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第42話 天へゐっ゙𛃺
その問はスルーして何も答えなかった
こんな時の烈は口を割らないのは母親譲りだと痛感する
「ボク、薬飲んだら寝るわね!
明日は朝早く禁足地に来てね!」
と言い早目に部屋へ引き揚げた
それを見送り兵藤は「烈は一体何をしてるんだよ?」と呟いた
其れには誰も答える者はいなかった………
弥勒は「さぁ飲むぞ!貴史!辛気せえ顔するんじゃねぇよ!」と言い酒を注ぐ
「まぁ気にしても仕方ねぇしな!」
と兵藤は酒を飲み始めた
早朝 烈は禁足地に立っていた
禁足地では今も天使と魔界の亡者となった者が闘っていた
まだ天と地が切り離されていない、神と人が共存していた時代に始まった闘いは…………
まだ終わってはいなかった
【大義】を掲げて闘う
もう天魔戦争も終わった事は知っている
この闘いが無益な事だとも知っている
が、大地を血で穢した者達に架せられた罪
永久(とこしえ)の時間を闘って過ごさねばならない………罰
血を流し………死に絶え……それでも朝になれば………天魔戦争は始まる
永遠に続く悪夢だ
そんな中、素戔鳴尊はそんな闘うしかない者達の為に骨身を削り、昇華する為だけに闘いに身を投じて来たのだった
『死を認めろ
罪を認めろ
明日を夢見みろ』
そう訴えて、亡者と闘い続けた
そして全てを受け入れ………贖罪の闘いをした者だけが………果てへと旅立てた
創造神はそんな不毛な事をする素戔鳴尊の真意は何処にあるのか?
理解出ずに静観を決め込んでいた
許して天国の門を開くのは容易い
が、闘いに身を投じた者をそんなに簡単に許しはしない!
悔いて苦悩の日々を刻むが良い
終わらぬ闘いに身を投じ、如何に愚かな闘いをしたのか?解るがよい!
そう想い…………捨てて置いて数億年………
天と地が分けられて………
天使は天界、魔界や死者を司る世界は幾多と出来た
冥府は誰も入り込めぬ、地の奥深くに存在し中立を護る存在となった
神々は各地に散らばり死命を与えて
人の世だけの世界を創り、監視させる死命を与え
天魔戦争など忘れ去られてしまっても…………
素戔鳴尊は闘う事を止めなかった
まるでそれが死命だと言わんばかりに………続けていた
そろそろケリを着けねば''…………と思っていた
そんな頃 ニブルヘイムが転生の道を辿ったと伝え聞いた
魂に細工されてて一時は消滅の危機だったが……
無事産まれ………産まれた先は飛鳥井の一族の外と謂うアクシデントがあり、更に虐待もされていた
が、飛鳥井宗右衛門の手により軌道修正を掛けられた
とガブリエルから伝えられた
ニブルヘイムを監視してるとニブルヘイムの横に何時も一緒にいる存在がある
と監視から報告を受けた
どんな存在なんだ?と想っていたら…
ガブリエルから烈の報告を受ける様になった
で、既視感を覚える子は………今世の炎帝の子だと言う
そしてその子は……素戔鳴尊の孫だと言う
なんの因果か………
創造神はその縁に………覚悟を決めたのだ
そして今日、やっとやっと………
禁足地に彷徨う亡者達が天国の門を潜り上へ上がれる事が出来るのだ
禁足地に朱雀と鳳凰が立ち会いの為にやって来た
天魔戦争の覇者もやって来た
そして魔族に見守られ【その時】を待っていた
烈は純白の燕尾服に大礼を着けていた
閻魔も正装でその場にいた
静まり返った禁足地は…………緊張に包まれていた
すると其処へ「烈、お疲れ!これが終わったら久遠の所へ行くぞ!」と声が掛かった
振り向くと康太と榊原……嫌、正装をしている炎帝と青龍が立っていた
烈は「母ぁーさん!父ぉーさん!」と両親の姿に喜び近寄った
康太は我が子を抱きしめて
「烈、怪我しやがってるぜ!って
久遠が怒って電話して来やがったからな!
取り敢えず内緒にはしといてやるが、親には伝える義務があるからな!と言ってたぜ!」
と謂う
それを聞き烈は「あのヤブ医者!」と毒づいた
すると「それは悪かったな!」と声がした
其処には久遠が立っていた
烈は母を見上げた
康太は笑って「怪我してる子いるかんな、やっぱ医者呼んどかねぇとな!」と笑って言った
烈は「う〜う〜う〜う〰️!」と唸った
兵藤は「止めとけ!おめぇじゃ勝てねぇって!」と執り成した
榊原は「貴史、何故君がいるんです?」とやはり問い掛けた
「俺は輪廻転生を司る神として、見届けねぇとならねぇと鳳凰に呼ばれたんだよ!」
「あ~鳳凰が呼んだのかよ?」
「まぁな、お前達は誰が呼んだのよ?」
「オレか?オレは大歳神が呼びに来たから来たんだよ!」
康太が謂うと榊原が
「『怪我してる子がおるぞ!
また穢れを受けて火傷してやがてるぞ!
見張っておかねぇとねらねぇから来いよ!』と呼ばれたんですよ!」っと説明
久遠は「これが終わったら入院して爛れて焼け焦げた皮膚は剥がして綺麗にする!」と告げた
烈は「これが終わったらね!」と約束した
閻魔が「烈、時間です!」と言うと閻魔の傍へと向かった
皇帝閻魔も天魔戦争の最中、戦いに身を投じた者として其処にいた
皇帝閻魔は「この罪は我らも背負わねばなるまい………」と呟いた
建御雷神も弥勒も素戔鳴尊も頷いていた
どうか…………もう柵を解かれ………楽になってください………と願う
今も尚闘う戦士に烈は天を指し示し
「時は来た!」と叫んだ
その声は神憑りな響きを孕み脳内で響き渡った
その声に………戦士達は動きを止めた
「もう闘うのは止めなさい!」と叫んだ
戦士達は何事が起きたのか?と、動きを止めて烈の方を見た
「今日、貴方達は天国の門を潜り、再生の道へ逝ける事が決まりました!」と告げる
戦士達の方へと歩み寄り、そう告げる
何時闘いが始まるやも知れぬ危険な均衡の中へ入るのは危険だった
が、烈は呆然とする戦士達に
「天国の門が開かれるので、進んで下さい!
愚かな意地と戦う意味を刻み付け、貴方達の望む果てに逝かせてあげます!
この先、この蒼い地球(ほし)は熾烈な闘いに突入するでしょう!
なので願うなら、貴方達は聖戦士として今度は正しき道を生きる覇者となり、闘って欲しいと想います!」
血に染まった戦士の亡霊が烈に問い掛ける
『我等は………罪深き存在…………我等は何も望まぬ何も期待などはせぬ…………』
「その背負うべき罪は今日限りとなります!
