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第18話

「服仕立てるのとか学生服以来で緊張する…」 朝から腹の調子が悪い。というのも、これからリオのお兄様であるリアンさんのパーティーに出席するための服を仕立てに行くのだが、慣れない事に緊張して腹を下している。 覚悟を決めて家を出たものの、入りにくそうな店を目の前にし、怯んでしまう。 「一緒に入るから安心しろ」 リオに手を引かれ、中に入る。半べそ状態の俺の手を引いたまま、出迎えてくれた品のいい男性に、奥の個室に通される。 「リオ・ベネット様、お待ちしておりました。晴輝様、本日は数ある店から当店を選んでいただき、誠に感謝いたします。本日のオーダーは兄上様のご成人の祝賀会でのお召し物でございますね」 「ユージーン、祝いの席だが、あまり華美にならない様に仕立ててほしい。それ以外は全部任せたい」 「かしこまりました」 昨日リオから聞いたのだが、どうやら服にも色々決まりがあるらしい。既婚者男性は黒のフロックコートに金の糸で裾に刺繍。この刺繍も家によって形が決まっているらしい。それに成人男性はステッキにスカーフ。未成年は手袋にボウタイか蝶ネクタイ。 リオも細かいことはわからないと言っていた。長年リオの家に関わってきたこの人に全て任せるのか一番らしい。 「晴輝様、こちらにどうぞ」 ユージーンさんに促されるまま、男性の目の前に立つ。 ユージーンはメジャーを色んな箇所に当てては紙にメモしてゆく。 「そう固くならずに、肩の力を抜いてください」 後ろに立っていたユージーンさんは、こちらを覗き込み、狐の様な瞳を更に細め、口角を上げた。頬が触れ合いそうな距離。ユージーンさんの薄い体が背中に密着する。 「おい」 椅子に座りこちらを見ていたリオが、ユージーンさんを睨みつけ牽制する。 「おやおや、実に羨ましい」 ユージーンさんは両手をあげ、俺から距離を取った。 「その悪癖、昔から変わってねぇな」 「悪癖?それはお互い様では?」 「また杭打たれたいか?」 「ははっ!遠慮しておきます。私も、命が惜しいので」 二人は昔からの知り合いの様だが、過去に一体何があったのだろうか。二人から宿敵の様な雰囲気を感じる。 「晴輝様、終わりましたよ」 どうやら採寸は終わった様で一安心。 かなり緊張していたが、終わってみると大したことはなかった。 ただ、二人の過去が気になって仕方がない。

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