前に立つと、祝詞が詠まれた
会場はその祝詞の声に静まり返って息を飲んで見守っていた
祝詞が終わると白拍子の格好をした烈の兄達が銚子と盃を手にして静かにやって来る
盃は3個 大中小の盃を並べてあった
三鶴が銚子を受け取り、盃に御神酒を注ぐ
新郎新婦はその盃を受け取り三度繰り返す
紅緒は腹に子がいる為形式だけ注ぎ、受け取り飲んだフリをする
それが終わると宮司は「三献の儀終えました!末永く仲睦まじく!」と告げ終了となる
宮司と神主は深々とお辞儀をすると、退場して行った
烈は「先生ぇー、紅たん、結婚おめでとう!
細やかながら、二人の挙式をしたいと謂うと、メンバーが協力してくれ、そしてRODEOÑ、Strong Hiも協力してくれたのよ!
そして隼人にーも出てくれ、よりちゃんも来てくれたのよ!」と謂うと名前を呼ばれた者が前に出た
早瀬が「結婚おめでとうございます!
それではパーティーの始まりだよ!」と盛大に飛び上がり始まりを告げると、RODEOÑとStrong Hiの演奏が始まった
新郎新婦は座る席が用意され、其処へ案内される
一条隼人がウェディングソングを歌う
RODEOÑが演奏しコーラスを入れる
Strong Hiも演奏し歌う
夢の様な時間の始まりだった
プロジェクションマッピングは二人の生い立ちが投影される
YouTubeで流れていた映像だった
YouTubeは記録的な数字を叩き出していた
烈の謂う子育ては議論にまで発展していた
が、虐待と教育と謂う観点の難しさをコメンテーターは語る
飛鳥井烈君は親から最終的に叩かれたとしても、それは本人に理解を得させる為の手段であり
何度も何度も話し理解させ痛みを知り、それを糧に出来てるからこそ、語れるのだと謂う
其処が他の親とは違うと、コメンテーターは語った
ただ殴る、それは愛でも教育でもない
だが痛みを知らせる為に痛みを知らせる
その痛みが他人に与えたら?それは犯罪になると我が子に教える
人への暴力は己が痛みを知る事から始まってる
が、そんなの事は、偽善だ!暴力は暴力だ!と謂う人もいた
だがそれはそれで良い
人の考えは一つじゃないのだから!
だけど、それを否定するなら、自分はどれだけ凄い教育をしたのか?知りたいものだ、と烈は言う
此れは我が家の教育方針で、他人には当てはまらないのだから………
そんな教育の定義に一石投じたなんて想ってもいない烈だった
新郎新婦は幸せな顔で座っていた
そして何時来たのか?
拓美と拓人も久遠と紅緒の横に座っていた
我が子なのだから当たり前だと、連れて来たのだった
拓美と拓人の顔つきは変わった
少しだけ大人びた精悍な顔付きになっていた
何方かと謂えば紅緒に似た顔付きになっていた
男の子は母親に似た方が幸せになれる………
一頻り演奏が終わると烈が
「ねぇ、皆 いい年なのよね
そろそろ結婚考えていたりしてるの?」と問い掛けた
隼人は「オレ様は妻を亡くした、哀しみに暮れていたけど、結婚出来るならばしたいのだ!」と答える
「隼人にー!お嫁に逝かないで!」
と烈が謂う
会場は笑い声が響いた
隼人は烈を抱き締めた
「大丈夫なのだ!お嫁さんを貰うのだ!
烈にはお姉さんが出来るのだ!
まだ相手はいない………残念な事に!
