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第53話 果てへと続く為に ❶
スカウトキャラバンが終わると烈達は控え室へと向かった
控え室には兵藤貴史がいた
兵藤は烈を見ると深々と頭を下げた
そして「シャルロットを許してはくれないか?」と口にした
烈は知らん顔をして兵藤の横を通り過ぎて行った
竜馬が「先に拒んだのはシャルロットだから!
王女だからといって何しても許されると思うな!」と言い吐き捨て、横を通り過ぎて行った
兵藤とシャルロット王女の婚約式は一旦白紙に戻され、全ての話が頓挫していた
クリストファー・オブライエンが【待った!】を掛けているからだ!
クリストファーは「烈に失礼な態度を取り、許されると思うな!」と言い切った
ロザリーは「王女と謂う身分だからと言って、何をしても良いと想わない様に!
御自分の立場をもう一度考えられたら?
御自分の婚約は、誰が取り持ったのか?
誰が貴方の立場を考えて動いていたか?
お考えになっては如何?」と吐き捨てた
其処まで冷たい態度をされ…………シャルロットは敵に回してはならない存在を軽視してしまったのだと後悔した
女王に話を持って行っても…………女王は
「あの子を蔑ろにした貴方が悪い!
あの子を無視して通せば、我が国はあの子に更地にされてしまいますわ!」と嗤って言った
守護神 オーディーンも「彼奴は恐ろしい!天界を更地にした奴じゃならな!敵にしたら………厄介なことこの上ない!
じゃが味方にすれば、この上ない心強い存在じゃ
お主の伴侶となる者は其れを誰よりも知っておるのではないか?」と一蹴した
四面楚歌で、踏んだり蹴ったりとは、まさにこの現実を言う………
兵藤はもう烈に許しを請うしかなかった
が、その烈は兵藤を無視して視界にすら入れなかった
相当怒らせたのだと理解した
兵藤は康太に「烈を怒らせた………もぉどうしたら良いか解らねぇよ俺は!」と弱音を吐いた
康太は『烈関係をオレに謂うな!振り向いたら烈がいねぇなんて事になっていたら、オレでもどうにも出来ねぇって知ってるやんか!』とボヤかれ振り向くと烈はいなかった
神野達に聞いても「知らない!」の一点張りで………兵藤はお手上げだった
「振り向いたらいなかったわ!」
そうラインすると康太は
『まぁ、そうなるわな!
怒ってる宗右衛門なんて相手にしたくねぇよ!
それに彼奴は兎に角忙しいからな、時間が取れるまで少し待て!』と返した
シャルロットは何が悪かったのか?解らずに泣いていた
お付の者達も最近は冷たく………段々と立場がなくなっていた
シャルロットは兵藤に「このまま………婚約は白紙に戻されたりなんて事………ありませんわよね?」と問い掛けた
兵藤は「それは俺では何も答えられねぇよ!
白紙だと言われれは……其処で終わりだ!
現にもう逢ってさえ貰えない!」と答えた
逢うチャンスはあった
連れて来いと言われていた…………が、シャルロットが不安定になっていて……合えるチャンスを失った
女王は倭の国の転生者 飛鳥井宗右衛門の存在はかなり重く受け止め、飛鳥井烈の命を守る為ならばと守護神も向かわせるし、番犬だって傍へ行って護らせた
そんな存在を無視して、蔑ろにしたと聞けば………女王は良い顔はしないし、オブライエン家は烈を我が子だと、公言していてるだけに………女王よりも厄介かも知れない
何せ女王陛下の妹がロザリーなのだ
そのロザリーでさえ、よく思っていないのであれば、第1王女の子だとしても………立場なんて簡単になくなる
第1王女は「愚かな事をしましたねシャルロット………」と嘆いた
文字
日に日に自分の立場が………危うくなるのを感じていた
あの時、病院へ会いに行けば良かったの………?
何故 あの時の自分はそれを受け入れなかったのか?
兵藤は全身全霊掛けてシャルロットを護っていた
立場などなくなろうとも、倭の国で結婚して暮らせば関係ないと思っていた
が、総てが頓挫した状況では、倭の国も受け入れる事さえ出来ないと謂われた
大学にさえ通う事は叶わなくなっていた………
閣下はスカウトキャラバンが終わるのを見越して、堂嶋正義を烈の所へ派遣した
このまま宙ぶらりんの状態が良くないのは解っていたからだ………
が、堂嶋正義が正式に飛鳥井を訪ねても…………烈はいなくて………康太も知らなくて困った
堂嶋は「康太、烈は何処にいるんだ?」と聞いても
「あ〜!もぉ〜!んなん知るかよ!
どいつもこいつも口を開けば、烈は何処にいる?
烈を知らねぇか?そればかり聞きやがる!
が、宗右衛門の動きは誰にも止められねぇ!
オレでさえも、だ!
烈関係を聞かれてもオレは何も答えられねぇんだよ!」と返される
諜報機関を使い烈の居場所を辿れば、有栖院暦也が「何 烈を探っている!巫山戯た事をするならば、その命保証してやる気はない!」と忠告して来るから……
堂嶋でさえ、お手上げ状態となった
が、何故か?烈を探していると謂う情報を聞いた唐沢経由で、烈の居場所を知る事が出来た
唐沢は『お前、烈の居場所を探ってるんだろ?
烈なら今イギリスにいるぞ!
維弦がオーデション受けた子達をイギリスへ連れて行く護衛の為に同行して行ってる!』と閣下と堂嶋に連絡にを入れ、そこでやっとイギリスにいるのだと知る
堂嶋は唐沢に「烈の護衛ではなく?」と問い掛けると
唐沢は『スカウトキャラバンで事務所と契約した子達を鳳城由香里氏と共に連れて行くから、その子達の護衛に着いて行ったんだよ!』と答えた
「烈は………女王と会ったりするのか?」
と聞いたが唐沢は
『んなの俺に聞かれても知らねぇよ!
それに彼奴にそんな暇ねぇだろ?
ヨニー©イギリスへ行ったら、溜まってる仕事も決算もしねぇとならねぇとボヤいていたらしいからな!
鳳城由香里の教室に引き渡してからは、ヨニー©イギリスで仕事して、只管会議してるって維弦から連絡が入ってた!
