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第3話

晴輝が休みの前日になるたびに誘ってくる。 セックスのお誘いなら喜んで受けるが、吸血となると話は別だ。 結婚する時に心に決めた。一生人間の血は、晴輝の血は吸わないと。 「リオ〜、おまえ今月も営業成績一位だったな」 「おー」 昼飯の血液パック四つ目を飲み干した時、外回りから戻ってきた同僚が絡んできた。 「てか飲みすぎじゃね?」 「五個飲んでも腹減る」 「飢えてんね、旦那いるのに」 「あいつのは飲んでねぇ」 「は?何で?一回吸ったらひと月は持つぞ」 わかってるよ。 この縛りのせいで家計が苦しくなってんのも、無駄に腹が減るってのも。 でも晴輝には絶対手を出さない。 出したら終わる気がする。抜け出せなくなる気がする。 それにただでさえ、人間に吸血の負担は大きいのに、こんなに飲む俺が晴輝の血を吸ったらどうなるか。 「これが好きなんだよ」 「変わってんなおまえ」 「うっせ、駄弁ってないで早く外回り行け」 「はいはーい。営業成績最下位は頑張ってきますよー」 このままでは非常にまずいのはもう気がついている。 ここ最近、夜中空腹に耐えきれず晴輝の腕や首筋、太ももに噛みつきたい衝動が襲ってくる様になった。 なんとか理性で衝動を抑え込んでパックで凌いでいるが、もう隣で寝ることも、手を繋ぐことも厳しくなってきている。 何度か人間の食料や人工血液加工食品も外で試してみたが、湿った砂利を食ってるみたいで飲み込めなかった。 「クソ…」

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