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第8話

「俺はずっと世羅と一緒なんだけどね。俺も昔は君の地元あたりに住んでたんだ。草摩もね。で俺たちは高校進学を機にこっちに出てきたんだよ。でもさ。お前さ何で彼に会わせてくんなかったの?」 「会わせるか。キララにお前が惚れたら困る。だってキララはこんなに可愛いんだから。」 「そんな事言いながらお前は結局声もかけられず時を過ごしたくせに。遠くで見てるだけで満足って言いながら隠し撮りしまくってたよな」 「そりゃ撮るだろ?赤ちゃんの頃から今までアルバムにして取ってあるわ。自宅のクローゼットはこいつの写真で一杯でそこにいると…ぐふっ…。…離れてからはお母さんにお願いして写真送ってもらっていたんだ」 「はぁ!?」 「だからお前がここに入ってきたとき天にも登る心地で…」 黙って2人の会話を聞いてたらなんだかもやもやしてきた。 俺がここに入社できたのって…俺だったから?てことは…コネみたいな感じってこと?俺自身が認められたわけでなく!?…そう思ったら情けなくて悲しくてなんだか泣けてきた 「やっぱ気持ち悪かったんだ?泣いてんじゃん!おまえどうすんの?」 違う…そうじゃない…ここが求めてくれたからその思いに必死に応えたくて貢献したくて必死に仕事してきたのに…そんなことってある?そんなの酷すぎるよ…そう思って静かに泣き続けてたら 「…社長…観音原部長。お言葉ですが…」 これまで何も言わず傍観していた草摩さんが口を開く 「彼のその涙は自分の実力を買って採用されたのではなくあなたの一存で決めたと思ってるからでは?」 「えっ!!そんなわけないだろ!?採用したのは俺等三人じゃなくて他の重役だぞ!?人を見る目が誰より確かな人間だ」 そんな事言われても涙が止まらなくて…そんなとき社長室のドアがばぁん!と開け放たれた 「だーれーだー!!!うちの大切な社員を泣かせるやつは!!」 鬼だ…あ…違う…鬼の形相をした人事部の部長だ。 身体も大きくて顔はいつも般若みたいだが、好きなものは甘いものと今流行りのみぃかわ。というミニミニで可愛い動物のキャラクター。 デスクの上には可愛らしい小物がたくさんあるような人だ 「鬼瓦!いいタイミングで来た!説明してくれ!こいつを採用した理由」 「そんなの決まってんだろ?彼の人柄と優秀さだ。それと顔。可愛い」 顔?やっぱり実力ではない… 「顔はもちろんだがなぁ。面接時の彼の受け答えが他の可愛い人間たちよりも優れていた。彼ならこの会社を将来的には支えられる柱の一人になると確信していたからだ!そんな優秀な彼を何でお前らはよってたかって泣かせてんだ!?あ"ぁ!!??」 「鬼さん鬼さん落ち着いて」 横から現れたのは総務部の部長福神さんだ。福神さんは名前の通り福の神のお面みたいな優しい顔してて身体もまん丸でふんわりな人だ 「とりあえず…よいしょっと…」 大きな体をゆっくりと動かし俺の側に来た福神さんはそっと俺の涙を拭った 「大丈夫だ。君の能力は間違いないと俺たちが判断したんだ。社長も秘書もポンコツだから会社始まって社員募集し始めたすぐの頃は変なの採用してきたんだよぉ。だから人事は俺たちに一任されているんだ。観音原…こいつはまぁ人間として仕事以外終わってるから人事権なんか持たせたくねぇし。君が観音原の想い人だと知ったのは君が入社してきて研修期間が終わった頃だ。それまでまさかこいつと繋がりあるなんて思いもしなかった。こんな人間のクズな世羅と君みたいな優秀な人が繋がりがあるなんて微塵も思ってなかったから。ごめんね。嫌な思いしたよね?部署異動させるよ?こいつを!」 ビシッと部長に指さして普段あかない目を開眼した福神さんの気迫に部長はたじろいだ。 ダメージを食らっているようだ

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