でも、絶対にお姉さんを作るのだ!」
「それは嬉しいわ!待ってるわね隼人にー!」
次はアーネストが「結婚したいー!」と叫んだ
メンバーが「相手探せよ!」とボヤく
ジョージも「俺だって結婚したいぜ!」と叫んだ
メンバーが「相手いないだろ!一人じゃ結婚無理だって!」とボヤく
【R&R】のメンバーは
「結婚?まぁそのうちするんじゃない?」のスタンスだった
竜馬は「出会った瞬間 雷が落ちた衝撃を受ける恋がしたい!」と叫んだ
烈が「雷落ちたら死ぬわよ!」と返す
「そんな衝撃受けたいんだよー!」
「なら雷鳴ってる時外に出たら?」
「そんな意味じゃないってば!」
竜馬が叫ぶとヘンリーが
「リーダーはお子様なんだから恋愛は程遠いんだから止めときなよ!」と謂う
サムエルも「そうそう、恋する時は欠伸してても恋に落ちるもんだ!」と謂う
「それ本当?」
「まぁー、その時になったらで、えくない?」
烈は収拾が付かなくなると「よりちゃん!」と叫んだ
早瀬は「ラブ・ミー!」と曲を告げる演奏が始まり歌い出した
負けちゃいられない!と隼人もアーネストもジョージも歌い出す
そんな中マイクを奪い取ると、【R&R】のジャージを着た観世音紫園が歌い出した
低い嗄れた声が響き渡る
その声に震えが来る程に刺激を受けて、張り切って隼人やアーネスト、ジョージ、頼朝が歌う
舞台の裾にはけていた烈に兵藤は
「彼、めちゃくそ歌上手いんだな!」と呟く
烈は「そうね、普段はストイックに生活してるから、反動でロック歌いまくってるわね!」と笑う
ストイック………そりゃあんなお屋敷に住んでたらそうなるだろ………と兵藤は想った
「でも………そんな生活も終わりを告げるかもね………」
兵藤は「え?」と驚いて烈を見た
烈はステージに向かい歩いて行く
リーダーが登場すると、場は更に盛り上がった
観客はめちゃくそ得した感満載だった
お祭り騒ぎして、楽しんで笑って………泣いて
そんなイベントも終盤を迎えた
ヘンリーがマイクを取ると
「新郎新婦が客席の傍を回ります!
皆さん!ライスシャワーと紙吹雪持って来ましたか?持って来たならば花嫁 花婿に惜しみない祝福をお願いします!」と告げた
新郎新婦が立ち上がる前に、由香里が来て只管長いヴェールを外した
ズリズリすると汚れてしまうからだ!
ヴェールを外されると久遠がエスコートし、紅緒は久遠の腕に掴まり歩き出す
二人が客席の傍を歩くと【おめでとう!】【お幸せに!】と声が掛かった
そしてライスシャワーと紙吹雪が飛び交う
皆が幸せ気分を味わい、新郎新婦に祝福を告げる
一周回るまでにかなりの紙吹雪とライスシャワーが降らされた
ステージに新郎新婦が戻るとイベントは終わりを告げた
烈は一歩前に出ると深々と頭を下げた
そして顔を上げるとニコッと笑い
「今日は本当に有り難う!
この二人が何時までも幸せな家族として生きて行く事こそが、皆が望む明日だと想います!
紅緒は今 妊娠してます!
二人にはもう大きな子がいる
そして祖父母も同居して、叔父とその子供達とも同居してる大家族に入る事になりますが、今の紅緒ならば大丈夫でしょう!
幸せにね!紅たん!先生ぇーも幸せしてやってね!」
久遠は頷いた
竜馬は「今日は有り難う!」と言い深々と頭を下げた
メンバーも参加したい者総てが感謝の意を込めて頭を下げた
観客はそんな感謝の意を受け取り
【誰よりも幸せになって!】と言葉にした
紅緒は泣いていた
こんなに皆に祝って貰えて本当に自分は幸せ者だと、痛感する
紅緒は大きく息を吸い込むと「ありがとう!」と叫んだ
ありがとう
本当にありがとう………
涙を流す妻の肩を優しく抱き締める姿は、お似合いの二人だった
皆から祝福され結婚式のセレモニーイベントは終わりを告げた
テレビで放送される時、観客からライスシャワーや紙吹雪が飛び交い、かなり美しい光景に映った事だろう
こう言う結婚式のカタチも良い!と皆は想った
祝福され幸せそうな二人は惜しみない笑みを浮かべ深々と頭を下げた
【何者に囚われない
何者にも干渉しない
我等の世界
それが【R&R】で在る】
と映像が流れイベントは終了した
早瀬頼朝は「Hope to see you again!」を歌い出した
この歌はこのイベントのラストに歌う為だけに、RODEOÑ Strong Hi 早瀬頼朝に歌わせる為に作った歌だった
今回は作詞 作曲は烈がして、編曲を竜馬がした
渾身の一撃の歌だった
この歌を約束の歌として、売り出す事になっていた
それに隼人も加わり歌う
まさか新曲を聴けるなんて想ってなくて…………
ファンは帰るのも忘れて聞き入っていた
そして歌い終わると【ありがとう!みんな!】と感謝の意を伝え、ステージを後にした
【此れにてイベントの全行程は終了致しました!
