45 / 62
第45話 着実邁進 ❸
隼人は本音を吐露しつつ烈の目を射抜き
「其れでもオレ様は大人にならねばねらないと謂うならば………哀しいがワンステップ出来る様に日々努力して行く事にする…………
だが烈………オレ様は烈の兄として……共に生きたいと想うのは………無理な事なのか?」と問い掛けた
「無理じゃないわ!
【家族】としての枠でなら離れる事なく共にいられるわ!
でも【仕事】となると……そうも逝かないのよ!
人は進化を求める生き物なのよ!
貴方はそんなファンの想いを受け止めて生きて行くんでしょ?
ならば常に進化して己をその時の最前線に置くのが務め!
この先 永遠に………とかじゃなく、妻を娶るんだから男として最高に輝くには【R&R】は不必要と感じているのよ!
だから貴方は妻を娶り、己を鍛え上げなさい!
そうすれば、何時かボク達の道は重なると信じているわ!
至急 小鳥遊と共に記者会見の場を設けなさい!
その場には洋子も座らせない!
ボクは出ないけど紫峰佳祐を座らせてあげる事にわね!
圭介とは既に打ち合わせはしてるわ!
一色正和と紫峰佳祐をその場に用意するから、小鳥遊は二人と共に記者会見を開きなさい!
そして何故紫峰佳祐が同席しているのか?
と、聞かれたら飛鳥井建設のCMをやる約束を飛鳥井宗右衛門との約束で決まったからだと言いなさい!
ノーギャラなのはオフレコでね!
そのCMは天才と謂われた紫峰佳祐がコンテから手掛けて創り上げる事になるわ!」
小鳥遊は烈の言葉は一文一句違える事なく聞き留めていた
「記者会見、洋子も座らせるなら打ち合わせとか必要ですか?」
「不要よ、そんな作り上げた文字なんて読んでも誰も納得なんかしないわよ!
己の言葉を聞かせなさい!
後の事は紫峰佳祐が執り行ってくれるから!
次は早瀬頼朝、調査資料に違いはないかしら?」
自分の声を掛けられ早瀬は烈の瞳を真摯に受けて
「はい!間違いなど一つも有りません!」と答えた
「ならば今直ぐ縁を切りなさい!
貴方を誘惑しているのは人妻よ?
幾ら好きでも人妻に手を出したら駄目な事位理解出来るわね?」
「はい!理解出来ます!」
「なら何故………こんな愚かな事をしたの?
と、責めても引き起こした事は覆りはしない!
貴方は自業自得だけど、貴方が問題を起こすと事務所の社長である相賀が引き摺り出されるのよ!
貴方さ、芸人人生終わらせたい?」
単刀直入過ぎる言葉に早瀬は………言葉を無くした
「おーちゃんの首を絞めるなら、生かしておいてやる価値すらないわ!
本当に首チョンパしてやろうかしら?」
烈が怒気を込めた声で謂うと、相賀は烈を優しく抱き締めた
「烈!私は大丈夫だから………」
「そんな問題ごと抱えさせる為に三社共同事務所の方の代表させたんじゃないわ!
楽隠居はさせられないけど、楽しく仕事出来るなら………と想ったのよね………」
「毎日楽しいよ烈…………だから………良いんだよ……」
「おーちゃん…………其れでもボクは、本当に腹が立つのよ!」
烈は吐き捨てた
早瀬は絶望的な顔をした
道筋を付けてくれたのは烈だった
この世の誰も解ってくれなくても……………
烈さえ解ってくれれば良い………そう思っていた
今もそう思っている…………
竜馬は「烈、止めときなよ!」と執り成した
「竜ゅー馬………猶予はないわよ
週末には週刊誌は発売されるわ!」
相賀は「え!其処まで話は進んでるのですか?」と声を上げた
「向こうも焦ってるからね
スキャンダル売ってでも資金を確保したい、そしてあわ良くば名前を売りたい、そんな憶測が見え隠れするのよ!
まぁ七夕の日以来、早瀬と連絡も着かないし、謂う事聞かせなければ、お金は手に入らない
向こうも崖っぷちなのよ
だからこそ【R&R】でも出して、【R&R】が懇意にしてる会社とでも銘打ちたかったんだろうけどね…………やってるの最悪だから………」
「どうするのさ?烈」
「早瀬を誑かそうとしている人妻の夫の家業は、何代も続く運送業界なのよ
コロナ禍後から契約してる通販会社から契約を切られたりしたから資金難になってるみたいね
ボクの友達にぜんちゃんいるし、若旦那の所の子供と学友だし、コネは最大限に欲しいんだろうね」
「セコっ………崖っぷちに立たされたならば、余計己の才覚と力が頼りとなるのに、他力本願なのかよ!」
と竜馬はボヤいた
「資金が尽きて追い詰められると、視野が狭まり金になるなら何でもするのよ
やる手立ては一つ、週刊誌より早く記者会見するのよ!
其れに当たって聞くんだけど、早瀬、女とセックスした?」
「いいえ、やってません!
憧れの人でした………高嶺の花でした
そんな人から誘われましたが………早朝から仕事が入ってて断りました
その後もしつこく誘われましたがスケジュールが合わなくて………二人で逢ったのは一度だけです…」
「色香に惑わされてホテルに入ってたら、即スキャンダルになってたわ
踏み留まって良かったわね
早瀬、貴方は当分は色恋から離れなさい!
こんなスキャンダル出しやがって!
ボク、スキャンダル大嫌いなのよ
浮ついたヤツが大嫌いなのよ!
その場で消したい程に嫌いなのよ!
早瀬、ボクの信用取り戻す為に日や努力なさい!
でなきゃ潰すわよ!」
あまりの迫力に…………早瀬はチビリそうになる程だった
烈は相当な怒りの焔を撒き散らしていた
竜馬はその横でニコッと笑って黙って座っていた
「おーちゃん 記者会見した後 早瀬は地獄詣での旅に出たいと言ってるわ!
