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第50話 雲外蒼天 ❸
飛鳥井家 転生者 飛鳥井宗右衛門の話題は何時だって沖縄の地にいたとしても届いて来ていた
転生者として前世の過去を持つ存在
其れが飛鳥井烈だと聞いて、一度会ってみたくて小鳥遊に無理を言った
本当に情け容赦ない子だと喜屋武は苦笑した
が、烈は容赦なく檄を飛ばした
「呆けるでない!
主は社員の生活を保障せねばならぬ社長と謂う重責を背負っているのを理解しておるか?
トップに立つべき存在が、こんなに腑抜けでは………明日は潰えてなくなるしかないな!」
厳しい言葉だった
が、喜屋武は「それは困ります!私は社員の生活を保障せねばならぬ責任があるのですから!」と答えた
「ならば答えられよ!」
「…………この事務所の………存続はその内家族にとって重荷になるだろう………
此れと言ったタレントも………今はいない
過去に一世を風靡した歌姫は引退して………ジワジワと廃れて行った
もう沖縄を発祥としたタレントなんか………誕生はしない
だからこそ不良債権になる前に………妻には十分なお金を渡し………離婚した」
「莫迦ねぇ………本当に大切なの見失っちゃあ駄目じゃない!」
「…………其れしか………してやれないから………」
烈が何か言おうとした時 竜馬が「リーダー!ラストだから!」と呼んだ
烈は立ち上がると皆の所へと向かった
そしてカメラに向かって
「皆 楽しかったぁ〜?
ボクは最高に楽しかったわ!
此処で告知です!
8月10日11日沖縄の地でオーデションが開催されます!
オーデションにはボク単体として審査員として出るけど、【R&R】も協力してくれるから楽しみにしててね!
こうして皆の歌声聴いてると、本当にイベントやりたいと思っちゃったわ!
【R&R】も動き出さなきゃね!」
と話す
メンバーは【リーダー!大きなイベントやりたいよぉ〜!絶対にやろうね!】と叫んだ
「楽しい夜を有り難う!
今日の参加者は【R&R】メンバー、RODEOÑ、Strong Hi、そしてエイセイ、彼はボクの弟子になった子だから!
今後とも宜しくね!」
竜馬が「リーダー、何時弟子取ったの?」と問い掛けた
「ほんの数分前よ!
今後はエイセイはボクの許可なくは使えはしません!なので後から欲しいとか、使いたいとか
戻って来てくれ、とか巫山戯た事は受け付けません!なのでボクの弟子のエイセイを今後ともご贔屓に宜しくお願いします!」
と宣戦布告した
「それじゃオーデション楽しみにしててね!
TVで放送されるらしいからね!またね!」
メンバーもRODEOÑもStrong Hiの皆も手を振り撮影を終えた
オリヴァーが「はい!ストップ!」と謂うと生配信は終了した
ヘンリーは「生配信終了!」と声を上げた
撮影を終えると竜馬は烈に
「彼、何処からか返してとか言われるの?」と問い掛けた
「そりゃね、パッとしないグループが、RODEOÑやStrong Hi、そして何より【R&R】と組んでYouTubeに出たりしたら話題が上がり、間違いなしで人気手に入れられるんじゃないかって近寄って来るじゃない
そりゃ欲しいわよ、パッとしないから!」
「あ~そうなるよね……馬鹿だな、人選ミスしたって後から気付いても後の祭りなのにね!
さぁ帰ろうか!烈」
「そうね、キャンちゃんまだ話の途中だからバスに乗りなさいよ!」と告げた
喜屋武社長は皆と共にバスに乗りホテルへと戻った
烈と竜馬は小鳥遊の車でホテルへと戻った
ホテルへ戻ると烈は喜屋武社長を自分の部屋へと連れて行った
竜馬はメンバーや皆を、既に宴会してるリビングへと連れて向かった
烈は喜屋武を部屋に連れて行きソファーに座らせると
「話の途中だったわね!
ボクは貴方の奥さんだった人とも話をしたいのよ
さぁ貴方の元奥さんに電話してくれないかしら?」と言い出した
「え?………それは出来ないよ………」
「なら電話番号吐きなさい!
有耶無耶にして過ごそうとは思わないでね
貴方が吐くまで何日でも問い詰める気だから!
其れとボクは【R&R】企業向け調査会社も持ってるからね、調べるのなんて簡単なのよ!
依頼すればほんの数分で連絡先は解るわ!」
一歩も引かない瞳で見られ………喜屋武は諦めて携帯を取り出すと烈に渡した
「琉美(りゅうみ)と謂うのが元……妻の携帯だ………」と告げた
烈は躊躇する事なく電話帳を探り、琉美と謂う名前を見つけ出すと電話を掛けた
『はい、琉美です!貴方どうされました?』と電話に出たのは、ハツラツとした元気そうな声の女性だった
烈はハンズフリーにしてテーブルの上に携帯を置いた
「ボクは飛鳥井烈と申します!
キャンちゃんの奥さんの携帯で間違いないですか?」
『…………夫とは別れてるので………今は妻ではないです………何か?用ですか?』
「用がなきゃ電話なんかしないでしょ?」
其れもそうかと………琉美は息を飲んだ
「で、単刀直入に聞くけど、貴方はもうキャンちゃんの事、愛してないのかしら?」
『何故その様な質問を、貴方に答えねばならないのですか?』
「必要だから聞いてるんだけど?」
『何故必要なんですか?』
理由が解らない………と琉美は呟いた
「今でもこうして電話に出るんだから、今も気にしてるし、今も愛してるんでしょ?
キャンちゃんは言い出したら聞かないから、飲むしか無かった
そうじゃないの?」
『貴方は………あの人と…どんな関係なんですか?
そんな………踏み込んた質問を他人の貴方になぜ答えねばならないのですか?
失礼ですよ!貴方!』
怪訝な声で怒りをぶつけて来る
「失礼なのは承知で聞いてる、ほんの知り合いだけど?」
『ほんの知り合いが何故私に電話なんかしてくるんですか?』
「ねぇ今も愛してるんでしょ?」
『何故貴方に答えねばならない?
無関係な貴方に謂う事じゃない!』
「質問に答えてはくれないのね!
まぁ良いわ、貴方がキャンちゃんを見捨てるなら、そのまま指を咥えて見てれば良いのよ!」
『え?………』
「連絡はしてやったから、何かあったって後から文句は聞かないからね!