収支決算の時期と重なり、収支の見直しなど話し合うらしくてな
会議室に缶詰らしいぞ!
維弦は関係者以外立ち入り禁止の会議室には入れなくて、外で待機してるらしいからな!」と返した
『あぁ、彼はヨニーの副社長だったな………
動きがあったら連絡を入れてくれ!』
『烈は連日関係者以外立ち入り禁止の会議室に入り、仕事して動きはないらしい!
維弦は外で待つなら仕事しろ!ってオリヴァーに目を付けられて扱き使われて仕事してるって言っていた!
イギリスまで来て仕事ですよ!班長!って維弦から泣きのライン入ってたぜ!』
「なら………今後の話は………烈に任せるしかないのかな?」
『どうだろ?彼はかなり泣かなきゃ動きたくもない!と吐き捨ててましたよ?って維弦が言ってた』
「………彼らしい………まぁなる様にしかない
其れで駄目なら、此処で終わるしかない!」
『って事だな!無神経な人間は大嫌いだからな!仕方ねぇだろ!そりゃ泣くしかねぇわな!』
「………動きがあったら連絡して下さい!」
堂嶋は苦笑して電話を切った
その烈だが、特別会議室で会議と大義名分を掲げ、人払いをして裏口から外へ出て行っていた
当然 オリヴァーに目を付けられた維弦には気取らせる事なく普通に出て行けていた
烈はクリストファー・オブライエンに逢いに行っていた
お迎えの車が来ると、知られてしまうからハイヤーで向かう徹底ぶりだった
クリストファーは烈が来る連絡を貰い屋敷で待機していた
烈は屋敷の応接間に足を踏み入れると、その気迫に………クリスは動く事さえ出来なかった
ソファーに腰掛けると足を組み、唇の端を吊り上げ嗤った
「クリス、イギリスの首相と倭の国の閣下と堂嶋正義と兵藤夫妻と第1王女を集めて下さい!」
クリスは眉を顰め
「其れは……シャルロットの今後の話ですか?」と問い掛けた
「そうね、此処いらで軌道修正かけないと、末路は破滅しかないからね!
誰も幸せになれない結末なんて誰も望んでないのよ!」
「烈は………心を砕いて誰よりもシャルロットに寄り添ったのに………無視され……腹が立たないのかい?」
「甘ちゃんが世間を舐めているから、一度痛い目を見せてやろうとは思ったけど、別に腹なんか立たないわ!
無視するなら、すれば良い!
其れで不利になろうとも、ボクには関係ないからね!どうでも良いのよ!
でもこのままだと兵藤きゅんが哀れだからね
こんな想いさせる為に縁談を持ち掛けた訳じゃない!
だけどね、その前にシャルロットには死ぬ気を味あわせないと、ボクの腹の虫が収まらない!
正義や兵藤夫妻がイギリスに到着するのも時間掛かるし、その間にイギリス皇室の人間ならば味わう洗礼受けさせましょうか!」
「え!アレをやられるのですか?」
「当たり前じゃない!ロザリーだって味わった筈よ!王室にいる以上は遅かれ早かれ知る世界
知らずに倭の国へ行かせる訳には逝かなかったから、丁度良かったわ!
シャルロットを今直ぐに捕まえて、バッキンガム宮殿地下へ落としておいて!
伴侶も共に落として良いわ!」
「烈は………バッキンガム宮殿の地下の話を……誰からされました?」
「オーディーンよ!この世の理、摂理、其れ等は国により違うけど、倭の国の皇室の方々だって、伊勢神宮へ逝かれた時に体験される事も有るものよ!成人の儀で知る世界を、シャルロットはまだ体験していない
この機会に体験させれば良いじゃない!
まぁ命は取られないし、大丈夫じゃない?
だってエミリア王女は断トツのタイムで地上へ上がられたのよ!
シャルロットも、地下へ放り込みなさい!」
「…………生きて還れるかね彼女は………」
「その為の伴侶じゃない!
まぁ地下のモノ達がイジられていたら、死亡するしかないから、オーディーンに見張らせるけどね!」
「承知した………ならばシャルロットを捕まえ、宮殿の地下へ放り込むとする!」
「そうしなさい!
世の中舐め腐っているのよ、あの王女様は!
そんな根性でこの先兵藤貴史の妻でいるのも難しいわ!
最悪 兵藤貴史は永遠に独身になるしかないわね!」
「それは可哀想だよ………烈、烈……私の可愛い子!」
そう言いクリストファーは烈を抱き締めた
「大丈夫よクリス、あの二人が地下へ降りたならば、オーディーンと共に地下へ行くから!」
「え!君が………!」
「だから竜ゅー馬、堂嶋正義に連絡して、閣下と兵藤夫妻と共にイギリスへ来る様に手配を頼むわね!」
「了解したよ!烈!」
クリストファーは烈と竜馬を部屋を用意させ休ませる事にした
クリストファーは烈の女王の番犬、ジョセフィーヌ・アデレーゼ・フィッツロに
「兵藤貴史とシャルロット王女を、烈の命に置いてイギリスまで連れてらっしゃい!」と命令した
ジョセフィーヌは『承知致しました!直ちに捕獲した後お連れ致します!』と答えた
此れで14時間後にはイギリスへやって来る
竜馬も堂嶋正義に連絡を入れた
「烈からの伝言、伝えても宜しいですか?」
『はい!烈は何と言ってるのですか?』
「堂嶋正義、閣下 兵藤夫妻をイギリスへお連れしろと申しております!」
『え!閣下………あの方まで引きずり出されますか?』
「ええ。閣下が来られない場合、それなりの人材をお願い致します!」
『少し待って下さい!
此れより私は閣下へ連絡を取ります!』
「早目にお願いしますね!
女王の番犬が兵藤貴史とシャルロット王女を捕獲して連れて来るので、話し合うならそんなに遅くなる訳には行かないのですよ!
我等もそんなに長い間、イギリスに滞在する予定はないのですから!」
『解りました!1時間だけ下さい!
直ちに閣下と連絡を取り、唐沢に兵藤夫妻を捕獲しに向かわせます!』
「其れではお願いしますね!