皆様 お気をつけてお帰りください!】
早瀬が観客に向け終了を告げる
皆に手を振り、早瀬はステージを後にした
球団側は感激しまくり、地元の新聞社も呼び出して記事に載せる程の大盛況だった
独立リーグは経営が厳しい事が多い
が、新庄高嶺がヤンキースのコーチとなり、アマリーグからも通用するコーチがいると注目を集め始めて、転落の一途の経営が少しだけ上向きになっていた
この先の経営は経営陣が舵を取らね墓ならないが、話題は提供してやったのだ
地元と力を合わせて、乗り切って欲しいものだ
烈達は控え室へと戻ると、康太と榊原が「お疲れ様!」と労ってくれた
ヘンリーが「今回のイベントの利益報告をした後、球団側に使用料を支払うつもりです!」と伝えた
「そうね、悪かったわね
今回はボクの我が儘を通してしまって!」
「構わないよ!僕らはリーダーがやると謂うならば、何としてでも完遂する気でいるんだから!」
ヘンリーが謂うと竜馬も「だね、この後は本当に予定は白紙にしてあるの?」と問い掛けた
烈は「始球式有るからね、その後はボクはドゥバイに行くからね!
その時多分、デルタス航空の人にCMの依頼されたら聞かない訳にいかない気がするんだけど………」とボヤく
竜馬は「あ、デルタス航空!!俺等が無理言って飛行機に乗せて貰った航空会社だ!」と謂う
「皆、宿題よ!飛行機のCM、自分が作るとしたら?どんな世界を描いたら、胸に響くか?
考えておくのよ!
皆が無理言って乗せてくれたならば、ボクはリーダーとして礼は尽くさねばならないからね!」
【イェッサー!】メンバーは皆口を揃えて言った
烈は由香里に声を掛けて
「由香里、ボクの顔、怪我なんてないわよ!ってメイク出来るかしら?」と話し掛けた
由香里は烈の顔を見て
「それは無理だわ!
化粧して怪我が悪化したら久遠にメス持って追っかけられるやんか!」とボヤく
メス持って追いかけるのは血筋か?
烈は苦笑した
傍にいて聞いてた久遠はもっと苦笑するしかなかった
「怪我治らないのよね………」
竜馬は「それもリーダーっすから!」と謂う
「竜ゅー馬、雲の上からの映像手に入れなさいよ!」と無理難題謂う
「…………それ無茶振り過ぎない?」
「なら航空会社の奴に特別に映像撮らせて貰いなさいよ!正式にCM引き受けるならば、それが条件よ!」
「了解っす!さぁ打ち上げやるっすよ!」
二階堂兄弟はジャージを着て寛いでいた
悠一は「酒飲むなら俺等も連れて行ってくれ!」と謂う
康太は「白馬のホテルの大宴会場二部屋ぶち抜いて宴会やんぜ!」と謂う
烈は「幾ら徴収する?」とドケチを発動する
康太は「皆一万だ!そしたら伊織と慎一と一陽が買い出しに行く!」と謂う
鷹司緑道は帯封を渡そうとして………烈と康太から白い目をされる
節子は帯封の中から4枚抜いて、慎一に渡した
「私と緑道と獅童と梨紗子の四人に御座います!」と謂う
そして更に二万抜いて「宮司さんと神主さんの分は奢りますね!」と言い手渡す!
【R&R】もStrong HiもRODEOÑも各々一万円を取り出して慎一に渡した
烈は「レイたんと凛、椋、響と奏の半額の金額25000円よ!」と手渡した
竜馬は「蒼佑と紫園と俺と貴史と俺の分で5万っす!」と渡す
慎一は「新鮮なフルーツを双子に買って来ます!