後になって何故あの時、ボクの話を何故聞かなかったのか?と、後悔だけ抱き生きて行きなさい!」
『あの人に何かしたら承知しないわよ!』
「貴方には関係ないんでしょ?
そうね、少し弱ってる今ならば、簡単にトドメなんて、刺せてしまえるかしら?
どうなっても関係なのよね?
未練も情もないのなら、どうなっても構わないのよね?」
『何を言ってるの?貴方!』
悲鳴に近い声があかる
「人なんてのはね、意図も簡単に陥落してしまえるのよ!
一縷の望みがなくなれば、あっさりと生への希望がなくなるものなのよ!
そしたら、想いも未来も途切れてしまえるからね
ボクが手を下さなくてもね、絶望へ引き摺る言葉を囁やけば自ずと命を落としてしまえるのよ!」
『…………っ!!』
「でも貴方には関係ないんだし、構わないわよね?
近い内にキャン芸能事務所社長 死亡のニュースなんか、目にしちゃっても関係ないんだものね?」
『巫山戯てるんですか!
あの人に何かしたら絶対に許さないから!』
「え〜別れてるんでしょ?
だったら野垂れ死のうが、どうなろうか関係ないじゃない!」
『っ…………!!』
「関係ない人間は口は挟めない!
無関係な人間ならば尚更ね!
貴方は其処で指を咥えて見てなさい!
それが貴方の望む未来なんでしょ?』
『そんな事は望んてなどいません!
…………あの人を助けて下さい!
あの人は言い出したら聞かない…………頑固者です
だから………あの人の思いを受け止めて引くなかった………
総ては………私たちの幸せを考えて決めた事だから……』
「言い訳?別れた言い訳を口にして、自分を納得させてるの?惨めね!」
『貴方に何がわかるのよ!
言い訳さえ言わせて貰えず線引きされた気持ちなんか貴方には解らないじゃない!』
「解らないわよ!
当たり前じゃない!
貴方の事、知りもしないボクに何を求めるのよ?」
『それでも!それでも………あの人の知り合いだと言うならば!
…………あの人を死なせないで下さい………お願いします………」
震える声は泣いているのかも知れない
が、烈の声は冷たく
「そんなに心配で、懇願するのならば、何故別れたのよ?
関係を途絶えさせたくないならば、とことん解り会うまで、話し合いをすれば良かったんじゃないのかしら?」と一蹴した
『あ………あぁ…………話したい事なら沢山あったけど………別れを切り出されたら………何も言えなかった……』
「事務所の経営、あまり上手く行ってないのよ」
『え?………それは初耳です』
「だから資産が叩き出せる今 貴方達と別れる事を選んだんじゃない!
貴方達の生活の保障が出来る内に手を打ったんじゃない!
ボクなら、愛してるなら共に死ぬまで朽ちて行けば良いと想うんだけどね
貴方の元夫は、貴方に苦労をかけたくなかったのね
そして一人で背負って、総てを抱えて死ぬ気なのよ!
でも構わないでしょ?他人なんだし!」
『止めて!今すぐにあの人を止めて!
死なさないで下さい…………お願いです
お願いですから…………』
「どうしようかしら?
でも、どうしても止めて欲しいのなら、直接ボクに頼みなさいよ!
ボクと貴方は初対面よ?
そんな重大な事を初対面の奴に背負わせて大丈夫だと想う事が恐ろしいわ!
あれ?間に合わなかったわね?
なんて言われるのか関の山よ!
嫌ならば子供達を連れてボクが謂う場所まで来なさいよ!
貴方が来るまでならば、止めて置いてあげるわ!」
そうして烈は住所を告げた
『解りました!私達が到着してあの人が死んでいたならば………貴方の命などないと思いなさい!』
言い捨てて電話は切られた
烈は電話を切った後に「愛されてるじゃない!」とボヤいた
喜屋武はタジタジで汗をかきまくっていた
烈は部屋から出てリビングに逝くと竜馬に
「竜ゅー馬、飲み物頂戴!」と頼んだ
竜馬はカルピスを少し薄めに作って烈に手渡した
「竜ゅー馬、お客さんが来るから、そしたらボク達の部屋にお通ししてね!」
「了解だよ!」
と竜馬が言うと、リビングを出て部屋へと戻った
暫く待つと来客が告げられた
竜馬が「烈、客さんだよ!」と言い来客を連れて部屋に入って来た
琉美と共にやって来た子供達は、ゴロゴロと5人もいた
琉美と謂う女性は、はぁーはぁーと息を切らして
「則義さん!生きてますか?」と慌てて開いたドアから飛び込んできた
烈は優雅にカルピスを飲み「あぁ、来たわね!」と言った
竜馬は烈の横に座り事の成り行きを見守っていた
喜屋武は「琉美………」と名を呼んた
琉美と呼ばれた女性は、喜屋武の胸に飛び込んで号泣した
烈は「座りなさいよ!」と子供達に話し掛けた
クォーターと謂うだけあって、どの子も目鼻立ちがハーフっぽい子達だった
竜馬は「おー!由香里が見たら欲しがるかもな!」と謂う
「ボクも使いたいと思わせそうな子達ね!
でもね、芸能界は混血キャラなんて腐る程にいる時代だからね
差がないと生きて逝くのは大変なのよね」
「だね………頭一つ飛び抜けた何かがなきゃ埋もれて、気配もなくなるからね………」
簡単に話されてる会話に、喜屋武の子達は言葉もなく唖然としていた
そして目の前にいる存在に気が付くのだった……
烈はそんな喜屋武の子供達の事などお構い無しで
「竜ゅー馬、皆はキッチンかリビングで宴会してるの?」と問い掛けた
「今夜はリビングでクーラーギンギンに掛けてビール飲んでるよ!」
「何か沖縄に来たら猫達働かないのよね……」
「あ~クー達は飲兵衛の仲間入りしていたわ!」
「島人(しまんちゅ)は呪詛吹き掛ける奴とかいないのかしら?」
「其れは解らないよ………」
何で其処で島人出て来るのよ?と竜馬は思った
そもそも島人…と謂うか……沖縄にはユタとかノロとかいなかったけ?と思考を巡らす
そんな竜馬の想いはどこ吹く風か?
