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第9話
コントを見てるみたいで何だかおかしくなって思わず笑ってしまう。
「良かった。少しだけ元気出た?」
福神さんは元の福の神様の顔に戻って柔らかく笑った
「はい…すいません」
「ごめんね。大切な話をしてたんでしょ?それをこいつが暴走したんじゃない?本当に直属の上司がこれでごめんね。変態だけど仕事できるからなかなか異動させられなくてね」
本当に仕事している姿はかっこいいんだ。みんなが見惚れてるのも知ってる。だけど俺はそのかっこいい姿も変態な姿も愛おしいと思ってしまってる。だから…
「いえ…あの…俺…この人の子供を妊娠していて…」
そう告げると今度は鬼瓦部長が声を荒らげた
「はぁ!?それ同意!?無理矢理!?こいつのことだから無理矢理だろ!!長年の思いこじらせて君を無理矢理捻じ伏せたんだ!!貴様ー!!!許さん!!」
鬼瓦部長がいつも以上に怖い顔をして観音原部長を、睨みつける
「…あの…違うんです…俺…彼と共にこの子を育てることにしたんです…実はここへ入社させてもらって一緒に働かせてもらううちに…彼を好きになってしまいまして…ずっとずっと好きだったけど…言えなくて…それで…あの…」
そう言うと時が止まったかのようにしーんと一瞬なってその後割れんばかりの声がこだました
「本当にこれでいいの!?大丈夫?」
鬼さんと福さんが大袈裟にコントみたいにざざざーっと一緒に後ずさった。その姿がコミカルで微笑ましかった
「はい。彼がいいんです。確かに気持ち悪い人なんですけど…いいところも知ってますし。気持ち悪い人ですけど多分俺とこの子のこと大切にしてくれるって思うんです。気持ち悪い人ですけど」
「おまっ!三回気持ち悪いって…」
「だって!!気持ち悪いですもん!だけどそんなあなたがいいんです。気持ち悪いけど!!」
「嫌になったらいつでも言ってきてよ?」
「はい。鬼瓦部長、福神部長ありがとうございます」
2人にお礼を言っていたら社長がとても真剣な表情で観音原さんをみつめゆっくりと重みのある声…威厳のある声で言葉を発する
「…観音原。これからは彼だけじゃない子供にも愛情を注がないとならない。お前に家族を持つという覚悟はあるのか?彼を愛しているってだけじゃだめだ」
社長が真剣な表情で告げる。その言葉をしっかり受け止めた彼は深く頷いた。
「当然だ。…だが…俺たちは子育てもしたことない。妊婦の気持ちだってわからない…だから…相談に乗ってくれるか?」
「…勿論だ。子育ては2人だけじゃない周りの多くの協力を貰わないとうまくいかないことだってある。だから何時でも相談してくれ」
「え?妊娠?」
さっき盛大に怒ってたのに今更不思議そうに鬼瓦さんが首を傾げる
「誰が?」
「自分です」
「えっ!!女だったの?」
「いえ、男です。特異体質だったみたいで自分もこうなるまではそんなこと起こるなんて思いもしませんでした」
「そうか…そうか…でこれでいいのか?」
視線を観音原さんに向けながら鬼瓦さんと福神さんがハモる
「はい」
「そうか…そうかぁ…うん。わかった。なら…これからのことを決めようか。ただでさえ大変なことなのに男でそれは負担がすごいだろ?よし。話し合うぞ」
それから色々と考えてくれた。
話し合いの末妊娠のことを部署の皆に伝えることにした。体調不良。と言い続けることも可能だがそれじゃあ重病だと思われかねないから。
皆がどう反応するかわからないからとても恐ろしい。もし何かあれば観音原さんがどうにかしてくれるって妙な自信はあるけれどこんなこと信じてもらえるかもわからないし…
緊張と不安な俺の腰を抱き観音原さんと共に部署に戻った
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