41 / 62
第41話 immense
その顔は、吹っ切れた様な笑みを浮かべ顔………何時もの一生になっていた
一生が帰国して来てからのピーンと張り詰めた様な緊張感と焦燥感が無くなっているのを感じ取っていた
康太は「国際電話出来る仕様にしたのに、ラインばかりで電話とかして来なかったよな?」と思い当たる節を思い出しボヤく
聡一郎も「それ、僕も気になってました!
帰国の報告をして来た時は、空元気なの丸わかりで……返事に困りましたから………」と言う
「一生はな、力哉に別れを切り出されたんだよ!
近い内に力哉は飛鳥井の家を出て行く気だった…」
聡一郎は驚いた顔をして「え………何があったんですか?」と問い掛けた
「戸浪の一族は後継者となる者を選ぶと、後継者と同じ血を持つ兄弟は短命とされているんだよ
それは後継者争いを由としない神祖 海神が戸浪に敷いた決め事なんだよ!
で、例外に漏れず、力哉は癌が見付かった
イギリスに行く前には再検査の結果が出ていたそうだ
で、イギリスで再検査してステージ2が確定したから、別れを切り出したそうだ!」
と話す
それを聞いていた竜馬が
「あ~安西力哉はステージ2と診断され!早目に入院を勧められていたけど、帰国するって聞かないから、倭の国へ帰国したら入院させてよね!とオリヴァーに言われてるんだよ!」と話す
聡一郎は「ステージ2………烈ならそんなの治療してさっさと生きる算段着けなさいよ!とか言いそうだね!」と笑う
康太は「すげぇな聡一郎、あんで烈の謂う事が解るんだよ?」と謂う
榊原は「実際、烈は『ステージ2程度でこの世が終わると悲観してんじゃないわよ!とボクが言ってたと伝えといてね!』と言ってましたからね!」と笑って謂う
聡一郎は「烈………ですからね!本当にお節介な所は母親似ですね!」と謂い笑う
お節介で榊原は一番伝えねばならない事を思い出して
「あ、忘れてました!
手続きが終わりましたら、飛鳥井に赤ちゃんがやって来ます!」と告げた
康太も「あ~そうだった!すまねぇ忘れてたわ!」と謂う
慎一は「熱い時間に突入すれば、忘れちゃいますから仕方がないです!」とボヤく
玲香が「慎一、主も熱い時間を共に出来そうなおなごはおらぬのか?」と問い掛ける
慎一は「俺は結婚向きな男じゃないので……」と答えた
それはないだろ?………と想いつつ玲香は話題を変えた
玲香は「赤ちゃん、何ヶ月位なのじゃ?」と問い掛けた
榊原は「何ヶ月………なんですか?」と今更なゴラに思い康太を見た
康太は「………何時生まれたのか?生まれてから育てられぬ子がどうやって生きて来たか?
全く解らねぇけど、烈の子だ!」と知らせる
玲香は「普通………育てられぬ子は………生きられぬぞ?」とボヤく
響と奏は「「しょーでもにゃいよ!」」と謂う
康太は「この子達は産み落とされ何ヶ月も育てられずに……生き長らえて来たかんな!
そうでもないぜ!」と謂う
それは………人の領域を超えた存在ではないか………と思いつつ玲香は受け入れるのだった
玲香は「烈は小学校5年で既に子持ちなのじゃな!」と謂う
レイは「ぼくも、れつにょこ!」と笑顔で言う
京香は「そうじゃな、レイは烈の大切な子じゃからな!」と謂う
レイは嬉しそうに笑った
そんな楽しげな家族の会話を阿賀屋と紫園は見守る様に見ていた
immenseとは計り知れない と謂う意味を持つ
【BigWmrmholo.caterpillar.bee.snake.Godzilla 】
(巨大時空虫、巨大毛虫、巨大蜂、巨大蛇、ゴジラ)等である
その頃 烈は東京の秋葉原から少し離れた、最寄りの駅からも遠く、開発から見放された廃墟バリのビルが建ち並ぶ、築年数70年はとうに行ってる様なビルの前に立っていた
ここら一帯は開発する予定で地上げ屋が買い占めた区域だったが………バブルが弾けて資金難になり開発が頓挫して……今は手も付けられてない区域だった
廃ビルと外国人が無断で住み始めたり、犯罪の温床になりつつある危険な区域だとされ、良識ある人間は絶対に近寄らないでいた
寂れて廃れて忘れ去られた区画は、街灯さえ薄暗く……闇は深かった
開発地域の建物は総て新しく建て替えられ、秋葉原として生まれ変わっていた
が、まだまだ繁華街を外れたら、取り残された様な建物が幾つも立ち並んでいたりした
持ち主は次々と変わり書類上の持ち主が入れ替わる再開発で儲けようとする地上げ屋は未だに存在していた
まぁ過去の様に地上げ屋も動けずにはいた
規制も法律も厳しくなり、ネットも盛んになった社会では、暴挙に出て力付くで追い出す行為は逆に致命的になるしかないから………不良債権の回収も難しく成りつつある
烈は古びたビルを眺め
「このビルなのね………」と呟いた
「もう向こうは俺等が来てるの知ってるだろ?
何せ【眼】が所々配置されてるから、向こうからしたら鴨が葱を背負って来てるぞ!的に喜んでるだろうな!」
「ならさっさと行ってケリつけましょうか!」と烈は言う
弥勒も「だな!」と謂い天を見上げた
天空には十二天が円陣を組んでビルを取り囲むように浮かんでいた
そしてマサカリを担いで何故か神威もいた
「此処いら一帯、築年数が古いビルの倒壊と謂う事で良いのよね?唐ちゃん?」
と声を掛ける
唐沢達率いる内閣調査室の唐沢班総動員でここら一帯の住民の避難をさせていた
と言っても……不法占拠的な存在だから把握はされて無くて……朝からビルを一つ一つノックして避難勧告をしていたのだった
古い水道管の亀裂が発見され、爆発の恐れあり!と知らせて、その区画へ入る道路も閉鎖した
維弦は「閣下からも此処いら一帯は無法地帯と成り果て、外国人の潜伏先となり、最近では犯罪の温床と成りつつあるので、ここいら辺で【お掃除】が出来るなら好機だと言われてますから!」と伝える
「なら那智ちゃんにお仕事させようかしら?」と謂う
「宮瀬建設ですね!
飛鳥井やゼネコン5社からも(宮瀬 東雲 梓馬 家永 村中)入札させて共同体(JV)を組み込み決めるしかないでしょう!」
「それに飛鳥井入れなくて大丈夫よ!