くれぐれも、1時間だけしか待ちませんから!」
『それで宜しいです!では!』
そう言い堂嶋は竜馬との電話を切ると閣下と面会を申し出た
その間に兵藤夫妻を捕獲して来る様に、唐沢へ連絡を入れた
閣下は直ぐに会われると返答が来て、堂嶋は即座に裏皇居まで向かった
そして閣下と面会が叶うと総て話をした
「烈からイギリスへ来てくれと連絡が入りました!どうされます?
閣下が不在ならばそれなりの人材をお願いします………との事です!」
「承知しました!ならば私が行きましょう!
堂嶋、政府専用機を用意なさい!」
と話しているとジョセフィーヌ・アデレーゼ・フィッツロが面会を求めてやって来たと伝えられた
即座にお通しするとジョセフィーヌは
「イギリスへ逝かれるとか?
私も部下に今 兵藤貴史とシャルロット王女を捕獲させに向かわせてます!
なので、イギリスが政府専用機を出すので、兵藤夫妻をお連れして下さい!
下手したら、この婚姻はポシャります!
其れを頭に入れられ動いて下さい!」と告げた
閣下も「烈を怒らせたのはシャルロット王女ですので、それも仕方ないかと?」と答えた
厄介な奴を怒らせたんだから、総て【無】にされても仕方ないもんだろ!
ジョセフィーヌは「だよな、世間知らずな王女様は現実見れねぇから、敵に回したら駄目なの敵に回しちまうんだよ!」と笑い飛ばした
暫く待つと兵藤貴史とシャルロット王女が連れられて来た
そしてその後に兵藤夫妻が連れられて来た
美緒は顔色一つ変えず、凛として前を見据えていた
堂嶋は閣下に深々と頭を下げると
「其れでは行きましょうか!」と告げた
閣下は「そうですね!」と言い立ち上がった
お付の者達が閣下の正装を手にして後に続く
リムジンを呼び寄せると、閣下だけ乗せ空港へと向かった
堂嶋は兵藤夫妻と共に用意されたリムジンに乗り込み!後を追う様に空港へと向かった
ジョセフィーヌはシャルロット王女と兵藤を自分のリムジンに乗せて空港へと向かった
そして空港に到着すると、イギリスの政府専用機へ乗り込みイギリスへ向けて飛び立った
兵藤は何一つ聞く事はしなかった
シャルロットは不安げな顔をしていたが、兵藤は言葉にはしなかった
美緒は堂嶋に「何かありましたか?」と問い掛けた
「あ~イギリスへ行けば解るとしか言えない!
はっきり言って俺も良く解っちゃいないからな!」と答えた
「そうですか!」
美緒はそう言い何も謂う事はなかった
政治家の妻と謂うのは、こんなにも気丈で強くなければならないのか?
堂嶋は言葉もなかった
堂嶋は只管眠り、美緒も目を瞑っていた
14時間かけてイギリスの地に到着すると、政府専用機を降りた
そしてリムジンバスを呼ぶと、皆でリムジンバスに乗り込んだ
静かなバスの車内に携帯のバイブ音が響くと、ジョセフィーヌは携帯を見て
「えぇぇぇぇ!!まぢかよ!」と叫んだ
バスはバッキンガム宮殿へと向けて走り、正門を潜ってからさらに長い間走り続け、宮殿の外れにバスは停まった
バスから降りると烈が立っていた
女王と共に笑顔で談笑しつつ立っていた
ジョセフィーヌは女王に一礼するとその場を立ち去った
使用人が閣下と堂嶋を貴賓室へと案内する
一旦 貴賓室へ案内されソファーに座る
烈は「閣下、遠路遥々お越しありがとう御座います!此れより、この二人はバッキンガム宮殿の地下へ行くので正式な話し合いは翌日致します!
此れよりお部屋へ案内致しますので、明日までは長旅の疲れを取って下さい!
兵藤夫妻も明日まではお休み下さい!
堂嶋正義は明日の話し合いの調整をお願いしますね!」と言葉にした
シャルロット王女はバッキンガム宮殿の地下と聞き顔を青褪めさせていた
そして青褪める顔で「何故わたくしが?」と問い掛けた
烈は「エミリア王女も去年地下へ行ったわ!
地下に行ってないのは貴方だけよ?
其れで王室の一員を良く名乗れるわね!」と熾烈な言葉を投げ掛けた
女王も「英国王室の一員ならば皆通る通過儀礼です!」と言葉にし……そして目を逸らし
「まぁ………貴方に資格さえあれば………【印】は戴けるでしょう………」と呟いた
避けては通れない現実を突きつけ、逃げ道を総て塞がれる
兵藤は「宮殿の地下には何があるのか?だけ聞きたい!」と問い掛けた
「其れはこんな場では話せないわよ!
地下へ行けば嫌でも解るわよ!
其れでは明日、話し合いのテーブルに着きましょう!」と言い竜馬と共に去って行ってしまった
女王もお付の者達が来て退席して逝くと、王宮に仕える使用人がやって来た
使用人達は、王女のドレスを脱がし、ラフなジャージに着替えさせた
兵藤にもジャージを渡すと、兵藤は着替えた
着替えると宮殿の地下へと向けて連れられて行った
薄暗い階段を何段も何段も降りて行く
壁にはウォールキャンドルホルダーに取り付けられた蝋燭の明かりだけが、ユラユラと揺れて辺りを照らしていた
かなり地下へと降りて行った
お付の者達は、二人を突き当たりの大きな扉の前に立たせると傍を離れた
大きな木製の扉の前に立つと………ウォーォーォーと謂う獣みたいな声が微かに聞こえた
シャルロットは震えていた
そして木製の扉の横には、剣が壁に固定されてフォルダーの中に収まっていた
兵藤は剣を抜くとシャルロットに一本を渡した
そして自分も剣を手にした
そして重いドアを開けた
すると其処は…………え?何処?此処は??
と思える大草原のど真ん中だった
獣が時々襲って来る
それを兵藤が戦い殺して行った
はぁはぁ………息が切れる
気を抜くと襲い掛けられる
兵藤は「君の手にした剣は飾りか?」と問い掛けた
シャルロットは「え?……無理よ……」と泣いた
すると笑い声が聞こえた
「ねぇ竜ゅー馬、闘えない女なんて要らないわよね?」と問い掛けた
竜馬は「だな、命を懸けて闘ってくれている婚約者を目にしても、自分は戦う気迫もない…………呆れるよ!」と呆れて言葉にした
烈は「兵藤貴史、伴侶を間違えたわね!
