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第38話 問題山積 戴冠式

榊原は「別に食費などなくても、烈の腐れ縁の方々なら食べさせますよ!  でも我が子はケチな故、働かず者食うべからす!を実践する宗右衛門故………宴会は会費制にしてるんですよ! 昔の飛鳥井なら来た者達に支払わせませんでしたよ!まぁそれで家計は結構火の車でした! プールしてるお金は宴会で消えましたからね!」とボヤく 清隆も「源右衛門は宴会好きで、人が集まれば宴会ばかりしていましたからね 宴会するのに酒や料理は常に保存しておかねばならなくて………結構大変な想いを母や玲香はしてましたね!」と謂う 瑛太も「でも今は晟雅も会費制になったから、遠慮なく飲めて楽しいと言ってますからね!」と笑って謂う 烈は「貰っておいてよ!事務所側の誠意として、受け取ってやって!」と謂う 榊原は分厚い封筒を受け取り 「光熱費も高いのでプール金として入れさせて貰いますね!」と謂う そのお金は即座に慎一に渡された 慎一は「ならはこのお金は口座に入れておきます!」と言い 「では買い物に行きます!」と謂うと神野が一万円差し出した 小鳥遊も一万円出しすと、相賀、須賀、柘植と一万円出した メンバーも出そうとすると 「あ~、今日はご馳走は出ません!  暑いけど鍋なので、鍋とツマミの材料を買って来るので会費は不要です!」と謂う 神野は「なら酒代!」と謂う 「お酒も阿賀屋と鷹司からのお届け物で………一部屋潰れてるので要りません!」 と却下した 神野は泣きながら「でも烈達【R&R】が撮影をしてくれたんだ!タダでなんか飲めねぇよ!」と訴える 榊原は仕方なく全員分の会費を受け取った 阿賀屋も「屋敷の奴に貰っといて良かったわ!」と紫園の分と二万円渡す 榊原はそれら総てを慎一に渡し、慎一はお金をハッグに入れ 「明日銀行に逝かねば!」と予定を立てた 一陽は笑って車のキーを持つ 三人は買い足しに行くと、入れ替わりで御影と洋子が帰宅していた 御影は「買い出しか?」と問い掛けた 榊原が「そうです!」と答えると「荷物持ちするから!」と着いて出て行った 洋子は部屋に戻り部屋着に着替えて戻ると 「烈、客間で宴会か?」と問い掛けた 「それしか入れないわよ?」と謂うと洋子はソファーに座ってる隼人を「お仕事よ!隼人!」と急かして連れて行った 康太は隼人と洋子を黙って視ていた……… そして目を逸らすと烈と目が合った 烈はニコッと笑うと「母ぁーさん、テザート用意してないわよ!」と謂う 康太は「聡一郎、テザート買いに行かねぇと!」と声を掛けた 聡一郎は「この時間だと何処へ買いに行きます?」と問い掛けた 阿賀屋が「水羊羹なら亀丸和菓子商店が良いぞ! あの店なら融通が利かせられそうだから、屋敷の者に言っとくから買いに行けよ!」と謂う 聡一郎は「なら買いに行きます!」と謂うと阿賀屋は屋敷の者に連絡をして飛鳥井の家の者が買いに行くから融通する様にしてやってくれ!と電話を入れた 烈は竜馬と共に自分の部屋へと行ってしまっていた 康太は溜め息を着くと「しあわせにげてくよぉ〜!」と声がした 目をやると、そこには双子がいた 双子はスッカリ大きくなっていた まぁ大きくなったと言ってもウナギサイズなのだが………… 今まではドジョウサイズで、今はウナギサイズなのだ それでもデカくなっていた 康太は「響 奏、烈は何処まで………」と言いかけて止めた 響は「はげるわよ」と謂う 奏も「そうそう!」と笑う 康太は「それは嫌だから考えるのよすわ!」と笑った 阿賀屋は「それが一番だぜ!真贋!」と謂う 「おめぇら本当に腐れ縁だな!」と謂う 「仕方ないやん、傍にいたいんだからな!」と謂う 康太は笑って「それなら仕方ねぇな!」と言った 阿賀屋は「シオは『はじめてのおつかい』だからな、伊織の足手まといになってねぇか………不安だぜ!」とボヤく 「アイツ………世情から離れ過ぎだろ? 隔離でもされていたのかよ?」 「そう、3年前まで屋敷の外には出られずで、通信手段何もなしの世界に閉じ込められていた!」 「それで良くも連絡着いたな?」 「三年前、宗家を正式に継いだからな! 宗家を縛れる者はやっとこさ、いなくなった けど、思い通りにならない奴はやはり紫園の存在自体が邪魔なんだろうな! 利益や観世音の財産は利害が一致する奴等の為に!って使われ続けて来たからな 紫園はそれを見越して、やっと独り立ちの目処が立った時期が来たから、満を持して【R&R】のイベントに出た! で、此れから観世音の奴等は地獄を見る羽目となる!まぁ仕方ねぇわな!神に喧嘩売ったんだ! それなりの目には遭わせねぇとな!」 「まぁな焼いて良いなら出てやるぞ!」 「なら出て盛大に焼き尽くして貰おうかな? あ、でも烈が止めるかもな!」 「あんでよ?」 「親孝行な息子は、母を大切にしてるからな! その母親を使うなんて論外でなんだろ?」 康太は笑って「楽させて貰ってるけどな!」と謂う そんな話をしてると、部屋にいた烈が何時の間にかリビングに来ていて 「真央たん手伝わないと、飲ませないわよ!」と脅した クー達猫もお手伝いしていた スーの尻尾はもうすっかり治っていた お皿と食器とカトラリーをワゴンに入れ、エレベーターで一階まで持って行くから、どの食器を使うか尋ねる ルーは「今日はどの食器を使うんですか?」と尋ねた 玲香が「鍋ならば、取り鉢と取り皿必要となるわいな!」とキッチンに立ち、ワゴンに乗せる スーが「エレベーター呼んでおいたわ!」と謂うとワゴンを押してエレベーターに乗る その次にコップを乗せやすく出しておいてやる 玲香は京香に「今宵は何を飲むのじゃ?」と尋ねた 京香は「聞いて参りましょうか?」と問い掛けた それよりも早くスーが神野達に 「今夜は何飲むんや?」と尋ねた 「まずはビールで乾杯、そしてウィスキーで微睡んで、バーボンで酔を楽しむ!」 