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第22話
「あ、ユージーンさんも来てる!」
「あ?」
後方でドリンクを飲みながら、本日の主役を悲しげな表情で見つめるユージーンさん。
「親類と貴族だけが参加じゃないんだ」
てっきり貴族のパーティーだと思っていた。仕立て屋さんも気軽に参加できる、間口の広い会だったのか、と緊張が少しだけ解れる。
「あいつは特別だよ。階級が違うから、本来はここには入れない。人間界でこの会をやるって決めたのも、ユージーンがいたからだろうな」
前言撤回
「特別?」
「リアンの思い人なんだよ、ユージーンは」
「え!?」
「声大きいぞ!」
リオは自らの唇に人差し指を当てる。
「…あいつも、人間だったらよかったのにな」
魔界では、吸血種と吸血種の同性での婚姻は認められていない。限りなく人間に近い吸血種のユージーンさんと、貴族の吸血種リアンさん。きっと、俺達には計り知れない苦悩があることだろう。
「大きい声出して、どうしたのかな?」
先ほどの声でユージーンさんがこちらに気がつき、笑みを浮かべて隣に立った。
「いえ、何でもないです」
「そうかい。服、よく似合ってるね、流石僕の仕立てだ」
ユージーンさんは、俺のジャケットの襟に手をかける。
「おい」
リオはユージーンさんの手を掴み、牽制する様に睨む。
「相変わらずの溺愛ぶりだね。安心しなよ、彼に手を出したりはしないさ」
元から儚げな印象のユージーンさんだったが、今日は特別その印象が強い。
まるで何かあったかの様に、何かに傷ついているかの様に。
「じゃあ、楽しんでね。僕はこれで失礼するよ」
何か耐えているかの様なユージーンさんの表情に胸がざわつく。
「ユージーンさん!」
「どうしたのかな?」
「服、とっても着心地がいいです!ボタンも、リオとお揃いにしてくれて、嬉しかったです!」
「それはよかった」
あぁ、悲しみが笑顔で隠しきれていない。
あと一言、核心に迫る様な、勇気の出る様な言葉を伝えたい。
「自信を持ってください」
「ははっ、何の話だい?…でも、ありがとう」
ユージーンさんはヒラヒラと手を振って会場を後にした。
「何も知らないけど、好きな人に好きと素直に伝えられないのは、苦しいよ」
「他人の色恋沙汰、勝手に想像しすぎだ」
「そうかな?」
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