東京に支社ないから、入れるなら施工のほうにしてくれるなら嬉しいかも!」
「施工は東京に支社あるのですか?」
「支社はないけど、東京、神奈川、千葉、静岡までは仕事請け負ってる届けを出してるからね
請けられるのよ!」
と呑気にそんな話をしてると、向こうから黒いジャガーが出て来て威嚇を始めた
烈は漆黒のジャガーを目にして
「やはり傀儡に落ち果てたか………」と呟いた
烈の横にクー ルー スーとトキが並ぶと漆黒のジャガーは距離を取った
トキはルーン語で何やら唱え漆黒のジャガーを跳ね飛ばし、入り口を守った
その間に烈は弥勒と共にビルの中へと入って行った
弥勒は「何階にいるんだ?このビル古臭い癖に結構部屋数あるよな?」とボヤきつつ階段を上がる
烈は「予想付かないから唐ちゃん、維弦、一つずつノックして出ないなら鍵を銃で破壊して中へと入って確かめるしかないわよ!」と言いつつピッキングの道具を手にしていた
維弦は「あの〜烈さん」と声を掛ける
「何?」
「その手にした器具は何なんですか?」
「あ~此れねピッキングの道具よ!
カードキーだったら回線ごと乗っ取ってロックを一斉に解除とか容易いけど、このビル古そうだからね!」
「ピッキング………出来るのですか?」
「そりゃもうプロ級よ!
前世の宗右衛門は鍵屋も持っていたからね
どんな施錠も開けられないのはない!と豪語していたのよ!
でも今世は鍵屋潰れてて………一族の奴が道具は菩提寺で保管してると言ったから取って来たのよ!」
「因みに電子ロックやカードキーも解除出来るのですか?」
「それはボクはハッカーじゃないから時間は掛かるわね!
母ぁーさん辺りなら楽勝なんじゃない?
ボクがやるなら回線ごと把握して………って方からロックを解除強制的に解除させるのよ」
と言いつつ鍵に道具を差し込み簡単に開けてしまった
開いたドアを開けて唐沢達の班員は銃を持ち中へ突入する
不法占拠してる者は即座に警察に引き渡す事になっていた
其処は無人で蜘蛛の巣が張ってる部屋の方が多かった
全ての部屋のドアを開けて中を確かめる
ちらほらと薬物売買の場に使われていたり、売春宿に使われていたり………真っ最中で合体中の者もいた
其れ等を警察に引き渡して処理をして行く
それが終わると階段を上がり2階へ向かう
2階の踊り場から上を見上げて烈は足を止めた
「あ~侵入者のトラップ張ってあるわね!」
弥勒は「だろうな、他のビルは確かめて何もなかった
でもこのビルは四方に【眼】が配置してあったからな!」とボヤく
烈は「耳栓するのよ!」と謂うと皆が耳栓をした
烈が「トキたん!」と言うと、トキがキィィィィィ!と超音波に近い声で叫んだ
ドアや窓がビンビン震え………
天井から虫がボトボト落ちて来た
「また時空虫いるじゃない!」とボヤく
弥勒は「んなのは閻魔に頼んだ廃棄場へ落としてやればよいでないか!」と謂う
弥勒はもしやの時空虫の対処として、溶岩のマグマが渦巻く溶岩池に虫を落とすと決めていた
多分………ドロドロに溶けてしまうと踏んで、落とすと決めたのだった
其れでも生きているならば、即座に皇帝閻魔に出て貰い焼き尽くす算段をして乗り込んで来たのだった
烈は溶岩池へと堕ちる魔法陣を出して、時空虫を総て落とした
全ての部屋を確認してまた上へと上がる
一階ずつ上がるにつれ、嫌がらせは度を越して行く
時空虫の次は、冥府にいる巨大毛虫
烈は「あ~ひょっとしてボクが虫嫌いだと思ってるのかしら?」とボヤく
弥勒は「康太は虫が嫌いだから、だろ!」と謂う
「まぁ毛虫は嫌ね、でもボク虫はね、虫対策もバッチリとして、殺虫剤を用意して来てるのよ!」
と楽しそうに呟きクーに時空に用意させた殺虫剤を取らせると噴射した
すると巨大毛虫は色を悪くして………ウネウネうねり………毒針を飛ばした
烈はバリヤを張り、毒針を弾き飛ばした
するとその毒針が毛虫に当たると………毛虫は死に絶えた
「あら、自分の毒で死ぬなんて………」
と言い巨大毛虫の毒針を引っこ抜くと、ウヨウヨといる巨大毛虫に投げ飛ばした
ブスッと刺さると………巨大毛虫は死に絶えた
「良さげな針ね!」と言うと、サコッシュバッグからビニール手袋を取り出すと、烈は巨大毛虫の針を抜き取り採取して袋に入れクーに渡した
クーは嫌な顔をして袋を受け取ると時空を開き中へ押し込んだ
巨大毛虫の下に魔法陣を出して中へ総て落として消し去った
そして部屋を鍵を開けて確かめる
見るからにハルクばりのムキムキな男が一人……【見張り】をしていた
見張りを置いてわざわざ監視を徹底にする
明らかに何か隠してますよ!と言ってる様なモノではないか……
ハルクばりの男は侵入者に気付き、手を振り上げると壁を殴るバラバラと崩壊した
「え?嘘………あんなハルクバリの奴どう闘ったら良いのよ〜!」と叫んだ
弥勒は「ちょっ!バカ!相手がこっち向くやんか!」と烈を止めた
唐沢達は即座に逃げて壁に隠れた
烈は魔法陣を出してハルクバリの男を無間地獄へ落とした
そしていなくなったのを確認して部屋を開けた
部屋を開けると、極道っぽい男達達が数人、痩せ細った男達が数人囚われていた
女達は四隅に集まり震えていた
極道っぽい男達は、烈達を見て警戒して
「何をしに来た!俺達を殺しに来たのか!」と叫んだ
「え!殺しになんて来てないわよ!」とボヤいた
極道っぽい奴は「なら〜お前等は誰なんだよ?」と、凄む
「儂は飛鳥井宗右衛門じゃ!」
と烈は敢えて嗄れた声で告げた
極道っぽい奴等の間でも、飛鳥井宗右衛門には手は出すな………と有名だったから男達は顔を青褪めさせ
「それは失礼を!我等は桐生会、幹部の者だ!
事務所にいたのに突然、何をされたかは解らぬが………突然……意識を失わされ、気付いたら此処に閉じ込められていた!」と告げた
「え!腕力でも負けそうにないのに?
飛び道具出すなら無敵だろうに………不意を突かれちゃったのね」と問い掛けた
極道っぽい奴は「腕力やチャカを出せば負けはしない!でも事務所にいた時に何をされたのか?
解らぬが………不意を突かれ意識がなくなって気付いたらこの部屋に監禁されていた」と話す
烈は「貴方達が邪魔だったから消したい奴の仕業しかないじゃない!
でも復讐は辞めなさい!血で血を洗う抗争に明日なんて来ないわよ!
今は体を元に戻す事だけ考えなさい!」と告げた
唐沢は極道達の前に出て
「此れより保護します!
この地は………崩壊し跡形もなくなります!
なのでお嫌でしょうが、警察と救急車がくるので御一緒にお願いします!