と冗談めかして謂う するとスーは「お酒全般行くそうですわ!」と京香に告げた 玲香は笑って「まぁジョッキとコップを適当で良いじゃろ!」と謂う 阿賀屋は大きなトレーの上のコップを並べた そしてせっせとお手伝いをする 暫く働いていると、榊原達が買い物から帰って来た 慎一は「落とさないで下さいよ!」と注意しながら、紫園と共にキッチンへとやって来た 紫園は軽そうな袋をカウンターに置くと ふぅー!と一息付いた 慎一は「本当に使えません!この方!」とボヤいた 榊原も「荷物は持てない、商品の値段見たら『え?高くない?』連発で煩くて仕方ありませんでした!」とボヤいた 一陽が「この方、買い物一つした事のない御曹司ですか?」とやはりボヤく 烈は紫園に冷たい目を向けて 「少し世情を知りなさい! でないと貴方………生きられないわよ?」と謂う 紫園はクシュンとして「買い物………初めてだったんだ……」と消え入りそうな声で言う それを聞いて御影がまるで昔の自分を見てるみたいで……… 「この人………どんな生い立ちをしたをしたら、こんなに世間知らずになれるのか? 話してもらえないかな? そしたら協力出来るし、凛から受けた恩を返せる時が来たと想い、寄り添い教えられると想うんだ!」と訴えた 烈はそんなに成長した御影の姿が嬉しくて仕方がなかった もう育てられなかったままの傷付いた子供じゃない ちゃんと年相応に成長した姿をしていた 「なら後で皆の前で話すわね!」 「え?皆の前で話して大丈夫なの?」 「皆に知って貰いたいからね! ちゃんと聞いて、力になってあげてね!」 「烈、当たり前だよ! 俺は凛が救いの手を差し伸べてくれた! だからこそ、寄り添い力になれるならなりたいよ!」 「みかちゃん!」 「烈!」 と二人は抱き合っていた 紫園はそれを黙って見ていた…… やはり家族や親しい人間が傍にいない生活をしている所為か? 感情表現がない 心の機微など理解し難いのだろう…… それは表現者として最大の欠点になると烈は想っていた…… 烈は御影と共にお手伝いをして宴会を始めた 康太は「そう言えば北海道に貴史いなかったな?アメリカでも不在だったのか?」と問い掛けた それには竜馬が答えた 「ずっといたっすよ! 北海道はいなかったっす! 彼女が倭の国へ留学に来たんで、烈が常識を叩き込んで来なさい!とのミッションを受けて、教育中っす!」 「シャルロット留学に来たのか? そう言えば4月から来るって言ってたな……」 康太は思い出した様に呟いた 烈は「まだ大学には通ってないわよ! 受け入れる先の大学がまだ整備が整ってないからね………当分は無理なんじゃないかしら? だからゴリ押ししても無理だと言ったのよ!」と呆れた感じで言う 竜馬も「まぁ一緒にいたい気持ちは解るっす! でも状況と身分を考えないと、どん詰まりっす 国を上げての問題になるから………慎重にならないと………なんすよね!」と現状を口にした 「総てはドゥバイの後よ! それまではボクは知らん顔なのね!」 「まぁそれで大丈夫だろ! 後は貴史が頑張って何とかするしかねぇ事だしな!」 「本当に世間知らずな奴って………常識知らなさ過ぎて殴り飛ばしたくなるのよね………」 「まぁ王女は殴れんから、我慢しろ烈!」 「………ボクもまだまだね! 仙人の領域に達してないから腹が立つのよね……」 「嫌々、仙人の領域に達しても腹が立つって! 八仙だって腹が立つから時々クソ苦い薬湯飲ませるんやないか! アレは絶対に憂さ晴らししてやがるんだ!」 「そーなの?」 「そうに決まってる!」 烈は母の言葉を真っ直ぐに受け取る だからヤバいと聡一郎が出て来て 「烈!客間に行きましょう! ほら康太も紫園もみかちゃんも行くわよ!」と言い皆を客間へ連れて行く 客間へ行くともう飲んでる奴等がいた 宴会の料理も出来上がり客間へ運ぶと、皆で楽しい宴会が始まった 烈は「食べながらで良いから話、聞いてくれないかしら?」と言う 皆はちびちび酒を飲み烈が話すのを待つ態勢を取ってくれた 「観世音紫園、彼は阿賀屋の旧知の仲で、ボクとも腐れ縁の仲になった友です だが、今世の観世音の家は狂っていた 宗家が早世してしまった所為か、莫大な観世音の財産を狙うハイエナの餌食に紫園はなっていた 彼は只管日々宗家を継ぐ為に舞を教えられた 同年代の子が学校へ通う時に、彼は屋敷の中で只管相伝の舞を叩き込まれていた それはシオたんが成人になっても続き……三年前、正式に宗家を継承するまで続いた 彼は外を知らない 彼は勉強は家庭教室が着いて教えられたが、外部との接触を禁止されていたから、携帯すら持てなかった 三年前宗家を継いで、彼はPCを手に入れやっと阿賀屋と連絡を取った ボクは阿賀屋からシオたんの話を聞いた 今世は狂った世界に置かれてるぞ!アイツ! と聞かされ、観世音紫園の星を詠み、運気を詠んだ、それが三年前の話です そして変革期に突入したから白馬でイベントを執り行った! ボクはあの地の為に、シオたんは反逆の狼煙を上げる為に……… そしてシオたんは家から追い出され、所持金も全て凍結され貧乏なのよ、今 まぁボクがドゥバイから帰って命があれば、反撃に出る予定なの なので、それまでにコイツに一般常識と世情を叩き込んで欲しいのでご協力お願いします!」 と、ペコッとお辞儀をして頼んだ 御影は「閉じ込められていたの………ならあの常識のなさは………仕方ないね 俺が面倒を見るよ! 凛に受けた恩は飛鳥井の皆に返すと決めてるから!」と謂う すると竜胆が「恩なんて感じなくて良いんだよ!御影!もうお前は飛鳥井の家族の一員なんだから!」と叫んだ 「竜胆!だけど俺は救われたんだ! 凛が付き添ってくれたからこそ、今の俺があるんだよ!ならばそれを返したいんだ!」 御影も何時の間にか熱い男に変貌を遂げていた……… 烈は「熱さは伝染するのね………」とボソッと呟いた それを聞いた康太は爆笑した 相賀は「観世音紫園………破門された宗家の息子………そのニュースは御存知か?」