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第51話 スカウトキャラバン in沖縄
審査員はテレビ局側から、辛口コメンテーター中澤斉史 沖縄観光大使をしている比嘉貴美枝
鳳城由香里、烈の指名でセリアAで活躍しているサッカー選手中澤広大が参戦してくれる事になっていた
何故烈がサッカー選手を指名したのか?
と不思議に思う人は多い
その出会いはある日の飛行機の中から始まった
中澤広大は休暇をイギリスの知人の所で過ごそうと、イギリスへ行きの飛行機に乗った時の事
飛行機の中に今騒がれている子が座っているのを発見
話し掛けた……事が切っ掛けだった
中澤から「ひょっとして【R&R】のリーダー?」と話し掛けた
スポーツ全般縁遠い烈は、誰?誰なのかしら?と想いつつ「名乗らない奴に名乗って上げる程安い名前は持ってないのよ!」と塩対応で返した
中澤は「え?俺の事知らないの?」と唖然と呟いた
そこそこ名が売れてると思っていた
地名度もかなり上がっていると自覚していた
それがこの瞬間…………そんな想いは粉々に砕かれたのだ
烈は「知らないわよ!自分の事知らない奴はいない………なんて自負していたのかしら?」とフンッと鼻で嗤った
「俺はエリアAの………」と言い掛けた時
「あ~自己紹介は要らない!
知り合いになる気はないし、今度も知り合うつもりはないから!」と返した
そして黙々と眠り無視した
中澤の鼻っ柱は粉々に砕かれたのだった
竜馬は「烈………」と執り成そうとしたが
「闇に染まった魂と知り合いになるつもりないのよ!」と返した
「え?彼の魂………闇に染まってるの?」
「でしょ?セリアAで活躍する自分を周りの奴はチヤホヤして持ち上げてるけど、振るわない活躍をすると、オフにプライベートを取材に来る奴さえない!
頑張らなきゃ!と躍起になればなる程ドツボにハマっていってるって知らないから、余計に闇を抱くしかないでしょ?」
竜馬は言葉もなかった
中澤も言葉もなかった
その出会いが切っ掛けで、中澤は烈の追っかけをする様になった
イギリスに居る間は人脈を駆使して、会えるチャンスを作った
知人やコネを駆使して、何かと烈と知り合いたくて周りをウロウロするが、烈とは全く会えなくて………
ヨニー©イギリス本社にスポンサー等のコネを使いアポを取ろうとしたりするから………
オリヴァーがうんざりとし
「逢ってやれば?それで満足してくれるなら、そうしてよ!」と文句を言うから、仕方なく逢う事にしたのだった
中澤は喜んでヨニー©イギリス本社ビルに呼び出されたのだ
そして応接室に通され喜んでる中澤に
「何でボクに執着するのよ?」と冷淡に問い掛けた
「君と話がしたかったんだよ!
別に【R&R】のリーダーと知り合いになりたいと謂うネームバリュー欲しさとかじゃない!
本音で話せる相手が欲しかったんだよ!」と話した
が、そんなのは迷惑だとばかりに
「迷惑よ!」と返した
「え?俺と知り合いになりたい奴なら五万といるのに?」
「ならば、知り合いたいと謂う奴と仲良くしてなさいよ!」
「俺は君と知り合いになりたいんだけど?」
そんな不毛な押し問答に………音を上げて次を約束してやるのだった
「ならばボクが指定した日に、指定した場所へ来られるのならば、知り合いから始めても良いわ!
どうする?」
「君の謂う事を聞くよ!
其れで君と知り合いになれるならば!」
中澤の言葉に迷いはなかった
だから後日、倭の国へ帰った時に菩提寺に呼び出した
無論、レイ同席で待ち構えていると、中澤が来て
「ぎゃー!まっきゅろ!」
とレイが叫んだ
否応なしに体育館の地下のプールに突き落とし、浄化しまくったのは謂うまでもなかった
浄化した後は、竜馬のジャージに着替えさせ本堂で正座させ、こんこんと説法して、何が悪いか運命を説いてやると、中澤は泣きながら己の中の何かが変わって行ったのを感じていた
それ以来、レイと烈と竜馬とは友達になり、ラインの交換をしたりしていた
で、何で今回審査員にしたかと謂うと、倭の国のメディアにあまりにも出ていないから、らしい
イタリアでは連日 注目を集める活躍をしているが、あまり倭の国のメディアには出てないから、引退後を考えるならば、そろそろ出た方が良いかもね!との事だった
烈とお知り合いになれた日から、中澤はジワジワと成績を上げて来て今の地位に辿り着いていた
FIFAワールドカップの出場選手としても、今一番注目を集めている選手だった
その中澤が審査員として出ると謂う事で、スカウトキャラバンは更なる注目を集めていた
その中澤は沖縄に来て、密かに飛鳥井の家族の中に紛れ込み休日を満喫していた
康太はプールでレイ達と仲良く泳いでいるサッカー選手を眺めて
「今をときめくサッカー選手が、家族に紛れているなんて誰も気づかねぇよな?」とボヤいた
榊原も笑って「烈とレイと竜馬の友達ですから、誰もそこに突っ込みはしませんって!
それを謂うなら我が両親はそこそこ有名な俳優じゃないですか………」と苦笑した
「だな、真矢さんや清四郎さん達、新婚の隼人もいる訳だし、その様子を今枝と脇坂が取材したいと申し出て、快く引き受けて夕飯が豪華になったよな!」
「うちの者達は末っ子の為に結構無茶振り通してますからね!」
「愛すべき末っ子だかんな!」
康太はそう言い笑った
康太も榊原も真っ黒に日焼けしていた
久し振りの休日を楽しんでいた
英生もすっかり飛鳥井の家族の中に溶け込み………
「水分補給しないと駄目ですよ!」とポカリを持って来てくれた
「英生、サンキューな!