この前話したでしょう?」
烈は少し前に禁足地に素戔鳴尊と建御雷神と弥勒と共に来て説明しているのだ
『説明されても………我等には………それを受け入れる術もない………分からぬのだからな………』
「まぁそうでしょうね!
この後、貴方達の魂は球体となり天国の門を潜る事になります、なので少しずつ考えれば良いです!
貴方は許されるならば、何になりたい?
何をしたいか?
考えて想像して下さい!
そして己の指針になるべく想いを刻んで下さい!
無になりたいならば無に、生き物になりたいならば生き物に、正しき道へ行きたいならば、正しき道へ!
貴方達が望む果てへと導かれ逝く事が許されたのです!
だから考えなさい、そして答えを出すのよ
望むのよ、夢見るのよ、その果てにある自分を求めなさい!」
『望んでも………良いのか?』
「望まなきゃ、あなたが願う果てへは逝けないじゃない!」
戦士達は天を仰ぎ涙していた
『………また………会えるか?』
遥か昔 英雄と謂われた男がいた
武術に長け、人柄も人徳もあり皆に慕われた英雄がいた………
多分………この人はその英雄だと、一際大きくて頑丈な体を見て想う
「貴方が願えば会えるわよ!
また会いましょう!
そしてこの世紀末を共に闘ってくれたら嬉しいわ!」
その言葉が心に染み渡る……
無くしてしまった心だと思ったのに………
なんとも言えない想いに……亡霊となった今でも心は有るのだと………今は思えた
天空から"天国の門 開門”と声が響いた
するとその場は、眩い光が包み込んだ
大天使ガブリエルはその光の真ん中に立つと、剣を掲げた
「私は大天使ガブリエル!
天空神の指示に従い貴方達を天国の門へ導いて逝きます!」
と告げた
天魔戦争を闘っている戦士達は…………導きの光に包まれ、次々に球体になり浮かんだ
その数 数千体の球体は眩く光り
ガブリエルが「其れでは行きます!」と言い、剣を掲げ飛んで逝くと、球体もガブリエルの後を着いて次々に天高く浮かび上がった
烈は深々と頭を下げ敬意を示した
閻魔もその場にいた者達総てが謝意を伝え深々と頭を下げた
そして顔を上げると「またお会いしましょう!」と見送った
朱雀も飛び立ち、その者達の魂を見送る
ガブリエルと共に天に召される戦士達が
『ありがとう』
と微かな声で伝えて来た
烈はそれを受け止め、何時までも見送っていた
眩い光りが消えて……静寂が戻ると、其処は唯の空き地と化していた
やっと……やっと……救われるのね………
永きに渡る呪縛が解かれた魂は………何を望むのか?
それはその魂しか解らない………
だけどそれは安らかな時であって欲しいと、心から願う
閻魔は烈に「この後、どの様な工程を組んだら良いですかね?」と問い掛けた
「この地に慰霊碑を建立し、歴史博物館を建てる話はしたじゃない!
天魔戦争は過去の話じゃないわ!
この先始まる闘いの序章でしかない………
だから魔界は悲惨な歴史を風化させてはならない
死した者達の事を忘れてはならない!」
「慰霊碑は九曜神が請け負い仕事を始めてます
ならば歴史博物館の建立となりますか?」
「その前にこの地を浄化しないとならないのよ
ボクはちょっと人の世で怪我の治療して来るから、久遠先生ぇーの許可が出たら来るからね
其れまでゲートは封鎖したままにしておいて!」
「了解しました!」
閻魔が答えると烈は母に向き直った
「ボク少し入院の予定なのよ!」
康太は「あぁ、久遠に聞いてるから、お前は久遠と共に病院に行き入院して来いよ!
この地はオレと親父殿とで昇華の焔で焼いて、禍根も残さぬ程にピカピカにしといてやんよ!」と謂う
その後ろで皇帝閻魔は酷使させられるのか………と苦笑していた
時空虫焼いてまた一働きさせるのか………
本当にこの孫も我が子も楽にはしてくれないな!と笑う
兵藤が「なら俺が烈と久遠を連れて行くとする!」と申し出た
康太は「頼むな!」と謂うと兵藤に背を向けて閻魔と皇帝閻魔と話を始めた
兵藤は烈が正装を脱ぐのを待ち、着替え終わると神の道を開き、飛鳥井記念病院を目指した
烈は「どうしたの?元気ないわね
喧嘩でもしたの?」と兵藤に問い掛けた
兵藤は「あぁ、喧嘩した………」と答えた
兵藤のピリッとした気配が何かあったのを察した
「で、もう合いたくない程になったのかしら?」
「其れはないな!
価値観の相違は仕方ない………其れを解ってるから彼女は頑張るんだが………空回りしてる
イライラが募り………口喧嘩はした
でもそれも大切な絆を結ぶ為には必要だと俺も彼女も理解してるから、別れようとは思わねぇよ!」
「当たり前じゃない!生きてる過程が違うんだもの!そんなのは初歩で直撃すべき事案でしょ?」
「………なぁ彼女に庶民の生活知出来ると想うのか?」
「出来るでしょ?
でも其れは少し意識を変えなきゃ無理そうね!
ボク入院するから竜馬に彼女連れて越させてよ!
そしたら話してあげるわ!
そして兵藤きゅんも知らなきゃ!
皇族は成金の銭ゲバとは違い、礼節ある金持ちなのよ!だけどお金があると誘拐や略奪が横行して自由のない生活を送るしかないのよ
王女と知り合いになりたい奴なら5万といるわよ
そんな奴等の羨望の中身を置くのは兵藤きゅんが考えている以上に大変なのよ!
でも世間知らずは否めないから、金銭感覚を養って、常識を叩き込んで現実を教えて欲しかったのよ!恋の先に愛があり、愛の先には現実しか持ってないのよ!
生活は夢物語では暮らしてはいけない現実だからね!」
烈の手厳しい言葉に兵藤は「…………俺、少し焦ってたわ………」と呟いた
「焦りや焦燥は人の目を晦ましてしまうからね
時々、軌道修正掛けて、己の立ち位置を確認しなきゃね!」
「………そうなんだけど、それが出来る奴って中々いないってば………」
「だから躓くのよ、周りを見渡す余裕ないと詰むわよ!」
「烈………何かキツくない?」
「キツくもなるわよ!
彼女の護衛にどれだけの公的資金注ぎ込んでると思うのよ!
其れで挫折して帰ります!なんて言われたら国交まで危うくなるわよ!
正義ちゃん気絶するわよ!」
「大学……通えるのかよ?」
「通えるでしょ?
大学で護衛する女性のSPも来日して来るだろうし、大学側も受け入れ態勢は出来上がってるのよ
だからこその、常識や金銭感覚なのよ!
