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『さすがにここまではやりすぎですって!』 『逆にマスクだけすれば目立ちませんって』 今井に帽子とサングラスを取られ、江藤にマスクを付けてもらい、それで見送られた。 『久しぶりのお出かけ、楽しんでいってください』という言葉と共に。 「黒いマスクをしている人をよく見かけるようになりましたよね。というか、カラバリが増えたといいますか。ファッションの一部になっていて、服にも合わせやすいっすよね。今日の姫宮様もちょー合ってますよ!」 「⋯⋯はぁ⋯⋯ありがとうございます⋯⋯」 初対面でこんなにも気さくに話しかけてくれるのは、緊張を解そうとしてくれているのかもしれないが、この感じだと元々の性格もあるのだろう。すごく元気な人だなと思った。 車という狭い空間であるからか、彼の声がよく響く。 「ところで、さっき挨拶した時から思っていたんですけど、姫宮様、なんだかよそよそしくないですか?」 「え⋯⋯?」 「あっ! その反応だと俺のことを忘れてますねっ! なんてこった! 俺とはお遊びだったの!」 ひどい! と、今にもその場から足早とどこかに行きそうな勢いでわっと騒ぐ護衛に、「あ、いえ、そういうわけでは⋯⋯」と弁明しようとした。 しかし、初対面の人だと思ってしまっていたものだから、この弁明は言い訳にしかならない。 どうしたらいいのかと落ち着かない頭で考えを巡らせた。 「ま、仕事柄覚えられていても少々困りますしね。この袋田という名前もお飾りにしか過ぎないんで」 「なんだか、すみません⋯⋯」 「いやいや! 責めているわけじゃないんッスよ! 冗談なんで笑って欲しい! 笑ってくれないと滑った感じになるからっ!」 戸惑う姫宮の代わりなのか自分でわざとらしく笑っていた。 騒がしい人だ。 けれども、面白く思え、くすりと笑った。

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