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第55話 果てへと続く為に ❸

玲香は「不自然に見えぬ様にアデランスか植毛を考えて付き添うとする!」と約束してくれた 康太は「うちの家系はフサフサだよな?」と清隆と瑛太を見た この二人もかなり干上がってる玲香の弟の写真は見せられたのだった 清隆は「康太………父を見るのは止めなさい!」 瑛太は「兄を見るのは止めなさい!」 と、比べるのを辞めろ!と言った 烈は「美緒たん、何だかハゲの話になっちゃったわ………此処ら辺で肩凝る話は終わりて良い?」 と問い掛けた 美緒は「はい!後は倅がやらねばならぬ事……故、今後の相談には乗ってやって下され!」と頼んだ 「まぁ公式な手続きを経て、皇室離脱した後に王女は肩書を総て取っ払った状態で来る! そしたら結婚して、の前に婚約を大々的に公表し皇室離脱を国民に表明せねばならないのよ! そしたら…………命狙われるから気を付けなさい! 倭の国へ来たならば、守護聖獣とは行かないけど、守護系の式神、ボクが授けてやるから其れで命は取られはしないけど、日々の鍛錬は必要となるわね! 当分は菩提寺の道場に兵藤きゅんも通いなさい! 三節棍、仕えるまで、かなりの痛手を負って貰うわ!三節棍、薙刀、合気道、柔道黒帯までは習得させないと、と思ってるのよ! 貴方の妻となる人もね同じ位はやらせるわ!」 「承知致しました!」 「ねぇ、兵藤きゅん、貴方今 ママに飛び掛かってみなさいよ! 貴方は男だけど、ママには負けるよ!」 「え!嘘!絶対に危ないから止めた方が良いって!」 「四の五の言わず飛び掛かりなさい!」 兵藤は仕方なく京香に飛び掛かった すると京香は兵藤の隙を突きヒョイと手を掴むと、投げ飛ばした その技、数秒の出来事だった! 地面に叩きつけられ、兵藤は 「痛ぇー!え!何!何で俺倒れてるの!」と叫んだ 「ボクのママはね、黒帯の有段者よ!」 「えー!嘘!」 「不意に暴漢が襲って来たとしても、ママは素手で凌げるわ! そして薙刀持たせれば、飛鳥井の女に兵藤きゅんは太刀打ちも出来やしないわ! 美緒たんもそうよ! 名家の嫁はある程度、鍛錬され仕込まれて嫁がされてるのよ! 政治家の妻は御飾りじゃないのよ! 政治家の夫と共に行動する、其れは何時何時狙われるか?解らないのよ! だから鍛錬して日々磨いて錆びない様に生きているのよ!」 「頑張るよ!烈! 政治家になるまでの日々は闘いだと想う だが、俺は負けねぇ!ぜってぇにな! シャルロットを鍛え上げて政治家の妻にする そして満を持して躍り出ると約束する!」 「ならば5年の間に、日々鍛錬、日々鍛えて堂嶋正義の左右に立つ片割れになって下さい!」 片割れ、もう片割れは烈の隣で不敵に嗤う竜馬なのは解っていた 烈は居住まいを正すと宗右衛門の声で 「兵藤美緒殿、兵藤昭一郎殿! この度摂家 五家 近衛の家が正式にご養子を取られる事と相成った 従って、顔見世の儀を大々的に行う事となった 近衛の家の膿も抜き取った故、もう暗殺しよう等と行動を起こす不埒者も出ぬであろう! また今後の事を考慮して【謀叛者へと淘汰の章】を放った故、行動を起こそうとする者は総て鬼籍の者となる!それを公表した故、荒れに荒れたが今は静まった故、顔見世の儀と相成った! 是非とも出席をお願い致す!」と告げた 美緒と昭一郎は正座して居住まいを正すと 「確かに兵藤美緒、しかとお受け致しました!」と返した 「確かに兵藤昭一郎、しかとお受け致しました!」と口上を述べた 「日時は追って知らせる! その前に兵藤貴史の婚約披露じゃな!」 と宗右衛門が言うと竜馬が 「イギリスで【合意】をイギリス首相と共に閣下もなされたと謂う事で、シャルロット王女の婚約披露会見、そして皇室離脱を会見する!との事です! その会見にはナイトの称号を持つ三木竜馬と飛鳥井烈が同席致します! 我等はイギリス王室の公使的存在となります!」 と告げた 美緒は「ならば着々と婚約披露の準備に取り掛かっておるのじゃな!」と呟いた 烈は「本当ならば都内の一等地にビルをおっ建て、新婚を始めるつもりだった シャルロット王女の身分的なモノが危うくて、頓挫して、また話し合いなって、の繰り返しだった 公地を下賜され、その土地にビルを建てる段取りはしていた だけど中々進まなくて、多分イギリスとしても話を進める気はないのだと………理解した 嫁がせる気は皆無なんだと思惑を感じていた が、シャルロットは突っ走り、事態は余計に悪化した! 本当に周りが見えない女って、殴り倒して踏んづけたい程に嫌いなのよ!ボク!」と吐き捨てた フェミニストな烈が、其処まで言ってしまう存在なのだと、皆が理解する そして更に続ける 「其れでも、飛鳥井も引越しするのは決まっていたし、新居は着々と建設されていた なのに、シャルロット関係は総て頓挫していた ボクが頓挫させていたと思ってるみたいだけど、ボクはストップかけた事は一度もないわ! まぁシャルロットがボクに対して失礼な振る舞いをしたと謂う事で、婚約白紙に戻したのはクリスだし、ボクは指示すら出してないわよ! まぁそれ程にお馬鹿な行動に走っていたって事よ だからイギリスなんて待ってられなく、遊んでた土地貰う為に色んな仕事を引き受けたりして、ボクも板挟みになっていたのよ 引き受けたくもない仕事して、やっとこさ対価となる土地手に入れたから、兵藤の家をぶっ建てたのよ!イギリス待ってたら永遠に返答来なさそうだったからね!」 昭一郎は「シャルロットは冷遇されていたのてすか?」と問い掛けた 「冷遇はされてなんかいないわよ! 実の子と同じ様に育てた、だけどネガティブな愛人の性質引き受けちゃったのよ! まぁ第1王女もネガティブな奴だけど、吹っ切れたら玉握り潰す位の気概は持ってるわよ! もうね離婚されて玉握り潰され再起不能にされ一族の嫌われ者として生きて逝くしかないアンドリューの様に、そんな末路を辿りたくないなら奮起するしかないのよね! 