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「⋯⋯分かりました」
少しの沈黙の後、安野が嘆息した。
「普段何かしたいと思わない人がそこまで頑なですからね。外出の許可と護衛を今すぐ手配致します」
「ありがとうございます」
「ですが! 何かあったらすぐに連絡してくださいね! 護衛の方も御月堂様が信頼なさっている方だと聞きましたが、それはそれ! これはこれ! なので、もしかしたら姫宮様に邪な気持ちがあるかもしれません。その視線を向けられたら躊躇わず目を潰しにいってください」
「は、はい⋯⋯どうにかやります⋯⋯」
そこまでやると過剰防衛扱いされて、こっちが不利になるのではないか。
せめて自分が護衛として姫宮を守りたい、と私情にも似た怒りと嫉妬のような感情を剥き出しにしていた安野にそんなことを言えるはずがなく、苦笑いを浮かべたのだった。
安野を通じて御月堂に手配してもらった護衛が迎えに来てくれ、共に行くこととなった。
「──いやぁ、まさかまた会えるとは思いませんでしたよ! あの時よりも顔を隠してますから、最初誰かと思いましたよ!」
「はぁ⋯⋯」
車を運転してくれている護衛はそう言って、陽気に笑っていた。
護衛の人が来る直前、やはり心配だという安野から渡されたのは、マスクにサングラス、そして、つばの広い帽子だった。
『ここまですれば、姫宮様だと分からないでしょう!』
『姫宮様だとは分からないですけど、かえって目立ちますよね』
『紫外線に当たりたくないのかなとは思われますけど、逆に目立ちますよね』
『もしくは、ハリウッド気取りかよーって思われそうですよね』
今井、江藤、小口とそれぞれが淡々と感想という名の否定的な意見を言う度に、うんうんと頷いていた。
『そんな否定に同情しなくても⋯⋯! 姫宮様は私の渡したものに同意してくれますよね?!』
『え、えっと⋯⋯気持ちだけ受け取っておきます⋯⋯』
安野の優しさを傷つけないように姫宮なりの気遣いで言ったつもりだが、他の三人は「ほらー!!!」と声を揃えて言った。
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