烈はクォーターの子供達を見て
「3年位、イギリスへ行きレッスンを受けてさせて様子見るしかないかしら?」と言った
竜馬も「だね、様子見て由香里が匙投げたら、其処までだと想う!」と顔面偏差値の高い子達を眺めて言った
大きい子から 高校生位の男の子、それを筆頭に高校生位の女の子、中学生位の女の子、小学生位の男の子と女の子の5人もいたのだ
長男 則人 長女 陽菜 次女 茉莉 次男 琉二 三女 琉菜の5人兄妹
しかも皆 クォーターの血が濃く出た子達だった
長男は烈と竜馬を見て「【R&R】のリーダーとサブ?」と呟いた
次女も「え?嘘……やっぱ…本物?」と呟いた
後の子は両親が気になり、それ所じゃなかった
喜屋武は琉美を抱き締め落ち着かそうと、背中を撫でていた
琉美は取り乱していたが、頭が冷静になると喜屋武から離れて電話の子を探した
部屋を見渡すと、優雅にカルピスを飲む子が視界に飛び込み
「貴方が電話して来た子なの?」と問い掛けた
烈は琉美を射抜き「そうよ!」と答えた
目の前の子はまだ子供だった
子供の様な声に、まさかと思ったが、まさか次男と対して変わらぬ子だとは………
思ってもいなかった
が、琉美を視る眼が一瞬で蒼く光り、雰囲気が一瞬で変わると、琉美は息を飲み込んだ
足を組み、唇の端を吊り上げて嗤う…………その顔に嘘や誤魔化しなど、許されない厳しさを感じていた
「先ずは座りなさいよ!
キャンちゃんもほら、座りなさい!」
そう言われて喜屋武はソファーに腰掛けた
琉美もその横に座らせ、烈を見た
「で、話の続きしても良いかしら?」
喜屋武はゴクッと唾をのみ込み「はい!どうぞ!」と答えた
子供達は、一瞬にして変わった雰囲気の違いに身を強張らせ………成り行きを見届けるしかなかった
「ねぇキャンちゃん、貴方は生活の保障をする事が愛だと勘違いしてない?
貴方は妻を莫迦にし過ぎなのよ!
聞けば良かったのよ、自分と共に落魄れてくれないか?って!」
「…………それは出来なかった…………
妻の生活と我が子の生活を死守する事が………夫として俺がせねばならない事だから!」
「其処が間違ってるのよ!
金貰って見切れて良かった!と喜ぶ奴もいるわよ
貴方の妻は、泥舟に乗らなくて良かった、と喜ぶとタイプだと思うの?」
「…………琉美はそんな事を考える奴じゃない………」
「でしょうね、こうして貴方を気遣い飛んで来てるんだから!」
「…………俺は情けない父だった………せめて最後は妻と我が子には………重荷なんか背負わせない様に………と思った………」
「貴方の子、貴方の為ならば、自分の容姿を武器にして、この前【R&R】のオーデションに応募して来てたわよ
調べれば今回のオーデションにも応募して来てる
喜屋武則人、喜屋武陽菜、喜屋武琉二、この3人常に色んなオーデションに応募をしているわ!」
「え?嘘………」
喜屋武は信じられない顔を烈に向けた
竜馬は「あぁ、そう言えば応募して来てたね!
和顔を求めていたから、選考から外したけどその顔は間違いないね!」と何処かで見た顔だなぁ〜?と思っていた疑問が片付き納得していた
「子供達は父親の事務所があまり上手く行ってなかったのを知っていたのよ!
だから自分達を切り売りし始めていたのよ
その前に両親が離婚したって訳ね!」
その話を聞き喜屋武は「お前達………」と涙を流し深々と頭を下げて謝罪した
「不甲斐ない親父で済まなかった………
お前達に苦労を掛けたくなかったんだ………
俺は……シングルマザーの母の元に生まれ父親は知らずに育った
何時だって恋に夢見る母は子供に見向きもしなかった…………そんな俺にとっての家族は妹と祖父母だけだった
が、妹は………母親そっくりで恋に夢見て………壊れて行った………
そして祖父母も楽させてやる前に他界した
それ以来俺は我武者羅に金を稼ぐ為に生きて来た
事務所の社長に見出され、社長を受け継ぎ社長として生きて来て、琉美と出会い結婚して家族が増えた
だから、必死に働き何とかお前達を養って来た
だがバブルが弾け、沖縄出身のタレントも本土へ移り、芸能事務所も廃れて行った………
地元の商店街や商工会の協力で何とかやって来れたけど……先は見えていた
ならば余力のある今の内に………と思ったんだ
決してお前が嫌いになった訳じゃない
お前達の事は………一瞬たりとも忘れた事はない
愛している………愛しているんだ!
もう残された俺の家族は英生とお前たちしかいない………」
やっと本音を吐露した喜屋武だった
烈は「やっとスタートラインに立ったわね!
さてと家族の再生計画を口にしようかしら?
良いかしら?」とボヤきつつ今後の事を口にした
喜屋武は「え?どう言う事ですか?」と尋ねた
「喜屋武琉美、彼女のブログはオリジナルの時短レシピの料理や沖縄の郷土料理を分かりやすく皆に知らせているのよ!
料理のレシピや工夫を活かしたアイデア等を綴ったブログは読者10万人いるのよ!
ボクもね沖縄料理のレシピとか一陽たんとかに見せて作って貰ってる程なのよ!
そのレシピを1冊の本に纏めてあげるわ!
そして活動するならば、所属事務所はキャンちゃんの事務所に所属して働きなさい!
容姿も純和顔でめちゃくそ男前じゃない!
キャンちゃんに相応しい子よ!
普通娘を持つ親ならば外人の血の混じった奴なんか反対するわよ!
バター臭い顔した親族なんて嫌だからね
それでもキャンちゃんを選んで支えてくれた妻なのよ!大切にして離しちゃ駄目よ!」
喜屋武は妻の手をギュッと強く握り締め
「はい!」と答えた
「そして子供達は英会話に問題がなければ、上の二人はイギリスへ行かしてあげるわ
鳳城由香里の本場のレッスンを受けて、三社共同事務所に籍を置き働きなさい!
3年の契約で、3年間で名を売り金を稼げる存在になりなさい!
そしたら3年後、キャンちゃんの事務所に移籍して働けば、まぁ食うに困らない程度の維持は出来るでしょ?
それ以上の者になるか、それ以下にするかは、喜屋武則人と陽菜の実力次第
誰もが………道は敷いて貰えても、成功する訳じゃない!
道を見失い失速して消えて逝く莫迦は必ずやいる訳だけどね!
一度だけチャンスをあげるわ!