どうよ?この家族での生活は?」
「楽しいです!何か嘘みたいな生活です………
皆が思いやりがあり………気を配ってくれるから………慣れないけど嬉しいです……」
「おめぇは飛鳥井の家で暮らし、菩提寺へ鍛錬に出るんだろ?」
「そうみたいです、あ!この家の子………朝から太極拳してるんですね!ビックリしました」
「あぁ………あれは気の流れを整えるのに一番だかんな、やってるんだよ!」
「気の流れ?」
「そうだ、おめぇは歌歌いだろ?
ならば、気の流れを知るのは良い事だぞ!」
「はい!鍛錬します!」
そう言い他の子にポカリを配りに向かった
良く動く奴だった
康太は「烈が連れて来る奴って、良く動く奴ばかりだよな!」と感心した
一陽も良く動く奴だった
もぉすっかり過去の暗さは引き摺ってはいない
違う自分になれた【今】を生きていた
一陽がプールまで榊原を呼びに来ると
「伊織、琉美さんからまた差し入れありました!
止めますか?負担になりませんかね?」と心配して問い掛けた
榊原は「感謝の気持ちだと言うので、受け取るしかないですよ!」と言う
「ですが………材料まで持つのはキツくないですか?」
「ならば話してみます!
そして料理を教えて貰いましょうか!」
「それ賛成です!」
笑う一陽の顔は全身で嬉しさを体現していた
喜怒哀楽が出た良い笑顔だった
中澤は「あ、俺、五万円支払ってなかった!後で支払いますから追い出さないで下さいね!」と言う
榊原は「追い出しませんよ!審査員で出てくれる方を追い出したりもしません!」と謂う
「何かもぉ、この家素敵すぎて……家族になりたい!」
「ならば何時でも来ると良いです!
でも君、イタリアでしょ?」
「来シーズンの契約しないから、来シーズンは帰国してそこら辺のチームに入ろうかな………」
飛鳥井が好きすぎて、それする?と榊原は笑った
「好きになさい!でも後悔のない日々を選択して下さいね!」
「素敵すぎる!もぉ涙が止まらないよぉ〜!」
と中澤は泣いた
一陽はタオルを中澤に渡しすと、英生がポカリを渡した
素敵な家族の末っ子は、プールでぷかぷか浮いていた
オーデション設営の考案を話し合い試行錯誤しつつも、シミュレーションを確立する
そして疲れを取る為にプールで浮いていた
そんな日々を過ごし迎えるオーデション当日
8月10日
市民会館のステージに烈は立っていた
準備は万端、スカウトキャラバン本番を迎えるだけとなっていた
神野は「何か緊張して来た!」と久し振りにスーツを着ていた
小鳥遊もスーツを着て審査員席に着く様に烈に言われ、審査員席に着く事にした
須賀と柘植も何処か緊張して、相賀は「沖縄は楽しいわい!」と日に焼けて元気そうにしていた
喜屋武社長も審査員席に同席させて貰うと言う事でスーツを着ていた
烈はトンプソンの黒のスーツを着ていた
竜馬もその横で同じ黒いスーツを着ていた
【R&R】のメンバーは機材のチェックに余念がなく、RODEOÑは楽器の音の響きを確かめていた
そして会場に客を入れる時間が来ると、控室に移動した
市民会館で開催するに辺り、観客席を設け、観客にチケットを購入して貰いオーデションを間近で見られると様にしたのだった
チケット代は市民会館の費用と審査員に支払う費用で飛んでしまうが、足が出るよりはマシだと観客動員にしたのだった
チケットは【R&R】リーダーとサブが出ると謂う事で飛ぶように売れて完売となった
まぁ飛鳥井烈と三木竜馬として出る事になっているのだが………
注目度は高いと謂う事なのだろう
審査員席に審査員が座る始める
鳳城由香里は黒のドレスを着て審査員席に座った
司会のマイクを持つのは一条隼人
沖縄に来るに当たって烈は隼人に
「隼人にー、司会やってくれないかしら?」と言われたのだった
隼人は「良いのか?司会なんかやって!」と信じられない思いで問い掛けた
「隼人にーはボクの兄さんじゃない!
隼人にーにしか頼めないのよ!」
「やるのだ!絶対に失敗出来ない闘いとなるのだ!」
気合を入れる隼人に烈は笑って
「隼人にーはまだ総合司会ってやった事ないわよね?」と問い掛けた
「そうなのだ!総合司会はやった事はないのだ
なのに俺様で良いのか?」
ふと不安になり問い掛ける
「隼人にー、何事も経験よ!
翼にアドバイス貰ってイメトレすれば出来るわよ!」
「ならば翼に聞いてみるのだ!」
烈の秘書の翼は今、飛鳥井記念病院の横のマンションに住んでいた
飛鳥井の家族とあまり離れたくないと謂う希望で、マンションへ引っ越して来ていた
夕飯とかと、食費を払って飛鳥井の家で食べたりしていた
隼人は連日 翼の部屋へ押しかけて司会のやり方を聞いていた
そして迎えるオーデション当日だった
審査員席に審査員が座ると、明かりを落としたステージにスポットライトが当てられた
マイクを持つのはタキシードを着た一条隼人だった
「本日は三社共同事務所スカウトキャラバンへようこそお越し下さいました!
沖縄の地からスターが誕生するやも知れぬ瞬間のステージに立ち会えて至極光栄です!
私は司会を務めます一条隼人です
其れでは審査員の紹介を致します!
辛口コメンテーターで有名な中澤斉史さん
沖縄観光大使をなさっている比嘉貴美枝さん
本日、この瞬間から謹慎が解けて再スタートを切る事となりました芸人 早瀬頼朝さん
セリアAでご活躍中の中澤広大さん
そして鳳城由香里さん
沖縄で芸能事務所を構える喜屋武社長
飛鳥井烈君と三木竜馬さんの以上8名の審査員が審査する事になります
審査員とは別枠で、三社共同事務所の社長自ら、審査員席に座り、スカウトすると謂う熱の入り方が違うオーデションとなっています!