エミリアならば、喜んで闘ってくれるわよ!
泣くだけの女、今後の貴方の人生に必要?
この先永遠に一人でいた方が良いかもね!」と皮肉に嗤う
目の前で烈は熊みたいな獣を真っ二つにして片付けた
兵藤は「其れでも俺はシャルロットを愛してるから闘うよ!」と謂う
烈はシャルロットに草薙剣を突き付けた
「貴方はどうする?
兵藤貴史に甘えて闘いもせず泣くだけ?」
「闘う!闘うわ!
共に生きると決めたんだもの!」
「なら何故、学ばない?
王女暮らしが長いと言ったって、貴方程学ばない女は知らないわよ!」
シャルロットは烈の剣を弾こうとした
が、こんな小さい子なのに………どれだけ力が強いのよ!
剣はシャルロットの皮膚を突き刺し………痛みにシャルロットは眉を顰めた
動こうとした兵藤の足元には魔法陣が出現していた
「ボクも本気出してあげるわよ!」
怖い………と想った
殺される……と想った
「貴方の周りで護衛してる者達は、貴方の命を護ってくれてるのよ!
だから貴方の軽率な行動が、取り返しのつかない事態を巻き起こす事になる
貴方の変わりに死ぬのよ!
護衛の命なんて価値もないと思ってるなら、此処で死になさい!」
じわじわと恐怖に足が竦む
目を瞑ろうとしたら「目なんて閉じさせる訳ないじゃない!」と呪文を唱えた
烈は剣をクーに渡すと、クーは剣を受け取り、スパッと真っ二つに斬った
目の前で……己の身体が真っ二つにされた
あぁ…………私死ぬんだ
そう想った
が………死んでいなかった
烈は「やっぱ来るわよね!クー ルー スー来るわよ!竜馬、出来るだけ逃げなさい!」と言った
竜馬は兵藤の手を掴むと、兵藤はシャルロットの手を掴み、必死に走り出した
烈の目の前に……不敵に嗤う男が姿を現した
テスカトリポカだった
「こんな地下に来れるなんて、オーディーン結界張り直さなきゃ駄目じゃない!」と叫んだ
オーディーンも姿を現した
そして……………七賢人 八賢者も姿を現した
賢者アロイスは「やれやれ!我が弟子は師匠使いが荒い!」とボヤいた
そんな間も烈は呪文を唱えていた
そして呪文を唱え終わると
「総結界を張った!この世界は誰にも入り込めぬ世界となる!」と宣言した
師匠達は創世記の闇を滅ぼす呪文を唱えた
どうせ本体じゃないかも知れないから………
呪文を受けたテスカトリポカの身体が、ボロボロ崩れ始める
闇を深めた黒曜石に己を投じて創り上げたテスカトリポカは悔しげに真っ赤な唇を噛み締めると
自分の肋から骨を一本圧し折った
そして鋭利な槍をその場で作った
「この槍は生意気なお前らの弟子にくれてやる!」と己の身体が崩れる前に槍を放った
そして身体は崩れても高笑いが響く
「先ずは聖神を消し去り、ニブルヘイムに絶望をくれてやろう!」と叫んだ
烈の体に槍が…………物凄いスピードて向かって飛んで来た………
賢人アーサーが烈の髪を抜き!土塊から烈の容姿をした人形を作った
賢者アーロンは瞬時に土塊と烈をすり替えた
土塊に槍は突き刺さり………烈は助かった
が、ボロボロ身体が崩れたテスカトリポカは、己の身体を武器として黒曜石の鏃にして飛ばしていた
賢者も賢人も烈もオーディーンさえも怪我をしていた
当然 クー達も怪我をして血を流していた
辺りを見渡せば、オーディーンは兵藤や竜馬やシャルロットの壁となり、身を呈して庇い怪我をしていた
烈は「後少しで死ぬ所だったじゃない!」とボヤいた
賢人ラルゴは「あ~怪我しちまったぜ!」とボヤいていた
オーディーンは「知らせて参る!」と姿を消すと、ジョセフィーヌが医者を派遣した
烈は兵藤に「情けな過ぎて話す気も起きないわ!
この婚姻、正式に白紙に戻すしかないわ!
後 王宮の人間として地下の試練さえロクに出来ない奴なんか王族の数にも入れられないわ!」と吐き捨てて、医者に連れられその場を後にした
竜馬は烈を心配しつつも、兵藤とシャルロットを連れて控え室へと戻って行った
堂嶋は「あれ?烈は?」と聞くと、竜馬はテスカトリポカの姿したのが現れて何故か賢人と賢者が姿を現して闘っていた、と伝えた
堂嶋は言葉もなかった
兵藤は王宮の来賓の間に、シャルロットは幽閉されるべく自分の部屋へ押し込められ鍵を掛けられ閉められた
竜馬はオブライエン家からのお迎えが来て、屋敷へと帰された
オブライエン家の、何時も使用している部屋へ案内されると烈が、既にいた
竜馬は「烈!怪我していたから………心配した!」と烈を抱き締めた
烈は竜馬を見ると
「困ったお姫様ね、あのままなら王族としての資格すら剥奪されるわよ!」とボヤいた
竜馬は烈を離すと「あの地下って?」と問い掛けた
「飛鳥井で言う試練の間みたいなモノね!
やはり王族って命を狙われるじゃない
己の命は己で護れるなら護る
でなくば抵抗する間もなく奪われるしかないからね!其れさえクリア出来なきゃ、婚姻なんて許可されないわよ
何故それを教えないの?とボクは想ったのよ
王族の印を代々仕えてる魔獣に押されなきゃ……王族としても半端なままよ!」
「何故それを、シャルロットは教えられてないの?」
「其れは女王と第1王女だけか知る……何かによるモノなのね!
多分だけどね、其れは………シャルロットの生い立ちに関係あるのかもね……………」
「生い立ち?それって??」
竜馬にはサッパリ解らなかった
烈はそれ以上何も言わずベッドに入り込んだ
暫くしてクー達が戻って来た
クーは「あ~面倒な事してくれたな!」とボヤいた
竜馬は「クー達は今まで治療だったの?」と問い掛けた
スーが「そうやで!オーディーンも、わいらも賢人と賢者も創造神の所へ行き治療を受けたんやで!