と問い掛けた 紫園は「あぁ、三年前から知ってる!」と答えた 「どうなさるのじゃ?」 「そりゃ神の鉄槌が下るしかないでしょ!」と笑い 「烈が帰国したら総てが回り始めます! なので飛鳥井に置いて下さい! 俺は多分……何も知らないし、お金もない ずっと朝から晩まで舞を踊り覚え舞わされた なので一般常識や規則など解らない事が多いから苛立つでしょう……… 実際 竜馬には態度が武尊過ぎると言われてる 解ってるよ……そんな事は…… だけどその様に教えられたから……他は知らない 俺は前世の記憶があるが……それでも今世は歪過ぎて……解っているのに……出来ない事の方が多いんだ!」と心の内を吐露した 竜胆は「あぁ、前世の記憶持ちならば、置かれた現状が痛い程に解るのに………出来ないジレンマに悩まされるな……」と呟いた 烈は紫園に凛が飛鳥井へ来るまでの話をした 置かれた環境は断然、凛の方が過酷だ が、情報が遮断された世界で過ごさねばならない環境は同じだと話した ついてに御影の話もした 御影も凛と同様、閉じ込められ目の前で兄弟が冷たくなるのを見て過ごすしかない過酷な日々を過ごした 「過ごした場所も、国も、違うけど……… 凛も御影もシオたんも……閉鎖的な日々を過ごして来たって事は同じね……… 凛、みかちゃん、シオたんの事頼むわね!」 「「了解した!」」と二人は声を揃えて言った 竜馬は「シオ、【R&R】のメンバーがいるうちに意識改革やっちゃうっすから!」と付け加える 榊原は「家族が増えましたね!」と呑気に酒を飲んていた 清隆も「家族が増えるのは楽しいです!」と嬉しそうに話す 烈は宗右衛門の声で阿賀屋に 「阿賀屋蒼佑、儂が帰国したら正装をして大々的に打って出るしかなかろうて!」と話す 阿賀屋は「了解した!楽しみだな久々の宗右衛門との仕事だな!」と楽しそうに盃を高々と掲げ 「獅童がいねぇから大義名分使えねぇじゃんか!」とボヤきながら飲んだ 「獅童は今、鷹司の本山で禊の修行中よ! 緑道の子供と獅童の子供達も一緒に修行中よ! 当分はジャバの穢れた空気には浸からないんじゃないかしら?」 「………掃除は必要だからな……」 「阿賀屋の掃除は必要ないのにね………」 「そりゃ常に【家】の為に教育され大義名分を背負わされているからな! 芸道を妨げる者は一切の許しはない! その為だけに我等は存在する! 目を見張り、感覚を研ぎ澄まし、見張るのが我等が仕事だから、余計な事してる暇なんてねぇんだよ!」 「そう………その割に弛んでるわね阿賀屋の家!」 「え!何故に?」 「あんなに好き放題してた芸能事務所を、のさばらせてたじゃない! 政治家の息の掛かった事務所には忖度してるのか?って想っちゃったわ!」 「あ~、あの事務所ね! アレ、星詠の婆婆の所を訪ねたら『あの一族は烈の怒りを買う! それ故に烈が終焉の章唱えて消し去るから放っておいても大丈夫じゃろう!』と言ったから捨てておいたのさ!」 しれっと言うもんだから、烈は「あのたぬきババア!」と叫んだ すると其処に星詠みの婆婆が姿を現し 「誰がたぬきババアじゃ!」と怒った 康太は顔色を変え 「婆婆が姿を現すなんて………」と呟いた 榊原は立ち上がると婆婆を連れて別室に向かった 康太は「烈、お前も来い!」と言い烈を連れて榊原を追い掛けた 別室へ移動すると榊原は婆婆をソファに座らせた 康太は「何かありましたか?」と問い掛けた 婆婆は「主はドゥバイへ行ったら死ぬぞ!儂はそれを止めにやって来たのじゃよ!」と謂う 烈は「でも婆婆でも詠めないでしょ?ボクの星………ボクの未来…… ボクの星は何も指し示しはしない………止まってしまっているのよ!」と謂う 康太は「それってどう言う意味なんだ?」と問い質した 婆婆は「其れは………未来は好きなように書き換えられても仕方のない………時を止めた状態なのじゃよ! 宗右衛門の星は消滅させ、今は烈の星をベースに詠んでおる! 烈はヘルメースと同化して星に細工は出来ぬ故、細工はされてはおらぬ……… ならば此れは必然的な未来を指すのか? 調べた………賢者と賢人にも問い掛けた が、答えなど何一つ出ては来なかった……… ならば儂が止めるしかないかと……出向いて来たのじゃよ!」と苦しそうに話す 烈は「ボクは殺されるなら一矢報いて死んでやるわ!タダで殺されるなんて論外よ! 未来が詠めないならば、其れは好き勝手にボクが書き換えれば良いだけの事! 動かない運命なら蹴り飛ばして動かしてやるわ! 詠めないなら、ピカピカに磨いて映してやるわよ!それが飛鳥井宗右衛門が生きて来た生き様なのよ!」と謂う 絶望しそうな状況なのに………… 烈は絶望なんかしていなかった 其れよりも未来に喧嘩を売っていた…… 己の運命さえ、好き勝手にしてやる気でいたのだ 婆婆は「…………動かぬ石などない!割れぬ石などない!そう言う事じゃな……… ならば、儂は賢人と賢者と共に……盛大に逆らってやるとしようぞ! 年の所為か……少し気弱になってしまったわい!」と笑い飛ばした 康太は「ありがとうな婆婆!オレの子の為に……」と礼を口にした その姿は………魔界にいた頃の畏怖されるべき存在ではなくなっていた 夫を愛し、我が子を愛し………炎帝は変わった 婆婆は「皇帝閻魔も我が子に託すのは危険だと………伴侶殿に託した危険な呪文の数々じゃが………賢人と賢者が何時の間にか烈に教えてしまっていた…………彼奴等は我が弟子がこの地球(ほし)を滅ぼすのなら、其れは仕方がない事じゃ!と安徽しやがっておるからのぉ~」とボヤく 烈は「この地球(ほし)を、ぶっ壊しても彼奴は他の地球(ほし)を狙うだけよ! この銀河系の宇宙に幾つ同じ様な地球(ほし)があると思ってるのよ?」と口にする 康太も「七つの輝く地球(ほし)も残りは一つ この地球(ほし)しかねぇしな! 他の銀河系の場所に新しい地球(ほし)を作り始めたけど、また絶望しねぇと良いけどな!」と謂う 婆婆は「この地球(ほし)に主等の様な奴がおるならば、絶望は希望を連れて来るじゃろう! そうして明日は紡がれるモノじゃからな!」