少なくとも一ヶ月は休ませといてね!」
神野は「地獄詣でって………何処へ連れて行く気なんだよ?」と問い掛けた
「本当の地獄よ!何もない世界に放り込んであげるから、其処で自分を見直しなさい!」
早瀬は自分の拳を握り締めていた
「虐められていた日々は埋められはしないわよ?
苦しかった日々も辛かった日々も泣いて過ごした日々も………過去の自分が受けた事総て…………
当時の奴等が媚びて来たとしてと埋まりはしないわよ!解ってるでしょ?」
「解ってます…………だけど心の何処かで…………
自分は許され受け入れられたい…………と、夢を見た…………
虐めて見下して来た奴等が………何の得もなく近付いて来てる訳じゃない…………と頭では解っていた
だけど心が…………当時の虚しかった思いを埋めるみたいに…………仲良く受け入れられた………と…錯覚してしまったんだ…………」
泣いて話す早瀬に烈は「………自分だけが不幸だと不幸に酔ってて………胸糞悪いわ!」と一蹴した
早瀬は何も言わなかった……
「虐めれていた人達から優しくされて、受け入れられたと錯覚した?
そんなのは貴方の人気が無くなったら笑い飛ばされる幻影でしかないわよ!」
「君には………虐められて来たヤツの気持ちなんて…………解らないから………」
烈は立ち上がると「本当に胸糞悪い!」と吐き捨てて、部屋を出て行ってしまった
竜馬は烈を止められず………仕方なく助っ人に電話を掛けて事情を話す事にした
経緯を話し、どうにかして貰いたいと訴えた
「だからさ烈の過去を紡いで見せてやる事は不可能っすか?
己だけ不幸の中にいる顔されたら、俺だって腹が立つし、烈が出て行っちゃったっすから………
この忙しいのに捕まらないのは困るっす!」
『仕方ねぇな……ならば龍騎に聞いてミとトに紡いだ時のヤツ残ってねぇか聞いてやるわ!』
「頼むっす!」
『烈絡みだと面倒なの飛ぶかもな……見掛けたら呪文は唱えさせるなよ!』
「了解っす!」
『で、お前は今何処にいるのよ?』
竜馬がホテル名と部屋番を告げると
『ならば待ってろ!オレの目でも見るとするわ!
今から行くからな!』
と言い電話は切れた
「自分だけ不幸の真ん中にいる様な顔はするなよ!お前だけが不幸なのか?
その昔………烈は熾烈な虐めを受けて、一族に復讐した
その話は飛鳥井では有名な話だよ!
そしてレイが腹を立てて飛んで来る程に………
貴方は烈の魂を悲しませた!」
そう言うと竜馬は突然姿を現したレイを抱き締めた
「烈を苦しめて無傷で終われるとは想うなよ!
苗字で呼んでる訳だし見捨てられたも同然の男………生かしておいてやる意味はない!」
とレイは呪文を唱え始めた
竜馬は慌ててレイの口を押さえた
皆はこの状況に途方に暮れていた
ホテルの部屋のドアがノックされ小鳥遊は慌ててドアを開けに向かった
するとタイミング良く、其処へ康太と榊原が部屋を訪ねて来た
「止めとけレイ!
そんなの唱えても烈は喜ばねぇぞ!」
「人の世にいる間位………笑って泣いて幸せそうなあの人を見たかった…………
なのに………烈を苦しめる存在なんて許せない!
許すものか!」
榊原はレイを抱き締めて
「ほらほら初等科を勝手に抜け出したら長瀬先生に怒られますよ?」と窘めるとレイは
「…………せんせーこわいよぉ………」と震えた
長瀬……君どれだけ鬼教師なんですか………と榊原は想った
康太は早瀬を目にして
「愚かな奴………烈の敷いた道を壊して何がしたかったのよ?
認められたかった?
許されて受け入れられたかった?
そんなの今されて、お前が泣いた過去がなくなるとでも想うのかよ?安すぎる!」と吐き捨てた
早瀬は言葉もなく………俯いていた
「相賀、どの道分岐点だ!
このまま連れて行って会見させろよ!
己の言葉で総て話させろよ!
其れがどっちに転がろうとも、もう烈が敷いた道は歪んでしまったからな、元には戻らねぇんだよ!」
相賀は「折角烈が敷いてくれた道なのに………」と呟いた
康太は足を組むと唇の端を皮肉に吊り上げて嗤った
「曲がらずに逝けば生涯の伴侶まで世話して貰えたのにな、莫迦なヤツ!」と吐き捨てた
レイは「ぼきゅね、ひび ちゅぎょーしてね、こんなのおぼえたわ!」と言うと
レイはふうっ〜っと息を吹きかけると、早瀬を球体の中に閉じ込めた
まるでシャボン玉の球体の中に閉じ込められた様に………宙へ上がっていく
そして天井に阻まれ、それ以上上がる事はなかった
レイは創世記の泉の水を呼び寄せた
球体の中に創世記の泉の水が増えて行く
そしてあっという間に、球体の中は創世記の泉の水が満ち……早瀬は藻掻いていた
藻掻けば、藻掻く程に雁字搦めになり息苦しく動けなくなった
早瀬の目からは黒い雫が流れ出ていた
康太はそれを見て
「え!闇に染まっていたのかよ?」と呟いた
レイはニブルヘイムの声で
「ええ、彼は翳ってましたから、心が弱り付け込まれたのでしょう!」と答えた
康太は笑って「しかし………すげぇの出来る様になったんだな!」と感心して問い掛けた
「創造神が仕事しろ!とより精度の高い力をくれたので、私は日々その練度の高い力でやれる可能性を考えて、力を磨いて来ました!
この前、烈達が菩提寺の幼児向け太極拳の休憩中にシャボン玉をやってたのを見て、ヒントを得て訓練したのですよ!
四龍の子達や虹や尊を入れて日々練度を上げて来たので、どうです?上手く出来る様になったでしょ?」
と嬉しそうに言う
康太は「おー!すげぇな……でも次代の閻魔閉じ込めれるのお前位なモノだよ!」とボヤいた
「喜んでましたよ?
