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第36話 始球式以て 亜米利加へ 

久遠と森紅緒の盛大な結婚式セレモニーはワイドショーや特番で放送された 【R&R】が手掛けた結婚式セレモニー と謂う事で会場へ足を運んだ人達や、お茶の間から観ていた人達は、こんな結婚式もあるのだと想った 豪華な式を挙げるばかりが式じゃない 皆で作り上げ、皆で祝う そんな手作りの式も良いモノだと感じていた テレビでは紙吹雪やライスシャワーが降り注ぐ中、観客席の前を歩く二人が映し出された とても幸せそうな二人は常に笑顔を浮かべ、紅緒は時々涙を浮かべていた 本当に皆に感動を与えた結婚式セレモニーだった 当日、結婚式セレモニーに参加した観客も、改めてテレビを見て、あんな綺麗に紙吹雪が舞っていたのだ………と新鮮な気持ちでワイドショーを目にしていた 名実共に晴れて夫婦になった久遠と紅緒だった 新婚旅行は烈がアメリカへ行く時に同行するとして、翌日から久遠は病院に出勤していた 病院のスタッフ達は【おめでとう御座います!】と祝福した が、久遠は何時もと変わらなかった………… 紅緒は元飛鳥井の久遠の部屋で新生活を始めた ワイワイ騒がしい家族は紅緒には憧れの場所だった 烈は日常に戻り、会社に顔を出しZoomで授業を受けていた 顔の傷は何とか始球式には消えそうだが、穢れを受けた時に着いた爛れた傷は中々治らなくて、未だに消毒に通っていた 阿賀屋蒼佑 兵藤貴史 飛鳥井烈を亡き者にしようとしていた闇バイト達は摘発され逮捕された そして呪っていた奴等は、緑道の手により始末されていた 此れ以て鷹司家の禊は幕を閉じた 緑道は以前より精力的に鷹司の家の改革に乗り出していた 烈も日常に戻った 朝早くから会社に出勤して、宗右衛門の部屋にてオンライン授業を受けつつ、仕事を熟す 宗右衛門の星詠の仕事は後を絶たずに、入って来ていた そんな静まり返った部屋に、ズズズッと茶を啜る音が響く 烈は顔を上げて嫌な顔をする 「真央たん、シオたん、お仕事どうしたのよ?」と文句を口にする 阿賀屋は「良いやんか!烈、俺はアメリカにも着いて行くからな!」と嗤って謂う 紫園は「俺も烈とアメリカへ行く!」と嗤う 「ならチケットは自分で用意しなさいよ!」 ケチな烈は謂う 「ケチだなぁ〜烈は!」 紫園が謂うと阿賀屋が「それが宗右衛門だからな、仕方がねぇだろ?」と謂う 「そうだな、本当に今世も変わらずケチかよ!」 「ボクんちは本当に標準的な一般家庭だから、お金持ちが集るんじゃないわよ!」 「え〜お前んち、父ちゃん社長やんか!」 「大家族はお金掛かるのよ!」 烈がボヤくと紫園は「烈単体だってかなり儲けてるんだろ?」と聞く 「ボクは儲けの大半を新しい会社の建設に投資してるからね! 手持ちには残らないわよ! そしてボクは現金は母ぁーさんが必要な分だけ、がま口財布に入れてくれるから、お小遣い以外は使わないわよ! 足らない分は竜馬が出すし!」 阿賀屋は「竜馬は本当に可哀想になる位扱き使われてるからな………」と呟く 紫園は「その竜馬と貴史は何処よ?」と問い掛けた 「もう直き、来るんじゃない?」 烈が謂うと竜馬と兵藤が宗右衛門の部屋に入って来た 竜馬と兵藤は何も言わず、ソファーに座った 竜馬は「烈、明後日はアメリカだ!また長いフライトを経てアメリカだからね!」と謂う 「準備は出来た?」 烈が聞くと「万端だぜ!」と応えた 「なら仕事上げなきゃね!」 「それ終わったら、昼食おうぜ!」 「竜ゅー馬、この二人もアメリカに来るって!」  竜馬はムッとした顔をして 「そんな気がしてたよ! チケットは自分達で用意して下さいっす!」と吐き捨てる 紫園は「…………流石 烈の仲間だ!謂う事が同じだね!」と苦笑して謂う 「此れだから何でもやって貰えると想ってるお屋敷の奴は………」 「何か君、俺の事が嫌い過ぎだろ?」 「え?嫌いじゃないですよ? まぁ好きでもないですけど? 興味がない!」 「興味がない………それって嫌いと言われるよりキツいんだけど?」 「そうっすか?」 「少しは友好的に………とか思わないの?」 「友好的に思える程、貴方とは深く付き合ってませんし…………」 と吐き捨て、大きく息を吸い、紫園に向き直ると 「友好的に思われたいなら、それなりに話せよ! 理解をして友好を深めたいなら、それなりに分かりやすく話せ! あんたは不遜過ぎなんだよ!態度が!」 と吐き捨てた 「まぁ生きて来た過程が違うから、不遜だと言われても、直ぐには直らねぇ! でも俺は嘘も偽りも言わねぇぜ? それでもまだ足らねぇか?」 「………語彙が足りない、感情が足らない そして俺はあんたを理解するには、時間が足らない!」 「なら此れから長い時間をかけて付き合ってくれれば良いさ!」 「…………望む所だ!シオ!」 二人は握手を交わし、少しだけ親しくなった が、烈はそんな光景は見ちゃいなかった 「お昼食べに行かなきゃ!」 と立ち上がり遅めの昼を取る為に食堂へ行く 阿賀屋は「俺は貴史と一緒でアジフライ定食な!」と謂う 紫園は「俺は唐揚げ定食!竜馬は?」と問い掛けた 「俺は和食定食っすよ!」 「え?何?その和食定食って!」 「煮物とか魚とか、和食の盛り合わせっす!」 「なら俺はそれにする!」 烈は食券の束を竜馬に渡した 竜馬はアジフライ定食二つ、和食定食二つ、ヘルシー定食一つ」と食券の束から出して、残りの食券を返した 烈は食券の束をサコッシュに入れた 竜馬は烈の分のトレーを持ち、テーブルへ置くと食事を始めた 阿賀屋も紫園も定食を乗せたトレーを持つと、烈の向かいに座った 竜馬は「烈、この後どうするっす?」と問い掛ける 「ボクは子守唄の収録を見届けなきゃ! 音程狂ったらリテイクするから、帰りの時間は読めないわ!」 「…………それやられるの?RODEOÑとStrong Hiは慣れてないからキツいだろうね………」 「音程狂ったの配信したら騒音妨害よ! 聞くに耐えられないなら、最初からやるべきじゃないのよ!」 竜馬は、RODEOÑ Strong Hi………隼人、頼朝………堪えて最高の一撃生み出すんだぞ………   と心の中でエールを送った 「まぁプロなら一発本番成功よ!」 