と笑って謂う 康太と烈は納得して頷いた 婆婆は姿を消した 榊原は「ドゥバイ本当に行く気ですか?」と問い掛けた 「其れが魔界で世界大会を開いた者の務めだからね!」 「死ぬかも知れないんですよ?」 「死なないかも知れないじゃない!」 康太と全く同じ事を言うのだ……… 止めたい 我が子が死地へ出向く姿など………見たくはないのだ 其れが死命だとしても……… 「父ぉーさん、ボクにはレイたんかいる! それに響と奏を育てねばならぬ義務があります!なので死にません!」 「ならば約束しなさい!」 「…………なるべく生きて帰ります!」 「なるべく、を抜いてもう一度!」 「生きて帰ります!」 「宜しい!ならば逝きなさい! 其れが君の死命だと言うのならば完遂して来なさい!君の子は私が命を懸けて護り通してみせます!」 「はい!」 榊原は我が子を抱き締めた まさか………我が子にまでこんな想いをせねばならないなんて…… 遣る瀬無かった……… だが我が子の動きを止める事などしてはならない 父として送り出さねばならないのだ! 榊原は泣きそうになる想いを封印する 泣いてはならない…… 榊原は歯を食い縛り………耐えて笑った 泣いた姿など我が子には見せられないのだ 烈は「ボクは一足早くドゥバイへ閣下と行きます!兵藤きゅんは置いて行きます! その為のシャルロット王女なのよ!」と告げる 康太は「了解した、でも誰を連れて行くのよ?」と問い掛けた 「ボクはクーたん達全員とトキたんを連れて行くわ!プーたんが不在になるから金ちゃんが在中してくれる事になるから………お酒飲ませて扱き使ってね!働かないなら尻を蹴り上げといて!」 康太はそれを聞き 「え〜金龍が家に来るのかよ? プーの変わり出来るのか?あんな飲兵衛が?」と謂う 烈は心の中で………金ちゃん、貴方…飲み過ぎなのよ信用ゼロじゃない………とボヤいた 「家の至る所に式神も配置するから……大丈夫よ」 榊原は何と言って良いやら………言葉を失っていた 親父殿……飲んでる姿しか見せないから信用ないんですよ!と想う 客間に戻り何事もなかったかの様に、宴会は楽しく過ぎて行った 翌朝 烈は閣下からお迎えが来て出向いた スーは烈の姿に擬態化して、烈の不在を感じさせない様にした が、流石 飛鳥井の家族は騙されてはくれなかった 玲香なんか「おや?スー?何をしておるのじゃ?烈の姿をして?」なんて言われちゃうのだ スーは「わいは完璧な擬態化してるんやけど!!!」と叫んでいた 康太は「ドゥバイへ行くまで、スーは烈の姿で家にいると言う、目眩ましの作戦か?」と尋ねた 「それもあるけど、違和感なくドゥバイへ旅立つ日まで、家族を見張れる姿になってるんや!」 康太はその言葉に「成る程!」と納得した 烈は閣下の呼び出しに出て行って、多分そのままドゥバイへ立つとラインが入っていた 金龍が来る日までは、こうして家族に烈の姿で見守りたいのだろう…… スーの想いだった 感情も心もない銀河系を監視する【モノ】だった 其れが烈の好きな猫さんのカタチになり、感情と謂うモノを知り………心を持った この猫達は烈と共にいて、烈の為だけの存在だが 烈が大切に想う家族を護ろうとしてくれてるのだ 康太は何か嬉しくて、スーの頭を撫でてやった 烈がドゥバイへ旅立つ4月29日 魔界から金龍がやって来た 「飛鳥井に泊まり込みで、流生と双子の教育に参った!」と言う 榊原は「烈に言われたのですか?」と問い掛けた 「あぁ、烈に頼まれておったのじゃよ! 流生と話をしてやってくれ……とな! 本当なら烈が連れて来る筈じゃったが、予定が立たぬと謂う事で呼ばれのじゃよ! 住み込みでお願いね!と言われたから当分は泊まり込みじゃ!」 流生が龍の姿に中々なれないのは知っていた が、龍の姿になどなれなくても良いと榊原は思っていた 金龍は「少し話がしたい!」と謂うから榊原は自分の部屋のリビングに通した 康太は喧嘩にならねぇか、心配して同席した 金龍は「主は流生が龍の姿になれなくても良いと思っておるのか?」と尋ねた ド直球な言葉に榊原は息を呑みつつも 「ええ、龍になどなれなくても生きて行けます!」 記憶を封印していた自分は龍だった事さえ忘れていたのだ しかも四半世紀宝珠すら持たなかった 金龍は「それを流生が望むならば、それで良いと儂も想う!」と告げた 「それはどう言う意味ですか?」 「流生は赤龍として、次代を生きる決意をしておる!」 「え?それは誰が言ってたのですか?烈ですか?」 「今 菩提寺には次代の四龍がおるではないか! 流生は菩提寺で次代と話す機会も多い! そして自分の役割も責任も話す事も在る! 流生は龍になり烈を乗せてやると約束したそうじゃ!そして輪廻の轍から解き放たれたならば魔界へ還り四龍の後継に着く! その覚悟ならば等の昔に出来ておるそうじゃ!」 「………知りませんでした………」 「流生は龍になるのが怖かった………と、烈に言ったそうじゃ………」 「え?………」 「それは龍になるのが嫌とかではなく、そんな姿になったら……嫌われてしまうんじゃないか?って言う恐怖だったと言っていた……… でも烈は『流にーの背中に乗せてね!鱗の変わり時は教えてね!オブジェ作りたいから!』と言ってくれたそうじゃ……… 儂もな……己の姿が嫌いだった 龍なんて忌み嫌われる生き物だと思っておった が、烈が乗ってくれた そして鱗を褒めてくれた! 最後の生え変わりの時の鱗を大切に大切に拾ってくれオブジェにすると言った 飛鳥井の客間の床の間のオブジェは儂の鱗のヤツだと教えてくれた だから儂は龍である自分を受け入れられた 背中に乗ってくれ喜ばれるのならば、鱗艶を磨き頑張ると決めたのじゃよ!」 「父さん…………」 父の思い掛けない本音を吐露され……… 榊原は言葉を失っていた 金龍はニカッと笑い 「我等龍族は今後も続く! 