近付いて来て利用しようとする奴等だって出て来るかも知れないからね
お金の価値を知らないと搾り取られて大変な目に遭わされる事だってあるのよ!」
「お金は叩き込んた!
料理もその内覚えたいって言ってる!」
「イギリス歴代の女王様は料理上手で、夫には手料理食べさせたって有名だものね!
美緒たんの嫁教育なんかめちゃくそ大変だからね
頑張ってそれもクリアしてもらわなきゃ!」
「昔 すみれが受けてたヤツか?」
「そうよ、でも本格的な嫁教育の前に縁談ポシャったからね!」
「…………彼女………クリア出来るか?」
「出来るわよ、彼女は命懸けで貴方を愛してるんだから、やってくれるでしょ?」
そんな言い方は少し恥ずかしい………
話しをしてると飛鳥井記念病院の裏に出た
裏の通路のドアを開けて、病院の中へと入る
久遠は兵藤に「烈の入院の用意して来てくれ!
烈はこの後検査に入り、皮膚科の医者と共にオペの協議に入るからな!」と告げた
兵藤は「オペしねぇとならねぇ程なのかよ?」と問い掛けた
「焼け爛れているからな、一度綺麗にしねぇと痣になるんだよ!」と答えた
兵藤は「なら俺は入院の準備して来るとするわ!」と言い病院を後にした
烈は久遠と共に検査に向かい、そのまま入院した
烈を見送った康太と榊原はまだ禁足地にいた
皇帝閻魔は禁足地を眺め
「良くぞ、此処まで狭められましたね!」と言葉にした
広大な敷地を穢を受けた地として【禁足地】としたのだ
その報告は冥府に渡った皇帝閻魔の耳にも入っていた
永久にあの地は封印され、愚かな者達は永久に闘う罪を科した…………そう聞き魔界の半分は使えはしないだろう………と創造神は告げた
あの者達を戦わせたのは自分も………なのだ
愚かな闘いに身を投じたのは自分もなのだ
ならば私も………ルシファーと共に……
【罰して】下さい
と訴えた
が、冥府に渡った皇帝閻魔の所には………創造神の声は何も届けられはしなかった
ぶっちゃけ今世まで創造神の声すら忘れていたのだ
皇帝閻魔は「本当に腹立たしい!」とボヤいた
康太は「え?親父殿おこ?」と問い掛けた
「君には怒ってません
創造神の野郎に少しだけ腹立たしい想いを抱いてます!」
「あ~、オレなんて何時だって腹立ててるぜ!
オレの子を使いやがって!って何時だって腹立たしい想いしてる!」
「私は四半世紀………創造神の声なんて聞いてませんよ!」
「あ~創造神は神にも人にも絶望してたかんな!
天国の門すら閉じて声すら聞かせていなかった
天使ですら声すら聞いてなかった程だからな!」
「其処まで酷かったのですか……
そりゃ天使も好き放題しちゃっても………仕方ないですね………」
「だから烈とレイに更地にされちまったんじゃねぇかよ!
あそこ迄拗らせた天界じゃマトモな仕事すらしないわよ!って更地にしちまった
オレは創造神が止めるかと思ったが………止めなかったから………驚いた
魔界にいながら天界を更地にしちまったガキンチョを見張らねぇとならねぇオレの気持ち解る?親父殿………」
皇帝閻魔は笑い、親になった我が子を抱き締めた
「その想いならば、私は常にしていましたよ!
お前が親となり、苦悩を刻み、優しい母となり厳しい母となり子を育てているのが、烈を見れば解ります!
多少破天荒な所はありますが、君と伴侶殿ソックリの子は…………死した者達にまで慈悲を見せ天に還らせた………
私も………天魔戦争の闘いに身を投じた者として………この日が嬉しい!
君の息子には感謝しています!」
「烈は食えねぇモノは要らねぇよ!と言うぜ!」
康太は笑って告げた
皇帝閻魔は苦笑して
「そうでした!あの子は炎帝の屋敷の執事やメイド達さえも教育してクラウスにテキスト渡して徹底的に教育なさい!と言ってましたからね!
そして不味い野菜なら作るな!って肥料や土壌の改革までやって………冥府は何だか慌ただしくなって退屈しなくなりました!」
と告げた
康太は我が子を想い「アイツ冥府まで改革して上手いの食わして貰おうとしてるのかよ!」とボヤいた
閻魔が「さぁサクサク昇華して下さい!
私は烈の鬼達と共に酒蔵で酒を調達して、今宵は迎賓館でおもてなしするつもりですので、行きますね!後はお願いしますね!青龍!」と言い行ってしまった
神威は「今宵は迎賓館か………何か堅苦しそうだな………」とボヤいた
素戔鳴尊が「人数が多いからじゃろ?迎賓館には大宴会場もあるからな、そちらを使うのじゃろうて!」と楽しそうだった
やっと…………やっと、肩の荷が下ろせたのだ
幾千万の月日を掛けて闘いに身を投じ、正そうとした日々がやっと報われた想いだった
もう禁足地に武器の音はしない
ワラワラと闘い血を流す戦士はいない…………
素戔鳴尊は禁足地を眺め…………一礼すると背を向けて歩き出した
「さぁ狩りに逝くぞ倅よ!」
と息子を呼ぶ
今世は息子がいてくれる、孫もいてくれる!
そして仲間もいてくれる
建御雷神と弥勒は「「ならば儂(俺)等も!」」と言い着いて逝く
素戔鳴尊はその場にいた者達を禁足地から出してゲートを閉めた
昇華を邪魔されない様に………皆を還らせた
皇帝閻魔は禁足地の端へと移動した
炎帝も反対の端へと移動した
青龍は禁足地の中央に立った
青龍は禁足地のゲートに沿って氷の壁を創り、焔が外に逝かない様にした
炎帝は「親父殿、逝くぜ!」と謂うと皇帝閻魔は「あぁ、始めよう!」と言い焔を撒き散らした
皇帝閻魔は「創生の焔よ!この地を清め給え!」と焔を放った
炎帝は「原始の焔よ!この地に新しい魂を呼び起こせ!」と焔を放った
蒼い焔が禁足地を包み込み
紅蓮の焔が禁足地を焼き尽くす
2つの焔が合わさり紫色に禁足地は染まった
青龍はその焔の中に身を投じ、美しい焔を眺めていた
想いも、憎しみも、悲しみも、羨望も、すべての想いと残穢を焼き尽くし昇華する
声や悲鳴が大地から聞こえる
何時間、そうしていたのか?
かなりの長い時間を掛けて、大地は昇華されていた
声も悲鳴も聞こえなくなり、焔は鎮火しつつあった
炎帝はヘロヘロでその場に崩れ落ちた
青龍は妻の元へ駆け寄り、抱き締め
「お疲れ様でした!