と、笑いながら定食を食べる 本当にリーダーは厳しい鬼だ………… 「なら大移動っすか?」 「それしかないじゃない? 御館様の蒼佑を撒ける自信ある? ないなら諦めるのよ竜ゅー馬 今日は収録の日だから遅刻は許されないのよ!」 「烈はケントと一緒に行くの?」 「そうよ、御館様とシオ君乗せて行ってね!」 「えー俺が?」 「スーたん着けてあげるからね!」 「了解っす!」 食事を終えると烈はさっさとケントを呼び出して、スタジオへ向かった 竜馬は「じじむさく茶を啜ってる暇に行くっす!」と急かした 阿賀屋は「若者よ!茶を啜る時間は貴重なのだよ!」と謂う 「Taimuizumanēっす!」 「んとに………情緒がなくないか?若者よ………」 「ほらほら、あんたも若者だろうが!」 と、ボヤいて阿賀屋を急かせる 紫園は仕方ないなぁ〜とトレーを返却口に返して竜馬と共に食堂を後にした 烈は既にケントと共に会社から出て行ってしまったみたいだった 竜馬は貴史と共に阿賀屋と紫園を連れて地下駐車場へと向かう 紫園は「烈は何時も別行動なのか?」と問い掛けた 兵藤が「命狙われてるからな、烈のSPの車は特別車両で窓は防弾、車体はロケットに使われてる合金使用してるから弾丸は通さない仕様になってるんだよ! だから烈は常にその車に乗り先に現地へ行く、それが何時もだな!」と説明 竜馬は「それでも体当たりで車を突っ込んで来るから、そしたら無傷ではいられない……… 烈がいる所ならばミサイルでもぶっ放すイカれた野郎に付け狙われてるからな………」と運転をしながら謂う そんな話をしてるとスーが姿を現して 「其処の道、右側のルートを行きなはれ! 蒼佑込みなら狩り得だとばかりに待ち構えてるさいな!」と話す 竜馬は「了解っす!」と右側のルートを走り出す 兵藤は「烈は?」と問い掛けた 「車体に弾丸めり込ませ様としたからな、唐沢と一緒やろ!」 竜馬は「え?狙われたの!」と驚いた 「烈の車には傷一つ付かんけどな、隣走ってた車両に銃弾が飛んで行ってしまったさかい……… 車体後部を貫いてしもたんや! で、ガソリンがタンクに直撃で………流れ出たガソリンに引火して炎上! ケントが運転手と同乗者を救出したが、理解不可能な突然の発火やからな、唐沢が呼び出されたんや!」 竜馬は「んとに………シツコイな!」と吐き捨てた 兵藤は「康太はずっとずっと付け狙われて命を狙われ続けた! それが烈に変わった……それだけだ! 飛鳥井を潰せるならば宗右衛門でも真贋でも等価だからな!」と口にする クーが姿を現して「弥勒が出るのを警戒して、最近は海坊主の気配はないんだよな! そればかりか、闇バイト再び……で付け狙われてるんだよ! で、バイク便の社員を総動員して、尾行し返してる最中だ!」と話す 阿賀屋は「闇バイト減らねぇのな!」と辟易して吐き捨てた クーは「今回はそれだけやないからな……」と呟く 兵藤は「え?それはどう言う意味よ?」と問い掛けた が、クーは答えなかった スーは「メンバーがスタジオに到着したで! はよう行かんと、不機嫌オーラの烈目にするで!」と謂うと竜馬は安全運転で尚且つ、アクセルを踏み込んだ スタジオに到着すると、烈は不機嫌オーラを纏い座っていた 竜馬は、ヤバっと想った 烈は「兵藤きゅん!」と呼ぶと別室へ行ってしまった 竜馬は「さぁ始めるよ!最終チェックはリーダーがやるから、君達は完成度極めてリハーサル始めなよ!」と絶対に失敗は許さないオーラを出して言う メンバーはリーダーいないと………本当にタチが悪い………と想った 烈が兵藤と共に戻って来ると、入れ替わりで阿賀屋と紫園が兵藤と共に姿を消した そして二人は戻って来る事はなかった 子守唄だけあってRODEOÑもStrong Hiも優しく眠くなる程の演奏を先に収録する ワンフレーズでも音が狂うと、最初からリテイクさせられた そして長い休憩を挟む 竜馬は「蒼佑とシオと貴史は戻って来ないの?」と問い掛けた 「そうね、戻らないわ、だって邪魔だからね!」とにべもなく答える そしてRODEOÑとStrong Hiに声を掛ける 「貴方達さ、すやすや眠る子に今の演奏聴かせたら、飛び起きて泣かれるわよ? 自分達はどう思うの?ちゃんとスヤスヤ眠らせてやれる?」と問い掛けた 【…………!!!】 衝撃だった 何か音がズレて躍起になって演奏していた こんな音…………聞かせたら飛び起きるって! アーネストは「ゴメン!リーダー!」と謝罪した ジョージも「本当にゴメン!リーダー!」と土下座せん勢いで謝罪した 新曲を出したいと言ったのは自分達で、その中に子守唄も配信したいと言ったのは自分達なのだ ならば、と忙しい中 収録に付き合ってくれてるのだ! 下手な歌なんか出したら騒音妨害よ!とキツい言葉と共に………… 双方のグループのメンバーは頬を張り飛ばされた衝撃を食らった そして目が醒めたのだ その後の収録は一発OKを戴いて、皆安堵の息を吐き出した プロモーション撮影は【R&R】が手掛ける 其処までしてやっとアメリカのマンションの譲渡となった アーネストはマンションを快く烈に譲渡して、二階堂夫妻が我が子と孫と共に住む事となるだろう 本当に烈は自分に得がないのに……… 何故ここまで…………してやるのか? 理解出来なかった 音の収録が終わると隼人と頼朝がやって来て、2グループと共に歌い始める 声の方は一発収録OKとなり、配信される事が決定した RODEOÑ Strong Hi 一条隼人 早瀬頼朝 彼等の配信曲はプロモーションが出来上がった後に購入可能となる 撮影を終えると烈は、タワマンの一室で宴会を始めた 最上階のペントハウス 其処に飛鳥井の家族や、榊原、兵藤の家族も集まり打ち上げをした 神野は収録曲の子守唄を流した 双子はその曲を聴き………眠り出した レイも椋も凛も眠そうに目を擦る お子様は眠りに行き、大人は宴会を続けた とても楽しい夜だった 烈は予定より早く始球式の予定が変更された為、週の半ばに……(白馬のイベントから数日後に)アメリカへ渡米した 久遠と紅緒も、烈と共にアメリカへ新婚旅行へ向かった 康太は………そんな我が子を空港まで見送り 「烈の髪の毛………すげぇ事になってたな それだけの衝戟覚悟しとかねぇと……なのか?」