愛人の子を王女として、育ててやったんだもの! やっと嫁がせる気になってるし、この縁談は今後はサクサク逝くわよ! だから叩き直してやりなさい! ネガティブキャンペーンしたら、そんなネガティブごとぶった切ってやりなさい! あの子は吹っ切れたら誰よりも男前になるわよ! 美緒たんと同等位にはなれるわよ! だから心を鬼にして、叩き込むのよ! で、兵藤きゅん、ボクさイギリスで言ったわよね?」 「え?何を???」 兵藤は慌てた 「『ボクからのアドバイスは此処まで、後は有料なのよね、そして高いのよ!』と! 覚えてますか?兵藤貴史!」 「はい!覚えてます!」 「ならば対価を支払いなさい!」 「何をすれば?宜しいですか?」 「ボクね9月20日にアメリカ逝くのよ!」 「その支払いをしろ?とか?」 「ボクはケチだけど、旅費を人に出させて逝く訳ないじゃない! ボク仕事なのに、経費で出るわよ!んなのは!」 経費で落とすのね………それはケチとは言わないの?? と想ったけど………口にするのは止めた 「ボクがアメリカへ行ってる間に黒帯取りなさい!黒帯取れば小さいのに教えられるのよ! 貴方は学んで鍛えて修業して、そして給料貰う為に製材所へ通い仕事するのよ! 1日が24時間じゃ足らない生活するのよ まずは黒帯ね!」 烈がそう言うとレイが「ごだん!くろおび!」と叫んだ 「そうね、五段 黒帯目指して貰おうかしら? 誰も八段 紅白帯 十段 赤帯なんて期待してないから黒帯ね!」 「あのお〜烈さん、何かハードル高くしといて、さも低くしてあげたぜ風に謂うの止めて下さい!」 「因みに竜ゅー馬は七段 紅白帯よ! ボクの父さんはね十段赤帯よ! じぃしゃんも、えーちゃんも黒帯よ! そしてボクのばぁしゃん、赤帯有段者よ!」 「え〜飛鳥井すげくない?」 「レイたんはこの前5級黄色帯になったのよ!」 「え?レイも色帯持ちなのかよ?」 「れいね、ちーいろ!」 「すけぇな、レイ!」 兵藤に頭を撫でられてレイは嬉しそうに笑っていた 烈は「飛鳥井は武道の道を極め、真贋を極めて来た家だからね! 幼稚舎から始まる武道の道を、今の時代も受け継がれ極めているのよ! 武を持って極めるは覇道、徳を持って治めるは王道である、を実践する為に日々鍛錬して生きているのよ! まぁ今の時代に合わない………とは想うけど己の命の責任位は取らねば、ね! と謂う事で黒帯がボクへの対価ね そして貴方、宗右衛門の預かりから外れます! 妻を得る男ならば、独り立ちせねばならない! 鷹司緑翠の推薦状を持って国会へ躍り出るならば、ワンランク上の教えを乞いなさい! と謂う事で飛鳥井宗右衛門預かりは終了となります!」 と宣言した 「え?俺、もう飛鳥井へ来られねぇのか?」と兵藤は呟いた 烈は呆れた顔をして 「何を言うのよ!兵藤きゅん! 何時でも遊びにおいでよ! 新居は信号渡って直ぐの3分の近さよ! あ~一応、部屋の説明とか要る?」と問い掛けた 美緒は「どんな家なのか?見に行く時に着いて来てくれればよい!」と答えた 「飛鳥井の【家族】全員で良いかしら?」 「構わぬよ!皆で来てたもれ!」 「飛鳥井ね、9月19日にお引越しなのよ! 新居に家具とかは、既に入れてあるのよね 各々の部屋の家具とか決めたからね! で、ボク節ちゃと新居の家具を見に行かなきゃなのよ!明日にでも見に行くわ!」 新居の家具はホームセンターや家具売り場に行き決めて新居に運ばせてある 自分の部屋のレイアウトは小さいのまで自分で選ばせ決めて、運ばせてあるのだった 家具の搬入に立ち会ったのは【R&R】の職員で、家を特定させない為の苦肉の策だった 響と奏の部屋も一希の部屋もある が、今は小さい為に慎一に面倒を見て貰っていた 飛鳥井の新居となる土地は元はファミレスの土地だった あの一帯は住宅街だったが、桜林に暴漢が押し入った事件の後に、あの一帯の家の住民は引っ越して行ってしまった 元々が高齢者で、空き家だった 家族が移り住むか?と考えていた矢先に、事件が起こり移り住む事を断念して売り飛ばし、綺麗な空き地になっていたのだ 事件のあった近くの土地と謂う事で格安で手に入れ立体駐車場もオフィースビルもぶっ建てた そして新居のビルは閑静な住宅街の中にあった まぁ隣立体駐車場とオフィースビル、少し行けば桜林学園、そして大きな幹線道路があり、信号を渡れば警察署で、その横は兵藤んちになる 警察署の真横のビルには防犯カメラが多数設置されていた 下手したら警察署より警戒は厳しいかも知れない 何よりど高い塀で取り囲まれ、樹木が生い茂り、その合間に防犯カメラは作動していた ロケットランチャーまで警戒して、塀は頑丈でトラック程度ならトラックが破壊される そしてまたもしもトラックが突っ込んだとしても、保険料じゃ支払えない額の修理代を請求される 準備万端! 満を持しての引っ越しだった 烈は鷹司節子にラインを入れた 「明日 お時間を貰えるなら家具を確かめに行きたいのよ!」 すると直ぐ様節子からラインがあり 『ならば明日の朝 10時に飛鳥井へお迎えにあがりますわ!』 と言ってくれた 「え、良いの?助かるわ! 『烈の為ですから! 丁度のタイミングで獅童が連絡をくれたので、予定も入れやすかったのですよ!」 「阿賀屋の刺客が何処に潜んでるか? 解らないわね!本当に油断出来ないわ!」 節子は『其れでは宜しくお願い致します!』と言いラインを終えた 翌日 烈は家から出て病院の前で車を持っていた すると鷹司の黒塗りの車が停り窓が開けられた 「烈、お待たせ致しました!」 節子がそう言うと助手席に乗っていたお付の者が車から出て後部座席のドアを開けた 烈はその車に乗り込むと、ドアが閉められた 節子は「どれも絶品の家具が揃っております!」と謂う 「本当にボクに声を掛けて大丈夫だったの? 鷹司の方で、とかは考えてなかったの?」 「想っておりませんよ! 博物館で飾られる位ならば、飛鳥井の家に置いて貰いたいですから! 叔父の家の中のモノで商売する気は有りません! ならば大切にして下さる方の元へと想っていました!」 「大切にするわよ! 楽しみだわ、ありがとうね!節ちゃん」 「烈には………無理難題聞いて貰いましたから…… 貴方は宗右衛門………騙されてはくれないのは解っています………なのに……あの日プロモーションの為に屋敷に来て下さいましたね! 