犯罪を犯していないのであれば、軽い調書を取った後に解放します!」と告げた
極道達をそれを納得して受け入れた
直ぐ様 警察を呼び極道っぽい人等は連れて逝かれた
その後只管鍵を開け、フロアの全ての部屋を確かめ
「まぁ此れ位で良いわ!」と言い、また一階登る
巨大スズメバチがブ~ン ブ~ンと羽音を立ててると………流石に上るのを少し止めた
「次は蜂なのね!」
と烈は手を差し出すと、クーは筒状のを烈に渡した
「唐ちゃん、此れに火を点けたら、蜂達の下に投げて!」と言う
唐沢は筒状のモノを受け取ると、導火線を探し、少し持ち上げて火を点けた
すると、辺りは煙幕で包まれ前が見えなくなった
烈は手前の空いてる部屋に入り込み、ドアを閉め結界を張った…………
暫くすると扉に何やらドスンッドスンッと体当たりして来た
唐沢は「こんなんで………犯人見つけられるのかよ………」とあまりの怖さにボヤく
「神経毒混ぜたから、どんな生き物だって、もうじき死ぬから待つのよ!」
維弦は「因みにどんな神経毒なんですか?」と問い掛けた
「えっとね魔界由来のモノだけどね
うっかり凶暴な熊獣が食べちゃったら死ぬ、とても甘い匂いを放つ毒マリ草
根っこに毒があるグロリンサ草と謂う植物とか、まぁ毒持ってる植物の葉や根っこ、乾燥させたりすり潰したり、より効能を上げて作ったのよ
まぁ人なら耳かき一杯で1秒要らないわ!」
維弦はこの子危険だ………危ないわ………と思った
やがて静かになると………外に出た
バタバタ倒れてる大蜂の針を器具を使い抜き取り、死体はトキが咥えて魔法陣に放り込んでいた
そして袋に針を抜いたのを入れてクーに渡すと、嫌そうな顔をしてまた時空に入れた
そしてまた一つ階段を上がる
次は巨大蛇がウヨウヨしていた
烈は「トキたんジャンプして振動与えて!」と謂うとトキはわざとドスドス歩いて振動を与えた
巨大蛇が一斉に威嚇する態勢をとると
「毘沙ぁ〜放つのよ!」と告げた
すると十二天は皆ペットボトルに何やら入れて持っていて、巨大蛇に目掛けてその液体を掛けた
酸っぱい匂いが辺りを包む
弥勒は「これ何よ?」と問い掛けた
「木酢よ、虫とか蛇とかいたら投げ付ける為に毘沙達に持って貰っていたのよ!
役に立って良かったわ!」
巨大蛇達はワラワラと逃げようとする
大蛇が魔法陣へ進む様に木酢を掛けて追いやる
巨大蛇はボトボトと魔法陣に吸い込まれ………消えて行った
それを見送り烈は「ふぅ~」と息を吐き出した
「本当なら牙の毒も調べたかったけど、危険だからね、諦めたわ!
しかもボク長いのとか嫌いだし!」
とボヤく
唐沢は「2階が時空虫、3階が巨大毛虫がで、4階が巨大スズメバチで、5階が巨大蛇………次は何なんだよ……
と、ボヤきつつ、フロア中の部屋を調べ、また一階上がる
6階に上がる中腹で……烈は足を止めた
唐沢が「どうしたんだよ?」と問い掛ける
烈は「コジラ………」と呟いた
唐沢は烈を抱えて持つと階段を下がった
「おい!烈!ゴジラになんて勝てねぇって!」と謂う
「クーたん、毘沙にカメラ渡して写メ撮らせて!」と言う
烈はサコッシュからデジカメを手にすると、クーに渡した
クーはデジカメを渡して貰い毘沙門天にデジカメを渡した
クーは「6階にゴジラいるって烈が言ってる!」と伝えた
毘沙門天は「え?ゴジラ??目視出来ねぇぞ?」と言いつつカメラでパシャパシャ6階を撮る
撮り終えるとデジカメを渡して貰い、クーは烈の傍に戻った
クーは烈にデジカメを渡すと映像を確かめた
毘沙門天のいる空に浮かんだ位置からは、ゴジラは映ってはいなかった
「ホロかしら?」と弥勒に問い掛けた
弥勒は「用心の為トキを戻せよ!」と言う
烈は「トキたん戻って!」と思念を送った
するとトキがやって来た
血が流れてて烈は「怪我したの?」と問い掛けた
「此れは儂の血じゃない
また来やがった漆黒のジャガーが襲って来たんだよ!
で、儂の羽根で突き刺した時に飛び散った血で穢れたモノだ!」
「お仕事終わったら洗ってあげるからね!
じぃさんの屋敷の湯殿で綺麗に洗ってあげるわ!」
「それは嬉しいな!」
とトキは喜んだ
「トキたんの眼から視てゴジラ………どんな風に映る?」と問い掛けた
トキは「ゴジラ?そんなの何処にもいないぞ!」と答えた
「唐ちゃんデジカメで撮って来て!」と唐沢にデジカメを渡した
唐沢は「俺、絶対に早死にする!」とボヤきデジカメを受け取り写真を撮った
そして烈に渡すと、烈はそれを確かめた
同時にトキもゴジラを確かめに行き
トキは「アレはホロだろ?外からは見えないが、この階段を使って来るなら見える細工がしてあるんだろ?どの道細工に騙されて来るなら、何かしらの仕掛けはあるだろ?」と言う
烈は唐沢が撮った場所を確かめていた
映像にはゴジラは映らない………
「神威、迷いの森へ御招待して差し上げて!」
と叫ぶと、神威はやっと出番が来たか、と烈の横にやって来た
マサカリ………何故に必要なのか?解らないけど、マサカリ担ぐとしっくりするのか?解らないけど………
狭い通路でマサカリは武器になるわよ!
と、烈は想う……まぁ口にはしないけど………
神威は楽しそうに霧を出すと、迷いの森から蔓を伸ばして、其処にいる者達を迷いの森へ引きずり込んだ
【うわぁぁぁぁぁ〜!】と叫び声が響く
静まり返ると、烈は階段を上がって様子を見に行った
相変わらずゴジラは出っぱなしになっていた
が、其れを操作する者がいないから、唯の映写にしかなってはいなかった
烈は「神威、マサカリでドア破壊しちゃって!」と言うと
神威は「おらよっと!」と言いマサカリでドアノブを崩壊して無理やりにドアを開けた
メキメキメキっ!と強い音でドアを無理矢理こじ開けるた
そして開いたドアをべし折ってドアを吹き飛ばした
6階の空気は変わっていた
6階に部屋などなく、だだっ広い空間に机が並べられていた
その中で男達が数十人待ち構えていた
その中央にいる男は卑下た笑いを浮かべ
「子供は回れ右して帰られよ!
一度は見逃してやる!