と呟いた 榊原は空を見上げ「どんな衝戟だとて受けて立ちますとも! 僕は烈が無事に帰国してくれる事しか望みませんけどね!」と我が子を気にして謂う 「烈、アメリカに行くギリギリまで動いていたな 尾行されてたらしいから、逆に尾行し返してやったり、魔界にも行ったりしてたから疲れてるんじゃねぇのか?」 「そりゃ疲れますよ、今 僕達にそれをやれと言ったら……ぶっ倒れますって、到底無理ですよ! 飛鳥井蓮………彼の妻子……秋月の手により、やっと救出されましたね! 死しても尚、秋月は主の娘を気にして、烈に消滅覚悟で涼子と子供だけでも………逃がしたい!手助けしてくれ!と訴えて来たんですよね?」 榊原の言葉に康太は、ボロボロになった秋月を思い浮かべた 無間地獄へ戻る前に、康太にも涼子の身の安全の確保を!と訴えて来たのだった 「あ~、死しても尚、秋月は主人だけの為に生きているからな……… そして周防は非遇に生きさせた娘の幸せだけを願っている まぁ烈も、涼子を助けに行きたい!と言い出した秋月に『なら逝かせてあげるから失敗は許されないミッションだから!それだけは覚えといて!』と過酷なミッション立ち上げて、緑道の配下の裏部隊のを借りて、徹底的に潰しまくり涼子と子供を救出させたんだよな……… 闇に染まってるのは総て、閻魔に頼んで無間地獄へ落とした…… ったく、無茶しやがるぜ!」 「彼は………秋月が裏切るとか思わなかったのですかね?」 「思わねぇだろ? 烈が一声掛ければ、鬼ちゃん達は喜んで消しに行ってくれるだろうからな! 鬼達の手からはのがられはしねぇし、主と共に転生したいならば、下手な事は考えるな!と釘を差されなくても、逃げる気は皆無だったろ? 今 秋月は無間地獄で周防と共に修練中だ! 周防は娘と孫が無事で幸せでいて欲しい……と祈り転生の道を辿り始めたらしいぜ!」 「蓮は………どうなりました?」 「その内トドメを刺しに行くだろ?」 「彼は妻子の元へは戻れませんか?」 「どうだろ!視てねぇから解らねぇが………何処まで侵食されてるか? 人で在るか?人じゃなくなったか? それを確かめねぇと………何とも言えねぇよ!」 「本当に胸糞悪い事をしてくれますね!」 「その胸糞、どうやら烈の腐れ縁にも飛び火してそうだぜ?」 「腐れ縁?何方の事を指してます?」 「それはまぁ、烈が倭の国に帰国したら大々的に動き出すだろ? その前に向こうは手を打とうと………かなりセコい事をするんだろうけど……… 神に鞭打つ行為だって………多分解らねぇんだろうな………」 あぁ、それだけで解る 烈の腐れ縁の『神』は二人 「最近の腐れ縁の方ですか?」 「流石俺の夫は察しが良い! 飛鳥井まで飛び火して来るなら、無間地獄に突き落とせ! との事だ!手加減なく殺っても構わねぇって事だ!」 「それ、誰が誰が言ってたんです?」 「なぁ弥勒、そうなんだろ?」 康太が嗤って話しかけると、弥勒は姿を現した 「あぁ、閻魔大魔王様の許可もぎ取りやがったからな!アイツ!」 榊原は「本当に情け容赦のない………」とボヤいた 弥勒は「それだけ頭に来てるんだろ?竜馬と貴史を密偵として動かしていたからな…… 【R&R】のイベントに出たって事で家の価値は上がった今、頃合いになったんだろ?」と面倒臭そうに話す 康太は笑って「ギリギリまで扱き使われてたのかよ?」と問う 「上空まで行くつもりだったけどな、トキが倭の国の境界まで飛行機の上にいるって謂うから、俺は空港にいる烈の両親に集って飯を食わせて貰え!との事だ!」 と弥勒は楽しそうに話す 榊原はそんな弥勒を連れて帰って行った 移動中、榊原は弥勒に「ファミレス、デリバリー、飛鳥井のご飯!」の3択をさせた 弥勒は即座に「飛鳥井のご飯!そして食ったら眠らさせてくれ!」と訴えた そして「俺は烈には本当に感謝しても足らん!」と話し出した 康太は「いきなりどうしたよ?」と問い掛けた 弥勒は「白馬に鷹司が書生を連れて来ていたんだよ!当然 安曇家と三木の家の方々も特別席に招待され来てた、知ってたか?」と話し掛けた 「特別席は球場内からしか入れねぇかんな、知らねぇよ!来てたなら声位掛けてくれても良いのに!」とボヤく 「で、鷹司の書生は親御さんと過ごした 俺の所の倅も当日、白馬に連れて来られていたんだよ………」 離れて暮らして………以来………始めて目にする我が子だった 翔馬と名前を変更された我が子は……… 「あ~親父、久し振りに御座います!」とご挨拶した! 鷹司獅童に「あ~!それが親御さんに対する挨拶か!」と尻を蹴り飛ばされていた その場には妻の澄香も呼ばれて来ていたのだ 澄香を連れて来たのは菩提寺 住職 城之内優とその御家族だった この日の為に招待されたのだった 翔馬は「先生、蹴り飛ばすの止めて下され!」と懇願する 鷹司は「お前は半殺しにしても許されているからな!」と嗤う 人の性根は変わりにくい………だからこそ、徹底的に叩き直す必要があるのだ 翔馬は「半殺し以上にされたってば!下手したら死んでるって!」と訴える 「頑丈に作って下さった親御さんに感謝するのじゃぞ!」 「……先生………」 感謝するとこ間違えてるってば………と心の声が叫ぶ 弥勒と澄香はそんな我が子を黙って見ていた 特別席には弥勒家族だけが通された 他の特別席とは壁で仕切られ個室になっていた その中の一部屋に入れられたのだった 弥勒は「元気そうで良かった………」と話し掛けた 翔馬は「少し前は本当に死にそうでしたよ! 『魔界で死んだら貴方、人の世にも戻れないから、悠久の時間を地獄で下働きするしかなくなるから、死ぬんじゃないわよ!』と放り込まれ…何度死んだ事か……… 死の恐怖と隣り合わせで、人は簡単に死ねる事を学びましたとも…………身を以て痛感させられました……本当に聖神は情け容赦がない……」とボヤいた 「…………彼は自分にも人にも厳しいからな………」 弥勒はやっとの事で声を出した 澄香はずっと躊躇したままだった 翔馬は澄香に深々と頭を下げ 「本当に済みませんでした、俺は何時の間にか………家の中では暴君と化し………貴方を苦しめました、本当に済みませんでした!」 