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第13話
晴輝は真っ青な顔で泣きながら帰ってきた。
何事かと思えば『一人にさせて』とだけ言い残し、シャワーを浴び、ベッドに潜り込んでしまった。
ベッドの上、いつもは向かい合わせのはずが、今日は晴輝の丸まった背中しか見えない。
『一人にさせて』とお願いされたが、どうしても心配で、同じ布団に潜り込む。
身体が触れそうで触れない微妙な距離、今日はいつもより冷え込んでいる気がした。
「はる」
もう寝てしまっているなら、目の前で小さくまるまる体を抱きしめたい。
声をかければ、晴輝は無言で体を起こし、立ち上がった。
「リオ、ごめん。本当に一人になりたい」
暗い部屋、差す月の光が逆光になり晴輝の表情は見えなかったが、震える声から、泣いていることは容易に察することができた。
何度も言われた『一人になりたい』と言う言葉が、どうしても助けを求めている様にしか受け取れず、部屋を出ようとする晴輝の腕を思わず掴んだ。
「晴輝の抱えてるもの、何かわかんねぇけど…俺にも持たせて欲しい。俺じゃ力不足かよ」
暫くの沈黙のあと、春輝の口から小さく「ありがとう」と聞こえた。
「あったかいミルク、淹れてやる」
晴輝がベッドに腰を下ろしたのを確認した後、キッチンで鍋で牛乳を温め、蜂蜜を入れた。
お揃いのマグカップに牛乳を注ぎ、鍋を水に浸け、マグカップを両手に寝室に戻った。
「ん、蜂蜜入り」
マグカップを差し出す。冷えた指先を温める様にマグカップを両手で包み込む晴輝の隣に腰を下ろし、晴輝の肩にブランケットを掛けた。
「ありがとう」
「クソ甘いな」
「おいしいよ」
久しぶりに飲む、自分で作った蜂蜜入り牛乳は、反吐が出る程甘かった。
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