残るならば容赦などしない!」と告げた
烈はその言葉を放った男を視た
天を見上げその男を見て
「神取那智!」と名を呼んだ
神取那智と呼ばれた男は卑下た笑みを消して、眉を顰め
「何故に……私がソイツだと断定される?」と問い掛けた
「神取那智の星は既に掴んでるからよ!」
烈はそう言い天を指差した
すると指先に………赤黒く点滅する星が……指し示されていた
魔界の無間地獄に落とした周防や秋月の意識を閻魔の持つ浄瑠璃の鏡を使い神取那智と謂う人物を映し出し、星を詠み掴んだのだ
間違いなどない!
紛うことない神取那智の星だった
天を見た神取には………それが自分の星だと直ぐに解った
「星まで闇に染まった者に、人の世で生きる資格なんかないわよ!」
烈の言葉に神取は、そんな事など百も承知だ………と自嘲する
烈はずっと呪文を唱えていた
弥勒は烈を背中に隠す様に前に出ると
「闇に堕ち、人を辞めたか?神取那智よ!」と問い掛けた
神取は「弥勒院………高徳………」と呟いた
「莫迦親父と共に闇に堕ちた先に何があるのよ?」
「…………我等には大義がある!」
「そんな塵紙1枚ほどの価値もねぇモノが大義だとか笑えるぜ!」
弥勒は吐き捨てた
神取が動こうとする前に烈は
「神取那智!」と名を呼んだ!
烈の天高く掲げた手は力強く握り拳を握られ、プルプル震えていた
「銀河の塵になれ!」と叫ぶと
握り拳を強く握り潰した
すると……パリンッと音を立てて…………神取那智の星は………破壊された
唖然とする神取…………
「闇に堕ちた魂など存在する価値などない!」
宗右衛門はキッパリ宣言した
神威はマサカリを吹き飛ばした
ブンブン音を立てて、マサカリが宙を舞う
マサカリに気を取られている間に、弥勒は神取羅刹……今は飛鳥井蓮を捕縛して神の道を開き姿を消した
「海坊主に言っときなさいよ!
貴方のカタは倅が必ずや執ると!」
「そんな事は本人に言え!」
「だって、逃げ隠れしてる卑怯者じゃない
もういい加減、追いかけっこするのも疲れるのよ!
本人自ら出てらっしゃいよ!」
「…………お前は誰なんだ?
何故………この場に康太は出て来ないのだ?」
「ボクの名は飛鳥井烈、康太の子供の6男よ!」
神取は唖然として烈を見た
「だから同じ気を持つのか?
同じ手法で追い詰めようとするのか?」
「それは知らないわよ!
唯言えるのは、貴方達は何年も前から【ボク】をターゲットにして追いかけ回しているのよ!」
「ならば………あの方が苦しむ事など一つもなかったのだな……
あの方は毎晩泣いておられた…………倅が愛する者を手にかけねばならぬなんて……と泣いておられた……………のに!」
「ボクは飛鳥井康太の子よ!
ボクを亡くせば母は復讐の鬼と化すでしょうね!
嘆き悲しむ飛鳥井康太を目にすれば、弥勒院厳正の倅はより一層父を憎み敵を取ってくれるでしょうね!」
「ならば死ね!」
そう言い神取は襲い掛かって来た
傍にいた男達も一斉に襲い掛かって来た
そんな奴等を神威は真っ二つに切り刻んで行く
チャンスとばかりに現れた漆黒のジャガーはルーとスーとトキが相手になっていた
「そんな闇に染まった姿では、正しい事なんて何一つ視えて来なかったんでしょうね
貴方は弥勒院厳正を師と仰ぐのであれば、共に堕ちるんじゃなく止めるべきだったのよ!」
そう言い、烈は一歩ずつ神取へ近寄った
「挙げ句、共に闇に堕ち傀儡になるなんて………
神取の家から穢れを出してしまったから、神取の家は取り潰しになったわ!
一族郎党の道を潰してまで何がしたかったの?」
「………っ!!家が取り潰し……神取の一族は!」
どうなった?と聞けず……神取はギュッと握り拳を握り締めた
「さぁ行きなさい!
これ以上の生き恥を晒す前に、逝きなさい!」
烈はそう言い魔法陣を神取の足元に出した
直ぐ様、【其奴は逝かせぬ!】と地を這う声が響く
が、神取は魔法陣に吸い込まれる様に……姿を消した
声の主は烈の前に姿を現した
やっとの御対面だった
ドロドロと闇に染まり、闇を垂れ流す存在は………
もう…………救いようがなかった
「弥勒院厳正、既に体すら維持出来ない程に闇に染まったのね…………
其れとも………又コピーかしら?
本当に小賢しい事がお好きよね?」
闇を周りに撒き散らし「五月蝿いわ!この小童が!」と叫んだ
闇を振り撒き呪詛を吐きまくる
その姿は鴻池の狗神の様に………闇を垂れ流しにして……原型など留めてはいなかった
烈は垂れ流しにされた闇に皮膚を焼かれ……血を流していた
が、一歩も引かずに海坊主と名乗る奴を視ていた
「どう?弥勒?貴方の父親?」
烈は何もない空間に話し掛けた
弥勒は「いいや、それは俺の親父じゃねぇ!
鴻池の狗神の障り闇に染まった誰かに、親父の気を纏わせただけの傀儡…………
嫌、既に親父も傀儡だろうけど、コイツじゃねぇよ!」
とキッパリ言い切った
「ならば消えなさい!
粛清の最終章を放ったから……
今 貴方を突き刺す滅びの光が降り注ぐわ!」
「そんな呪文など聞いた事がないわ!
巫山戯た事を謂い脅してる気か?」
「この蒼い地球(ほし)にはね、創世記に忌日を記す存在の賢人と賢者が同席していたのよ!
其れは創造神とその場に立ち会った創世記の神しか解らない忌日だけどね!
そしてボクはそんな七賢人と八賢者の最後の弟子として総てを受け継ぐべく存在として、総ての呪文は託されているのよ!
まぁ穢れた貴方では何一つ解らないだろうけどね!」
と話している間に天空から眩い光が差し込み…………辺りを照らした
そして次の瞬間…………闇を垂れ流す弥勒院厳正の偽物は光に貫かれた…………
「な…………何を………」
男は何をされたのかも解らずにいた
「粛清の光に焼かれて消えておしまいなさい!」
光が焔の様にユラユラ燃え上がり闇を垂れ流す弥勒院厳正の偽物は悲鳴を上げた
「うわぁぁぁぁぁ!辞めろ!」
転がり、のたうち回り……藻掻き苦しむ
すると其処へ大天使ガブリエルが姿を現した
「創造神の扉から鋭い光が走ったので………その後を追って来ました…………
あの光を放ったのは………貴方ですか?烈?」
烈はガブリエルを見た
その瞳は冷たく…………感情など一片も抱いてない表情をしていた
「そうね、ボクが呼び寄せた光よ!
粛清の光は創造神が管理する光
それを少し拝借した、それだけよ!
