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第16話

外が子どもたちが登校する声で賑わう時間、アパートのインターホンが鳴る。 つい数十分前、在宅と訪問の確認がお父様からあり、玄関で正座してインターホンが鳴るのを待っていた。 「ご無沙汰しております。粗茶ですが」 お父様をリビングに案内し、お茶と茶菓子を差し出す。 「ありがとう。いや〜晴輝くん、久しぶりだね〜!そんなにかしこまらないで」 お父様、お会いするのはこれで数十回目なのだが、あまりにも外見がイケ過ぎていていつも眩しくてまともに目を合わせることができない。 リオの話では二百歳後半で、正確な数字は本人すら把握してないらしい。わりと繊細で几帳面なところがあるリオとは、あまり似ていない。当たり前だが、見た目は全く老いておらず、落ち着いた青年と言った感じなのだが、とにかく余裕がすごい。 「愚息は遊び呆けていないかい?」 「仕事も順調みたいで、俺もリオのおかげで幸せな毎日を送れてます」 「それはよかった」 お父様はニッコリと微笑む。 「あ、そうだ。今日ここに来たのはね、これを渡すためだったんだよ」 お父様はジャケットの内側からカードを一枚取り出す。 「招待状?」 「リアンが人間で言う成人を迎えてね。リアンもリオと同じく混血種だろ、だからそのパーティーをこっちでする事になってね」 吸血種は大きく三つの種に分けられる。繭から生まれる純血種。純血と人間の間に生まれた混血種。純血から吸血された元人間。リオは混血種にあたる。 他にも種ごとに寿命が違ったり、吸血種は身籠ることができないなど、生態に違いが存在する。 ちなみに純血種は一夫多妻制であるため、お父様には二人の純血の妻と三人の人間の妻が居り、それぞれに一人ずつ子どもがいる。リオは一番末っ子である。 色々ややこしくて、正直俺もまだ把握できていないことが多い。 「おめでとうございます。是非参加させていただきます」 「それはよかった、当日、晴輝くんとリオに会えるの、楽しみにしているよ」 お父様はお茶を飲み干し、席を立った。 外の駐車場には車高の高い馬鹿でかい黒塗りの車が止まっており、そこまでお父様を見送った。 「吸血種貴族のパーティー、未知すぎて怖いんだが…」 部屋に戻った途端、ドレスコードはあるのか、いくら包めばいいのか、何か手土産的なものは必要なのか、など色んなことが頭の中をぐるぐるする。 ネットで検索してみたが、欲しい情報はなく、その場で立ち尽くす。 「そう言えば、リオのご兄弟の名前と顔まだ覚えられてなかった…終わった……」 パーティーが終わるまで忙しくなる事を覚悟し、店で出す二月の新作の試作に取り掛かった。

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