それを生かすも破滅させるも本人次第!
総ては本人に必ずや返る宿業となり降り注ぐ
だからチャンスを掴んだのならば死に物狂いでモノにするのよ
チャンスは一度!この家族が家族として再生出来るのも一度!
この一度のチャンスをどうするかは?貴方達次第よ!」
烈が言うと琉美は「そのチャンス、必ずや掴んで絶対に離しません!」と口にした
則人も「チャンスが貰えるならば………家族の為に頑張るよ!」
陽菜も「ならばそのチャンスを掴んでママと同じ様に絶対に離さず……掴んでみせます!」
と答えた
「まぁ言うのは簡単よ
後は血反吐を吐いてものし上がるしかない
それは総て本人の自覚と意識に掛かっている宿業なのよ!
他人の所為にする事も、言い訳すら出来ない未来へと繋がるのよ!
覚悟なくば挫折するしかない果てへ行きなさい!
そして掴むのはチャンスか?それなりの未来か?挫折か?其れ等は本人次第の未来となる!」
とてもキツい一撃をかまされ………則人と陽菜は嗤った
「望む所だ!」「望む所よ!」と挑発的な顔で嗤う
こう言う生意気位の子は由香里好きだろうな………と烈と竜馬は思った
烈は「キャンちゃん、今回 三社共同事務所のスカウトキャラバンに協力してくれてありがとう!
弱ってる貴方の運気を詠み、星を詠み、今の貴方の現状を詠み、未来を占った
それは総て、協力してくれたお礼に少しだけお節介を焼いて果てへと道を繋げる為にしたお礼です
まぁ、今回は本当に自分でも大盤振る舞いだとはは想うわよ!
だから総ては、多大な協力に似合うお礼だと思って下さい!
ボクは滅多と無料で星は詠みませんし、無料では動きません!
貴方の協力の対価として受け取って下さい!
そしてボクが出来るお礼は此処まで、です!
後は家族でトコトン話し合い、協力して【家族】として生きて行って下さい!」と告げた
喜屋武は「有り難う……俺は今回………沖縄が再び注目されてる事を願って会場となる場を提供した
そして沖縄の良さを解って貰おうとホテルを提供した
其れには対価は求めては居ない………
だから………此れは大盤振る舞い過ぎだよ烈君……」と本音を吐露した
烈は宗右衛門の声で
「沖縄を再び陽の目を見せたいのならば、主を支える存在は必要不可欠!
そんな片足もぎ取られた状態では立ってるのもやっとではないか!」と鼻で笑って一蹴した
嗄れた老人の様な声で話され……
琉美や子供達は驚いていた
「儂は飛鳥井宗右衛門!
転生者として明日の飛鳥井の道を敷いて逝く者じゃ!まぁ宗右衛門を出した対価にしては安すぎるが、今回は大盤振る舞いして出てやった
そして運気を詠み、星を詠み、運命を詠んでやった!そして主の未来も導いてやった!
それを努々忘れるでないぞ!
でなくば対価は死んでも取り立ててやる事にしておるのじゃよ!
死した後でも苦しい労役をさせてやるから覚悟しておけ!」
と話し、ハッハッハッと高笑いして飛ばした
そして脱力すると「竜ゅー馬、お腹減ったわ……」と話す
「烈、リビングに行く?」
「そうね、あ~甘いの食べたい!」
烈が叫ぶと「それは無理やで!」と声がした
その声の持ち主に目をやると白黒斑な猫が立っていた
「スー!沖縄に来てから仕事しないわね!
ネコの癖に日焼けしてるじゃない!」
「まぁそんな愚痴言ってる暇に腹減りさんなら食べに来るんやで!」
「解ってるわよ!
さぁ、キャンちゃん、後日差し入れで許してあげるから、今夜は飲んで行きなさいよ!」と言い立ち上がると白黒斑の猫と共に部屋を後にした
リビングに行くと………ご機嫌な奴らが飲んでいた
烈は「沖縄のオーデション会場やこのホテルを借りるに辺り甚大な協力をして下さった芸能事務所の喜屋武社長よ!
そしてその奥様とお子さんなのよ!
皆 以後 御贔屓にお願いしますね!」と飲兵衛に紹介した
飲兵衛達は、ご機嫌に喜屋武社長を招き入れ、飲み始めた
烈は疲れたから、席に座ると超ヘルシーデザートを食べていた
康太は「どうしたのよ?」と問い掛けた
「ご飯食べる暇なくて………疲れちゃったから甘いの欲しくてね!」
と謂うと義泰は往診の鞄を取りに行き、烈の診察をした
血圧や脈拍を測り乳酸値等を図る
其れ等をチェックして異常はなかったが
「点滴しとくか?」と問い掛けた
「明日 起きられない程ならお願いね!
義泰も飲んでて大丈夫だから!」
「儂は倅にお前の事を頼まれておるからな!
沖縄に来ている間のケアをしてないと難癖つけられるのは嫌なんじゃ!」
「ならさ、義泰に頼み事するからさ、聞いてよ
其処の沖縄の芸能事務所の社長さんを、明日病院へ連れて行き検査してあげてよ!
下手したら入院になるんじゃないか?って程に弱ってるわよ!
家族のいない部屋に帰りたくなくて、酒ばかり飲んてたんでしょうね………
ポリープ位あるんじゃないかしら?
かなり星にも影響出てたから手を打って上げて!」
「よし!明日朝イチで儂の知り合いの病院へ連れて行き検査してやるとする!」
「肝臓、かなりヤバいかもよ」
「楽しくない酒を飲むから、そうなんるんじゃよ!」
義泰は喜屋武社長の脈を取ったり触診をした
そして内臓系と烈が言ったから鳩尾辺り押したら、うっ!と痛みで顔を歪めた
「こりゃ入院かもな、入院は免れたとしても暫くは通院が必要となるな!」
「それは奥さんが面倒見てくれるから大丈夫よ!
家族も協力してキャンちゃんを支えてくれるわよ!」
と謂う
康太は「偉く顔面偏差値の高い兄弟だな!」と喜屋武社長の子供を見て言う
「まぁ顔は良くても飯は食えない世界だから、イギリスに逝かせて鍛え上げる予定なのよ!
あ!母ぁーさん、ボクはこの度弟子を取りました!
エイセイ、此方においで!」
と謂うと英生は烈の傍へとやって来た
「ほら、ボクの弟子なんだから自己紹介しなさい!」
「喜屋武英生と申します!
