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第46話 一意専心 ❶ん

一条隼人と山本洋子がその場を立つと、拍手が送られた そして芸能リポーターや記者や報道関係者から拍手が送られ 「おめでとう御座います」とか「お幸せに!」と声と共に拍手で送られる事になった 紫峰佳祐と一色和正も立ち上がり一礼すると、会見場を出ていった 皆が会見場から姿を消すと、早瀬頼朝が姿を現した 早瀬は憔悴しきった顔で会見場の椅子の前に立つと深々と頭を下げた そして姿勢を正すと椅子に座った 小鳥遊が「此れより早瀬頼朝の謝罪会見を行いたいと想います!」と謂うとその場に飛鳥井神威が姿を現し 「この会見は私も同席するとしよう! 証拠の映像もあるので、後で早瀬の身の潔白をスクリーンに投影するつもりです! じゃ、早瀬始めるぞ!」と告げた 小鳥遊は聞いてないよぉ〜と心の中でボヤいた 神威来るなら来るって言ってよぉ〜! そんな心の叫びとは裏腹に記者会見は始まった 早瀬はマイクを持つと 「俺は………学生時代ずっと虐められて来ました お笑いを目指していると謂うと、皆に馬鹿にされ………お前みたいな陰気な奴誰ひとり笑わせられる事なんて出来る訳ねぇだろ!と謂われて来ました……… そして教科書やノートに落書きをされ………上履きや下履きは隠され………教師は見て見ぬふりをしていました そんな苦しかった過去ばかりの日々に………救いの手をのべてくれたのは………飛鳥井烈君でした 俺は………烈君に見出され芸だけで食っていける程になりました 誰が分かってくれなくても………俺には烈君がいてくれれば良い………… そう思って来ました だけど………仕事終わりの帰り道に同級生達と偶然出会しました 昔………俺を虐めていた奴等が揃ってて………無視して通ろうとした時……… 皆………俺に………声を掛けてくれてくれた 俺は信じられない思いで一杯だった 同級生達が屈託もなく話し掛けて来てくれた ずっと夢見て憧れて来た場面に、自分がいる………疎外されて来た中に加われた自分が信じられなくて………… なんか認められた気分になり………嬉しくて夢中になり……己の立場を忘れてしまった 学生時代………憧れて止まなかった高嶺の彼女にも声を掛けられた 嘘みたいな信じられない話に………俺は有頂天になった だけどあの人は人妻なのは知っていました………… ずっと憧れ夢にまで見た人だった そんな人と楽しい話をして……………有頂天てした 同級生達と別れた後、高嶺の花だった彼女にバーに誘われました 其処で二人きりで飲んでいました だけど明日朝イチで仕事が入ってるからハメ外さないでね!とマネージャーから連絡が入り、仕事があるからとその日は別れました それ以来、何度も何度も誘われました……… 会いに行きたい想いはありました………… だけど彼女は人妻だと言う事は…………知っていたので………合うのは止めました 彼女に会ったのは一度きり…………日付変わる前に別れました 以来会ってはいません 本当に軽率な事をしました……… 憧れの人でした…………… 当時の同級生達と一緒にいると、同級生達に受け入れられた気分になり…………夢を見てしまいました…………」 早瀬はそう言い、ポロッと涙を流した……… 「俺の軽率な行動で…………俺は飛鳥井烈君を怒らせてしまいました! 俺は誰が見てくれなくても………'彼さえ見てくれれば良い……………そう思っていたのに………… 裏切る行為をしてしまいました! 本当に申し訳御座いませんでした! 烈………貴方の信頼を再び勝ち取れる様に…………」 早瀬はそう言うと嗚咽を漏らして顔を覆い泣いた 神威はスクリーンを下ろして早瀬のスケジュールを映し出させた 「此れが事務所の早瀬の仕事を停止させる七夕の日以前の仕事のスケジュール! そして此れが同級生達と逢った後に高嶺の花子さん的な存在とバーで飲んでた映像だ! どれも改竄も編集もさせてねぇ証拠となる! 早瀬は終電ギリギリに駅に向かい、人妻は車でお迎えに来たご亭主と帰宅している まぁこの同級生達との出会い事態が仕組まれていた、きな臭いスキャンダルを演出していたとしたら? 丁度タイミング良く、この同級生達の中に横領で逮捕された男がいる! 男の話によると、同級生達を集め、早瀬の仕事が終わる時間に集まり待ち伏せをして早瀬を強引に誘い飲みに行った その総てにギャラが出ていたと聞いた 要は、スキャンダルを出したい人妻のご亭主の家業はスキャンダルでも出して注目を浴びて起死回生を図りたかった…………と謂う訳だ! 証拠ならば裁判になったとしても、負けない程にある! 要は早瀬頼朝は飛鳥井烈や【R&R】を誘き出すエサとして扱われたと謂う訳だ! 詳細は裁判見越して全部は開示は出来ないが、同級生達の裏付けならば提示しても良い!」とキッパリ宣言した そして同級生達との飲み会の後 高嶺の花子さんだった彼女と別れるシーンが映し出される 早瀬が終電ギリギリで帰宅して、高嶺の花子さんは夫に迎えに来て貰い車に乗った そして場面は切り替わり、早瀬が帰宅したマンションの防犯カメラが映し出された マンションの外に先程の車が停まる映像を映し出す 高嶺の花子さんがマンションの中へ入り、タッチパネルを操作していた 部屋番まで知っていると謂う事になる………… そして女はタッチパネルを叩くと、ツカツカと怒って車に戻った そしてその車は毎晩のように早瀬のマンションの前に停まり、タッチパネルを叩いて出て来る映像を流した 記者会見の会場で、それを見せられたマスコミ関係者はザワザワと騒ぎ始めた 東都日報の今枝浩二は、きな臭さを感じて 「この不倫報道はヤラセの可能があると? そう言う事ですか?」 