貴方は何があるか?解っていたんじゃないんですか?」 「まぁね、用がなきゃ呼ばれないわよ! そして………家具で釣られたボクは何をさせられるのか?戦々恐々ではあるけどね 其れでも、行かねばならぬと、ボクの星が告げてるのよ!」 「………やはり………用心なさいますよね………」 「そりゃね、でも其れだけじゃないの知ってるから!節ちゃんがボクに話を持ち掛ける その時、その果てへと繋がる何かをボクは確信してるからね!」 「沖縄で見てビックリしました 一希、大きくなったのですね!」 「少しエロいオッサンみたいだけど、家族に大切にされて過ごしているわ! うちには神祖 龍神いるからね 仲良く過ごしているわよ!」 「あの子……誰に似たらあんなにもエロい子になったのですかね?」 「そりゃ先代の緑道に近しい存在なんじゃないかしら?」 「あ~私は知りませんが、かなりの好色家だったとか?」 「そうね、真反対の存在だったわね エロジジィの先代、堅物の現当主 まぁどっちも力は同格で彼等以外じゃ緑道は継げられないのよね!」 車内で楽しく談笑していたが、車が節子の叔父の家へ近づくに連れ………空気が重くなり、緊張感を孕んでいた 神奈川県だと言われてるのに、どう見ても神奈川県内なのか?と思える程に緑が多く田畑も多い 地理的には瀬谷の方ではあるが、山も近く森みたいに生い茂っていた 建物が何もなく緑が続く…が……その緑が重い空気を孕んでいた 「何かしら?」 烈は呟いた そして空を見上げ「大蛇とかじゃないのよね? 尻尾9本のキツネは式神にしてるし……何だろ?」と呟いた 「緑道はヤバいならば………飛鳥井の真贋に焼き払って貰え!との一点張りでした!」 「焼いただけじゃ消えないわよ! この気配は………妖怪ね、後…幽霊かしら?」 クーが姿を現すと「尻尾2つの猫とかいそうやな!」と謂う スーが「座敷わらしなんぞいたら栄えるやんか!」と喜ぶ 烈は「座敷わらし………ビルに住む付くの嫌じゃないかしら?」と呟くと節子は笑った そして節子の叔父の家へ到着する 節子は烈に鍵だけ渡した 行きたくないのだ……… 不気味な家は大嫌いだった……… そして一族の者も誰も近寄らなかった……… 烈は鍵を受け取ると車から降りて、屋敷へと向かった 鍵を開けて家に入ると、即座に扉を閉めた そして家の中へ入ると、何故か壁にぶつかった 「痛っ!ぬりかべ、邪魔よ!のきなさい!」と押し退けるとスタスタと家の中を歩く ザーザーと海の波のような音がする 「まさか小豆洗い……、あ~、一反木綿が干されてちゃ駄目じゃない! 高下駄あるし、緑道じゃないわよね! 烏天狗かしら?何故にこんなの収集してるのよ!」とボヤいた そしてキッチンに行き皿を確かめた 「お皿有るわね!番町皿屋敷のお菊ちゃんはいないわね!飛鳥井へ来て皿割ったら確実に半殺しの目に遭うからね!」 とかにかく、あっちやこっちに妖怪や、幽霊がいるのだ こんなの住めと言われても殆どの奴が逃げて逝くだろう! 烈は客間だろう部屋へ入ると 「妖怪出て来なさいよ! 出てなきゃ一斉招集の呪文唱えるわ!」と告げた するとゾロゾロ烈の前に妖怪が姿を現した 猫の尻尾が2つに分かれてる猫又を見て 「猫は飛鳥井へ連れて逝こうかしら?」 スーが「止めときなはれ!この子らは静かに過ごしたいんや!」と代弁してやった ならば、この屋敷にいるより隠世に行った方が良いのかも知れない 「ねぇ妖怪達が住んでる里知ってる? 隠世に行った方が住みやすいかもね!」 烈が言うと高下駄履いた烏天狗が姿を現し 「移転しただろ? 我等は新しい場は聞いてなどおらぬ!」 「あ~移転したわね 前の所は結界も何もかもが限界だったじゃない だから前の所は出入り口は封鎖して、魔界に近い山へ移ったのよ!そして人の世には一切出られなくして、魔界へと繋げたのよ! その山の方が烏天狗は住みやすいかもね!」 「ならば、あないを頼む!」 「良いわ、ぬりかべちゃんと一反木綿はどうする?後猫又や河童くんは?」 河童は「川はあるのか?」と問い掛けた 「有るわよ、綺麗な川が流れている 少し先に行くと大きな川が有るから、その川なら住めるわね!」 「ならば逝く!」 「猫ちゃんは?」 猫又は「この屋敷はどうなるんだ?」と問い掛けた 「この屋敷はそのまま遺すわよ 静かだし旅館か民宿にでもしようかと思っているわ だからイタズラさえしないのならば、住んでも構わないわよ!」 猫又は「………あの人は………天国に行けたのか?」と尋ねた 「天国に逝くのは本人の望みじゃないからね……… 屋敷に残っているわよ……… 多分だけど、此処離れ有るでしょ? その離れは内から鍵が掛けられ外からは入れなくしてある! この屋敷で身体は死絶え、身体は荼毘に附されても、愛した奴と共に想いだけ残し離れを封印した! だから、この屋敷は取り壊せないし、焼き払えないでしょうね!違う?」 一反木綿は「そうだ、あの人は我等と何時だって楽しく過ごしていた…………だがふと気付くと寂しそうに空を眺めていた………」と話す 大きな牛の妖怪も「あの人がいない家は寒すぎていたくはないな………」と答えた 大きな狐は尻尾は一本だが、かなりの霊力を秘めていた 大きな狐も「あの人がおらぬならば……何処へ行ったって同じだ!」と答えた 小豆洗いも「我等は此処が好きじゃった………優しい光に包まれた此処が好きじゃった……… じゃがあの人のおらぬ此処は………淋しくて寒くて………いとうないな………隠世に行けるならば行きたいと想う!」と伝えた 烏天狗は「此処の山にいた同輩も今はおらぬ……… 隠世へ行けるならば、そちらの山へ移り住む所存じゃ!」と告げた 「そう、此処に残る子は居ないのね……」 猫又は「思い出だけ抱いてこの先過ごすのは………辛すぎるからな………ワシはあの人の飼い猫じゃった、あの人が好き過ぎて………猫又になっても一緒にいようと想った でももうおらぬならば……生きやすい場へ移りたい!」と言葉にした 「猫又は母ぁーさんのお師匠さんちの猫になりなさいよ!大切にしてくれるわよ!」 