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第8話

「パック一個しか手に入らなかった。ごめんね」 「謝んな」 「近くのスーパーで、入荷したら取り置きして貰えるようにお願いしたから、入荷したら連絡あると思う」 「ん、ありがとう」 リオをソファーに座らせ、腕の傷の手当てを済ませた。自分の腕をこんなにも傷つけてしまうほどの衝動。早くパックが手に入れば。 「リオ…」 呆然とするリオを優しく抱きしめる。愛する人に苦しんでほしくない。こんなにも苦しむ前に、自分の血を飲んで欲しい。そんな自分都合の願望は口が裂けても言えず、出かかった言葉を飲み込んだ。 「擬似飲料、もうちょっと作っとくね」 「…晴輝」 「何?」 「俺、一緒にいると怪我させそうだから、パック手に入るまで部屋に籠る」 「…ん、わかった」 ---------- 擬似飲料を作ってはスーパーを巡り、時には同僚、知り合いにパックを分けてもらい、なんとか大晦日を迎えた。 パックが日持ちすればストックも作れるのだが、あいにくパックは3日しか持たない。 取置きを頼んだスーパーからは、今日入荷連絡があったが、他にも求めている人が大勢いたようで、二つしか買えなかった。 それも先ほど飲み干してしまい、リオはまた部屋にこもってしまった。 「…覚悟決めろ」 傷の治りが遅い人間用に採血キットが薬局で売られるようになってから、皮膚に直接歯を立て吸血する夫婦は減少傾向にあるらしい。 俺を傷つけることに抵抗があるのだとすれば、こうして取った血は口にしてくれるかもしれない、ふとそう思い、物は試しとキットを五つ購入してきた。 説明書の手順通り、血液を取る。 一度に採取可能な20ミリをギリギリまで取り、専用のパックに移す。 普段飲んでいる人工血液一パックの十分の一しかない血液に不安を覚える。 「足りないよな…」 慣れないことをしたせいか、血液を抜いたせいか、頭がクラクラする。もう一本とりたかったが、吐き気も酷く、それどころではなかった。 「リオに渡さなきゃ」

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