と手を挙げて質問をした 神威は「それは司法の場で決めれば良いだけの事!何かをするならば、此方は其れだけの材料があると謂う事です! 私は負け裁判は絶対にしない! 勝ち目は自分の足と目で確認し決める事にしている!まぁこんなに甘ちゃんな早瀬ならば飛鳥井宗右衛門を担ぎ出すのも簡単だと思われたみたい、とだけ言っておきます! 実際、学友であるトナミ海運、蔵持運送の方には接触して融通を利かせろ!との連絡も入ってます! そしてこのスキャンダルは週刊誌に売られ明日発売予定になっている! スキャンダルを勝手に作り世間に公表されれば、早瀬頼朝なんて芸人は一瞬にて消える! その前の不戦であり、記者会見だと申しておこう!」と言いマイクを置いた これ以上の説明なんて不必要だと………その態度は物語っていた 小鳥遊はマイクを取ると 「早瀬は軽率な態度を悔い改めなければならない!自分の行動によりどれだけの人が振り回されて、どれだけの人が週刊誌の情報を鵜呑みにするか?知らねばならない! 自分の人気なんて一瞬に潰えてしまう現実を知らねばならない! と謂う事で彼は一ヶ月の謹慎となります! 彼には地獄の日々を送らせるつもりです! 其れで己を見直し、己れの行動が如何に軽率だったか……を知らねばなりません! 飛鳥井宗右衛門が、きな臭い動きを感知して下さり、早瀬のスケジュールは空白になっていますので、彼はこの後直ぐに謹慎となります! 早瀬頼朝の記者会見に態々お越しの皆様には、本当にこの未熟な者のしでかした軽率な行動を叱咤して貰い、謹慎後の彼を見て戴きたいと想う所存です!本当に有り難う御座いました!」 と言い深々と頭を下げた 早瀬も立ち上がり深々と頭を下げた 神威は早瀬の首根っこを掴むと、会見場を後にした 記者会見は総て終わった 控室に逝くと、神威は早瀬の鳩尾に一発拳をぶち込んだ! すると早瀬は気絶して………倒れた 神威は倒れた早瀬の体を肩に担ぎ上げると 「コイツは地獄詣でしねぇとならねぇからな、連れて逝く事にするわ! その為に儂は態々仕事させられたんじゃからな!」とボヤき神の道を開きさっさと姿を消した 目の前で消える神威を見送り………… 小鳥遊はドサッとソファーに座った 神野はお疲れの小鳥遊に珈琲を差し出して 「お疲れ!」と声を掛けた 小鳥遊は「神威に全部持って逝かれました………」とボヤいた 神野は「神威が来るなんて聞いてないよな?」と呟く 須賀も柘植も相賀も頷いていた その場にはクーが優雅にサイダーを飲んでいた そして小鳥遊達に 「あ~、アレね、烈が駆り出したんだよ! やっぱ証拠突きつけ知ら示めねぇとマスコミなんて黙らねぇよ! 早瀬を一ヶ月地獄詣でさせるのは、本当にスキャンダル出させようと躍起になって手段を選ばず付け狙われるのも想定して、だからな 人の世にいたら拉致されて監禁なんて、あるかもな!それ程に向こうは切羽詰まっているんだよ!」 説明した 小鳥遊達は言葉もなかった………… 神野は「まぁ賽は投げられた………もう引き返す道なんてねぇって事だ! 其れよりも飛鳥井へ逝こうぜ! 烈に宴会に誘われたからな! ツマミ買って逝こうぜ!」と気を取り直して言った まぁ四時から始まるワイドショーでは、記者会見の状況は流れてるだろうし……… 烈はそれを目にしているに違いない 柘植は「ならツマミ買いに出ましょうか?竜馬と御影はどうするんだ?」と問い掛けた 竜馬は「俺も行くっす!烈の干物買うっす!」と答えた 御影も「俺も行くよ!最近慎一に教わってるからさ、烈が喜びそうなヘルシーなの買っちゃうよ!」と笑って答えた 竜馬は「なら慎一に連絡するんで、バスで来て貰い拾って貰うっす! 隼人と洋子は今夜から新居へ行くっす! そのままで飛鳥井へ来られたら迷惑になるからね 都内で新婚生活始めたと謂う設定は崩しては欲しくないっす!」と告げた 隼人は「え〜今夜は皆といられないのか?」と淋しそうに謂う 神野も「結婚会見した後だから…………やっぱり狙われちゃうか……」と呟いた 御影も「外、多分まだ居残りしてラブラブな二人を、って謂うのいますよ!」と現実を口にする 竜馬は「取り敢えず、此処にいても仕方ないっすから、スタッフに指示を出してホテルの部屋を取り、隼人と洋子を移動させるっす!」と告げた 小鳥遊はスタッフを動かしホテルの部屋を取るとお迎えの車を来させて二人を押し込めた そしてグレードの高い高級車に二人を乗せてホテルへ向かう スタッフも後ろを車で着いて行った 小鳥遊は飛鳥井の家へと一足先に向かい!新婚旅行は行かせた方が良いのか?聞かねば!と思っていた 康太にラインをして「相談があるので、飛鳥井へ行っても良いですか?」と送った 『おー!どの道今夜は宴会だ来いよ小鳥遊!』と返信した 暫くして小鳥遊はやって来た 「今病院の駐車場の前にいます!」と謂うと一生が「俺が行くとするわ!」と言い出迎えに行ってくれた 飛鳥井の専用駐車場のIDを打ち込み、解錠すると小鳥遊の車を停めさせた そして施錠をして飛鳥井の家へと向かう 小鳥遊は「烈はいる?」と問い掛けた 一生は「それは自分で探してくれ!」と言い、家の中へと入って行った 応接間に逝くと、康太が座っていて 「よっ!小鳥遊!」と出迎えてくれた 小鳥遊は「烈は?」と問い掛けた 康太は何も言わず指差した 視界の先には…………ガル ガブ ルシ 金太郎、虎之介も小虎と並んで寝ていた その横に烈、クー、ルー、スーが並んで寝ていた 康太は「良くもまぁあんなフローリングで、寝られると想うぜ!体バキバキになるって!」