今回のオーディションは三社共同事務所の共同のスカウトキャラバンと謂う事で、自分達の力で選ぶ方式と、審査員の力を借りて選出する方式
そしてTVをご覧の方は良かったと思われる方を投票出来る様にネットやリモコン投票も御座います!
皆様のご意見でスターを発掘出来るチャンスでもあります!
またキャン芸能事務所から、是非スカウトに加わりたいとの事で急遽オーデションに参戦なさいました!
其れでは三社共同事務所スカウトキャラバン開催です!」
一条隼人の司会で華々しくオーデションはスタートを切った
8月10日 30名のオーデションが始まった
翌日の11日も30名の予定だった
2日間のオーデションはあくまでも最終予選へのステージの切符を手に入れるだけとなる
8月21日の東京オーデションの後の、最終オーディションで見事デビュー出来る者達が決められる
胸に番号札を着けた子達が、必死になって己の演目の練度を高めて挑んで来ていた
烈は「レベル高いわね!」と呟いた
竜馬も「だね、かなり仕上げて来てるね!」と目を光らせて審査員の顔をして答えた
「けど一歩届かない感は否めないのよね!」
「其れを此処で望んて良いのか?
今後の成長を加味させた方が良いのか?
悩むね………自分達のオーデションじゃない分悩むな!」
「でもボク等はあくまでも中立な眼でそれを決めないとなのよね!」
「解ってるよ………頭一つずば抜けて凄い子出ないかな?」
「RODEOÑに演奏させたの……間違いだったかしら?演奏に飲まれてる子もいるからね」
「あ~それは言えるね………」
演奏が凄いと、それに飲まれて実力を発揮出来ない者も少なからず、いたりする
が、烈はプロになるならば、そんな試練など初歩の初歩だとRODEOÑに演奏させたのだった
そんな他愛もない話をしつつも、的確に点数をつけて行く
1時半の時間を掛けて、30名の全員の審査が終わった
翌日の審査を経て、次のステップへの切符を手に入れられた者は東京最終選考へ歩を進められるのだ
応募した1日目の子の演目が終了すると、市民会館へ態々足を運んでくれた方々への為に、サプライズをやはり用意していた
隼人はマイクを持つと次のステージへ進める者 5名の名前を呼び上げた
「雑賀海鈴 比嘉満里奈 具志堅勝志 勝頼正宗
轟 蓮二 以上5名は東京で行われる最終オーデションの切符を手に入れました!
東京へ行くまでに更なる精進を期待して楽しみにしてます!」
と東京最終選考の切符をした物の名前を挙げた
「以上 30名の演目は総て終了致しました!
スカウトキャラバン初日
初日なのに何だか一ヶ月ぶっ続けで演じさせられた感の疲れを感じていたりします……」と笑い誘い話すと、観客は声を上げて笑った
「沖縄 市民会館へお越しの皆様
スカウトキャラバン第1日目は無事終了致しました!
本当に市民会館まで足を運んで下さり、ありがとう御座いました
そんな皆様の為に、サプライズ曲を飛鳥井烈、三木竜馬が用意してくれました!
タイトルは【START】と謂う曲
この歌を私 一条隼人とエイセイが歌います!
この歌は後に私 一条隼人とRODEOÑ Strong Hi エイセイが配信曲として売り出す予定の歌となります!」
と言い歌い始めた
我武者羅に
必死に走って来た僕らは
土砂降りの雨の中
照り尽くす炎天下
其れでも、僕らは歌うよ!
何かを始めるために!
明日を思い
見果てぬ夢を見て
挫折で心が折れ
打ち砕かれて泣いても
立ち上がれなくても
僕らは立ち上がり拳を握り歌うよ
明日も明後日も未来も、夢の中でも
掴み取れ明日を!
今此処が僕らのSTARTだから!
血反吐を吐いても
絶望で打ちのめされても
もう立てなくても………
僕らは歌うよ
始めよう
始めよう
今 此処から!
隼人もエイセイもRODEOÑもStrong Hiも、マイクを握り
力の限り歌った
まるで狼煙を上げる様に!
鳥肌が立つ一曲となった
観客は隼人の横にいる子は烈の弟子だと言ってた子だと気付き、その歌の上手さに魅入られる様に聴いていた
歌が終わると観客は余韻に酔いつつも、立ち上がり還って行った
スカウトキャラバン初日は無事終わった
審査員達は皆 控室へと向かった
が、烈と竜馬は控室には戻らなかった
控室に戻った早瀬は、事務所のスタッフとマネージャーにより早々にホテルへと連れられて行った
竜馬と烈は、控室に行かずに屋敷に戻って来ていた
一生が迎えに行き乗せて屋敷に戻って来たのだった
竜馬は烈と共にリビングに出向き、空腹を満たす為に料理を小皿に取り分け
「早瀬、戻したんだ………」と呟いた
審査員席に座っているのを見て驚いたのは、多分審査員全員だったと想う
「あ~、神威が連れて来てくれのよ
少し前に見に行って、早瀬は誰よりも頑張って鬼の仕事をしていたからね
そして【笑い】を知らない鬼達を相手に笑わせたりしていたから、もぉ大丈夫かしら?と連れて来たのよ!
まぁ早瀬の姿を見たら近寄りたがっているヤツいるしね
其奴は絶対に近寄って来るから、そしたらどうするのかも見たいしね!」
「それって………運命の分かれ道って事?」
「そうね、自分の判断で今後の人生棒に振るか?