宜しくお願いします!」
と言い深々と頭を下げた
自己紹介する英生を見て康太は
「お前の逢いたがってたグループのボーカルかよ!」と言った
「そうなのよ!母ぁーさん、凄くない?
しかもキャンちゃんにエイセイ貰ったのよ!
だからエイセイはボクのなのよ!」
「大切にしろよ!」
「解ってるわよ母ぁーさん!
あ、父ぉーさん、【今日の献立にどうかしら?】のブログの喜屋武琉美さんよ!」
烈が言うと真矢と玲香と京香と美緒と志津子が目をキラーンと輝かせ
真矢が「榊原真矢です!烈の祖母です!」
玲香が「飛鳥井玲香です!烈の祖母です!」
京香が「飛鳥井京香です!烈のママです!」
美緒が「我は兵藤美緒と申す!烈の祖母的な存在です!」
志津子が「私は飛鳥井志津子!烈の祖母的な存在です!」
そう自己紹介してると和華子も沙羅も参戦して
和華子が「私は蔵持和華子!烈の姉的な存在です!」
沙羅が「私は戸浪沙羅!烈の学友の母になります!」と自己紹介した
琉美は「喜屋武琉美です!宜しくお願いします!
あの………榊原真矢さんと榊清四郎さんですよね?」と問い掛ける
清四郎は「榊原清四郎です!私は烈の祖父になります!」と自己紹介した
烈は「じぃたんはね、父ぉーさんのパパさんなのよ!」と謂う
榊原は「榊原伊織です!烈の父になります!
今日の献立にどうかしら?見てます!
参考にさせて貰ってます!」とスマートに言う
「父ぉーさん、書籍化したらサインして貰いたいわよね!」
「其れは是非貰いたいです!」
榊原が言うと慎一や一陽は頷いていた
琉美はすっかり皆に溶け込み、仲良く料理談義に花を咲かせていた
烈はその場から離れて兄達の元へと向かった
「にーに!黒くなったわね!
ハワイに行きました!って言ったって通用するわよ!」
流生が「ならハワイに行ったんだ!って言おうかな!」と笑って言う
翔が「其れは駄目だよ!オーデションの審査員に烈いるなら僕達がハワイに行ってるとは思わないよ!」と正論を言う
兄弟はうんうん!と頷いていた
そして横に寝てる一希を見ると
「黒い幼児なんて嫌だわ………」と言い抱き上げた
そして横に座ってる凛を見て
「凛、同じ位黒いじゃない!」とボヤいた
竜胆が「そう言うな!宗右衛門!色白のもやしよりは良いじゃねぇかよ!」と嗤う
「もぉ!椋まで黒いじゃない!」
東矢は「…………コレは必然的な日焼けだから………」と呟いた
「何が必然的よ!ボクが忙しいの良い事に泳ぎまくっていたじゃない!」
クーが「まぁまぁ!」と窘める
「クーたん、沖縄に来てから泳ぎっぱなしで、護衛猫の役割果たしてないじゃない!」
「島人いるから、大丈夫だろ?」
「それもそうね、島人いるからね………」
竜馬が「其れさ、さっきも聞いたけど、島人いるとどう違うのさ?」と問い掛けた
クーが「この土地柄って事だよ、結構あっちこっちにユタやノロの結界あるし、公の場は守られているからな、観光客は安全に過ごせる配慮がなされていたりする!って事だよ竜馬!」と説明してやった
「なら其れならラスボス近付けないとか?」
「…………そんなに簡単じゃないけどね
来ようと思ったら来ちゃうわよ!
そして手薬煉引いて殺しの算段に掛かるわよ!
この星で安全な場なんて何処にもないわよ!
来るならもう既に来てるでしょ?」
とボヤくと康太が
「まぁアイツは今 戦火の大地の高みの見物に忙しいんだろ?」と吐き捨てた
「ザバザバ死ぬの見て魂を栄養分にしてるんでしょうね………本当に嫌になるわ!」
家族や仲間は何と言う会話よ………と想う
阿賀屋は「楽しい酒を飲んてるんだから、血腥いのは止めてくれ!」と謂う
「それもそうね!」
「それよりも其処の沖縄の芸能事務所の社長、紹介してくれよ!」と謂う
「キャンちゃん!」と呼び出し
喜屋武が来ると「此方 阿賀屋蒼佑氏よ!」と紹介した
喜屋武は「え!!!そんな大御所……」と驚いていた
「大御所だって人間なのよ、そんなに引かなくてもタダの飲兵衛よ!」
と、烈はボヤく
阿賀屋は「阿賀屋蒼佑です!え、何々?事務所の立て直しに力を貸して欲しいって?
仕方ないですね、其れならば後日屋敷の者に申し付けスタッフを向かわせるとします!」とサラッと言葉にした
喜屋武は「そんな事は申してはおりません………」と謂うが、やはり聞く耳を持たぬ者は………聞いちゃいなかった
「え?立て直しじゃ甘い?
それ以上を要求されても、後はスタッフの練度の鍛え上げしかないじゃないですか!
スタッフの練度は既にかなり良いので、やはり経営面がザルなので、そこら辺を徹底的に管理出来るスタッフに監視させながら教育するしかないですね!」
と解ってて嗤い話す
本当に厄介な御仁なのだった
しかもその横で鷹司と紫園は嗤っていた
喜屋武は「気絶しそうです………」と呟いた
阿賀屋家に楯突けば、芸能界では生きられぬ
芸道を守護する神的存在とまで謂わせる存在なのだ
こんな小さな沖縄の地の芸能事務所なんて、吹けば飛ぶって…………
阿賀屋は嗤って烈と話し始めた
「やっぱイギリスの地を警戒して弟子にしたのか?」と問い掛けた
「キャンちゃんがポンッとボクにくれたのよ!
だからボクは受け取って弟子にしたのよ!
映像とか裏方も学ばせ、基礎体力も着け修行させるわ!
その間も絶え間なくメディアに出て、イギリスの地の奴等が吠え面かくの眺めてるつもりなのよ」
「………本当に主は底意地が悪い………」
「ボクはとても優しい天使みたいな子なのに!」
「まぁ天使の輪を持ってるけど、おめぇは天使にはなれねぇだろ?」
「まぁ空気が合わないからね、天使にはなれないわね!」
「その台詞吐けるのはきっと炎帝かお前位だよ……」
阿賀屋がボヤくと康太が
「オレに喧嘩売ってんのか?」と睨み飛ばした
「お前に喧嘩売った瞬間、氷漬けになるやんか!