貸す気がないなら光は来ないから、その時は他の手を考えようと思っていたけど、最後まで呪文を唱えられたから来るんだと確信した、それだけの事よ!」
意図も簡単に謂われガブリエルは言葉を失った
藻掻き苦しむ闇に染まった傀儡はドロドロと溶けて…………液体になっていた
烈は弥勒に「もういない?」と問いかけた
弥勒は辺りを見渡して
「もういねぇな!
やっと親父を討てると思ったのに………
何で中々出て来ねぇかな?」
とボヤいた
烈も「早く闇から解放して、愛した女の傍へ行かせてあげたかったけど仕方ないわね………」と謂う
その優しさに弥勒は烈を見た
「弥勒ゅ!気の長い闘いになるからね!」
「おう!解ってるさ!そんな事は!」と謂いニカッと笑った
大歳神は「さてと、此処らへん一帯をさら地にして良いんだよな?」と問い掛けた
唐沢は「ええ、構いません!頼みますね!」と謂う
大歳神は地底の根を暴れさせアスファルトを破って行く
ビルは倒壊して、飲み込まれ原子レベルまで解体されて、不要なものは吐き出され分別されていく
かなりの時間を要し、大歳神は廃ビルの並ぶ地域を取り壊した
地面もビルも総て更地にして鉄筋と廃鉄骨とアスファルトの欠片に分別して吐き出して行く
その地区一帯は規制線が張られ、出入りは出来なくなっていた
が、早く土地の開発に着手せねばならない状況なのに変わりはなかった
規制線の中の建物もアスファルトも総てが分別され、終わりを迎えた
神威は「終わったぞ唐沢!」と告げると、唐沢は「お疲れ様!」と労いの声をかけた
唐沢は「ならば我々はこの土地を即座に持ち主達と話し、不法に手に入れた者には放棄を促したりしねぇとならねぇから、戻るとするわ!」と謂う
烈は「また何かあったら連絡してね!」と謂うと唐沢達は駆け足で戻って行った
神威は「仕事終わったから儂は一足先に親父殿の家に行ってる事にするわ!
トキは血が乾いちまってるから洗っといてやるよ!」と言い神の道を開いて姿を消した
弥勒は「飲む気満々だな、十二天も既にいねぇし素戔鳴は大変だな!」とボヤく
烈は笑って「多分たけちゃん達もいるからでしょうね!」と謂う
弥勒は「なら俺達も魔界へ行くとするか?」と謂う
烈は「そうね!」と言いガブリエルに向き直ると
「弥勒ゅ、ボク達も魔界へ行くとしましょうか!丁度ガブたんいるし仕事してもらおうかしら?」と告げた
ガブリエルは「え?私ですか?何をするのです
」と問い掛けた
「ずっと頓挫してる禁足地の解放をやるのよ!
魔族も天使も浄化の道を辿り再生するのよ!
でないとこの先の闘いで戦力不足になるからね
ガブたんはそのままボクと魔界へ来なさいよ!」と告げた
ガブリエルは「天空神に言わなくても大丈夫ですか?」と呟いた
烈は笑って「そんなのは百も承知してるのよ!そんな事は!」と言い神の道を開いた
ガブリエルは「え?私……此処を通れますか?」と問い掛けた
「まぁ大丈夫じゃない?天使に何か出来る訳無いからね!」
と言いガブリエルを押し込んだ
烈が入ると弥勒は神の道を閉じた
そして崑崙山まで歩いて逝く
神の道の脇を固める髑髏達は【天使だ】と騒いだ
ガブリエルは癒しの光を髑髏達に放ち、慈愛に満ちた笑みを浮かべた
烈は「何か……ガブたん天使みたい………」と呟いた
弥勒は「ずっと天使だろうが!」とボヤく
「そうなんだけどね……ボクの前だとガブたんだから………」
「まぁ何だ、お仕事モードって事で大目に見ろや!」
「解ってるわよ………」
暫く歩き光が見えて来ると崑崙山へ出る事になった
出口にはフードを被った髑髏が待ち構えていた
フードを被った髑髏は烈を見て
「聖神、天使の癒しを受けて我等は数万年ぶりかに、安らぎを貰えた!
天使殿に仲間を代表して礼を謂う!」と言葉にした
ガブリエルは何と返していいか?言葉を失っていた
烈も「ガブたん有難うね!この人達は神の道を守護する者なのよ!
ずっとずーっとこの道を守護して、この先も守護して逝く人達なのよ!
そんな人達にガブたんは癒しの光で癒してくれたのね!そりゃこの人達だって癒される時があっても良いものね!」と言葉にした
フードを被った髑髏は
「でも天使殿のお陰で、役務が終わるのが早まった者もいる!
次が来るまでは………髑髏不足になりそうではあるがな!」と笑う
「良さげな髑髏を見繕ってあげるから待っててね!」
「それは助かる!
気を付けて逝かれよ!」と見送ってくれた
烈は崑崙山へ出ると、愛馬を呼ぼうか?と思っていた
すると八仙が姿を現し
「暫し待つがよい!
雅龍が来る手筈になっておる!」と告げた
「雅龍が来てくれるのね!
まぁ龍族も今龍不足だから仕方がないわね!」
龍不足…………弥勒は苦笑した
暫く待つと雅龍が迎えに来てくれた
烈と弥勒とガブリエルは雅龍に乗り込んだ
烈は「雅龍、悪いわね!でもお迎えに来てくれて助かったわ!ありがとうね!」と礼を言う
雅龍は「烈の為なら俺は何処へだって迎えに行くから!人の世で暮らす夏海はとても元気になった
そして烈から鍛え上げられ薙刀の腕も相当な腕前になって生き生きしてる………こんな風に笑ってる夏海を見られるのは烈のお陰だから!」と謂う
「龍族と謂うより魔界の悪習とも言える弱い者を淘汰するのが直ってないのよね
弱いのはイジメても大丈夫、なんて思ってる奴等は結構多いのよ!
ならば、そんな莫迦にして来た奴等と闘える力を身に着けて反撃に出なきゃね!
もう夏ちゃんは大丈夫よ、何処へ出したって投げ飛ばして反撃に出られるから!」
「………今の夏海ならば楽勝だろうな………
本当にありがとう………烈………」
「もう時期、夏ちゃんは孕むわ!
次で最期の出産となるわ!
鳳凰の撒き散らす禍の所為で孕むのは夏ちゃんも例外なくなのよ」
「それが定めならば………喜んで受け入れます!」
「龍族が果てへと繋がれて行く事こそが神祖の願いだからね
あの方を飛鳥井の轍に入れた以上は、ボクはその願いを叶えないとならない責任があるのよ
まぁ、総ては理の通り、鳳凰が誕生したら流れて逝く事となるわ!」
「俺は微力ながらですが、烈の役に立てる様に強くなるよ!」
「なら雅龍ちゃんは鷹司の道場へ通いなさい!
金龍が魔界へ戻ったら、人の世に来なさい!