菩提寺の建設中の体育館の地下はプールもあるので、其処で四龍と虹と尊は泳ぎの練習してますからね!」
「あ~すげぇの建てているんだよな
2年経っても完成しねぇって思っていたら地下にプール作ってやがったのか!
あの体育館が神楽堂の役割を持つらしいからな!今から完成するのが楽しみだな!」
「みたいですね!
私も神楽覚えているんですよ!」
「おっ!そしたら翔達と踊れるな!」
ニコニコ笑顔のレイ(ニブルヘイム)と康太の会話を聞きつつ…………
神野は、部屋濡らしたら弁償だよな?と想っていた
須賀は、本当に規格外な子だと痛感していた
柘植は、レイは本当に可愛いな!と思ってニコニコだった
相賀は、成る様にしか、ならん!と諦めの境地だった
早瀬の体内から闇が抜けると、レイは球体から早瀬を出して球体の中の水は創世記の泉に戻した
「ぼきゅ、しょとうかにかえるね!」と言い姿を消した
康太は「記者会見を直ぐにしろよ!
そしたら今夜、ある男の壮絶な虐めの過去を見せてやるから!
その後は地獄詣でと謂うならば、行くしかねぇ!其処で己を見つめ直して来いよ!」と言い榊原と共に部屋を出て行った
竜馬は「小鳥遊、相賀をサポートして記者会見を開くっす!
最初に隼人の記者会見を開き盛り上げた後に早瀬の会見をやれば、一石二鳥っすからね!
さっさと動くっす!」と発破を掛けた
相賀は「竜馬は………サポートしてくれるのかい?」と問い掛けた
竜馬は不敵に嗤い「それが俺を遺して行った烈の想いっすから、場所の提供はするっす!
でも記者会見はノータッチっす!
俺を出す方が逆効果っすからね!」と告げた
「そうだね、記者会見は我等がやらねばならない事だからね!」と答えた
神野は「場所の提供はしてもらえるのか?」と問い掛けた
「この前、紫園の記者会見で使った場所を、俺個人として提供するっす!
なのでサクサク動き、サッさとマスコミに告知出して記者会見開ける様に動くっす!
【R&R】としては一切出る事はないので、了承して下さい!」
竜馬が言うと皆は動き出した
その頃 烈は飛鳥井の家にいた
ガブやルシとガルと金太郎達と応接間にいた
虎之介と小虎は何時もの様に烈の背中に張り付いていた
クーは「どうするのさ?烈?」と問い掛けた
烈は買って来たペットボトルのカルピスを飲みつつ
「ボクは出る気は一切ないわよ!
道を外れ今も不幸の真ん中にいるのは自分だけだと思ってるヤツの手助けなんてしたくもないわ!」とボヤいた
スーは「あれはあかんわ!態々道を敷いて貰ったのに外れてしもたんやからな!」とボヤきつつサイダーを飲んでいた
ルーも「愚かですね………」と呟いた
烈は「でも竜ゅー馬を遺して来た事だし、記者会見の場所は提供して貰い、記者会見を開くしかないわよ!」と謂う
ジュースを飲んでると康太からラインが入った
康太はホテルの場を後にした後、菩提寺へ行き紫雲に逢って来た
休憩中の紫雲は保養施設の一階にいて、康太は裏山を登る事なく陰陽師と話をしていた
紫雲には、烈の過去を紡いだ残りがないか?聞いて、あるならば手筈は整えてあるから動いて貰うつもりだった
紫雲はあっさりと了解してくれ
「一つ残ってるから今夜見せに行ってやる!」と約束してくれた
康太は「因みに何故一つ残ってるんだ?」と問い掛けた
「コレは瀬能とか謂うヤツに見せる為に紡いでいたが、瀬能とか謂うヤツは思った以上に……深淵は荒廃していて、烈は希望の種を蒔いた程だった……と弥勒が釈迦から聞いたと言ってたからな、残ってるんだよ!
で、今さら見せる訳にいかなくて残ってたんだよ!」
「え!希望の種!…………え?アイツ深淵で希望の種蒔きやがったのか………
下手したら廃人になるしかねぇのをやったというのか…………」と呟いた
紫雲は「え!其処まで危険な事だったのか?」と呟いた
「普通、人の奥深くに眠る深淵はその者の心を映す………そして深淵を弄れば下手したら廃人にしかならねぇんだよ………
そうか………それ程に瀬能の心の中は絶望しかなかったのか…………」
そう呟き、気を取り直して康太は
「なら頼むな!早瀬頼朝、アイツに烈の過去を見せてやってくれ!
コレは早瀬の記憶の糸だ!」
と言い細い糸の様なモノを紫雲に渡した
康太が態々ホテルに行ったのは、紫雲の仕事をより簡潔にさせるために、紡ぎ先を特定出来る様に、早瀬の記憶深くの糸を取り出す為にだった
康太の意図を読み解き、実際に動いたのはスーだった
スーが早瀬の記憶の糸を取り出して、康太へと手渡していたのだった
実に出来る猫だった
紫雲はそれを受け取り、烈の過去の記憶の糸と結んだ
「其れでは今夜、この糸の束を解くとする!」
すると解かれた糸は早瀬の意識の中へ吸い込まれ、夢を見る事になるのだ
「頼むな、またな!龍騎!」
と言い、康太と榊原は菩提寺を後にした
榊原は「陰陽師………保養施設で茶飲んでて良いんてすか?」と問い掛けた
康太は爆笑して
「良いんだよ!日々の鍛錬さえ怠らねば、その能力は維持出来て、より練度を上げる事も可能なんだよ!
それに…………ずっと山の上で妻子と離れて一人で過ごさねばならない………なんて今の時代にそぐわねぇかんな!