治療が終わると賢人と賢者は桃源郷近くの里へ転送された
烈は倭の国へ飛ばして貰い久遠に治療されて戻ったんやろ!」と答えた
烈は「先生ぇーには怒られたわ!
てめぇ!まだ前の自爆の時の怪我も治ってねぇのに!また新しい怪我しやがって!って怒られまくったわ!」とボヤいた
竜馬は「傷、痛い?」と問い掛けた
「まぁ痛いわよ!しかも顔に怪我しちゃったからね!絶対に始球式とか引き受けちゃ駄目よ!」
竜馬はその言葉にやっと笑った
烈は笑って布団を捲ると
「ほらほら、時差もあるし寝るわよ!」と謂う
竜馬は烈の横に入ると、烈を抱き締めた
そして烈の温もりに何時しか眠りに落ちていた
朝 起きるとオブライエン家の主治医が来て、烈の傷の具合を確認する為に診察に現れた
クリストファーは心配して
「傷跡が残るなら医療スタッフを結集して治しなさい!」と命令した
部屋で眠る烈をストレッチャーに乗せて、緊急車両に乗せて病院へと運ぶ
烈は時差の為か眠くて、眠っていた
竜馬は目の前で烈が連れ出されるのを見て、慌てて着いて行った
暫くして烈は治療を受けて屋敷に戻された
軽い食事を取り、竜馬と共に正装に着替えて、バッキンガム宮殿へと向かう
クリストファー・オブライエン、妻ロザリーがそれに同行した
バッキンガム宮殿へ到着すると女王の住まわれる宮殿の方へ案内され貴賓室へ通された
貴賓室へ入ると其処には既に兵藤とシャルロットと兵藤夫妻と堂嶋が同席していた
暫くして閣下がイギリス首相と共に姿を現すと、起立して一礼した
首相は「皆様お座り下さい!」と話すと、皆着席した
首相は「烈殿は………シャルロット姫の事………何処まで御存知ですか?」と問い掛けた
烈はニャッと嗤うと「それは生い立ちの事かしら?」と尋ねた
「流石ですな、宗右衛門殿には………隠せませんな……!この王宮の中でシャルロット姫の生い立ちを知っているのは………歴代首相と女王と第1王女関係の側近だけです………」
「そりゃ言えないわよ
第1王女の伴侶は王族じゃない!
まぁそれなりの家柄の由緒正しき血統ではあるが、愛人を孕ませて子を産ませました!
なんて王室スキャンダルだものね!
だからエミリア王女が地下で王室に仕える魔獣から【印】を与えられたとしても、シャルロットじゃ、土台無理な話でしかないのよね!」
第1王女は下を向いていた………'
そして顔を上げると
「愛して育てた子です!
我が子同然に育てた子です!
なので………この子は自分が私が産んだ子じゃない事も知りません…………」と答えた
「…………我が子として育てた………ね
独り立ち出来る様に、より厳しく生きて逝く術を教えるべきでしたね!」
烈の言葉に第1王女は
「この子は何処へも嫁がせる気は御座いませんでした…………」と答えた
「なら何故嫁がせようとしたの?」
「其れがこの子が幸せならば………と想いました
ですが……王室からの離脱を考えてないと謂う現実に…………其れは出来ない相談なので悩みました
嫁ぐならは………それなりの覚悟が必要となる
私は………何処かで………この子の存在を許せなかったのかも………知れません
でも、決心付きました
離婚致します!
夫となるアンドリューとは、キッチリ離婚する気です!
歪んだ私の心が………シャルロットを歪めてしまったのならば……責任は取らねばなりません!」
其処まで言い切り第1王女はシャルロットを見て
「王室から離脱なさい!」と言った
「貴方には王位継承権はありません!
夫は私の夫と謂う立場なだけで、離婚すれば王室からは無関係の人間となる
そんな貴方に王位継承はない!
夫の愛人の子に………王位を継承する権利はない
理解…………出来ますか?シャルロット?」
シャルロットはショックを受けていた
兄や妹達と区別された様な事は無かったが………何か違和感をずっと抱いていた
シャルロットはニカッと嗤うと
「はい!御母様!シャルロットは王室を離脱致します!」と答えた
烈は「…………そうなると………命狙われるわよ
そうさせない為の王室の存続だったのにね………」と呟いた
イギリス首相は「お話下さいますか?宗右衛門殿!」と問い掛けた
「シャルロットは王室のスキャンダルだからよ!
その生い立ち………今更ながらに発覚したら?
王室に泥塗る事になるじゃない!
そりゃ闇から闇へ消し去りたい想いならあるでしょ!」
首相は言葉もなかった…………
「かって皇太子が年上の女が良いと、皇太子妃との結婚生活を拒み、離婚した時あったじゃない!
元となっても皇太子妃の人気は絶大!
何処かへ嫁がれて行ってしまえば、永遠の伝説は穢れる!
そうさせない為に、永遠の象徴とした存在は…………記憶に新しい筈よ!
そして皇太子のスキャンダルは美化され、次期国王となられる!
皇子が皇太子を継がれる時まで皇太子妃の思い出は美しく語られる
良くもまぁ似たの選んだわよね!
だから、あの暗殺は必要な事故だった
まぁ今になっては誰も解らない
解らないから思い出は美しいのよ!」
首相もまさか………そこを突かれるとは…………
言葉なんかない
何も言える事もない
「でも魔獣がそっぽを向いた存在が王族を名乗るも烏滸がましい!
離脱 婚姻 倭の国へ移住、そのルートで逝くしかないわね!
イギリス王室からの完全離脱!
そしたら倭の国で護って貰いなさい!
そして強くなりなさい!
夫に護られてばかりの女など、はっきり言って足手纏いなだけよ!
理解出来てる?兵藤貴史?」
「………あぁ、理解出来てるよ宗右衛門!」
「それでも妻にするならば、美緒を使いなさい!
三木美緒、玉藻の君を名乗るべき存在が、指し示す方へ行きなさい!
ボクからのアドバイスは此処まで、後は有料なのよね、そして高いのよ!」
そう言い烈は笑った
イギリス首相は「理解致しました!シャルロット王女は王室離脱した後、倭の国へ行き婚姻なさる事を議会で可決致します!
資産は王室を出れる時に準備金が支払われます!