レイは何か食べたいのありますか?」と問い掛ける
「おいちいの!」
レイが謂うと凛が「あじのひらき!!」と言い椋は「しゃばのひもにょ!」とスッカリ干物好きになっていた
康太が「じじむさ!」と謂うと凛はショックを受けていた
榊原が「康太!」と取り成す
康太は「なら最高級のアジの開きと鯖の干物買って来てやってくれ!
どうせ烈も干物欲しがるだろうし!」と笑って言う
着替えてバスに乗り、白馬のホテルへ向かう
ホテルの駐車場に停車すると、榊原は自家用車に乗り換えて買い出しに出掛けた
烈達はホテルに入り宴会場二部屋の襖を取っ払い宴会の準備を始めた
ホテルのスタッフもやって来て、準備をする
紫園は皆で手助けして楽しそうにお手伝いしてる飛鳥井の子供達や猫まで手伝いをする姿をじっと見ていた
観世音の家では絶対に目に出来ない光景だった
だからこそ、阿賀屋は飛鳥井に入り浸りになってるのか?と想った
緑道も良く働く兄達と共にレイ 凛 椋もお手伝いしてる姿を見て、家族としての在り方みたいなモノを考えていた
かと言って鷹司と謂う家柄かあるから、飛鳥井の様にはなれはしない
が、飛鳥井だとて、昔から続く家柄なのだ
なるべく目立たず、格別な特別な事は控えて暮らす一族として今に至る
【R&R】のメンバーも率先して手伝いをしていた
猫だって布巾を持ちテープルを拭く飛鳥井なのだ
遊んでたら何も食べさせてはくれないのだ
阿賀屋も鷹司もコップを並べ手伝う
神野達も手伝い、取り皿と箸を並べる
準備が出来る頃、榊原と慎一と一陽が帰って来た
帰宅を電話で告げると、【R&R】のメンバーは荷物を取りに駐車場へ向かった
RODEOÑもStrong Hiのメンバー達も一緒に荷物を取りに行く
皆で手分けして荷物を運ぶ
榊原は車から包丁を持って来ると、三人は目配せして、皆の前でそれはそれはプロ並みのお手並みを披露した
マグロの解体ショーだった
力仕事は一陽が率先してやり、繊細な仕事は榊原がやり、慎一は皿に並べた
その息の合った流れる様な仕草に、皆は目が釘付けになった
榊原は「一陽が来てくれたので、料理の幅が広がりました!」と御満悦で言う
慎一も「本当に彼は幾つも仕事をして来た事があるので、度肝を抜かれる事ばかりです!」と言いマグロのカマを一陽に渡す
一陽はキッチンの方へ向かい、カマを焼く
焼き加減がモノを謂うカマだった
出来上がり皿に並べられ、皆はそれを食べ始める
どれも最高の味で食通の緑道でさえ「なにこれ!美味すぎではないか!」と唸らせた
料理要員が3人になり、手際の良い彼等は役割分担を最初からしていたかの様な阿吽の呼吸で料理を作る
まるでプロだった
一陽は元々自分のご飯は自分で作って食べていた
金が必要となってからはラーメン屋、中華の料理屋、料亭、等など腕を磨いてお金を稼いた
運送屋、バイク便の会社等金になる仕事を掛け持ちして働いていたのだ
その合間に烈を追い掛けていたのだった
だから今 解き放たれ好きな事をして生きられる事に、烈に感謝していた
もう門倉じゃない!
顔も名前も変わった
今の名は弥勒院一陽、新しい人生を貰ったのだ
そして家族の温もりも知ったのだ………
玲香は「一陽、料理が終わったらこっちに来て飲むか良い!」と優しく接してくれる
まるで母のような愛をくれる
真矢も志津子も美緒までもが、飛鳥井に来る女性達も無償の愛をくれるのだ
こんな何処の馬の骨とも解らぬ自分に愛をくれるのだ
一陽はそんな家族に応えようと頑張った
が、烈は頑張らなくて良いと謂う
息切れしちゃうから、そこそこで良いのよ!
人生は長いんだから、時には息抜き必要よ!