龍騎はテレビもない世界にいた
だから山から降りて桃香と共に暮らして良いと言われても、浦島太郎的な想いしたって言ってたからな………オレが視ても龍騎の力は衰えちゃいねぇ
宗右衛門の判断は正しかったんだよ!」
と話した
康太は烈に「何処にいるのよ?」とラインして問い掛けた
直ぐに烈からラインの返信が返って来た
『ボクはね、飛鳥井の家で買って来たジュース飲んでるわ!勿論糖質ゼロのカルピスよ!』
烈は猫達とジュース飲んでる風景を写メして送った
康太はその写メを見て
「やっぱし猫はサイダー飲んでますがな!」とボヤいた
「飛鳥井に行くから応接間にいろよ!」と送信すると親指立てたスタンプが送られて来た
榊原は飛鳥井記念病院の立体駐車場一階のロックを解除して車を止めると、病院横のマンションへと入って行った
変なのがいないか?管理人室でチェックして裏の飛鳥井の家に向かう
榊原は飛鳥井の家のドアを解錠すると、家の中へ入って行った
応接間を覗くと烈が猫達とジュースを飲んでいた
康太は「烈、忙しくなる前に、会社に顔を出せよ!」と声を掛けた
「そうね……何か嫌になっちゃたからね
気晴らしに此処でヤケジュース飲んでいたのよ!」
「どうするのよ?」
「とうもしないわ!
だからボクが出る事はないわ
少し認められたから?
己の道も見誤る奴なんて……何かしてやる気もないわ!
でも竜ゅー馬遺して来たから、記者会見の場は用意してくれるんじゃない?」
「なら後は本人の口でどれだけの誠意を伝えられるか?だな!」
「そうね………でもね………ぜんちゃんに聞いたら相手は右翼崩れの様な道理が通じない男みたいなのよね…………
コロナ禍で業績落として潰れる寸前だから、躍起になってるみたいでね
早瀬が会見しても、スキャンダルは強引に出されるかもね………」
「お前、見捨てたのか?」
「……………不幸の真ん中にいる奴って自分だけが不幸だと思うのよね
少し腹が立ったのよ……実際早瀬はどうでも良いけど、早瀬が何かすればおーちゃんが駆り出されて矢面に立てられるのよ!
其れは嫌だわ、楽隠居にはさせられないけど、苦境に立たせる気はないのよね………」
「厄介な相手だな………」
「実際 流れ弾トナミ海運や蔵持輸送にも行ってるみたいよ?」
「え?何でよ?」
「ボクとお知り合いなんたから融通効かせろよ!
とか何とか難癖着けて来てるって連絡入ってるわ
で若旦那ゃや、ぜんちゃんが心配して電話鳴りっぱなしだったみたい………
ボクが魔界に行ってる間に迷惑かけちゃったみたいね!」
康太は驚いた瞳を烈に向け
「んな事になっていたのかよ?」と呟いた
「此処までされたのにボクが出てくれると思ってるなんて本当に甘いわよ
ボクね怒りで捩じ切ってやろうかと思っちゃったわよ!」
戸浪は学友の為に、蔵持は友として、共に共存すべき存在として道を正して来たのだ
この先も果てしなく繋がる明日を描き、盤上へ上げたのだ
その存在に因縁付けられたら………
康太だって黙ってはいられないだろうと思った
「無敵な人って何するか……解らねぇからな………
身辺には気をつけろよ!」
「そうね、海坊主は弥勒ぅがケジメをつけて、この世から消したけど…………向こうにしたらそんなの痛手にすらなってないだろうからね………」
康太は驚いた顔をして烈を見た
「…………海坊主………弥勒が……?」
「ええ、そうよね?弥勒ぅ!」
烈が言うと弥勒が起き上がり
「あー!あのクソ親父はケリを着けた!
此れで俺もスッキリと出来たからな、新たな闘いの為に烈と共に動いているんだよ!」と言った
「そうか、ちゃんとケリを着けて………歩き出したんだな!」
「もぉなスッキリサッパリしたぜ!
で、俺が姿を現したのは、早瀬を誑かした妻の夫ってのが、どうやら鴻池の恩恵を受けていたって謂う、クソ親父と同じ狢的な奴だとの報告に来たんだよ!」
弥勒の言葉に烈は「やっぱり……そっちと繋がっていたのね………なら早瀬なんて駒にもならないカスじゃない………」と呟いた
「観世音の家は完全に海坊主との………と謂うか神取からの連絡を絶たれた状態で………あの地は総てから見放された存在となり廃れて行っている
総てを無くしたも同然の状態だ!」
康太は「アレは仕方ねぇ事だ………神に喧嘩を売ったも同然だからな!」と吐き捨てた
烈は「神取の家は海坊主も消えた事だし、名前を変えて新しい盤上に乗せてスタートを切らせるわ
今度は間違わない様に、キッチリと倭の国の経済を守護する家としての掟を決めて、破れば破滅へ逝くしかない忌日を遺して始めさせるつもりよ!
あの莫大な資産や土地を継がさねばならないからね!」と謂う
康太は頷いて
「観世音の新しい家、何処に敷いてやるのよ?」と問い掛けた
「四季ちゃんの手放した家は広大な敷地と無形文化財級の造りの家があるからね、其処へ移そうと思っているのよ!
菩薩もあの地なら元々の契約もあるし、守護して逝くと約束してくれたからね
四季ちゃんはマンション建てて家賃収入も手に入り、広いマンションに移ってくれたからね!」
「…………代々仕えた使用人はいなくなったのか?」
「爺やが黄泉の旅路に出て以来、四季ちゃんは使用人を身の立つ様に職と住居を提供して家から出したからね…………あんな広い家で一人だなんて寂し過ぎるじゃない………だから、あの家はボクがマンションと引き換えに譲渡して貰ったのよ!
そんなに手直しする事なく住めてるし、観世音の家を追放された者達は、既にあの家に住んで働いてくれてるし、直ぐにでも戻れるのよ!
しかも四季ちゃんちの使用人やってた人達も、この家で働きたいと戻って来てるし、今そんな人達の支えを得て、家をやっと回し始められる様になってるのよ!」
「そうか、ならその地に観世音は住む様になったんだな
でもよぉ………その家の御当主様……何故に、家に戻らねぇのよ?