と笑って謂う 小鳥遊は「烈、寝てなかったのですか?」と問い掛けた 「まぁ多忙だな、暇になるとこうして寝てるのが最近の光景だな!」 其処へ翔がやって来て烈を起こす 「烈、烈ってば、風邪引くわよ! 夏風邪は中々治らないわよ!」 「ん〜翔にー にゃんだか眠い………」 流生が冷たいジュースを手にすると 「ほらほら起きるのよ!」と言い飲ませてやった 烈は「ん、ちめたいにゃ〜」と喜んだ クー達にはサイダーを持って来て、テーブルに置いて貰うと、ソファーに座りサイダーを飲み始めた 烈はジュースを飲みながら徐々に覚醒した すると其処に小鳥遊がいて 「どうちたにょ?たかなち?」と問い掛けた やはり烈は寝起きは滑舌が悪かった………… 「隼人!新婚旅行に逝かせるべきですかね? それを聞きに来ました!」 「はやちょ?………ん〜!ちんこんりょこう………」と考えを巡らす クーが「洋子はそんな暇なんかねぇだろ?」と謂う 小鳥遊は「え?それは?」と問い掛けた 「それでなくてもウッズスタンは免震構造システムのラインの増加なんかで飛び回ってるからな 新婚旅行行くなら最低でも一週間は休まねぇと!一条隼人の新婚旅行にケチつくぜ!」 烈はやっと意識が覚醒して 「あ~新婚旅行ね、オーストラリア一週間位行く?オリヴァーに頼めば人員は手配してくれるからね! しかも洋子が妊娠でもしたら、副社長業は降りないとだし…………また探して来なきゃなのよね…」 そんな話をしてると竜馬が買い物から帰って来た 何故か阿賀屋と鷹司と紫園と神威がオマケで着いて来ていた 烈は「竜ゅー馬、隼人の新婚旅行の話をされてわ!」と問い掛けた 竜馬は烈の横に座り 「あ~、そうなるよね! でもその前に結婚式だろ? 悪いけど【R&R】は隼人の結婚式は手掛けない 逆にそんな浮ついた結婚式をする方が逆効果となるからね! 洋子の仕事は何か?を頭に入れて動いて貰わねば、ヨニー©ウッズスタンはそんなに軽いのか?と思われてしまうからね! 企業に属して仕事してる役員、しかも副社長と謂うポジションの存在をお祭り騒ぎの挙式に引きずり出すのは止めて下さい!」と説明した それは至極当たり前の事だった 小鳥遊は「ならどうしたら良いのさ………」と頭を抱えた 康太は「結婚式をして新婚旅行へ行くか? 式や新婚旅行は後にするのか? それだけだろ? 後は本人の希望とか聞きながら決めればええやんか!何も小鳥遊一人が背負う事じゃねぇし!」と声を掛けた 小鳥遊は少し気負い過ぎていた自分に気付いた 烈は「【R&R】としては出ないけど、飛鳥井の家族として、にーに達と話をして結婚式は考える事は出来るわよ! 新婚旅行もオーディションで沖縄行くし、沖縄でえくない? 何も金かけて海外に逝かなきゃ一条隼人の名が廃る訳でもないんだし!」と口にした 流生は「それは良いね、飛鳥井の家族としては二人の幸せを願って小さいけど挙式を、白馬の櫻堂神社でやっちゃえば?」と提案 翔は「それは良いね!櫻堂神社は何だか縁結びの神社になっちゃってるしね!」と笑う 久遠達の結婚式以降、和装で櫻堂神社で、ってのがブームになっている 烈は「白馬の方忙しくなったから、時空の歪みの修正に来てくれなかったのよね…………」とボヤいた 桜町商店街の桜神社の辺りに揺らぎがあったから、悠一 三鶴 兄弟に依頼した が、結婚式の予定が入り過ぎてて無理だと二人の父親 二階堂萬斎が態々来てくれ修正してくれた そして二階堂萬斎は何故か……… 「この街は良い!」と住み着いて………甥っ子である二階堂洋二と共にせっせと桜神社を取り仕切ってくれてたりしている! まぁ白馬は忙し過ぎて………暇な所へ逃げて来たんだが………思ったより気に入り居着いた イケメンとイケオジが切り盛りする桜神社は、商店街にスッカリ浸透していた 小鳥遊は「なら身内だけの温かい結婚式が良いね 何か気負い過ぎていたよ……… 一条隼人の結婚式、新婚旅行だから………とね」と本音を吐露した 烈は「小鳥遊、んなに気を負わなくて大丈夫よ 今時 帝国ホテル鳳凰の間での挙式なんて政治家でも稀な類な結婚式だからね! 地味婚で良いのよ、派手にしても離婚する奴はするしね、永遠なんてないのよ! だから二人でいる努力をして行くのよ!」と話す 至極当たり前な現実を突き付けられ、小鳥遊は息を吐き出して 「そうだね………なら洋子とスケジュール合わせて白馬へ行き挙式して、沖縄だね! オーディションは出てくれるのかい?」 「飛鳥井 宗右衛門としてね!」と烈が言うと竜馬が「なら俺は三木竜馬としてっすね!」と便乗した 小鳥遊はやっと笑みを浮かべ 「それは心強い援軍だよ!」と謂う 【R&R】でなく飛鳥井宗右衛門で出てくれる 其れは下手な人間の介入を一切させない、そんな優しい思惑が見え隠れするからだ! 「なら話は此処らへんで良いかしら?」 「有り難う烈、竜馬!」 「小鳥遊のお願いなら何時でも聞いてあげるわよ!まぁ聞けない事は聞かないけどね!」 「それで良いよぉ!」 小鳥遊は烈を抱き締めた 「小鳥遊、おーちゃん明日病院に連れて行きなさいよ!やっぱり気に病んで食べてないわよ、アレは!」 「やっぱり………」 相賀を今回の会見で出さなかったのは、相賀の負担を考えてだった 其れは小鳥遊も解っていたから会見場に出たのだから………… 「責任感強いからね………」 「ですね………」 小鳥遊が呟くと康太が笑って 「んなら明日病院へ烈も連れて行くから一緒に連れて行ってやんよ!」と言った 一陽が呼びに来て「さぁお手伝いして下さい!」と謂うから兄弟は立ち上がって客間へと向かった 烈は「ボク、一希のオムツ見て来るわね!」