「新しい飼い主を………与えてくれるのか?」 「そうよ、ぬりかべも里へ行った方が楽しいかもね!隠世で過ごして良いし、里で過ごしても良い 桜の里と謂う里はね、もう失くしてしまった優しさと、懐かしい光景に包まれた場所なのよ 一反木綿ちゃんと牛ちゃんも里へ行き、魔界へバイトに出なさいよ! 大きな狐さんはボクの式神になって欲しいわ!」 「良いぞ、ずっと傍は御免じゃが呼ばれるならば、出てやる事はしてやろう!」 「ありがとう、なら近い内に誓約の【印】を結びましょうか! 貴方には護って欲しい者がいるのよ! その者と印を結んでおくから、ピンチな時は出てやってね!」 「承知した!ならば我らを連れて行け!」  「皆、安住の地に住んで、安定したら考えて欲しいのよ!荷物とか持てるなら魔界へ仕事しに行きなさいよ! 今 建設中の建物の手伝いしなさいよ!」 皆 それは良い!と納得した それで妖怪の話は着いた 猫又は「幽霊系はどうする?この場所が好きで、あの人の魂の優しさに、居ついた幽霊は多数いる!」と伝えた 「転生したいなら閻魔大魔王様の所へ連れて逝くわよ!そして戸籍と名前と量刑を測って貰い出直ししなさい! そして修練の道へ行き、再び人として生まれて来るチャンスもあるけど、どうする?」 幽霊代表として一体の幽霊が出て来て 「地縛霊とか浮遊霊だから……人だった頃の記憶なんかないんだけど?」と訴えた 「大丈夫よ!閻魔様はそう言う魂に対しても、生前の行いを視る鏡あるから! 何か地獄と聞くと辛くて苦しいイメージあるけど、アレは相当前世にやらかしてなきゃ、ならないから! 人を何人も殺したり、人を騙して金を儲けたり、そう言う事してなきゃ、罪の数だけ贖罪し綺麗な魂になり転生の道を辿れるのよ!」 「ならば………此処にもこの世にも未練はないから………地獄へ行くとする!」 「此処に残る子はいないの?」 皆 無言で残るとは申し出なかった 烏天狗が「あの人の気配すらない場は………淋しいだけの場となる………もういたくはないのだろう……」と告げた 「なら妖怪は桜の里へ案内するわ! そして先ずは、幽霊ちゃん達は鬼ちゃん達に迎えに来て貰うわ!絶対に乱暴にさせたいと約束するわ!」 烈はそう言うと八咫鏡の欠片の通信機を手にすると 「えんちゃん、鬼ちゃん達をボクの所まで来させて欲しいのよ!幽霊ちゃん達が沢山いるから、前世の行いの量刑を測り、転生の道を辿れる様にして欲しいのよ!」 『解りました!今から烈の気を辿り鬼達に迎えに行かせます! 絶対に無礼な真似はしない様に言いつけて向かわせます!』 「お願いね、妖怪も沢山いるから、今から桜の里へ連れて逝くのよ! 其処から隠世へ行きたい者は隠世へ、桜の里で過ごしたい子は其処で過ごすのよ! あ、えんちゃん、一反木綿もぬりかべちゃんも牛ちゃんも魔界で働いて貰うのも良いかもね!」 『それは良いですね、近い内に桜の里へ一度見に行きます!』 「仕事作ってゴメンね!えんちゃん!」 『構いませんよ!では鬼達を逝かせます!』 総連絡を切ると、暫く待つと鬼達がやって来た 「烈、魂の回収に来たよ!」 鬼が言うと烈は震える幽霊を指差し 「この子達なのよ!怯えているから怖い事は止めてあげてね!」 「解ってるさ!」 鬼達は幽霊一体ずつと向き合うと、地獄へ行ってからの説明をした そしてその工程を辿り、魂が浄化されれば転生の道は開けると話す もう一人の鬼が「我等はお前達が転生出来る様に手助けして逝く所存だ! 辛くて耐えられないかと知れないが、耐えた先に転生の道は必ずや開ける お前達の魂を転生させるのが、我等が死命てあるからな!」と謂う 幽霊達は鬼達が用意した袋の中へ入った 一体残らず、綺麗に入った 鬼達は「ならな、烈!また魔界へ来てくれよ!」と言い去って行った 鬼達を見送って烈は神の道を開いた 烈は神の道を開くと「此れより桜の里へお連れする妖怪をお通し致す故、手出しは無用に御座います!」と伝えた フードを被った髑髏が姿を現すと 「委細承知致した!さぁ行かれるがよい!」と道を示した 烈は妖怪達と共に神の道の中へ入った そして只管暗闇の道を歩く 暫く歩くと桜の里へ到着し、烈は外へと出た 「此処よ!皆出るのよ!」と謂う 妖怪がゾロゾロと神の道から出て姿を現す 「あれ?こんなにいたかしら?」 烏天狗が「皆 逝くと決めたのじゃよ!もうあの屋敷に残っておるのは誰もおらぬ!」と告げた 桜の里へ出ると土御門孔明がやって来た 「烈、どうしました?」と問い掛ける 「あ、孔明しゃん、隠世へ逝く妖怪と、この桜の里で過ごす妖怪を連れて来たのよ!」と言い猫又を抱っこすると孔明に渡した 孔明は猫又を抱っこして撫でながら 「この子は?」と問い掛けた 「孔明しゃんちの猫になる子よ!」 「可愛い!貰っちゃって良いのかい?」 「桜の里も領地広げて、家も増やしたから烏天狗とか小豆洗いとか住めないかしら?」 「良いよ!空いてる家に住んでくれて構わないわよ!」 「出来たら烏天狗は山に住むから山に家建てて欲しいのよ!」 「でもね、烏天狗は隠世にいるからね 会いに行けば、そっちで住むとか言いそうだよ?」 「いるのね!烏天狗!」 「何でも京都の山から追われたそうだよ!」 「え?京都??京都に不穏な空気なんてあったかしら?」 「イノシシ増えたし、熊の脅威あるし、住みにくいって言ってな………」 孔明は遠い目にして話した 其処へ蘆屋貴章と安倍晴葵がやって来た 毎日 里へはパトロールに来ていたからだ 二人は妖怪の姿を見て近寄って来た 貴章は「烈君、隠世へ来られる方々かな?」と問い掛けた 「それは本人の望み通りにお願いね! あ、隠世に烏天狗増えてるって本当?」 晴葵は「本当です、京都から命からがら逃げ延びて来たと仰ってました!」と話す 烏天狗は「どうか、其奴等の所へ連れて行って参れ!」と頼んだ 「解ってるよ!少し待ってね! 他の子の意見も聞きたいから!」と謂う 烈は「ねぇ孔明しゃん、小豆洗いを我が家に一体どう?夜は波の音で眠れるし、料理とか洗いたいの頼んどけば洗ってくれるわよ!」と謂う 孔明は「そうだね、ならお手伝いして貰おうかな!」