と謝罪した 「翔馬………」 「俺にはこの世で生きる義務がある! その為に転生させられ、人の世で人徳を積まねばなりません! 俺は…………あまりにも人間を愚かに………見下してました 『貴方さ人を見下せれるんだから凄い人なの?』と学力テスト、体力テスト、語学テスト………そして三木竜馬による心理学テストをやらされました 俺はそこそこ出来るだけの存在でしかなかった それを目の前で知ら示されました……」 と、あの日の屈辱を思い浮かべ言葉にする 学力テストは高校生まで何とか合格値を叩き出せたが、体力テストは惨敗、心理学はサイコバスと判断された 「貴方さ、このままだとロクでもない大人にしかなれないわよ! 神の転生の失敗よ、それだと我が母の果てが歪んでしまうから、一度だけ軌道修正掛けてあげるわ 決して甘くはないから、そのつもりで!」 と謂れ地獄へ放り込まれた 非力な自分が何も持っていない事を、身を以て叩き込まれた 力を着け、才をつける その日々だった 地獄には既に人間の子が修練場に配置され仕事をしていた その者達と共に生活をし、勉強を教えて貰い!日々鍛えた そして鷹司の書生として放り込む時に、一緒に書生として放り込んだのだ 顔付きの変わった息子に………でも澄香は怯えていた この罪を作ったのは自分なのだ………… 翔馬は「俺は今後良い子には戻れません!貴方達が手を焼く時も在るでしょう! それでも俺は貴方達の子供でいたい………!」と胸の内を話した 澄香はそっと翔馬を抱き締めた 母の優しい匂いが胸に広がる この人は何時も優しく………自分を愛してくれた 翔馬はギュッと母の背を強く抱き締めた 「母さん!」 「翔馬!」 親子の語らいがあった が、父だけ省くの止めて………… 弥勒は「なぁ、その中に俺も入れてくれねぇか?」と謂うと優しく二人は弥勒を抱き締めた 翔馬は「俺、兄さんになるから! そしたら毎週末は家に帰るからね!」と謂う 弥勒は「兄さん?誰の?」と問い掛けた 翔馬は「えー!!烈が兄弟増えるから仲良くね!って言ってたよぉ〜!」と嘆く 澄香は「え!我………妊娠てるの?」と訳が分からず謂う 「後で烈に聞いてみなよ! 母さん、元気な子産みなよ! 手伝うからね!」 澄香は泣いて手が付けられない程泣いていた 翔馬に謂れ、イベントが終わって横浜に帰った時に烈に聞くと 『あ~、ボクと関わる女性って皆、妊娠するって言われてるのよ!歩く妊娠マシーンみたいな…… 紫雲とこも妊娠したし……もしやと思ったのよ で、澄香を占ったら妊娠してると出たのよ!』と言われた で、総合病院に行き、白石に診てもらえ!と久遠に紹介状を書いてもらい診てもらったら、妊娠していたオチまであるのだ そんな回想をしてる弥勒を視て康太は 「本当に烈と関わる女性は妊娠しやがるのな!」とボヤいた 弥勒を見て、それを感じ取っていたから、幸せそうでええやんか!と康太は想った 榊原は弥勒を乗せて我が家へと急いだ 飛行機に乗った烈は何時もの様に、座席に座ると寝ていた 兵藤は倭の国の地を抜けた時、観世音紫園に 「お前、何故アメリカへ行く気になった? 烈と腐れ縁だった癖に今まで顔も出さなかったのに……… 何故 今 その決断をしたんだ?」と問い掛けた 紫園は「今だからだよ!頃合いが来たから烈と共に行く事にしたんだよ!」と謂う 「予想してた?」 「まぁね、そろそろかなって?」 白馬でのイベント以降、紫園は家には帰ってはいなかった 阿賀屋は「烈はかなり前に星を詠んていた、そして頃合いを見て満を持してのイベントなんだよ! 烈が紫園をイベントに呼ぶ、それは狼煙を上げる意味もあったんだよ!」と謂う 本当に食えない人間なのだ、この男は………… 「そう言う事は早く言ってくれる?」 衛星を通信を使い、観世音の家を見張らされていたのだ………… 竜馬は静かにそれを聞いていて 「早く言ったら横槍が入るのを懸念してたんすかね?」と呟いた 阿賀屋と紫園は驚愕の瞳をして互いの顔を見合わせた 紫園は「流石 宗右衛門が横に置く男………」と呟いた 「暦也を引っ張り出してるっすからね……… 暦也が出てるのに、何の嵐も来ない方が不思議過ぎるっす!」 阿賀屋は「暦也!暦也って左之助か!風雲児の!」と思わず叫んだ 兵藤は「知ってるのかよ?」と問い掛けた 「何時の世も左之助は宗右衛門に好きに動け!と自由にさせてる一族の者だ! 皆はそんな奴を嫌うが、宗右衛門だけは奴の実力を認め好きにやらせていた それはそれは自由にやり過ぎて、特待級な台風を何度も何度もぶっ放しやがって、巻き起こされて暴風圏に巻き込まれ……死にそうになったの一度や二度じゃねぇからな………忘れられる存在じゃねぇだろ?」 の阿賀屋はボヤいた 兵藤はルビアンカ連邦共和国がぶっ壊された経緯を話した あれは暦也が煽って火をくべまくった結果だと謂うと「やるわな!左之助なら!」と納得された 暦也………お前どんだけ破天荒なのよ………と、兵藤は心の中で想う 竜馬は「なら………暦也が介入してるのなら………ぶっ飛びそうな嵐呼んでおいてくれそうだね!」と謂う 紫園は流石とその言い方に 「竜馬……嵐呼ばれたくないだろ?」と謂う 「仕方ないよ、暦也は雇用主の為に命を賭けてるんだからね!もう働かなくても良いのにさ、せっせと人脈動かし追い詰めてくれる有り難い存在なんだよ?」 紫園は「雇用主?」と不思議そうに問い掛けた 「ARЯK警備保障、アレ、俺等が経営者だから! そして暦也は有栖院家当主の翁を継いだ者の親だから働かなくても大丈夫なんだよ!」 阿賀屋は総て聞いてるのか?顔色1つ変えていなかった 紫園は「え?有栖院家代替わりしたの?」と呟いた 阿賀屋は「そんな大事な事さえ伝えられてねぇのか………」とボヤいた 竜馬は「翁の次代は宗右衛門が教育係となり、プログラムを組んだ教育と、菩提寺へ通い体力と技を鍛え、鷹司の教室にも通ってるって聞いたよ!」と謂う 兵藤は「あ~傲慢な馬鹿にさせねぇ為か………」と謂う 竜馬が紫園をチラッと見ると紫園は 「竜馬ぁ〜ひょっとして俺の事、傲慢な馬鹿とか想ってる?」