それは勘弁されたい訳だけどね!」
阿賀屋のボヤきに康太は笑い飛ばした
楽しい一時に喜屋武は心底安堵の息を吐いた
そして何時しか………気絶する様に倒れた
心配する琉美に榊原は
「其処いら辺に寝かせて置くので、朝になったら義泰と共に病院へ連れて行きなさい!」と言った
琉美は何度も「はい!」と答えた
その夜の宴会は終わりを告げ、其々の部屋へと引き上げて行った
喜屋武家族はリビングに取り残された
小さな子達はソファーで寝かせた
則人は「………あの子は………子供なの?大人なの?………あの眼で見られると………凄く怖くて………
其れで以て誰よりも優しくて………泣きたくなる
誰よりも見てくれてる………と信じられる………不思議な子だね……」と口にした
陽菜も「あの子は……琉二と同い年位なのよね………
なのにあの子はエッセイを書いたり、【R&R】のリーダーとして働いている
プロフィールを見れば飛鳥井建設 施工の相談役
だとか………
ヨニー©イギリスの副社長もしていると書いてあった…………子供なのに………あの威厳………
オーデションでもあんなに緊張なんてしなかったのに………凄く怖かった………」と本音を話した
琉美も「私も………電話の声が幼く感じたけど、まさか子供だなんて想いもしなかった
だけど………あの瞳に視られた時………心の内まで暴かれてしまいそうで怖かった………
琉二と変わらぬ年端の子なのに、その迫力と威厳のある態度に足が竦んだわ………
でもこうして想えば………あの子の背負うべくモノは計り知れず重いのですね………言葉なんてないわ」と心の内を吐露した
則人と陽菜は母に寄り添い、背中を撫でた
こうしてこの親子はずっと寄り添い支え合い生きて来たのだ…………
翌朝 喜屋武則義は義泰に病院へと連れられて行かれた
琉美達家族は飛鳥井の家族や皆に礼を言い、義泰と共に病院へと着いて行った
喜屋武社長は入院となった
が、其処までの長期ではなく、体調を整えれば退院して良いと言われた
スカウトキャバンまでには退院して、協力出来る事を告げて来た
烈は朝一番で東都出版へ脇坂篤史を指名して電話を入れた
脇坂は『どうされました?』と電話に出た
まさか………連載止めると言われるんじゃないかって………戦々恐々な感じで話し出す
廃刊間近の雑誌だったのに………今じゃ人気の雑誌になっているのだ……辞められたら物凄く困るのだ
「脇ちゃん、今日の献立にどうかしら?と謂うブログ書いてる人知ってるかしら?」
『今日の献立にどうかしら?って沖縄在住の主婦で、沖縄の郷土料理とかオリジナルの時短レシピとか、日常のアイデアだの綴っているブログですか?』
「そうよ、それ!
レシピを一纏めにして出版とか出来ないかしらって思って連絡したのよ!」
『え!あのブロガーさんは何処も契約出来ないって有名ですよ?』
「ボクに任せてくれるって言ってくれたから、ならば信頼すべき脇ちゃんにって思って電話したのよ!」
『是非にお願いします!
エッセイの連載止めたいわ!と言われるんじゃないかって?戦々恐々でしたよ!僕は!』
「後 10回はエッセイは溜まってるから大丈夫よ!
ボクの後は竜ゅー馬が……と謂うか、アーノルド・ウッズスタンが連載始めて書いてくれるわよ?
心理学の第一人者がエッセイ書いたら、結構話題になるかもね!」
『其れは確約貰える話ですか?
でも貴方には………野坂の件で多大な配慮を戴いたので………僕には返せるモノなど何一つない
なのに…………ですか?』
「脇ちゃん、別にボクはお返しや見返りが欲しくて人に何かしてやるつもりなんかないのよ!
見返りを求めた時点でそれは欺瞞な自己満足な行為にしかならないわ!
ボクはそんな事など求めてなんかいない!
脇ちゃんに何かしてあげたつもりはないし、今後も何か求めるつもりはない!
何かを求めるならば最初から対価は要求するわよ!
エッセイの仕事引き受けた時だって打ち上げ要求したじゃない!
ボクはキッチリ対価を求めるのよ
今回は本当に喜屋武琉美のレシピを一冊に纏める協力をして欲しいから、ボクが頼んでます!
で、その対価としてボクの連載が終わったら、竜ゅー馬にエッセイ書かせても良いと言ってるんです!」
『竜馬君は書いても良いと?』
「竜ゅー馬はボクのだからボクが決めちゃって良いんです!」
『…………竜馬君のエッセイは今度話をさせて下さい!
今は【今夜の献立にどうかしら?】のブロガーさんと話をさせて下さい!』
「ええ、一冊に纏めてくれるなら、何時でも話しても良いわよ!………と言いたいけどボク今沖縄なのよね!」
『スカウトキャラバンのオーデションかあるとか?
今枝は沖縄に行くとか言ってるので僕も同行させて貰います!』
「なら待ってるわね!」
烈はそう言い電話を切った
スカウトキャラバン当日までは幾つかのテレビや雑誌の取材を受けたり、スケジュールは埋まっていた
其れを一つずつ熟しつつ、警戒は怠らなかった
そしてやはり仕掛けて来るとしたら………オーデション当日かしら?と考える
オーデションは何が何でも失敗は出来ない
そしてどんな妨害も阻止する為に動くつもりだった
8月9日 翌日からのスカウトキャラバンを見据えて、東京から今枝が取材の為にやって来た
その時、脇坂も同行して沖縄に到着したと謂う
烈は滞在するホテルを告げると、今枝と脇坂はタクシーでホテルへ向かうと言った
脇坂がホテルに来るならば、と烈は琉美をラインで呼び寄せた
アレから烈は琉美とラインの交換をした
「琉美ちゃん、ホテルまで来られる?」
烈からのラインに『はい!おつまみを沢山作ったので差し入れに行きます!』と返信した
琉美は喜屋武社長と復縁した
戸籍も入れて、家へと戻った
琉美はそんな感謝の意を込めて、翌日から沖縄に滞在してる間だけでも…と、おつまみや料理を沢山作って差し入れしてくれていた
「会わせたい人がいるのよ!
