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第15話
事故の後から、父親にも姉にも友人にも言えなかった気持ちをリオに話した。ずっと自分の中に秘めておくつもりだったが、知ってもらう事でこんなにも痛みが軽減するのならば、もっと早く、誰かに助けを求めておけばよかったのかもしれない。
いや、きっと話を聞いてくれたのがリオだったから、こんなにも救われたのだろう。これがリオ以外の誰かだったら、こうはなっていなかったと思う。
「リオ、おはよう」
カーテンの向こう側が徐々に明るくなり、室内に柔らかい陽がさす。隣で気持ちよさそうに寝ていたリオは、少し身じろいで眩しそうにうっすら目を開く。
リオの寝癖だらけの髪を手で梳かす。
「はよ」
リオは寝ぼけ眼のまま俺を腕の中に収め、再び眠りについた。
「リオ、遅刻するぞ」
「……はるもちこく」
「俺は今日定休日だよ。来月の新作の試作しなきゃ」
「おれも……やすみ」
「リオは仕事、はい起きて!」
「ん〜〜」
リオは伸びをし、ムクリと体を起こした。
もう少しだけ、二人で布団の中で抱きしめあっていたかったなと思ったのはリオには内緒。
「そういや、今日親父がこっち来るって。母さんに会いに行くだけみてぇだけど、ここにも顔出すかもしんね」
「は?!早く言え!」
リオのお父様は魔界に住んでおり、稀に人間界に住むリオの母親やリオに会いに人間界にやってくる。
人間は魔界へ入る事ができないため、リオの両親は実質別居状態なのだが、二人は俺たちが引く程仲が良く、お父様は頻繁にお母様の元に顔を出している。
それを初めて聞いた時は、お父様が人間界に住めばいいのにと思ったが、どうやらお父様、いやリオの家は由緒正しい家、わかりやすく言えば貴族みたいなものらしく、お父様が人間界に住む事はお家柄できないらしい。
リオも今はこうして人間界で生活しているが、いずれは魔界に戻らなければいけないらしい。
そうは言っても、きっとそれは数百年後の話し。
「パック出しときゃいい。あんま気にすんな」
人の気も知らず、リオはボサボサな頭をかきながら身支度のため洗面台に向かった。
「気にするわ…親で貴族だぞ……」
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