と問い掛けた 竜馬は笑って「馬鹿だとは思わない、でも傲慢な世間知らずは否めない! 世間に出たら………君の態度と語彙のなさは致命的だとは想うよ!」と謂う 紫園はグッと詰まる 「俺は半ば閉じ込められ暮らしてたんだよ! 親父が早死にしたから家督を継いで、覚える事や、やる事が山積してて、監視されまくりだったからな蒼佑にすら連絡は取れなかった………で、徹底的な相伝の舞を叩き込まれ半ば傀儡と化してたんだよ!」 「自由と思想、それを封じられて間違った教育されたら………仕方ないか……… ならば俺と共にいるならば、徹底的な教育してやるよ!意識改革の始まりだね!」 ニャッと嗤われ、阿賀屋は爆笑していた 兵藤は「烈が起きるから静かにしてくれ!」と注意した 阿賀屋は「寝てねぇのか?そのお子様?」と問う 「予定が少し早まったから、魔界に行っても余裕あると思ってたけど、今回ギリギリになったからな……」 それで空港に来て長時間のフライト………そりゃ寝て当たり前か……… 阿賀屋は「空港に弥勒来てたのに、何故に彼は来なかったのさ?」と問い掛けた 「この機体の上にはトキが来てるんだ! 倭の国の領域を出たら魔界へ還るが、それまではトキがいるから、返したんだろ? どの道、弥勒も寝てねぇからな、飛鳥井の家で爆眠するだろ?」 と兵藤はボヤいた それからは皆も爆眠して、起きたら着陸のアナウンスが流れていた 空港に到着し、飛行機から降りて税関を通り手荷物検査を受ける すると空港職員により別室に案内された 別室へ行くとアメリカ軍の陸軍の中将が待ち構えていた 襟元に星3つの階級バッジが着いている 烈は偉く上が出て来たな………と想った 中将は「今 アメリカは各地でテロ級の暴動が起こされているので………警護させて戴きます!」と告げた 「ドゥバイへ行く日も近いからね、怪我したら頓挫しちゃうもんね! ドゥバイと結ぶ、アメリカと倭の国の平和条約調印式典が無駄になるからね、ご苦労さまです!」 中将はその賢さに顔色を変え 「貴方の命を御守り致します!」と姿勢を正して告げた アメリカ陸軍の護衛の元、烈達は用意された軍の装甲車バリの強度を誇るバスに乗り込んだ その足でNYヤンキースの球場へお届けされた 翌日が始球式なのに………球場へお届けされてどうするのよ! と烈は心の中で叫んだ 球団関係者がやって来て、球場横のホテルへと連れて行って貰った 球団関係者は「3階のワンフロアー総て【R&R】のメンバーや関係者の為に開けて起きましたので、お好きに使って下さい!」と謂う それでやっとこさ、寝る場は確保出来て、烈はホッとした 烈はご機嫌な球団関係者に 「新庄高嶺家族呼んで来て下さい!」と頼んだ! 球団関係者は「了解しました!フロントにどの部屋を選んだか?だけ伝えて置いてください!」と言い球団関係者は球団事務所へと向かった 先に久遠夫妻に部屋を選ばせ、後は好き勝手に空いてる部屋に決めて荷物を入れフロントに伝えた 竜馬は烈と共に部屋へ行くと、バッグから服を出してクローゼットに吊るしたりしていた 烈の部屋に自然とメンバーやRODEOÑ Strong Hiのメンバーも集まって来る 烈はソファーで寛いでいると、フロントから新庄高嶺と妻、そして二階堂晃嗣と光代が訪ねて来たと伝えられた 兵藤は部屋番を伝えて、部屋を出て迎えに行った 暫くすると兵藤が、烈の部屋に新庄高嶺、亜希、二階堂晃嗣、光代を連れて入って来た 高嶺と亜希の子供はelementary schoolに通学中だったから、その場にはいなかった 高嶺と亜希は烈を見ると深々と頭を下げた 烈は高嶺に目を向けると 「悪かったわね、呼び出して!」と謂う 高嶺は「何か御用ですか?」と問い掛けた 「貴方の子、名前変えた?」 「はい!颯真に変えました! 手続きが少し難航しましたが、飛鳥井神威弁護士に頼み手続きをして貰い、倭の国での戸籍の名前の変更出来ました!」 「なら今 新庄颯真なのね」 「はい!何か名前を変えたら気の所為かも知れませんが、元気になって来ました!」 「名枯れと言ってね、名前負けしたり、名前が立派過ぎたりするとね、その子の未来も可能性も逆効果に発動されちゃう時があるのよ! 貴方の子はまさに、その典型的な事例だったのよ!」と話していると 竜馬が「本題を切り出しなよ烈!」と告げた 竜馬は高嶺の前にマンションの地図とマンションの名前と部屋番と鍵を置いて 「マンションは貴方達がアメリカに骨を埋める気ならば、その時に譲渡致します! それまではマンションの名義は烈が持ち、貴方達は借りてるカタチになります! なので管理費は自分達で支払って下さい! 賃料は取りませんので、管理費だけです!」 と説明した 「アメリカサイズの4L・DKなのよね?アーネスト?」 烈はアーネストに問い掛けた 「メンバー全員一人一部屋持つ気で買った物件だからな!」 と、アーネストは応えた 烈は「倭の国なら4L・DKの部屋なら譲渡してあげるわよ!」と嗤う アーネストは「そう言うのはもう良い!飛鳥井でお世話になるから、部屋は要らないんだよ!」と笑う 烈は二階堂晃嗣に向き直ると 「鴻池の一族は滅びの一途を辿り始めたわ! 終焉の章を放ったから、あの穢れた一族は乳飲み子まで終わる運命となった! 此れで邪魔な鴻池もいなくなった事だし、復帰なさいよ!まだ引退はさせないわよ!」と嗤って謂う 二階堂晃嗣は「え?私など……もう消えても構わない政治家なのではないのですか?」と謂う 「そうやって早く楽になり孫と一緒に………なんて甘い考えは捨てなさい! 飛鳥井宗右衛門を引き摺り出したのよ! 兵藤貴史、三木竜馬、近衛貴也、この3名が政治の舞台に上がるまでは踏ん張って貰わなきゃ!」 「近衛?………近衛の家は後継者が途絶えた家なのでは?」 「それだと一族に好き勝手されちゃうから、養子を取らせたのよ!」 「何方を………ですか?」 「安曇聡太郎が孫、安曇勝也がご子息 貴之が継ぐのよ! 御家族の絆を結ばれ、近々正式に御養子に入られるわ! 今度は消させたりなんかしないわ! お二人の息子を亡き者にした者には鉄槌を下したと一族の者には流布した そして飛鳥井宗右衛門に逆らえば………終焉の章詠まれちゃうって脅しは必要だったしね 今回は本当にボクは良い仕事をしたのよ!」 