と言い客間へと向かった 烈が魔界に行ってる間に一希は飛鳥井の家にやって来た 瑛太と京香の養子にして迎え入れたのだった 因みに響と奏も瑛太と京香の戸籍に入れ直され!名実共に飛鳥井の一員となっていた 響と奏は2歳児辺りの姿をしていた 今はまだそんな長時間のヒトガタは無理だが、少しずつ人になる練習もしていた 小鳥遊は「一希?誰ですか?」と問い掛けた 康太は「次代の是正を司る者として誕生された方だ!今はまだ赤子の姿をなさっている!」と答えた 小鳥遊は「また家族が増えたのですね!」と謂う 「まぁ今世は顔合わせに重きを置いているかんな!」 そんな話をしていると太陽が 「母さん達、早く!」と呼びに来た 客間に行くと既に飲兵衛達がワイワイ楽しそうにチビチビ飲んでいた 瑛太も清隆も玲香もその中で嬉しそうに飲んでいた 真矢も清四郎も笙家族もやって来て、その夜は楽しい宴会となった 翌朝 烈は神野達を烈の個人事務所へと連れて行った 烈がケントの車に乗って逝き、神野達は竜馬に連れられリック・村上がマイクロバスに乗せて行く事になった 烈の個人事務所は元 蔵持邸の跡地に建ったビルの一室だった ワンフロア総てが宗右衛門関連の事業の事務所だった 薬局だけに留まらず、生コン、製材所、他の事業が、この事務所で管理されていた 烈はそのビルの最上階に部屋を持っていた 其処へ神野達を招き入れたのだった 烈はソファーに座ると、竜馬が途中コンビニで買って来たサイダー3本をテーブルに置いた そして皆のテーブルにはお茶を置いた 烈は竜馬にカロリーゼロのカルピスを手渡して貰って飲んでいた 猫達は烈のポッケから飛び出してサイダーが置かれた前の椅子に座った スーは「やっぱこのシュワシュワは堪らん!」と酒でも飲む様に飲んでいた 烈は「さぁオーディションの話をしましょうか!」と始めた 竜馬は【オーディションキャラバン】と銘打った書類を神野、小鳥遊、須賀、柘植、相賀の前に置いた 「ボクはこの後、行く所が有るからね! サクサク話をしましょうか!」と謂う 神野達は書類に目を通した 小鳥遊は「書類選考は直ぐに取り掛からないと無理ですよ?」と口にした 「そうね期限を設け十日間の期限付きで、総てネットで管理して篩にかけるのよ! 其れは【R&R】のイベントの時にやったじゃない!何の為に駆り出したと思ってるのよ! 自分達のオーディションを見据えての経験を積ませる為よ!」 柘植は「其れならば直ぐに公式サイトを立ち上げて、公募を掛けます!」と口にした 須賀は「年齢制限しますか?」と問い掛けた 烈は竜馬を見た 「年齢制限………妙齢の御婦人………若い子達に混じって水着になっても大丈夫かしら?」 「あ~神野達は何才位のタレントに焦点を当ててるっすか?」 竜馬は問い掛けた 小鳥遊は「15歳位から25歳位までかな? 此れから人材を育てるならば、ある程度年齢制限決めないとキツいね………」と納得 須賀も柘植も相賀も頷いていた 柘植は「うちの事務所は若さを売りにしたいのいないからね………」とボヤく 烈は「若さは時として無知となるから………徹底的な教育が必要となるわね! 其れには保護者の権限がある年齢は横槍入る事、間違いなしね!」と謂う 竜馬も「ステージママ的な子がいると、由香里のレッスンは虐待だ何だと騒がれかねないね……… 若い子取るなら、事務所との契約書にそれを盛り込まないと後々大変な目に遭うからね!」と提案した 須賀は「少し前に………知り合いの事務所関係の人にそんな話しを聞いたばかりだよ…… 何かにつけて保護者が口を出すから、レッスンさえままならない………ってね! 厳しいね………どうしたら良いんだろ?」と考え込んだ 竜馬は「親がしゃしゃり出て来る奴は絶対に光るモノは見出せない! まぁステージママがいるからこそ、輝ける存在は三社共同事務所でなくても良い訳だし、そこら辺規約を明記して同意を取ってからの、応募ファイルに行ける様にすれば良いっす! そこら辺はネットに長けてるのにチェックさせるから大丈夫っす!」と謂う 少しずつ話し合いオーディションを堅実のモノに近付けていく 「四大都市圏を狙っていたけど、ボクが忙し過ぎて、沖縄オーデション、東京本戦となるけど良いかしら?」 そんな話をしていると烈の携帯がブルブル震えた 仕方なく電話に出ると 「嫌よ!」と用件を聞く前に答えていた 竜馬はクスッと笑う 神野達は何が何だか解らずに…………黙って見守っていた 烈は電話を切ると「竜馬、来るわよ!」と告げた 其れと同時に受付が来訪者を告げた 竜馬は「お通しして下さい!」と謂うと 受付はエレベーターを呼び出し、最上階ボタンを押して送り出した 竜馬がエレベーターの前まで出向き待つ すると阿賀屋、鷹司、紫園がやって来た 「どうしたんっすか?」 竜馬か聞くと阿賀屋は笑顔で何も答えなかった 竜馬は仕方なく部屋へと連れて来た 「来たっすよ!烈!」 竜馬が言うと烈は嫌な顔をした 「シオ君、新しい家に行きなさいよ! 家が出来たのに何で逝かないのよ!」 ボヤく烈には気にもせず阿賀屋は 「オーディションやるんだろ?相賀?」と問い掛けた 相賀は「あぁ、やる事になっておる!」と答えた 烈は「おーちゃんに、振らないのよ! おーちゃんは体調崩してるから、この後病院に行かなきゃなのよ!」と止めた 相賀は「烈………」と名を呼んだ 「おーちゃん、長期に入院する暇なんてないからさ、体調整えてオーディションに突入するのよ! 早瀬はおーちゃんの責任じゃない! やっぱ三社共同事務所の方にも副社長必要ね よりこまめにサポート必要かもね……… マネージャー職とか、事務職とか、募集ついでに掛けなよ!」 鷹司は「ならば能力診断は鷹司の方でしてやる! 