だからなるべく早くお願いしたいのね!」
『解りました!差し入れは娘に頼んで、私は一足先にホテルへ行きます!』
と約束してくれたから、待っていた
琉美が先にホテルに来てくれ、今枝達を待つ
今枝と脇坂のタクシーがタウ着すると、二人は料金を支払いタクシーから降りた
洋館造りのホテルへと足を踏み入れると、だだっ広くて………どうしようか?と迷う程だった
丁度一生が通り掛かり今枝を見て「烈か?」と問い掛けた
「ええ、明日からのスカウトキャラバンの様子を取材させてくれるって約束してましたから!」
「この時間なら烈はリビングにいる!」と言い二人を連れてリビングと向かう
リビングのドアを開けて
「烈、今枝と脇坂が来てる!」と話した
烈は「カズ有り難う!」と礼を言う
「なら俺はヤンチャなちびっ子を見に行くわ!」と笑ってプールへと戻った
烈は「どうぞ、座って下さい!」と謂うと、今枝と脇坂はソファーに座った
今枝は「烈、約束通りに三社共同事務所のスカウトキャラバンの取材に来たよ!」と告げた
脇坂も「烈君、約束通り沖縄に来ました!」と謂う
烈は立ち上がると窓を開けて
「竜ゅー馬!」と呼ぶとプールで、ちっこいのを見張っている竜馬を呼んだ
すると竜馬がプールからリビングにやって来た
「どうしたの?烈」
竜馬が問い掛けると烈は脇坂に
「脇ちゃん、彼が三木竜ゅー馬よ!
心理学者としての名前はアーノルド・ウッズスタンと謂うのよ!
ヨニー©ウッズスタンは竜ゅー馬のウッズスタンを付けたのよ!
三木繁雄を父に持つ将来政治家になるべき存在なのよ!」と紹介した
脇坂は「脇坂篤史です!以後お見知りおきを!」と御挨拶をした
「三木竜馬です!宜しくお願いします!」と御挨拶
烈は「そして此方が」と言い横に座る琉美を見て
「【今夜の献立にどうかしら?】のブログを書いてる喜屋武琉美さんです!
彼女はキャン芸能事務所の社長の奥さんなんです!」と紹介した
脇坂は琉美の前に立つと「東都出版の脇坂篤史です!貴方に会う為に沖縄まで来ました!」と手を差し出した
琉美は脇坂の手を取ると固く握手を交わした
「我が社としてましても、琉美さんの献立のレシピを1冊の本に出来たらと思っています!
その他にも生活のアイデア等も纏めたい!
取り敢えずレシピ本に取り掛かりたいので、どのレシピを1冊の本に纏めるか?
等を相談して大まかな筋道を立てたいと思います!詳細はネットでやり取りで良いのですが、契約や担当者等の紹介も有りますし、今後の話とかもやはり直接にするべきだと思い沖縄まで来たのです!」
「何か夢の様なお話で………」と謂う
烈はニコニコ笑顔で
「契約の時はキャンちゃんが立ち会うとして、貴方から見て脇ちゃんは信頼すべき相手なのか?
見極める為にも話をしておいでよ!
自分のレシピを本にするならどのレシピが良いか?アピールして脇ちゃんを唸らせてみせなさいよ!絶対に本にしたいと思わせなさいよ!
PC貸すからキッチンでプレゼンしておいでよ!そしたら東京オーデションの時に、キャンちゃんが東京へ来る時、琉美ちゃんも来て契約しちゃいなさよ!」
竜馬はノートPCを琉美に渡した
そして脇坂と琉美を連れてキッチンへと向かった
キッチンにはスイーツを制作中の玲香や京香、美緒や志津子、和華子や沙羅達もいた
今枝はその場に残り、まだ治らぬ怪我を目にして
「まだ治ってないのですね………
あの爆破の犯人は早瀬氏を陥れようとした人妻の夫だったのは御存知ですか?」
「ええ、嫌な程にね、知ってるわ
そして其奴は鴻池の息の掛かっていた存在だってのも知ってるわよ!」
「あの運送会社は実質上の倒産となりました!
犯人の奥さんは………子供達と共に蒸発したそうです………まぁ負債額が凄いので夜逃げするしか無かったみたいです!」
「債務整理させても帳消しにならない資産確叩き出されるからね、蒸発するしかないわね
そして夫が死んだのだから姻戚関係終了届け出した後に破産申請掛けて、債務を負わない為に失踪したんでしょうね!
その手続やる前に債権者に見付かったら、支払義務請求されちゃうからね!」
「お詳しいんですね?」
「長く生きると色んな奴を目にするからね!
多分婚姻期間長かったし、多少の債務は降りかかるでしょうね
だから破産の手続も同時に進めてるんでしょうね!
まぁ、此れは不良債権抱えて伴侶が死んだ時とかに使う手だからね、驚きもしないわよ!」
「…………ならばまだ仕掛けて来ると?」
「早瀬を探して生活の面倒見させたいんでしょうけど、今 早瀬は人の世にいないからね
この世の何処を探しても早瀬は見つけられはしないわ!
ならばどうするか?
逃れられない程に穢れを受けているならば駒に成り果て、再び目の前に現れるかもね……
トコトン利用して使い捨てるのがお得意な奴を相手にしてるんだからね!」
「…………今回も俺はこの命を懸けて、貴方を撮ります!」
「其れは駄目よ!今枝!
貴方には妻も子供もいるじゃない!
そんな愛する存在と引き換えにして良い仕事じゃないでしょ?」
「烈…………」
「ボクもね、愛する存在の為に闘っているのよ!
愛する存在には指一本触れさせはしない!」
そんな話をしてると、烈の背後から抱き着く存在がいた
プールで泳いでいたのか?体が濡れている
烈は笑って「レイたん、ボクも濡れちゃうわよ!」と笑ってレイの手を強く握り締めた
竜馬はキッチンから戻って来ると、雫のたるレイの髪をタオルで拭いてやっていた
今枝は「レイ君大きくなったね!」と言葉にした
竜馬は「今枝!其れ禁句だから………」と謂う
烈は「その内皆大きくなってボクは置きざれにされちゃうのよ…………」と呟いた
流生がプールから消えたレイを探してやって来ると
「あ!仕事中だった?
レイ来るんだよ、邪魔したら駄目だよ!」と言った
烈は流生に「晟雅達はどうしてる?」と問い掛けた
「晟雅達はキッチンでぶっ倒れてると想うよ
朝から引っ切り無しに取材の依頼や訪問者が絶えないからね!」
「明日!本番だからね………そんな苦労も後少しなのよね!」
「でも東京残ってるからね」
「あ~本当の意味で………まだ落ち着かないって事なのよね………」
そんな話をしていると神野がやって来て
「烈、竜馬来てくれ!地元の情報誌から、会議室を押さえたから取材がしたいと申し出があったんだよ!
