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第14話
「帰り道でさ、事故見ちゃって…車同士の」
暫くすると、晴輝はゆっくりと話を始めた。一言一言を、静かに受け取る。
「俺、母親居ないじゃん」
晴輝のお母さんはが、かなり前に亡くなっている事は、入籍前の両家の顔合わせで知った。
「実は事故で亡くしてて…もう二十年も前になるんだけど、今でも鮮明に覚えてて」
カタカタと震える晴輝の手から、マグカップを取り上げた。サイドテーブルにマグカップを二つ並べ、晴輝の手を握る。
「信号で停車してた俺たちの車に、飲酒運転のダンプカーが突っ込んできて、運転席に乗ってた母親は、俺の隣でペシャンコに…俺、こわくてっ!」
ボロボロと涙を流し体を震わせる晴輝を、優しく抱きしめた。勝手に流れてきた自分の涙を見られたくなくて、それを隠す様に抱きしめ、背中を摩った。
「事故見たら、思い出して…あの日俺が餅つき大会に行きたいなんて言わなければとか、母親のかわりに俺が死んでればとか、俺だけ生きててごめんなさいって、そんなんがずっとグルグルして…もう俺!」
「晴輝、晴輝…!」
どんどん下を向き思い詰めてしまう晴輝の名前を呼び、強制的にこちらを向かせる。
「ん?」
「晴輝が生きて、今俺の隣に居てくれる、それが何より、俺は嬉しい」
視線を合わせ、晴輝へ素直な想いをぶつける。
「生きてていいに決まってんだろ。お母さんも、はるが生きて、笑って日々を過ごしてくれる事を願ってると思うぞ」
「…リオ」
「ん?」
「何でリオが泣いてるの?」
晴輝は震えの治った指先で、俺の頬に触れ、涙を拭った。
「何でだろうな」
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