と、言って土日は休みで良いわよ!
と言ってくれる
でも双子のお世話は楽しいし、レイ達も翔達も和希と和真と永遠のお世話も楽しい
毎日が楽しかった
料理をして喜ばれる
双子に服を作るついでに、ランチョンマットや玄関の足拭きマットを作ったりした
何かをちまちまやるのは楽しい
で、ついつい色々と作っちゃうのだ
それでも家族は有り難う!と言ってくれるし、無理しなくて良いのよ!とも言ってくれる
そんな優しい家族をもっと大切にしたい
一陽はそう思うのだった
阿賀屋は「一陽は料理上手いな!」と謂う
「仕事して来ましたから!」
それで覚えただけだが、今は覚えておいて良かったと思える
料理を作り終えると、皆と酒を交わす
久遠と紅緒は我が子と仲良く食事をしていた
この場には栗栖も有栖も来ていた
神威の家族として来ているのだ
烈は立ち上がると
「先生ぇー、紅たん結婚おめでとう!
紅たんは先生ぇーのお嫁さんになったのよね!
ならば、同居の家族を紹介するわね!
先生ぇーの父 義泰、妻の志津子、志津子の弟の神威、息子の栗栖と有栖よ!
紅たんはいきなり同居となるけど大丈夫かしら?」と問い掛けた
紅緒は「構いませんよ!今息子達は修業に出てますが、週末には帰って来ますし、栗栖と有栖は茶飲み友達でしたから、今更です!
家族ですが、何時も穏やかな日はないのは覚悟してます!喧嘩する日もあるでしょう!
でもその都度話し合い、頑張りたいと想います!」と話す
「嫁姑の争いはないわ!
なんたって志津ちゃんは飛鳥井建設の副社長してるから、嫁に何か謂う暇なんでないわ!
そして栗栖には紅たんを気遣う様にミッション渡してあるから、手伝ってくれるわ!
有栖も手伝ってくれるわ!
少し人見知りだけど、有栖はええ子なのよ!
だから紅たんは有栖も少しだけ気遣ってあげてね!ボクの大切な子なのよ!」
「解りました!」
「ミとトはまだまだ書生続くから、離れ離れだわ
そして高校入れる年になったら海外に行くから、親子の絆繋いどきなさい!
悪い子はお尻ペンペンよ!」
「解りました、躊躇する事なくお尻ペンペンしたいと想います!」
紅緒の言葉に拓美は「烈ぅ〜!」と謂う
拓人は「母さんの腕力なら痛くないっしょ!」と謂う
烈はニャッと嗤うと「紅たん、菩提寺で薙刀習ってるもんね!悪い子は薙刀で薙ぎ倒されるわよ!」と言い放つ
拓人は「母さんに武器与えちゃ駄目だよぉ〜!」と嘆く
鷹司が「ん?修業が足らぬか?」と謂う
「「先生!もう充分です!」」と声を揃えて身を正した
阿賀屋は「獅童の書生か………心技体を鍛え上げられ、刀剣が如く鍛え上げれるんだろうな!
で、この子達はこの先どんな仕事をするのさ?」と烈に問う
「決まってないわよ!
この子達の未来は未知数なのよ!
好きな自分になれるならば、何にでもなれるわよ!別に今の時代医者なんて探せばいるし、弁護士も依頼すれば良いだけよ!
それを固定して決めてしまうから、決められた人生をダラダラ送れば良いなんて思うのよ!
この子達のカンヴァスは無地よ!真っ白なのよ!
其処に何を描きたいか?
それはまだ決まってないわよ!
どんな絵を描いてくれるか?ボクは楽しみなんだけどね!
この先 海外の大学に進学して何になりたいか?
その時に決めれば良いのよ!」
烈が謂うと拓美と拓人は感動して涙していた
決められた人生を行くのは楽かも知れない
だが未知数な先へ行くには、努力が必要となるのだ
己の態度 己の行動で描く世界は一瞬で消えるのを知った
だからこそ、どんな絵を描くのか?楽しみだと謂うのだ
久遠は烈の手を取ると、引き寄せた
「顔の傷……治らねぇな!
