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第6話
「おい」
「ん?」
休日の、しかも年末だってのにリオが控えめに突っついてきたせいで目が覚めた。
「なに?」
「飯、定期便が雪で遅延してるらしい」
確か人工血液パックは昨日が年内の最終配達日だったはず。誕生日やプレゼントやらで完全に忘れていたが、そういえば届いてない。
「冷蔵庫、残ってない?」
「昨日の夜全部飲んじまった。年明けまで配達ねぇみてぇだから、ちょっと買いに外出てくる」
「うん、気をつけてね」
「なんかいるか?」
「お餅食べたい」
「餅な」
「いってらっしゃい」
「ん、行ってきます」
リオを送り出して三時間が経過した。おかしい、普段なら三十分もしないうちに帰ってくるのに帰ってこない。
電話したが、着信音が部屋で鳴り、連絡がつかない。
「ただいま」
探しに行った方がいいかとソワソワしていた時、玄関から声が聞こえた。
「遅かったね」
リオの手には餅だけが握られている。
「何軒か店廻ったけど、どこも完売してるし入荷も遅れてるらしい」
「一個もなかったの?」
「あぁ、ん餅はあった」
「ありがとう」
もう時計の針は十二時を指している。大食漢のリオだ。きっとかなり飢えているに違いない。
「リオ、鉄剤とタンパク質と糖質で擬似血液飲料作ろうか?」
学生の頃、サークルの合宿でパックが手に入らず、一度だけ擬似飲料を見よう見まねで作った事がある。味は悪かったらしいが、人間の食糧よりマシだと言っていた記憶がある。
「……ありがとう」
リオは飢えをこのまま耐えるか迷ったが、擬似飲料を依頼してきた。
「晴輝」
「どうした?」
「ヤバいかも、頭フワフワする。晴輝傷つけたくねぇのに、晴輝の事傷つけちまいそう」
リオは初めて俺の前で涙を見せた。
この光景が信じられず、動揺してしまう。
リオは口元を抑えながらポロポロと涙をこぼす。
「リオ、大丈夫、大丈夫だから」
リオが俺の血を吸いたくない事は理解している。リオの気持ちを無視してまで飲ませる気はない。
「飲料できるまで部屋に入ってて。いい?リオ」
リオは泣きながら何度も頷いて寝室に入って行った。それを確認して、いつ吸血されてもいいようにと用意していた鉄剤と、タンパク質を取り出すための牛乳、甘味料を取り出し、擬似飲料を超特急で作る。
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