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ーー花火大会当日ーー あまり遠く離れないこと、終わったらすぐに帰ることを約束して、俺は夏樹を乗せた車椅子を押して公園へと向かう。 花火まではまだ少し時間がある。 「すげー!! いつもはこんなたくさんの星、見れねえし」 俺はベンチに座って、夏樹の話すことに相槌打ったりしながら聞いていた。 「なあ! あの星座って何だっけ? 」 「あー、何だっけ。忘れた。俺、理科苦手だし」 頼りねえと夏樹が笑う。 「ホントすげえ。夜の空ってこんな綺麗なんだな」 「また、ら……また連れてきてやるよ」 また来年ーーそんな約束はできない。 「……うん、楽しみにしてる」 考えないようにしてもどうしても頭におばさんの言葉がチラつく。 ふとーー夏樹が俺の手を握る。 俺よりもだいぶ小柄な夏樹の手は思ってる以上に小さくて、細い。 その手を俺も握り返す。 「……もしさ、俺が死んだら」 「ナツ!! 」 「例えばだよ。もし、死んだら俺もこの星の一部になれるかな」 「……、死んだら星になるとかいうから、なれんじゃねえの」 泣くなーー。 泣くなーーー!! 泣くなッーー!!! 「そっか。それなら良かった」 それからは上がる花火を最初は興奮気味で見ていた夏樹もだんだんと無言になる。 繋いだ手はぬくもりを感じるのに、俺は泣きそうなのを必死で耐えていた。 「俺さ……浩ちゃんのこと、好きだよ」 そう言って淋しそうに笑う夏樹に何も答えられず、キスだけした。 ナツが逝ったのはそれから間もなく。

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