背筋が寒くなる様な笑みを浮かべれられて言われても………それはそれで怖いって…… この子……飛鳥井康太よりも怖いかも……… それを見ていた兵藤が 「止めとけ烈、お前の母ちゃんは滅びの序章は唱えたとしても、本章や最終章は唱えねぇし、況してや終焉を唱えちゃわないぜ!」とボヤきつつ止める 「何を言うのよ兵藤きゅん! 【脅し】と【力】は使いようなのよ! 丁度鴻池がチョッカイ掛けて来てたし、使わなきゃ終焉の章を唱えたなんて誰も気付かないじゃない!向こうは海坊主がいるんだから、アレが終焉だって気付いて広めてくれたから大助かりだわ!」 兵藤は軽い頭痛がしていた 竜馬が「本題から逸れてるよ!」と謂う 「あ~、そうだった! 正義ちゃんが招集掛けたら、国会に顔を出すのよ!それまではNYで過ごせば良いわ! 倭の国へ戻る時は、住む場所は格安で貸してあげるから、住む場所は気にしなくても大丈夫よ!」 二階堂晃嗣は姿勢を正すと「承知しました!」と答えた 烈は今度は優しくニッコリすると 「亜希ちゃん、【R&R】の手掛けるCMに出てね!ギャラは………出ないけど………デルタス航空のCMに出てね!」と謂う 竜馬は「彼女使うの?」と問い掛けた 「そうよ、二階堂亜希が昔 出た旅行のCMを、おーちゃんと、きょーちゃんが見せてくれたのよ! 竜ゅー馬も見せて貰うとイメージ湧くわよ!」 と謂うと【R&R】のメンバーは【オーガ!】【ツゲ】と即座にラインしまくったのは謂うまでもない 亜希は「【R&R】に使われる女優になりたい! そう想って生きて来ました!」と感激して謂う 「でもノーギャラよ?」 「【R&R】からギャラ貰う………それは裸足で逃げ出したくなるので……要りません!」 「ならノーギャラでも好感度の高いCM作らなきゃね!と謂う事で話は終わりです! 兵藤きゅん、マンションへ案内お願いね!」 兵藤は「了解!取り敢えず荷物を新居に運ばねぇとな!」と謂う 二階堂晃嗣は「ボストンバッグ一つでアメリカに来たので、今も荷物は増えてません!」と言った 竜馬は「快適な暮らしも日々に必要な要素なので、家具を揃え服を買って生活をして下さい! 倭の国へ来るなら、貴史に連絡して下さい そしたら烈が部屋は何とかしてくれると思いますから!」と言う 兵藤は高嶺と亜希と二階堂晃嗣と光代を連れて、ホテルを後にした レンタカーを借りて、今住んでるマンションへ向かい荷物を取って来ると、新居に荷物を運び込んた 其処までして、兵藤はホテルへと戻った 部屋に入ると烈は野球のボールをニギニギしていた テーブルの上には何やら計算した紙が散らばっていた 兵藤は「これは何の計算よ?」と問い掛けた ヘンリーが「ボールをどの角度から投げればミットに入るか?曲線となんやらかんやらの計算してるんだよ!」とボヤく 嫌々…………計算は完璧でも………投げる側で………その計算裏切る事になるって頭にないのか? 兵藤は「烈………」と名を呼んだ すると竜馬が戻って来て、別室にいた久遠を呼んで来た 久遠は「包帯が血だらけだって?」と言い服を捲る 烈の首から肩に掛けて巻いてある包帯が血に染まっていた 久遠は額に怒マークを張り付け 「何をどうなったら、こんなに傷が開くのよ?」と怒っていた 竜馬が「始球式での投球の練習してて……」と説明 久遠は烈の包帯を外すと、消毒して新しい包帯に巻き変えた 「明日 俺の友達の病院に行くぞ!」と言う 「明日は始球式なのよ!」 「なら朝イチで行くとするぞ!」 「あのね、先生ぇー、明後日の朝、ボク達は帰るけど、残り2日 紅たんと旅行してやって欲しいのよ!これは新婚旅行なのよ! 竜ゅー馬 ホテルのチケットと帰りの飛行機のチケット渡しておくのよ!」 「了解っす!」 久遠は「なら親父に言っとくから消毒しに行けよ!」と謂う 「解ってるわ先生ぇー!」 「明日の始球式、本格的に投げなくても良いぞ!」 「投げたくても……ボール飛ばないのよ ボクって野球の才能ないのかしら?」 「んなん、才能のある奴にやらせとけ! それよりもお前は怪我を治しやがれ!」 「先生ぇーありがとう!」 急に礼を言われて久遠は「何だよ?急に………」と躊躇した 「何時も怪我とか直してくれてありがとう! そして紅たんと結婚してくれてありがとう!」 久遠は烈の髪をクシャッと撫でると 「俺の方こそ卑屈になってる俺を蹴り飛ばしてくれてありがとう!と礼を言いたい位だ! そして何より、息子達が世話を掛けたな………」 「あ~、アレはね、あのまま大人になる方が怖いって誰も口にしなかったから……解らせてやっただけよ! 大好きな志津ちゃんが苦しむのは見たくないしね ボクは志津ちゃんが笑ってくれたら何も言う気はないのよ!」 「兎に角 朝イチで病院に行き処置して貰うぞ! その後は帰国するんだろ? 少し体調整えたらどうよ?」 「そうね、ドゥバイから還るまで……安定しないのよね……」 「本当にドゥバイへ行くのか? 停戦や平和調印式なんてカタチだけで、裏ではその調印式すら爆破しようとする奴等がいるかもなのに?」 「そうね、その可能性は捨てきれないのよ だからボクは生きて還るまで、総てのスケジュールは白紙にしてあるのよ!」 「烈………どうしてお前が背負うんだ? 俺は何時も思っていた……何時も何時も怪我してでも立ち上がる康太の治療をし続けた その時も逝けば命はないぞ!と何度も注意した だけどアイツは俺の言葉なんて聞きもしねぇで逝くんだよ…… お前も………俺が止めても逝くんだろ?」 「それが魔界で世界大会を開き道を作った者の死命だからね…………」 「ならば誓え!俺以外の医者には見せねぇって!」 「当たり前じゃない先生ぇー! ボクは先生ぇーにしか治療はして貰いたくないんだから!」 「烈…………」 「明日の始球式は投げるの無理そうね……… スーたん擬態化して投げてよ!」 スーを名指して言うとスーは 「それは嫌やわ!わいはミットにスパーンと放ってしもたら、次の始球式どないする気ですの?」 「それは入らない様に投げなさいよ!」 「嫌やわ!鈍臭い烈の真似は無理やで!」 