経歴詐称してないかは、【R&R】企業向けに依頼して調べて貰えよ!」と提案した 烈は「今の御時世………入れ替わりしゃがるから………」とボヤいた 紫園は「年々巧妙になってくもんね………」と観世音家を内から瓦解させられた現実に呟く 「所でシオ君、そろそろ屋敷に住み着きなさいよ!で、あの家のお金払ってよ!」 「まぁ待て、二億位払ってやるから!」 「………二億じゃ元も取れないわよ! 無形文化財的な価値の家よ? 其れと土地だけで三億超えするわよ! 家も合わせたら二億じゃ元も取れないわよ!   でも仕方ないから二億払って飛鳥井から出て行ってくれるかしら?」 「何を言うのさ!今後は半々で居着いてやるつもりだならな! 今後は慎一に生活費は支払うさ! 当然 屋敷の金も地場相場で払ってやるから待ってなよ!」 「やっぱ居着く気満々なのね……」 「そう言うな、烈! 俺は今楽しい、この楽しい日々を投げ出す気はない!だが当主としての役務も責任も次へ繋ぐ日々も手放す気はない!」 「まぁシオ君の好きにすれば良いわ! ボクは屋敷のお支払いだけしてくれればね! 其れよりもオーデションの道筋だけ着けないと、おーちゃんを病院へ行かせられないのよ! サクサクやるわよ!」 と謂うと竜馬はボードをガラガラ引っ張って来て 「先ずは応募要項の擦り合わせから行くっす!」と謂う 年齢制限を掛けるは全員一致した 何歳から何歳までを対象にするか? また厳しいレッスンが必須となるなら、保護者の同意、または介入は皆無な契約書は必要となる 取り敢えずモノになるまでは一年更新となる事 名が売れて他の事務所へ行くならば、妨害はしないが、事務所帰属の仕事は一切出来ない事等など 詳細な契約のベースを竜馬が作り、その上に肉付けするカタチとなった 審議は白熱して皆 意見を言い合った そんな中、烈はスタッフの者に相賀を病院へ連れて行く様に頼んだ 相賀が病院へ行く間は議事録を残すと決めて話し合う その話し合いは日付を越えても続けられ………… 烈はスヤスヤ寝る中、竜馬が代理となり取り纏めていた 白熱した話し合いは日付を跨ぎ、烈が目を醒ましても続けられた 朝を食べ、昼を食ぺ休憩を取り、昼過ぎには総ての項目が納得の行く話に落ち着き、後はオーデションの応募要項の作成となった 朝 病院に連れて行かれた相賀は、検査の結果があまりにも悪く、即入院となった それ程に相賀は弱っていた………のだった 相賀が病院へ行って直ぐに、入院の連絡が入り、柘植はスタッフに入院の準備をさせて付き添わせた 白熱した話し合いの合間に、朝は近くのカフェのモーニングを、昼は小鳥遊がお弁当を頼んでくれたから皆で食べたのだった ある程度の話し合いを終えた烈は昼を食べた後に 「やる事あるから!」と言い帰って行った その足で神の道を開き、魔界へと出向いた 崑崙山へと出ると烈はアル君を呼び出し背中に乗って素戔鳴尊の家へと向かった 烈は「じぃさん夢見せておいてくれた?」と問い掛ける 素戔鳴尊は「あぁ、聖王が総てやってくれたわ!」と伝えた 弥勒が酒を飲みつつ 「総てはお前の手はず通りに夢を見させた 其れより………大歳神の馬鹿力で鳩尾一発入れたから、大丈夫なのかよ?すげぇアザになってやがってぜ!」 「あ~、馬鹿力だからねとーさんは………… 呼吸の乱れとか漏れとかあるのかしら?」 烈が問い掛けると素戔鳴尊は 「其れはない!呼吸の乱れや漏れは見当たらぬ が、当分は痛みは出るわな! 八仙に打ち身に効く薬草を貰ったから貼ってある!」と伝えた 烈は寝かせられている早瀬を見た 早瀬は泣きながら寝ていた 「じぃさん、起きたら貴也がいた場に放り込んでおいてね! 鬼ちゃん達には話してあるからお願いね! 魔界時間の半月働かせておいてくれると助かるわ また様子を見に来るわね!」 「承知した、目を醒ましたら儂が連れて行くとしよう!」 「悪いわね!じぃさん……」 「気にするでない!」 素戔鳴尊は孫の頭を撫でて笑った 烈は禁足地の工事状況を確認し、次の工程の指示を出して 「次に来るまでに新しい工程表を作成するわね!」と指示を出し次は畑へと向かう 畑へ行き、新作の野菜を確認した 今は人の世で謂う大根を作っていた 食堂にいるおばちゃん達は日々、沢庵を漬ける為のベースとなるべく味に取り掛かっていた まだ大根はないから、デカブを漬けて日々改良を加えてくれていた 烈は慌ただしく野菜のチェックをして 「また時間作ってくるから、その時までにデーターお願いね!」と頼む クロスは「解りました!素戔鳴尊と共に皆にも感想を聞いておきます!」と答えた そして魔界での用事を終わらせると、烈はその足で崑崙山へと出向いた すると八仙の屋敷の前に弥勒と神威が立っていた 弥勒は「ほらほら行くぞ! 夕刻にはまだ間に合う!」と神の道を開いた 神威も「早瀬を連れて行ってやったんだ! 沖縄の旅には儂も誘いやがれ!」とボヤいた 弥勒も「俺の家族も沖縄行きたいわ!便乗させてくれよ!」と好き勝手な事を言う 神威は烈をヒョイと背負うと 「早く帰るぜ!」と言い、サクサク神の道を通り飛鳥井の家に帰った そんなに時間が経ってない筈なのに、人の世はバッチリ夕刻になっていた 飛鳥井の家に帰ると、竜馬が出迎えてくれ 「お帰り烈、神野達が今夜は奢ると言ってくれたからシゲ君の料亭から配達して貰ったっす!」 と伝えた 神威は目を輝かせ「それは楽しみだわい!」と弥勒と共に客間へと急いで行った 烈もその後を追うと客間には………もう飲兵衛の巣窟になっていた 葛西は烈を見付けると 「烈!烈の大好きな里芋の煮っころがし作って来たよぉ〜」とタッパに詰めたのを出した 「シゲ君!有り難う!」 