と話す 「一反木綿は魔界へ出稼ぎに逝かせて、夜はお布団変わりにしたら?」 「お布団は可哀想だから、カーテン変わりになって貰おうかな!」 「なら、ぬりかべは? この子は好きな所に立つから、見えない子はぶつかるわよ!」 「ぬりかべ君、廊下とか誰かいる所に立っちゃ駄目だよ!」 ぬりかべは「承知した!」と返した 烈は孔明に大きな狐を紹介し 「この子はアニメの斑みたいな姿してるから斑と名付け、桜の里の守り神にして貰えないかしら? それと同時に人を一人護らせるから、その子のピンチな時は出て逝くけど、その他はこの地に住むから、お揚げ食べさせてあげてね!」 「解りました!烈が大豆に良く似た種をくれたので、それで豆腐とかお揚げとかつくれる様になったので、作り立てをお供えします!」 孔明が言うと斑と命名された大狐は 「それは嬉しいぞ!」と喜んだ 烈は他の妖怪に「隠世に行く?それとも桜の里にいる?」と問い掛けた 「桜の里にいたい! あの人と同じ様に温かな空気に包まれた場にいたい!」 「ならいなさい!孔明さんのお手伝いするのよ!」 「解った!」 「なら隠世に行く子は連れて行って貰いなさい! また今 隠世に行くと決めなくても、後で行きたくなったら行けば良いからね! 逆もまた然り、好きな場所で住みなさい!」 各々好きな場所を選ばせる 隠世に逝く妖怪は貴章と春葵が連れて行った 桜の里に残る妖怪は、里の子にルールを聞いて、仲良く話をしていた 猫又はずっと孔明のお膝の上に居心地良さげにいた 「また見に来るからお願いね!孔明しゃん 駄目そうならクロウを定期的に越させるから、その時にでも相談してみて! そしたら魔界で暮らす事も出来るから!」 「解ってるよ!烈! ありがとうね!また楽しい里になったよ!」 「そうして増えて、皆が還る里になるのよ! ボクも還るからね、孔明しゃんのいる場に帰りたいもの!」 「あぁ………何時でもおいで!」 烈は思いっきり孔明に抱き着き、笑顔を向けた 「なら逝くわね!」 「ええ、猫又をありがとう!」 「名前付けて飼ってあげてね!」 手を振り烈は神の道を開き、元の屋敷に戻って来た そして何者もいなくなった屋敷を見て、封印を施した そして屋敷の外れに建つ離れを、この世とあの世の境界を斬ると、彼岸側の方は永遠に此方に来れない様に封印した もう彼岸を視る事は出来ない 其処で愛した想いを抱き、永遠に幸せな時を刻むと良いわ…………… 烈は境界に大歳神の力を拝借して、木々を呼び寄せた 木々に隠れて、もう離れは見えないだろう そしてこの先、永遠に地盤が崩壊しない限り 離れは閉ざされた空間から出る事はない この地は売れない 売れないけど、何かに利用しないとお金だけ掛かる まぁ其れも追々考えるとして、烈は屋敷の中へと入って行った 屋敷の中はどれも凄い調度品があった 応接間に相応しいソファーもテーブルもサイドボードも、中の飾り食器も、どれも一級品 烈は【R&R】のスタッフに調度品の引っ越しを頼んだ 飛鳥井の新居で使う家具を見定めて逝く そして客間を覗くと、素晴らしい一本の木で出来たテーブルを目にした これだけのテーブルはもう今の時代、手に入らないだろう……… そして箪笥も一級品だ! 「ばぁしゃんの部屋に合うかしら?」と着物が多い玲香の箪笥に、と決める そして寝室を覗くと、素晴らしいクィーンサイズのベッドが! 「此れはクリーニングに出した後に、両親行きね! 父ぉーさん、このベット見たら頑張っちゃうかしら?」 パシャッと携帯で写真を撮り父に送信 「ねぇ父ぉーさん、新居の寝室にどう? こんな上等なのは、今の時代には手に入らないわよ!スプリングも最高よ、多分! 其れは其れは母ぁーさん振動でイキまくりね!」 と悪魔の囁きをする 其れを見た榊原は「欲しいです!新居に決定です!」と送信した 其れを見て烈は北叟笑んでいた 「ダブルベッドも搬出、と!」 と、家具を決めて写メを撮る 後日 【R&R】のスタッフが来て、クリーニングを掛けた後に、業者に指示を出して新居に運び込んで貰う為だ 家電も使用した形跡がないのに、最新のに変えてあるからリストに追加して倉庫へ搬出する事に決めた 一通り、一階を見て二階へ上がる 階段を上がる途中、不意に目眩に襲われる 其れを堪えて二階へ上がると………… 「え?…………嘘…………」と信じられない光景を目にした 廊下を妖精が飛んでるのだ そして部屋に………寝てる 何故、此処にいるの??? 烈はペシペシ頬を叩いて………を起こした 「ねぇ、何で寝てるのよ!」と問い掛ける 寝ぼけた奴らが起きる 「帝釈天、何処から入ったのよ! 頭の毛、全部抜くわよ! 毘沙も、何故にいるのよ!」 毘沙門天は「遅いぞ!烈!」と謂う 「帝釈天の衣装着て何してるのよ?」 「俺をエセ神みたいに申すな!」 「何百年ブリの帝釈天様じゃないの!」 「嘘つけ!魔界でちょくちょく逢ってるやないか!」 「で、その帝釈天の衣装着た貴方が何でいるのよ?」 「だって今日 お前が来るって言ってたやんか!」 「ならその衣装脱ぎなさいよ!」 「え〜神々しいやろ!ほれ、祈れよ!」 「何処かへ消えて下さい!」 と、烈は祈った 毘沙門天は「ほら、そんな反応されるって言ったやんか!」とボヤく 「其れより一階は妖怪と幽霊で、二階は妖精って何よ?この家!帝釈天もいるし!」 「この家の時空は一階と二階の境目で歪んでるんだよ!」 「だよね、何かクラッと来たもん!」 「この家は倭の国にいる古来の神々の間では有名な家だった! 霞ヶ浦の家とこの家は異質すぎて、早く手を打たねば手遅れレベルになると言われる程の家じゃからな!」 帝釈天が説明すると毘沙門天も 「妖怪達は家主が招き入れ、出られなくした 妖精達は好き勝手出入りして、妖怪とは待遇も違う!」と話す 「ボク………節ちゃんにハメられたの?」 帝釈天が「其れはない!宗右衛門をハメたら鷹司なんぞ、跡形もなく消されるのを知っててやりはせぬ!」と話す 「なら何故、一希の件から何か逝く所でロクな目に遭わないのよね!」 毘沙門天は「宗右衛門でなくば、妖怪は影に隠れて様子見するだけで、姿など現しはしなかった! しかも節子は叔父の家が気持ち悪いのは知っていたが、金にあかせて調度品は凄いのを揃えていたのを知っていた だから声を掛けたのであろう!」