スーが謂うと烈はスーの尻尾に思い切り噛み付いた 「ぎょぇぇぇぇぇ!!!!」 スーが悲鳴を上げる 久遠は烈を離して、血が滲む尻尾を消毒し包帯を巻いてやった ルーが「今のはスーが悪いよ!」と言う スーは「………痛み分けやろ?わいの尻尾………」と涙を浮かべ訴える 久遠は「ほれほれ、喧嘩すんな!」と止め、烈に化膿止の薬を渡す 用意して持って来ておいて良かった 治療を終え、烈に化膿止めを飲ませると、久遠は妻の待つ部屋へ戻って行った 久遠がいなくなると、烈は寝る事にした 「もう寝るわ、明日は式神投入してやるから!」 スーが「烈………」と呼ぶが烈は部屋に行き寝てしまった 兵藤は「少し苛ついてない?」と思わず問い掛けた クーは猫達と顔を見合わせて 「最近はずっとあんな感じだぜ!」と謂う 烈の開いたままのPCには次から次へと色んな情報が入って来ていた 兵藤がPCに目をやろうとすると、竜馬はPCを閉じて 「今日は寝るとしようか! 始球式の後、打ち上げやろうよ!」と言い寝室へ消えて行った 仕方なく皆は自分達の部屋へと還って行った 翌朝 烈は竜馬と共にお出掛けし留守だった 烈達の部屋が開かないと、メンバーやRODEOÑ、Strong Hiの奴等が兵藤の部屋へ訴えて来た 兵藤は烈の部屋に行き確かめたが………留守なのか?幾らノックしてもドアが開かれる事はなかった 兵藤が困っていると、廊下の騒がしさに阿賀屋が顔を出した 皆を目にすると阿賀屋は 「騒ぐな!俺の部屋に来い!」と言い皆を引っ張って行った 部屋のなかに入ると………兵藤や皆は足を止めた ソファーには色気ムンムンの紫園がバスローブの前をはだけて座っていた 何か情事の後みたいで……… 兵藤は「お前………」と何かいいかけたが 阿賀屋は「シオとだなんて想像は………止めてくれよ!」と先制攻撃した そして紫園の頭をスパーンと張り飛ばすと 「着替えて来い!今直ぐにだ!」と吐き捨てた 紫園は「あ~情緒なくない?君達!」とボヤくが 「張り倒されたいなら、其処にいろ!」と言うと仕方なく着替えに向かった 阿賀屋はソファーに座ると 「御館様の俺だけど服くらい自分で着れる!」と偉そうに謂う 兵藤は「それ当たり前だって………」と脱力した 服を着た紫園が戻ってソファーに座り 「朝の貴重なダラダラ時間を………」とボヤいた 阿賀屋は「お前さ、ダラダラし過ぎて、大切な息子さん蹴り飛ばされたの忘れたの?」と謂う 思わず紫園は股間をガードして 「烈!いねぇよな?」と謂う 兵藤は「烈に股間蹴り飛ばされたの?」と問い掛けた 「そうだよ!潰れるかと想ったぜ!」 「烈なら『潰れておしまい!』と言われそうだな………」 紫園は驚いた顔をして 「お前その場にいたの?」と問い掛けた 「嫌々いねぇよ、でも烈はだらしないの大嫌いなんだよ! ヤリチンなんか論外で、砲丸投げで玉潰そうか? とまで言ってたからな………」 阿賀屋は「女に刺されても、金を払えばそれは商売で恋愛感情ではない!と言っちゃえる男だもんな…………泣いても乞われても………金を払えばプロに徹して股開けよ!と言っちゃえる奴だもん!」と嘆く 兵藤は「何の話ししてるのよ!」と怒る 阿賀屋は「お前もそのヤリチンの仲間だったろ?」と揶揄して謂う 「そうだよ!手に入らぬのなら誰を抱いても一緒だと………軽はずみな行為ばかりしていた……時もある!」 「まぁ今一筋なら良いんじゃね?」 「…………俺の事は良いんだよ!其れより烈は?」 「部屋にいねぇなら………久遠と治療に行ったんだろ?」 「あ!そんな話ししてたわ!」 兵藤もメンバーも皆も納得した 昼 少し前に烈は竜馬と久遠と共にホテルへ戻って来た 烈が戻って来た気配を感じると、烈の部屋に皆が集まった 烈は部屋に戻ると着替えに向かった 「始球式よ!皆!お仕事に来てるの忘れちゃ駄目よ!」と謂うと【R&R】のメンバーは部屋に猛ダッシュで走りユニフォームに着替えに行った 烈と竜馬はヤンキースのユニフォームに着替え、ソファーに座った 「あ、お昼食べてから着替えれば良かったわ!」と後悔する 今回の始球式は是非 ユニフォームで!とのお願いがあり、メンバーの分もプレゼントされたのだった 烈はレストランのメニューを取ると、何を食べようか?と見始めた スーが「わいも……食べて良いか?」と聞く 「良いに決まってるじゃない! お尻尾大丈夫?齧っちゃったからね!」 「わいらは怪我の治りは早いさかい大丈夫や!」 「そう、なら良かったわ! アメリカサイズの料理って量が凄いのよね…… スーたん何が食べたい?」と一緒にメニューを見る 猫達はメニューを見て悩んでいた クーは「アメリカのランチは量が多いんだよな……」とボヤきメニューを見る 竜馬が「なら少量を頼んだら?」と謂う 「それだと負けた気がする………」 「何と戦ってるのさ!」とボヤきつつ 皆メニューを見て、フロントに注文を入れ運ばれると食べ始めた 烈はユニフォームを脱ぎ捨てると 「やはり汚れるわよね!」と言い食事を始めた あまりヘルシーなのがなくてサラダとサンドイッチにした 烈は竜馬と一緒の部屋だから、一番大きな部屋を選び、泊まった が、【R&R】のメンバーでギリ行けるか?と謂うテーブルのサイズなのに………皆が居着くから 何か無理があった……… それでも負けずに椅子を運ばせ、簡易的なテーブルも運ばせ食べ始める スーは「昼にバーガーは選択ミスやったわ……」と謂う でもジョージは「バーガーに時間関係ないから! バーガー好きは何時だって食うし!」と謂う でもビックなサイズは想定外だった……… ルーは「このバーガーってアメリカだと通常サイズなんですか?」と問い掛ける ジョージは「そうだよ、まぁ外国の人用のサイズのバーガーも最近はあるからね、そっち頼めば良かったね!」と謂う スーは「此れで通常サイズなんか?」と聞く 「そうだよ………まぁアメリカ人には通常サイズなんだよ……」と謂う クーは「此れ、烈の勉強机の椅子に敷いてある座布団サイズやんか………」とボヤく せっせと猫達は昼食を食べていた 流石と限界に近くなると………RODEOÑのメンバーもStrong Hiのメンバーも手助けして食べてやった そして綺麗に食べ切ると……… メンバーは「ズボン………キツい……」とボヤいた 兵藤は「久遠と共に病院へ行ったのかよ?」