お迎えの車が来るから一緒に来てくれないか?」と謂う
「ボク今夜からの設営のプログラム立ててるんだけど?」
「頼むよ烈………」
神野の疲れ果てた顔を見れば、仕方なく立ち上がり出てやる事にした
流生は「レイ、スカウトキャバン終わるまで我慢するのよ!」と謂う
レイは少し涙ぐみ頷いた
烈と竜馬は神野達と共にホテルを出て行った
そうして地元のタウン誌や新聞社等の取材を受け、ホテルへと戻って夕飯を食べると、設営の時間が来て烈と竜馬は【R&R】のメンバーと共に沖縄市民会館へと向かった
オーデションの会場を設営のスタッフに指示を出し作らせる
そこら辺のオーデションと同じ様なステージにする気はない
テレビ局も撮影に来ると言うのならば、飛鳥井宗右衛門此処に在り!と謂うステージを作らせねばならなかった!
【R&R】の全面協力を得て、協賛に【R&R】の前を入れるならば、【R&R】此処に在り、と謂う作りにせねば見劣りする
差を着けた出来にせねば、宗右衛門の名が廃る!
烈と竜馬は互いのポテンシャルを活かして、ステージを作り上げていた
竜馬は人の視覚を活かして、どんな風に作れば人の目にはどんな風に映るか?を熟知していた
そうして作り上げるステージは、施工から呼び寄せたスタッフと【R&R】のスタッフと、喜屋武社長からの紹介のスタッフとで作り上げられていた
英生はスタッフに交じりステージを作っていた
今までもそうしてスタッフとして作業をして来た
此れからもそうするつもりだった
が、烈は違った
出来上がったステージに
「エッセイ、来なさいよ!」と呼び寄せた
スタッフに交じり作業着を着ていた英生は、烈の元にやって来た
「歌って!」
「え?此処で?」
「そうよ、好きなの歌って良いわよ!」
そう言い烈は観客席に降りて行った
マイクもないステージに立たされ、英生は躊躇したが、歌い始めた
この歌はシャステナの歌じゃない
何時かステージに立つ時が有れば歌いたいと………
密かに作っていた歌だった
英生の声が静まり返った会館に響き渡る
烈は音の響きを聞きたかったのだ
其れには英生の声が一番雑音もなく確かめられるのだった
ヘンリーは「彼、やっぱ良いね!【R&R】の事務所に所属させてデビューさせる気なの?」と問い掛けた
「まだ熟成してないから、正式なデビューは程遠いわね!
もう少し経験と体を鍛え上げて強い心と強い体を作り上げるつもりなのよ!」
「楽しみだな!」
「飛行機のCM、歌わせるわ!」
「あぁ、彼の声がどう生きるか楽しみだよ!」
「単発の仕事させつつ、名を売り、やはりグループでデビューさせるわ!
うちの事務所からね!」
「烈のだもんね彼は!」
「そうなのよ!本当にキャンちゃんには感謝しても足らないわ!」
2曲位歌った所で、烈は立ち上がりステージに戻った
「エイセイ、有り難う!
響きは間違いなしね!」
「俺、役に立てた?」
「当たり前じゃない!
ボクが横浜に帰る時貴方も帰るのよ!
ボクんちに住まわせてあげるから、体を鍛え心を鍛え上げなさい!」
「武術?」
「そうね、見た所、少しは腕っ節は強そうだけど、貴方位ならボクでも投げ飛ばせるわよ!」
「え?それは無理……」
と言う合間に烈は英生の腕を掴むと、足を引っ掛けあっという間に英生を投げ飛ばした
床に転がされた英生は何が起きたのか?
解らずに唖然としていた
竜馬が慌てて英生の傍に駆け寄り、立ち上がらせた
竜馬は「烈は柔道は黒帯だよ!前世はずっと赤帯だった子だよ!
他の武術にも長けていて、薙刀持たされたら君なんて一瞬で転がるよ!」と説明した
英生は「まさか………投げ飛ばされるとは思わなかったな………」と呟いた
「烈は呪文唱えれば、傍に寄らずとも君位ならば吹き飛ばせるから………」
「え?そんな凄い子なの………」
「飛鳥井宗右衛門を名乗る者ならば、其れ位出来ずにどうするのさ!
烈は飛鳥井宗右衛門の転生者だから!」
「俺…………どうなっちゃうの?」
「弟子と言うならそれなりに鍛え上げ、何処へ出しても恥ずかしくない子にするのさ!」
竜馬の言葉に英生は何だか嬉しくて泣いていた
神野 柘植 須賀 相賀は三社共同事務所の審査員席を用意される事になり当日は其処で採点する様に言われた
事務所側が欲しがる人材と、審査員が選んた人間
其れ等を篩いにかけて選ぶのだ
烈は三社共同事務所が選ばない人材はキャン芸能事務所で育てたい人材ならば引き受けて貰いましょうか?と提案した
神野達はお世話になったお礼に、それで良いと受け入れてくれた
喜屋武社長はオーデションの審査員側の席に当日座れる事になった
無論 東京のオーデションにも来て参加して、三社共同事務所が選んだ人材以外の者を、選んで良い事になった
タレントを育てたい想いは有るが、オーデションをして大々的に…………と言うのは無理なので有難い申し出だと喜んで感謝した
神野や柘植、須賀、相賀も今回、こんなに協力して貰えたのだから、恩に報いる事が出来るならば、との事だった
スカウトキャラバンの会場作りは9日の夜から始められた
会場の至る所にプロジェクションマッピングを施し、無論ステージに目視は出来ないスクリーンを施してあった
演奏は10日がRODEOÑ、11日がStrong Hiがやる事になった
演奏の風景はプロジェクションマッピングで隠し、誰が演奏してるのか分からなくして、ステージからは見えない様にした
オーデション当日 どんな曲を歌うのか?どんな曲で踊るのか?それを決めさせ当日を迎える
RODEOÑとStrong Hiはその演目を楽譜にして貰い、演奏をする
審査員はテレビ局側と摺合せをして決まった
オーデション当選した者はイギリスに行き鳳城由香里のレッスンを受ける事は決定事項として、審査員には鳳城由香里が入った
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