きっと此処まで綺麗な地になったのならば、烈は喜びます!」と言葉を掛けた
「ならば烈がもっと喜ぶ地にしねぇとな!」
と声がして振り向くと大歳神が立っていた
大歳神は根っこを操り、その地に花を咲かせた
妖精も手伝い種を撒き、花を咲かせる
禁足地に色取り取りの花が咲いた
広大な敷地に噎せる程の花々が咲き誇り………風に揺れていた
康太はその光景を見て
「烈が喜ぶじゃねぇかよ!」と嬉しそうに言う
母の顔をした康太の姿だった
大歳神は「さぁ飲むぞ!」と愛馬を呼び寄せると、皇帝閻魔を乗せて行ってしまった!
康太と榊原は仕方なく愛馬を呼び寄せた
すると何故か………風馬と天馬と共に烈の馬とスィーツ兄弟がオマケで着いて来た
康太はアル君を撫でて「どうしたのよ?」と問い掛けた
アル君は康太を見上げて「烈、いないのだな…」と悲しそうに言う
「烈は少し治療に行ったからな……」
「そうか……乗って貰おうと来たのに………」
何だか悲しそうで……康太は
「うし!オレが乗ってやんよ!」と言った
アル君は嬉しそうに尻尾を振った
康太はアル君に乗り、榊原は風馬に乗った
そして空を飛び炎帝の自宅へと先に行き着替える
アル君とスィーツ兄弟はずーっと歌を歌い飛んでいた
榊原は「RODEOÑもアル君達が今も歌を歌ってると知れば嬉しいでしょうね!」と謂う
康太は「帰ったら伝えとこうぜ!」と嬉しそうに言う
康太と榊原は先に自宅へ行き、炎帝と青龍の衣装を脱いで、私服に着替えてから迎賓館へと向かった
そのまま人の世に還るつもりだから、着替えないと………大変な事になるからだ
あんな大層な衣装のまま人の世に還れるか!なのだ
当然 烈も素戔鳴尊の屋敷に正装を宇迦之御魂神に預けてジャージを着て帰ったのだった
迎賓館の地下へ降りると、其処は……飛鳥井の客間ばりの畳の部屋になっていた
其処へテーブルを置き宴会は始める
皇帝閻魔はご機嫌で飲兵衛の仲間入りをして、康太と榊原もその仲間に入り楽しく過ごした
その頃 烈は久遠と兵藤と共に飛鳥井記念病院へとやって来た
久遠は兵藤に「お前は入院の準備を頼むな!」と謂い、烈を引き摺り検査に向かってしまった
兵藤は取り敢えず慎一に連絡を入れた
ワンコールで出た慎一は「何かありましたか?」と問い掛けた
「烈の入院の準備をしねぇとならねぇ!
今どの家にいる?荷物を取りに行く!」
『病院の裏に戻りました!
なので準備をしておくので家に来て下さい!』
「了解!直ぐに行くわ!」
と言い電話を切った
裏の飛鳥井の家へと向かう
管理人室で不審なのがいないか確かめてから、飛鳥井の家へと向かう
インターフォンのボタンを押すと
『はい!』と謂う声がして直ぐに『兵藤君!今開けます!』と言う声がして解錠された
ドアを開け家の中へと入ると、よちよち歩ける位の男の子が二人が出迎えてくれた
兵藤は「誰?」と問い掛けた
男の子は「ひひき」「かなで」と答えた
あのウナギサイズの子が!!!と兵藤は響を抱き上げ「大きくなったな!」と言い下ろすと、次は奏を抱き上げた
「人の姿になれる様になったんだな!」
と兵藤は我が子の様に、二人の成長を喜んだ
慎一が姿を現して「烈は入院になるのですか?」と尋ねた
「あぁ、また穢れを受けて火傷して爛れてしまったらしくてな!
皮膚を綺麗にするオペをするそうだ!」
「そうですか、ならば貴史は応接間で休んでて下さい!俺が荷物を届けて状況を聞いてきます!」
と言い慎一は烈の部屋に行き入院用のバッグに着替えを詰め込み家を出て行った
兵藤は双子と共に応接間に行きソファーに座った
双子は兵藤の膝に懐いて手を置くと
「戯け者じゃな!主は!
落ち込むならば連絡をすればよいのに!」とボヤいた
兵藤はギョッとして双子を見た
双子はウナギサイズに戻り、兵藤を視ていた
兵藤は「俺は未熟者だから……本気の愛なんてして来なかったから、どうして良いか解らねぇんだよ!」と答えた
響は「喧嘩の後は【ごめんなさい】だよ!」と謂う
奏は「そうね、なぁなぁで逝くとシコリになるわよ!」と謂う
兵藤はグサッと言葉の槍に刺さって、言葉をなくした
「流石 烈の子じゃねぇか!」
響と奏は、ふふふと笑って「「未熟者!」」と言った
相手は神祖 龍神!
兵藤は「生きる化石やんか!」と言うとカプっと噛まれた
其処へ翔達がお茶を持ってやって来て慌てて響と奏に「駄目だよ!噛み付いたら!」と言い外させた
流生が「兵藤君どうしたの?久し振りだね!
最近来てくれなかったから寂しかったよ!」と言う
兵藤は「色々と烈からミッション出されてやってたんだよ!
で、今日は烈が入院するから荷物を取りに来たんだよ!」と伝えた
翔は「え!烈入院!!」と慌てた
流生も音弥も太陽も大空も「「「「烈!入院したの!」」」」と問い掛けた
「今 多分オペしてる!」
流生は弟を思いクラ〜と倒れた
太陽が慌てて流生を支えてソファーに座らせた
大空が「オペって?どんな状況なんですか?」と問い掛けた
「皮膚が爛れて黒い皮膚が残っちまったから、綺麗に穢れを取り除いて皮膚の再生するって聞いたぜ!」
と魔界で話していた事を教える
兄達は弟を思い………ショックを隠せなかった
でも…………弟を想うならば、烈の大切な存在を守らねばならないと現実に返った
流生は「兵藤君、近い内に烈の子が来るんだ!
まだ赤ちゃんでね………我が家は子育てが大変なのね!」と話す
兵藤は「え?まだ増えるのかよ?」と驚いた
双子だけでも大変なのに……赤ちゃんだなんて………
「それ康太も知ってるのかよ?」
「知ってるわよ!
母さんが【諾】と言わねば、烈だって外で育てるしかないからね!」
「そうか、なら大変になるんだな!」
音弥は「そうなのよ!だから兵藤君協力お願いね!」と言う
兵藤は何か言おうとしたか、胸ポケットに入れた携帯が震え、取り出して見た
すると竜馬からのラインだった
『貴史、時間作ってよ!
烈から頼まれてるから、取り敢えず話を聞かせてよ!』
「え?烈?烈なら入院してるぞ!」
『入院になるのは知ってる!