と問い掛けた 烈は「そうよ、爛れた所は中々治らなくてね……… こんな事なら首や肩も治して貰えば良かったわ……」と謂う 「まぁ顔は絆創膏取れたやんか!」 「そうなのよ!でもユニフォームは首が……カッターシャツみたいに襟で隠せない分、包帯見えちゃうのよね……… んとに……駄犬が!だから犬は嫌いなのよ! うちのガルとガブとルシと金太郎みたいに可愛くない駄犬は殺処分がお似合いよ!」 と腹を立て謂う! 兵藤は何と言う言い草と思いつつ笑った そして「この前、素戔鳴殿の所へ行ったら、イオリとコオが素戔鳴殿の手助けして、畑仕事してたぜ!」と話す 「魔界初のワンコなのよね、あの子達は……… 仲良くやっててくれるなら安心ね!」 「もうスッカリ馴染んで、魔界の奴等と仲良くやってるぜ! 金龍が気に掛けて声を掛けていたし、猪ワンとか犬に似た魔獣の言葉なら解るらしいから、重宝されてたぜ!」 「魔界は働かざる者食うべからず、を実践させた世界だから………やってけるか?馴染めるか? 心配だったけど、あの二人ならば一緒にいられるなら頑張ってくれるかしら?と連れて行ったのよ!」 「コオめちゃくそ若返ったな………」 「魔界にも子犬いたらプレゼント出来るのにね………犬は生息しないからね………」 「犬は……流石と魔界では生きられねぇよ……」 「なのよね、畜生道へ堕ちるからね………」 「まぁその内 猪ワンが変異種産んでくれねぇかな?」 「それ期待大ね!」 冗談で言ったんだけど……… 烈の楽しそうな顔を見て、兵藤はまぁ良いか!と想った 烈は「RODEOÑとStrong Hiの演奏と歌の入ったヤンキースオープニングの歌、球団側に渡しておいてくれた?」と問い掛けた 竜馬は「ジョージに頼んでおいたから、倭の国での配信の演奏の合間に収録してあげておいてくれたと想うよ!」と答えた ジョージは「名刺貰った球団関係者に渡しておいたよ!」と伝えた 「まぁ特別サーヴィスで歌っちゃえば良いんどけど、そう言う訳にも逝かないからね………」 「所で配信曲の撮影は何時するの?」と問い掛けた 「倭の国へ還って直ぐにやるわよ! ボクがドゥバイへ行く前には上げて配信曲の購入が出来るようにしないとね!」 「どんな風に仕上がるか楽しみだな!」 ジョージが謂うとヘンリーが「竜馬がコンテは描いてるから、後はすり合わせしてリーダーのOK貰えば撮影となるよ!」と予定を話す 烈は「子守唄は室内で大丈夫だけど、もう一曲がね、ロケに逝かないとだからね………」とボヤく 竜馬が「あれから色々と変更して『果てしなき想い…』ってタイトルに変更したんだよね! だから何処でロケするか?なんだよね………」と頭の中に映像を浮かべつつ答える 「神威岬ってのが北海道にあるのよ! 帰りに北海道へ降りて撮影して帰るのも手よ!」 烈が言うとメンバーはGoogle検索を掛けて調べた 竜馬も検索して色々と調べ 「決めた!帰りのチケットは北海道で取る事にするよ! 北海道だと千歳空港への直行便あったよな?」と呟くとオリヴァーは即座にPCで調べ始めた 「直行便あるよ?どうする?取る?」 オリヴァーが言うとダニエルが 「【R&R】のスタッフを北海道に待機させておくとするか!」と謂う 烈は小鳥遊にラインして 「小鳥遊、北海道の神威岬近くで大人数泊まれる旅館予約しといて! 配信曲のプロモの撮影するから!」と送信した 即座に神野から電話が掛かって来た ワンコールで電話に出ると 『北海道でロケするのか? お前、今、始球式でアメリカだよな?』と問い掛けた 「そうよ、此れから始球式なのよ! で、直行便で千歳空港まで行くから、其処からレンタカー借りて神威岬で撮影したいのよ! プロモに隼人とか出したいけど、仕事なら………後撮りでも、とか考えてるのよ 何せ、ボクには時間がないのよ!」 『なら早瀬と隼人を向かわすからロケ出来ねぇか?』 「良いの?仕事入ってるんじゃないの?」 『今月は配信曲のロケを優先して、単スパンのしか入れてねぇから大丈夫だ! ならレンタカー借りて迎えに行ってやるよ! 旅館も貸切で撮影終わったら宴会しようぜ!』 「悪いわね……晟雅ゃ!」 『良いさ、収録曲は最高の出来だった! イギリス、アメリカ、倭の国、同時配信だからプロモが出来ねぇと売りに出せねぇのは解ってたし、気にするな! 俺としたら、RODEOÑとStrong Hiのオマケみたいな収録だったのに、歌わせて貰えて隼人は本当に嬉しそうだった!』 「ドゥバイから還って命があったら………隼人の新曲を竜ゅー馬と共に作ってあげるわよ! 写真集に曲の配信曲のコード付けて、特典で売るのも良いわね! ファンは隼人の姿と歌が聴けるんだもんね!」 『良いのか?………烈………頼むから………命があったらなんて言わないでくれ………」と泣き出した 小鳥遊が電話を代わり『晟雅泣いてるけど?何があったの?』と聞く 「ドゥバイから還って来て命があったら、隼人の写真集と楽曲込みで売り出す話ししてたのよ そしたら晟雅ゃが泣き出したのよ!」 『それは僕でも泣きますって! 双子の為やレイの為にも僕や皆の為にも………そんな事言わないで下さい!』 そう言い小鳥遊も泣き出した 傍にいた柘植が電話を代わり 『烈、私だって泣きますよ!』と謂う その横で相賀と須賀も『『私達だって泣きますよ!』』と訴える 烈は竜馬を見た 竜馬は電話を代わり 「取り敢えず始球式近いんで支度に入ります! 北海道へ直接行くので、ロケの準備お願い出来ますか?」と問い掛けた 須賀は『あぁ、皆と力を合わせて準備しておくよ!』とやっとの思いで答えた 「倭の国へ還る頃は週末っすけど、宿取れますかね?」と問い掛けた 『探して見るよ!だから皆で良いのを作ろうね! 北海道へ到着する時間を知らせてくれ! そしたら迎えに行くから!』 と言い電話を切った 電話を切った竜馬は「烈、生きてたら、とかは本当に止めてくれないと皆が号泣しちゃうからね、自覚してよ!」とクレームを入れた

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