そしたら本格的に覚えて貰うわ
そして其れを他の者に伝えて鍛え上げてくれると助かるわ!」
「承知した!
閻魔殿の屋敷でよいのだな?」
「ええ、助かるわ!」
「もう飛んでる間に着いてしまった!
近い内に人の世に逝くから、その時に詳しい話を聞かせてよ!」
「了解したわ!」
閻魔の邸宅の前に烈達を下ろすと、雅龍は帰って行った
八仙から連絡を受けていた閻魔が、表に出て烈を出迎えてくれた
烈は閻魔を見て「虫、溶けた?」と問い掛けた
「時空虫は何をやっても溶けません!
毛虫、スズメバチ、蛇は燃えてなくなりました
でも時空虫は皇帝閻魔殿を八仙に頼んで呼んで貰い燃やして貰いました!
わんさか積み上げた死体も皇帝閻魔が燃やして消し炭にしてくれたので、やっと片付きました」
「皇帝閻魔はもう帰ったの?」
「皇帝閻魔殿は素戔鳴殿の屋敷で寛いでます!」
「なら逝かなきゃ!
十二天も既にいるらしいから、酒蔵覗いてから逝かなきゃ!
ガブたん行くわよ!」
烈はアル君を呼んで、アル君が来るとガブリエルと共に愛馬に乗って走って行ってしまった
閻魔は弥勒を見て「我等も行くとするか!」と謂うと弥勒は「乗せてけよ!」と言った
「愛馬無いんですか?」
「愛馬などなくても困らぬ生活していたからな!」
惰眠を貪り、世情とは離れた暮らしをしていれば………愛馬など必要ではなかったろう………
「来世は役務に付かねばならないので、愛馬持って下さいね!」
「烈に見繕って貰うとするわ!」
その返答を聞き閻魔は
「貴方は炎帝命なんじゃなかったんですか?」
と問い掛けた
「俺は炎帝に恋焦がれていた
あの生命力に惹かれ傍にいたいと願った………
叶わぬ恋ならば………と思った時もある
触れたくて………自分のモノにしたくて………
卑怯な手を使い………触れた時もある
だが絶対に手に入らない存在だと思い知らされ………打ちのめされた………事もあった
俺は炎帝の為ならば何だって出来るし、してやる気で人の世に転生した
人の世に転生した俺は愚かな事にやはり、炎帝以外はどうでも良くてな…………烈をかなり軽視して過ごして来た事がある
が、彼奴が宗右衛門だと知ると、そう言う訳にも行かなくて、康太の子供として相手をして来た
が、草薙剣を出した時に凄く驚いたし………
何故お前がその剣を手にしてる!と怒りも覚えた
その後に素戔鳴に聞きに行き………全てを話して貰い………俺は態度を改めた
が、そんな事は百も承知だったさ、彼奴は!
だって百戦錬磨の宗右衛門だったんだからな!
親父の事があり、妻や子の事を見てなかった現実に打ちのめされた
そんな時、寄り添い軌道修正を掛けてくれた
そして覇道を結び………親父を討つ手助けをしてくれている
そんな俺は烈に救われて妻と子とのやり直しを始めたんだ
そして子を授かった
俺は………来世も彼奴を倅と想い生きて逝くと誓った!
そして烈が進むべき未来の手助けをすると決めたんだよ!
だから今は炎帝といるよりも烈といる方が時間は長いし、彼奴の腐れ縁の仲間とも仲良くさせて貰っているから毎日が楽しい!
だから炎帝とはその延長線上になっちまったんだよ!」
「君も黒龍や赤龍と同じ事を謂うのですね!」
閻魔はそう言い笑った
素戔鳴尊の屋敷に到着すると開け放たれた中庭から楽しげな笑い声が響いていた
その場に烈はいなくて閻魔は「あれ?烈は?」と問い掛けた
神威が「トキが汚れたから風呂に入ってたら、烈も来て風呂に一緒に入ったんだけど、儂は逆上せる故出て来たんだわ!
で、彼奴は今は湯殿で猫達と風呂に入ってる!
でももう少ししたら烈の鬼達が新酒を運び込んでくれるそうじゃから、上がられよ!」と謂う
屋敷の中は十二天達が寛ぎ飲んでいた
皇帝閻魔もその中で寛いでいた
閻魔と弥勒も上がり仲間に入る
暫くするとクーがやって来て
「烈は一旦久遠の所へ行って治療して来るわ!
ルーとスーが連れて行ったからな!」
と伝えた
弥勒は「穢れ受けたからな、酷いのか?」と問い掛けた
「酷いって言ったら酷いな………火傷みたいになってるからな!
ガブさんは残って烈を待ってて下さい!
夜明けと共に天国の門を解放すると創造神から通達が有りましたから、貴方は忌日を遺す者として見届けて下さい!との事です!」
クーの言葉を受けガブリエルは
「承知しました!」と答えた
伝言を伝えるとクーとトキは飲兵衛の仲間に入り飲み始めた
クロウ達が新酒を運び込むと建御雷神が
「聖神の新酒を一番に飲めるのか!何と言う光栄な事じゃ!」と感激して叫んでいた
クロウは「この酒は魔界酒が出回って暫く経つ今、酒を知った者達に飲ませる酒だと気合いを入れて造らせた酒です!」と詳細を話す
素戔鳴尊 建御雷神 弥勒 天魔戦争の覇者はその文言にコップを手にして待ち構えていた
宇迦之御魂神が樽の蓋を木槌で叩くと釈を手にして注ぎ始めた
建御雷神は注いで貰った酒を口にして、その辛さと本気の新酒の味に
「聖神の本気を感じる味じゃな!」と口にした
宇迦之御魂神は最初は皆に注いでやり、その後は瓶に注ぎ、テーブルに置いた
神威はマイボトルを烈にせがみ作って貰ったから、其れに酒を注ぎ飲んでいた
マイボトルには大歳神の【大】の字が刻んであった
無論良く来る毘沙門天には【び】とひらがなで刻んであった
そして素戔鳴尊にはじいさんの【じ】の字が!
宇迦之御魂神は小さい徳利サイズのマイボトルに【う】の字を刻んで貰いご機嫌で飲んでいた
閻魔は飲んでる皆に
「明日、禁足地の彷徨える魂は天に昇り再生の道を辿ります!」と伝えた
素戔鳴尊は驚愕の瞳を閻魔に向けた
「門が開かれると謂うのか?」と震える声で問い掛けた
「其れが魔界で世界会議を開いた代価ですから!
天界で魂の選別をした後、本人に何処へ転生したいか聞き取り、本人の望む世界へ転生させると約束されました!
天魔戦争で死した勇者も覇者も本人が望むなら魔界へ還ります
その前に聖神の面談がありますが、魔界人口も増えるので禁足地の解放は願ってもない事です!
まぁレイが海水を呼び込んだ地区は、永久に立ち入り禁止となりますが、それ以外は解放されます
そして聖神の指示で其処に戸籍を管理する、死者の魂のファイルを遺す管理区を建てます!