黒龍が長となり正しき道へ行く 其れが神祖に報いる日々になればと想う 其れが我等の誇りとなり、烈に……孫に曾孫に誇れる龍族で在りたいと願うのじゃよ! だから、流生の手助けをする為と飛鳥井の家族を護る為に使われされたんじゃよ!」 流生が自分と同じ姿になる……… 誇り高き赤龍になるのだ それを受け入れてこそ、流生の明日は続くのならば受け入れよう 「ならば、父は2番目で良いので乗せて貰わねばなりませんね!」 「あ~、2番目は母らしいぞ!」 「え!私は3番目ですか!!」 「そうらしい!1番目は烈!其れは揺るぎない決定事項らしいからな!」 金龍は笑ってそう言う 榊原は「3番目………父は1番目とは言いませんが、2番目に乗りたかった…」とショックを隠せなかった 康太が「ならお前が2番目で構わねぇよ!」と夫を心配する 良い夫婦だった 愛し合った夫婦だった 金龍は榊原の頭を撫でると 「父は何時だって乗せてやるさ!」と謂う 榊原は少しだけ照れ臭そうに笑うと 「金運上昇の為に今度乗せて下さい!」と言葉にする 完璧な青龍 冷徹な青龍 何処か遠くて………偉大過ぎる倅を持った それに似合う父にならねば……… 龍族存続の為に頑張らねば……… 空回りして烈を殺し掛けた 其処で全部捨てた 全部捨てたら……気が楽になり……視野が広がった 倅はこんなに身近にいたのだ 手を伸ばせば髪を撫でられる程に近くに……… 金龍は幸せを噛み締めていた 康太は「なら金龍頼むな!」と言葉にした 金龍は「神祖、少し大きくなったな!」と関係していた 康太は「ドジョウがウナギサイズにはなったな………」と謂う 金龍は「後少ししたら人のカタチに変身出来るじゃろう!」と謂う 康太は何故そのサイズだと変身出来るのか解らなくて………… 「それ、烈も言ってたな………」と呟いた 「烈は敢えて人の世に神祖を生活させ轍に入れた それは人の世の時間で成長する為なんじゃろ? 魔界で過ごすのは時間の流れが遅い 人の世ならば、魔界より早い時間で成長する そして幼少期の形成が成人になって人格形成の大半占める だからこそ家族の愛を知らせ、愛と痛みと常識を叩き込んでおるのじゃろ! ハッキリ言って次代の四龍は足らない所だらけよ!と烈に怒られた! 出来損ない育てるの止めなさいよ! 育てるならば責任を持って徹底的に教えなさいよ!と怒られた だから定期的に人の世に来て次代と会う機会を持つし、断絶気味だった親父とも………交流を持つ様になれた……… あの頭の硬い頑固親父を良くもまぁ、引きずり出したな………と、儂と黄龍は感心した程にな!」 「あぁ、あの頑固親父か、でも次代の四龍の良き親になって子育てしてるぞ! 今じゃ太極拳の責任者となり、老人を活気付かせてる立役者らしいぜ!」 「本当に………親族とも誰とも会わずに魔界の隅で隠居していたなんて嘘みたいに元気だな、あの親父!儂は四半世紀、親父の姿なんて見てなかったから……ヨボヨボかと想ったら………何か元気で安心した!」 「母親とは逢っていたのかよ?」 「逢ってなかったな………銀龍が定期的に顔を見せに行ってくれてたけど……逢っては無かった 今 こうして逢えば………嫌になる程に親子で、儂はあの人達の子供だと想える………… だから次代の四龍を育て終えたら魔界に家を用意したと伝えた 龍族の中へ入り生活してくれと話した そしたら魔界に帰ったら太極拳を教えねばならないから、龍族の中の家に住むと言い出しやがったよ!本当に烈マジックで儂と黄龍は親孝行しようと決意した程じゃよ!」 と笑って謂う 金龍はこの日から飛鳥井の家で過ごした 流生に寄り添い話をする そして翔達を孫と共に飛鳥井の子達を大切にする 和希と和真も永遠も大切に大切に武道を教え、鍛え上げていた そして金龍がいるって事で飛鳥井の家には、神威や神野達が連日集まって宴会を繰り広げていた ちゃっかり住み着いた阿賀屋と紫園も、すっかり飛鳥井に馴染んでいた 御影が親身になり紫園に寄り添う 凛も、それはそれは親身になり菩提寺へ連れ出し、鍛え上げていた その頃 烈は閣下の住まう裏皇居近くのホテルに唐沢と共に宿泊していた ドゥバイへ対策を考えて、ってのもあるが、最重要課題だったシャルロット王女の護衛の包囲網の完成をする為だった シャルロット王女の警備体制を実行させ訓練させたSP達と、イギリスの護衛達と共に烈が組み込んだプラクラムに沿って動ける様に実戦訓練に入っていた GW過ぎには大学に通う事になっていた そして王女は倭の国で暮らす為に建てられたマンションの最上階のペントハウスに暮らす準備を兵藤と共にしていた 烈は兵藤に王女に【お金】の価値を知らせる事! と、ミッションが課した! 安いモノは早く壊れる お金を出せば高品質で丈夫なのが揃えられるか、その分 値は張る どっちを買ったらお得かしら? それは食べ物、衣類、家具、家電、総てに当てはまるから、家具から揃える準備をしなさい! そう言われ倭の国での生活の準備を始めた 兵藤には、烈がドゥバイへ行ってる間に、王女に徹底的に教え込みなさい!と指示をされミッションとして出されていた まずは兵藤を護衛達のいる場に置く 不審な輩が護衛を突破して来ても、兵藤には式神が付けられていた あれから【護る】に特化した式神に変更し、何が何でも兵藤貴史を護れ!と命令させ付けた 嫌がらせの為に近付こうとしても、兵藤を狙うのは至難技となる そして家族には地下を通って出社してと頼んだ ドゥバイへ行ってる間だけ、警戒してくれと頼んだ タワマン含めて敷地には式神が四方八方に配置され、不審な輩が来たら成敗する それが闇に穢れた輩ならば!無間地獄へ堕ちる手筈になっていた 家族を護る 其れが最優先課題だと閣下にも頼み、警察の方からもそれとなくパトロールや離れた位置から衛星で監視をする約束を取り付けた そして何かあれば即座に特殊部隊を投入して貰える手筈も唐沢を通して整えて貰った 準備は万端 そしてドゥバイへ意識を集中し、策を練り 4月27日、早朝 29日に行われる戴冠式に間に合う様に、政府専用機にてドゥバイへと旅立ったのだった ドゥバイへ到着予定は戴冠式前日 政府専用機の上にはトキが配置され乗っていた ドゥバイへ到着するまで丸一日以上掛かる 烈は珍しくPCを開いてキーボードを叩いていた プロモを開いてチェックして、竜馬に此処は直してとか、こうすると良いわ!