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やや言い方が違えども、さっきの安野が言っていたような言葉だと思うと、微笑みを零した。 「お気遣いありがとうございます」 言った直後、先ほどよりも目を開いたような反応を見せた。 何かに驚いているような。 しかし、注意深く見ると頬がほんのり赤いような。 「慶様、どうされました?」 「あ⋯⋯いや、いやなんでもない。それよりも目的の物を無事に買えたようだな。実は私も大河のために買ってきた」 そう言って、抱えていた包みを軽く上げたことで今さらながらに御月堂が持っていたことに気づいた。 「大河のために、わざわざありがとうございます」 「これぐらい大したことではない。問題は大河が喜んでくれるかどうかだな⋯⋯」 不安だというように自身の抱えている物に目線を落としていた。 姫宮としては、忙しい合間を縫って──代わりに松下が買ってきてくれたとしても──買ってきてくれただけでも嬉しくも思うが、これはあくまでも姫宮の意見だ。大河がどう思ってくれるか。 「えと⋯⋯大河に渡しに行きましょう」 「それもそうだな」 御月堂の隣に並んで歩き、出かける前と変わらずに絵を描いている⋯⋯と思いきや、こちらに顔を向けていた。 だが、目が合った瞬間、慌てて目線を下げ、あたかも絵を描いていたように装っていた。 こちらの会話が気になっていたのだろうか。 「大河、ちょっといいかな」 こちらも何もなかったかのように声をかけると、ゆっくりと顔を上げる大河と目が合った。 声を発せられない大河はただじっと見てくるのを、困った顔を混ぜた笑みを見せた。 「大河にあげたい物があるんだ」 「私もからだ」 御月堂とほぼ同時に包みを差し出した。 すぐに目線を映し、ひったくるように姫宮の方を取った。 受け取ってくれるかどうかという不安を覚える暇もなく。

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