烈………帰って来ていたんだね……』
「お前、今何してるのよ?」
烈が入院なのに何故か冷静な竜馬に、兵藤は問い掛けた
『俺?俺は烈が退院したら動くから、その下拵えをしてるんだよ!』
「それなら俺も動けるから動くとする!」
『ならその前に話をしようよ!
【R&R】のマンションまで来てよ
そしたら話をしよう!』
「了解した今から向かうわ!」
竜馬は【了解!】のスタンプを送信
兵藤は携帯をしまうと
「少し出掛けて来るわ!」と告げて外に出て行った
翔はそれ見送り少しだけため息を漏らした
音弥が「どうしたの?翔?」と問い掛けた
翔は「恋する乙女ならず、恋する男も難しいんだね………」とボヤいた
「恋が愛に発展するか?それは本人の日々の愛と信頼だからね………難しいのは当たり前だよ!
烈が何時も言ってるでしょ?」
「だね………」
「隼人が………愛する人作って嫌なの?」
「あ~それは無いよ!
僕は飛鳥井音弥、隼人とは他人だから!
しかも僕、烈に泣かれて神楽の家に養子に行くの辞退しちゃったし…………
この先も僕は飛鳥井の家族として生きるから、何か吹っ切れちゃって、今は本当に何とも思わないんだよ!」
「僕達は飛鳥井のどのポジションになるだろ?」
5人が飛鳥井に残るなら、それは其れで予想が付かないし、母の果てが狂わないか?
不安にもなるのだ
翔は「今度母さんと話をしようよ!」と提案する
太陽は「そうだね、現実として僕達のポジションはどうなるのか?
聞かないと、それなりの準備も必要となるからね………でも僕は音弥が神楽の家に養子に行かなくて良くなって嬉しい想いも有るんだよ!
だって兄弟なのに別々になるのは嫌だったから……大人になっても一緒だなんて夢のまた夢だと思ってるけど……それでも兄弟がいてくれるから、僕は一人じゃないって思えるんだ!」と本音を吐露され………
兄弟は皆同じ思いを抱いていたのだと感激した
其処へ何時来たのか?レイ 凛 椋が来ていて、しみじみと
「いい きょうだいね!」とレイが言う
凛も「だな!」と頷いた
椋は「なかよし だもんね!」とニコッと謂う
双子も「「だね!」」と謂うから、兄弟はレイ 凛 椋 双子を抱き締めた
ガルとルシとガブがその中間に入ろうと飛び付く
一陽はそんな飛鳥井の子供達を見守る様に見ていた
レイは「れつ……またいたいのね……」と涙を浮かべて謂うと流生が「お見舞い出来る様になったら連れて行くからね!」と約束した
レイは頷いた
烈は久遠に連れられ病院に行くと、予め準備をして魔界へ行ったから、病院に着くなり連携している皮膚科の医者と共にオペを始めた
爛れた皮膚を綺麗に剥がして洗浄して、皮膚の役目をしてくれるフィルムを貼っていく
其れを貼る事により、皮膚の保護と皮膚が馴染み早く傷が治ると謂う効果もある
2時間ちょいの時間を要しオペは成功し、烈はICUへと入った
病院に駆け付けた慎一にカンファレンスルームに通して説明をした
そして個室を取り落ち着いたらICUから出して、個室で様子を見ると告げられた
慎一は個室に烈の荷物を置き、自宅へと戻った
榊原と康太の留守を護る為に、一陽と共に買い物に行き何時もと変わらぬ日常を過ごすと決めていたのだ
康太と榊原が飛鳥井の家に戻ったのは3日後だった
久遠を魔界へ連れて行ったのは、桃源郷近くの賢者と賢人のいる屋敷に匿われている閻魔の妻の様子と、鳳凰を出産した紅花の体調を診て貰う為でもあった
紅花は少し衰弱が酷くて、入院となった
卵は黒龍が妻の不在中は肌身離さずに護ると誓い、大切に温めていた
閻魔の妻の豊乃姫(華絵)は順調に育っている、との診断にホッと胸を撫で下ろした
そしてその足で魔界へ行き着替えて禁足地へ向かったのだ
閻魔が二人を待ち構えていて、神取那智が無間地獄に堕ちた事を話した
それで烈が傷を負った事、其れでも禁足地へ行き天国の門を開放して天魔戦争で死した者達の魂を昇華させると告げられた
禁足地へ逝くと、闘いに身を投じ続ける亡者がいた
それを黙って見守る烈の姿があった
烈は気丈に立っていたが、傷が痛々しく、抱きしめたらならば熱っぽかった
限界は近いと感じていた
閻魔が「時間です!烈」と伝えると烈は通称【神の声】を発し死者に声を届けていた
その声を出すには大変な力と能力がいる事を康太は知っていた
だから頑張った我が子の為に禁足地を昇華した
そして綺麗に昇華した地は、大歳神の力により花々に彩られる大地となった
烈があの地を再生するならば、きっと美しい光景に喜ぶだろうと思い浮かべる
そして酔っぱらいの巣窟と化した宴会場は楽しい声が響き、まるで飛鳥井の客間みたいな親しみ深い感じにすっかり皆が寛ぎ騒いでいた
十二天は大喜びまくり飲みまくっていた
皆 肩の荷を下ろした安堵の為か、心から喜び飲み明かした
寝て起きて飲んで寝て、まだ起きて寝て………を繰り返した
何日位経過してるのか?
解らないけど…………取り敢えず還らねば!と想う
夜が明けると康太は「帰るとするか!」と言った
榊原は「そうですね、帰りましょう!」と言い、酔っぱらいがぶっ倒れて寝てる宴会場を抜け出た
そして青龍になった背中に乗せて貰い、人の世に帰って来たのだった
人の世に着いたら真っ暗な夜だった
飛鳥井記念病院の横のマンションの屋上に降りて、ドアを開けてエレベーターに乗り一階まで行き、裏の飛鳥井の家に還る
康太は「何日位経ってますの?」と問い掛けた
榊原は「僕には分かりません、今回は時間を遡って飛んでないので………分かりません!
今時を遡ったら確実に吐きますからね……」と答えた
時を遡るのは、逆流を無理矢理泳ぐ的な負荷が掛かるのだ
酒宴に興じた今の榊原には、それだけの体力はなかったのだった
取り敢えず飛鳥井の家に行き、鍵を開けて家へと入った
玄関のドアを開けて中へ入ると、一生とバッタリ逢った
「よ、お帰り!」と声を掛ける
榊原は「今日は何日ですか?」と問い掛けた
「5月17日の夜11時だぜ!
俺は戸締まり当番だなら、戸締まり確認して寝ようと見に来たんだよ!」
と一生は答えた
「僕達は13日の朝に出掛けたのに………4日も経ってましたか………」と榊原はボヤいた
宴会が楽しくて飲みまくり、話しまくりで2日間過ごした事になる……
魔界で2日過ごせば人の世では4日過ぎてて当たり前なのだが……
康太は「烈はどうなった?」と問い掛けた
「今夜は隼人が付き添ってる!