それに伴い、領地と会社も相続致します故、それなりに生活は出来るでしょう!
が、其れだけです!
今後 シャルロット王女は王室とは無関係な存在となります!其れで宜しいですか?」と確認した
烈は何も言わなかった
美緒も何も言わなかった
兵藤は「はい!其れで宜しいです!」と答えた
烈は「シャルロット、貴方の母は貴方が愛人との子だとしても、自分の子達と分け隔てなく育てられた!
まぁ婚姻前からアンドリューは浮気者で、家柄だけは立派でも下半身はどうしょうもない奴だったのよ!
恋に恋する男は惚れやすく冷めやすい
捨てなさい!そんな男は握り潰してもボクが許すわ!」と笑って言う
第1王女は「望む所よ!握り潰して再起不能が、あの人には相応しいのかも知れませんね!」と笑った
シャルロットは腹を括った
この恋を信じてみよう………
浮気者の父親にだけは似たくはない…………
ならば愛に生きようと決意をした
イギリス首相は閣下に
「普通とは少し違うけど、元が付けばそれ程の警備も必要はしない!
そして何より、直ぐにでも婚姻は可能です!
倭の国としては、どう受け止められてますか?」と問い掛けた
閣下は「野暮な事を謂うつもりは御座いません!婚姻は本人の自由とさせて戴きます!」と答えた
「此れは【合意】と謂う事で宜しいですか?
一応 王女をなさっていた方なので、花嫁に出られるまでは王室の仕来りに則って粛々と執り行います!」
「【合意】で構いません!
ならば倭の国も粛々と受け入れの準備を執り行います!」と答えた
烈は「ならば兵藤貴史には製材所をプレゼントするわ!その会社を引き継ぎ政治家として打って出る準備をなさい!
シャルロット、三木美緒、いいえ、兵藤美緒は政治家の妻としての生き様を刻んだ女よ!
嫁いだならば、貴方は政治家の妻として生きる総てを義母に教えて戴きなさい!」と口にした
シャルロットは「はい!御母様宜しくお願い致します!」と言葉にした
美緒は何も言わなかった
腐ってもイギリス王室を背負う姫なのだ
それはそれは腕によりをかけて仕込まねば!と想っていた
が、それは言葉で言える軽い事ではない
だから言葉にして返したりなんかしなかった
堂嶋は「本国に帰国した後にスケジュールを立てようと想います!」と告げる
クリストファーは「全ての連絡はセーギが窓口になります!」と謂う
堂嶋は「え?それは嫌だって!」と謂う
イギリス首相は「やっと肩の荷が少し下ろせます!」とご機嫌だった
誰も堂嶋の言葉なんぞ聞いちゃいなかった………
烈は不敵に兵藤を視ると
「さぁお手並み拝見と逝こうかしら?」と嗤った
「お手並みもお手紙もあるかよ!
ゴリゴリのゴリ押ししてやるだけだ!」と吐き捨てた
「それも良いわね!
ボクねゴリゴリのゴリ押し大好きよ!
さてと、竜ゅー馬帰ろうかしら?」
竜馬は「だね、CM撮影あるし帰ろうよ!」と謂う
そして烈と竜馬はあっという間にバッキンガム宮殿を後にした
ヨニー©イギリスの正面玄関から還って来た烈と竜馬の姿を見て、維弦は何故????とパニックになったのは言うまでもない
そしてあっという間にイギリスでの仕事を片付けて、烈と竜馬と【R&R】のメンバーは帰国して行った
倭の国へ到着すると維弦は疲れ果てて還って行き
烈と竜馬と【R&R】のメンバーは其々ばらばらになり還って行った
飛鳥井の家にやっと烈が還って来た晩
兵藤夫妻と兵藤が飛鳥井を尋ねて来た
烈は爆睡してて………その晩は還って貰った程だった
そして翌日に正式に兵藤家族の来訪を了承した
その日の晩 兵藤家族が尋ねて来た
美緒は黒の訪問着を着ていた
昭一郎は黒のスーツを着ていた
客間に通され、話し合いとなった
康太は「あの?何で正装して来てるのよ?話が何も解らねぇかんな説明しろよ!」と文句を言う
兵藤はイギリスでの話し合いを康太に説明した
康太は「あ~だからエミリアみてぇにシャルロットには守護聖獣着いてなかったんか!」と納得した
兵藤は「頼むから俺に説明してくれ!」と謂う程に混乱していた
烈がその説明をしてやった
「イギリス王室の正統な血縁者は皆、聖獣からの【印】を押されるのよ!
そして守護聖獣を与えられるのよ!
エミリア王女にはその守護聖獣が与えられて契約なされているのよ!」と説明した
そして「母ぁーさん達はイギリスに転生したならば、そこら辺はボクより詳しいわよね?」と母に話を振った
康太は「まぁな………成人過ぎて守護聖獣いねぇのは何でかな?とは想ったが、仮にも王女に、んな事聞けねぇやんか!」とボヤいた
烈は「それもそうね、ならば詳しい話をしてあげるわ!倭の国の皇室の王位継承第三位の御方まで、守護の聖獣と契約され、その身を護って戴くのは同じよ!
どの国も王位継承権を持つ者は、暗殺や毒殺を危惧して守護となるべく聖獣か、妖精、守護神を守りに着けて身を護る事にしてるのよ
でなくば、アッサリ殺され、気付けば王族総てが入れ替わってました!なんて事になるからね
【血】を尊び【継承】に重きを置く
それはどの国でも変わらない!
其れには正統な血筋が必要となる!
玉藻の君ならば、その血の尊さが良く解るのではなくて?」と皮肉に嗤った
美緒はその言葉を受けて
「であるな、血と血統と継承は家にだって通ずる話となるからな!
その血で三木の家はどれだけ悩まされ続けた事やら!今思い出しても腹立たしい!」と怒りを滲ませた
「まぁシャルロットには継承すべき血統はない!
倭の国へ来たならば、一般人と変わらない
王室離脱した皇子いたじゃない!
あの王子はイギリスのスキャンダルを売り物にして食ってる
でもそんな下劣な事はさせたくないから、兵藤貴史には母ぁーさんが有栖院翁から相続してボクに放り出した製材所・材木商、輸入木材関係の会社を託して社長として生活をしつつ、政治家目指して貰うしかないわね!」
「あ~そこいら関係は烈に任せるわ!