其れとも……起死回生を図るか?どっちかね!」
竜馬はもう何も言わなかった
言えれる筈など無い
こうして烈は時々………篩いに掛けるのだ………
踏ん張れる奴しか先へ逝けぬ道を指し示し………苦難を乗り越えられるのか見てるのだ
まぁ早瀬も生半可な覚悟で戻って来た訳では無いだろうけど…………烈は甘くはないと痛感させられるのだろう………と竜馬は想った
隼人が屋敷に戻って直ぐにリビングにやって来くると、烈を見つけ
「烈!どうだったのだ?オレ様の司会姿は!」と弟に近寄って問い掛けた
「初めてにしては堂々としていたわよ!」
「この経験も糧にしてのし上がってやるのだ!」
「隼人にー!」
飛鳥井康太の長男は弟達にとって頼もしい兄だった
中澤はそんな兄妹の姿を見て
「何か羨ましいな………」と呟くのだ
中澤は中学卒業と同時にブラジルへと旅立った
サッカーで食える日まで倭の国へは還らない!と心に決めて旅立った
が、世界の壁はちょっとやそっとでは越えられないと、現実を突き付けられた………
ブラジルでは貧富の差は激しい
貧しい子供達は、貧しさからの脱却方法の手段として、子供の頃からサッカーボールを蹴るのだ
物心がつく頃からサッカーボールを蹴って来た子達は日々貧しさの中プレーを磨く
ブラジルに来た頃は、子供の魅せるサッカーの方が、高校生のサッカーよりレベル高くて上手い……と思った
かなりの練度の高いプレーする子達もいて………自分はまだまだだと思い知らされた
だけど自分も、覚悟せずしてブラジルになど来てはいない!
家族に反対され、兄弟や友人や知人も皆、反対したのだ
それを押し切って………夢を掴む為に単身ブラジルに来たのだ!
こんな所で挫けていたら明日は生きられはしない!
絶対に………のし上がってやる!と決めて必死に生きて来た
サッカー選手なんて夢のような事を言わず、現実を見ろ!と両親や兄弟には言われた
地に足をつけた堅実な生活をしろ!と言われ続けた
実際 有名企業に入社した兄弟を自慢して、中澤を貶す話を親戚中にしていたりしたのだ
親戚の奴等も無謀にも夢を掛け追いかけた愚か者、程度に笑い者にしていた
その中で中澤の夢を応援してくれ、仕送りをしてくれたのは祖父母だけだった
少ない年金を遣り繰りしてくれ、仕送りをしてくれていた
そんな祖父母に応える為に死に物狂いで、生きて来たのだ
中澤はプロとして名前が知れ渡り、食える様になった頃、掌を返す人間の醜さを知った
親や兄弟や友人や知人、親類縁者、自分を認めなかった総ての者総てが、中澤の活躍を褒め称えた
そして誇らしげに自慢され………見たことも無い親戚が増えた頃………私利私欲に生きてる奴等に利用されるのは御免だと決意を込めて皆と距離を取る様に、プロのサッカー選手としてイタリアの地へ旅立った
活躍の場をイタリアへ移し、ワールドカップの倭の国代表になった頃
…………やっと名前を聞けば、サッカー選手の!と言われる程には、世間から認められる様になった
誰もが知るサッカー選手になれたと実感した
か、その頃になると図々しい親族が、メディアに出て、家族としてずっと応援していた!とか、兄弟として陰ながらずっと支えて応援してただの、発言する輩が増えて来ていた
家族や兄弟や、親戚や友人と謂う奴等が増え続けゾロゾロとメディアに現れ始め………
ワールドカップの時なんかは、それが顕著に出て………親族として応援する姿が映し出され………
平気な顔して【家族】となってる奴らに………虫唾が走った
だからブラジルへ単身修行に行った時から始まる自叙伝を出版してやった
発売されるや、中澤の境遇や過去に、家族や親類縁者、友人知人達は非難の目を向けられた
非難の目に晒され………二度と家族を名乗る者は出ては来なくなった
実際 今 【家族】と名乗った奴等は、中澤にはコンタクトを取らなくなり、何処で何をしているか?さえ知らない
そんな経緯を持つ中澤にとって飛鳥井の家族は…………とても憧れる存在だった
が、皆、其々過去を持つ事を聞いた
烈の周りにいる者達は、優しいだけの家族ではないと知るのだった
【宗右衛門】と謂う立場
家族の中での立ち位置
一族の中での存在
其れ等全てが宗右衛門の生き様だと今ならば理解する事が出来ていた
中澤にとっての唯一の家族だった祖父母は数年前、次々に他界した
初期の段階のコロナに倒れたのだった
祖父母は長引く風邪かな?と想い寝ていたら、日々衰弱して高熱と咳に悩まされる様になり、病状が悪化して衰弱して行った
気付いた時には世の中はコロナ禍へ突入していた
救急車が足らなくて、薬も足らない現状があった
病院への受け入れ先がなく、救急車は何時間も停車したまま、やっと病院へ行けた時には手遅れで即座にICUに入れられ………そのまま回復する事なく次々に他界した………
中澤にとっての唯一無二の存在を失った
失意のどん底にいた中澤は祖父母の葬儀さえ、満足に出来なかった
感染症を危惧して、祖父母の遺体は荼毘に付され………返された
死に目にすら会えなかった
ショックで………どうする事も出来ずにいると、【R&R】のメンバーや竜馬や烈が指示して葬儀を滞りなく完遂させたくれたのだった
康太や榊原、飛鳥井の家族達も協力してくれ………やっと祖父母を送る事が出来た
家族や人の温もりが涙が出るほど………嬉しくて暖かくて…………還りたいと想う様になっていた
遠いイタリアの地にいるよりも、直ぐに会いに行ける傍に行きたいと想う様になったのだった
近い内に身の振り方を話そうと中澤は思っていた
そんな中澤の思いとは裏腹に、審査員として参加した中澤はスポーツ選手を引退したとしても、コメンテーターとしての職が確保出来そうな存在感があり、饒舌で喋りも上手く、注目を集めた事は謂うまでもない
そしてもう一人、注目を集めた男がいた
早瀬は魔界にいて、鬼達の仕事をしていた
烈は早瀬には逢いには来てくれなかったが、何度か様子を見に来ていたと鬼達が話してくれた
その早瀬が満を持して復帰の場に現れたのだった
早瀬頼朝の、復帰の最初のお仕事は、スカウトキャラバンの審査員だった
何時、どのタイミングで復帰させるのか?