ICUからは出て個室に戻ったが、まだ意識は戻っちゃいねぇよ!」
「そうか………皮膚はどうなった?」
「皮膚の表面が黒く縮れた様になってたから、その部分を綺麗に剥がして人工の皮膚フィルムを貼って皮膚を再生するのを待つって慎一が説明を受けて、家族に話をして伝えていた!」
「前に狗神の穢れを受けた皮膚も治ってねぇのに、今度は偽海坊主の穢れを受けて焼け爛れたかんな!」
「海坊主本人でもなかったのか……弥勒はそんな焦れったい行為に付き合い烈と共に行動しているんだな?」
「自分の手でカタを着けるって言ってたから…………仕方ねぇだろ?」
「もう好い加減………烈を狙うの止めさせてぇな…
当たり前の日常すら送れねぇなんて異常だよ!」
「一生………」
「取り敢えず、お前等は飯食って寝ろよ!
明日は会社に顔出さねぇとならねぇんだろ?」
「明日………何曜日?」
「金曜日!お前達週の半分お休みだったから西村怒りまくりで竜馬と貴史を扱き使い働かせていたぜ!」
康太は苦笑して「迎賓館の地下に畳張りの宴会場が心地よ過ぎて………オレ等は楽しい宴会をしまくりで………2日過ごしていたって事だ………」と愚痴った
一生は笑って「そりゃ収拾付かねぇわ!」と笑う
その笑顔は………高校時代の様に朗らかで……康太は思わず一生の顔を凝視してしまった
一生は「あんだよ?」と謂う
「力哉と話し合ったのか?」と問い掛けた
「あぁ、竜馬と貴史が見届けてくれて、冷静に話をしたよ!互いに本音で話をした
ぶっちゃけ………力哉は本音を言う奴じゃないから………
本音で話をして、そんな風に思っていたのか?と改めて思い知らされた
そして俺も本音で話をした
お互いに思っている事を本音で話をして、擦り合わせしろよ!と竜馬に言われ、擦り合わせの話をした
そして…………互いの命が尽きるまでは……共にいようと決めた!
力哉も互いの命が尽きる瞬間までは共にいたいと言ってくれた!」
「良かったな一生!」
「あぁ、総ては烈のおかげだ!
あの時投槍になって全てを放り出していたならば、知り得なかった想いだからな!」
そう言い笑う顔は底抜けに明るく………そして力強さを秘めていた
時を刻む顔があった
康太は心の底から………良かったと思った
取り敢えず、夕飯を食べて寝た
休日返上で仕事せねば!と想い、その夜は大人しく互いを抱きしめ寝た
烈は一週間寝たままだった
今度は誰にも邪魔される事なく、一週間寝て体力の温存に務めた
一週間後の朝、烈は起きた
病室に隼人が何日か通って来ていたのは知っている
烈が目醒めて話をしたい……との想いと………話すのは怖い………想いとせめぎ合いドキドキ過ごしていた
まぁ烈は起きなかったから………何も話せなかったのだが…………
久遠が病室に烈の様子を見に来ると、烈は起きていた
きっかり一週間、寝て体力の温存に勤しんたと謂う事なのだ
皮膚は再生を始めていた
久遠は「きっかり一週間だな!」と笑って話す
烈は「やる事は山積してるのよ………」とボヤいた
「まぁボチボチ片付けろ!
自分の体が資本だからな!」
「解ってるわ!先生ぇー!」
「うし!なら一週間寝てたから機能回復訓練の方で、生活に戻れるか?チェックして、大丈夫なら退院させてやる」
「朝は……またおもゆから?」
「嫌、ちゃんとした飯出してやるから体力付けやがれ!」
「やったー!」
烈は喜んだ
その朝は普通の食事が運ばれた
烈はぺろっと完食した
機能回復訓練の方でも日常生活に戻って問題なし!と謂われ退院して良い事になった
烈は母に「久遠先生ぇーに退院しても良いって言われたわ!」とラインした
ラインに気付いた康太が『大丈夫なのかよ?
退院するなら一生に迎えに行って貰うとする!待ってろ!』と返信した
康太はラインを終えると一生に電話した
ワンコールで出た一生は『どうした?』と問い掛けた
「烈が退院するらしいから迎えに行ってくれ!
お金は後で伊織が精算に向かうって言っといてくれ!」
『了解!烈退院するのか!なら直ぐに迎えに行く事にする!』
と言いラインを終えた
康太は携帯をテーブルに置き
「伊織、始まるぞ!」とボヤいた
社長室の机で仕事していた榊原は手を止め康太を見た
「宗右衛門が動くならば………荒れますね
そろそろ貴也の方もカタチにするつもりでしょうから………」
「近衛の一族はバタバタ死に絶えて、宗右衛門の呪いだとまで言わしめているらしいからな!
近衛の御子息の暗殺をした輩は宗右衛門の呪文により、加担した者、それを聞いた者まで根絶やしで死んで行ったからな…………そりゃ戦々恐々だろうな!」と鼻で嗤う
「まぁ姑息な手を使い人を殺せば、そのツケは来ますから仕方ありません!
罪状明かし贖罪の罪に課す………そしてその者には贖罪の刑でも放ったなら終わるしかありませんよ!と閻魔が言ってましたね!」
と溜め息混じりに謂う
「贖罪の刑………冥界の番人呼び出して寿命と罪を天秤に掛けさせ、罪の数だけ寿命を削り、犯した罪と同等の目に遭わせる………ってアレしたのかよ?よくまぁ冥界から番人呼び出したよな?」
「僕は冥界は知りません!
何故 烈は冥界を知っているのですか?」
「冥界 仙界 魔界 地獄界 黄泉界 そして冥府と条約を結んだそうだから、お互いに協力し合い、乱世を乗り切る約束した
創造神 天空神が見届ける中、条約を締結した
その時に互いの番人を貸す事も加えたらしいから、其れで来てくれたんだろ?」
「え?何時………そんな条約を結んだのですか?」
「魔界で世界会議した時だろ?
世界会議なのに錚々たる面子だったから兄者に聞いたら、世界会議の前に条約を締結する為にお呼びした!と言ってたからな!」
「あの世界会議にはそんな要素も含まれていたのですか?」
「まぁ転んでもタダでは起きねぇ宗右衛門だからな!仕事をしたならば、それ相応の対価を求める
それが六世界協力締結って事なんだろ?
で、烈は各世界の番人を貸し出して貰える様になり、魔界は烈が教育した地獄の番人を貸し出す事にしたって事だろ?
で、冥府からは親父殿が駆り出されて来る事になってるんだろ?