この家に居着いてやがるな!」
「そうね……何で出ないのかしら?
でも家を構えて仕事すれば、利益は出るからお金徴収するしかないわね!」
烈の言い草に康太は笑った
「まぁこの家が好きだって居着くなら、生活費さえ払えば置いてやんよ!」
「母ぁーさん………」
「其れよりも烈、お前……水萌隠したのか?
菩提寺で見なかったから……気になって探してみたんだよ!
水萌の気配はなくて、その分夏海と明彩がめちゃくそ忙しそうに動いていたから、アレ?と思ったんだよ!」
「母ぁーさん、水萌の前の妊娠………菩提寺の莫迦達の所為で流れたの知ってるわよね?
まぁ流れたと謂うのは………建前で出産はした
けど、我が子を呪う一族の元………育てるのを断念した水萌が呪いを受けてない元気な子の方を養子に出して……
出産と同時に呪いを受けてしまった子の方は……遺した
だけど手元に残した子は日々衰弱して………息絶えた
水萌は愛する我が子を失ったのよ
ボクが付き添い転生の道を開いてやったのは知ってるわよね?
そんな経緯があるからか?
水萌は出産した後も、今度もこの子達を失うんじゃないか……
またこの子を手放なさねばならないんじゃないかって………
日々我が子の心配をしてノイローゼになりかけていたのよ
透と徹、双子の一人は白馬の地で存命、もう一人は死して再び水萌の腹に還った
だけど我が子が日々衰弱して死んで行った現実に水萌は心は………思った以上に傷付き怯えて壊れてしまっていたのよ
其れをね、どうしたものかしら?と悩んでたから、一陽たんや慎一君に相談していたのよ
そしたら、今の環境が辛いなら別の場で子育てさせたら?と言ってくれてね
乳飲み子と共に妊婦のいる場に入れたのよ!
我が子を産むために闘っている妊婦の所へ行けば、母親同士の結束もあるし、必死に我が子を産むために生きてる母親を見たら、そんな失うかもって謂う恐怖も取り除いてくれるんじゃないかしら?ってね思ったのよ
桃源郷のお師匠様の所には華絵に紅花がいるからね、水萌もお願いしておいたのよ!」
烈の言葉に康太は酷く後悔した瞳をしていた
「透を養子に出さなきゃ良かった………と思った事はある
そしたら水萌が苦しむ事はなかったのに?とオレも後悔している………」
「母ぁーさんの見立ては正しかった!
あの双子は同じ時は刻めはしない!
だから離したんでしょ?」
「あぁ…………だから離したが………まさか水萌の子がその後に死するなんて………オレには視えてなかった!」
「呪いだからね、しかも巧妙な呪いで、母ぁーさんには感知は無理な類の呪いだったからね
でもそれは運命だったのよ!
逃れられない呪いで死する運命までは詠めないわよ!
でも再び水萌の元へ我が子は還って来たのよ!
今度はジジィになるまで育つ元気な子が、生まれたのよ!」
「烈…………オレの果ては尽く狂っている
それを正そうとしなくても良いと…………言ってるやんか!」
「だからボクもそれは無理だと言ってるじゃない!」
烈は笑って答える
康太は我が子を抱き締めた
榊原は烈の頭を撫でると
「烈、今夜は宴会を開きましょう!
久し振りに兄さんも呼びましょう!
母さん達と兄さん家族は君が連絡をお願いします!
僕は会社に顔を出して仕事を上げて買い出しに行きます!
康太は烈と共に現場のチェックをしておいて下さい!」と言い応接間を出て行った
烈は父を見送り、嬉しそうに笑うと
「今夜は宴会ね!
連絡しなくっちゃ!」と言い携帯を手にすると、ラインをした
神野達のグループラインには
「記者会見を終えたら飛鳥井に飲みに来なさいよ!その時、早瀬は連れて来ないでね!
早瀬は何も無い世界で一度考え直させるつもりだから………記者会見の反応見てから後の事は考えたいからね!」と送った
神野が直ぐにラインを返した
『烈、今 記者会見の準備をしている!
早瀬はお前の指示通りにする様にスタッフに話しておく!
……………所で………俺達……宴会へ行って良いのかよ?お前怒って出て行ったからどうしようと思っていた………』
「あ~、アレはね、アレ以上話す事をボクの脳が拒否ちゃったから出るしか無かったのよ
でないと呪文唱えちゃいそうでね……本当に半殺しにしてやろうかと思っちゃったからね………」
『烈が出て行った後にレイが飛んで来たんだよ
レイにもお詫びが言いたいから、レイの好きなキャラのぬいぐるみ買って逝くから………許してくれるかな?』
神野は本当に困り果てていた
オーディションがあるから…………とか、そんなんじゃなく、見捨てられたら飛鳥井へ行って皆と楽しく飲む事さえ出来なくなるからだ
あの楽しい時間を送れないのは嫌だった
まぁ神野は瑛太の学友として逝く事は出来るが………そう言う問題じゃなく………
共に楽しみたいと思っているからだ
「レイたんはボクさえ絡まなきゃ、ええ子だから大丈夫よ!
晟雅ゃ、今夜はそんな事は忘れて飲むのよ!
記者会見終わったら来ると良いのよ
今回は会費取らないからツマミでも持ち寄って来てくれたら嬉しいわ!」
『烈………怒ってないのか?』
「晟雅ゃに?」
『………須賀とか柘植とか相賀に…………』
「怒ってないわよ!
それに宴会を提案したのは父ぉーさんなのよ!
きっと父ぉーさんは、こんな事で気不味くならない様に宴会を開いてくれるのよ!
会社で仕事を終えたら買い出しに逝くから、晟雅ゃ早く記者会見終えて合流なさいよ!」
『うし!ならサクサク記者会見開いて、合流するとするわ!』
そう言い神野はラインを終えた
次は、笙にライン
「笙たん、久々に宴会に来ない?