ずっとタイミングを図っていた
スキャンダルを出した時、復帰は直ぐだろうと噂された程だった
薬物をやった訳でも、不倫の関係にあったと謂う訳でもないのだ
早瀬は、同級生だった女が売名行為的な目的の為に、態々スキャンダルを作らせ出そうとした
が、女と恋人関係になった訳でも、不貞を働いた訳でもないのだ
本来は謹慎など必要はない程だと謂われた
が、記者会見以降 早瀬は謹慎に入り、その姿は何処を探しても映される事はなかった
其れもその筈だ、早瀬は人の世にはいなかったのだから………
その早瀬は、神威が朝イチでお届け出来る様に、態々魔界へ迎えに行き、連れて還って来たのだった
人の世に連れ戻されて直ぐにスーツを着せられ、市民会館へ連れて来られたのだ
そして市民会館へ来た早瀬に相賀は
「主は審査員をやる事になった!
復帰最初の仕事がオーディションだから無難であろうて!」と言われた
何も無い世界から行き成り、現代に連れ戻され……復帰だと謂われた
復帰して良いのか…………と躊躇する………
烈はまだ視てはくれない
視界の中に映してさえくれない
それでも仕方がない
それだけの事をしたのだから………
早瀬は与えられた審査員の仕事を、必死に熟した
好奇な視線で見られるのは承知の上だが………やはり魔界と人の世のギャップについて行けなくなっていた
其れでも必死に審査員を熟し、オーディションが終わると市民会館近くのホテルへ連れ帰られたのだった
ツインの部屋でマネージャーが同室だった
見張る為、とかの意味合いではなく、部屋が一部屋しか取れなかった為なのだが………
マネージャーは「朝に連れて来てホテル取れと言われても、良い部屋なんて取れる筈などないじゃないてすか!
早瀬、悪いのですが私と同室ですが、文句は烈に言いなさい!
私の所為ではないですから!」とボヤいた
早瀬は「どんな部屋でも良いです!雑魚寝でも良いですから!
あの、真野さん……何故俺に付き添いなんです?
罰ゲームか何かですか?」と聞いた
「今日、君が戻って来た時点を持って、私は君のマネージャーとなりました!
阿賀屋氏の計らいで会計監査に強い社員を育てられましたからね!
事務関係は豊富となった今、私はやる仕事を失ってしまったんで、仕方がないんですよ!
それに目を付けた烈が『今日、早瀬が戻った時点で、千秋たんは早瀬のマネージャーになるのよ!』と言って来たので、マネージャーをやってるんです!」と丁寧に説明した
真野千秋は神野の事務所では中堅の社員だった
今までは経費とか会計監査とかやっていた人だ
そんな人をマネージャーにしちゃって良いの?と早瀬は想った
真野は「さてと夕飯食べて、寝るとしますか!明日もハードだからね!」と謂う
早瀬は頷いた
魔界では、むさ苦しい鬼ちゃん達と雑魚寝していたのだ、シングルベット貰えるだけで快適だった
ルームサービスを運んでもらい、部屋で食事を取り、お風呂に入り、寝る体制を取りつつ、明日のオーデションの応募者の資料を読んでいた
そろそろ寝ようかな?と考えていると内線電話が鳴った
真野は「早瀬、取って下さい!」と謂うから、早瀬は電話を取った
『早瀬頼朝さんに面会したいと謂う方が、フロントにお見えです!どうなされますか?』と電話が入った
早瀬は面会??烈?竜馬??…………でも彼等なら直接部屋を叩くだろうから、想像が付かなかった
早瀬は真野に直ぐにそれを伝えた
「真野さん、俺が復帰してるのを知ってるのは………市民会館に来た観客か、テレビを見た人だけ………
誰にも言ってないのに………会いに来られる方が怖いんですが…………」と本音を漏らす
真野は「あぁ、多分………高嶺の花子さんじゃないかな?」と謂う
「え?………何で??彼女には愛する夫いるじゃないですか!
それこそ不倫になってしまうの………解ってますか?」
「あぁ、旦那さんは亡くなられたよ!
…………君は知らなかったか………」と言いタブレットを手にすると検索を掛けた
ホテル・ニューグランドで戸浪と蔵持が行なった記者会見のニュース記事を見せた
真野は「その自爆した人、高嶺の花子さんの夫さんだ!」と話す
早瀬は言葉もなかった
写真には烈が血塗れで一生に抱き締められている所が載せられていた
早瀬は「俺はもう二度と道は違えはしない!
なので逢いません!お断りして下さい!」と逢うのを拒否った
真野は「了解したよ!烈には早瀬の謂う通りにしてやってくれと頼まれてるからね!」と伝えた
早瀬は「え?………彼女が来るの……烈君っていたんですか?」と問い掛けた
真野はそれには答えず内線を手にすると
「早瀬は会う気はないそうでので、お帰り下さい!とお伝え下さい!
今後、来客は通さず追い返して下さい!」とフロントに頼んだ
女は………態々会いに来たのに………フロントの人間に拒否られ…………追い返され……後がないのを感じていた
早瀬はもう二度と会ってはくれないだろう………
だが引く訳には逝かないのだ
ならば………仕方がない……
明日の朝………ホテルを出る瞬間を狙うしかない
其れしか道は残されてはいない……………それしか……………
女は息を潜め…………長い夜を早瀬が来るのを………建物の陰に隠れ待った
我が子は………養護施設の前に置いて来た
此れから行う事で………子供を巻き込む事は無いだろう…………
子供だけは…………巻き込まなくて済むならば………それで良い………それで良いのだ
そんな願いにも似た思いを抱き………夜が明けるのを待つ
そんな女の行動を知ってか?知らずか?