オレは貴史が政治家になれば良い!
オレはその果てに立って見届ければ約束は違わないかんな!」
「母ぁーさん、面倒なの総てボクに放り出すの止めてよね!」
「まぁ必要なら出るさ!
そのスタンスは今世も続けさせて貰うけどな!」
康太はそう言い笑った
美緒は笑いを堪えつつ親子喧嘩を見ていた
昭一郎も「烈は本当に母さんが好きなんだね!」と微笑ましく呟いた
烈は「はぁ?昭ちゃん何見てるの?面倒なの全部ボクに放り出してる母ぁーさんに文句言ってるのよ?」と少し怒り謂う
「だって全身で母さんの為ならば!って言ってるからね!」
「………昭ちゃん……後で覚えときなさい!」
「良いよ!ずっと覚えとくから!」
「……昭ちゃん……達観しすぎよ!」
「そうかな?」
「…………もう良いわ……昭ちゃんには勝てないから………」
烈が降参する
悪気の無い善人 其れが兵藤昭一郎だった
少し抜けて、総てがポジティブな善人……
父に似ず、優しい心根を持つ
其処が烈は大好きだった
烈は昭一郎に抱き着くと
「昭ちゃん、飛鳥井の家ね、近い内に引っ越すのよ!その時、昭ちゃん達も引っ越しなさいよ!
警察署の横にずっと使われない土地あったじゃない!何でも国庫に返還された土地で、もう何十年と遊んでる土地あったじゃない
その土地、貰い受けたからビル建ててあげたから引っ越しなさいよ!
警察署の横、凄い高い塀したビル建ってるでしょ?アレね兵藤きゅんちになるから!」と寝耳に水な話を聞く
昭一郎は「警察署の横……ビル建ったね!
あの事を言ってるのかな?
凄い高い塀で防犯カメラ着けまくりのビル
その真向かいのビル同様、凄い防犯システムのビル?」と問い掛けた
「あ!その真向かいのビル、飛鳥井の新居よ!
宗右衛門の資産の全部を投入して建てたのよ!
しかも飛鳥井建設の推移を結集してぶっ建てたビルと言っても過言じゃないのよ!
良いじゃない、道路渡れば美緒たんちで、ばぁしゃんも近くなって喜ぶってモノよ!」
玲香はその事を聞き、烈……と名を呼んた
烈は祖母に抱き着き
「ばぁしゃん 美緒たんち近くなるわよ!
カフェテラスみたいなお洒落なテラス作ったから、其処でお茶して過ごしても良いわよ!
ドッグランも作ったから、ワン達や花や木々に囲まれ過ごしてね!」
「烈!祖母孝行してくれて有り難う!」
「近うちに、ばぁしゃん悩ませてる件も片付くから!」
「え?…………」
「だからもう悩まなくても大丈夫よ!
ばぁしゃんの両親、大ばばと大じじは、老人ホームに入ってケアされてるから、近い内に逢いに逝くと良いのよ!
今じゃ元気に毎日過ごしていると聞くしね!」
玲香は堪えきれず嗚咽を漏らし泣いた
清隆は妻を抱き寄せ、烈も抱き締めた
「飛鳥井建設は近い内に大きな仕事が入ります!
総合病院の分院が村瀬産婦人科医院の跡地に建設されます!
あの土地は何と県が買い取ってくれました!
西部総合病院と銘打ち、あの近隣の総合医療に携わるそうです!
後期高齢者も増加して、あの近辺には対した病院もない!
だから住民達はバスと電車を乗り継いで大きな病院に何時間も掛けて行く現状に、高齢者は大変だとの事で、県に繁雄が話を持ち掛けてくれたので、正義たんと調整して病院建設に何とかこぎ着けました!
そして頭がかなり禿げ上がった、ばぁしゃんの弟は、もう時期開業する医療ビルの中には産婦人科も入っているので、その病院で産科の医師になります
結構大変だったのよ………ばぁしゃんの弟………自暴自棄になり、年老いた両親放置して失踪しやがるから!頭、禿げ上がった事だし坊主にして菩提寺に放り込み仕事させてやったわ!
今後はツルピカ院長として産科クリニックを白石医師と共に切り盛りしてくれる筈よ!」
と、やっとカタチに出来た今後を口にした
目が回る程に忙しい日々だった
飛鳥井建設 施工 【R&R】 ヨニー
総ての人事異動をしつつ、スカウトキャラバンをやり、禿げ上がった村瀬医師の動向を見つつ、玲香の両親をまずは老人ホームに入れた
西村の娘の件と重なり、本当に投げ出したい程に大変だった
その煽りで、CM撮影は未だ出来てはいなかった
早瀬の件でも動き、限界は突破していた
それがやっとカタチになったのだ
瑛太は「其処まで為さっていたのですか?」と驚いていた
「失踪しやがっていたからね!
介護放棄として老人ホームに入れたのよ!
本当ならは介護放棄として訴えてやろうかと思ったわよ!
暦也が踏み込んだ時には、骨皮筋衛門になっていたのよ!」
と、烈はプンプン怒る
瑛太が「あの烈さん、骨皮筋衛門とは?」と問い掛けた
「謂わば骸骨に皮がへばり付いた状態よ!」
【えーー!!!】と家族は驚愕の声を上げた
「そりゃ当たり前じゃない!
介護放棄された老人が、食べ物もない部屋に鍵をかけられて閉じ込められていたのよ!
食べれなくて骨と皮だけになるのは当然じゃない!」
「あの、それで今は?」
「入院させて先生ぇーが怒りまくりで治療してくれ、老人ホームへ入りケアされてるから、痴呆もかなり抑えられて今は普通よ!
だから、ばぁしゃんが逢っても普通に会話出来るし、今は玲香に謝罪したい!と泣いて過ごしているそうよ!」
玲香は「え?何故……親の反対を押し切り結婚して……親を苦しめたのは我なのに?」と問い掛けた
「そんなの、娘が幸せにしていたら、それで良い訳じゃない!
それを許さなかった自分達は後悔で一杯なのよ!」
玲香は母さん………父さん……と泣いた
烈は「竜ゅー馬!」と謂うと、竜馬は鞄を取りに行き持って来ると、鞄の中から名刺を取り出した
「逢いたいならば、ケアマネジャーに連絡を入れて下さい!