「烈の大好きなのなら何時でも作るからね また食べに来てよ!」 「また行かせて貰うわね!」 と仲良く話をして葛西は帰って行った 葛西を見送り、皆で楽しく食事をしてると小鳥遊がスタッフからの電話が入り席を外した そして直ぐ様 小鳥遊は慌てて戻って来て 「烈!若旦那と善之助さんが、今 共同で記者会見開いているそうです!」と報告した 烈は「出させてしまったのね………」と悔やむ様に謂うと 「何処の会場?」と問い掛けた 「ホテル・ニューグランドです!」 「母ぁーさんの好きなホテルね! ボクは安ければどのホテルでも大丈夫な子なのに……」とボヤきつつ、席を立つと 「着替えて来るわ!」と言い客間を出て行ってしまった そして暫くすると宗右衛門の着物に着替えて 「母ぁーさんタクシーをお願いします!」と頼んだ すると聡一郎が立ち上がり 「僕がお連れするよ!」とふふふと嗤った その表情のない笑みに一生は慌てて 「俺が行く!俺が連れてく! 慎一、頼むからソイツを止めてくれ!」と言い烈を抱き抱えると走って玄関に向かった 「あ!待て一生!!僕がお連れするんだって!」 と聡一郎の叫び声がする中、一生は烈を連れて外に出て駐車場まで行くと烈を助手席に乗せた そしてホテル・ニューグランドを目指した! みなとみらいへ行く方の道は案外空いてて、ホテル・ニューグランドに到着するとバレーサービスに車を預け、ホテルの中へと入って行った フロントに「戸浪と蔵持がやってる記者会見場は何処ですか?」と尋ねた フロントは烈の顔に見覚えがありお連れしようとしたら、ホテルの最高顧問である総支配人が出て来て 「私がお連れ致しましょう!」と申し入れてくれた その最高顧問は元副社長として康太と顔見知りのホテルの総支配人だった 何も言わず頷くと「では此方へ!」と言い案内する ホテルの中を和装の姿の烈が歩くと、その貫禄や迫力に皆が足を止めた 会見場へ着くと総支配人は 「暫しお待ちを!」と言い会場のドアを開けて戸浪と蔵持の傍へと行き耳打ちする 「飛鳥井宗右衛門殿がお越しです!」 と申し付けると二人は顔を見合わせて………… 「「この場へお願い致します!」」と言った 総支配人は「どうぞ、此方へ!」と謂うと烈は脇目も触れずに壇上へと向かった 一生は………会見場の出口に立ち、烈を見守る様に立っている事にした 戸浪と蔵持は宗右衛門の着物を着た烈の姿に 「「烈!!」」と驚いていた まさか来るとは思っていてなかったのだ 烈はマイクを持つと「飛鳥井宗右衛門で在る!」と迫力の嗄れた声で宣言した 「儂はテレビは見ておらんかったら何処まで話をされておるのかは?解らぬ! じゃが二人は多分……儂を心配して会見を開いたのじゃと想う! 本当なら御二方には迷惑を掛けた故、謝罪せねばならぬ身の上なのに…………本当に申し訳なかった!」 宗右衛門が謝罪をすると戸浪は 「いいえ、私達は実際、早瀬頼朝氏に付き纏っていた相手の御亭主に融通を利かせろ!と言われてました!恫喝 恐喝紛いの脅しも受け取り、我が社としても迷惑していたのです! それを皆様に知ら示めるべきだと想い善之助さんと共に記者会見を開いたのです!」と説明した 蔵持も「我等は友である君の為ならば、どんな無理をしてでも力になりたいと想う! 我等はそうして果てへと進むのだと教えてくれたのは君だよ?」と訴えた 「若旦那ゃ………ぜんちゃん………」 「我が蔵持運送株式会社も、早瀬君を誘惑していた御亭主からは飛鳥井烈と知り合いならば融通を利かせろ!利かせねば、そんなチンケな会社等潰してやる!燃やしてやる!等などの恐喝 恫喝を受けていて、警察とも相談済みだと公表するつもりで会見を開いたのだよ!」 と、蔵持が言うと戸浪も 「我が社も蔵持運送と同じ様に、烈との知り合いならば融通を利かせろと毎日の様に会社の前で騒がれ警察も出動した程で、受付の者や社員達は怖がっています! 会社の周りには明らかに毛色の違う人間が何もしては来ないが彷徨く様になり……… 我が社としても、このまま放置は出来ない!と記者会見に踏み切らせて貰いました! 総ての情報は【R&R】企業向け調査会社と【R&R】弁護士事務所に渡してあります! これ以上何かするようで有れば、法的な対処をせざるを得ない! 其れをこの場に持ちまして明らかに宣言させて戴きます! そして何よりも、飛鳥井烈に何かするのであれば、我等は黙ってなどいない! ありとあらゆる手段を駆使して…………潰す事を此処で宣誓する!」とキッパリ言った 蔵持も「烈は私の友である!年齢が違うが、私は彼を友として仲良くさせて貰っている! そんな友を傷つける気ならば、私も容赦はしないと宣誓する! 蔵持輸送の社長としても、これ以上の会社への妨害は迷惑千万! この先は司法の場で闘うしかないと思っている! その前に烈がこれ以上巻き込まれたりしない様に…………したかったんだよ私は……」と本音を吐露した 烈はニコッと笑って 「有り難う!若旦那ゃ、ぜんちゃん! ボクの為に出て下さって本当に有り難う御座います!でも大丈夫です!」と言い、その次は宗右衛門の声で 「儂としてもトナミ海運や蔵持運送株式会社にはこれ以上の妨害や邪魔などさせる気は皆無じゃ! まぁこうして公にした以上は、警察も目を光らせて、好き勝手などさせはしないじゃゃろう! 早瀬頼朝の弱い心に付け入り、あやよくばを狙うハイエナよ! 主等はもう後はない! 主等を支援していた観世音の恩恵すらない 神取のバックもない………そんな主等など赤子も同然、黙って身を引くがよい! でなくば…………儂自らトドメを刺すしかない! そうならぬ為に今直ぐ、手を引かれる事を進言しておこう! 