お前がアメリカに行くなら、俺は新婚旅行としてアメリカへ着いて行ってやる!
そして治療してやるよ!」と傷に触れ謂う
「先生ぇー、20日までに治らないかしら?」
「お前の皮膚の弱さを考えると無理だな!
でもそれ以上酷くならないようにしてやる!」
「先生ぇー!」
烈は久遠に抱き着いた
そして顔を上げてるとニコッと笑い
「さぁ新婚さんはお部屋へ行きなさいよ!
紅たん疲れたでしょ?
先生ぇーに身体でも洗って貰い休みなよ!」
そう言うと紅緒は真っ赤な顔をした
康太は「お前達の為結婚式だったんだ!
誰よりも幸せになれよ!」と言った
久遠は深々と頭を下げ「ありがとう!」と礼を言った
義泰は「さっさと新婚さんは部屋へ行くがいい!」と謂うと慎一は部屋のカードキーを久遠に手渡した
久遠はカードキーを受け取ると、紅緒と共に部屋を後にした
烈は「さてと、一つ片付いたわね!」と呟いた
その場に何故かまた弥勒が混じって酒を飲んていた
ルーとスーは怪我をしていた
弥勒も何故か怪我をしていた
康太が「どうしたのよ?弥勒?怪我してるやんか?」と問い掛けた
弥勒は「あ~妨害来ると結婚式パァになるから、警戒して上空をルーとスーとトキとで護っていたんだよ!
そしたら案の定来やがった!
だから徹底的に潰してやった!
来たのは神取でも海坊主でもなかったけどな
それでもキッチリ牙を剥いたんだ、制裁は加えて無間地獄へ落としてやった!
後は閻魔が何とかするだろ?
トキは閻魔に頼んで来る!と帰って行った
で、俺と烈は次は神取羅刹を潰すと決めている
飛鳥井蓮はお前の駒だろ!
なにか謂う事があれば、聞くだけなら聞いてやる!」と無表情で問い掛けた
康太は「オレはアイツの幸せを願っていた………そして幸せな生活を送ってる筈だった
何故に………アイツは海坊主の駒になっちゃったんだな?」と悲しげに呟いた
「それは俺も知らん!
唯解るのは………飛鳥井の株価操作してるのはアイツだって事だけだ!」
それが現実だと口にする
「オレは一切口は出さねぇよ!
烈がする事に口なんか出せねぇかんな!
だから………涼子と子供だけは………助けてやってくれ!」
「承知した!」
康太は、後は何も言わなかった
弥勒も何も言わずに酒を飲んていた
クーが皆に真っ白になったボディを披露していた
康太は烈に「エンジェルリングは再生しねぇのか?」と問い掛けた
烈は「エンジェルリングは破壊されたけど、このピアスがボクを護って輝いてくれたのよ!
だからこの程度の穢れで済んだのよ!」と言い胸の前で手を組み
「神様、有り難う!」と感謝込めて祈る
そして更に「出来たらこの顔の傷、治しちゃってくれたら嬉しいわ!始球式あるしね!」とちゃっかりこの際だから口にする
クーの目が光ると
『顔の傷ならば何とかしよう!』と口にした
その声はクーの声じゃなかった
クーは呪文を唱えながら烈の顔を撫でると……
膿んでた傷が薄くなった
完璧に消さない辺り………創造神らしいな……と康太は想った
烈がそれを望んでないから、取り敢えず言ってみたから始球式の日までに治る様に薄くしてやるのだった
まぁ怪我した跡は遺るが、それはメイクで消えるだろう
烈は「有り難う!神様!」と祈りを捧げていた
敬虔な信徒宜しく祈るから……康太は言葉もなかった
クーは「あ~腹減った!」と言い料理を食べ始めた
ルーとスーは既に顔を真っ赤にして酔っ払っていた
烈はやっと一つ、片付けられて肩の荷を下ろす気持ちだった
紅たん……幸せにね
不幸だった分
人には幸せが来るからね
人の幸と不幸は均等にやって来るのよ
つらい冬の寒さが続いても
幸せは必ずややって来る
だから不幸だった分幸せになるのよ
永寿嘉福………
誰よりも………あなたの幸せを願うわ………
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