妻子連れて来て大丈夫よ!」
『烈!!最近ラインの返信なくて心配してたんだよ!行くよ!是非逝かせて貰うよ!
会費は幾らなんだい?』
「今日は会費は取らないのよ
でも美味しいそうなツマミ持参で来てくれるなら歓迎しちゃうわ!」
『何か探してから逝くからね!』
笙のラインを終えると真矢と清四郎にラインした
「じぃたん、ばぁたん今夜は飛鳥井で宴会しない?」
『烈!七夕のイベント以降また会えなくて心配してました!』
「ボク 少し忙しかったからね…………
ばぁたん 今夜宴会するらしいのよ、来ない?」
『まぁ、ならば久し振りに行きます!』
真矢は嬉しそうに返した
真矢とのラインを追えると阿賀屋からラインが来た
『今夜は宴会か、ツマミは何が喜ばれるか慎一と一陽に聞かねぇとな!
其れより記者会見、出なくて良いのかよ?』
本当に地獄耳で嫌になる…………
また屋敷の者を動かしているのか?と想う
「出る気はないわよ!
ボクが出なきゃ道が途絶えるのなら、その道の果てなんて知れてるじゃない!
真央たんは動くんじゃないんわよ!
此れは早瀬の闘いで在って、他の介入は許しはしない!絶対にね!」
『出る気なんてねぇよ!
自業自得だと想うしな…………
が、人ってのは夢見る生き物だって理解してるか?宗右衛門?』
「……………蒼佑、それ以上口を挟むな!」
『口を挟む気はねぇよ!手も足も出す気もねぇよ!お前と縁切る気ねぇからな!
まぁ俺と獅童はお前が幸せなら文句はねぇよ!
俺等は友の為に骨身を惜しまず尽くすと決めた存在だからな!』
固い絆で結ばれた『友』なのだ!
大義名分掲げて飲みまくるが、それは愛嬌と謂うモノだ!
阿賀屋は『なら今夜な!』と言いラインを終えた
烈は溜息を一つ着いた、そして神威にラインを送信した
その後は康太と共にライブカメラを駆使して、工事現場の状況のチェックを始めた
榊原が買い出しから帰って来るまで、チェックは続き、不審な行動は今の所はないとチェックシートを終えて、仕事を終えた
烈がホテルの部屋を出て行ってしまった後の竜馬は、神野達を動かして記者会見の場を用意して指示を出しまくっていた
「記者会見の場は紫園が使用した、俺のビルで準備を始めたっす!
佳祐の方にはマップ添付して知らせといたっす!」
と逐一ラインが入る
烈は其れを見て、既読を付けたが返信はしなかった
マスコミには記者会見をやる旨を書いて、場所と時間を明記して各社に一斉に送信した
『竜ゅー馬、隼人のX インスタ HP全てに記者会見を開くと書き込ませない!
早瀬も同様、自分の持ってる全てのツールに公表させなさい!』
と烈から指示が来ると、小鳥遊にそのラインを見せて、隼人と早瀬に書き込みをさせた
最終チェックは竜馬が見て、写メを撮り烈にラインした
其処で修正を掛けさせ、より伝えたい【言葉】を選択させ知らせる事にした
そんな下拵えをして、開く記者会見
山本洋子が記者会見会場に到着した
東堂御影が乗せて連れて来たのだ!
小鳥遊は「御影ありがとう、竜馬に頼んで連れて来て貰おうと想っていたんだけど………誰からの指示なの?」と問い掛けた
御影は「俺は烈からの指示ではなくば動かない!
其れはイギリスに居た時から変わりのない優先順位だから!」と答えた
竜馬は「御影、悪かったっす!」と謂う
御影は「気にするな、さぁ俺をもてなせ!飲み物も出ないのか?此処は?」と笑って言った
小鳥遊はスタッフに言いサイダーを買いに行かせた
『みかちゃんはうちの猫とサイダーの取り合いしてるからね!』と烈が言っていたのを覚えていたからだ
御影はスタッフが買って来たサイダーを受け取り、嬉しそうに笑った
「小鳥遊に好きなの言ったっけ?」
「烈が少し前に猫と御影のサイダー争奪戦の話を聞いたからね!」
「もぉ、烈はぁ〜!」
そうボヤき御影は嬉しそうにサイダーを飲んでいた
そして何時になく緊張してる洋子に
「おい、洋子!お前は自分の言葉で伝えねぇと、烈が恥をかくって事だけ覚えておけ!」と声を掛けた
洋子は「其れは困る!ならば頑張る!」と俄然やる気になって、その足で台地を踏みしめ立っていた
竜馬は御影の横に行き
「俺の出られる範囲は此処までっす!
さぁ盤上には上げてやったので、後の料理は料理人の腕に掛かってるからね!」と謂う
御影は竜馬に白い物体を渡した
竜馬はその白い物体を手渡して貰い、ポケットに入れた
「烈に逢ったの?」
「いいや、みかちゃんが洋子を連れて行ってよね!と伝言猫を預かって来たんだよ!」
ヨニー©ウッズスタンJAPANの社長様を駆り出して良いのかよ?
と竜馬は想う………
まぁ自分達はその会社の最高顧問なんたけど………
竜馬と御影の目の前で、忙しそうにスタッフが走り回っていた
其処へ飛鳥井建設から広報部統括本部長 紫峰佳祐と主任の一色正和がやって来た
紫峰は「今日は一条隼人の結婚会見の場に同席する予定ですので宜しくお願い致します!」と丁寧に挨拶した
一色もその横で立っていた
紫峰は「飛鳥井建設のCMは私が手掛けて作ります!まぁ仕事の話は後程!
今日はマスコミ対策の為に座らされる事になります!」と言い笑った
その屈託のない笑顔に小鳥遊は唖然となった
時代の寵児と呼ばれ持て囃された紫峰佳祐はニコリともしない男だった
小鳥遊は「貴方がCMを手掛けられるのですか?」と問い掛けた
「ええ、まぁ飛鳥井に籍を置きながら幾つかはCMを手掛けてましたから、ブランクは有りませんから、其れだけは安心して下さいね!」
「いえいえ、心配なんてしてませんよ!
