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第10話
「七星さん!大丈夫ですか?」
始めに近くに走り寄ってきたのは同じチームの後輩の元永くん。
彼は背も高く綺麗な顔立ちをしていて女性社員のお気に入りのペットくんだ。
皆に笑顔を振りまいていそいそといつも頑張ってて期待している人間の1人。彼を筆頭に次から次に皆が寄ってきて気遣ってくれた。
「みんな席に着いてくれるか?」
席に着いたことを確認すると部長は俺の腰を抱いた
「皆に報告がある」
しんと静まり返る。不安になって少し震えてしまう。そんな俺の腰を抱く部長の手の力が少し強まった。その力強さにふっと力を抜いた
「まず…七星のことだが。体調には問題はなかった」
「だったら何で…」
問おうとする元永くんに目線を送る。無言の圧力がビシビシ伝わってきた。
「これから話すことは暫くは他言無用でお願いしたい」
「暫く?どういうこと?」
ざわざわしだした皆
「…七星は俺の子供を身ごもっている」
「はぁ????」
部署内が一気に騒ぎ出した
「お言葉ですが部長」
元永くんが声を上げる
「なんだ」
「部長。いくら七星さんのことが好きだからってそんなめちゃくちゃなこと言いますか?おかしくないですか?男の七星さんが妊娠なんて…馬鹿げてる」
「…元永…お前のいうことはもっともだ。だが…いいか?七星」
「はい」
さっきもらったエコー写真を部長に渡す。部長はそれをもって元永くんのところへ向かう
「さっき撮ってきたものだ」
「えっ?…えぇ!!??」
「まだ妊娠初期だ。これからどうなるかわからない。だからこそ皆に協力して欲しい…」
部長が直角に腰を折る。それを真似て俺も腰を折った。
「皆さんには大変ご迷惑をかけると思います…だけど…お願いします…俺は…この人との子を…産みたいんです」
しんと静まり返った室内でダラダラと変な汗が出てる気がした。気持ち悪いと言われてしまうかな?おかしいと言われてしまうかな?
「…わかりました」
声を出したのはここで一番長く仕事をしている有明さん。彼女は頼れるお姉さんみたいな人だ
「…七星くん」
「はい」
「今は無理をしてはならない時期。何かあればすぐに言ってね?」
「ありがとう…ございます」
「えぇ!!みんなの七星主任が妊娠!えぇ!ショックだ…」
「元永くん?」
「部長ずるいっす。いくら前から七星さんを思ってたからっていろいろすっ飛ばして父親なんて!!俺だって…俺だって…七星さんを愛してたのにぃ!!」
きーっとハンカチを噛みながら元永くんが言った。
「相手が悪かったなぁ。元永!流石に部長にお前は敵わねぇわ」
誰かが言うとみんなが笑った。その笑いは部署全体に浸透して部屋の中の気温が何度か上がったような気がしたのだった
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