と話す 帝釈天は「節子は烈が大好きだから、家具を探していると聞き、協力したのであろうて! じゃが、本当に気持ち悪いから近寄りたくはないであろう!」と話す 「困ったわね、一階と二階で時空がズレていたら利用価値ないわよ!」 「まぁ待て!その為の我と毘沙門天なのじゃよ!」 「え?何するの?」 「時空を斬るのさ!」 帝釈天は「外に出ろ!屋敷を小型にする!」と謂うと烈は階段を降りて外へと出た 帝釈天が屋敷を圧縮して小型にすると、毘沙門天が持っていた糸でスパッと真っ二つにした 帝釈天が「増築してやろう!」と敷地全部を使った部屋を作りを増やすと、何か工作してるみたいに作り始めた 3階建ての離れ、3階建ての母屋に切り分けて増築をした そして納得の出来になると、息を吹きかけ屋敷を元の大きさにした 三階部分が増築されていて、三階建ての建物になっていた 妖精が曇った雲を払い、祝福の光を入れる すると屋敷はスッカリ明るくなり、様変わりしていた 帝釈天は「仕事終わった故消えるわ!」と言い姿を消した 毘沙門天も「今宵は宴じゃ!夜に飛鳥井へ参る!」と言い姿を消した 烈は一人になり、屋敷中を見回り、家具や調度品に傷が着いてないか?確かめた 一階増えても、時空の歪みを取ってくれても、家具や調度品は無事で安堵した 一通り確認して、烈は屋敷を出て、少し離れた場に停まっている車へと戻った 節子は不安げな顔をして「大丈夫でしたか?」と無事を確かめた 「節ちゃん、この屋敷は一階と二階の時空がズレてて、一階は妖怪と幽霊まみれで、二階は妖精が好き勝手に飛んでたわ! そして離れに己の魂を封印した節ちゃんの叔父さんの存在が、一番厄介だわね!」 其処までちゃんと調べたのか?と節子は言葉もなかった 烈は「この屋敷、貰うわね!中の調度品も家具も貰うわ!そしてリニューアルさせて料亭か何かにするつもりよ!」と話す 節子は「………この屋敷の気持ち悪さは……変人の叔父が何かの儀式をやってたからだ……と親類縁者が口を揃えて申してました! だから誰もこの家のモノは欲しがらなかった また好奇心で屋敷の中の金目の物を貰おうとした者は行方不明になり消息を消した…… ですが叔父は金にあかせて調度品はかなり良いモノを揃えていました! なので、宗右衛門殿でしたら、何とかしてくれるんじゃないか………と想い、お連れしました ですが………やはり私はあの家には近づけませんでした!」と話す 「相性悪そうだもんね 節ちゃんの後ろで守護してる霊は、一番に弾いて近づけさせないわよね!」 「家………どうでした? 良い家具はありましたか?」 「ええ、どれも一級品ね! 殆どの家具を新居に運ぶわ 家電も新しいのに使われた形跡ないから倉庫に入れておくつもりよ! そしてこの家の家具も、殆どが未使用ね ダブルベッド有るのに、寝た気配ないし使用感無いし、クリーニングすれば使えるわ!」 「この家を手に入れたのは愛する人と共にいる為だったそうです! その人と過ごせたのは、ほんの数年程度で、愛する人の子は行方不明になり、数年後亡くなったと連絡を受けました そのショックで愛する人は精神を病み、何度も何度も娘の後を追おうとしたとか………… そして病に倒れ歩くのも困難になり、殆どの時間を離れで過ごしたと聞きます そして離れで他界したと聞きました それ以来叔父は変わりました………まるで別人の様に人を寄せ付けなくなり………他界する頃には誰も近寄らなかった たまたま、連絡を受けた緑道が屋敷に逝くと叔父は他界していた……… その体は荼毘に附したが、その遺体には魂はなかったと申していました……」 「あぁ、そうか、離れに愛する人の亡骸も魂も封印してあったのね! 下手したら反魂で生き返らせたかったのかしら? だけど今の蒼い地球(ほし)では反魂は出来ない だから色んなモノを呼び寄せてしまった 呼び寄せてしまったからには、妖怪達を大切にしていた…………外に出さない様に、もう誰も自分から離れない様に………ね だけど自分の命が尽きるのを知り、緑道に連絡を取った 己の死後、この屋敷にいる妖怪や幽霊が路頭に迷わない様にしたかったのね! それで納得したわ!」 何故、この時期に節子が烈を招いたのか? 総ては屋敷にいる妖怪や幽霊の為だったのだ 節子は「緑道は烈を屋敷に連れて逝くのも、譲渡するのも………許可は致しませんでした! 宗右衛門殿に不敬に思われたら、即座に鷹司は無くなるのだぞ!と怒られました! 其れでも私は………叔父が家具道楽してたのを知っていたので、烈に………と思ったのです! 他意はありませんし、狙ってなどいません!」と本当に良い家具を渡したいだけだと告げた 「解ってるから大丈夫よ!節ちゃん! あれだけの妖怪や幽霊が閉じ込められていたら、何時かこの土地は瘴気を放つでしょから、その前に手を打てて良かったわ!」 「妖怪いたのですか? 幽霊も…………怖くはないのですか?」 「あら、可愛いわよ! 妖怪は隠世へ逝かせたわ、後望むならば桜の里と謂う土御門孔明が住まう里へ引き渡した 幽霊は輪廻転生する為に地獄へ堕ちたわ! どの子達もちゃんと話が出来てる内に身の振り方が決められて良かったわ!」 「食べられるとか、祟られるとか………思わなかったのですか?」 「え?ボクを祟るなら、即座に消し去ってやるし、食べようとするなら牛頭ちゃん呼び出して食わせてやるわよ! あ、あの屋敷に牛頭ちゃんに似た牛くんいたわよ!牛の妖怪なんて今世は初めて見たわね!」 「烈………迷惑掛けてすみませんでした……… 貴方をこんな危険な目に遭わせたなんて………緑道に離縁されても文句は言えない程です!」 「それはないわよ、節ちゃん! 緑道が心底惚れたおなごを手放す訳ないじゃない!でも、もう既に坊主だから頭を丸めて謝罪も出来ないだろうから、悪いと思うなら家具の搬出を協力してね!と伝えといて! もう、あの地は浄化され、何もいない地になった まぁ、元々いる土地神は改めて祭り直して、繁栄を祈り護らねばならないけどね! それも緑道やっちゃってくれないかしら? あ、返してと言っても返さないからね!」 