烈は唐沢に電話をして
「ねぇ唐ちゃん沖縄の地に………ホテル・ニューグランドの自爆犯の妻がいそうな気がするんだけど?」と話す
唐沢は『其れって確証ある話なのか?』と問い掛けた
「そうね!早瀬を復帰させたから、有り得なくはない話なのよ!」
『……っ!!!復帰させたのかよ!』
「七夕の後の記者会見後から半月の予定が、一ヶ月は経ってるからね………遅い位よ!」
『で、復帰して直ぐにオーディションがTVで流れたと謂う訳か………そりゃ来るわな………』
「出来るなら生かして研究室へ放り込んで欲しいのよね………」
『出来るならそうしてやるさ!
子供もいるらしいからな………見つけ次第、子供は保護しねぇとな!』
「何人いるの?子供?」
『其れは知らん、でも子供いたよな?確か………』
「子供は無関係だから巻き込まれて欲しく無いんだけどね………」
『親ならば、巻き込みたくないと想うかもな………
俺は万が一を想定して、施設とか調べてやるさ』
「沖縄には?」
『お前が沖縄入りした時から維弦が秘密裏に同行しているから、表に出して動かすとする!』
「維弦、沖縄にいたの?知らなかったわ………」
『お前の護衛と同行してるんだから、ホイホイ見つけられたら困るんだよ!』
「ボクの護衛?そんなのいるの?」
『…………お前………命狙われてるから色々と警戒されてるんだよ!
変なのいないか?お前の周りは常に警戒されているだよ!』
「知らなかったわ………」
『そう謂う事は本人には話すもんでもないからな!
取り敢えず、早瀬の居所を探して、アポ取るとするわ!』
「お願いね!じゃまた何かあったら連絡してね!」
そう言い電話を切った
烈は窓の外を眺め…………
どうするの?早瀬?
貴方は過去の自分を乗り越えられたのかしら?
……………ねぇ早瀬……その道はもう楽な道じゃなくなってるから、踏ん張らないとぶっ倒れちゃうわよ
黙って窓の外を眺める烈に竜馬は
「烈、今夜は早めに寝ようよ!
レイも広大も呼んでさ、雑魚寝しようよ!」と話す
烈は嬉しそうな顔をすると
「何処におふとん敷く?」と尋ねた
「この屋敷 和室一部屋有るんだよ
それはどうやら茶室みたいでカウントされてない部屋だから雑魚寝出来ないかな?」
「良いわね!ならにーに達も呼んで来るわ!
にーに達は無理かしら?」
烈は走ってリビングに行き兄達と凛と椋とレイに話し掛けた
「茶室で雑魚寝しましょうよ!」
流生が「やったー!皆で雑魚寝すれば、烈の寝相も等分で被害に遇えるってもんだね!」と笑う
烈は「失礼ね!ボク其処まで寝相悪くないわよ!」とボヤいた
太陽は「寝てる奴は分からないのよね………」と言い
大空は「ならお部屋の敷布団、持って茶室で雑魚寝しましょうよ!」とやる気になっていた
音弥が「レイ達のお布団は僕達が持って来るから、枕を持つだんよ!」と話す
其処へ康太がやって来て
「雑魚寝するねらリビング開けてなるから、リビングで寝ろよ!
飲兵衛達は茶室へ行って酔い潰れて雑魚寝するらしいかんな!」と言ってくれた
飲兵衛達は茶室へ移動した
茶室はキッチンの横に有るから、キッチンで座って飲んて、畳の茶室で酔い潰れて寝ても大丈夫と謂うお得な怠惰さに、喜んでリビングを明け渡したのだった
リビングのソファーやテーブルを縁側の廊下に出して、部屋を広くする
すると皆 部屋に行きお布団を持ってやって来た
レイと凛と椋の敷布団は翔達が手分けして持って来た
敷布団を敷き詰め、雑魚寝
レイは烈に抱き着き、うとうと寝そうだった
烈も疲れたのか?早々に寝た
竜馬が横に寝て、英生も広大も雑魚寝仲間に入る
御影も翔達と共に寝て、何だか楽しい雑魚寝となった
響と奏と一希は危ないから慎一の部屋で寝かせた
皆 疲れていたのか?
早々に寝てしまい、朝早く烈は起きた
中庭で兄弟や竜馬や御影達と太極拳を始める
御影はエイセイに太極拳を教えた
最近の御影は、新しく来た子の面倒を率先して見ていた
烈も英生を見て、腹に力が籠もってなくて
「ほら、気を流すなら丹田に力込めなきゃ!」と謂う
「難しいよ!烈!!」
「気が流れると、もっと声域上がるわよ!」
「え?嘘…………」
「歌い方も少し手直ししてあげるから、覚悟しとくのよ!エイセイはボクのだからね
徹底的に仕込むわ!」
「俺は烈のだから………捨てないでよ!」
烈は笑って「んな、勿体ない事しないわよ!」と言った
「そろそろ、イギリスにいる振るわない奴等がアポ取って来るかもだから、携帯は解約して一切連絡は取っちゃ駄目よ!」
「沖縄に叔父さんを頼って来た時に、イギリスで使っていたモノは総て処分した
携帯も総て処分したから、彼奴等が知る携帯なんてとっくの昔に解約されてる!」
「なら新しく携帯作らなきゃね!」
烈が言うと御影が「なら俺が横浜に還ったら付き添い作らせる!
で、その彼なんだけど、身分証明証どうなってるの?」と問い掛けた
英生は「横浜へ行くならば、免許証とか住民票とか変えなきゃ………沖縄の地に総て移ってるから!」と答えた
御影は「なら総ての手続き付き添うから、やっちゃおう!俺もヨニー©ウッズスタンJAPANの社長業が少し忙しいけど、ヨーコに頑張って貰い時間を作るよ!」と言う
竜馬は「あっそうだ!御影、大学で俺とお前の同期だったマッドサイエンティストな科学者 田中達郎と、数学者にも引けを取らない天才スティファン・ジョーンズっていたやんか!