貴方が最近手掛けたシャンプーのCMで商品は飛ぶ様に売れたじゃないですか!」
「あ~、アレね、【R&R】が和のテーストでやってたから、どうしても和のテーストのCM作りたかったんですよ!
そんな時に、烈の茶飲み友達の村松監督と話して、その経由で来たCMなんですよ!
まぁ売れてくれて首繋がってて良かった………って感想なんだよね!
売れなかったら烈に『錆びたんじゃない?けーちゃん?』と冷たい目を向けられちゃうからね!」
「仲いいんですね!烈と!」
小鳥遊はほのぼのした紫峰の話に気なしに呟いた
「一度殺されましたからね俺は!」
「え?…………」
「一度失敗して誰からも見向きもされず落魄れ腐っていた時に、何もかもが敵に見えてヤサグレて………どうしょうもない時に………
竜馬に喧嘩を吹っかけ………ちっこいのにヤケに貫禄のある偉そうな子供が出て来て………
殺され掛けて目を醒させられましたから…………
其れからは只管修行して身体を鍛えて人の観察して流行を詠み時代の流れを詠む様に叩き込まれて、満を持して飛鳥井建設の広報部に据えられたんですよ!俺は!」
紫峰佳祐のスキャンダルはマスコミ界に戦慄の爪痕を残して…………腐敗し癒着した部分を知ら示め…………爪痕を遺した
その紫峰佳祐が飛鳥井建設の広報部の統括本部長に据えられた…………との話は………
一夜にしてマスコミ業界を震撼させた
飛鳥井宗右衛門が表に引きずり出した存在
そうして実しやかに紫峰佳祐の存在は再び、マスコミ業界に知れ渡り、その才能を思う存分に奮っていた
紫峰佳祐は飛鳥井宗右衛門の手により、より洗練された感覚を研ぎ澄ましていた
その紫峰佳祐なのである
「烈からは指示はされてるので、何も言わなくて大丈夫です!なぁ正和!」
昼行灯並みにのほほんと謂う紫峰に一色は
「ほらほら、スーツを着崩したら烈が見たら蹴り飛ばされるから、ちゃんとしてて下さいよ!」
紫峰佳祐はスーツが大嫌いな男だった
会社ではスーツなんか着ていない
一見だらしの無い男風ではあるが、それが相手を油断させ観察してるから、本当に油断の出来ない男である
へら〜としてるが、紫峰は
「一条隼人、お前は自分の口でちゃんと伝えろよ!其れの出来で俺はCMを作る気無くすかもだからな!」
隼人は其処まで言われてムッとして紫峰を睨んだ
「オレ様は烈のお兄ちゃんなのだ!
そのお兄ちゃんがこんな所で毛躓くなど許されないのは解るのだ!
お前がCMを作る気なんてどうでも良い!
嫌なら作らなきゃ良いのだ!」
紫峰は笑って
「んとにな、いじり甲斐のある男だな!
俺もプロなんで、プロ根性全開して逝くとするか!」と謂う
一色は破天荒な男に振り回されてる感は否めないでいた
が、それだけじゃないと解っているから、目が離せないのだ
小鳥遊は気を取り直して、隼人と洋子の衣装を準備させようとする
が、紫峰が
「隼人はスーツで良い!
丁度洋子もスーツ着てるから構わなくていい
早瀬もスーツで衣装なんて必要ない!」と伝えた
紫峰の肩にはクーが乗って
「小鳥遊、佳祐のメイクを頼む!
そんな無精ひげのままで出るなよ!」と釘を刺す
嫌な顔をしている紫峰に小鳥遊は
「では紫峰さん、メイクしましょう!」と言い、メイクされる事になった
小鳥遊は笑顔で「飛鳥井にサイダーをダースでお届けするしかないですね!」と呟いた
クーは「サイダー、それは喜ぶな!」と答え紫峰のスーツの胸ポケットに入った
小鳥遊は「クー、司会は誰がやれと?烈は言ってました?」とサイダー差し入れるんだから、聞いとこうと想い問い掛けた
「司会は小鳥遊、お前がやれとの事だ!
テキパキと余分な質疑応答なんて出来ない程に取り仕切れって言ってたぜ!」
クーが言うと小鳥遊は嫌な顔をして
「烈なら言いそうですね!」と自分もメイクを頼んで支度を始めた
隼人は飛鳥井の家を出る時、地味目のスーツを聡一郎に渡され、それを着て来ていた
洋子も同じ地味目の黒のスーツを気ていた
まぁ仕事をしていたからスーツ着てるのは当たり前なのだが………
早瀬も黒のスーツを着せて準備を整えた
そして始まる記者会見
朝 烈にホテルに呼ばれ、それから記者会見の準備してを皆でやり始め、当初の目的の四時ピッタリに記者会見は始められた
先ずは一条隼人の結婚会見だった
シンプルな黒のスーツを着た一条隼人と山本洋子が並んで会見の席に着いた
その横には紫峰佳祐が同席していた
紫峰佳祐の後ろには一色和正が立っていた
【R&R】や烈の気配は一切消した記者会見だった
会見の席には小鳥遊が自ら座った
そして時間が来たら小鳥遊はマイクを持ち
「其れでは時間が来たので始めさせて貰います!
本日は我が社のタレント 一条隼人の結婚会見へ足を運んで下さり有り難う御座います!
この度 一条隼人は結婚する事になりました!
其れをこの場を持ってご報告させて戴きます!」
と経緯を話した
小鳥遊が会見に出ると謂うのは滅多とない!
強力 目立たず裏方でサポートしていた
其れが咲良我空の発言で注目を浴びて特集を組まれた程になった
だからこそ、結婚会見の場には、神野より小鳥遊の方が相応しいと詠んで据えたのだった
一条隼人はマイクを持つと
「この度は私の結婚会見にお越し戴いて本当に有り難う御座いました!