節子は笑って「誰にもそんな事は言わせません! 烈、貴方が怪我しなくて本当に良かった!」と言い烈を抱き締めた そして「あ、そうでした、鳳凰院家から三姉妹が縁遠くなってるので、宗右衛門殿に口利きを、と言われてますが………お断りしますが?」と問い掛けた 「鳳凰院家、彼処の娘、結月 睦月 皐月だったっけ?」 「え?お知り合いですか?」 「それはもぉ凄いお知り合いよ! だってボクの下で働いて貰ってるから………」 「あぁ、鳳凰院家は輝夜だけ遺して、後は嫁がせる気なのですね!」 「丁度、僕の周りに3人の独身者いるから、引き受けたのよ!」 「因みに誰ですか?」 節子が聞くと烈は節子の耳元でカクカクシカジカ、ゴニョゴニョと話した 「えー!それは御成婚なさる事を期待しております!」 「でもね、恋愛置き忘れた女相手にしてるから、苦戦中よ!」 「あ〜かなりの男前だとか?」 「一人は隼人の嫁の後釜にするつもりで、仕事教えてる所よ!」 「それは頼もしい! 私に出来る事が御座いましたらお声をお掛け下さい!」 「問題は兵藤貴史の妻の方が大きいのよね!」 「あ〜あの王女様ですか? それは我等鷹司ではどうも出来兼ねます!」 「そうなのよね………」 烈は飛鳥井記念病院まで送り届けられ、病院の前で車を降りると、節子に手を振り病院の中へ入って行った 久遠はやって来た烈を見つけ、診察室へと引っ張って行った 消毒をして手当てをする 「中々治らねぇな!」 と久遠はボヤいた 「9月20日までに治ってくれないかしら?」 「9月20日?何があるんだよ?」 「アメリカに行くのよボク 仕事納品をするからね、顔に怪我あると………この前逢った時も怪我してたし、怪我の時しか逢ってないのよね!」 「20日か、無理だろ?」 簡単に言ってしまう久遠だった 手当てを受けて病院を出ると竜馬が待っていた 「あら?竜ゅー馬どうしたの?」 「蒼佑がそろそろ烈還って来る頃だぜ!と言ってたから見に来たんだよ!」 「そうなのね、竜ゅー馬買い出しに出て欲しいのよ!」 「え?誰が来るのさ!」 「毘沙よ!」 「あの方既に来て、飛鳥井のキッチンでご飯食べさせて貰ってるっす!」 「竜ゅー馬、何で迎えに来てるの?  何かあったのかしら?」 烈は竜馬が態々迎えに出て来た事を、考えて問いかけた 「プロモーター名乗る仲介人が接触して来たんだよ……【R&R】の事務所の方へ飛鳥井烈との対話を望む!とアポを取って来てるんだけど?」 「話す事は何も無い! でも引かないだろうから、人の多いカフェとかファミレスとか、人目が多い場でなら逢っても良いわ、ホテルの個室なんて論外よ!」 「了解!ならば直ぐにリサーチかけて動くとする!」 そう話しながら病院横のマンションのエントラスに入り、管理人室を覗き込む すると………烈達の後ろを着いて来たであろう男達が、マンションの周りをウロウロしていた 烈はマンションの外に出ると、ケントに連絡を取り迎えに越させた そして迎えに来た車に乗り込み、家族の誰も知らない川崎にあるマンションへと入って行った 烈は母にラインして 「何かボクの周りを彷徨く輩がいるのよ! ボクはその家には帰らないわ! 多分、引っ越しになり、新居へ逝く感じね!」 そう言い防犯カメラに映る男の画像を添付して送った 明らかに外人な男が4、5人が、マンションの周りを彷徨いていた 「母さん達はタワマン横に移り住んで!」 『了解!コイツ等は何処辺りから来てるのよ?』 「多分 エイセイ狙いかしら? 裏で糸引いてる奴に踊らされて、ウロウロしてるのかもね!」 『それだけか?パット見た所、何処かのエージェントっぽさはあるな!』 「何か嫌な感じよね? 家族は素早く移動して欲しいわ!」 『了解!なら朝の出勤時に荷物持って出て、タワマン横の家へゴーするわ!』 「そうしてね、話を付けたらいなくなるとは想うのよね!」 『だと………良いな………』 「やっぱ母ぁーさんも………不穏な空気感じてる?」 『だな、家族には言っとく! 皆 明日にはタワマンの横に移動するとする!』 竜馬は烈と共に行動していた メンバーには、こっそり今いる場所を添付して送信しといた RODEOÑもStrong Hiも帰国して行った後で良かった クーは烈の部屋に行き、スーツケースを取り出し、服やスーツをスーツケースに詰めた そしてスーは大きなバッグを取り出すと、パジャマや下着を詰めた ルーは家族のいる客間へと向かう 「烈は身辺に不審人物いたから、姿を消したから、落ち着くまでは戻っては来ない! そしてそのまま20日にアメリカへ行き、帰国までに片付いていたら、新居に逝く そんな感じだな!」と告げた 瑛太は「帰宅した時、立体駐車場近くを外人の男達が数人ウロウロしてましたね! それでしょうかね?」と思い浮かべて話す 神野達も今は自分ちに帰り、飛鳥井は日常に戻っていた まぁ家に居着いた飲兵衛はいるが………… 清隆は「ならば明日は出勤したら地下を通りタワマンの横へ還った方が良いですかね?」と思案する 榊原は「そうですね!飛鳥井は今、小さな子も増えていますから………環境の変化だけは避けたかったのですがね………」と響と奏と一希の頭を撫でて、そう呟いた 英生は「ひょっとして………俺の所為ですか?」と青褪めた顔で呟いた 玲香は「主の所為ではない!今までは康太をずっと付け狙っていたし、家の周りには常にエージェントが彷徨いていた時がある………それが今は烈に変わっただけの事じゃよ!」と答える 康太も「英生、今更なんだよ、今更お前が注目集めて来たからって、欲しがるのは筋が違うと謂う話だ!おめぇは烈のモノなんだろ? ならば烈の指し示す方だけ見てれば大丈夫なんたまよ!」と謂う 御影は「多分この場に【R&R】のメンバーいないって事は、烈と行動を共にしてるんだろ? ならば俺の方から、クリスに巫山戯たのいると報告しとくとする!」