アイツ等、ヨーコが妊娠出産するかもだから、それを見据えて、烈がスカウトしたから近々倭の国へ呼び寄せるから!
そしたら少し仕事楽になるかもな!」と言う
御影は嫌な顔をして
「タツローとスティ………倭の国へ来るの了承してるの?」と問い掛けた
「達郎の妹の多美子いたやんか!
其奴がそろそろ梅干し恋しいわ!と言ってるらしくてな、倭の国での就職口探してるんだよ!
スティの妹のベッキーは既に倭の国で働いてる
だから声掛けたら直ぐにでも頼む!って事でウッズスタンに入社したんだよ!」
「梅干し………種まで食ってて、烈に天神様食ってるのよ!と叱られた奴やんか!」
御影は嫌な顔して答え………思い出した様に
「ベッキーって極真空手の師範代クラスの猛者やんか!」と答えた
「烈の会社で働いて、菩提寺で師範代してるぜ!」
「………やっぱあれベッキーだよな………
怖くて声なんか掛けられない女………ベッキーだよな」と震えた
菩提寺の道場で見かける金髪碧眼の猛者を思い浮かべた
「旦那さんは菩提寺の僧侶だからな
社宅に住んでるぜ!」
「え!結婚出来たの!!」
失礼な事を御影は言う………
「イギリスで出会い、倭の国で結婚して、もう子供もいるってば!」
「嘘………なんでベッキー結婚出来てるんだよ!」
「知るかよ!なら多美子でもどうよ?未婚だぜ!」
「…………美人過ぎて……夜とか見たらチビるから絶対に嫌だ!」
確かに田中多美子は日本人形バリの漆黒の長い髪と切れ長の目を持つ、純日本人形バリの顔だが……
竜馬は「何という言い草よ!それ!」と笑った
烈は「ベッキーんちの子、レイたんと同級生よ!
まぁ桜林には行ってないけどね、モテモテさんよ」と言うとレイは笑顔で頷いていた
そんな楽しい話をしつつ、朝を取り市民会館へと出向く為に駐車場まで出向くと、西園寺維弦がペコッと会釈して立っていた
烈は維弦の傍まで逝くと維弦は
「自爆寸前の所で捕縛、特殊な布を被せ、護送車に乗せ研究室へ連れて逝く事になりました!」と報告
烈は「やはり来てたのね………」と後がない現状に来るしかなかったのだと理解していた
「舌を噛み切り自害する寸前に猿轡を噛ませ、確保しました!
もぉね暴れるし引っ掻かれるし………僕の綺麗な顔が傷だらけよ?」
「あ~なら今夜は維弦を癒してあげるから、飲兵衛の仲間入りしなさいよ!」
「それは嬉しい誘いだけど、横浜へ連行しないと駄目なんですよ!」と謂う
烈は「維弦、耳貸して!」と謂うと、ヒソヒソ ゴニョゴニョ カクカク シカジカと話した
維弦は瞳を輝かせ「了解しました!直ちに動きます!」と言い離れた
烈は車に乗り込み、そのまま市民会館へ送り届けられる事になった
一生が中澤広大と英生を連れて市民会館へと来てくれた
慎一が隼人と神野達を連れて来てくれた
「めちゃくそ疲れ切ってますよ?晟雅達!」と笑って引き渡してくれた
「審査員って疲れるからね………仕方ないわね!」
慎一は「あ~体力も気力も削りそうだな………」と呟いた
烈は慎一に「慎一きゅん、英生はこのままボクと共に飛鳥井へ帰ります!その時は世話を頼む事になるのでお願いするわね!」と言葉にした
慎一は「英生はもう飛鳥井に溶け込んでるから心配は要らないよ!
料理も得意だし、沖縄料理は英生が作ってくれてるみたいだから皆で作るの楽しみだよ!」と話す
「家族………いないからね………」
「んなのは一陽も俺も一生達も同じだって!
飛鳥井の家族が家族になるから大丈夫だろ?」
意図も簡単に言ってしまう慎一に、烈は笑顔を向けた
やはり母と魂の結び付きの有る存在は凄いと想う
竜馬が「さぁ着替えないといけないから、逝くよ!」と謂うと烈は笑顔で慎一に手を振って、竜馬と共に着替えへ向かった
慎一はそんな烈を見送り
貴方は本当に康太の子供ですね………と痛感した思いを噛み締める
そして一生に「ちびっ子見てないと大変だから帰るよ!」と言い屋敷へと帰るのだった
屋敷に帰ると、ちびっ子達は写経を兄達にやらされていた
響は「ん〜ん〜!」唸りながら筆と格闘中
奏は只管墨を刷っていた
一希は念写で写経をやる
聡一郎は「ズルしない!そして君にはまだ早いから!」と一希を抱っこして連れて逝く
一陽は「ほらほら刷ってないで書くんだよ!」と筆を持たせた
響のひの字を筆で書く
結構子供には難しい作業だった
響と奏は2歳児位の体なら、半日位ならば維持できる程になっていた
その半日の間に幼稚園 入園前の子供達を集めた幼児教室へ通わせ、同年代の子達とのコミュニケーションの取り方などを学んでいた
最近やっと、年相応の子達とコミュニケーションを取れる様になって来ていた
クー達は市民会館の上空へと其々に分かれ、警護に当たっていた
沖縄に来て飲んで休んではかりいた訳では無いのだ
ミサイルが飛んで来るのを警戒したり、自爆したりする輩が紛れ込まないか?見張る為だ
そして始まるスカウトキャラバン2日目
沖縄 最終日
司会は一条隼人がこの日も行った
昨日と同じ様に審査員の紹介をして始まる
「トップバッターは喜屋武 則人 陽菜 琉二の3人のダンスです!」
紹介され喜屋武社長は驚いた顔をして………ステージを見ていた
ステージの上では、三兄弟がダンスが披露していた
3人はこの日の為に、寝る間を惜しんで練習して来たのだった
兄や姉に劣らず琉二もダンスを披露する
烈は「頭一つ超えたわね!3人バラして所属させるのがベストね!」と呟いた
竜馬も「だね、ワンセットだと伸び代なくなりそうだもんね………」と呟く
小鳥遊は「末っ子欲しい!」と目を輝かせた
柘植は「うちは女の子かな?」と女子勢の少なさに欲しいと謂う
須賀は「うちは長男、この前屋敷に来た時から目をつけていたんだよ!」と話す
続々と応募者が持ち時間一杯を使い、演技を披露する中
立つだけで雰囲気がやたらある、一人の青年 東雲柊哉がステージに姿を現した
少しクセが強くて、でもダンスは上手くて歌も上手い
が、そのクセの強さがネックとなる
烈は「あの子、イギリスへ出して由香里に面倒見させて様子見を見ましょうか?