と指示を出す 竜馬は『烈、まだ飛行機に乗ってないの?』とドゥバイへ向けて旅立ってる筈なのに?と想い問い掛ける 「今飛行機の上よ!」 『え〜!飛行機に乗ったら直ぐに寝ちゃうじゃないか!何時もは!!』 と驚き返信 「1日中飛行機に乗りっ放しになるからね 寝てられないからプロモのチェックしてるのよ! 半日掛けてアメリカに行き、更に半日掛けてドゥバイよ!」 半日のフライトなら寝るけど、1日は寝てられないって事なのね………と納得 其れからはプロモについて、熱く討論が繰り広げられた そして手直しして行くと、最高の出来になり、メンバーは鳥肌が立つ程に良い出来となったと感激していた RODEOÑとStrong Hiの新曲プロモの子守唄じゃない方は完成した 子守唄は室内での撮影となる 帰国したら撮る事になっていた ついでに隼人の新曲も皆で意見を述べ合い、創り上げて行く ダニエルは『やはり夜のピアノの前で歌う映像は最高のに仕上げたいよね!』と言う メンバーは皆 同じ意見なのか? 賛成のスタンプを一斉送信する! アメリカに到着して一旦、通信を遮断する 政府専用機はアメリカまでもしか飛べなかった 距離的なのとかではなく、倭の国のドゥバイ上空の飛行の権利が許可されないからだ! デルタス航空の職員達が倭の国の特使をお出迎えしてくれる ブルーノ・アーキスは倭の国の特使の前にでると深々と頭を下げ 「此処アメリカからドゥバイまでは、我等デルタス航空が御手伝いさせて戴きます!」 と告げた ブルーノは「其れでは、御一緒にお願い致します!」と告げ、特別通路のドアを開けた 特別通路は特使が入ると直ぐに閉鎖された そして物音すら無い静かな通路を通って空港の外に出る 外に出ると、一番手前にアメリカの政府専用機が止まっていた アメリカの特使も待ち構えていた ブルーノは「其れではお気を付けて、空の旅をどうぞ!」と言い深々と頭を下げた 飛行機からはタラップ車が接続され、スチュワーデスが降りて来て「ようこそデルタス航空へ!」と出迎えしてくれた アメリカの特使が乗り込み、倭の国の特使が乗り込むとタラップが上げられた スチュワーデスのアナウンスが入り アメリカからドゥバイまでの飛行機の旅が始まった 烈はPCを取り出すと、再びメンバーとプロモの編集を当たった そしてドゥバイへ到着までに、ベースは完成した どれだけの時間、飛行機に乗ってるのよ………と烈は想った 「後は帰国したらもっと緻密に修正かけて仕上げるわね!ついでに子守唄のプロモも撮らなきゃ!」 『ならばスタジオ押さえとく?』 「スタジオなんて駄目よ! 暖かさがないじゃない! そんな場所じゃ子供は眠れないわよ!」 『なら其れはリーダーに任せるっす!』 「ドゥバイに到着したから切るわね! それよりも………時差度外視して編集したから、時間狂ってるでしょう?」 『大丈夫っす!リーダー! 俺等は何時もこんな感じっすから!』 「なら行ってくるわね!」 【リーダー、お気を付けて!】 とメンバーが一斉送信する そしてPCの通信を終えて電源を切り、鞄にしまう そして父と母に「ドゥバイに到着しました!では行ってきます!」とラインした ドゥバイ空港に飛行機が着陸する ドゥバイの案内人が出迎えて、飛行機を降りる 空港には他の国の飛行機が何体も止まっていた 飛行機から降り、空港の中に入るとカラフ・シャッジムと后のセーラがお出迎えした 「ようこそドゥバイへ! 宮殿の方へお願い致します!」 そうお出迎えされ空港から出ると、停まっているバスに誘導され乗り込んだ 宮殿には各国の取材クルーが詰め掛けていた 取材クルー達はドゥバイではなく、指定した隣国で飛行機を降りられ、バスに乗りドゥバイ入りを指示されていた 厳密な荷物チェックをされ入国したのだと謂う 特使達は宮殿に案内されると、控室に通された 「今宵は晩餐会まで自由にお過ごし下さい!」と謂れ部屋で寛ぐ 烈はこの日の為に燕尾服を新調した 後 ドレスコードのある晩餐会用のカクテルスーツも新調して、ドゥバイへとやって来たのだ 烈は唐沢や堂嶋と同じ部屋に通され、閣下は一部屋与えられた 控室にはお付きの者が控える 烈は「正義ちゃん唐ちゃんお風呂に入るわよ! 身支度整えておかなきゃ!」と言いバサバサ服を脱ぐ 堂嶋もスーツを脱ぎ捨て、裸になると烈と共に浴室へと向かう 烈は「凄いお風呂ね、10人位なら楽勝な無駄なお風呂ね!」とボヤいた 唐沢は遅れて浴室に来ると「本当に金持ちは意味わからん!」とボヤいた 「ボクもお金持ちには憧れるけど、こんな大きなお風呂は不必要だと想うのよね!」 烈のボヤきに唐沢は 「お前んちも十分金持ちだろ?」と謂う 「うちは一般家庭よ! 昔程 材木屋も生コン屋も建築家も儲からないからね!」 「嫌々、俺からしたら金持ちだって!」 「其れ言うなら政治屋の方が金持ちよ!」 唐沢と烈は堂嶋を見た 堂嶋は笑って「俺はしがない政治屋で、金はねぇよ!」と謂う 烈は唐沢に「そう言えば、金持ちと言えば、どうなった? 頼んでた家の御家騒動は?」と問い掛けた 「あ~、観世音宗達は若くして病に倒れ、本妻ではなく看護をしてくれてた女のとの間に紫園を設けた………事の発端は其処から始まる観世音家の泥沼の争いとなってるらしい……… 本妻との間に子はいるが、その子が後継者を与えられぬのはおかしい!とずっと本妻が言っていたそうだ! だから紫園って奴を追い出し、本妻の子が宗家を継ぐのが当たり前!との事だ!」 「え!本妻との間の子じゃなかったの? 嘘………手が加えられていた………って事? 世阿弥と観阿弥は交互に転生を果たさねばならぬ一族………しかも観世音と観音寺を名乗れるのは………菩薩の子供のみ! …………それを大きく書き換えられたって事?」 