工場ももっと稼働出来る様に広げる予定です!」
と、皆に周知させる為に話す
素戔鳴尊は「そうか………そうか……あの地の者が………」と感無量な想いで戦慄いていた
建御雷神と弥勒がそっと盟友の肩を抱いた
そして宴会はそんな歓喜に満ちて………歯止めなどとうになくしていた
その頃 烈は久遠の病院にいた
突然病院に来た烈はパッと見るだけで解る怪我をしていた
久遠はそれを見るなり怒りを浮かべ
「やっと火傷みたいなの治りそうだったよな?」と言葉にした
烈は本当にこの人怖いわ……と思った
「先生ぇーごめん………」
「処置するぞ!」
そう言い久遠は烈を引き摺って検査をさせた
免疫に異常はなく、血液も然程の変動はなかった
が、やはり皮膚が弱いから焼け爛れた皮膚からは、血が流れ膿みたいなモノも流れていた
久遠は爛れて穢れた皮膚を一度処理して、新しく綺麗な皮膚を再生させる手法で処置を始める為に入院させたかった
今は皮膚科の医師とも連携してオペとか出来る様になっていたから、処置をしたかった
が、烈は「家族には知らせないで!」と言った
久遠は「秘密裏で動いてるんだろ?なら知らせねぇよ!でも入院な!」と謂う
「やる事があるのよ、だから魔界へ戻らないと駄目なのよ!」
「それは今やらねぇと駄目な事なのか?」
「そうよ、ずっと忙しくて延期してたから、此れが最後のチャンスなのよ!
今のタイミングでなきゃ、この先災厄が起こったら天界は手が回らなくなるからね!
その前にやらなきゃならないのよ!」
「………」
止めてもコイツはやらねばならない事があるなら、大人しく入院なんてしねぇだろ!
ならば逝かせて、片付いた後に入院させて処置をするしか無いと思った
「ならば逝かせてやる!
が、終わったら即座に病院に来い!
其れが約束出来るなら、行かせてやる!」
と久遠が謂うとルーが
「総て終わったら俺達が烈を必ず連れて来るとする!」と言葉にした
スーも「わい等が担いでも連れて来るさかい、堪忍な!」と謝罪した
「ならば行け!」
と押し切られ行かせるしかないと思うのだった
コイツ…………んとに康太ソックリやんか!
久遠は心の中でボヤいた
処置をされた烈は神の道を開き魔界へと向かった
崑崙山へ出ると八仙がプカプカ浮いて待ち構えていた
「傷は?大丈夫なのかえ?」
「総て終わったら入院よ!
でも逝かないとだからね!」
八仙は頑固な子を見て苦笑して
「鳳凰を呼んでおいてやった
後少しで来るから待つがいい!」と告げた
暫く待つと鳳凰が迎えに来てくれた
「烈、お待たせ!」と言い乗せやすく低くなると、烈とルーとスーは鳳凰に乗り込んだ
「八仙、有難うね!」
「禁足地には………我等仙人も………少なからず被害に遭い………死に絶え今も呪文を唱えておるからのぉ………救われるのならば………救って欲しい思いもあるのじゃよ!」
「そうね、やっと皆 解放されるのね
長かったでしょうね、労り送り出してやりたいのよ!」
八仙は深々と頭を下げ烈を見送った
鳳凰は天高く飛ぶと素戔鳴尊の屋敷を目指した
鳳凰は「怪我してるのか?」と問い掛けた
「穢れた闇を飛ばしやがったからね、火傷みたいになってるのよ!」
「それでも………お前は母親と同じ様に止まる事なく逝くのだな………」
「そうね、そう言う風にしか生きられないからね
全て壊したかった魔界だけどね………今は明日を信じて生きて逝く者達と共に【明日】を信じて行きたいのよ!」
「俺も永らく続いた鳳凰の後継者問題に終止符を打ってくれたお前の為ならば………どんな協力も惜しみはしないと誓うよ!」
「ほーちゃんの奥さんは傷つき過ぎたのよ
もう何の心配もなく過ごして欲しいわ
笑ってて欲しいわ、それが願いでもあるからね!」
「烈…………」
「明日はほーちゃんも禁足地に来て見届けてね!」
「あぁ、解ってる!」
話しをしてると素戔鳴尊の屋敷に到着し、鳳凰は烈を下ろすと帰って行った
烈は中庭に出て部屋に入ると………其処には既に飲兵衛の巣窟になっていた
そして部屋の中に兵藤の姿を見ると
「あれ?何で兵藤きゅん?」と問い掛けた
兵藤は烈に言われ振り向くと
「輪廻転生は朱雀が務めだかんな!
ちゃんと俺も見届けぇねぇとな!
それよりもお前、怪我してるんだって?」と心配して問い掛けた
「偽海坊主に穢れを放たれたからね
それより弥勒ゅ、どうだった?神取羅刹は?」
弥勒は烈の傍に寄ると
「飛鳥井蓮は頭までは弄られてはいなかった
が、妻子を人質に取られてて謂う事を聞くしかなかったってのもあり、闇に操られ仕方なく動いていた!
今は釈迦の家の前の池に浸けてある!
闇を抜くのに半端じゃねぇ時間が要るだろうからな!」と答えた
「あ、釈迦の家の前の池、レイたんが世界樹から直接引いていたわね!
やっぱ闇をも吹き飛ばす池が良い!って言って来たから、母ぁーさんとレイたんと共に引いて来たのよね
そりゃ闇には一番効くわね!」
「まぁ闇を抜いてから考えれば良いだろ!」
「そうね、それで良いわ!」
「明日の朝は見届ける!
それが………我等 天魔戦争を闘った者の務めだからな!」
「そしたら貴方達も少しは肩の荷を下ろすと良いのよ!
永久に続く贖罪などさっさと下ろして、新しい荷を背負いなさいよ!」
「新しい荷?それはどんな荷物なんだよ?」
「魔界の為に生きる死命よ!
魔界で生きる者総てに責任を負わせ、ルールを敷く!
そのルールの上に法律と規律を叩き込む為に、骨身を削り指導して逝く荷物よ!」
「そんなの喜んで背負ってやるさ!
俺は来世は魔界へ還る、そしたら惰眠を貪るなんて無駄な過ごし方なんて出来ねぇって覚悟してるからな!」
弥勒はそう言い笑い飛ばした
ガブリエルは烈が戻って来たのを知ると、烈の前にやって来て
「天空神から預かって来ました!」と言いエンジェルリングを烈の頭の上に乗せた
するとエンジェルリングは烈の体内にスーッと吸い込まれる様に消えた
「狗神の穢れで破壊されてしまったからね………」
と言い烈はエンジェルリングを出して嬉しそうに呟いた
「天空神は今度のエンジェルリングは闇の穢れで破壊しない様に改良した、との事です
まさか邪教程度の闇の穢れで破裂してしまうとは……創造神でさえ想像していなかったみたいです!」
「この世に幾つの邪教があると思っているのよ!