呼ばれれば喜んで来るチャンスが出来たと、あぁして来てるんだよ!」
「条約結んだのならば、協力は惜しまないでしょうね、あの方は…………」
「何か最近、生き生きして若返ってねぇか?と想う程には元気だな!
あの死を待つだけの頃とは大違いで、オレとしては嬉しいけどな!」
皇帝閻魔は緩やかに腐り果て散り行く日を待っていた
けど、それも天空神や創造神の手により………力を取り戻させられた
其処へ秘書の西村がやって来て
「んな楽しい話してる間に、休んでた分早く仕事あげやがれ!」と怒ってやって来た
康太は「ええやんか!少しの休憩は必要よ?」と謂う
西村は「貴史と竜馬が仕事上げすぎて、会長決裁が間に合わないんだよ!
だから今お前等がしてるの会長決裁だから!」と告げた
康太は「どんだけ頑張って仕事あげたのよ?」と文句を口にする
「烈が当面会社に来られねぇらしいから、って事で不在になっても影響が出ない様に仕事上げて行ったのさ!」
「あ~烈は入院してるからな!
入院して一週間経つから、そろそろ起きるかと思ったら退院するって連絡入ってたからな!」
「烈、入院してるのかよ?
遼太郎達に指示して動かしてるから、入院してるとは思わなかったぜ!」
「まぁアイツは寝てても動かす事は可能だからな!入院前提で指示は出してるだろうさ!」
「株価の操作はされない様に、メインの監視をイギリスに置くと言ってたぜ!
そうすると、此処では手が打てねぇから、聞こうと思っていたんだよ!」
「此処で手が打てる奴が相手じゃねぇから………イギリスに置いたんだろ?
まぁそれも追々烈が何とかするだろ?」
「宗右衛門も寝てられねぇな!」
「仕方ねぇよ!宗右衛門不在だと思わせねぇ不戦張ってるんだろうから!」
「取り敢えず仕事しろよ!」
西村はそう言い社長室を出て行った
康太は「嵐が来るな……」と呟いた
榊原は「………心構えならば何時でも出来てます!
でも一希が来る前に……暴風圏突入は回避したいですね………」とボヤいた
「それな………」
後は言葉にもならず……仕事を片付ける事に専念した
その頃の烈は退院して、一旦裏の家に帰宅した
「後は大丈夫よ!」と烈が言うから一生は仕事に戻った
応接間に行くと阿賀屋と紫園が待ち構えていた
阿賀屋は烈を見ると「そろそろか?」と問い掛けた
烈はニャッと嗤い
「もう始まっているわよ!」と告げた
阿賀屋は「ならば屋敷の者に正装を届けさせるとする!」と告げて準備に走った
烈は紫園に「シオ君は源右衛門の部屋に行き、着れそうな着物探しておいでよ!」と謂う
「え?勝手に着て構わないのか?」
「構わないわよ!斯波の家紋入りの着ちゃいなさいよ!」
「なら慎一に頼んで見繕って貰うとする!」と言い走って源右衛門の部屋へと向かう
烈は部屋に行き、着替えを出すと風呂に入った
クーとルーとスーもやって来て風呂に入る
クーはせっせと烈を洗ってやっていた
皮膚はぱっと見綺麗になっていた
まだ保護フィルムは外せない……と謂うか皮膚の一部となり自然と剥がれると久遠は言っていた
お風呂から出ると保湿剤を塗り包帯を巻いてやり、支度を手伝ってくれる
飛鳥井の家は皆学校や会社に出かけていて静まり返っていた
等の昔にGWも終わり、あとは夏休みを待つのみとなった
烈は風呂から出ると、宗右衛門の着物を着始めた
帯をクーに持って貰い自分で着付ける
そして支度が整うとクー ルー スーのドライヤーを掛けてやりオイルを塗り毛艶を整えた
そして最後にオーデコロンを吹きかけ支度は終わる
そして部屋を出て応接間に行くと、阿賀屋と紫園が正装をして待っていた
烈は「待たせたわね!」と謂うと阿賀屋が
「屋敷の者に車を用意させていた!
で、どう動くのよ?」と問い掛けた
「反撃に出るに決まってるじゃない!
観世音 宗家はシオ君だけのモノだから、取り返して二度と巫山戯た事は出来なくしてやるわ!
それ相応の制裁を加えるつもりでね下拵えならば、ドゥバイから帰国して直ぐに唱えておいたわ!」
「ならば、観世音家に突入するのか?」
「そんな場所には逝かないわよ!」
「え?紫園の家を取り戻すんじゃねぇのかよ?」
「観世音紫園は観世音家宗家として、他の地で新しい道を切り開く
それを大々的に、公言するのよ!
その為の正装だからね!」
「え?あの地を捨てるのか?」
「あの地はもう観音の祝福はない!
廃れて錆びれて……資源も枯渇してただの山と同化するのよ!
だから欲しいなら、あんな地はくれてやるのよ!」
「候補地はあるのかよ?」
「あるわよ!とても立派な国宝級の家がね!
弥勒が菩薩と話をしてくれ、ならばその地に祝福の光を注ぎましょう!と約束してくれたからね
既に候補地にクビになった使用人も働かせてるわよ!」
「なら、シオは其処へ行けば良いって事か……
ならば其れを知ら示しねぇとならねぇって事か?」
「そうよ、今宗家を名乗っている子なんか才能すらない木偶の坊だからね!
そもそも観世音を愛人の子として誕生させたなんて…………どんだけ歪んでるのよ!」
烈が怒りを露わにして謂うと阿賀屋は
「それな!ライン貰って驚いたぜ!
観音侮辱するのもいい加減にしろって言いたくなったからな!」
「神を冒瀆する行為に等しいのよ!
しかもあの地は観音が倅の為に祝福を与えた地
もうあの地は穢れて使えないわ!
残りたいなら残れば良い!
観世音紫園は観世音家宗家として、他の地へ移る事にした!
それを大々的に伝えねばならないのよ!」
その為の宗右衛門の正装であり、阿賀屋の正装でもあるのだ!
「準備は整っているのか?」
「準備は万端よ!
竜馬のビルも建った事だし、其処で記者会見を開くわ!
その前に取材受けないとならないのよ!」
「アポは?取ってあるのかよ?」
「アポはないわ!
今まで入院してたボクにそれは無理だと思わない?」
「でもお前は下拵は得意だからな!
無策って事はねぇだろ?」
「そうね!無策ではないわね
さぁ行くわよ!
ますは三社共同事務所と東都日報に出向くとするわ!これからラインを入れるとするわ!」
これからラインするのかよ?と想いつつ、阿賀屋はお迎えの車が来た事を告げた
「晟雅ゃ、これから行くからね!」
唐突にラインを受け取り神野は何か解らないけど
『おー!待ってるな!』と喜ぶのだった
烈は阿賀屋の屋敷からの遣わされたお迎えの車に乗り込むと
「三社共同事務所へ、まずは向かって!