「あ~、そう言う事情は知らねぇけど……… 調べた結果は嘘偽りの無い現実だ!」 「ならば、あの家は滅ぶしか無いわね……… 何もしなくても………滅びの一途を迎える………」 「え?また猟奇的に死ぬんじゃねぇだろうな!」 「死に方は解らないわ! でも………あの家の当主は遥か昔から決まっている そして其れは替えの効かない【誓約】として神との契約の上で成り立っていた……… まぁそれを知る奴がいなかったから………こんな末路を辿るのね………… あの家は捨てておいて大丈夫よ! でも蒼佑には伝えとかなきゃ!」 と烈は携帯を取り出すと阿賀屋に事の経緯を書いてラインで送信した そしてドレスコードを身に着け、晩餐会の準備をする 堂嶋も唐沢も正装を着込み支度をする そして時間になりバンケットルームへと向かう その夜は盛大な晩餐会が行われた 晩餐会の前後は世界各国のテレビクルーが撮影をして、その華やかさを世界へ伝える 当然 烈の姿もカメラは捉えていた 晩餐会の大盛りあがりの時間に、烈は早々に部屋へと引き揚げた 烈は正装を脱ぎ捨て、シャワーを浴びた そして持って来たジャージに着替えて、一息付く 暫くすると堂嶋と唐沢も部屋に戻って来た 唐沢は「あ~肩が凝る!」とボヤいていた 堂嶋も「本当に肩が凝るよな?」とシャワーを浴びに向かった 用意されたバスローブを着て、部屋に飲み物を運ばせる 給仕が飲み物を置いて去ると、クー達が姿を現して匂いを嗅いだ 「ん!安全や!飲んでええで!」とスーが謂う プーは「晩餐会の料理を作る時、調理場でわいとスーが見張ってましたわ! 変な動きするのはいなかったけど、まだまだ油断は出来へんからな!」と謂う スーは頷いていた 飲み物を飲み終えると 「取り敢えず寝ましょうか!」と言い各々の部屋へと入った 烈達が宛てがわれた部屋は3部屋ある来賓室だった スーが「なら正義はん、寝るとするか!」と謂う ルーが「唐ちゃん、ご一緒に寝ましょう!」と謂う 烈は「ならクーたん、プーたん寝ましょうね!」と言い部屋に引き込んだ 唐沢と堂嶋も部屋へと向かう そして猫と共に寝るのだった 一緒に寝るのは暗殺でもされたら堪らないから、の意味合いもある! 護衛の意味合いを兼ねての、添い寝だった 唐沢と堂嶋もその意味合いを承知して、共に寝るのだった 翌朝 起きると烈はシャワーを浴びに向かった クーとプーも洗ってやり自分も洗い、身支度をする ついでに歯も磨き、顔も洗う プーは「確り顔は洗うんやで!目ヤニ着いてたら洒落にならへんで!」とゴシゴシ顔を洗う 本当に身奇麗な猫達だった 烈が浴室から出ると堂嶋と唐沢もルーとスーと共に浴室へと入り体を洗って身支度をした 体を拭いて、髪を乾かし、セットする クーが寝癖一つ残す事なく、セットしてやるのだ そしてセットが終わると、クーとプーの体をドライヤーで乾かしてやり、ブラシで毛艶に磨きを掛けた そして最後にオーデコロンを吹き掛け クーはオーデコロンを渡して貰うと、烈にも吹き掛けた そして支度を終えると、風呂から出たルーとスーの体を乾かしてやる ブラッシングして毛艶を整え、仕上げはオーデコロン まぁ猫達は烈のポケットと天空から見張るのだが身嗜みは整えるのだ それが飛鳥井の男だから、と猫も変わりなく整えるのだった 支度を終えると朝食を運んで貰う 余分に4個多めに頼む! バイキングでレストルームで取る人と、部屋で取る人に分かれる 烈は部屋に朝食を運ばせた 朝食を終えると、燕尾服に着替える 着替え終わると、魔界から閻魔に渡された大礼を着ける この日 閻魔は参加しなかった 各国の神々も欠席だった 本当に各国の特使級の政府要人と関係者だけの出席となっていた まぁ天界に集まり、事の様子は見ているのだが…………この場には不在だった ドゥバイはあの天に届く塔を破壊して、かなりの痛手を負った が、復興の兆しはちゃんと刻まれ、国民は国に戻って王と共に復興に全力を注いでいたのだった ドゥバイが矯正され、各国に正式に王としてカラフ・ジャッジムが戴冠式を迎える 一度は国外逃亡を図ったとされる王だが、国民を反乱組織から護る為に神々の協力を仰ぎに向かっていた と、国民には伝えた 弊害となる闇に染まった人間は、ドゥバイの地には住めない、入り込めない誓約の地として生まれ変わった今、国民はそれを信じるしか無かった 哀しい事に前王は………クーデターが起きた時、断首され人々に晒され………死を穢された それ故に………前王は忌日から抹消された 不正をした皇族もこの際、王族の剥奪をした 反乱軍に加担したと謂う大義名分ならば、有るのだ それを有効活用させ、是正させた 新しく始めるドゥバイに闇の部分など遺してならないからだ! 4月29日 ドゥバイ国以て カラフ・ジャッジムの王位 戴冠式が盛大に開かれた 各国の特使が祝福し、新しいドゥバイは刻まれる事となった 国民は「カラフ王!万歳!」と朝から祝福ムードだった 戴冠式は大聖堂で執り行なわれる事になっていた 続々と海外からの特使や要人が大聖堂へと入って行く 取材許可を得たテレビクルーが、撮影をしていた 大聖堂へ入れるのは極一部の許可を取った取材の者達だけとなった 各国 代表したテレビ局だけしか撮影は許可されなかった その放映権は入札して、公平な審査を経て決められた 他のテレビ局は其処から映像を回して貰う事になっていた 大聖堂の外は入り切れない取材陣が詰め掛けていた が、大聖堂の中はそんな喧騒など感じさせない程に神聖で静かに、その時を待っていた 国民と各国の特使達が見守る中、戴冠式は執り行われた 王のローブを身に纏い、カラフが登場する その様を皆 息を飲んで見守っていた 王の衣装に身を包み、王位の象徴である王冠と杖を司祭から授けられた 司祭を務めるのはローマ法皇 この日の為に新しいローマ法皇が駆け付け、その役務を担ったのだった ローマ法皇は王冠と杖を授け 「ドゥバイの地に栄光よ在れ!」