以上を以て会見は終了とさせて戴く! 態々 お越しの皆様、本当に有り難う御座いました!」 そう言い宗右衛門は深々と頭を下げ 「この責任は飛鳥井宗右衛門がキッチリとカタを着ける事に致します!」と宣言した 此処までされたら、後はもう何も言えなかった 圧巻と言って良い態度に………質疑応答に突入したとしても、誰も何も言えずにいた が、一人の記者が立ち上がると烈に向かって 「また終焉の章とか唱えるつもりですが? 貴方の所為で正当な観世音家も潰れ、神取もお取り潰しになった 皆 みーんな、貴方の所為じゃないですか! その事に関しては謝罪の言葉もない! 本当に無闇矢鱈に呪文唱えるしか脳のない奴は、それが恐怖政治だって解っててもゴリ押しして、世界を裏から牛耳るつもりか? 子供の皮を被った悪魔が! お前が唱えた終焉の章で鴻池の一族は…………皆 野垂れ死んだ! 落魄れて何も持たない一族になる位ならば………と恐怖に………命を断つ者も出たと言うのに! 何様だんだ!お前は!」と吐き捨て……… 烈は何も言わず男を見ていた 「儂が子供の皮を被った悪魔だと言うならば、主は何だ?美濃部の一族の残党か? それとも鴻池の駒か? お前の様な駒ならば、幾つ配置しようとも、所詮は駒よ! 主が何を言おうが、何一つ主の思い通りにはなりはせん! 立花龍一!早瀬が使えないから直に来たのか? まぁ主も所詮は駒よ!使い捨ての駒にしかならぬ!」 「煩い!煩い!ガキがしゃしゃり出て来るな!」 男は顔を真っ赤にして目から血を流し始めた 口から泡を吹き出してブルブルガクガク震え始めた 「此れはあの方に報いる粛清である! 此れは正義の行動であり、我らが報いる大義で在る!」 壊れたカセットテープのように唱える 烈は戸浪と蔵持を立ち上がらせると、自分の背中に隠し距離を取らせた クーは自爆を予知して呪文を唱えた 男は両手を仰ぐように広げ 「我等が神に栄光あれ!」 そう叫ぶと…………自爆した 物凄い爆発音と共に、飛び散る血飛沫と肉片と焦げたような匂い………が辺りを包み……… 爆破の衝戟で天井パネルが落ちて飛び散った あちこちの照明器具を破壊し、凶器となり人に突き刺さったり傷を付けた 会見場にいる者達はパニックになり悲鳴を上げ逃げ惑った 破壊された天井が…………パラパラと崩れ落ちていた 爆破の衝戟は人一人ミンチに出来る程の威力で…………その会見場の総ての天井や窓や、照明器具や機材を吹き飛ばし………散乱させた かなりの人が怪我をして、血塗れになって悲鳴を上げて逃げ惑い……… さながら其処は………地獄絵図となっていま 辺りは真っ暗になり、非常用電灯に切り替わる ホテル側も物凄い爆発音にスタッフが駆け付けて来た 一生も自爆しやがった!と慌てて烈の傍へと走る 「烈!!烈ぅー!大丈夫か!!!」と心配して視界が悪い中、烈を探した そんな中 今枝は散乱した機材がぶつかりケガをしたがカメラは離さず撮影していた 悲鳴が上がり、噎せ返る程の血の匂いと焼け焦げた肉片に…………吐き気がする ホテル側は即座に警察に連絡して、警察や救命に救助を依頼した 一生は烈のいた場所に駆け寄ると………血塗れの烈が立っていた 烈は戸浪と蔵持を自分の背後に押し遣り、魔法障壁を出して守ったのだ が、二人を守る間 烈は矢面に立たねばならないから、割れた照明か、吹き上げられた機材や何やら解らないが…………明らかに怪我と火傷をしていた 「あ~自爆……そう来たのね……… まさかこんな近くで、しかもこんなに近寄られた目の前で自爆されるとは……想定外だったわ………」 と烈はボヤいていた 烈が逃げたら確実に戸浪と蔵持が怪我を負う……… クーは爆破を食い止める呪文を唱えたが、こんなに接近戦で、尚且つ威力があるならば食い止めるのは至難の業だった 一生は烈を抱き締め 「んなの想定外に決まってるやんか! 誰が目の前で自爆するなんて想像がつくよ!」と怒った 「油断してたから、随分近寄られちゃったわ……」 「俺も………会見の邪魔になるかと出口の方にいたから出遅れた………」 烈の頭からは血が噴き出ていた 一生は慌てて持っていたハンカチで烈の頭を押さえた だけど頭も顔からも血が流れ続け、宗右衛門の着物が血で染まっていた……… 一生は慌てて烈を抱き上げた 「久遠の所へ連れて行ってやる!」 「カズ………」 戸浪と蔵持も正気になると「「烈!!」」と烈の安否を確かめて叫んだ 其処へ救急隊員が入って来て、怪我人の処置に当たり始めた 救急隊員は真っ先に烈の手当てをした そして爆風で煽られ割れたガラスや機材で怪我をした者達を手当てしていた 救急隊員は「君は主治医にしか診せないとの事なのでお連れします!」と言い救急車に乗せた 一生が付き添いで乗り込む為に着いて行った 騒然とした会場から戸浪の秘書の田代がやって来て 「烈君怪我してましたね! 久遠先生の所でしょうから追いますか?」と問い掛けた 戸浪も蔵持も無言で頷いた まだ衝戟に体は震えていた………… 脳が今在る情報の処理を拒んだかの様に………何も考えられずにいた………… 田代は警察に今は精神的に何も答えられないので病院へ行かさせて貰います!と伝えた 警察の者は「後で責任者が伺うので、その時にはご協力お願い致します!」