私、一条隼人は隣にいる山本洋子さんと結婚する事を此処に報告致します!
此れは男としてのケジメとしての会見です!
まだ入籍はしていません!
当然 妊娠もしておりません!
私は一人の男として山本洋子と謂う女性に惹かれ、恋をした…………
妻を亡くして……14年…………
妻に誇れる男になろうと……生きて来ました!
結婚を決めた時……亡き妻の墓前にも報告して来ました
妻は許してくれるか………は、解りません
でも誰よりも私の幸せを願ってくれた人だから…………許してくれていると想います
そして今後も私は……亡くした妻を忘れる日は来ません!
洋子はそんな私の総てを受け止めて……共に生きてくれると言ってくれました…………
私は山本洋子さんを幸せにしたい
一人の男として…………幸せにして逝くと誓い………共に生きて逝くつもりです!」
と涙を浮かべて隼人は話した
その横で隼人を心配して見つめる洋子の姿があった
小鳥遊はマイクを洋子に渡した
洋子はマイクを受け取り話し始めた
「ヨニー©ウッズスタンJAPANの副社長をしておりますフィヨールド・洋子・ドストエススカヤ・ド・山本です
この度………私は一条隼人さんと結婚する事になりました!
それを此処にご報告させて戴きます!
私は実際………隼人に相応しい女かどうか………解りません
私は母親に捨てられました
両親の離婚で母に捨てられ、倭の国へ来てからは父が再婚して………父に捨てられました
そんな私を拾ってくれたのは、ある女性でした
拾ってくれた彼女は私に、部屋と仕事を与えてくれ、私は研究室で暮らしていました
そして2年前に烈に見出されヨニー©ウッズスタンJAPANの副社長に就任いたしました!
ですが私は親に育てられなかった子だったから常識も礼儀も何もかもが………なってなくて………下手したら小学生のお子様よりも世間知らずなまま過ごして来てしまった
お世話になった家で家族同然に過ごす事が出来、私はその家族から総て教わりました
お箸の持ち方から、常識、マナー礼儀作法等など、何処へ出しても恥ずかしくない存在として教えて下さいました!
そんな日々があったから………私は一人の女として隼人と出会えました………
烈………貴方は私の恩人であり師であり家族です
烈、烈………私は隼人と幸せになって良いのかな?」
洋子は涙を流して話す
其処には受けようとか、好かれようとか………そんな目論見もなく不安げな感情だけが残っていた
隼人は「洋子、烈に認めて貰える様に毎日井筒屋の沢庵買って逝くと誓う!
二人して信用を勝ち取り、幸せになろう!」と隼人も泣きながら訴えた
洋子は「塩分多めは駄目だから、毎日だと嫌われる!」と現実を告げる
「なら羊羹、そしてスイカを農家から直に買って振る舞うのだ!」
「それは喜ぶだろうな………
でも離れて暮らしている今………中々逢えない
一緒に暮らしたい………でも何処にいるかさえ解らぬからな…………」
「洋子………オレ様も……康太や伊織、烈や翔達に逢いたいのだ…………一緒に笑って過ごしたいのだ!」
おいおい泣く二人に小鳥遊は困った顔をして
「泣いてる暇はないですよ!
烈に認めて貰いたいならば、ファンの皆にも認めて貰わねばなりません!
一条隼人の結婚ですから、皆に認めて貰い、烈や家族にも結婚式を報告して認めてもらわねばならないのですよ!」
「頑張るのだ小鳥遊ぃ〜!」
隼人と洋子は立ち上がると深々と頭を下げた
そして顔を上げると洋子は
「誰よりも幸せにすると誓う!
そして誰よりも幸せにして貰うと誓う!
だから………ファンの皆様………一条隼人を嫌いにならないで下さい!」と謝罪した
前代未聞の結婚記者会見だった
紫峰佳祐はその光景を苦笑して見て
「いやぁ~幸せそうで何よりです!
そんな新婚の一条ならば、よりクォリティの高い、顔を見せてくれる事間違いなしですね!
全身全霊掛けてCMを作り出してくれる事、間違いなしでしょうね!
失礼、私は飛鳥井建設 広報部統括本部長をしております紫峰佳祐と申します!
一条にはこの度 飛鳥井宗右衛門の創り上げる戸建住宅の生活空間のCMを担当して貰う事になります!
CMの全ての全権は紫峰佳祐、私が任される事となりました!
その宣伝を兼ねて、記者会見の場に同席致しました!」と圧巻の迫力で伝える
一色和正は前を見据えて何も言わなかった
「CMの制作発表は近い内に打ち立てるので待っていて下さい!
ならば結婚会見は終わりで良いですかね?」と皮肉に嗤い謂う
一色が「統括本部長、質疑応答が未だです!」と謂う
「まぁ幸せなカップルの爆誕と謂う事で野暮な事は聞いてやるな!
あぁ、一条は都内のマンションで新婚生活を始めるけど、邪魔はしてやるなよ!
あ~俺も結婚したいぜ!んとに幸せオーラ出しやがって………CM覚えときやがれ!」
「統括本部長、それ僻みになります!」
「僻んでなんかねぇし!
其れよりこの記者会見見てるなら連絡寄越せや!烈!そろそろ定住して貰えねぇかな?」
「仕方ないですよ、殺されかけてますから!」
「まぁ言ってもせんのない事だな!
小鳥遊、終わりを伝えろよ!」
紫峰が謂うと小鳥遊は
「何か締まりのない結婚会見になってしまいましたが、此れにて結婚会見は終わります!
この後に早瀬頼朝のスキャンダルの会見に移りたいと想います!
引き続き私が進行役をやらさせて戴きます!
隼人、洋子、ご挨拶して引き上げなさい!」
と締めた
隼人と洋子は立ち上がると深々と頭を下げ、そして姿勢を戻すと、会見場を後にした
ともだちにシェアしよう!