そんなの想像なんて出来なくて当たり前なのよ!
しかも令和の御時世に狗神放つ奴なんて滅多といないわよ!
そんな邪教も廃れて逝く一方なのに、其れでも根強く遺るのは、消せない力が働いているからなのよね!」
「私も完璧に穢れを消すまでに時間が要しました
天空神は烈の穢れを手に入れて、賢人と賢者に依頼してより闇に染まり難い細工が出来ないか?
相談された様です、其れで出来たのがそのエンジェルリングです!
天界にいる天使達は皆、そのエンジェルリングに変更しました!
天使だとて何時何時 闇に染まるか解らない
そしたら闇堕ちは避けねばならない!
との事で総て変更したのです!」
「ねぇガブたん、創造神や天空神には既に話してあるけど、天へ上がる死者の魂は記憶や能力はそのまま、誓約の誓いを立てさせて【聖戦士】としての位置を与えると話をしたのよ!」
「聖戦士?其れはどんな立ち位置に値する存在となるのですか?」
「あの者達は天魔戦争が終わっても自分達の【大義】の為に闘い続け、幾度も死して………それでも報われぬ魂は闘い続けた
素戔鳴尊は天魔戦争で死した彼らの為に、日夜闘いその魂を昇華させて来た
でもそんなのは一握りの死者でしかない
殆どの死者は未だ天魔戦争の【大義】の為に闘い続けているのよ!」
「彼等は………ひょっとして天魔戦争が終わったのを知らないのですか?」
ガブリエルは闘いが終わっても今も尚闘う者達は……闘いが終わったのを知らないのだろうか?と考えた
だから敢えて問い掛けた
が、烈の言葉は現実を突き付けた
「天魔戦争が終わった事なんて謂うのは、とうの昔に知ってるわよ!
でも彼等の魂は禁足地に留められ、日夜闘う枷を背負わされた
罪深い闘いからは何も生まない事を思い知らせる為に、あの人達は己の仲間や親を思い、死命を貫く為に闘い続けているのよ!
我が祖父 素戔鳴尊はそんな彼等の為に幾度死にそうになろうとも、天魔戦争の責任を感じて闘い続けた
そして禍根も想いも総て叩き潰してやったのよ
それで転生した魂も少なからずいる!
でも今でも禁足地には天界 魔界の両者数千万が残り戦っているのよ
まぁ数万が数千に減ってる分には、我が祖父の頑張りが解るんじゃないかしら?」
ガブリエルは言葉もなかった
「その中には仙人も賢者や賢人も……魔導師や魔術師も少なからずいるのよ!
再生の道を辿り次は聖戦士として技術と知識と知恵を与えて貰わなきゃ!」
「それはあくまでも………本人が望めば………と謂う事ですか?」
「そうよ、転生したくないならば、禍根も残さず消えれば良い!
人になりたいなら人に、動物や妖精や他のモノになりたいならば、望むモノになれば良い!
本人が望む明日を手に入れさせてあげる
其れでも天界や魔界を望むならば、その者達は【聖戦士】として正しく道を逝くモノとして生き様を見せれば良い!
其れだけの事よ!」
「何故………聖戦士………なのですか?」
「天魔戦争から幾億年経っていると思ってるのよ
彼等は日夜闘い、闘う為に存在して来た
そんは彼等は転生しても大義が必要なのよ
存在するには大義と義務が必要なのよ
だから聖戦士として、今度は正義の道に生き、正義の為に戦う使者となる【大義】は必要になるのよ!」
「違反した者は?」
「それは天空神が頑張ってくれるでしょ?
道を外れたら………消滅する
我等だって道を外れたら狩られるのよ!
バランサーや監視者が道を外れてると判断したら、即刻消滅させられる
それは天使も神も等しく同じ条件で、存在させられてるのよ!
我が母 皇帝炎帝がこの蒼い地球(ほし)を原始の書で焼いた時から、其れは始まっているのよ!
蒼い焔に焼かれて強制的に我等は同一条件で存在させられている事になっているのよ!
だからこそ、力が蘇り原始の力を取り戻している
が、ルール違反してそれを利用しようとしたならば、それはもう【監視者】に消されるしかない
因みに ボクはバランサーでも監視者でもないからね!
これ以上の役務は御免なのよ!」
ガブリエルは「まぁバランサーは解りますが、監視者は解りません…………」とボヤいた
クーが「我等は元は銀河系宇宙を監視する存在する【モノ】だった
姿カタチのない存在
心も思考もない存在
我等は監視する為だけに日夜存在した【モノ】ではあるが、監視者ではないな!」と答えた
ルーもスーも頷いていた
ルーは「皇帝炎帝はんじゃないんですか?」と問い掛けた
烈は「…………母ぁーさんがそんな面倒な事すると思う?面倒なら燃やそう!跡形もなく燃やそう!さぁ焼いちまおう!とする奴が監視者したら駄目でしょが!」とボヤいた
兵藤は爆笑した
「確かに!最近の康太は面倒臭がりに拍車掛かってるしな!」と謂う
大歳神は「誰が何をやろうとも、我等は我等のやる事をやる!それだけじゃろ!」と叫んだ
建御雷神と弥勒は、其処まで父親にソックリなのね………と苦笑した
素戔鳴尊も「そうじゃ!我等は死命を完遂するだけじゃ!誰が何の役職持っておろうか、働かぬならば淘汰され消されてしまえばいい!
それだけの事じゃ!」と謂う
同じ顔して、同じ事を言う
「「さぁ飲むぞ!酒が不味くなる話はおしまいじゃ!」」
後はもう飲兵衛は楽しげに飲み始めた
烈は宇迦之御魂神が用意してくれたご飯を食べていた
「うーちゃん美味しいわ!」
「それ大量に作って市場に売ろうかな?」
「良いわね!
うーちゃん、ちゃんとその分の給金加算して貰うのよ!」
宇迦之御魂神は笑って
「食える分だけで良いんだよ!」と謂う
「うーちゃんは欲がないわね!」
「それは烈の方だろ?」
「ボクまだ魔界の住人じゃないから!」
「魔界の住人になっても、君は変わらないだろ?」
「そーね、うーちゃん良く知ってるわね!」
烈はそう言い笑った
兵藤はそんな烈を黙って見ていた
が、不意に烈が「兵藤きゅん!」と話し掛けて来て「何だ?烈?」と問い掛けた
「何故いるの?
王女の教育終わったの?」
「嫌々、高貴な方の教育はそんなに簡単には終わらねぇってば!
んとに庶民の生活知らねぇでやんの!」
「…………なら専門家を派遣するわ!
だから貴方は飛鳥井へ戻って構わないわ!
少し危険だったから遠ざけただけだしね!」
烈の言葉に兵藤は「危険?」と問い掛けた
その問いにはスルーして答えなかった
ともだちにシェアしよう!