あのクセの強さがどうなるか?見ないと使いづらいわよね!
最悪 うちの事務所で引き取っても良いし!」と謂う
竜馬は「あ、烈なら謂うと思ったよ、多分あの子誰も欲しがらないだろうから、うちが貰おうか?
でも今のままだとアクが強すぎて浮きまくるからな………少しその垂れ流すクセを何とかしないとだね!」と思案する
小鳥遊は「才能は溢れる程に感じるけど………
どうやったって宝の持ち腐れになりそうだからな………」と手が出せないと謂う
須賀も「だね、ドラマ何かに起用したら浮きまくること間違いなしだろうね………」と謂う
柘植も「歌を歌わせるにしても彼の後じゃクセが強すぎて……難しいかな?」と困った顔で言う
相賀は頷いていた
この日の演奏はStrong Hi
ちょっと個性的な演奏に負けてる子は多い
なのに喜屋武兄弟、そしてクセの強い東雲柊哉が誰をも圧倒してフィニッシュを迎えた
東京最終選考への切符を手にしたのは喜屋武兄弟
東雲柊哉、そして中学生くらいの少年 仲間海人
だった
そしてこの日のサプライズは昨日同様
STARTを歌い、沖縄オーデションは幕を閉じた
その夜は喜屋武社長のご厚意で、豪華な料理を差し入れされ打ち上げを行った
喜屋武社長は烈に
「本当にありがとう!」と感謝の意を込めて礼を伝えた
「どう?欲しい子いたかしら?」
「三社共同事務所の方と話し合い
調整を取り、何人かうちの事務所で、って話はさせて貰ってるよ
最終予選まで逝けない子達に声を掛けて、親御さんと話しもさせて貰ったよ
まだ其処までの具体的な話し合いはさせては貰ってはないが、親御さんに話を通した所、東京とかの事務所に預けるより、通いでレッスンとか受けて道が切り開けるならば………喜ばしいと言われたよ」
「ならは、キャンちゃん、研修生を定期的に由香里のレッスン教室に通わせないよ!
由香里の方とは話は通してあげるわ!
ある程度、稼ぎ頭が稼ぐ様になるまではレッスン教室の料金はボクが持ってあげるわ!
旅費はキャンちゃんが持ちなさいよ!」
「あぁ…………良いのかい?旅費は当然事務所が持つよ!
オーデションに参加出来ただけでも凄い事なのに………そんなにして貰って………申し訳ないよ
妻との件でも……君に世話になってしまった
今 こうして妻と子といられるのは君のお陰なのに…………これ以上君の世話になる訳にはいかないよ………」
「ボクは無償では世話も焼かない主義なのよ!
だから1年に一度、沖縄に来るからさ
その時は持て成してよ!
キャンちゃんが東京に来るならば、飛鳥井で持て成してあげるからね!
人はそうして支え合い、果てへと逝くモノなのよ
支えなくして果てへは行けはしない!
だからキャンちゃんも、誰かに何かしてあげるなら見返りなんて期待せずに、してあげなさい
そしたら何時か巡り巡って自分に返るから!
まぁ10してあげたとしても、半分以上は裏切られたり踏み躙られたりする事もあるけどね
だからって見返りを求めて、何かをするだなんて其れは唯の自己満足と欺瞞に満ちた行為なだけよ!
まぁそんな事は綺麗事だと、片付けられてしまうかけどね………
人と人が謀り裏切るだけだと………世知辛すぎるからね
ボクは100%裏切られると解っていても、信じた人ならば後悔のない行動をしようと決めているのよ!
その後に裏切られ様ともね
其れは果ての事で、ボクの人徳のなさを物語っているんだと想う様にしてるのよ!」
何とも重い言葉だった
簡単に口に出来る言葉じゃなかった
だからこそ、宗右衛門の生き様は言葉もない程に信頼を得られるのだと痛感するしかなかった
その夜、疲れ切った神威と維弦達は飲みまくっていた
「もぉね、やってやれないよ!」と文句を言い…飲んでいた
家族はそんな絡み酒の者だとて、受け入れて楽しく飲んでいた
スカウトキャラバンin沖縄も終わりを迎え
沖縄にいられる日々も残り少なくなって来た
烈は竜馬やメンバー達とプールで泳ぎまくっていた
お盆も近くなると海には出ずにプールのみで、皆過ごす事にした
そして美味しい料理を食べつつ、休暇を過ごす
清隆は「今年は最高の夏季休暇になったよ!」と言葉にした
瑛太も「久し振りにゆっくり出来ました!
来年も是非とも来たいです!」と話す
楽しいかった夏休みは沖縄で沢山の思い出を作って幕を閉じた
飛鳥井の家族や神野達は8月15日の夜の便で
沖縄を後にした
次は東京オーデションだから、その時は待ってますから!と瑛太や清隆は喜屋武社長と固く挨拶して、飛行機に乗った
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