そしたら何時でもお逢い出来ます!
でもご両親の状態を見て、高齢者は感染症とか気をつけねばならぬ状態となるので、面会は予約をせねば出来ないので、必ずやケアマネジャーに連絡を入れてから逢って下さい!
向こうに行けば担当者を紹介されるから、そしたら今後は担当者と話して下さい!」と言った
玲香は名刺を受け取り「承知した!」と答えた
烈は「で、話を戻すわね!兵藤きゅんはシャルロットが倭の国へ来たら結婚式を挙げて名実共に夫婦になりなさい!
妻を食わせる仕事と家は用意して上げるんだから、文句はないわよね?」と問い掛けた
「文句はないよ!で、その会社…貰って構わないのか?家もそうだけど………」
「有栖院翁がこの世を去る時に資産の整理をした
その時 譲渡されたのが母ぁーさんが製材所、木材全般、ボクは生コン会社なのよ!
母ぁーさんは面倒だから『烈にやんよ!』とボクに譲渡した、其れを兵藤きゅんの食い扶持に提供するのよ!
生コン会社が良いなら、生コン会社でも良いわよ!ネジ屋が良いなら小さいけど【R&R】関連の事業で持ってるから、其れでも良いわよ!
薬局は駄目、アレはボクの主力の会社だからね」
「別に製材所、木材全般が嫌と言ってねぇよ!
生コンやネジ屋じゃなくても良いってば!
本当に貰って構わねぇのか?と聞いてるんだよ!」
「構わないわよ!ボクは株主だし、経営権だけの譲渡だけど良いわよね?」
「構わねぇよ!別に株まで寄越せとか図々しい事は言わねぇよ!
で、家だけど、聞いてねぇよ!
美緒と親父は知っていたのかよ?」
兵藤が聞くと美緒と昭一郎は「知らぬな!」「知らないな!」と答えた
美緒は「我が家にそんな経済力などありはせぬ!
我の会社も幾つか手離し、傷が浅い内にと宗右衛門殿の尽力により、軌道修正を掛けて貰った所じゃから、その様な家をぶっ建てる等……考えた事もないわ!」と答えた
昭一郎も「情けない事に私には父の様な経済力など持ち合わせてはいない………
従ってそんな盛大な家など建てるのは不可能です
美緒を玲香の傍へ逝かせてやりたい思いならばあるが、私はしがない国会議員ですから!
そんな大金が絡んだ話など土台無理な現実ですから!」と謂う
美緒はうんうん!と頷いていた
兵藤は烈に「本当にありが………え!烈寝てる??」と驚いた
一生が烈を抱き上げ部屋へと連れて行く
翔が「体温計!」と救急箱を手にして走って行った
竜馬は「取り敢えず結婚おめでとう!」と謂う
兵藤は竜馬に「お前は何処まで知ってるの?」と問い掛けた
竜馬は笑って「俺?俺はほぼ全部かな?エミリア王女の背後には聖獣がいるのを見た時に疑問を持った
まぁ生い立ちまでは聞かされてないから………驚いたけどね」と答えた
そう言えば女王や第1王女や第3王女の背後には守護するモノが見えていた………
が、シャルロットの背後には何もいなかった
そう言うモノなのか?と流していたが、どうやらそうじゃないのだと知る
「イギリス王族の闇は結構深いんだよ
公の場に絶対に出ない第2王女がいるんだよ
晩餐会にも王族の集まりにも絶対に顔を出さない
何故か、解るか?」
竜馬が問い掛けると、康太が
「止めとけ竜馬!
それは貴史には知る必要なんかねぇ!」
と止めた
竜馬は「………こーちやん、引け目も何も感じさせない為に言っとくべきだよ!」と謂う
康太は仕方なく「解ったよ!」と謂うと
「其れは俺が話してやんよ!」と言った
竜馬は「え?」と驚いた
その話を知ってる方が驚く
「第2王女の夫になるべき存在だったのは第1王女の夫 アンドリューだ!
第2王女と交際していたのに、下半身のだらし無い奴は第1王女に乗り換えて結婚!
第2王女は失意のどん底に落ちて自殺未遂を繰り返し………未だに彼女は心を病み静養中だ
そんな奪略の末、結ばれた二人だが……下半身がだらしのない男は浮気を止めなかった
でラッセル家の侯爵夫人に手を出し、何と子を孕ませて、後に出産させてしまった
ラッセル家と言えばイギリス名門貴族名家に属する家系
その侯爵夫人とだったから、パパラッチが嗅ぎつければ、今世紀最大のスキャンダルとなる……
侯爵夫人はひっそりと出産し、子供は第1王女が引き取り育てた
其れがシャルロットだ!
第1王女は我が子と差を付ける事なく育て上げた出来た妻だった
が、未だにアンドリュー公の下半身暴走は止まらなくて、そろそろ玉を握り潰され去勢されそうだと言う事だ!
この話は貴史の婚姻の話が出た時に女王から直接聞いた!」
兵藤は「大分前に聞いていたのか?その話は烈にしたのか?」と問い掛けた
「彼奴は宗右衛門だぜ?
余分な事なんて聞かずとも、星を詠み、運気を詠み、人生を占う!
話すまでもねぇだろ!」
「そうか……烈には………世話になったのに振り回しちまった…………」
「嫌なら出ねぇ!
視る気がねぇなら何も視ねぇ!
其れが宗右衛門だ!」
「ゴメン、少し頭の中を整頓してからまた尋ねる事にする!
その時にちゃんと話をさせてくれ!」
「あぁ、何時でも来いよ!」
康太が答えると兵藤は美緒と昭一郎と共に還って行った
一生はそれを見送り
「康太!烈熱があるぜ!」と告げた
榊原は我が子の部屋に行き、抱き上げると久遠に連絡を入れて病院へと連れて行った
康太は「知らねぇ内にイギリスに行ったりしてれば熱出て当たり前か?
何か顔の傷も増えてねぇか?」と謂う
其処へ姿を現したのが賢人ラルゴだった
ラルゴは烈の様子を見る為に人の世に姿を現したのだ
そのついでにイギリスで起きた事を総て康太に話した
そして創造神から念の為に渡された薬を預かったから姿を現したと伝えた
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