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第7話
「リオ、できたよ」
扉越しに晴輝の声が聞こえる。
「俺、血液パック入荷してないか、スーパー回ってくるから、キッチンにある擬似飲料のんでて」
「ありがとう」
感謝の言葉を伝える事が精一杯。
今晴輝に会ったら衝動的に噛みついてしまいそうなほど飢えている。こんな飢え、初めてだった。
玄関の鍵が閉まる音が聞こえたと同時に寝室を飛び出し、キッチンに向かった。
まだ温かい鍋のお湯の中には、袋に入ったクリーム色をした晴輝特製擬似飲料が五個温められている。
行儀の良し悪しなど、もう気にする余裕もなかった。袋の端をハサミで切り、そこから中身を吸った。
味も気にならない程飢えていたのだろう、夢中で胃に流し込む。
鍋の中の袋が尽きても、飢えはおさまらない。
肉に歯を突き立てたい、肉と血管を突き破り血液を啜りたい衝動、こんなにも激しいのは初めてだった。
こんな衝動おかしい。
耐えれず見ず知らずの人を襲い法で裁かれている吸血鬼は、こんな衝動が起きていたのだろうか。
圧倒的な飢え、渇き
苦しい、辛い、晴輝助けて
抑えきれず自らの腕に歯を立てる。
歯は皮膚を貫き、血液が溢れ出る。
流れる血液を啜るが、何も満たされない。
場所を変え、何度も歯を立てる。
やがて腕はボロボロになる。
「晴輝」
意識が遠のく。
床に座り込み、自分もあの理性の効かない吸血鬼共と同じ存在であったことに絶望する。
「…オ!リオ!」
晴輝の声が聞こえる。
「リオ、パックあったよ」
外気で冷えたパックが口元にあてがわれる。口内を満たす血液を嚥下すると、次第に朦朧としていた意識がはっきりしてくる。
「晴輝、ありがとう」
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