と告げた PCを取り出すとクリストファー・オブライエンに事の経緯を送信しておいた オブライエン家はクリストファーの妻が結婚前は女優もやっていた事もあり芸能プロダクションやエージェンシーも多数持っていたから、そのコネならばふんだんに使える状況なのだ United Agents辺りなら、シャステナ程度の知名度のバンド等息の根止めるのも簡単だろう そんな思惑も当然あり連絡を入れたのだった 翌朝 飛鳥井の家族は通常通りに出勤して行き、その後足取りをパタッと途絶えさせた 何処を探してもいない 飛鳥井烈に至っては姿さえ抑えられていない………… 何とかせねば!と躍起になる そんな時 イギリス本国から帰還命令が出された 何の話も出来ないまま……倭の国を去らねばならない……… 大きな圧力が掛けられたのだろう………上層部が一切の手出しは禁止!今直ぐに帰還しろ!と言って来たからだった 烈が飛鳥井から消えて、3日もしない内に………身辺は落ち着きつつあった が、その思惑以外の奴らが、やはりいるのが良く解った 便乗して烈をこの世から消したい奴等の思惑も働いていて………烈はこのまま家には帰らずにアメリカへ行くつもりでいた アレから、飛鳥井の家から姿を消した烈は、最近完成したタワマンの最上階にいた 何故か、其処に毘沙門天や阿賀屋に紫園まで着いて来て、メンバー達と仲良く飲んでいた 毘沙門天は「宴会の筈じゃったのに………」と嘆いた が、メンバー達が買って来た酒やツマミが気に入って上機嫌で飲んでくれていたから助かった 阿賀屋は「こう言う避難の時の為にあの屋敷遺しておけばよいのに!」と謂う 「そうね、なら毘沙、帝釈天連れて離れは目視出来ない様にしてよ!」 毘沙門天は「何故に目視出来ない様になのじゃ?」と問い掛けた 「料亭として貸し出さなきゃ維持費バカ高いのよ 半分は料亭、そして神威を連れて行って間に竹藪や森林級の木で間仕切りしてくれたら避難の時の家になるわね! ぶっちゃけ、其処まで大きい家じゃなくて良い訳だもんね!」 「仕方ないのぉ〜、でも彼奴は滅多と働かぬ神だぜ?」 「…………なら絶縁ね!働かない奴要らないもん!」 毘沙門天は大爆笑した 其処へ暦也から電話があった 烈は携帯を取り出しハンズフリーにして電話に出た 『イギリス シャステナ関係の者達は、オブライエン家系列の圧力があり帰還した そして正式なルートを辿り、三社共同事務所へ烈への謝罪の場を設けて貰いたい事と、出来れば協力を得て今後の事を依頼した見てぇだぜ! 近い内に三社共同事務所から連絡があるだろう そしてシャステナ関係に混じって、プロのエージェントが紛れ込んでた しかも厄介な奴等だ! イギリス王政府の中には、絶対に表には出ない裏部隊が必ずやいて、粛清の為に闇から闇へ葬り去る事を得意とする その裏部隊は軍を退役した者が大半だったり、オリンピックで狙撃の金メダルを取った者など、人材は豊富にいる 特殊部隊の退役軍人もいて、主に、事故死に見せかけて殺すから始まり 暗殺 射撃、殺戮に特化した裏の闇の部隊に属する者が、密かにお前の傍を彷徨いていた、と謂う訳だ!』 「シャルロット経由かしら?」 『どうだろ?関わった者を闇から闇に葬り去り、沈静化図りたいのかもな………? それか他の思惑があるのかもな?』 「巫山戯た事をしてくれるね!」 『と謂う事だ、身辺は警戒しろ!』 「了解したわ!」 と電話を切った メンバーはその電話を聞いていて、オリヴァーに至っては話し始め少しした時から録音をしていた その録音ファイルを即座に父であるクリストファー・オブライエンへ送信した クリストファーは添付されたファイルを日本語に特化した者の訳させて聞いた途端、物凄い怒りを滲ませて動いた そのファイルを手にして向かった先は妻 ロザリーの元だった ロザリーはファイルを聞いた瞬間、女王にアポリを取り面会して貰っていた 女王はそのファイルを聞くや否や、王政府の人間総てを招集を掛けた 女王は皇太子に「貴方が主として立ち粛清に当たりなさい!」と告げた でなくばオブライエン家の反感を買うはかりか、他の家も……オブライエン家に同調を始めたら収拾が付かなくなる……… その前に行動せねばならないのだ 皇太子は即座に詳細を確かめる事にした 本当に特殊任務に特化した裏部隊が指示もなく、倭の国へ行ったのか? もし、指示を出したとしたら、それは誰なのか? イギリス王政府は名家の当主を集めた そしてイギリス王室を揺るがす事態の収拾の指揮を執った 後に、バッキンガム宮殿での突然の、大規模な人事の発表がされた 此処までの大規模な人事異動は異例だった そして、女王関係の部署に勤めている者達は尽く…………解雇された そして女王は………そんな中病に倒れた……… やはり側近による裏切りは堪えたのか………精神的に来たのを皮切りに、高齢だった事もあり主治医は用心して即座に入院させた 持病は持ってはいたが、最近は安定したのに……… 女王の入院のニュースは世界を駆け巡った そして暫くしたある日、日々病に臥して………今回は持ち直す事は無く息を引き取った 国民中が喪に服する事となった 皇太子が国王となり、女王の歴史に終止符が一旦打たれた イギリス王室は上へ下への大騒動となった 女王の葬儀を控え…… 国王となった陛下は皇太子に、全ての権限を託して 「女王陛下はかなり悔やまれて、見届ける事なく他界されて………無念でしたでしょう! 我等は…………とんでもない方を敵に回してしまう所でした! 決してそうならない為にも………尽力して下さい!」 国王から皇太子へ託され、皇太子は精力的に倭の国へ逝かせた裏部隊の事を調べていた そして総ての事にカタを付けて、報告に伺った頃には………飛鳥井烈は倭の国にはいなかった アメリカに仕事に出向いた後だった 皇太子は即座に特使を遣わし、事情説明に向かわせた アメリカの地にいようとも、我等は果たすべき死命がある! 勝手な行動に出た者達の粛清を行った報告をして、納得して友好を続けねばならぬのだ……… 皇太子は部下に「無礼のない様に即座に報告をなさって下さい!」と指示を出した 配下の者はその使命を賜わり、即座に動いた 例えアメリカの地にいようとも、説明責任は果たさねばならぬからだ………

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