と声高らかなに叫んだ セーラ妃は深々と頭を下げた そして戴冠式を無事終え、国民に向け挨拶をする その時、やはり狙うなら定石なのか? バカの一つ覚えみたいにカラフは標的にされた 真っ白な猫がカラフとローマ法皇の前へと出て、呪文を唱えると目映い光の壁が出来上がった 光の壁が何者も近付けなくする カラフに向けて放たれた弾丸が………特使に飛ぶのを警戒してオーディーンのラグナロクの戦士に護らせた 烈はローマ法皇とカラフを護るバリヤを張り護った 王の頭上ではラグナロクの戦士が放たれた弾丸をスパッと一刀両断にし切り刻んでいた バラバラと切り落とされた弾丸の欠片が突き刺さる 皆の目にはラグナロクの戦士も、オーディーンも映りはしない! 何が起こったのか?分からずにいた 烈は王の前に出て跪くと 「王、人々が混乱致します! ドゥバイは神が守りし国だと宣誓されよ!」 と告げた カラフは「皆の者達よ!静まれ!我が国 ドゥバイは神が守りし国、決して悪に満ちた者など入り込めはしない! 我等は一丸となり、国を発展させる為に尽力するのだ!」と大きな声で告げた すると気を取り直した国民は一斉に歓声を上げた カラフ王!万歳! と国民が歓喜の声で国の始まりを謳う 戴冠式は成功を収めた ローマ法皇は「其処の者よ、和平の立役者として先導して逝かれる事を望む!」と言い、烈の頭に手を翳した 烈は畏まり、その言葉を受け止めた とても神聖で神々しい光景に………テレビクルーは皆 釘付けになりその光景を撮影した 戴冠式は無事終える事が出来た 皆は祝賀会へと突入した 祝賀会は戴冠式の後と言う事で、時間も早く抜け出す事は叶わず最後まで出席をした そしてやっと祝賀会を終えて控室に戻ると、ホッと息を吐き、無事役務を務められたのだと想った 国民達は祝いの酒を広間に用意され一晩中祝宴となる! 烈は燕尾服を脱ぎ始めると 閣下は「お疲れ様でした!」と労いの言葉を掛けた 「本当にね、疲れたわよ! このまま何もなきゃ良いんだけどね!」 とボヤきクーに傷の手当てをして貰っていた 堂嶋は「まだ何かあるのか?」と問い掛けた 「あるでしょ?嫌がらせの為なら星だって潰す奴だもん!」 唐沢は「んとに………ちぃせぇ事が好きだな!」と吐き捨てた 其処へオーディーンがやって来て 「烈、あの銃弾はやはり宇宙から放たれていた 彼奴の仕業だと天空神も判断された! カラフには仕方ねぇから宮殿の守り神としてコブラを放っておいてやったわ! 元はクー達と同じ無機質な【モノ】をコブラの姿にして守り神として放った これで曲者や暗殺者程度の輩の対策は出来るだろうて! カラフには直接伝え、大聖堂の中へ放った この国を見張りカラフを護るだろうさ!」と告げた 烈は「オーディーン、ありがとう! さっきもラグナロクの戦士を遣わせてくれて、ありがとうなのよ!」と礼を言った オーディーンは烈の頭を撫でて 「怪我はないか?」と尋ねた 「掠り傷で済んだのはラグナロクの戦士のお陰よ!本当にありがとうね!」 「お前の母が昨夜、天空神の所に来て 『オレの子供に傷一つでも着けやがったら許さねぇからな!』と喧嘩を売って逝かれたからな……… 守らねば………何するなら解らぬからな!」と笑って謂う 烈は母の愛を感じて 「母ぁーさんが!!」と嬉しそうに謂う 「『大切な大切な我が子が血を流す所なんて見たくねぇんだよ!』と言われればな、天空神も動かぬ訳にはいかなかったのじゃよ!」 「ボクは多少飛んで来た銃弾の破片で、掠り傷は着いたけど、まぁある程度は覚悟していたのよ……… 向こうは無傷で帰す気なんてないからね!」 「本当にシツコイ奴じゃ!」 「本当にね…………」 「じゃが、我等は負けたりなどはせぬ!」 「当たり前じゃない!」 オーディーンは嬉しそうに笑い 「なら仕事はしたから帰還するとする!」と言い姿を消した 烈はベッドに寝転がると「疲れたわ!」と呟いて眠りに落ちた 堂嶋は「我等はこの後帰らねばならないのだが………」と言う ………が、烈はスヤスヤ夢の国だった 唐沢が「俺が背負って行くから大丈夫だ!」と言った 各国の特使は続々と帰国を決め、本国へ帰還を進めていた 無論、烈達も飛行の許可が取れたら空港へ行き飛行機に乗り込み倭の国へと向かうのだった 閣下は「本当に気を張っておったから………気絶するように寝ても仕方あるまい………… 幾ら転生者でも、この子はまだ子供………であるからな!」と言葉にした 唐沢はせっせと帰り支度をして、烈の帰り支度もする ジャージの烈に「本国に到着してたら報道陣いるのに、ジャージは………流石にいかんだろ?」とボヤいた 堂嶋は「ならお前が着替えさせろ!俺は荷物を纏めて持つ事にする!」と言う 「俺さ………子供いねぇんだけど………」 「俺もいない!」 堂嶋はキッパリ言った 唐沢は諦めて烈のジャージを脱がせ様とした するとクー達がせっせとお世話をして着替えさせていた 「帰国用のスーツはデービッド渾身の作のスーツで良いからな!」 と言うとスーツケースからスーツを取り出して着せ始めた 唐沢は「烈の猫………すげぇな………」と呟く 堂嶋も「本当にな……こんなに出来る猫は中々いないな!」と謂う 閣下は笑ってそれを見ていた そして支度が整うと唐沢が烈を背負った 堂嶋が烈のキャリーケースをガラガラ引っ張って外に出ると、閣下の御付きのものが荷物を持ってくれた そして皆で車に乗り込み空港へと向かう カラフ達は宮殿の入り口に立ち、見送りをしていた 寝ている烈を見てカラフは 「疲れさせてしまいましたね! 彼には………返せぬ恩が出来てしまいました!」と言葉にした 唐沢は「コイツは恩だなんて思ってねぇよ!」と笑って謂う 「またドゥバイへお越し下さい!」 と言い特使を見送った 烈達は空港まで行き、デルタス航空のアメリカ側の政府専用機に乗り込み倭の国へと飛び立った

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