と言い、処理に当たっていた 戸浪と蔵持は田代に促され、車に乗り込んだ 戸浪は後部座席に乗り込むと震える手を握り締め 「何が起きてるんだ………」と呟いた 蔵持が「我等は烈に護られた………その分彼はまともに破片やら爆風に煽られていた………… 怪我をして当たり前だよ……」と言葉にした 「康太も何時だって命を狙われていた そして今………烈が命を狙われているんだと……痛感したよ こんな状況ならば………学校に通学するのだって無理なんだと想う……」 「…………私は烈に命を救われたんだ……… 知り合った時は彼が康太の子だなんて想いもしなかった………… 彼は何も持たない私の唯一の友になってくれたんだ そんな友を助けたかったんだよ………」 「私も……烈の役に立ちたかった 少し前にニュースにもなりましたが私は………烈を殺し掛けました 其れでも学友の会社が継ぐ前になくなる訳には逝かない……と救ってくれました…… そんな恩人の役に立ちたかったんだ私も……」 「「烈…………無事で…………」」 二人は祈る様に………口にした その頃 救急車に乗せられ処置をされてる烈は 「あ~もぉ!宗右衛門の着物が………!!」 と嘆いて着物を脱いでいた これ以上、血で穢したくなかったから、真っ先に着物を脱いだのだった 一生は「新しいの作ってやるから……」と慰めた 「宗右衛門の着物は一着 300万するのよ…… スーツで行けば良かったわ…………」 「あぁ、染料に拘って糸から染めて一年掛かるんだよな?」 「血抜き出来るかしら?」 「病院に行ったら直ぐに水洗いして業者に出してやる!」 「普通、あんなカメラの前で自爆するぅ? しかも……記者会見開くのに何の対策もしてないなんて………… 母ぁーさんの好きなホテル・ニューグランドに御詫びに逝かなきゃなのよ!」 「まさか誰も自爆するとは思っちゃいねぇよ!」 そんな話しをしてると飛鳥井記念病院へ到着した テレビを見ていた志津子が烈が怪我したと騒いだから、久遠は烈を待ち受けていたのだった 救急車で下ろされストレッチャーに乗せられ、処置室まで連れて行かれる 久遠はスタッフを集めていたから、即座に何処を怪我したのか?確かめた 一生は宗右衛門の着物を持つと、即座に裏の飛鳥井の家へと向かう 飛鳥井の家に入って来た一生に、康太は 「烈、怪我したのか?」と問い掛けた 「烈は自分の怪我より、宗右衛門の着物の血抜きが出来るか?を心配していた 300万掛かるとボヤいていたぜ!」 一生の言い草に榊原は 「確かに300万掛かりますし、作るのに1年の年月を掛けて作るので時間もお金もめちゃめちゃ掛かりますが、そんなのは烈が生きていてくれれば、それだけで良いだけの事です! その分働いて貰えば良いだけの事です! 血抜きのクリーニングと、作る費用を比べて、どちらか安いか計算しないとですね!」と謂う そんな榊原の言葉に康太は 「だな、でも宗右衛門の着物はもう一着ある事だし、大丈夫だろ!」と謂う 瑛太は「戸浪さんと蔵持さんは無事だったのですか?」と問い掛けた 一生は「烈が庇ってたから無傷だと想う!」と答えた 康太は「あぁ、あの記者会見場に潜り込む可能性があったと……謂う事か………… そんな警戒なんて設けてない作りだったから、用心の為に駆け付けた訳か………」と何故態々行ったのか?腑に落ちた 一生は「取り敢えず血が固まらねぇ様に処理して明日クリーニングに出してくれ! 俺は烈に着いていてぇから行くな!」と謂う するとレイか泣きながら一生に飛び付いて 「ぼきゅも!」と言った 「みえてたにょに………なにもれきなきゃった……」 と言いレイは泣いていた 一生は「俺だって会見場にいたのに何も出来なかった!」と悔しそうに謂う 「かじゅ………」 一生はレイを抱っこすると家の外に出た 康太は「若旦那と善之助が来そうだな!」と謂うと榊原と共に病院へと向かった  病院へ行くとやはり、戸浪と蔵持が待合室の椅子に座っていた 田代が康太と榊原を見付けると駆け寄り 「烈を怪我させた………申し訳なかった………」 と深々と頭を下げ謝罪した 戸浪と蔵持は憔悴しきった顔をしていた 其処へ久遠がやって来ると、あまりの憔悴ぶりに 「お前等点滴な!」と告げた そして康太に「個室へどうぞ!説明する!」と告げた 看護師の鈴木泰地がやって来て憔悴した戸浪と蔵持を立たせると車椅子に乗せた 自分は戸浪を押して、スタッフに蔵持を押させて個室へと向かう エレベーターに乗り個室フロアへ向かう 個室の階に到着すると泰地はサクサク動き、ソファーに座らせた そして腕を捲り上げ消毒すると点滴の針を刺した 点滴をスタンドに吊るして様子を見て、出て行く その動きに無駄な動きは一切なく、より洗練された動きをしていた 久遠は「アイツが当直の日で良かったぜ!」と笑い康太と榊原をソファーに座らせると 「烈、火傷が酷いし、多分だが照明器具が割れたのか?細かい破片が突き刺さっている 其れを今レントゲンを見ながら取っている状況だ!頭の怪我も縫う程で「こんなに頭ばかり怪我してたら大人になったら絶対にハゲじゃない!」と興奮して叫んでた………傷口から血が噴き出たから、怒った程だ! で、入院な!この機会に検査も入れておきたいしな!」 「……………アイツ………沖縄に逝かねぇとならねぇからな…………」 「あ~、それ本人も言ってたな! なら親父を連れて行けば許可してやる!と言っといた!」 「今回は起きてるのか?」 「寝ないのか?と聞いたら痛くて寝れないわよ!とボヤいていたぜ! 処置が終わったら此処へ運び込む! 薬で眠らせるつもりだ、と謂う事で入院な!」 と言い久遠は出て行った 榊原は「小賢しい事してくれますね!」と怒っていた 戸浪は「オーデションあるんだろ?」と心配そうに問い掛けた 康太は「其れ誰に聞いたのよ?」と問い掛けた 「七夕の頃にはオーデションの話は出ていたよ? 私と善之助さんとで協賛に名を連ねましょうか?と話していましたから!」

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