その後は東都日報で、その次は元三木淳夫記念館のあった建物までお願いね!」と伝える
屋敷の者は、正装をしたお館様に緊張をしつつも
「承知いたしました!」と答え車を走らせた
烈は「あ、オーディションやらないとなのよ!」と謂う
阿賀屋は「なら俺は審査員として出てやる!」と謂う
紫園も「なら俺も審査員として出て、教育する時は所作の訓練してやるよ!」と約束してくれた
烈は「それは有り難いわね!」と笑う
クー達は烈のポケットに入っていた
阿賀屋は「後でサイダー飲ませてやるからな!」と仕事中の猫に言う
スーは「シュワシュワや!」と嬉しそうに言う
そんな話をしていると三社共同事務所へ到着した
皆が車を降りると運転手は「終わる前に連絡をお願い致します!お館様!」と言い走り去る
烈は受付に「飛鳥井烈が来たとお伝え下さい!」と告げた
受付は「伺っております!エレベーターへどうぞ!」と謂うとエレベーターのボタンを押して最上階へと向かう
エレベーターを降りると会議室のドアをノックした
すると神野がドアを開け
「烈、元気だったか?」と言い烈を抱き締めた
烈は「ほんの数時間前まで入院してたのよ、ボク!」と話す
神野は心配して烈を椅子に座らせた
「大丈夫なのかよ?」
「大丈夫じゃないけど、寝てられないのよ!
一つずつ確実に進めて逝かないと駄目だからね!」
須賀は正装をした烈を目にして
「訪問の目的を伺っても宜しいですか?」と尋ねた
「訪問の目的は2つ!
協力して貰いたいのが一つ!
協力してくれるなら、此方も協力してあげる!
と謂うのが一つ!
それだけの事よ!」
と意図も簡単に言う
柘植は「協力ですか?我等は何時も【R&R】を全面的に協力して来ましたが?」と問う
烈は嗤うと「今日はボク、飛鳥井宗右衛門として来てるから、【R&R】は関係ないのよ!」と一蹴した
相賀は「聞ける事なれば、この命賭したとしても………聞く所存!」と告げた
「おーちゃん、命懸けじゃなくて大丈夫だから!」と烈は笑った
そして姿勢を正すと
「観世音紫園、宗家として別の場所で居を構え出発する事を告げるので、全面協力が欲しいのと、三社共同事務所で所属させて欲しいのよ!」と目的を話した
須賀は「観世音家の御家騒動は………何だか有耶無耶になりました………連日騒がれていたのに……です
何かしましたか?烈?」と問い質した
「まだ何もしてないわよ!
したとしたら観世音菩薩が、倅の地に忌まわしき存在が住み始めたのを知り、その地を見捨てたからじゃない?」
神野は「観世音菩薩………ならばシオは倅と謂う訳か?」と問い掛けた
「そうね、世阿弥と観阿弥が交互に転生し、芸道を後世に伝える役目を仰せつかり転生する
それは神の領域で在り、神が敷いた地に住まわせて貰って祝福を与えられた果ての努力が継承され、今に至る家系となるのよ!
それを!あの女狐が我が子可愛さに家を乗っ取ったのよ!
神を屈辱した瞬間なのよ!
黙ってる筈ないじゃない!
ボクは菩薩に【お願い】されたから、崩壊の最終章放ってやっただけ!
滅びるのはボクの所為じゃないわ!
勝手に手に入れ、勝手に滅んだ!それだけよ!
本当に愚かな奴等って、愚かな事しかしなくて困るのよね!」
神野達は言葉もなかった…………
阿賀屋は「このままだと観阿弥が転生出来ねぇから正さねぇとならねぇんだよ!
それをするのは宗右衛門の務め!
人の世に堕ちた宗右衛門が仰せつかった是正の役目!だから動かねぇとならねぇんだよ!」と告げた
柘植は「ならば我等はどの様に協力したら宜しいのですか?」と問い掛けた
「記者会見を開く手筈をお願いします!
ボクはこの後、東都日報に顔を出して取材をお願いする予定なのよ!」
「解りました!テレビの番組を押さえれば宜しいですか?」
「………多分飛び付かないわよ、そんな話だと………」
「ならどうしたら?」
「記者会見の場を用意して段取りを竜馬と共にして、其れをマスコミ各社に知らせて欲しいのよ!
それとシオ君を三社共同事務所で所属させて、これだけよ!」
須賀は「我等の事務所に………ですか?
それは本人は了承しているのですか?」と問い掛けた
「仕事の幅を広げる為に色んな仕事をさせないと駄目になるのよ!
何せ三年前まで閉じ込められて、只管踊りだけ叩き込まれた世間知らずだからね!
此れからは色んな仕事させたいのよ!」
柘植は「ならば三社共同事務所に身を置かれ仕事をなさるのも解ります!」と呟いた
皆も頷き納得していた
須賀は「其れでは竜馬と連絡を取り段取りに入ります!」と告げた
「ならば、此方はオーディションの全面協力を約束するわ!
【R&R】として出られるかは、解らないけど………まぁ最悪ボク単体でも出て審査するわよ
【R&R】で使えるか?どうか?解らないけど、ボクがその子に合う仕事の道筋までは立ててやるわよ!
まだボクと一緒にいると危ないってのもあるけど………
少し安定したらオーディションの日程とか決められるわ!」
神野は「ならば日程が決まったら大々的に告知するとする!」と謂う
「オーディションをやる事はもう告知しても良いのよ!総てネットで募集させて自己PRを動画で添付ファイルを付けさせる
其れを選考して篩に掛けて逝くのよ
三社共同事務所でやるならば、オリヴァーの弟子のアンソニーと連絡を取り、動いて貰うと良いわ!
その子にホームページを作らせて、オーディションの概要や応募ファイルを作製させる
応募ファイルには幾つかの項目を作成して、より分かり易く自分をさらけ出せる様に作成して選考対象とする
竜馬にはもう頼んであるから、出来上がったら告知出来る様にするわ!」
須賀は「良いのかい?我等は記者会見の場を整え、告知するだけなのに………」と対価に合わないんじゃないかと心配して口にする
「其処までやらないとオーディションなんか出来ないわよ!
よりちゃんにオーディション専用チャンネル作らせて、YouTubeで流して告知させないよ!
三社共同事務所が行うオーディションだから国内外問わずに応募可能だと、告知を始めても構わないわよ!」
「烈………」
「ボクはこの後、東都日報へ逝かないと駄目なのよ!」
「え?何をしに?」
神野は思わず問い掛けた
「記事にして貰おうと思ってね!」
「ならば俺も逝く!」と神野は申し出てくれた
須賀も柘植も相賀も「「「ならば我等も!」」」と行く気満々で謂う
阿賀屋は「バスに後四人追加出来る?」と電話を入れた
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