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大好きな姫宮が言っていたとしても、姫宮は人の顔色を伺うように気を遣って、仮に淫らなことをされても庇っているのだと思われているのかもしれない、葛藤しているような険しい顔を見せる安野だったが、「姫宮様が仰るなら」と穏やかな顔になった。 「今度またその護衛の人に姫宮様のことを頼む時も、何か気になることがありましたら、遠慮なく何なりと私に言ってくださいね⋯⋯っ! 御月堂様が信頼している方であっても、今後お断りさせていただきますので」 「は、はい⋯⋯」 「第一に姫宮様に何か危害を加えられることがあったら、御月堂様が黙っていないと思いますけどね」 ふふ、と控えめに笑うその意味深な言葉を察してしまい、顔が熱くなるのを感じた。 「その今は言いにくいことも御月堂様にも言いにくい内容でしたら、私にでも言ってください。話を聞くことなら私にもできることですから」 「ありがとうございます」 遠慮がちな笑った顔をしたつもりだった。 途端に安野は、「いい顔⋯⋯ッ!」と口元を覆っては大袈裟な反応を見せた。 「⋯⋯と、いつまでも玄関で姫宮様を立たせるわけにはいきませんね。大切な人達の元に行ってあげてください」 大切な人⋯⋯"達"? 大河は分かるが、あともう一人は一体。 そんなはずが、という半信半疑のまま、安野と共にリビングへと向かった。 「愛賀、帰ってきていたのか」 安野に扉を開けてもらった先にいた人物と目が合った時、やや驚いているような表情をしていた。 恐らく自分もそのような顔をしている。 目の前に飛び込んできた事実を信じられずにいるのだから。 「⋯⋯慶様、ですよね?」 「? ああ、そうだが」 「来ていたのを知らなかったので⋯⋯」 「そこの安野に聞いてなかったのか」 姫宮の一歩後ろにいた安野に視線を向けると、眉間に皺を寄せ、咎めているようだった。

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